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ありふれた企業家物語-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

香 川 大 学 経 済 論 叢 第 73巻 第 2号 2000年 9月 141-173

ありふれた企業家物語

宮 脇 秀 貴

要旨・“Hり,Hideta初日 What'suP?"友人のこの気軽な一言が,異文化 の中で暮らす筆者の乾いた表情に,何度,潤いと微笑みを与えてくれた ことであろうか。 「異文イ七」が交流する場には,人を成長させる機会だけでなく,大き などジネスチャンスも転がっている。本稿では,英会話スクー1レという 異文化交流の場を創造して世界進出を目指す,アメリカのある革新的 企業の軌跡をエスノグラフィーとして論じている。この中で発見した ことは,革新的企業をサポートするしくみである。まさにそれが進化し ていくビジネスシステムである。

は じ め に

景気も底を打ち,日本経済にほんの少しの明るい兆しが見えてきたと言われ ている。しかし,現実は,依然暗閣の中でもがいているようにも感じられる。 最近では,市場の活性化と中小およびベンチャー企業育成のためにナスダック・ ジャパンが開設され,まずまずの滑り出しを見せている。「勢いのある企業」の創 出により,日本経済の復興を目指す新たな試みである。 勢いのある企業とは,規律の中に自由,あるいは自由の中に規律があり,自 律と他律のバランスがとれたエンパワーメント)を成功させている企業である。 ベンチャー企業あるいはフラット型チーム組織を採用している大企業ならびに (1) エンパワーメントについての説明は,宮脇 (1998,226ページ)を参照せよ。

(2)

-142- 香川大学経済論叢 400 中小企業では,エンパワーメントを掲げ,企業内の改善はもとより,企業ある いは市場自体の革新もしくは変革を目指して日々活動を模索し続けている。そ れらの企業では,どのようなビジネスシステムを採用し,また,どのようにヱ ンパワーメントを促進する管理会計情報(以下では,エンパワーメント型の管理 会計情報と呼ぶ)を活用しているのであろうか。 本稿は,アメリカのあるベンチャー企業の盛衰ならびに起死回生の復活を, エスノグラブイーとして論じている。この中の

1

つ の 視 点 は , 革 新 あ る い は 変 革を目指す小組織を支えるビジネスシステムを探求することである。これは, エンパワーメント型の管理会計情報を活かす組織条件を探る時にも役立つもの である。そのため,研究アプローチとして次のものを採用した。 この研究は,最終的に参与観送)ならび、に臨床的アプローん併用して行われ た。もともと,臨床的アプローチを取る立場になる予定はなかったし,もしか したら「完全なる参加者」に近い参与観察になったかもしれないが,上記2つ の方法でグランデイツド・セオリーを探求することにした。なぜなら,身近に 研究対象の組織文化,ビジネスシステムならびに会計システムなどを観察でき, (2 ) フラット型チーム組織とは,組織階層が少なしマネジメントの決定権限を組織の末端 に委譲しており,また,作業組織をチーム単位で構成している組織である。 (3 ) エスノグラフィーとは「民族誌」であり,次の2つの意味を含んでいる。①ある対象に ついてフィールドワークという方法を使って調べた研究および②その調査の結果として 書かれた報告書である。詳しくは,佐藤 (1992,40-5ページ)を参照せよ。 (4 ) 参与観察とは観察者としての参加者」が行う調査であり,フィールドワーカーが調 査を目的としてその現場にいることを対象者は知っており,フィールドワーカーは準メ ンバーとしての役割を与えられる(佐藤 1992, 133-4ページ)。 ( 5 ) 臨床的アプローチでは,クライアントから依頼を受け,組織開発 (OD)のため,コンサ Jレタントの立場ーから対象企業に接しデータを収集する。詳しくは,金井(1989)を参照の こと。 (6) r完全なる参加者」とは潜入ルポ」のような調査を行うフィールドワーカーを指し, 対象者は,フィー1レドワーカーが調査していることに気づいていない(佐藤 1992, 133 ページ)。 (7) グランディッド・セオリー(データ密着型理論)とは,現場で集めたデータにもとづい て作る理論であり,グランド・セオリーとは対比して用いられる(佐藤 1992,75ページ)。 なお,グラントセオリー(総合理論)とは,理論の検討を目指す研究者がよりどころと する理論である(佐藤 1992, 75ページ)。この2つの関係については,佐藤(1992,71-76 ページ)およびGlaser& Strauss (1967, p..2, pp.10-2, Ch 9-10)(訳, 3, 12-4ペー ジ, 9および10章)を参照せよ。

(3)

401 ありふれた企業家物語 143ー より深く「組織構造一管理システム一個人」の関係を調査できるからである。 以下では,英会話スクーノレで世界進出を狙うアメリカのあるベンチャー企業 の進化の過程を,企業の創立,繁栄,衰退,そして新たな飛躍という流れで論 じていく。なお,本稿の全般にわたって,いつもの論文調よりもいくぶ、ん柔ら かい表現を多く使用している。その理由は,現場で収集したフィーノレド・デー タを記録したフィールド・ノートの表現をなるべく活かすためである。さあ, ヱスノグラフィーの始まりである。

1

1

ありふれた企業家物語

出 会 い 「なんともよく働くアメリカ人だ」一これが,

K

の印象だった。金曜日の約束 をキャンセルするために電話をした時,筆者の頭の中では,当然,来週の月曜 日か火曜日の空き時間に変更するだろうと思っていたら,

K

の方から「明日は どうだ?J と尋ねられ,この週末の土曜日に会うことになった。 もともとは,たまたま日本人昼食会の集まりの時にお会いしたIさんから紹 介され, 1度はごくごく簡単に, Kに挨拶をしていた。その時は,次のクラスが 始まろうとしていたので,

K

は準備等に忙しそうだった。 今日は時聞を取ってもらえたので,カリキュラムの中身を詳しく聞こうと 思っていた。なぜなら,今,どの英会話学校に通おうか迷っていたからであり, Iさんの紹介もあるし,せっかく会ってくれると言うし,ちょっとは英語の練 習にでもなるかと思って,エスプレッソのオープンテラスで待ち合わせをした。 そこにKは現れた。

K

は,ブロンドのカーリーへアーで,いわゆる中年のアメリカ人女性の体格 だった。本人いわし昔はスレンダーだったそうだが……。とりあえず,こち (8 ) 経営の良し悪しを左右するlつの要因がプロセスのクオリティであり,それは組織 構造ー管理システム一個人」の整合性に強く影響を受ける。「組織構造ー管理システム 一個人」の関係についての詳しい説明は,宮脇 (1998,221-5ページ)を参照せよ。

(4)

-144- 香川大学経済論叢 402 らの質問に対して, Kは丁寧に答えてくれた。その時,外国人の扱い方をよく 知っていると感じた。たとえば,聞の取り方や平易な英語を使用したりなどで ある。また,会話の最中に,うまく自社を売り込むところもさすがである。

K

の経営するスクーノレが提供するサービスの良さとともに,コストに関する事項 をことさら強調していたのも印象的だ、った。感想としては,やはりアメリカ人 は自己表現の仕方がうまいと思った。ただ,アメリカに来て日が浅く,いろい ろな意味で外国人を信用することは難しかったので,話の内容がちょっとうさ ん臭いとも思ってしまった。 これが,出会いのエピソードであり,後にベストフレンドの

l

人となる

K

で ある。この後, Kが経営するスクールの経営ならびに会計アドバイザーとして, またKのよき友人として,いろいろなビジネスの出来事を共有させてもらうこ とになった。

C

a

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i

n

g

ここでは,登場人物と登場機関を簡単に記述しておしなお,各表記は,実 際のスペルを短縮あるいは省略したものもあれば,利害関係上,好ましくない と筆者が判断した場合には,実際のものとは別に架空の名前を設定したものも ある。 まず,この物語の登場人物から紹介していこう。

.K

WI

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であり筆者の親友

.

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のオフィスオペレーティングマネジャー

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のマーケティングマネジャー

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の支屈の

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WI

に物件を貸している不動産屋の社長

(5)

403 ありふれた企業家物語 次に,登場機関を紹介する。 ・

U

I

.

.

…アメリカ合衆国イリノイ州イリノイ大学 アーパナ・シャンペーン校

.

PL

…アメリカ合衆国イリノイ州のある地方大学

.WI

K

が経営するプライベート英会話スクール • EB…Bが経営するプライベート英会話スクール

• I

E

I

UI

に所属する英会話スクール 想 い 145

K

がこのビジネスを始めるに際して描いたビジョンは,まさに“

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と形容されうるものである。“

ESL(

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Second L

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という キーワードをもとに拡がるアイディアは,世界の標準言語として最も使われる ことが多い「英語」の追い風を受けて,世界各地の顧客のニーズを捉え,満た し,さらに,それを掘り起こすものである。その内容を説明する前に,まず,

K

がどのようにその「智」の泉を溢れるほどに満たしていったかを述べていこ う。 Kは,高校卒業後,アメリカで道路地図「アトラス」を製作している会社に 勤務し,各州、│を回りながら地図の製作に携わっていた。アメリカ国内を一巡し た頃に,自分で事業を始める準備としてビジネスの知識を得るため,ならびに 人的ネットワークを作るため,地方大学へ進学することになった。会社勤務中 に各州を回ったこの経験は,後に外国人を相手に商売をする時,アメリカ圏内 の旅行等の相談を受ける場面で大いに活用された。 地方大学では,マーケティングとコミュニケーションを専攻していた。成績 は毎年成績優秀者として表彰されるほどであった。卒業後は, UIへ編入し, “

I

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C

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l

Communication"

で学士号を取り,続いて,

U

I

の修士課程で

ESL

を専攻している。

UI

に編入後も,成績優秀者として表彰されるとともに,

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でも“

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Honors"

として表彰 されている。

(6)

-146ー 香川大学経済論叢 404 Kは生計を立てるため,修士課程に在籍中から, UIの英語の授業のTAや IEIでアルバイトをし,さらにプライベートに英語を教えていた。この時のお客 の多くは,英語に困っている人,つまり,留学生がほとんどであった。上記の 3つのジョプなどを通して外国人と関わっていくうちに,各国の文化の特徴や それが少なからず反映されている人たちのパーソナリティの傾向を体験しなが ら少しずつ理解し,いろいろな国の人々との接し方を覚えていったのである。 たとえば,日本人と会話をする時は,他の外国人よりも少し長めの聞を与えて, 待つことを心がけるなどである。もちろん個人差はあるが,相対的には各国の お国柄がかなり出るそうだ。 以上のような経験を積み,

T

e

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g

のための教材を収集しながら,

K

は修士 課程の同期の友人たちと企てて,プライベートのESLスクールを設立させた。 現状のUIやIEIで行われている ESL教育では補えない部分や,もっと外国人 のいろいろなニーズに応えることで,十分ビジネスチャンスがあると判断した からである。この時点では,教会や他の組織が行う無料英会話クラスは存在し たが,プライベートの英会話スクーノレとしての競争相手は実質ゼロの状態で あった。 このESLスクーノレの中心人物は, Kともう 1人Bという人物である。 Bが マーケテイング,会計,顧客管理などのマネジメント面を担当し, Kは,クラ ス編成や教材の準備などの

T

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a

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i

n

g

面を担当していた。もちろん,運営方針お よび先生の雇用や評価などは,上記の2人および他のメンバーも含めて話し合 いで意思決定されていた。

2

人の役割分担を含め,当初はうまくかみ合って,業 績を伸ばしつつあった。ある出来事が起こるまでは…。 Kい わ し も と も と ESL市場はまずまずのうまみがあった。なぜなら,イリ ノイ州があるミッドウエストと呼ばれる地域は,アジア系だけでなく南米系の 学生も多い地域であり,また,アメリカ圏内では,標準英語と言えば,東海岸 でも西海岸でもなく,ミッドウエストの英語を指していた。それと, UI自体が 外国人学生や外国人研究者を多く受け入れる大学でもあった。すなわち,顧客 層に外国人学生や研究者およびそれらの家族を含んでいること,および標準英

(7)

405 ありふれた企業家物語 -147 語を学ぶための短期ホームステイ先として最適地であることから,ここはまず まずのおいしい市場なのである。 さて,話を元に戻して,

K

のアイディアは,“英語"を武器に異文化交流の場 を創造していくものである。あらゆる国の人とのつながりは, K自身を成長さ せる機会でもあり,また大きなビジネスチャンスにつながることもある。とり あえず,この時点で, Kが用意した「場」は,以下のとおりである。 ・短期滞在者のための短期集中英会話クラス -外国人学生・研究者のための英語力向上クラス ・上記の学生あるいは研究者の家族を対象にしたクラス(子供を含む) .スピークテスト対策のクラス ・留学準備

(

T

O

E

F

L

)

のためのクラス ・外国で英語を教えている先生を再教育するためのプログラム .ホームステイの世話を含む留学プログラム 最後の「場」については, I I -20Jというビザ、を発行できる権利を州から付 与された場合,自分たちでビザを発行して短・中期ながらも学生を自由に獲得 できる,かなりうまみのあるプログラムである。 仲たが?い どこの国でも I心のすれ違い」から起こるわだかまりは,なかなか埋まらな いもののようだ。KとBたちは,TAなどで培ったノウハウに彼らの考えを反映 したスクールを開校した。始めたばかりのスクールでは,先述したように, K は学習教材の準備や先生の配置などのTeaching面を担当し, Bはマーケテイ ングや事務処理などのマネジメント面を担当していた。当初はこのツインタ ワーがうまく機能しスクールを支えていた。ところが,ある日突然,スクール は感情剥き出しの大洪水に襲われた。その原因は, Bが後にBのパートナーと なる人物の意見を尊重し, Kに何も相談せずに,全ての学習教材を別のものに (9 ) スピークテストとは,外国人学生がTAになるために,どうしてもパスしなければなら ない英語力を診断する試験である。

(8)

148 香川大学経済論叢 406 変更したからである。当然そのことについて激しい議論は交わされたが,とう とう折り合いがつかず, Kはそこを辞めることになった。 短い間ではあるがお互いの心に積もったこの「すれ違い」の原因は,大きく 分けて2つあったようだ。そのIつは,スクールのカルチャー(文化)につい ての考え方である。 Kは,クラス以外にもパーティーやピクニックなどを頻繁 に行って,先生と生徒の関係を「フレンドリー」にする方針があった。ところ が,一方のBはもっとビジネス志向で,そこまでべたべたする関係を好まず, さらりとした雰囲気を望んでいた。この考え方の違いは学習教材にも反映され ていた。 フレンドリー志向では,主に,実際に使用されている日常会話に関連する教 材を用い,一方,ビジネス志向では,

TOEFL

などのテスト対策の教材が使われ ることとなり, KとBとの聞に折り合うところがなくなっていったそうだ。 もう 1つは, BがKを含む他の仲間に相談なく勝手に意思決定をしたこと, および後のBのパートナーとなる人物の意見を尊重したことに, Kや他の仲間 が反発したのである。

K

はよく

rTeamJ

という言葉を使うが,この件について は,

rB

team

を壊した」とか

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メンバーを裏切った」と言っていた。残 念なことだが,この時のわだかまりは,2年後に怨念とも言える感情にまで育っ ていたのである。 逆 襲 結局,

K

はスクールを追われる形となった。スクーノレに残れなかった理由は, スクールを登記する際,

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r

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r

として

B

を銘記していたからである。どちら がスクールを出ていくかの議論になった時,

B

は自分が

D

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r

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r

だから,自分 の職位とそれにともなうパワーが優先すると言い張り,弁護士も交えた話し合 いの結果,

K

がスクールを出ることになり,それによって他のメンバーもスクー ルを辞めることになった。 その後もKは, Kが目指すスクーノレ構想、を実現すべく,いろいろな可能性を 探っていた。上記のような逆境に立たされでも, Kは,とことんまで考え,手

(9)

407 ありふれた企業家物語 149-ー 段を探しつくすことに奔走したそうだ。旧友,学生仲間や親戚をあたり,毎日 電話帳を離さず,少しでも良い情報があれば車で移動して交渉にあたったそう である。結果的に,資金は両親と親友から何とかかき集めてきた。場所はたま たま出ていた広告で見つけた。UIのキャンパスから 1ブロックだけ東へ離れて おり,立地条件は申し分ないところで部屋を借りた。その際,地主Tとの交渉 により好条件で

2

年間の賃貸契約を結んでトしまったのである。さあ,ここから が逆襲の始まりである。何とか部屋の内装も終わり,少しず、つ追撃態勢が整え られていった。 組織づくり ここ

WI

の組織は次のようである。

CEO

ならびに

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K

,オフィスオ ペレーティングマネジャー

(

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)

Tr

,マーケテイングマネジャーが

Z

,そ してアドバイザーとして筆者の小組織である。また,顧客数に応じて,クラス 担当の先生を雇用していた。たとえて言うなら,個人商庖あるいは企業の中の 小さい

1

つのチームのようなものである。開校当時は,

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o

r

K

OOM

のRのみであった。 もともと,

R

には夕方の英会話クラスを無料で受講する換わりに,

OOM

とし て手伝ってもらっていた。 Rはファイノレやスケジュール管理,授業料の回収お よび、接客を行っていた。 Kが言うには, Rの最大の魅力は, Rが接客したらほ ぼ100%の確率で顧客が入校していたことである。事実,とてもチャーミングで スマートである。ただ,後にKが言っていたのは,やはりお手伝い扱いなので, 「お願い」はできても「命令」を下すことはできないことから,

K

の仕事を委 譲しようにもできないこともあったそうだ。 新しい組織では,資金管理は

OOM

Tr

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K

が担当しており,会 計処理は,月に 1度,会計事務所に外注していた。スクール内では,何かアイ ディアが出れば, Kは気軽に

Tr

やZに相談をし,必要な情報や知識を共有して いた。また,

T

r

Z

もいろいろなアイディアを出し合って,インターラクティ ブに対話を行うことができる雰囲気があった。もちろん,雇用している先生方

(10)

-150ー 香川大学経済論議‘ 408 とも,授業の進め方や顧客の声のフィードパックなどについて,気兼ねするこ となく意見を交換できる場があった。 K,先生方および生徒聞の風通しもよく, 「フレンドリー」な組織文化の存在を感じることができた。 各自の担当業務については権限を委譲していたが,最終決定権限はKが持っ ていた。そのため,いろいろなアイディアを実行に移すまでに時間がかかりす ぎる傾向があった。その原因は,大きく分けて2つあった。 1つは, Kが全て の事項について最終的な意,思決定権限を持っていたこと,もう 1つは, TrやZ ならびに先生方の中にもクリエイティブな意見を提案することはあったが,勤 務外になってもそれらの提案をもとに創造的な活動を積極的に進めようとしな かったことである。これには,企業家と,それを支える人間との会社に対する 思い入れの違いが反映されているのであろう。 (資料1) WIの広告内容(1)

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ESL

市場を分析してみよう。競争 相手としては,

UI

所属の

I

E

I

B

EB

および地方大学の

PL

をあげることがで きる。これにもう 1つ,教会が主催する無料英会話クラスも加えておこう。イ ンタビュー調査による 1998年7月時点の顧客充足率という視点で,市場の勝ち 組みと負け組みをグループ分けすると,勝ち組みは

I

E

I

PL

,負け組みではな (10) 前述したように, WIの理念は,先生と生徒との関係を「フレンドリー」にすることで ある。そのため,たとえば,資料1のアクティビティやK宅でのポットラックパーティな どを頻繁に行っていた。

(11)

409 ありふれた企業家物語 -151 いが負け組みに近いのはWIとEB,そして負け組みは無料英会話クラスとな る。 何と言っても, UIへの留学を考える外国人にとっては, UI傘下のESLス クーノレである IEIへ行く方が情報収集という面や入学手続きの処理面に関して 有利であり,また,州を代表する大学に所属するESLスクールというネームブ ランドもあり,かなり良いESLスクー/レのイメージを学生が持っていること はインタビューの結果からもうかがえた。ただ,たとえば 1日4時間,週5 日のクラスの1ヶ月の授業料は, WIの月曜日から木曜日までの午前中3時間 のコースの約

4

倍である。 PLはカレッジと名のつくほどで, UI近辺からは少し離れているが,比較的 新しい建物や設備,さらにUIに比べれば外国人が入学しやすい状況などから 留学生を多く集めている。 後は,プライベート ESLスクールである WIゃ EBがそれらに続いている。 市場の構図 (パラサイト戦略) 市場内でのポジショニングを考えると,前述したように, WIは3,4番手で ある。なぜ勝ち組みに入ることができないかと言えば,規模という点を除けば, 基本戦略としてパラサイト戦略を取っていたからである。と言うよりも,市場 の構図上,パラサイト戦略しか取れなかったと言えるのかもしれない。 市場の構図とは, UIへの進学, PLから UIへの編入学およびUIあるいは PLを卒業後にアメリカで就職という外国人が辿る基本的な流れのことであ る。アメリカでキャリアを積みたい外国人は,最終的にUIへ入学したい願望が ある。そのためには, TOEFLや他のテストをパスするだけでなく,英語を使い こなす必要や文化に馴染む必要もある。また,誰か相談役を見つけておくこと も非常に重要であろう。そうなると, UI付・属のESLスクーノレは,留学準備とし ては一応打ってつけの場所となる。また,授業料が高すぎてIEIへ行くことはで きないけれども英語を勉強したい学生,ある技能を身につけて卒業後にアメリ

(12)

152 香川大学経済論叢 410 カで就職したい学生,さらには

PL

を卒業後

U

I

へ編入を考えている学生が

PL

へ集まっていた。 一方,

WI

は次のような構図の中に存在していた。それは,

UI

PL

へ外国 人学生や研究者が集まれば集まるほど,

WI

に対する需要も増加し,逆になれば 需要が減少するという構図である。そのため,

WI

U

I

PL

の状況を考慮し た,たとえば,

I

E

I

入学への準備や

PL

の授業の補足のためのプログラム,留学 生や研究者の家族向けのプログラム,外国人学生がTAになるために必要なス ピークテストをパスするためのプログラムおよび短期留学生用のプログラムな どを提供していた。すなわち,現状では, UIゃ

PL

にパラサイトする形でしか 顧客を獲得できない状況だ、ったのである。これについては,ある時点までは,

EB

も同じ市場構図の中にいた。 (フォロワー戦略) マーケティングに目を向けると,

WI

はあくまでもフォロワー戦略を取って いた。チラシの配布,ポスターの掲載ならびにホームページに至る全ての販促 手段は,

EB

が先手を打った後,それに続いて行うことがほとんどであった。そ の原因は r組織づくり」のところで説明したように,

WI

の行動速度が遅いこ と,および,たとえば,ポスターのデザインを現役の

PL

の学生に依頼するなど, 「手作り」の良さを追求しようとする反面,時間がかかってしまったことがあ げられる。また, Kも当分の聞はパラサイト戦略で凌ぐしかないことを自覚し ていたので,無理をする必要はないと感じていたことも戦略の決定に影響した であろう。 ただ,

WI

は「フレンドリー」志向を前面に,

EB

はプロフェッショナノレ志向 を前面に打ち出していたので,フォロワーでありながらも差別化は行われてい た。顧客の手に渡った時に,それが「フレンドリー」と映るか「うさん臭い」 あるいは「大丈夫かな?J と映るかは,日本人である筆者には微妙なところだ と思うことも何度かあったが,アメリカ人の考え方では,それらにはほとんど 差がないそうだ。

(13)

-153-ありふれた企業家物語 411 チラシに関しては,

WI

EB

も同じ戦術で配布していた。バイト学生を使っ て,刷り上がったチラシをアパート, UI, PLや飲食店などに配布していく方法 である。

WI

では,どの地域のチラシを見て入校したかを識別するために,チラ マーケティング調査に役立てていた。 シにコードをつけておいて, WIの広告内容(2) (資料2) Choose from over 35 classes!

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c

.

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絶頂期とはまさにこのことを言うのだろうか。

1

9

9

8

年のFallSemesterで は,午前中のクラスは全て満員パンク状態,午後も 2クラス満員の状況であっ

(14)

-154- 香川大学経済論議 412 た。

EB

I

E

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および

PL

の顧客充足率が横ばいか減少傾向だったのに対して, すさまじい勢いで顧客を吸い込んでしまった。顧客増員の大きな要因の

1

つは, 「口コミ」である。特に南米系の人たちの聞ではそうであった。スクールの組 織文化が「フレンドリー」であること,それが彼らにとって一番大事なことで あった。残りの要因としては,パンフレットやチラシの内容およびインタビュー でのKの好印象が多かった。パンフレツトやチラシには,フノレライン戦略(資 料

4

を参照せよ)を反映した内容を掲載していたので,その点が顧客にはうけ がよかったようである。 この時期,顧客の増加にともなって新しい先生を

5

人増員した。上記変化へ の対応である。誰でもいいか,というとそう言うわけではない。やはり,先生 の「質」が大変重要な競争優位のポイントになってくる。そこで, Kは優秀な 先生たちを見つけるため, UIの授業に出ている学生にそれとなく聞いてみた り,あるいは

K

U

I

の学生だ、ったので,教授たちともコミュニケーションがあ ることから,それも使いながら優秀な先生を集めていた。もちろん,各先生に とっての主な誘因は,高額の時給とやりがいのある「場」を与えられることで あった。 このような顧客数の変動に合わせて先生の数を調整する組織は,マネジメン ト側から見ればフレキシプルな組織であり,雇われ側から見れば不安定な組織 になるのであろうか。 フルライン戦時 下記の表は,

1

9

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のスケ ジュールから作成した

WI

の全プログラムの内容である。この表からわかるよ うに,

WI

は,

3

つの基本プログラムとして“

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を用意し,圧倒的に細かいニーズにまで応えるためにフルライン戦 略を取っていることは明らかである。この背景には,

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PL

EB

との差別 化を狙って,細かいニーズに応えようという意図や顧客にやさしい英語プログ ラム作りを、心がけたことがある。また,これらのプログラムは,経営理念であ

(15)

413 ありふれた企業家物語 -155-る 顧 客 へ の 「 フ レ ン ド リ ー 」 志 向 が 反 映 さ れ た も の で も あ っ た 。 一方,

EB

は , た と え ば , プ ロ グ ラ ム 名 や 内 容 の 一 部 を 模 倣 す る 形 で

WI

の 戦 略 へ の キ ャ ッ チ ア ッ プ を 行 い な が ら も , 提 供 す る プ ロ グ ラ ム を 絞 り 込 ん で い た 。 これは,経営方針がビジネス志向であること,および「切り札」を

EB

が 獲 得 し た か ら で あ る 。 そ の た め , 高 収 益 を 見 込 め る ク ラ ス だ け に 絞 り 込 む こ と が で き た の で あ る 。 ち な み に , そ の 切 り 札 と は , .1 -20Jのことである。 次 の 「 収 支 シ ス テ ム 」 の と こ ろ で 詳 し く 説 明 す る が , フ ル ラ イ ン 戦 略 と は 言 え , 各 ク ラ ス を 聞 く に は , 最 低 で も 生 徒 が3人 は 必 要 で あ る 。 し か も , 顧 客 で あ る 生 徒 の レ ベ ル が い つ も 同 じ と は 限 ら な い 。 と な る と , 必 要 人 数 が 揃 わ な い (資料4) WIのプログラム内容 プ ロ グ ラ ム 名 時 間 クラス数

Fu11-Time QUICK ST ART Program

I

3 hourB/day, 12hours/week 1 8 Part-Time Programs 11.5 houIB/day, 6 hours/week

Functional English 3 Conversation Skills 3 Conversation/Listening/Pronunciatior16 Classes 15 hours/day, 3 hours/week ConVersation Class 14 ListeningClass 10 Reading/Grammar/Vocab1llaIy 4 TOEFL 2-4 SPEAK Test preparation 2-4 Writer'sWorkshop 1 Children's Class 1-3 Teen's Class 1-3 Private Tutorials

O

o竺一 一 (ll) r 1 -20Jとは,語学留学のためのビザを独自に発行できる権利である。昔はイリノイ州 でも比較的簡単にr1 -20Jを取得できたが,最近は,州がその発行をほとんどしなくなっ ていた。その理由として,

K

は,昔に乱発しすぎた反動で今は取得が難しいと言っていた。 当然,この r1 -20Jの取得は, Kのアイディアを実現するために必要であり, BとKが まだ共同でスクールを経営していた時からの目標の lつであった。 そこで, Bはカリフォノレニア州にスクールの本庖を作り,カリフォ Jレニア州でr1 -20J を取得してしまったのである。ここイリノイ州のスクールは,支庖として登記し直され r 1 -20Jの恩恵を受けることができるようになった。

(16)

-156- 香川大学経済論叢 414 時はミックスレベルのクラスになってしまい,レベルの高い生徒にとってはあ まりおもしろいクラスにはならないかもしれない。また,それがもとで顧客離 れを引き起こすかもしれない。いかに生徒を確保するか,言いかえれば,いか

ω

にスループットを上げるかが問題となる。 収支システム WIの収支システムは次のようである。 1 . . 支 出 面 まず,支出面に関する説明をしていこう。支出項目の主なものは,給料,販 売費および一般管理費,水道光熱費,支払地代および交際費である。ここでは, 特に給料を詳しく取りあげることにする。最初に,給料の決め方を説明し,続 いて,標準的な先生の給料を実際に計算する。最後に,この節の3..で収益性分 析の資料として用いるため,給料に関わる各先生のクラスの担当の仕方を述べ ておく。

(

1

)

給料の決め方 先生方は,基本的に時間給制で雇用されている。時給は,各先生のランクに 応じて決定され,

2

0

$から

1

0

$の聞の時給がもうけられる。ランクの決め方は, 修士号の有無,経験および生徒からの評判の3つの要因による。この中で一番 重要な要因は,生徒からの評判による授業内容の「質」および生徒への対応の 仕方である。賃金交渉は,生徒からの評判などのフィードパックをもとに,契 約延長問題も含めて,基本的に月

l

回,

K

との話し合いで行われる。また,他 のプライベートスクールで働くことは禁止されている。 (2) 給料の計算例 ここでは標準的な先生の給料を計算してみよう。標準的な先生方とは,修士 (12) 本来スループット」の概念は,サプライチェーンを通過する材料,仕掛品,製品の 流れるスピード(リードタイム)によって増加する物量の速度を表している(今岡 1998, 169ページ)。ここでは,各クラスを並行して開くことと顧客数を同期化させることによ り,顧客充足率を高めるという意味で「スループット」を用いている。

(17)

415 ありふれた企業家物語 157ー または博士課程の学生, UIまたはPLの先生方,あるいはどこにも所属せずに 英語の先生を生業としている人が含まれている。彼らの収入は次のようになる。 たとえば 1日4時間,週 4回働くとすると 1週間当たり 4時間

x

4回=16 時間となる。これを 1ヶ月に換算すると, 16時間 X4=64時間となり, 1時間当 たり 20$の時給とすれば, 1ヶ月当たり 20

$

X64時間 =1,280$になる。アメ リカは日本と違って物価が安いので,賛沢をしなければ 1人なら十分暮らし ていける金額であり,また十分なお小遣いでもある。

(

3

)

クラス担当の仕方 クラスの担当の仕方は,基本的には,たとえば,英会話なら英会話,文法な ら文法のように,個別の項目ごとに1人の先生が受け持つしくみになっている。 もう少し具体的に言うと,たとえば,月曜1校時と木曜2校時のリスニングは

00

先生が担当し,月曜2校時と水曜1校時の文法は口口先生が担当するとい うしくみである。

2

. . 収 入 面 次に収入面をみていこう。各プログラムの価格は 1時間当たりの価格が基 本的に決められており,受講時間数が長い“

F

u

l

l

-

T

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プログラムでは,他の “

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a

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や“

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プログラムに比べると,時間あたりの価格はディス カウントされている。“

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1

時間当たり 20$,“

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プログラムは

1

ヶ月,約 420$,そして“

P

a

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-

t

i

m

e

"

プログラムは

1

ヶ月,約 235$である。受講料の支払回数は, 1回あるいは 2回払いとなっており,支払 手段はキャッシュのみである。

i

収 支 構 造 以上のことからも,収支構造はとてもシンプルである。制限事項は 1クラ スの定員が6人およびクラスをスタートさせるための最低人数が3人である。 前述したように,先生方は各コースの学習項目ごとに担当が変わっているとは 言え,簡単な収支予測は十分に可能である。資金が潤っている時は,上記のよ うな簡単な計算で予測がつくので,いわゆる「どんぶ、り勘定」あるいは「カン」 の経営も成り立っていたのである。

(18)

158 香川大学経済論叢 416 説明のために収益性を表にすると次のようになる(資料 5を参照せよ)。語句 を解説しておくと, i A M ClassesJとは,“Full-time"の“Quick Start Pro -gram"の午前のクラスのことであり,架空の先生としてW,X, YおよびZを 登場させる。それぞれの時給は,

2

0

$,

1

6

$,

1

2

$およびlO$である。また, 各先生方は, Advanced, IntermediateおよびBasicクラスの順に, 1週間単位 で, W先生は, 9時間, 3時間

o

時間, X先生は

o

時間, 6時間, 6時間, Y先生は 3時間 3時間 3時間,そして,

z

先生は

o

時間

o

時間 3 (資料5) く収益性の評価>(AM Classes) 先生/クラス Advanced Intermediate Basic W先生 15X6=9h叫 L5X2 = 3h (20 $/h) X先生 L5x4=6h L5x4=6h (16 $/h) Y先生 1引5x2=3h 1.5x2=3h 15x2=3h (12 $/h) Z先生 15x2=3h (10 $/h) 時間当たり 9x20+3x12 = 216 3x20+6x16+3x12 6x16+3x12+3x10 のコスト叫 216712 = 18 $/h = 192 = 162 192712 = 16 $/h 162712 = 13.5$/h 時間当たり 52 5 $/h 52.5$/h 52.5$/h の収益性" 時間当たり 52..5$/h-18$/h = 52.5$/h-16$/h = 52.5 $/h -13.5 $/h の利益額 34..5 $/h 36..5 $/h = 39 $/h (前提条件) .AMクラスは全部で3ク ラ ス と し 日3時間とする0 ・AMク ラ ス の 価 格 は ヶ 月 で1人420$とする。 ・各クラスとも定員が6人で満員だったとする。 コスト 12hx20$/h = 240$ 12hx16$/h = 192$ 9hx12$/h = 108$ 3hx10$/h = 30$ 240+ 192+ 108+30 = 570$ 570736 = 15 8 $/h 52.5 $/h 52. 5 $ /h -15 .8 $ /hI =36.7$/h

*

1) たとえば,W先生はAdvancedクラスを9時間担当しているが,この内訳は, 1コマが15時 間の授業を1週間で6回受け持ったためであり, 15時間/コマx6コ マ =9時間の計算とな る。 *2) r時間当たりのコストJの求め方は,たとえば, Advancedクラスでは,時給20$のW先生が 9時間働いたので, 9時間x20$/時 間 =180$となり,また,時給12$のY先生が3時間働い たので, 3時間x12$/時間=36$となり,合計で180$+36$= 216$となる。これを, 1週間 に行われるAdvancedクラスの時間数である12時間で割ると18$/hになる。 *3) (6人)x (1ヶ月420$/人)ム(4週間/1ヶ月)ム(12時間/1週間)= 52..5 $

(19)

417 ありふれた企業家物語 159-時間ずつ担当したとする。 たとえばAdvancedクラスでは, W先生が9時間, Y先生が3時間担当して いるので, Advancedクラスの総コストは,週単位で9時間X20$ + 3時間× 12 $ =216 $となり,時間当たりのコストは216$ -;-( 9時間+3時間)=18 $と なる。 Intermediateおよび Basicクラスについても同様にして{債を求めると, Intermediateクラスでは,時間当たりのコストは16$, Basicクラスでは13,5

s

となる。 時間当たりの収益性は次のようになる。まず 1人当たりの1ヶ月の価格が 420$であり, 1クラスの生徒数が6人なので, 420 $ X6人=2,520$となる。 次に,これを1時間当たりの収益に換算するため 1ヶ月は4週間なので,先 に求めた2,520$を4で割り, 1週間当たりの収益630$を求める。そして,各 クラスとも 1週間に 12時間行われているので,この630$を 12で割ると, 1時 間当たりの収益性は52..5$になる。 資料5からわかるように,各クラスを並行して聞くとともに,各クラス毎の 顧客充足率を高めなければ儲からないしくみとなっている。たとえば,上記の 例で,各クラスの生徒数が3人の場合を計算すると,生徒数が半分になるので, 各クラスの収益性も半分の2625

$

/

h

となり,時間当たりの貢献利益額が減少 し,固定費等の回収を考えると,スクーノレの経営は苦しい状況になる。 パイの減少 1998年 FallSemesterでの絶頂を最後に,売上はだんだんと尻すぼみになっ ていった。その主な原因は,アメリカ経済の好調によるドル高とアジアおよび 南米経済の停滞である。それが顕著に現れてきたのは1999年1月を過ぎたあた りからである。アメリカを訪れる外国人は増加傾向であるにもかかわらず, ド ル高のため,アメリカ国内では外国人が出費をできるだけ抑えようとする傾向 は強くなり,財布の紐が固くなった。

PL

の学部長の話では,この時期,

PL

の 学生数はFa

l

1

Semesterに比べて 30%減となったそうだ。 このように市場そのものの規模が減少している時には,まずは何としても,

(20)

160ー 香川大学経済論議 418 固定客の確保が非常に重要となってくる。そこで,

WI

は,次に説明する

HP

作 戦や

E

-

m

a

i

l

作戦を行うが,思うように顧客維持につなげることはできなかっ た。顧客の多くは,教会などで開かれている週1回の無料の英会話クラスで済 ませてしまったり,プライベートチューターに切り替えたりして,クラス授業 を希望する人がかなり減ってしまった。やはり,プライベートスクールの弱み は,あくまでも

UI

PL

への通過点あるいは友達作りの「場」なのであろうか。

E-mail

イ乍戦と

HP(Home Page)

作戦

(

E

-

m

a

i

l

作戦)

UI

に所属する各学部の各学科の秘書宛てに

e

-

m

a

i

l

を送り,売り込みをかけ た。

E

-

m

a

i

l

アドレスは,まず,

UI

のホームページから探し出し,さらに,複数 あるいは不明の場合は電話で確認しながら各アドレスを確定した。狙いは,認 知度を高めること,および既存のまだ掘り起こしていない顧客の創出であった。 各秘書には,

e

-

m

a

i

l

を各学科に所属する外国人留学生および、研究者へ転送して もらった。転送してもらう誘因として考案したのが「英語の会話力を無料で診 断するテスト」である。 実は,

E

-

m

a

i

l

作戦も先に

EB

が行ったそれへの対応という形で実行した。た だし,差別化をはかるために通常の広告に加えて,上述したテストの実施およ びその概要を通知した。これにより「来て見て感じてもらう」ことを狙った。 結果は狙いどおり,かなりのレスポンスがあれ無料テストを受けに来た人は 新規で30人程いた。しかし,残念なことに,それがそのままクラスの定員増に は結びつかなかった。プライベートチューターやスピークテスト用のクラスを 希望するものがわずかであった。後にそれとなくインタビューしてみると,要 因としては大きく分けて2つあり, 1つは,現在の母国の経済状態では,

WI

の 授業料でさえ割高に思えてしまい,物足りないかもしれないが無料の英会話ク ラスで済ませてしまうことであった。もう

1

つは,学生や研究者およびそれら の家族のスケジューノレと

WI

のクラス編成スケジューノレがどうしても合わない ことであった。

(21)

419 ありふれた企業家物語 -161

(HP

作戦)

E

-

m

a

i

l

作戦と同時に

HP(Home P

a

g

e

)

も公開に踏み切った。狙いは

3

つ あった。

1

つめは,

E

-

m

a

i

l

作戦と同様に,

HP

からクラスや

WI

そのものの雰 囲気を顧客につかんでもらうことにより,認知度の向上を狙った。 2つめは, 短期留学生の募集や海外の英語担当の先生方を再教育するプログラムの売り込 みを兼ねて,全世界の市場へ情報を開示するためである。そして 3つめは,残 念ながら

HP

の作成も,

EB

へのフォロワ一戦略の一環として取られた。ただ し,ここでも差別化として rフレンドリー」という組織文化を反映させるため,

HP

に は 授 業 中 や 談 笑 中 の 写 真 お よ び C .W.A. N..クラブ,ゴルフやパー ティー時の生徒が

r

E

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j

o

Y

J

している写真をふんだ、んに使った。後に聞くことに なったのだが,

EB

B

はこの

HP

をたいそう気に入らなかったそうだ。

B

のビ ジネススタイルとかけ離れていたからかもしれないし,あるいは,この

HP

か ら生徒たちの楽しさがにじみ出ていたのがわかったからかもしれない。 不 協 和 音

1

9

9

9

1

月は本当に寒い冬となった。おそらく,外気の華氏マイナス

4

0

度よ りも,ずっと…。まず,何と言っても,

Fal

1

S

e

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e

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t

e

r

に在籍していた顧客をほ とんど維持することができなかった。前述したように,プライベートスクール は,

UI

PL

へのステップアップの場となっている事実があり,また友人作り の場でもあった。さらに, ドル高による節約のため,外国人のほとんどは,プ ライベートスクールでお金を払って英語を学ぶよりも,無料で開放される教会 の

ESL

クラスへ行くようになった。たとえ教材や先生の質が多少劣るとして も,外国人にとって,彼らは英語を話すネイティブスピーカーなのである。 このような状況では,

BEP (

B

r

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k

Even P

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n

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)

ギリギリか,はっきり言え ば,続ければ続けるほど赤字になっていく。それは他の

I

E

I

EB

でも同じで あった。そのため,たとえば,レベル別のクラスを維持することが難しく,ミッ クスクラスを編成するなどの対応をしていた。ただ,プライベートスクールは (13) 資料lならびに注(10)を参照せよ。

(22)

162 香川大学経済論議‘ 420 パラサイト戦略のため,企業体質が弱く,だんだんと打つ手がなくなってきて いた。 顧客が減少すれば先生の数もいらなくなる。当たり前のことである。 WIの ようなフレキシブlレなシステムでは,変化に対応しやすいことは先述したとお りである。 SpringSemester開始当初は,いくぶんまだ定員増を見込んでレベ ル別のクラスをいくつか設けていたため,先生を数人,余分に抱えておく必要 があった。しかし,時が経つにつれて,各クラスを維持することが難しくなっ てきたため,クラスの統合を行っていった。これにともない,雇用確保の目的 から,各先生が担当する時間数を減らす方向で

K

と各先生方はこの市場の変化 に対応しようとした。たとえば r収支システム」のところで用いた例で説明す ると 3クラスを1クラスに統合し,さらに, W, X, YおよびZ先生のそれ ぞれの授業担当時間数を一律に3時間に変更し,各先生方の雇用を確保する方 法である。もちろん,先生方は仕事を失うかもしれない不安を抱きながらも, である。 Spring Semesterも半分くらい終了した頃に,各先生方も各自の将来を見据 えて,収入源を何かで補わなければならないと考え始めた。あるものは,プラ イベートチューターをKからまわしてもらったり, PLなどの授業の臨時パー トを行ったり,他のアルバイトをしたり,あるいは他のプライベートスクール へ移籍を考えたりと,将来を模索しなければならない時期になってしまった。 このような状況は,少しずつではあるが,

K

と先生方との聞に隙間風を吹かせ るようになっていた。たとえば,他のプライベートスクールへの移籍交渉を始 めたりなど,そういう会話がKのいないところで聞かれるようになった。 セイント T アメリカ経済は,依然好調にもかかわらず,ここイリノイ州アーパナ・シャ (14) 経験則として,次のようなものがあった。学生は, Semester開始の約1週間前ぐらい から履修手続きのため学校に現れる。したがって,広告などの効果は, Semester開始後, 約 1週間から 10日ぐらい経過してから表れ始め,その時期に問い合わせが殺到し顧客の 増員がかなり見込めるのである。

(23)

421 ありふれた企業家物語 163-ンペーンのESL市場に,アメリカ経済のような光明を見出すことは難しかっ た。しかも,

WI

の立地場所は,

U

I

近辺ではいわゆる一等地で家賃もばかにな らない。 1ヶ月,約1, 100 $の地代は,現在の収益状況から判断すると,非常に 苦しい支出である。さらに,賃貸の再契約がこの

5

月に行われる予定である。 地主である

T

が家賃を値上げしてくるのは間違いなしそうなると,スクール を維持することはますます難しくなる。 ところで,この

T

は,一代でアメリカンドリームのように財を築き上げた老 人である。かなり頑固だが,何かをがんばっている人を見ると昔の自分の姿が だぶるのか,何とか応援したいと思う一面も持つ人だそうだ。だから

2

年前, Kに対して好条件を提供してくれたと, Kは言っていた。そして,後にKの苦 しい状況を知った時,今度は

T

がセイント

T(

S

a

i

n

t

T

)

になったのである。 M

&

A 狭い土地ということもあるのかもしれないが,不協和音iや地主との事前交渉 などの話は,なぜか競争相手に知られてしまうものである。足元を見られた

WI

に, EBからM & Aの話が舞い込んだ。 EBの狙いは競争相手の減少および顧客 リストの獲得であった。なぜ、なら,

1

9

9

8

F

a

l

lS

e

m

e

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e

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での

WI

の大躍進に より,最も打撃を受けたのはEBだからである。ただ,EBにしても基本的には,

WI

と同じかそれ以上に苦しい状況であった。その違いは何であろうか。 その違いとは,大きく分けて次の3つであろう。

r

1

-

2

0

J

の有無 ・スクールへの情熱 • r怨念」とも言えるあの時のわだかまり まず,「

I-

2

0

」は,前述したように,留学ビザを発行できる権利であり,こ の留学プログラムの収益性が高いため,

B

は,スクーノレの方は少しぐらい赤字 になってもよいと考えたそうだ。BとKとのやり取りの中で,Bは

WI

を葬り去 るために,半年間,無料でクラスを解放すると言って脅しをかけてきたそうだ。 次に, Kも新しいビジネスのプロジェクトを立ち上げて,気持ちがそちらに

(24)

164- 香川大学経済論叢 422 傾きかけていたこともあり,スクールを維持することに対してだんだんと執着 しなくなったようだ。新プロジェクトと並行してスクールを開校させたいとも 考えたが,資金面の都合がつかないことやスクールを任せる人材を持っていな かったことから,手放すことを少しずつ考えていった。また,このし 3年, ほとんどプライベートの時聞を持つことができず,精神的な疲れが出たのかも しれない。 最後は,やはりあの時の「怨念」にも似た感情である。 KはM & Aの交渉過 程中も, EBのBに負けることに対しては,どうしても納得ができなかったよう である。だから,お互いがお互いの弁護士も交えて契約書を作り上げていった。 その時点では,

K

はいかに高く売りつけるかをいつも考えていた。それがささ やかながらも

B

への抵抗である。

K

が言うには,

K

のやり方や存在自体が

B

に は許されないものだそうだ。後に聞いた

K

の弁護士の言葉が印象的であった。 「まさか, KがBからお金をもらうとはね,信じられない」と。そして,契約 書にサインをしてWIの看板を下ろすことになった。 後日, WIの生徒には, 'WIは閉校することになり,継続手段としてEBへ行 くことを勧める」という内容の手紙が,

D

i

r

e

c

t

o

r

である

K

のサイン付きで, EB から送られてきた。これもまた, M & Aの契約条件の1つである。そして, K とEBの支庖の

D

i

r

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c

t

o

r

である

C

との話し合いで,先生たちの一部について は,生徒を連れてEBへ移籍させる配慮も見られた。 希望のひかり イリノイ州アーパナ・シャンペーンに存在する ESLスクーノレとしての市場 は,限られたものである。では,限られないESL市場とはどのようなもので, どこに存在しているのだろうか。まさししそれがオンラインビジネスであり, これにより,全世界を相手にできるビジネスへと変身するのである。つまり, インターネットを通して英語を学習する機会を提供するしかけである。これな ら,既存のテープや

CD

学習よりも,また,アメリカへ行かなくても生の英語に 接する機会が増大することになる。しかも,インターネットだから安価である。

(25)

423 ありふれた企業家物語 -165-たとえば,インターネット TVを利用した双方向コミュニケーションやオンラ イン上での英語学習である。 もう 1つの大きな市場は,英語の先生を再教育するプログラムである。どこ の国でも,小,中および高校の英語を担当している先生方で実際に英語を流暢 に話せる人は少ないであろう。そのような英語の先生を再教育するプログラム およびそのための教材不足は明らかである。 このような上記

2

つのプロジェクトに関するアイディア,経験および教材資 料の所有の点で, Kは競争優位を持っていた。そこで,まず, Kのアイディア を実現化させるため,セントルイスのコンピューター会担との提携を模索し, 続いて,UIゃ PLと上記のプロジェクトの共同開発ならびにそのマネジメント 提携を進めようとした。 一方,スクールについては1つ面白い話があった。あの地主のTがEBとの M & Aの話に立ち会った時,今までの半額で賃貸契約をしてもよいと言い出し たそうだ。彼の性分によるものだと思うが,がんばっているけれども困ってい る人を放っておけなかったようで,その時のことを

K

'T

がセイントに見え た」と何度もユーモアを交えて話してくれた。コスト視点から判断すれば,ス クーノレを並行して開校することは不可能ではなかったし,新しい名前で得意分 野に絞り込んでスクールを創立させるプランもあった。 最終的に,スクールの方は一時的に撤退することにし,現在Kは, PLで上述 した

2

つのプロジェクトを進めるため,各国の小,中,高および大学との提携 を行うプロモーターとしてその能力を発揮しているのである。 アカウンティング(会計)の響き アカウンティング(会計)という言葉が奏でるメロディーは,とてもマイナー な響きのようです。それは,どうも万国共通のようです。会計をちょっとでも かじったことのある人に聞くと,みんな顔をしかめてしまう。アカウンティン グと言うと,すぐ「簿記」や「会計学」を連想して嫌がる人が多いようです。 それは,どちらかと言えば財務会計や税務会計の内容が中心であり,マネジメ

(26)

-166ー 香川大学経済論叢 424 ントに役立つ情報を提供するために会計システムを使ったり,会計情報を加工 および翻訳して利用することにより,人々を動機づけ,創発行動を促すことに は目が向かないようです。会計情報を活用することによって,確かに組織を活 性化させることができるのです。 ここ

WI

では,会計処理については会計事務所に外注していた。

K

にとって必 要なことは,今,手元にいくらあり,請求書の支払いのためにいくらの資金を 都合しなければならないかを知ることで十分であった。頭の中ではあったよう だが,周到な利益計画はなく,また,将来を見据えた投資資金計画もなかった。 行った改革は,まず、,収支構造のしくみを「カン」ではなく数字で表すよう にした。次に,それをもとに世界進出を脱んだ中期計画を立案し,実行に移し た。そして,請求書の管理とキャッシュフローの把握を行うシステムを構築し た。これにより,運転資金の明確な把握ができるようになった。広告に関して は予算に対する効果分析を行った。 上述した請求書管理やキャッシュフローの把握などのシステムを含めて,全 体システムとしては,まず,今までカードで管理していた顧客名簿のデータを, マイクロソフト社の

E

x

c

e

l

を用いてデータベース化し,次に,それといくつか のサブシステムや週毎あるいは月毎の財務諸表をリンクさせた。これにより, 顧客データや種々の必要なデータを打ち込むだけで,キャッシュフロー,損益 計算書,貸借対照表,授業料の支払いチェックや個人データの管理などを行う ことができるようになった。結果的に,小さい組織ではあるが, トップマネジ メントは日常的な意思、決定への時間配分を削減し,戦略的な意思決定に時間を 費やすことができるようになったのである。また,いつでも瞬時にキャッシュ フローや請求書の管理を行うことができるので,OOMである Trも組織内の管 理がしやすくなれ余剰時間を授業の準備等へ使うことができるようになった。 一方,上記の改革に対する粘織内の動揺は,大きく分けて3つあった。まず, 先生方が書類様式の変更に戸惑いを見せていた。コンピューターヘデータを入 (15) 詳しくは,谷・宮脇 (1996),谷・三矢 (1998),三矢 (1997) および宮脇 (1997/98) を参照せよ。

(27)

425 ありふれた企業家物語 -167 -力するため,書類の様式を少し変更したのである。慣れ親しんだものからの変 更は一時的に苦痛をともなうものである。また,年配の先生の中には,コン ピューターで書類を処理することに対しても戸惑いを見せていた。次に,雇用 契約の若干の変更にともなう戸惑いも見られた。これは,労働規定の改定によ り,雇用契約の一部分を変更したからである。その変更により,時給が下がる のではないか,あるいは税金対策をどうしたらよいのかなどの不安が先生方の 聞で起こったのである。最後に,コンピューター導入によるシステム化自体に 対して rフレンドリー」を理念とする組織文化が崩れるのではないかという不 安があった。 最初の2点については,従業員教育の一環として Kから詳しい説明があり, 以前と何も変わらないことが繰り返しミーティングの中で伝えられた。それに より,先生方の戸惑いは消えていった。最後の点については,前述した総合シ ステムに先生方のデータベースおよび給与計算システムをリンクしており,先 生方が自己申告する書類のチェックや,その時々の各自の給料がいくらなのか, そしてそれがいつ支払われて,未払い部分はいつ支払ってもらえるのかなどの 情報を各自がコンピューターから簡単に取り出せるようになっていた。システ ム導入当初は,先生方もシステマティックに管理されるかもしれないという不 安を持っていたようだが,逆にコンピュータ}の導入やプロセスの簡素化によ り,以前よりも事務作業が削減され,授業の準備や生徒との談笑に時間を割く ことができるようになった。また,システムの導入後も,

K

と先生方,また各 先生方と生徒間のインターラクションは以前と変わらず,いやそれ以上に活発 に行われていた。 川 お わ り に エスノグラファーとして,あるいは臨床家として,あるベンチャー企業が辿 (16) フィーノレドワークを行ってエスノグラフィーを作成する研究者または調査人をエスノ グラファーと呼ぶ。

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168 香川│大学経済論叢 426 る進化の過程を述べてきた。このエスノグラフィーから読み取れることは,革 新を目指す小組織を支えるビジネスシステムとは,-組織構造一管理システム 一個人」の3つの要素が常にインターラクティブに作用し,環境に対してただ 単に適応していくのではなく,進化していくしくみである。そこには,散発的 なイノベーションではなく,継続的な改善の線上にありながらも,それらとは 少し異なる要素が必要である。それは,常に新しいものを創り出そうとする場 の中で,新しい意味を見出し,与え,そこに新しい意義を見つけ出し,新しい ものに進化させていく試みであり,挑戦である。 これほど研究対象の近くで,また対話に近い形でデータを収集できることは, これから先もうないのかもしれない。それくらい,このフィーノレドワークは貴 重なものだった。ただ,もしかしたら,一瞬,あるいはある時期,研究者とし て対象を観察する立場を逸脱したことがあるかもしれない。たとえば,子供と 大人のコミュニケーションの一場面であるプラモデル作りを考えてみよう。大 人が子供のプラモデル作りを手伝うことは簡単である。まして,大人が作って しまいそれを子供に与えるのは,もっと簡単である。しかし,創作過程で得ら れる子供の「楽しみJ,,-考える力」や「創造力」を育てることはできなくなる であろう。時には,ただじっと見守ってやることが重要なのは言うまでもない。 でも,うまくいかないのを見ていると,つい手を差し伸べたくなるのが人の性 (さが)である。そこのところのバランスは,研究者が研究対象に接する時に, 常に意識しなければならないものでもある。 さて,本稿のエスノグラフィーを含めて,現在調査中のアメリカ企業3社の フィーノレドワークは,革新的企業を目指す中小企業のビジネスシステムの探求 が目的である。その視点の1つは,Johnson(1992)へのアンチテーゼ、から始まっ たものであり,財務会計基準に縛られたスタッフ主導のリモートコントロール (17) 金井 (1989)では,たとえば,研究者が臨床家(コンサルタント)としてクライアント に接する時,臨床家がクライアントに戦略作成のプロセスではなしその内容にまで入り 込んでコンサルティングをすれば,臨床家である研究者は,もはや臨床家ではなしまた, エスノグラファーに戻ることもできず,研究者としての立場をかなりの程度まで破棄し てしまう可能性について言及している(金井 1989, 65-6ページ)。

参照

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