⾜⽴区建築物
エネルギー対策ガイドライン
2013(平成 25)年 3 ⽉
⾜⽴区環境部
「足立区建築物エネルギー対策ガイドライン」とは?
本ガイドラインは、区⺠・事業者を対象とした建築物の新築や増改築、
⼤規模改修時における配慮基準です。建築物に対する省エネルギー対策
と創エネルギー対策を合わせて進めることで、低炭素まちづくりを促進
し、地球温暖化対策に寄与することを⽬的としています。
東⽇本⼤震災以降、⾝近な節電・省エネ⾏動が定着しつつありますが、
省エネ効果が⻑期間に及ぶ設備・機器の更新や再⽣可能エネルギーの導
⼊等、ハード整備を進めることが、今後の地球環境保全のためには極め
て重要です。そのための⼿引き書となる本ガイドラインは、「効率的なエ
ネルギー利⽤」と「再⽣可能エネルギーの活⽤」の⼆章で構成されてい
ます。
区⺠、事業者のみなさんが、建物の新築時等に指針として活⽤いただ
き、「地球にやさしいひとのまち⾜⽴」が実現することを期待します。
1第Ⅰ章 効率的なエネルギー利用
1 熱負荷の軽減
建物では、窓などの開⼝部からの熱損失が最も⼤きいため、断熱
性を⾼めて、熱負荷を軽減することが必要です。
(1)外壁、屋根、床の断熱化
ア 熱の遮断、保温効果を⾼める岩綿・ガラス繊維・コルクなど、
熱を伝えにくい断熱材を使⽤してください。
岩綿・・・ロックウールとも呼ばれ、高温で溶解、生成される人造鉱 物繊維です。吸音、耐火にも優れ、石綿(アスベスト)の代替とし て広く使われるようになっています。イ 壁や屋根、床を⼆重構造にして、断熱性を⾼めましょう。
ウ 遮熱塗料を塗りましょう。
遮熱塗料・・・太陽光を反射し、温度上昇を抑えることができる塗料 です。高反射率塗料と、塗膜に空気層を設けて熱を伝わりにくくす る熱遮蔽(ねつしゃへい)塗料の 2 種類があります。エ 屋上や壁⾯、敷地内を緑化して遮熱効果を⾼めましょう。
(2)窓の断熱性能の向上
建物では熱の約 6 割が窓から失われるため、窓の断熱性能を⾼め
ることは、熱負荷の軽減に⼤きな効果があります。
ア 複層ガラスの設置や窓の⼆重化で、断熱性能を⾼めましょう。
緑化・・・植物は日射しを遮るだけでなく、葉や茎などから水蒸気が 放出される蒸散作用により温度上昇を抑制する効果があります。さ らに都市部のヒートアイランド現象を緩和させる効果も期待でき ます。 複層ガラス・・・板ガラスを重ね、密閉された中間層に空気などを入 れて断熱性能を高めたものです。 2イ 熱線反射フィルム(遮熱フィルム)を貼ったり、ひさし、ブラ
インド、ルーバーを⽤いるなど夏の⽇射しを遮るよう⼯夫してく
ださい。
2 自然の光や風の活用
(1)太陽光の活用
ア 天窓や⾼い位置の壁⾯窓など室内が明るくなるよう⼯夫してく
ださい。
イ ライトシェルフやガラスブロックを⽤いて効果的な採光をしま
しょう。
なお、太陽光を活⽤した照明システムも開発が進められており、
建物の形態など条件によっては利⽤可能です。
(2)自然の風の効率的な取り入れ
ア ⼆⽅向の開⼝ができるようにして、⾃然の⾵を効率的に取り⼊
れましょう。
イ 温度差による浮⼒換気が期待できる⾼窓などを設置し、換気を促
しましょう。
ルーバー・・・日射熱防止、目隠し、換気などの目的のため、窓など に斜めに取り付けられた羽目板です。 ライトシェルフ・・・窓に取り付けた庇が屋根部に反射した光を上部拡散 窓から取り入れて,室内天井部に反射させ,柔らかな拡散光を室内則 に導入する建築的工夫のことです。 主な換気の種類 【自然換気】風の通り道を考慮して二箇所以上の開口部を設け、自然風 を利用して換気を行います。 【重力換気】室内の温度差を利用した通風換気であり、外部が無風時で も室内で風の流れが生まれ、効率的な換気が行うことができます。 熱線反射フィルム・・・太陽からの日射線(熱線)を反射するフィル ムで、窓ガラスに貼ることで遮熱効果が得られます。 33 設備の工夫
ア 設置する部屋の広さや形にあわせ、空調や照明を⼯夫してくださ
い。
イ 反射率の⾼い素材を天井や床、壁に⽤いて、効率的な照明を設置
してください。
昼間はなるべく自然の光を活用するとともに、照度を調整できる機 器や、必要に応じて手元の電気スタンドを活用するなど、不必要に 明るくなりすぎないよう照明を工夫することが必要です。 照明の明るさの基準(JIS規格) 【住宅】 ①手芸や裁縫 1000 ルクス ②読書や勉強 750 ルクス ③食卓や台所、洗面所 300 ルクス ④団らんや娯楽 200 ルクス 【事業所等】 ⑤事務室 750 ルクス ⑥一般的な製造工場 500 ルクス ⑦標準的な店舗 300~500 ルクス 44 高効率機器の設置
家族構成や⽣活様式、住宅の形態など個々の住宅の状況を踏まえ、
次に掲げるエネルギー効率の⾼い、適切な機器を導⼊してください。
ア 省エネラベリング制度の省エネ基準を満たしている機器
省エネラベリング制度 2000年8月にJIS規格として導入された表示制度で、エネルギー 消費機器の省エネ性能を示すもので、エアコン、冷蔵庫、テレビ、 照明器具、ガス調理機器、ガス温水機器、ストーブなど18種類が対 象です。省エネ性能の優れた製品(省エネ基準達成率100%以上)には 以下の緑色のマークがつくので、この製品を選ぶようにしましょう。 (緑色) また、機器単体のエネルギー消費量が大きく、製品ごとの省エネ 性能の差が大きい機器には、多段階評価制度を組み合わせ、星の数 で表示した統一省エネラベルによる表示を定めています。対象とな る機器は、エアコン、冷蔵庫、テレビ、電気便座、蛍光灯です。な るべく星の数が多く、省エネ基準達成率が100%以上の機器を選 びましょう。 統一省エネラベルの例 (電気冷蔵庫) 5ガス温水機器を設置する場合は、省エネ基準達成率 100%以上 のガス温水機器の中でも、燃焼ガスの熱を二次利用することで熱 効率が改善されている「エコジョーズ」を設置すると、約 10%の 省エネ効果が期待できます。
イ 熱と電気を効率的に供給するコージェネレーションシステム
「Co(ともに)」と「Generation(発生)」の合成語で、電気と熱 を同時に発生させることで、一つのエネルギー源から「熱」と「電気」 を合わせて供給するもので、「熱電併給」とも呼ばれています。 住宅向けには、ガスをエネルギーとして発電と給湯を行う燃料電池 (エネファーム)が商品化されています。家族構成や生活様式などに よっては、導入により大きな省エネ効果があります。ウ ⼈感センサーや温度・照度感知による空調、照明の制御
また、工場やオフィス、病院など建物のエネルギーの特性に応じた システムを導入すれば、より効率的にエネルギーを利用できます。 トイレなど使うときだけ照明が必要な場所は、人を感知して照明を制 御するシステムを導入すると、消し忘れが防止できます。エ LED照明
オ ⾃然冷媒ヒートポンプ給湯器
空気の熱を熱交換器で冷媒に集め、その冷媒を圧縮機で圧縮してさ らに高温にし、高温になった冷媒の熱を水に伝えてお湯を沸かす仕組 みで、エコキュートの愛称で商品化されています。電気のみでお湯を 沸かす場合に比べ、電力消費を抑えることができます。
カ 東京都が定める中⼩企業者向け省エネ促進税制対象の機器
東京都環境局が省エネ性能の基準を満たす導入推奨機器として、空調 機器、照明設備、小型ボイラー設備、再生可能エネルギー設備を指定し ています。これらの対象機器を都内の中小企業が導入した場合、法人事 業税又は個人事業税の減免を受けることができます。 対象機器や手続き方法は、東京都ホームページを参照してください。 65 エネルギー消費量の把握による削減行動の推進
建物のエネルギー使⽤量を計量する設備を設置して、使⽤量を数字
として把握することで、より⼀層の省エネ⾏動を進めましょう。
エネルギー使用量の見える化の例(画像提供:株式会社エネゲート) リアルタイムの電気使用量を計測して表示する機器などを設置し、使用量 を把握すると意識が高まり、より一層の節電行動につながります。 さらに、この機器を情報通信ネットワークで自動的に制御し、よりエネル ギーを効率的使う技術も実用化されつつあります。家庭用エネルギー管理シ ステム(HEMS)や、ビルエネルギー管理システム(BEMS)として、 今後、さらに技術革新が進んでいくことが期待されています。6 節水対策
ア 節⽔型トイレの設置
(JIS規格に定める「節⽔Ⅱ型⼤便器」または「節⽔Ⅰ型のフラ
ッシュバルブ式便器」と同等以上の性能及び品質を持つもの)
イ 節⽔⽔栓の設置
(エコマーク認定を受けている⽔栓)
ウ ⾬⽔タンクの設置
7低炭素建築物認定制度
都市の低炭素化の促進に関する法律に基づき、⼀定の基準を満たした建築 物を認定する制度で、低炭素の都市づくりを促すことを⽬的としています。 認定された建築物には、所得税と登録免許税の軽減、容積率の不算⼊の優遇 があります。制度の概要は以下のとおりです。 【認定の要件】以下のAB両⽅を満たすこと 1 省エネ法の基準に⽐べ、⼀次エネルギー消費量を 10%以上削減され ていること。 2 以下に掲げる低炭素に資する措置のうち、2 つ以上に該当すること。 詳しくは国⼟交通省ホームページを参照してください。 共通条件のもと、認定を受けようとする住宅で、省エネ手法を加味した設 計仕様で算定した冷暖房、換気、照明、給湯のエネルギー使用量(太陽光発 電やコージェネレーションシステムを設置した場合は、自家使用したエネル ギーを差し引く)が、基準仕様で算定したエネルギー使用量に 0.9 を乗じた 値以下になること。 a 節水に関する機器を設置している。 b 雨水、井水、雑排水の利用のための設備を設置している。 c 家庭用エネルギー管理システム(HEMS)を設置している。 d 再生可能エネルギーを利用した発電設備及び蓄電池を設置している。 e 一定のヒートアイランド対策を講じている。 f 住宅の劣化の軽減に資する措置を講じている。 g 木造住宅である。 h 高炉セメント等を使用している。 8第Ⅱ章 再生可能エネルギーの活用
現在、主要エネルギーとして使われている⽯油・⽯炭・天然ガスな
どの化⽯燃料は、限りある資源であるとともに、燃焼時には温室効果
ガスを発⽣します。
⼀⽅で、再⽣可能エネルギーは、⽐較的短期間に再⽣可能かつ枯渇
しないエネルギーで、地球温暖化の原因となる温室効果ガスも発⽣し
ません。
再⽣可能エネルギーの活⽤は、資源保護、地球温暖化対策のいずれ
にも寄与するもので、積極的な利⽤が求められています。⾜⽴区では、
地域特性を踏まえ、特に太陽エネルギーの活⽤を推奨します。
いずれも、資源が枯渇せず繰り返し使え、発電時や熱利⽤時に地球温暖化 の原因となる⼆酸化炭素をほとんど排出しない優れたエネルギーです。 再⽣可能エネルギーは、エネルギー供給構造⾼度化法において、「エネルギ ー源として永続的に利⽤することができると認められるもの」とされ、太陽 光、⾵⼒、⽔⼒、地熱、太陽熱、⼤気中の熱その他の⾃然界に存する熱、バ イオマスが規定されています。1 太陽光発電
太陽の光を太陽電池で直接電⼒に変換して発電するもので、屋根や
壁など未利⽤スペースで発電できますが、設置場所や⽅位、⾓度、⽇
当たり等により効率が左右されるため、設置前に分析が必要です。
通常は太陽電池を複数つないだソーラーパネルを設置し、発電した
電⼒は、⾃らが利⽤することも、電⼒会社に売電することもできます。
電⼒会社は固定価格で買い取りますが、⼀定規模以下の住宅に設置し
た場合は、⾃ら使⽤する以外の余剰電⼒のみ売電でき、発電量全てを
売電することはできません。
(環境省資料に基づく標準値) 1kWの太陽光パネルの面積は約7平方メートル (メーカーや機種によって多少異なります) 太陽光パネル1kWあたりの年間発電量は、約 1050kWh 92 太陽熱利用
太陽の熱エネルギーを屋根や壁などに設置した集熱器で集め、給湯
や空調に利⽤するもので、天気がよい⽇には、太陽熱利⽤で約 60℃の
お湯になります。集合住宅のベランダに設置するタイプも実⽤化され
ています。
太陽熱利⽤システムは、集熱⽅法の違いにより「液体集熱(強制循
環)」と「空気集熱」の2つに分類されます。
◆液体集熱式太陽熱利⽤システムは、以下の機器で構成されます。
(1)太陽熱を集熱する「太陽集熱器」
太陽エネルギーを熱に変える機器です。
(2)太陽熱を蓄える「蓄熱槽」
集熱した太陽熱を蓄えるタンクで、太陽熱の変動を緩和し、有
効利⽤するために設置します。⼾建住宅向けには、制御盤など
も含めユニット化された「貯湯ユニット」も商品化されていま
す。
(3)太陽熱が不⾜する時に補完する「補助熱源機」
⼾建住宅では「ガス給湯器」や「CO2ヒートポンプ給湯器」
などを設置します。
(4)太陽熱を冷熱に変換する「冷凍機」など
気化熱を利⽤して温⽔から冷⽔をつくる機器です。
◆空気集熱式太陽熱利⽤システムは、以下の機器で構成されます。
(1)太陽集熱器
取り⼊れた外気を暖める機器です。
(2)ハンドリングユニット
外気の取⼊みや、取込んだ空気をコントロールするための装置
で、ファンやダンパと給湯利⽤するための熱交換器などで構成
されます。
なお、太陽熱利⽤のガイドブックについては、東京都環境局ホーム
ページからダウンロードできますのでご参照ください。
電気を熱に変換するより、熱を熱として使うほうがより効率的なの で、電気は、冷蔵庫やテレビなど電気でしか使えない用途に使い、低 温の熱にはなるべく太陽熱を利用しましょう。旧型の電気温水器を太 陽熱利用システムに置き換えると、電気使用量を大幅に削減できます。 10エネルギー対策配慮チェックシート
次の各項⽬について検討した項⽬には△を、検討の結果導⼊した項⽬には○をつけ てください。 ○が多いほうがよりエネルギー対策に配慮した建築物となります。 「⾜⽴区環境整備基準」に基づく⼿続きを⾏う場合で、再⽣可能エネルギーを導⼊ し、かつチェックシートの配慮項⽬(再⽣可能エネルギーの導⼊を除く)に 18 個以 上○がついた建築物は、「エネルギー対策に配慮した建築物」として区のホームペー ジで紹介します。 さらに、エネルギー使⽤量の削減や、再⽣可能エネルギーの⼤規模な導⼊など、先 進的な取組みで顕著なエネルギー対策が認められる建築物については、「⾜⽴区版ス マートエネルギー建築物」に認定して表彰します。 ホームページでの紹介や表彰を希望する場合は、完了検査を実施するときに、この シートを環境政策課に提出し、審査を受ける必要があります。 配慮分野 配慮項目 チ ェ ッ ク欄 外壁に断熱材を使用する 屋根は二重屋根とする 屋根に断熱材を使用する 遮熱塗装を塗る 床に断熱材を使用する 屋上がある場合は、屋上を緑化する 複層ガラスやペアガラスを採用する 窓面積を小さくして窓の断熱性を高める 熱負荷の軽減 熱線反射フィルムを貼る 11ひさしやルーバー、ブラインドを設置する 天窓や高い位置の壁面窓など室内が明るくなるような工 夫をする。 (工夫した内容を記述してください。) ライトシェルフやガラスブロックを設置する 二方向を開口して、通風をよくする 自然の光や 風の活用 高窓などを設置し、自然換気を促す 部屋の広さや形、用途に合わせ、照明・空調を工夫する (工夫した内容を記述してください。) 設備の工夫 反射率の高い素材を天井、床、壁に使用する (使用した素材と反射率を記述してください。) 12
高効率な給湯設備を設置する 設置した機器に○をつけてください。 (エネファーム、エコジョーズ、エコキュート) LED照明を設置する (LED照明を設置した場所及び照明のうち、LED照 明の割合を記述してください) 用途に合わせた照度になるよう機器を工夫する (工夫した点を記述してください) トイレや階段、廊下等の照明を人感センサーで制御する 部屋や台所の照明を照度センサーで制御する 高効率機器の 設置 省エネラベリング制度の省エネ基準達成率 100%以上の 製品を選ぶ。(エアコン、冷蔵庫、テレビ、電気便座、蛍 光灯については、統一省エネラベル表示の5つ★の製品 を選ぶ 家庭用エネルギー管理システム(HEMS)など電気使 用量が表示される機器を設置する エネルギー使用 量の把握 エネルギー使用量を報告し、省エネ活動につなげる省エ 13
14 ネノート(あだち環境家計簿)に参加する。(参加するこ とを働きかける) トイレは、JIS規格に定める「節水Ⅱ型大便器」また は「節水Ⅰ型のフラッシュバルブ式便器」と同等以上の 性能及び品質を持つ機器を設置する エコマークの認定を受けた節水水栓を設置する 節水対策 雨水タンクを設置する 太陽光発電システムを設置する 再生可能エネル ギーの活用 太陽熱利用システムを設置する その他特に環境 に配慮した項目 (エネルギー対策以外も含め、環境に配慮した取り組み を記述してください)