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管理会計情報によるTQMの活性化--エンパワーメント型の活用を求めて---香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

管理会計情報による

TQM

の活性化

一一エンパワーメント型の活用を求めて一一

宮 脇 秀 貴

は じ め に 近年,アメリカ企業は,

TQM

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を旗印に業績を 改善している(狩野他

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,日経ビジネス

1998/3/9)

。この

TQM

は, 現場の小集団活動である

QC

サークルとは異なり, トップからボトムまでを巻 き込む企業一体となった活動である。また,激変する企業環境やますます加速 する技術革新のもとで競争優位を獲得するには,企業トップの方針と現場のリ アクションの素早さとのリンケージが強く求められている。そのため,特に現 場には単なる権限委譲や分権化をこえたエンパワーメントが必要とされている (宮脇

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,品質管理

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,谷・宮脇

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。このような状況の中で,

TQM

を掲げエンパワーメントを推進する企業は,組織構造の変革をともなう 組織変革を迫られている。その主なもののlつは, トップ・マネジメントとロ ワー・マネジメントに挟まれたミドル・マネジメントの役割であろう。 ミドル・マネジメントは,従来, トップが設定した方針や計画を部下に伝達 し,また現場からの反応を集約し上にあげるという役割を担っていた。ところ が,組織を活性化し,余剰人員を活用するために組織階層をフラット化し,さ らに,市場に素早く反応し組織成員の創造性を引きだすために組織をチーム化 することにより,特にミドル・マネジメントに対する役割期待が変化している。 ミドル・マネジメントは,組織の活性化のためにトップから大幅に権限が委譲 され,重要な意思決定を担うようになった。この中で,ミドル・マネジメント の役割期待は,従来の情報伝達型から,変革型あるいは創造型のミドル・マネ ジメントへ,ますますそのウエイトがシフトすることになった。また,この傾

(2)

-212- 香川大学経済論叢 406

向が強まれば,ミドル・マネジメントだけでなく,チーム組織をマネジメント するロワー・マネジメントにもその役割が必要になってくるものと考えられる。 以上のような組織成員の創造性を引き出すTQMを掲げ,組織階層をフラッ ト化し,チーム組織化を行なう企業では,どのように管理会計情報は活用され るのだろうか。.Johnson & Kaplan (1987)は,事業部制組織の登場以降,管理 会計の革新が起こっていないことを指摘している。また,

J

ohnson (1992)は, 競争力獲得のためにはボトムアップ・エンパワーメントを行ない,現場のオペ レーションから会計情報を排除し, TQMを用いて組織成員の創造性と信頼関 係を築くことが重要であると述べている。しかし,それは,現場で,会計スタッ プが提供するトップダウン・リモートコントローノレ型の会計情報の排除を主張 するにすぎないと考えられる(宮脇 1996a・b,谷・宮脇 1996)。たとえば,Cooper (1995) で紹介されている京セラのアミーパ経営のケースなど,現場の活性化 のために会計情報を従来とは異なる方法で活用しているものもあ

2

。 本稿では,管理会計情報が,組織文化とともに魁織構造の変革を求める TQM をどのように活性化させているかについて考察していく。従来,クオリティマ ネジメントの推進には会計情報は有用ではないといわれてきた。ところが, TQM活 動 の 全 て が う ま く い っ て い る わ け で は な い こ と か ら も (Powell 1995),会計情報を活用することにより,クオリティマネジメントが効果的に行 なわれる可能性があるかもしれない(Shea& Kleinsorge1994)。 以下では,まず,管理会計のレリパンスロストと組織構造との関連から,管 理会計システムへの要請を提言する。次に,管理会計システムが主な役割を担 うコストマネジメントと TQMとの関連を,ケース分析をまじえながら検討す る。最後に,エンパワーメント型の管理会計情報の要件を論じることにする。 (1) その他には,たとえば,アイシン精機(日経情報ストラテジー 1997/6),村田製作所 (日経ビジネス 1997/10/30),NEC東北(工場管理 1997),NEC埼玉(谷・三矢 1998) などがある。

(3)

日管理会計システムへの要請 管理会計システムは,企業の組織構造にそって,主要なマネジメントコント ところが,現代企業の紙織構造は,従来の管理 ロールの機能を果たしている。 そのことが また, 会計システムが前提としていたものとは異なってきており, 管理会計のレリパンス・ロストを引き起こした要因になっていることからも, マネジメントコントロール・システムとしての管理会計システムを検討してお く必要がある。 以下では,まず, Johnsonの見解をもとに,管理会計のレリパンス・ロストを 整理する。続いて,主にJohnson & Kaplan (1987)から,組織構造と管理会 計情報との関連を必要な限りで整理しておく。最後に,組織構造とマネジメン トコントロール・システムとしての管理会計システムとの関係を再検討してお i 1 i l i -? i i l i ; i l i i p T e i b こう。 レリパンス・ロストへのジョンソンの見解 の『レリパンス・ロスト』では, Johnsonは,当 アメリカ製造企業の競争力低下の主な原因を管理会計のレリパンス・ロス トに求め,管理会計の再構築をはかろうとしていた。ところが,その後~.レリ

Johnson & Kaplan (1987)

初, パンス・リゲインド』のなかで,競争力回復の方法として, モートコントロールの

1

つの手段である会計コントロールを,現場のコント トップダウン・リ ボトムアップ・エンパワーメントを行なうという見解に転 ローJレから排除し, じた。 その理由として,現場への会計コントロールの適用は,部分最適を招いてお アメリカ企業が競争力を維持し,収益力を高めるためには,組織成 員の創造性を喚起して,顧客満足を得るよう動機づけることが重要と考えてい このためには,数値結果を管理することではなく,数値結果に また, り, るからである。 いたるプロセスそのものを管理することが重要としている。 彼は,

TQM

により組織成員の創造性を高めるとともに信頼関係を築き,

JIT

(4)

408 香川大学経済論叢 -214ー ボトムアップ・エンパワーメントを により作業の流れを簡素化・合理化して, はかるべきであるとしている。 たしかに,

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のいうように,組織を活性化させるためには,現場をエ しかし,問題は,現場のエンパワーメントに ンパワーすることが必要である。 この点を明らかにするため ということである。 会計情報が活用できないのか, に,図表

1

を用いて,

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のいう会計コントロールを再検討しておく必要 がある。 (図表1) グローバル時代 1990年代 適合性喪失の暗黒時代 1950-1980年代 産業時代 1800-1950年 d与 ミi ;z:;;日i 会計(ABCで修正した) 非会計(顧客・プロセス) 計 計 計 ム 胃 ム 首 会 A 会計 非会計 非会計 会社大綱・財務計画 マーケティング・調達方針の意思決定 諸個人とその下部組織のコントロール

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(1992)

p..19訳 20ページ。 図表

1

に引用したように,

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は,予算編成に代表される総合計画の設 定には会計の有用性を認めているとともに,マーケティングや調達の意思決定 に

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の適用を考慮している。 また,部門のコントロールには予算が有用であり, する予算コントロールは,欠かせないと考えられる(谷・宮脇 1996,129-30ペー ミドル・マネジメントに対 (出所) ジ)。問題は,現場のオペレーションへの会計コントロールの適用である。たし トップダウン・リモートコントロ._}レという意 会計スタッ これを会計情報として要約し提供していた のでは,現場はタイムリーなアクションを自発的に起こせないからである。 かに,

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のいうように, 味では会計コントロールは有用ではないかもしれない。なぜなら, フが現場の会計データを収集して, トップダウン・リモートコントロール以外の管理会計情報の利 用方法の検討余地は大きいと考えられる。たとえば,現場をエンパワーするた したがって,

(5)

めに会計情報を彼らに利用させるという方法が検討されている(宮脇 1996 b, 谷 ・ 宮 脇 1996, 宮 脇 1997)。 2 .管理会計システムと組織構造 今日の激変する企業環境では, トップだけでなく現場も企業全体を考え,自 発的に素早くアクションを引き起こすことが要求されている。そのため,企業 の組織構造も,組織階層を少なくしたフラット化へ,そしてチーム組織へと進 んでいる(奥林他 1994,加護野 1997)。つまり,このような組織構造は,これ まで管理会計が前提としてきたものとは異なっているのである。以下では,ま ず,これまでの組織構造と管理会計情報との関連を,主にJohnson

&

Kaplan

(1987)をもとに要約し,続いて新しい組織構造のもとでの管理会計システムへ の要請を考察していこう。

(1)組織構造と管理会計情報

J ohnson

&

Kaplan (1987)および、Johnson (1992)をもとに,組織構造と管 理会計情報との関連を簡単にまとめると図表2のようになるであろう。 1950年代以前の製品品種も少なし資本・労働市場の未発達な企業環境では, 責任・権限関係が明確な組織構造のもと, トップは,企業全体の意思決定のた めに管理会計情報を活用し,現場は非財務数値にもとづき与えられた目標を達 成することが主な業務であった。 ところが, 1950年頃以降は,特に個人ならびに下部組織のコントロールのた めにROIや短期の利益業績を測定尺度に利用する傾向が強まった。(Johnson 1992, p..18)。なぜなら,資本(株式)市場の発達により,短期財務業績に対す る圧力が増大したからである。この圧力を受けて,現場の管理者は,短期財務 (2 ) 他には,次の 2つをあげている(Johnson& Kaplan 1987, pp引 202-3)。 -上級管理者の多くがR&Dあるいはプロセスエンジニアの出身ではなく財務・会計出 身であることも,財務会計数値への偏重を助長した。 ・労働市場の発達により管理者の移動性が高くなり会社に強くコミットメントすること が低くなっていることも,数値結果の重視に向かわせた。

(6)

-216- 香川大学経済論叢 410

目的の達成のためには種々の方法があることをしだ、いに学習していったのであ る(Johnson

&

Kaplan 1987, ppれ196-7)。 たとえば,会計慣習の変更,資金の このような管理会計情報の活用 運用および自由裁量支出を減らすなどである。 は,組織成員の自発性や創造性を導くことはなかったのである。 (図表 2) 年代項/目I ,おの よび 主な尺度 企業所有者の経歴 製品品種数 会計情報利用の主なねらい 技術革新 不確実性 一化プ)ロ経セ済ス活型動生の産効(単率 -加時当工間た費 'R&D 少ない 諸部労活下働動者の管の(内理報部者奨工の程業)績の効を評率価と能率 1880 またはポンドりコスト -プロセスエンジニア 低い 1880 -合理法 標 時R準間O・動作研究) -プロセスエンジニア'R&D 少ない -・.工垂諸程直活統動の能合へ率企の評業資価本の調配整分 1920 低い 1920織権的な事業部制組分 'ROI - 複数 -・資事本業部の配長分の業績評価 -振替価格 1950 -マーケティング 低い 1950織分権的な事業部制組 -四半期の利益業績• RO 1 -・財会務計 多種多様 -個人ならびに下部組織のコント-) -マーケティング 高い (2) 管理会計情報への要請 現場が企業のビジョンをもとに自発的に素早くアクションを引き起こし,環 境へ対応することを要求されている企業では,組織構造はフラット化,そして チーム組織へと変化している。 このような組織構造のもとでは, Johnsonがい うよう』こ, トップダウン・リモートコントロール型の管理会計J情報は有用では ないかもしれない。 たとえば,前述したように財務会計情報を管理会計情報に援用し活用するこ とは,財務会計上の利益を捻出する行動に向かわせたともいえる(Johnson

&

Kaplan 1987

pp.. 138-9)

というのも,事業部制という大きい組織単位では, 財務会計基準にもとづ、いた管理会計システム上の利益を獲得するため,管理者 は会計方針の変更,証券の売却あるいは在庫を考えずに操業度をあげるなど, 本業以外のさまざまな手段を講じることができるのである。つまり,会計スタッ

(7)

フ主導の,財務会計基準に縛られたトップダウン・リモートコントロール型の 管理会計情報では,現場の創造的かつ自発的なアクションを促進させることが できないのである。 以上のように,紙織の活性化,つまり,本業の改善あるいはイノベーション による業績を向上させる手段として,組織構造の変革が求められているととも に, トップダウン・リモートコントローノレ型ではない,また財務会計基準に縛 られない管理会計情報が重要となっている。 3. 組織構造とマネジメントコントロール・システム (3)

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通常,組織構造とマネジメントコントローノレ・システムとの関係は,コンテイ ンジェンシー理論からは,環境に組織構造を適合させ,さらに組織構造にマネ ジメントコントロール・システムを適合させることが有効であると考えられて (4) いる。したがって,競争

4

憂位を獲得するため現場の自発的なアクションが必要 とされるなかでは,組織のフラット化さらにはチーム単位での活動を促進させ る組織構造への変化は, トップダウン・リモートコントロールとしてのマネジ メントコントロール・システムではなく,現場の自発的な素早いリアクション (5) を引き起こすマネジメントコントロール・システムを必要としている。 このようなマネジメントコントロール・システムとしての管理会計システム ( 3) Anthony (1988)は,企業の経営活動を戦略的計画,マネジメントコントロールおよびタ スクコントロールの3つに分類し,マネジメントコントロールについて r組織の戦略を 実施するために管理者が低織の他の構成員に対して影響を及ぽすプロセス」と述べてい る(p..10)

(4 ) 谷(1987)は,マネジメントコントロール・システムを組織の相互依存性の管理の観点か ら捉えるため,システムの機能を「分化した相互依存的な組織単位から統合的な行動パ ターンを引き出す」という統合機能として規定することにより,組織構造および組織プロ セスならびにマネジメントコントロール・システムが統合的に機能することを指摘して いる(19-21ページ)。 (5 ) 谷 (1989,90 a • b, 91)は,組織構造からマネジメントコントロール・システムへの 一方向の作用だけではなく,マネジメントコントロール・システムが組織構造あるいは戦 略に作用することを指摘している。つまり,組織構造とマホジメントコントロール・シス テムとの適合は相互に作用して決まってくるということである。したがって,現場のエン パワーメントを引き起こすマネジメントコントロ'-1レ・システムは,顧客や環境への素早 いリアクションを起こすために必要な組織構造を要求しているともいえるであろう。

(8)

412 香川大学経済論叢 -218 には,従来のように与えられた目標を組織成員に伝達し,動機づけ,評価する というトップダウン型の情報だけでなく,ボトムアップあるいはエンパワーメ (6) ントを促進するための情報も求められている。 そこで, 次節では, マネジメン トコントロール・システムとしての管理会計システムが主要な役割を担うコス それがクオリティマネジメントを促進できるか否 トマネジメントをとりあげ, かを検討しながら,

TQM

を掲げエンパワーメントを行なっている企業が,どの ように組織をマネジメントコントロールしているかを考察していこう。 1 4 P i l l i -f l

111 コストマネジメントと TQM クオリティマネジメントに役立たないといわれて コスト情報の提供の遅さと現場で活用できるように加 工されていなかったためである(.Johnson

&

Kaplan 1987, Juran 1992)。

コスト情報は, きた。その主な原因は, 一般的に, これ への対応の1つとして,品質原価計算をあげることができるが,品質原価を測 (小林 定し評価する会計システムの整備は, 1993)。もっとシンプルな他の方法で,クオリティマネジメントに会計情報を活 ほとんど進んでいないといえる コストマネジメントと

TQM

との 用することはできないだろうか。以下では, それを探っていこう。 関係から, 1 .クオリティマネジメントとコストマネジメント クオリティを高めることにより,生産性が向 クオリティマネジメントとは, 上し,コストが下がるという一連のサイクルをいうの

eming

1986, pp“1-3)。た クオリティが向上すると補修の減少や納期の厳 とえば,次の図表

3

のように, (6 ) たとえば, Dent (1990)やOtley(1994)は,マネジメントコントロールについて,こ れまでの戦略の実施をコントロールする役割だけでなく,戦略の創発を促す役割も必要 であると述べている。また, Simons (1987, 1990, 1995)は,有機的組織で, トップが 戦略の方向づけや戦略の創発のために現場にかかわっていくというインターラクティ プ・コントロールを発見している。それを発展させた谷(1989,1990 a ・b,1991)の研 究については,注(5 )を参照のこと。

(9)

219-ー 管理会計情報によるTQMの活性化 413 それにともなってコストが下がると同時に生産性も向上し,製品のク 守など, オリティと低価格で競争優位を獲得できるというものである。 (図表3) クオリティ改善→コスト低減→生産性向上→競争優位獲得→競争優位維持→仕事の増大とプライドを ・補修の減少 ・より良い品質 もって仕事にとり組む ・作業ミスの減少 ・低価格 -納期遅れの減少 ・機械と材料の有効利用

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-Deming(1986), p.3 (出所)

ストコントロール,物量コントロールおよび納期コントロールという 3つの要 素が同時に行なわれなければならない

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1985, p..91)。特にコストに関 コストがわからないと改善活動が有効に機能しなくなる。なぜなら, コストをうまくマネジメントしているからこそ,改善アクションの結果を理解 しては, コストマネジメントは, できるからである

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1985, p.. 92)。すなわち,

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・ クオリティを中心に置くものの, このようなクオリティマネジメントは, クオリティマネジメントの実行には不可欠の要素なのである。 2. TQMとは (1) TQMの概念

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~ 従来のTQCが製品のクオリティの向上を主な目的としていたのに対して, TQMは,経営のクオリティの向上をめざすものである。そこで,本稿では, TQMの概念を次のように捉えることにする。 TQMとは r企業目的を継続的 (7) クオリティとは,製品の品質という狭義に解するのではなしたとえば,仕事の質,サー ビスの質,工程の質,部門の質,作業者・技術者・管理者・経営者の質という人の質,シ ステムの質,会社の質,方針の質などの広義の質を指して用いることにする(石川 1984, 61-2ページ:能見1995,277-9ページ)。 (8 ) 谷津 (1994)は, TQCとTQMの違いについて,次の点をあげている。 ・ことばのニュアンス TQCでは,管理(control)ということばのもつ暗いニュアンスにより rやらされてい る」つらい活動というイメージがある。

(10)

220- 香川大学経済論叢

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1

4

に実現するために,仕事のクオリティを高める体系的な管理活動であり,仕事 のできばえとして,顧客・社会の満足度をとり, これを管理目的の軸とすると ともに,改善活動へ全員が参画することで組織成員の活性化を図ること」であ (9) る(谷津

1

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(

一部修正))。 -計画という機能の概念の変化 TQCでは,与えられた目標や方針をいかに実現,実施するかという計画が重視されて きたが, TQMでは rいま何をすべきか」という計画をも重視する必要がある。 ・顧客満足に対する考え方 TQCでは,顧客の満足度を下げない活動が中心であり,TQMでは,顧客満足を獲得す る活動が中心となる。 • Qua!ityの怠味 TQC‘では,クオリティを「製品の品質」と捉えてきたが,TQMでは,広義のクオリティ として捉えている(注(7)参照)。 (9 ) 主なTQMの エ レ メ ン ト は , 以 下 の と お り で あ る(Ishikawa1985, Deming 1986, Juran1989, 1992)

① 顧 客 満 足 ② クオリティを最重要視 ③ トップを含む上級管理者のコミットメント ④企業の長期ビジョンの必要性 ⑤組織成員のエンパワーメント ⑥ 継 続 的 改 善 ⑦ 組 織 学 習 ⑧ クロスファンクショナノレ・マネジメント 以下では各項目を簡単に説明しておく。 ①の顧客満足とは,企業中心ではなく顧客を中心にマネジメントを行なっていくこと である。市場はプロダクト・アウトではなくマーケット・イン志向で動いており,企業は 顧客のニーズを満たし,さらに利益をいかに獲得するかが重要となっている。そのため, トップは長期的なビジョンを掲げ,リーダーシツプを発揮するとともに,組織内外のコラ ボレーションを推進する必要がある。特に,組織内では,各組織単位を別のセクションと いう見方から内部顧客という見方に変えなければならない。 ②のクオリティの最重要視とは,クオリティをトップ・プライオリティに置くことを意 味している。すなわち,クオリティを中心にマネジメントを行なうことである。しかし, 本文で述べたように,クオリティマネジメントはコストマネジメント,物量コントロール および納期コントロールと相互に作用する関係から,クオリティ,コストおよび納期など を同時に考えていくマネジメントであると言い換えることができる。そして,トップの強 いコミットメント,組織成長の教育tや訓練などにより,このようなクオリティ重視の考え 方が組織に浸透していくことになる。 ③の上級管理者のコミットメントとは,TQMの推進のためには上級管理者の継続的な コミットメントが必要であることを意味している。たとえば,クオリティの改善は現場の QCサークルだけの資任ではなく,上級管理者のプロセス設計に関する意思決定など,現 場の権限や能力を超えるものが少なくない。つまり,上級管理者がリーダーシップを発揮 し,現場と一体となってクオリティマネジメントを進めていかなければならない。その時

(11)

→ (2) 経営のクオリティとは 経営のクオリティとは,仕事のクオリティという観点、から,アウトプットの クオリティとプロセスのクオリティに分けられる(谷津 1994,58-9ページ)。 谷津 (1994) は,これら 2つのクオリティを図表 4を用いて説明している。以 下では,アウトプットだけでなく管理会計システムの構築にも強い影響を与え の指針が,クオリティ重視の考え方を反映した長期的なビジョンである。 ④の長期ビジョンの必要性とは,企業のあり方や顧客への対応の仕方など,短期的な目 標ではなく企業の長期的な目標の決定の必要性を意味している。企業の長期的なビジョ ンは,トップの意向を反映した企業の方向性を示すとともに,組織成員の行動指針となっ ている。この行動指針があるからこそ,組織成員は命令されたことを忠実に行なうという 態度ではなく,自発的に創造的な活動を行なうことができるのである。 ⑤のエンパワーメントとは,組織成員の自発的なアクションを促進する仕掛け℃ある (注倒参照)。従来,現場は権限を委譲されても,実質上のパワーギャップ(注(12)参照) や情報ギャップ(注U3)参照)により,素早い自発的なアクションを引き起こすことができ なかった。そこで,現場をヱンパワーすることにより,企業のビジョンに従い主体的にア クションを起こさせるとともに,管理者にはコーチの役割や方向を指し示すリーダ}と しての役割が重要となってくる。また,仕事に対するプライドや満足感をもつようにな り,仕事への強いコミットメントが生まれてくる。もちろん,企業のビジョンを反映した 組織成員の訓練や教育が価値観の共有や自己成長を促しているのである。 ⑥の継続的改善とは,改善活動を一時的ではなく継続的に行なっていくことであり,す なわち,改善効果を維持しながら,さらに次の改善を行なっていくことである(Amsden, Ferratt & Amsden 1996)。たとえば,現在の生産プロセスでもっと製造しやすくするに はどうしたらよいのかをチーム内でいろいろなアイディアを出しあい,それを試みて,ま た検討するという PDCAサイクルを繰り返し行なうことである。これにより,組織成員 のスキルが向上するとともにチームワークが醸成されていく。このようなコラボレー ションは組織学習を促進させるとともに,次工程を内部顧客とみる顧客満足の考え方を 組織全体に浸透させていくことになる。 ⑦の組織学習とは,常に顧客ニーズに合致するより良い製品ならびにサービスを求め て,各組織成員やチームが自らのスキルや統計的手法を用いたプロセスマネジメントな どを学習(シングル・ループ学習)し,知識を共有し創造すること(ダブル・ループ学習) を意味している。この組織学習は,トップが掲げる長期ビジョンにそった組織成員の教育 や訓練に支えられており, TQM推進の大きな柱のlつとなっている。 ⑧のクロスファンクショナノレ・マネジメントとは, TQMの推進にあたり障害となるセ クショナリズムを排除し,組織が一体となってマネジメントを行なっていくことである。 各組織単位は相互に依存度が高いことから,個々の目標の追求が必ずしも全体の目標達 成にはならないことがある。前述したように,組織内の各単位のつながりは顧客連鎖に なっており,この顧客連鎖をマネジメントしていくことが重要となっている。しかも,製 品の企画・開発段階でクオリティ,コストおよび納期を作り込むためには,各部門を参加 させ知識を共有させるとともに, トップからワーカーまで企業が一体となってマネジメ ントを千?なっていかなければならない。

(12)

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1

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香川大学経済論叢 るプロセスのクオリティについて考察していこう。 -222 (図表4)向上すべき仕事のクオリティ 対 象 範 囲 アウトプットのクオリティ プロセスのクオリティ 企業全体 顧客・社会の満足度の向上 管理システムのレベルアップ ー・・・・・・・--ーーーーー----・._--- -部門・個人 後工程の満足度の向上 仕事のやり方のレベルアップ i f -t f } i l I -L i t -r i t B ↓ これ 谷津

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ページ。 まず,図表4のプロセスのクオリティについて簡単に説明し,続いて, を組織構造,管理システムおよび組織成員の3つの視点を用いて再検討してい (出所) く。 谷 津

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は,プロセスのクオリティを,管理システムのレベルアップと 仕事のやり方のレベルアップという視点、から説明している。前者については, 満足度を得るクオリティを設計して具体的に作り込むまでの品質管理システム のレベルの向上,および原価を低く作り込むための一連の原価管理システムの 必要性を述べている。たとえば,方針管理や日常管理などの管理システムによ る継続的なクオリティの改善である。一方,後者については,組織成員個人の の向上を述べている。たとえば,個人のクオリティの向上 良い仕事を通しての達成 うでまえ(スキル) アウトプットのクオリティを高めるだけでなく, は, そして組織の活'性化につながっていくというものである。 感に, プロセスのクオリティの再検討

(

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)

ここでは,プロセスのクオリティを r組織構造一管理システム一組織成員の スキル」の関係を用いて考察していこう。なぜなら, 善し悪しは r組織構造一管理システム 組織成員のスキル」の整合性に強く影 響されるからである。以下では,最初に,簡単に3つのことばの定義を示し, プロセスのクヌ『リティの

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続いて,次の3つの関係から, プロセスのクオリティを再検討していこう。 (a) (b) (c) 組織成員のスキルー管理システム 管理システムー組織構造 組織構造一組織成員のスキル まず,組織成員のスキルとは,彼らがもっ‘うでまえ(スキル),を意味する ものとする。これは,

2

つの側面をもち,単に組織成員の熟練度という側面と, もう lつは,組織成員が能力を活かす環境をもっているか否かという側面であ る。特に,後者は,管理システムや組織構造とも関係しており, 限委譲の度合い,資源の支援体制などを含むものとする。 たとえば,権 次に,管理システムとは,生産システムや業績評価システムなどのマネジメ ントコントロールの仕草韮みをいう。 これらは,通常,現場の権限ではどうする こともできず,ロワーあるいはミドノレ・マネジメントが決定権をもっている。 したがって,管理システムのクオリティを改善するためには, ミド1レあるいは ロワー・マネジメントが重要な役割を果たす。 その際, クオリティとコストの トレードオフを考慮しながら, さらには現場とのインターラクションをはかり ながら管理システムの仕組みを改善する必要がある。 最後に,組織構造とは,組織の分業と調整の体系であり,組織成員の行動範 囲を原則的に規定しており,また,責任と権限の所在を明らかにするものであ したがって,変革型ミドルあるいはロワー・マネジメントにとっては, ア る。 クションの障害になりうることがある。 (a) 組織成員のスキルー管理システム 組織成員にとって,個人の能力とやる気を引きだす管理システムとの整合性 は重要である。 Deming(1986)は,低クオリティと低生産性の主な原因を組織 システムにも求めている (p"

2

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。たとえば,生産シ 工程の並べ方,材料搬入の場所と倉庫の位置,生産単位の 成員の能力だけではなく, ステムに関しては, 見直しなどがある。組織成員がアクションを起こすには, これらを改善するた めの情報の共有と,知識を共有する場が必要である。そうでなければ,個人の

(14)

418 香川大学経済論叢 -224ー また,やる気を失わせることになる。 リードタイム短縮という方針のもとで,現場 能力を活かすこともできず, 一方,業績評価システムの面では,特に,会計目標数字を達成するためのア クションと,組織が期待する組織目標にそったアクションとの需離が存在して いる(Johnson 1992)。たとえば, の評価基準を機械の稼働率とし,それを操業度差異ではかろうとしたとする。 現場は,操業度差異を小さくするために,前後工程とのバランスを考慮するこ となし機械の稼働率をあげ在庫の山を築くことになるだろう。 ロット が完了しないと次工程に流さない方法では,なおさらリードタイムが長くなる。 このような例は極端かもしれないが,管理会計システムは,組織目標にそった

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また, 組織成員のアクションを阻害する影響を与えることができるのである。 クオリテイおよび納期の情報を管理システム ミドルあるいはロワー・マネジメ いかに引き出し活用するか,そして, ントは,管理システム自体をいかに変革するかが重要となってくる。 コスト, このように,現場は, から, 管理システムー組織構造 一般的に,集権的な組織構造では, トップが意思決定の調整を行ないやすい 管理システムを,分権的組織では,現場の参画意識を高め,意思決定のスピー

ω

ドを速める管理システムを必要とする。もし,集権的な組織構造に,分権的組 織を管理するシステムが用いられた場合,不整合のため,組織構造あるいは管 理システムを変更する必要性が生じてくる。たとえば,谷(1989)のクボタ側 (b) のケースでは,新しい組織構造に共通費の配分システムなどの管理会計システ UI) ムが有効に機能しないため,組織構造の再検討を迫る影響を与えている。 (10) 逆にいうと,集権的な組織では,意思決定に時間がかかるとともに,意思決定の質が低 下する。一方,分権的な組織では,意思決定の調整が難しくなる。 (11) 谷 (1989)のケースでは,クボタ側は,戦略展開を促進するため,内燃機器事業本部内 の組織構造を職能別から製品別へ変更する組織変革を行なった。これにより,製品の採算 制および戦略的特色が,管理会計システムを通じて明確となった。また,クボタ側では, 組織変革により,組織単位問の相互依存性が変化することから,それに応じて共通費の配 分システムを変更したが,これが関係部門に受け入れられなかったため,最初の組織変革 が有効に機能しなくなり,再び組織変革が行なわれている。

(15)

(c) 組織構造一組織成員のスキル 上述したように,組織構造は,組織成員の行動範囲を規定している。すなわ ち,組織構造は,個人の能力を発揮する環境を規定しており,また,管理シス テムはそれを補完している。たとえば,集権的な組織構造のもとで,

TQM

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うに,現場を市場に素早く対応させようとしても,パワーギャップや情報ギャ ( I3) ツプのため,組織成員は自発的にアクションを起こすことができない。組織成 員の能力を発揮させるためには,パワーギャップや情報ギャップを少なくする 組織構造が必要である。また,そのような組織構造が,組織成員聞のインター ラクションを行なう場を提供することにもなってくる。 3. TQM推進の妨害要因 マーケット・イン志向の市場環境のもとで,企業が競争優位を獲得するため には,

TQM

思考が有効であることはいうまでもない。しかし,

TQM

を行なう 全ての企業が業績を回復しているわけではない (Powell1995)。以下では 2. の

(

3

)

で再検討したプロセスのクオリティの要素をもとに,

TQM

の推進を妨げ る要因を探ってみよう。

TQM

は,企業のビジョンにそって組織成員の創造性を引き出し,彼らが主体 的に市場に反応してアクションを起こすことを奨励している。ところが,組織 構造,情報ギャップおよび、パワーギャップなどの要因により,組織成員は主体 的あるいは自発的にアクションを起こせない状況となっている。このような組 織成員の自発的なアクションを阻害する要因を,

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の各項目,(a)組織成員 のスキルー管理システム, (b)管理システム一組織構造,および(c)組織構造一組 (12) パワーギャップとは,タスクを遂行する際に発生する上司や他部門などの外部への依 存性を指している(金井 1995,38-9ページ)。すなわち,パワーギャップは,タスクを うまく遂行するために必要なパワーの量と実際に所有しているパワ}の霊とのギャップ である。 (13) 情報ギャップとは,タスクを遂行する上で必要とされる情報室が,既にある手もちの情 報震を上回る度合いをいう(金井 1995,38-9ページ)。ここでは,情報の量だけでなく, アクションを起こすために適切な情報をもっていないという面も含めて情報ギャップと しておく。

(16)

420 香川大学経済論叢 226ー 織成員のスキノレに対応した,次の3点をもとに考察していこう。 コストおよび納期のトレードオフ ム チ J q -ア け り ノ オ ク

ω

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クオリティ, ① ② ③ コストおよび納期のトレードオフは,組織成員が現 まず,①のクオリティ, 状のシステムを改善する際の主要な判断基準である。前述したようにクオリ クオリティを向上 もなうが,長期的には顧客のニーズに応えることが市場占有率を高め,生産性 が向上し,最終的にコストも減少することになる (Ishikawa1985, p.. 105)。し

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コストおよび納期は相互に作用している。たとえば, させるためには一時的にコストを増加させなければならないトレードオフをと ティ, クオリティの向上のためにいくらでもコストをかければよいというもの かし, また,納期やコスト目標の達成のためクオリティを落としてもよい クオリティや納期の達成とそれにともなって発生 するコストを比較できる情報をもつことが自発的なアクションを引き起こすた でもない。 ということもない。つまり, トップのビジョンにもとづいて自発的にアクションを めには重要なのである。 起こすことが期待される組織成員にとっては,従来のようにクオリティに関す コストに関する情報は会計部門から各情報の提 る情報はクオリティ部門から, 供を待っているのでは身動きがとれなくなってしまうのである。このように, 会計情報を現場で活用することは重要な意味をもっているのである。 次に,②のヒエラノレキーとクオリティチームについて説明していこう。通常, 組織はヒエラルキー構造をもっている。 このヒエラルキーは権限と責任の範囲 (14) エンパワーメントとは,以下の要素をもっ包合的な概念であると考え,組織成員の創造 性を導き,自発性を促すものとしておく。 ・組織を変革するために必要なパワー,情報,資源および資金を与えること (Kanter 1982/83,金井1991) ・仕事を任されることによる内発的な動機づけ,すなわちやる気を与えること (Conger & Kanungo 1987) ・権限を委譲するとともに公式・非公式に上級管理者がサポートあるいはメンタリング を行なうこと(藤井他 1996) ・組織成員に有能感を与えること(金井 1996) ・責任を受容し,共有すること (Turney1993)

(17)

を区分しているものである。したがって,ヒエラノレキーが生み出す職務範囲は, セクショナリズムとして情報共有化の妨げとなることがある。 一方,クオリテイマネジメントを担うクオリティチームは,命令系統のヒエ ラルキーとは別に,クオリティの管理システムの

1

つとして,クオリテイコミッ ティー (QualityCouncilor Committee)というヒエラルキー構造をとっている (.Juran 1989, p引44)。たとえば,ミドル・マネジメントのクオリテイコミッ ティーには,より下位のクオリテイコミッティーの代表であるロワー・マネジ メントが含まれるという階層構造をとっている。したがって,クオリティに関 連する事項は,クオリテイコミッティーを通じて組織全体に伝達されることに なる。 このような 2つのヒエラルキー構造は,パワーギャップとクオリティに関す る情報ギャップを生み出している可能性があると考えられる。 前者のパワーギャップは,あくまでも組織成員のアクションが命令系統の責 任・権限関係に依存することから発生する。たとえば,ミドル・マネジメント がノレーティーンとは異なる組織変革のアクションをとろうとしても,権限,資 源および資金などのサポートを受けることは非常に難しい (Kanter1982)。ま して,それがロワー・マネジメントのレベルではなおさらである。すなわち, 上から与えられた目標を処理し下へ伝達することを要求される役割だけを遂行 するのであれば,硬直したヒエラノレキー構造で十分である。ところが,

TQM

で はミドルまたはロワー・マネジメントは,組織やプロセスの変革あるいは創造 自 由 を求められている。したがって,彼らが行動しやすい,もっと有機的な組織構造 が要求されていると考えられる。 (15) 有機的組織とは,次のような特徴をもっ組織であり,不安定で変化の激しい企業環境の もとでの仕事に適しているという (Burns& Stalker 1961, pp..119-22;加護野・伊丹 1993, 276ページ)。 ・知識と経験にもとづく専門化 .職務・権限の柔軟性 .専門知識にもとづくパワー .ネットワーク型の伝達構造 .情報の分散

(18)

422 クオリティ部 後者のクオリティに関する情報ギャップは,前述したように, 門から提供されるデータでは即時のアクションを引き起こすことができないた 香川大学経済論叢 -228 クオリティ クオリティポリシー, クオリテイコミッティーは, めに発生する。 やは 目標および改善成功例などを定期的に伝達するには非常に有効であるが, り即時のアクションを必要とする場合には情報ギ、ヤツプをもつことになる。す もっと柔軟にそして素早いアクション を引き起こす組織構造や管理システムが必要であると考えられる。 最後に,③のエンパワーメントは,特に組織成員の能力を発揮する環境の側 面に大きく影響を及ぽす。もちろん,組織成員をエンパワーすることにより, 彼らは仕事での自己実現をはかり, 個人のスキルが向上することはいうまでもない。 組織成員をエンパワーすることは, TQMを推進す}るための重要な要因であ 二重のヒエラルキーではなく, より意欲的に仕事にとり組むようになり, なわち, ところが,多くの企業ではエンパワーメントとはいうものの,従来と同じ ように与えた目標を実行させるのみの場合が多い(品質管理

1996/3)

。すなわ ち,上述の①と②とも関連するが,自発的なアクションを促進するパワーや情 報の提供,さらには組織構造の整備が行なわれていないのである。したがって, 組織成員はエンパワーされておらず, る。 TQMを推進することが難しい状況と このように,TQMの推進には,組織成員の自発的なアクションを引き起こす ため,パワ}ギャップを小さくする組織構造が必要であると同時に,情報ギャツ なっている。 ま ず,本稿に必要な限りで前者のパワーギャップを小さくする組織構造ならびに その組織構造が与える情報ギャップへの影響を検討してみよう。続いて,次節 で後者の問題をケース分析をまじえて検討していくことにしよう。 プを小さくし組織成員をエンパワーする仕掛けが必要なのである。そこで, -水平的な情報と助言の伝達 .仕事や技術への忠誠心 ・コスモポリタン的な知識の強調

(19)

4. フラット型チーム組織とコストマネジメント 組織成員の自発的なアクションを引き起こすための要件の

1

っとして,パ ワーギャップと情報ギャップを小さくする組織構造が必要であることは前述の とおりである。このような組織構造として,柔構造組織の組織構造を検討して みよう。なぜなら,柔構造組織は,チーム作業組織とフラット型管理組織を組 。 日 み合わせたフラット型チーム組織構造だからである(奥林他 1994)。 チーム作業組織とは,チーム作業方式をとれ有機的作業組織となっている。 一方のフラット型管理組織とは,指揮命令系統を明確にしながらも,情報交換 は縦横自在となり,管理の決定権限が管砥組織の末端に委譲される管理紙織で ある。したがって,パワーギャップは,組織がフラット化することにより小さ くなると考えられる。たとえば,ミドル・マネジメントは,組織のフラット化・ スリム化により, トップ・マネジメントから大幅に権限が委譲され,新市場の 開拓や新製品の開発など重要なプロジェクトの意思決定を担うようになってい る。すなわち, ミドノレ・マネジメントは,組織を活性化する変革型ミドル・マ ネジメントとしての役割を担うことができるのである。また,ロワー・マネジ メント以下ではチーム作業方式の導入により,組織成員聞のインターラクショ ンが増え,チームワークが醸成されていく。そして,知識や情報の共有により, 組織学習が促進し,チーム活動は活性化する。 次に,フラット型チーム組織構造や

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革命によ り,情報ギャップは小さくなると考えられる。現場ではリアルタイムの情報や アクションが要求されており,スタップ部門からの情報提供を待つのではなく, 自ら情報を収集,加工,管理ならびに活用し,アクションを起こすことが必要で ある。たとえば,会計情報ならば会計スタッフ部門が月次で提供する会計基準 に従った要約的な情報を利用するのではなしもっと簡単で,明快な仕掛けを もっ管理会計システムからの情報を活用することが有用であると考えられる。 このようなフラット型チーム組織では,従来とは異なるコストマネジメント (16) 奥林他(1994)は, ME技術の進展をもとに柔構造パラダイムを展開している。

(20)

230- 香川大学経済論叢 424 が要求されるのではないだろうか。明確な責任・権限関係を基礎にした機械的 組織構造を前提とする従来の管理可能性原則は,組織単位聞の相互依存性を考 慮したとしても, あくまでも与えられた目標に対する事後結果を比較し,業績 を評価しアクションを修正するために会計情報を区分・集計し活用しようとす るものである。すなわち,各組織単位が自ら主体的にアクションを起こすため には有用で、ないと考えられる。以下では,

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つのケース,

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つは,テキサスイー ストマン桂のケース

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1991), もう

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つは, ナショナノレ セミコンダクタ一社のケース

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1993)を用いて,管理会計情報が

TQM

の推進を補完していること, またエンパワーメント型の管理会計情報の要件を 探求していこう。 (17) 機械的組織構造の特徴は以下のとおりであり,安定した環境のもとでの仕事に適して いる(Burns& Stalker 1961, pp..119ω22;加護野・伊丹1993,276ページ)。なお,機械 的組織構造を前提とする責任会計システムでは,組織ならびに部門管理者の権限と責任 区分に対応して会計コントロールシステムを適用し,各管理者fの影響力の及ぶ範囲の原 価と収益を集計し,業績を評価している(谷 1983,10-6ページ)。 -職能的な専門化 -職務・権限の明確化 ・職位権限にもとづくパワー .ピラミッド型の権限構造 ・上層部への情報の集中 ・垂直的な命令と指示の伝達 .組織忠誠心と組織への服従 -企業固有のローカルな知識の強調 (18) 管理可能性基準とは,責任会計の中心的な概念であり,管理者が委譲された権限にもと づいて,彼が影響を及ぽす原価および収益の区分・集計の基準である(谷 1983,17ペー ジ)。したがって,この基準によると,組織単位の業績は,組織単位管理者の権限にもと づいて影響力の及ぶ管理可能な収益・原価の要素だけを当該組織単位に区分・集計して測 定されるべきとなる(谷1987,1ページ)。 (19) 組織が有機的手掛哉構造をとり,寅・任・権限関係が弾力化してくると,管理可能性基準は, 明確な責任・権限関係にもとづく利益要素への影響可能性と狭く解釈するのではなく,意 思決定プロセスにおける利益要素への管理者の影響可能性と解釈されるようになる(谷 1983, 62-8ページ;谷1987,32-3ページ)。

(21)

IV TQMと管理会計情報:ケースの概要 まず,この節では, TQMの活性化に管理会計情報を活用しているテキサス イーストマン社とナショナルセミコンダク夕、一社の2つのケースをIJ固に記述す る。続いて,次節で, HIの 3.でとりあげた次の 3点から,この 2つのケースを 分析していこう。 ・クオリティ,コストおよび納期のトレードオフ .ヒエラルキーとクオリティチーム ・エンパワーメント 1. TEX本土のケース まず,テキサスイーストマン社(以下ではTEX社と呼ぶ)が推進しているク オリテイマネジメントと,それを支えている情報システムを記述する。続いて, 現場で会計情報を利用しているクラッキングプロセスのデイリーインカムステ イトメント

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と呼ぶ)を示し,最後に, クオリティマネジメントと

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情報との関連を説明していこう。 (1) クオリティマネジメントプログラム

ω

TEX社が属するイーストマン・コタゃツク社の化学部門は1983年にTQMに 着手した。この背景には, 1980年代のドル高により外国製品がアメリカ市場に 浸透しはじめ,アメリカの顧客は日本やヨーロツパの製品が低価格だけでなく, アメリカ企業よりも製品のクオリティが高いことに気づきはじめたということ があった。 (20) テキサスイーストマン社は,イーストマン・コダック社の化学部門に属する 6つの会社 のうちの1つである。TEX社は,約40種類の化学製品およびプラスティック製品を製造 している。これらの製品は,建設あるいは生産・消費財の原料として販売されている。 TEX社の製造プロセスは,まず,クラッキング(分解蒸留)プラントで原料をエチレ ンとプロピレンに分解蒸留する。続いて,これらのオレフィン製品は,アルコール,アル デヒドおよび特殊な化学製品を製造するため,ケミカルプラントで加工される。

(22)

232 香川大学経済論叢 426 1984年に化学部門はクオリテイポリシーを打ち立てた(図表 5)。部門長は, クオリティ目標として,製品およびサービスのクオリティとバリュー(value) で業界のリーダーになると宣言した。 このTQMプログラムは,次の3つのエレメントから構成されている。それ は,チームワーク,パフォーマンス・マネジメントおよびSPC(Statistical Pro -cess Control)である。 まず, QWL,職務拡大および組織成員の参加を進めるチームワークとは,組 織に広がるクオリティマネジメントチーム(以下ではQ Mチームと呼ぶ)によ り行なわれている。 Q Mチームは, ヒエラルキー的に組織化されている。工場 長から作業員まで工場内の全ての組織成員は,少なくとも lつのQ Mチームに 所属しており,上下の他のQ Mチームのメンバーの一員にもなっている。その ため,各Q Mチームのアイディアなどは,組織全体に浸透しやすくなっている。 (図表5) イ}ストマン化学部門のクオリティポリシー ⑨クオリティ目標 ・製品とサービスに関するクオリティおよび、バリュー(value)で業界のリーダー になる ⑨クオリティマネジメントプロセス ・ミッション,ビジョンおよびパフォーマンスのインディケーターを設定する ・プロセスを理解し,標準化し,安定化し維持する ・継続的改善およびイノベーションを計画し,実行し促進する ⑨オペレーショナルポリシー ・プロセスの安定性と信頼性 ・目標達成のために全てのプロセスをコントロールする .プロセスのケイパビリティを改善する ⑨クオリティ目標を達成するための原則 .カスタマーフォーカス 顧客ニーズを理解し,満たし,予測することに重点をおく .継続的改善

(23)

現在のパフォーマンスレベルを改善する .イノベーション クリエイティブなプロセス,製品およびサービスを探求する .プロセスの強調 欠陥品を防ぎ結果を改善する手段としてプロセスをフォーカスする .マネジメントリーダーシップ ビジョンを掲げ,目標達成の意欲を維持し,支援環境を整える .従業員参加 全職能および全組織階層に広がるチームワークをもとに,全ての組織成員が 意思決定や問題解決に参加する -統計的手法 全ての組織成員はバラツキのコンセプトを理解し,継続的改善やイノベー ションに適切な統計手法を適用する ・パフォーマンスマネジメント 明確なアカウンタビリティ,フィードパック,支援および障壁を取り除くこ とを通して,プライドをもって仕事に望む ・教育と訓練 キャリアを通した個人の学習と成長を奨励する .顧客およびサプライヤー関係 顧客およびサプライヤーと長期のパートナーシップを構築する .評価 世界ーの企業をベンチマークし,改善計画と促進のためクオリティポリシー に関するパフォーマンスを評価する (出所) Cooper& Kaplan (ed) (1991), p..222 次に,パフォーマンス・マネジメントとは, KRA (Key Result Areas)を設

ω

定し,測定尺度を決定することである。 最後に,

SPC

の導入により,各プロセスのバラツキのコントロール範囲を決 定し,観測値がコントローJレリミットを越えた場合にのみ,それを正常範囲に 戻す特別なアクションがとられるようになった。 (21) KRAの設定は,以下の 7つのステップを含んでいる。 1.組織が望む結果に対するミッションを定義する

(24)

-234ー 香川大学経済論叢 428 (2) 情報システム 部門マネジャーは,毎日,前日のオペレーションデータを検討している。し かし,このような翌日に行なう検討は,現在のクオリティ重視の考え方とは相 (詑) 反するものであった。 そこで,クオリティ分析に必要な情報をリアルタイムにしかも容易に提供す るため,

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システムを導入し, オペレーティングデータの計算,保管および統計分析が自動的に行なわれるよ うになった。その結果,観測値の約

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分ごとに自動的に最新化され, 邸) 残りの観測値は

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時間ごとに最新化されるようになった。その後,

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年まで,

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システムはより一般的でフレキシプJレな情報システムとし (24) て改正されていった。 2.・ミッションの達成に重要なKRAを認識する .KRAは財務あるいはSPCなどの目標である 3.各ユニットのミッション達成度を示すため,各KRAの測定尺度を決定する 4.測定尺度の重要な変化をモニタリングするために,測定尺度の表示方法を決定する 5.プロセス内で重要な変化がおきた場合のアクションの指針を決定する 6.各測定尺度の進捗と達成を促進するプランの作成を行なう 7.改善プロジェクトを実行し,KRAに最大のインパクトを与えるところへ資源を配分 する (22) たとえば,異なる製品特性をもっ製品を大量に製造した後で,しばしば重要なオベレー ティングパラメーターの好ましくない傾向がかなり遅れて発見されることがある。この ようなオペレーションの異常なバラツキなどの原因を調査するために,エンジニアが倉 庫からファイルを探し, 2, 3日から数週間を要する分析を行なっていた。ときには,膨 大な保管ファイlレのなかから該当ファイルを発見できない場合もあった。このように,プ ロセス改善の試みは,かなり遅れて行なわれていた。 (23) これ以前の情報システムは,まず,プロセスパラメータの観測値をもとにオベレーティ ングプロセスの情報が収集され,オペレーターがこれらの情報をワークシートに記入し ていた。次に,事務員がワークシートからデイリ一生産レポートへアウトプットの盤を記 入し,このワークシートは,倉庫のファイルに保管されていた。なお,オペレーティング データは,約30,000から40,000という工場のプロセスパラメーター,たとえば,温度, 庄カ,フローレイトおよびタンクレベルなどの観測値をもとに収集されていた。また,オ ペレーターは,工場内の180の作業Jレートに関する記録を2時間から4時間ごとに渡さ れていた。 (24) 改正点は,次の4点である。 ・電子コントローJレシステムを備えた部門をモニタリングするため,外部購入ソフトによ り,自動的にSPC分析,データの時系列表示およびアラームプロセシングを行なってい る。

(25)

(3) 3 Bカンパニーのデ、イリーインカムステイトメント クラッキングプラント長である Brileyは,次に示すトレードオフの問題を解 決するため, 1987年7月に,工場を架空の会社にみたて

3Bカンパニーと命名 5 ) し,現場のためにシンプノレな財務諸表を考案した(図表

6

)

。以下では,次の

3

つの項目を,順番に説明していく。 ・クラッキンク、プロセスの複雑性 • DISの作成手順 • DISに対するワーカーのリアクション ① クラッキングプロセスの複雑性 ( 26) 原料をプロピレンやエチレンに変換するクラッキングプロセスは,数千もの コントロールポイントをもち,また半製品のリサイクルをともなうなど,とて も複雑な化学プロセスとなっている。 この複雑なプロセスを扱うオペレーターは,生産量,クオリティおよびコス ト聞のトレードオフの意思決定に際し,それに関する情報をほとんどもってい ない。たとえば,現在よりもより高い温度でガスを蒸溜できれば,原料から主 -デイリー生産レポートから財務コントロールシステムヘデータを転送じている。 ・最新プログラムを用いて,オペレーターにオペレーティングデータにもとづいて

SPC

テ ストを行なう笥所を特定化させている。 ・各部門や部門のアナリストにオペレーションの要約的な統計情報を提供している。この 情報は,物流,生産,プロセス改善,コントロールリミットおよび顧客の不満の発生と処 置などの情報を含んでいる。 (25) 既存の会計システムは, 4週間ごとに全部原価情報のみを提供している。原価構成は, 直接材料費および物流コストが全部原価の90%を占めており,監督・事務員のコストが 5%,工場全体の間接費と支援活動のコストが残りの5%となっている。コストのほとん どは実際の資源消費レベルにあわせて,各工場および各部門に割り当てられている。 会計部門は,マーケティング部門が提供する販売量と販売価格ならびに材料,部品およ び光熱費などの価格予測を、もとに,部門コストおよび製品原価の予測を行なう。各部門の コスト予測および製品原価予測は,工場パフォーマンス測定のベースラインとなる。期末 には,会計部門は実際コストと実際生産量の情報を受げ取り, TEX社の製品原価ならび に原価差異情報を各管理者へ提供している。 (26) クラツキングプロセスの全体図は,天然ガスとエネルギーの2つのインプットから,エ チレンとプロピレンの2つの主要な製品を製造している。また,副産物として,水素およ びメタンガスを製造している。

(26)

お6 香川大学経済論叢 430 製品ならび、に副産物への変換効率を高めることができるが,高温度の維持およ びそれにともなう機械の陳腐化はコスト高を招くことになる。また,生産量を 最大にすると,バラツキをコントローノレ範囲内におさめることは難しくなる。 オペレーターは,常にこのようなトレードオフの意思決定に直面しているが, 実際のところトレードオフを適切にとり扱う情報をもっていないのである。 (図表6) デイリープロフィットステイトメント (4.21.l988) 売上 $/日 スチーム +600非 87,938 lbj時間 8,416 +160# 11,972 H 1,068 -pyro 24,516 H 2,368 - 30非 11,624 H 1,037 小計 63,770 6,079 エチレン ハイグレード 776,042 lbj日 124,167 ローグレード

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(0%アウト) 無駄

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小計 776,042 H 124,167 プロピレン ハイグレード 358,280 H 68,073 ローグレード 32,429 M 3,081 (83%アウト) 無駄

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小計 390,708 71,154 水素 キャノTシティ 7 ライン 57,708 メタン キャノfシティ 9 ライン 5,058 重水 1,732 合計 265,898 原価 フィードストック エタン 227,865 lb 6,471 プロパン 1,595,066 H 108,305 小計 1,822,930 114,776 メンテナンスおよび修理(1987年平均) 4,168 ユーティリティ 電気 1,234 アンペア 8,359 冷却水 4..8 ライン 4,109 天然ガス 3..1 ライン 3,442 その他 607 小計 16,517 その他のコスト 45,714

(27)

181,175 0 54,946 236,122 29,776 10,422 19,354/日 売上原価 改善推進費 設備使用コスト 合計 総利益 税金(X35%) 純利益 *期間利益額 541,923 $ (出所) Cooper& Kaplan (ed) (1991), p..225..(一部修正・加筆) デイリーインカムステイトメントの作成手順 DISは,上述したようなトレードオフの意思決定に関する情報を提供してい 。'() る。作成手順は以下のとおりである。 ②

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-アウトプットとインプットの量がデイリー まず, M & Tシステムを通じて, 生産レポートから入手される。 次に,プラント長のBrileγがエチレンとプロピレンおよび副産物の価格を, 市場価格を用いて概算する。 さらに,製品がスペックどおりか否かで異なる価格を設定している。製品が

SPC

のコントロール範閤内であれば,製品価格は, フルプライスとなり,製品 がコントロール範囲外ではあるが使用可能なスペックの場合には,製品価格は というクオリティ領域を設 トップグレードの「ゴールド」 ゴールド領域の製品は, 25%の割増し価格となる。 そして,原料やユーティリティに関する価格は実際原価をもとにしている。 工場の原価標準に近い金額で表わされる。ただし, 半額となる。また, 定し, これらのコスト これらは, オペレーターに倹約を促すため,冷却剤の たとえば, を調整することがあり, 価格を高く設定することもある。 (27) なお, DISは当初,プラント長であるBrileyがI人で作成していたが,その後,現場 の成員がシステムにデータを入力することにより,自動的に作成されるようになった。ま た,縦軸にプロフィット,横車自に期間をとるチャートを作成し,デイリープロフィットお よび4遇間分の累積利益をチャート上にプロットしていた(Cooper

&

Kaplan (ed.) 1991, p山226)

参照

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