ISCN ニューズレター
No.0235
October, 2016
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA) 核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)
目次
1. 核不拡散・核セキュリティに関する動向(解説・分析) --- 4 1-1 国際原子力機関(IAEA) 第 60 回総会について --- 4 2016 年 9 月 26 日~30 日、国際原子力機関(IAEA)第 60 回総会がオーストリアのウィーン の IAEA 本部で開催された。IAEA 事務局長や日本を含む 9 カ国の代表による演説の核不拡 散及び核セキュリティに係る部分の概要と、IAEA の核セキュリティ及び保障措置活動、そして 北朝鮮に対する IAEA 保障措置の履行に係る IAEA 事務局長報告書の概要等について報告 する。 1-2 オバマ大統領の「核兵器のない世界」 -核軍縮、核不拡散に係る最後の奮闘:CTBT に 係る共同声明と国連安保理決議 2310- --- 17 2016 年 10 月現在、米国民の最大の政治的関心事は、11 月に迫った次期米国大統領選挙 である。民主党のヒラリー・クリントンと共和党のドナルド・トランプの両大統領候補者は熾烈な争 いを繰り広げ日々奮闘している。一方でオバマ大統領も、残り僅かとなった大統領任期を見据 え、彼の持論である「核兵器のない世界」の実現に向けて奮闘している。2016 年 9 月、オバマ 大統領のイニシアティブで、5 核兵器国(中仏露英米)は、爆発を伴う核実験のモラトリアム継続 と他国にも同様の措置を求めた「包括的核実験禁止条約(CTBT)に関する声明」を発表し、続 いて国連安全保障理事会では、CTBT の早期発効と各国に核実験の自制を求める決議「国連 安保理決議 2310」が採択された。これらの経緯や概要等を調査したので報告する。 1-3 フランスで放射性廃棄物の地層処分場の設置許可条件と可逆性に関する法案が上下両 院で可決 --- 23 2016 年 7 月 11 日、フランスで放射性廃棄物の地層処分場の設置許可条件と可逆性に関 する法案が可決した。 2. 技術紹介 --- 26 2-1 原子力発電所のサボタージュ防護設計のために --- 26 新規制基準に合致した原子力発電所の安全とセキュリティについて、サボタージュ防護及び インターフェースの観点から、枢要区域特定手法について解説する。 3. 活動報告 --- 34 3-1 マレーシアにおける原子力安全及び核セキュリティ・マネジメントコースへの協力 --- 34 2016 年 8 月、マレーシア原子力庁主催の原子力安全及び核セキュリティ・マネジメントコー スが開催された。ISCN は本コースのカリキュラム開発支援及び講師派遣を行った。その概要 について報告する。 3-2 日本原子力学会「2016 年秋の大会」発表報告-核不拡散、核セキュリティの推進方策に 関する研究について- --- 35 日本原子力学会「2016 年秋の大会」が、9 月 7 日~9 日まで、福岡県久留米市で開催さ れ、核不拡散政策研究として、現在実施している「核不拡散・核セキュリティの推進方策に関す る研究」の全体概要について報告した。3-3 核物質及び原子力施設の物理的防護に係るトレーニングコース --- 36 2016 年 8 月 29 日-9 月 9 日に、核物質及び原子力施設の物理的防護に係るトレーニング コースを開催した。本コースは、核物質及び原子力施設の物理的防護に係る知識を習得する 事を目的とした国際コースである。主としてアジア各国において原子力規制業務に係る政府機 関、原子力事業者、及びその他政府関係機関を対象としており、米エネルギー省・サンディア 国立研究所(SNL)の協力を受けて 2011 年より毎年開催している。第 6 回目となる今回は、10 カ国から 25 名が参加した。 4. コラム --- 37 4-1 計量管理の今昔物語その2 --- 37 先月号に続き、核物質の計量管理について、計量管理は誰のために行っているのか、という 視点から書いてみることにした。結論として、計量管理は、IAEA 保障措置だけのためでなく、 施設者のためになるのである。
1. 核 不 拡 散 ・核 セキュリティに関 する動 向 (解 説 ・分 析 ) 1-1 国 際 原 子 力 機 関 (IAEA) 第 60 回 総 会 について 2016 年 9 月 26 日~30 日、国際原子力機関(IAEA)第 60 回総会がオーストリアの ウィーンの IAEA 本部で開催された。IAEA 事務局長や日本を含む 9 カ国の代表によ る演説の核不拡散及び核セキュリティに係る部分の概要と、2015 年 7 月 1 日~2016 年 6 月 30 日までの IAEA の核セキュリティ活動及び保障措置活動、そして北朝鮮に 対する IAEA 保障措置の履行に係り IAEA 事務局長が提出した 3 つの報告書の概要 について報告する。なお本稿は、IAEA の総会に係るホームページ 1記載の文書等を 参考に纏めたものである。 1. IAEA 事務局長の冒頭演説の概要(核不拡散、核セキュリティに係る部分) 初日に行われた天野 IAEA 事務局長の冒頭演説2における核不拡散及び核セキュ リティ関連の言及は以下のとおり。 保障措置及び追加議定書の結論 保 障 措 置 協 定 を締 結 している 182 カ国 のうち、128 カ国 が追 加 議 定 書 を 締 結 している。保 障 措 置 協 定 及 び追 加 議 定 書 が未 締 結 の核 兵 器 不 拡 散 条 約 (NPT)締 約 国 に対 し、早 急 な発 効 を要 請 する。 イランにおける検認・監視 直 近 数 ヶ月 に IAEA が実 施 した検 認 ・監 視 活 動 では、イランは包 括 的 共 同 作 業 計 画 (JCPOA)を順 守 した活 動 を継 続 していることが確 認 されてい る。 締 結 は未 実 施 であるものの、暫 定 的 に追 加 議 定 書 に基 づいた申 告 を提 出 しており、IAEA は現 在 その申 告 を評 価 中 である。 IAEA は、保 障 措 置 協 定 に基 づいてイランが申 告 した核 物 質 の非 転 用 に 関 する検 認 と、イランにおける未 申 告 の核 物 質 及 び活 動 がないことに関 す る評 価 を継 続 する。 北朝鮮における保障措置の適用 9 月 初 旬 に北 朝 鮮 が実 施 した核 実 験 はたいへん遺 憾 であり、国 連 安 保 理 決 議 に対 する明 確 な違 反 である。
1 IAEA, “60th IAEA General Conference (2016) Documents”, URL:
https://www.iaea.org/About/Policy/GC/GC60/Documents/
2
IAEA, “Statement to Sixtieth Regular Session of IAEA General Conference 2016”, 26 September 2016, URL: https://www.iaea.org/newscenter/statements/statement-to-sixtieth-regular-session-of-iaea-general-conference-2016
2009 年 4 月 以 来 、北 朝 鮮 国 内 に IAEA 査 察 官 は入 っていないが、引 き 続 き同 国 の核 開 発 プログラムについて、特 に寧 辺 サイト(核 開 発 関 連 の施 設 が多 く存 在 )を衛 星 画 像 を含 む手 段 で監 視 している。最 近 の監 視 結 果 では、原 子 炉 、放 射 化 学 研 究 所 、遠 心 分 離 濃 縮 施 設 の運 転 などが観 測 されている。 北 朝 鮮 が国 連 安 保 理 決 議 を完 全 に履 行 するとともに、核 開 発 に関 する課 題 を IAEA と協 力 して解 決 することを要 請 する。 シリアにおける NPT 保障措置協定の実施 2011 年 に破 壊 されたダル・アズルサイトの建 物 は、保 障 措 置 協 定 に基 づ いて申 告 するべき原 子 炉 であった可 能 性 が高 いと IAEA は見 ている。 その他 の 3 ヶ所 の運 転 状 況 等 についても評 価 できる状 況 になっていな い。 中東における IAEA 保障措置の適用 中 東 地 域 の核 活 動 に対 する包 括 的 な IAEA 保 障 措 置 の適 用 について は、いまだに地 域 各 国 間 の見 解 の基 本 的 相 違 が依 然 として残 っており、 進 展 させることは困 難 な状 況 である。 核セキュリティ 本 年 12 月 にウィーンで開 催 される IAEA 核 セキュリティ国 際 会 議 に、加 盟 国 の参 加 を呼 び掛 けている。 この会 議 は、世 界 的 な核 セキュリティの重 要 性 が高 まっているこの時 期 に 開 催 され、核 セキュリティ強 化 に関 する世 界 的 な基 盤 としての IAEA の役 割 に加 盟 国 が協 調 することの重 要 性 を示 す良 い機 会 となろう。 会 議 の結 果 は「核 セキュリティ計 画 2018-2021」への確 固 としたベースとし て提 供 され、加 盟 国 との密 接 な協 議 の中 で進 展 するであろう。 「2016 年 版 核 セキュリティ報 告 書 」では、核 物 質 及 びその他 の放 射 性 物 質 を用 いた不 法 行 為 の防 止 に向 け、国 及 び世 界 的 な支 援 のもとで IAEA の活 動 が継 続 的 に進 展 していることを示 した。 改 正 核 物 質 防 護 条 約 が本 年 5 月 に発 効 したことは、核 セキュリティ強 化 に向 かって国 際 的 なコミュニティが協 調 していることを証 明 したものである。 この新 しい法 的 義 務 の遂 行 について加 盟 国 を支 援 することは、今 後 の IAEA の優 先 課 題 であるとともに、未 批 准 国 への呼 びかけを継 続 する。
燃料供給保証 カザフスタンに設 立 される IAEA 低 濃 縮 ウラン(LEU)バンクは、新 しい保 管 施 設 の建 設 が始 まり、スケジュールどおりに進 捗 している。 6 月 理 事 会 で報 告 したように、LEU の入 手 準 備 は進 行 中 である。 10 月 にウィーンで開 催 される LEU 入 手 に関 する専 門 家 会 合 に加 盟 国 を 招 聘 している。 2. 日本を含む 9 カ国の代表による演説の概要(核不拡散、核セキュリティに係る部 分) (1) 日本3 日 本 は、IAEA の厳 格 な保 障 措 置 の下 、利 用 目 的 のないプルトニウムを 保 持 しない政 策 を維 持 し、プルサーマルの推 進 によりプルトニウムを利 用 していく 4。またプルトニウム利 用 に関 する透 明 性 ・信 頼 性 をさらに高 める ための追 加 的 措 置 を講 じる(プルトニウム管 理 状 況 に関 する年 次 報 告 、 再 処 理 プロジェクトのガバナンス強 化 のための立 法 措 置 (2016 年 5 月 ))。 本 年 4 月 、原 子 力 の先 端 研 究 である核 融 合 、量 子 ・放 射 線 技 術 の研 究 開 発 は新 設 の量 子 科 学 技 術 研 究 開 発 機 構 が推 進 することとなった。ま た、アジア原 子 力 協 力 フォーラム(FNCA)を始 め日 本 が主 導 する様 々な 国 際 協 力 活 動 を通 じて、原 子 力 平 和 利 用 の推 進 と次 世 代 の人 材 育 成 の支 援 を続 けていく。 機 微 な核 物 質 の最 小 化 の観 点 から、本 年 3 月 に JAEA の高 速 炉 臨 界 実 験 装 置 (FCA)から高 濃 縮 ウラン(HEU)と分 離 プルトニウム燃 料 を全 て 撤 去 するとともに、京 都 大 学 臨 界 集 合 体 実 験 装 置 (KUCA)の燃 料 を HEU から LEU に変 換 することを表 明 した。 9 月 には、日 本 の原 子 力 発 電 所 において個 人 の信 頼 性 確 認 のシステム を導 入 することを正 式 に決 定 した。 核 セキュリティの専 門 家 の育 成 に関 しては、日 本 原 子 力 研 究 開 発 機 構 の核 不 拡 散 ・核 セキュリティ総 合 支 援 センター(ISCN)がこの 5 年 間 で 2,700 名 以 上 の専 門 家 のトレーニングを実 施 し、アジアにおける中 核 的 役 割 を担 っている。 3 URL: https://www.iaea.org/sites/default/files/16/09/japan2016_fn.pdf 4 http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000193879.pdf
本 年 は、G7 による「大 量 破 壊 兵 器 ・物 質 の拡 散 に対 するグローバル・ パートナーシップ(GP)」の議 長 を務 め、核 不 拡 散 における多 国 間 の議 論 を主 導 した。 2017 年 6 月 には、「核 テロリズムに対 抗 するためのグローバル・イニシア ティブ(GICNT)」の全 体 会 合 の主 催 を予 定 している。 IAEA 保 障 措 置 の効 果 と効 率 改 善 に向 けて、包 括 的 保 障 措 置 及 び追 加 議 定 書 の普 遍 化 の重 要 性 を強 調 。本 年 はミャンマーにおけるアウト リーチ活 動 を企 画 するとともに、ニジェールにおいて IAEA 保 障 措 置 セミ ナーを支 援 した。 アジアにおける核 不 拡 散 を推 進 するために、アジア太 平 洋 保 障 措 置 ネッ トワーク(APSN)の議 長 としてアジアのシニアレベルの核 不 拡 散 年 次 対 話 を主 催 する。 北 朝 鮮 による本 年 2 度 の核 実 験 及 びミサイル発 射 実 験 は国 際 社 会 に対 する脅 威 であり、まったく受 容 できない。北 朝 鮮 に対 し、これらの実 験 を中 止 するとともに、国 連 安 保 理 決 議 と 2005 年 の六 者 会 合 の共 同 声 明 を遵 守 し、NPT と IAEA 保 障 措 置 体 制 に戻 ることを要 請 する。 (2) 米国5 4 回 の核 セキュリティ・サミットを経 て、核 テロリズムの脅 威 を減 じ、核 セキュ リティを国 際 的 に強 化 するための様 々な成 果 を得 た。 3.8 トンを超 える核 物 質 が成 功 裏 に除 去 あるいは消 滅 できたこと 18 カ国 における 34 カ所 の HEU を使 用 する研 究 炉 及 び放 射 性 同 位 体 (RI)製 造 施 設 で燃 料 が LEU に変 換 されるかまたは閉 鎖 されたこと 15 カ国 と台 湾 において HEU が除 去 されたこと 本 年 、11 カ国 が核物 質 防 護 条 約 の改 正 を批 准 し、同 条 約 が発 効 したこと 米 国 は IAEA の検 認 活 動 に対 する支 援 を継 続 し(180 カ国 における保 障 措 置 査 察 の実 施 に必 要 なインフラ、装 置 、トレーニング、専 門 家 )、包 括 的 保 障 措 置 協 定 や追 加 議 定 書 等 の効 果 的 な実 施 を支 援 する。 (3) ロシア6 合 意 された JCPOA に基 づいて、昨 年 12 月 に余 剰 の LEU 及 び核 物 質 がイランから撤 去 されたほか、本 年 9 月 には 2 回 に分 けてイランの重 水 5 URL: https://www.iaea.org/sites/default/files/16/09/usa2016.pdf 6 URL: https://www.iaea.org/sites/default/files/16/09/russian2016_en.pdf
38 トンがロシアに空 輸 。さらに、フォルドー遠 心 分 離 工 場 において 2 つの カスケード設 備 の改 修 を実 施 した。 ロシアは、IAEA が世 界 の原 子 力 利 用 に占 める主 要 な役 割 を理 解 し、そ の活 動 に支 援 を行 っている。核 セキュリティ分 野 においては、国 際 協 力 に おける IAEA の主 要 な役 割 への支 援 、保 障 措 置 分 野 においては支 援 プ ログラムへの積 極 的 参 画 である。 ロシアは、原 子 力 新 興 国 に対 して積 極 的 な協 力 を進 めているが、何 れも IAEA の標 準 あるいは規 制 に準 拠 して行 うことを基 本 としている。 (4) EURATOM (欧州原子力共同体)7 本 年 5 月 の核 物 質 防 護 条 約 の改 正 の発 効 を歓 迎 する。 高 レベル放 射 性 廃 棄 物 及 び使 用 済 燃 料 の地 層 処 分 施 設 については研 究 段 階 から世 界 初 の建 設 段 階 に進 み、フィンランド、スウェーデン、フラン スにおいて 2020 年 ~2030 年 の間 に運 用 開 始 と予 想 されている。 欧 州 委 員 会 とイランは、同 国 の総 合 研 究 機 関 を EURATOM の原 子 力 研 究 プログラムに参 入 させることを企 図 している。更 に欧 州 委 員 会 は、イ ランが現 在 、未 加 盟 である原 子 力 平 和 利 用 に関 する国 際 条 約 への参 画 を支 援 していく。 域 内 の核 セキュリティ強 化 に主 要 な役 割 をもつ EU-CBRN-COE は、 IAEA の核 セキュリティネットワークと協 調 して効 果 的 なリソースにて最 大 限 の成 果 を上 げるべく活 動 を展 開 する。 保 障 措 置 に関 しては、十 分 に確 立 され保 障 措 置 アプローチを継 続 し、内 部 の緊 密 な協 力 と知 見 共 有 を重 視 する。また、最 終 貯 蔵 に対 する保 障 措 置 をはじめとする新 しい保 障 措 置 の課 題 について、適 切 な技 術 を用 い た実 施 に向 けて検 討 を進 めていく。 (5) 英国8 核 セキュリティ分 野 において IAEA が主 要 な役 割 を果 たしていくための支 援 を資 金 面 と関 連 する専 門 的 知 見 の両 面 から行 っている。この一 環 とし て、本 年 3 月 に IAEA 核 セキュリティ基 金 に援 助 を行 うとともに、IAEA 加 盟 国 に対 して資 金 と知 見 の提 供 を呼 び掛 けている。 原 子 力 発 電 所 のサイバーセキュリティ強 化 を主 導 し、そのための専 門 家 会 合 を本 年 2 度 主 催 した。 7 URL: https://www.iaea.org/sites/default/files/16/09/euratom2016.pdf 8 URL: https://www.iaea.org/sites/default/files/16/09/uk2016.pdf
国 際 核 物 質 防 護 諮 問 サービス(IPPAS)の重 要 性 に鑑 み、ベストプラク ティスの知 見 共 有 のための年 次 セミナーを開 催 するなど同 ミッションを支 援 した。 規 制 の管 理 を外 れた核 物 質 等 ヘの対 応 能 力 の強 化 を目 指 し、核 鑑 識 ラ イブラリの確 立 のための指 針 の開 発 に関 して IAEA と協 働 するとともに、 国 境 におけるセキュリティと国 内 対 応 能 力 の強 化 に向 けた多 国 間 協 力 を 推 進 する。 (6) カナダ9 2015 年 、カナダで初 の IPPAS のミッションを受 け入 れたところ、カナダは 強 固 な核 セキュリティ活 動 を実 施 している旨 の評 価 を受 けた。 新 たに設 立 された核 セキュリティコンタクトグループの第 1 回 会 合 を本 年 9 月 に主 催 。本 グループは、核 セキュリティに関 するコミットメントの実 施 を 促 進 し、世 界 的 規 模 で核 セキュリティの強 化 に向 けた行 動 を維 持 すること を目 指 しており、核 セキュリティ・サミットで概 括 された理 念 と目 的 を改 めて その主 題 に掲 げている。加 盟 国 の参 画 を奨 励 する。 本 年 12 月 に開 催 される IAEA 核 セキュリティ国 際 会 議 において、核 セ キュリティに関 する新 たな脅 威 及 び課 題 に対 応 するとともに核 テロリズム の脅 威 を緩 和 するための「コミットメントと行 動 」に焦 点 が当 てられよう。 国 レベルの保 障 措 置 概 念 (SLC)は、効 果 的 ・効 率 的 な IAEA の業 務 に 資 するものであり、加 盟 国 との協 議 の下 で保 障 措 置 システムの強 化 を 図 っていくことを奨 励 する。 (7) カザフスタン10 セミパラチンスクの核 実 験 場 閉 鎖 25 周 年 を祝 って「核 兵 器 のない世 界 の 構 築 」と題 する国 際 会 議 を開 催 (8 月 29 日 、アスタナ)。カザフスタンはそ の建 国 の初 日 から核 兵 器 なしに発 展 する国 のモデルの有 効 性 を証 明 し てきた。 核 セキュリティ・サミットの基 調 である HEU の撤 去 に関 し、HEU を使 わな い RI 製 造 技 術 の開 発 に注 力 するとともに、この技 術 への変 換 を促 進 す るための経 済 的 メカニズムの確 立 を主 導 している。 昨 年 、IAEA 核 燃 料 バンクの設 立 に関 する協 定 が締 結 され、実 運 転 に向 けたプロジェクトが開 始 した。燃 料 バンクの貯 蔵 施 設 の建 設 が開 始 し、バ ンクの運 用 開 始 を来 年 に計 画 している。 9 URL: https://www.iaea.org/sites/default/files/16/09/canada2016.pdf 10 URL: https://www.iaea.org/sites/default/files/16/09/kazakhstan2016.pdf
イランの核 開 発 に関 する協 議 の成 果 である JCPOA の実 施 プロセスの中 で、イランの国 内 から LEU を撤 去 する見 返 りとしてカザフスタンの国 営 原 子 力 企 業 KAZATOMPROM はイランに対 し 60 トンの天 然 ウランを提 供 することとなった。 (8) イラン11 合 意 された JCPOA の全 てについて最 大 限 の努 力 を以 って実 施 してお り、更 にボランタリーベースの追 加 議 定 書 (AP)についても IAEA と緊 密 に 協 力 して進 めている。 IAEA 保 障 措 置 と関 連 した検 認 メカニズムの実 施 を支 持 するものの、国 レ ベルの SLC/保 障 措 置 アプローチ(SLA)は差 別 的 であったり加 盟 国 の主 権 を貶 めるものであったりしてはならない。IAEA は、機 密 を保 持 する原 則 を維 持 すべきである。 核 セキュリティの主 要 な役 割 を IAEA が果 たすことに対 して信 頼 を置 く が、核 セキュリティ強 化 の様 々な措 置 が原 子 力 平 和 利 用 の活 動 における 国 際 協 力 を阻 害 したり、IAEA の技 術 協 力 プログラムの優 先 づけを弱 体 化 させたりしてはならない。 中 東 初 の原 子 力 発 電 所 であるブシェール原 子 力 発 電 所 は、規 模 を拡 大 する計 画 がある。ブシェール原 子 力 発 電 所 の安 全 のための高 度 なトレー ニングセンターの他 国 への開 放 等 、イランは、中 東 地 域 の核 の安 全 を推 進 していく。 先 の総 会 決 議 (筆 者 注 :第 59 回 総 会 の最 終 セッションにおいて議 決 さ れた IAEA の主 要 な活 動 の強 化 に関 するもので、核 セキュリティについて は IAEA に核 セキュリティ計 画 2014-2017 の継 続 実 施 を求 めている)で 示 されたように、核 セキュリティに関 する新 しいアイデアは IAEA 加 盟 国 の 包 括 的 な参 画 によって検 討 されるべきものであり、限 られたメンバーによる 会 合 は IAEA 加 盟 国 の大 多 数 に認 識 され得 るものとは考 え難 い(筆 者 注 :暗 に核 セキュリティ・サミットを批 判 したもの)。 (9) ブラジル12 AP モデル協 定 に基 づく新 たな保 障 措 置 義 務 は受 け入 れがたい。国 レベ ルの SLA に関 しては、議 論 を通 じ IAEA に大 幅 な責 任 と透 明 性 の機 会 を提 供 することになる観 点 から、加 盟 国 と事 務 局 との間 の対 話 の継 続 を 奨 励 する。 11 URL: https://www.iaea.org/sites/default/files/16/09/iran2016_fn.pdf 12 URL: https://www.iaea.org/sites/default/files/16/09/brazil2016.pdf
リオデジャネイロで開 催 されたオリンピック/パラリンピック大 会 を機 に、核 セ キュリティの推 進 ができたことは重 要 な成 果 。今 後 も、核 セキュリティ強 化 における IAEA の中 心 的 な役 割 を重 視 し、総 合 的 、包 括 的 で透 明 性 を 有 する多 国 間 の枠 組 みでの実 施 を支 持 する。 民 生 用 施 設 における核 物 質 防 護 の実 用 的 措 置 に加 え、HEU 及 びプル トニウムのストックの大 部 分 を占 める核 兵 器 国 が保 有 する核 セキュリティに ついても包 含 すべき。 本 年 25 周 年 を迎 えたブラジル-アルゼンチン核 物 質 計 量 管 理 機 関 (ABACC)は、隣 国 間 の透 明 性 と信 頼 醸 成 プロセスの象 徴 であり、両 国 で 培 った経 験 はラテンアメリカ・カリブ諸 国 が世 界 ではじめに設 立 した非 核 兵 器 地 帯 条 約 (Tlatelolco 条 約 )と相 まって、中 東 や南 アジア等 における 非 核 兵 器 地 帯 の設 立 に向 けて大 変 有 意 義 なお手 本 となろう。 3. 「2016 年版核セキュリティ報告書」の概要 IAEA 総会では、IAEA 事務局長から、2015 年 7 月 1 日~2016 年 6 月 30 日(以 下、「期間中」と略)の IAEA における核セキュリティ活動(「核セキュリティ計画 2018-2021」に記載されている内容の達成事項を含む)等を纏めた「2016 年版核セキュリティ 報告書」13が提出された。その概要は以下のとおり。 国際的な枠組み: 改 正 核 物 質 防 護 条 約 : 条 約 の採 択 から 10 年 以 上 を経 て、2016 年 4 月 8 日 に、締 約 国 数 が 条 約 の発 効 要 件 である 102 カ国 に達 し、本 年 5 月 8 日 に発 効 した。 核 テロリズム防 止 条 約 : 期 間 中 に新 たに 5 カ国 が加 盟 し、2016 年 6 月 末 現 在 の加 盟 国 数 は 104 カ国 となった。 放 射 線 源 の安 全 とセキュリティに関 する IAEA 行 動 規 範 : 2016 年 6 月 末 現 在 、132 カ国 が行 動 規 範 履 行 する意 図 を、そして 105 カ国 が附 属 のガイダンスを履 行 する意 図 を IAEA 事 務 局 長 に報 告 した。 主要な会議等: 核 セキュリティ・サミット: 13
IAEA, “Nuclear Security Report 2016”, GOV/2016/47-GC(60)/11, Date: 24 August 2016, URL: https://www.iaea.org/About/Policy/GC/GC60/GC60Documents/English/gc60-11_en.pdf
2016 年 3 月 31 日 ~4 月 1 日 に米 国 ワシントン D.C.で開 催 された核 セキュリティ・サミットのコミュニケでは、世 界 的 な核 セキュリティ構 造 (global nuclear security architecture)の強 化 に係 り IAEA が中 心 的 な役 割 を果 たすこと、また核 セキュリティに係 る活 動 を行 う国 際 組 織 や イニシアティブ間 の活 動 の促 進 と調 整 の実 施 に係 り、IAEA が先 導 的 な役 割 を果 たすことが再 確 認 された。 GICNT や GP 等 の情 報 交 換 会 合 : 種 々の組 織 やイニシアティブにおける核 セキュリティに係 る活 動 を調 整 し、また重 複 を防 ぐため、「核 テロリズムに対 抗 するためのグローバル・ イニシアティブ(GICNT)」や、「大 量 破 壊 兵 器 ・物 質 の拡 散 に対 するグ ローバル・パートナーシップ(GP)」を含 む計 11 の組 織 及 びイニシアティ ブの参 加 を得 て情 報 交 換 会 合 を開 催 した。 主要な達成事項: 核 物 質 や放 射 性 物 質 の不 正 取 引 及 び不 正 所 持 に係 るデータベース (ITDB): 2016 年 6 月 末 現 在 、ITDB は加 盟 国 政 府 から報 告 された計 2,976 件 のデータを集 積 し、うち期 間 中 に 180 件 が追 加 された。180 件 のう ち 14 件 は不 正 な目 的 で売 却 、購 入 、あるいは使 用 するための核 物 質 や放 射 性 物 質 の不 法 所 持 、43 件 は放 射 線 源 の盗 取 や紛 失 、123 件 はその他 の不 法 な活 動 (核 物 質 や放 射 性 物 質 の不 正 な処 分 など)に 係 るものである。 核 セキュリティに係 るガイダンス文 書 等 の発 行 : 期 間 中 、2 つの実 施 指 針 14が発 行 された。現 在 、4 つの実 施 指 針 15 と、2 つの技 術 手 引 16の発 行 が核 セキュリティ・ガイダンス委 員 会 (NSGC)で承 認 されており、また 2 つの実 施 指 針 17について、加 盟 国 による 120 日 間 コメントが終 了 し、NSGC による承 認 のため、最 終 ドラ 14
2 つの実施指針とは、Security of Nuclear Material in Transport (IAEA Nuclear Security Series No. 26-G)と Nuclear Forensics in Support of Investigations(2006 年発行の IAEA Nuclear Security Series No.2 の改訂版)
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4 つの実施指針とは、Sustaining a nuclear security regime、Developing a national framework for managing response to nuclear security events、Building capacity for nuclear security 及び Preventive and protective measures against insider threats (IAEA Nuclear Security Series No. 8 の改訂版)
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2 つの技術手引とは、Security of instrumentation and control systems at nuclear facilities と、Establishing a system of control of nuclear material for nuclear security purposes
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2 つの実施指針とは、Security of radioactive material in use and storage and associated facilities (IAEA Nuclear Security Series No. 11 の改訂版)と、Security of radioactive material in transport (IAEA Nuclear Security Series No. 9 の改訂版)
フト作 業 中 である。さらに 1 つの実 施 指 針 18及 び 2 つの技 術 手 引 19に ついて加 盟 国 にコメントを求 める予 定 である。 国 際 核 物 質 防 護 諮 問 サービス(IPPAS): 1996 年 以 降 、46 カ国 で計 73 の IPPAS を実 施 した。期 間 中 は、カナ ダや英 国 を含 む 7 カ国 で IPPAS を実 施 した。2016 年 ~2017 年 にか けては、豪 州 や独 国 、中 国 、アラブ首 長 国 連 邦 を含 む 11 カ国 で実 施 予 定 である。 国 際 核 セキュリティ諮 問 サービス(INSServ): 2015 年 11 月 にベラルーシにおいて、国 境 における核 検 知 システムの 監 視 に係 る評 価 等 を実 施 した。 核 セキュリティに係 る人 材 育 成 ・能 力 構 築 : 期 間 中 、インストラクターによる講 義 で 2,085 人 、また e-learning で 680 名 にトレーニングを実 施 した。 IAEA が実 施 する核 セキュリティに係 るトレーニングが加 盟 国 のニーズ に合 致 しているかを調 査 するため、2013 年 10 月 ~2015 年 の 3 月 末 までに IAEA が実 施 したトレーニングに参 加 した約 4 千 名 を対 象 に調 査 を実 施 。対 象 者 の約 38%から得 た回 答 によれば、92%が訓 練 はプ ロとしてのパフォーマンス向 上 に役 立 ったこと、88%が所 属 する機 関 の パフォーマンス向 上 に寄 与 したこと、さらに 80%が訓 練 で学 んだ内 容 を他 者 へのトレーニングで伝 えたことを回 答 している。 核 セキュリティに係 る教 育 につき、2010 年 に設 立 された国 際 核 セキュ リティ教 育 ネットワーク(INSEN)活 動 には、これまで 2,500 人 の学 生 が 参 加 した。2015 年 の年 次 会 合 では、特 定 プロジェクトの核 セキュリティ 支 援 センター(NSSC)ネットワークと協 力 や、核 セキュリティ教 育 分 野 で の研 究 活 動 の計 画 及 び履 行 に合 意 した。 核セキュリティ活動のマネージメント等に係る事項: 期 間 中 の支 出 は 38,214,382 ユーロ(筆 者 注 :2016 年 10 月 7 日 現 在 の レートで約 44 億 円 )である。期 間 中 、IAEA は中 国 、フランス、日 本 、韓 国 、ロシア、英 国 及 び米 国 など計 20 カ国 から核 セキュリティ基 金 への支 出 に係 る誓 約 を得 ている。
18 1 つの実施指針とは、Preventive measures for nuclear and other radioactive material out of regulatory control 19
2 つの技術手引とは、Enhancing nuclear security in organizations associated with nuclear or other radioactive material と、Planning and organization of nuclear security systems and measures for nuclear and other radioactive material out of regulatory control
2016 年から 2017 年の実施目標と優先事項: 2016 年 11 月 22 日 ~23 日 にロンドンで開 催 される IPPAS ミッションに係 る第 2 回 国 際 セミナーや、本 年 12 月 5 日 ~9 日 に開 催 される IAEA 核 セキュリティ国 際 会 議 の準 備 。また「核 セキュリティ計 画 2018-2021」作 成 の準 備 開 始 などがある。 4. 「IAEA 保障措置の有効性の強化と効率性の改善」の概要
IAEA 総会では、IAEA 事務局長から、「IAEA 保障措置の有効性の強化と効率性
の改善」20と題する報告書(GC(60)/13)が提出された。この報告書は、昨年度の総会に 提出された報告書(GC(59)/18)を、2015 年 7 月 1 日~2016 年 6 月 30 日(以下、「期 間中」と略)に実施された事項に合わせて改訂されたものである。 保障措置協定と追加議定書(AP) 期 間 中 、コートジボワールとリヒテンシュタインが AP を発 効 させ、イランで は AP が暫 定 適 用 されている。アフガニスタンとトーゴが少 量 議 定 書 (SQP) を改 正 した。本 年 6 月 末 現 在 、55 カ国 が改 正 SQP を適 用 している。 本 年 6 月 末 現 在 、182 カ国 と台 湾 が IAEA と保 障 措 置 協 定 を締 結 し、う ち 128 カ国 が AP を締 結 し、54 カ国 が未 締 結 である。 保障措置の履行と将来的な展開 IAEA は、包 括 的 保 障 措 置 (CSA)が適 用 されている国 に対 して、核 物 質 の取 得 経 路 の分 析 や国 レベルの SLA の開 発 等 を実 施 している。2014 年 の総 会 後 、IAEA は既 存 の 53 カ国 の SLA の更 新 作 業 を始 め、本 年 6 月 末 までに 27 カ国 の SLA の更 新 、レビュー、承 認 を行 った。残 りの更 新 作 業 は本 年 末 までに終 了 する予 定 である。 保障措置アプローチ 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 1~3 号 機 の炉 内 に残 された核 燃 料 にはアクセ スできないが、監 視 システムと中 性 子 及 びガンマ線 モニタリング等 により核 物 質 の移 動 がないことを確 認 している。現 在 、これらのモニタリングシステ ムのデータを IAEA 東 京 事 務 所 に伝 送 する措 置 が講 じられている。 六 ヶ所 の MOX 燃 料 製 造 施 設 に関 しては、進 展 はあまりないが、施 設 附 属 書 (FA)が作 成 されつつあり、IAEA と日 本 政 府 の間 で議 論 される予 定 である。 20
IAEA, “Strengthening the Effectiveness and Improving the Efficiency of Agency Safeguards”, GC(60)/13, 12 August 2016, URL: https://www.iaea.org/About/Policy/GC/GC60/GC60Documents/English/gc60-13_en.pdf
IAEA は、使 用 済 燃 料 のキャニスタ封 入 プラント(Encapsulation plant)や 地 層 処 分 場 、パイロプロセス施 設 やレーザー濃 縮 施 設 といった新 しい施 設 における保 障 措 置 の履 行 に係 る準 備 を進 めている。本 年 4 月 、地 層 処 分 への保 障 措 置 適 用 (ASTOR)に関 する専 門 家 グループは米 国 で会 議 を 開 催 し、将 来 的 な保 障 措 置 技 術 や機 器 、必 要 とされる作 業 等 について議 論 した。 情報技術
IAEA は、保 障 措 置 情 報 技 術 の最 新 化 (MOSAIC)プロジェクトの下 で、IT インフラストラクチャー(情 報 通 信 基 盤 )のアップグレードと最 適 化 を継 続 し ており、2018 年 半 ば頃 には計 画 を完 遂 する予 定 である。
分析サービス
核 物 質 と環 境 サンプリングの収 集 及 び分 析 は保 障 措 置 活 動 に必 要 不 可 欠 であり、IAEA におけるサンプルの分 析 は、核 物 質 分 析 ラボ(NML)と環 境 試 料 クリーンラボ(ECL)から成 る IAEA の保 障 措 置 分 析 所 (SAL)で実 施 されている。保 障 措 置 分 析 サービス能 力 拡 大 (ECAS)プロジェクトの下 、 2015 年 12 月 には新 しい NML への移 行 に必 要 な作 業 が終 了 し、IAEA の放 射 線 安 全 及 び核 セキュリティ規 制 官 による承 認 及 びオーストリア政 府 による確 認 後 、NML の暫 定 運 用 が 12 月 に開 始 した。 保障措置機器及び技術 昨 年 度 の報 告 以 降 、6,200 以 上 もの検 認 装 置 が査 察 活 動 を支 援 するた めに配 置 された。JCPOA 下 でのイランに対 する検 認 とモニタリングに関 連 し、ウラン濃 縮 度 を測 定 するため、新 規 に開 発 され承 認 を受 けた「オンライ ン濃 縮 度 モニター」がイランのナタンズ濃 縮 施 設 に設 置 された。 国家や地域の機関等との協力及び支援 IAEA 保 障 措 置 の有 効 性 の向 上 と効 率 化 は核 物 質 の計 量 管 理 に係 る国 家 や地 域 の保 障 措 置 制 度 (SSACs/RSACs)の有 効 性 に依 拠 する。そのた め IAEA は国 家 や地 域 と協 力 し、法 規 制 の整 備 や人 材 及 び技 術 能 力 の 向 上 を図 っている。人 材 育 成 に関 しては、期 間 中 、計 9 つの SSAC トレー ニングのコースを、地 域 ベースでは韓 国 、チリ及 びアゼルバイジャンで、ま た国 家 ベースではカナダやモルドバ、アラブ首 長 国 連 邦 やカザフスタン等 で開 催 した。また、日 本 の始 め 6 つのトレーニングコースに講 師 を派 遣 し、 机 上 演 習 を行 った。 保障措置に係る人員 イランに対 する検 認 を行 うオフィスが新 設 に伴 う、IAEA スタッフの配 置 転 換 や採 用 のため、ショート・ノーティスで保 障 措 置 に係 る研 修 が実 施 された
ケースも見 られた。IAEA スタッフへの保 障 措 置 に係 る研 修 コースは、核 物 質 の取 得 経 路 や SLA の開 発 、MOSAIC プロジェクトの下 で開 発 された IT を適 用 した保 障 措 置 に係 るコース等 が新 たに加 わった。 保障措置実施報告書(SIR) IAEA 事 務 局 は、2015 年 における IAEA 保 障 措 置 の実 施 に係 る結 論 を 纏 めた、2015 年 版 保 障 措 置 実 施 報 告 書 (SIR)を提 出 した。本 年 6 月 の 理 事 会 は SIR をテイクノートし、2015 年 版 保 障 措 置 声 明 21等 の公 表 を許 可 した。 戦略計画 IAEA 事 務 局 は 2015 年 に保 障 措 置 局 の「2012 年 ~2023 年 の長 期 戦 略 」の更 新 作 業 を開 始 し、また「2012 年 ~2023 年 の長 期 研 究 開 発 計 画 」 を継 続 実 施 している。2016 年 2 月 、IAEA 事 務 局 は、検 証 能 力 の強 化 を 意 図 し、短 期 ニーズと既 存 の活 動 の調 整 等 を図 るため、「2016 年 ~2017 年 の検 証 のための開 発 履 行 支 援 プログラム」を公 表 した。 5. 「IAEA と北朝鮮との間の NPT 保障措置協定の実施」に関する決議22の概要 北 朝 鮮 の核 実 験 を強 く非 難 し、これ以 上 核 実 験 を行 わないことを求 める。 事 務 局 長 報 告 で報 告 された、5MWe 研 究 炉 の再 稼 働 や、ウラン濃 縮 活 動 、軽 水 炉 建 設 を非 常 に遺 憾 とし、核 物 質 製 造 を目 的 とした活 動 の停 止 を求 める。 2005 年 9 月 19 日 の6カ国 協 議 の共 同 声 明 で約 束 、及 び国 連 安 保 理 決 議 の義 務 に従 い、核 開 発 放 棄 の履 行 を強 く求 める。 北 朝 鮮 は NPT によって核 保 有 国 の地 位 を有 することはできない。 2016 年 9 月 30 日、北朝鮮の核実験を非難する決議は全会一致で採択された。 【報告:政策調査室 玉井 広史、田崎 真樹子、清水 亮】 21 筆者注:IAEAは、毎年、前年に実施した保障措置活動について評価結果をとりまとめた「保障措置声明」を公 表している。 22
IAEA, “Implementation of NPT safeguards agreement between the Agency and the Democratic People's Republic of Korea”, -GC(60) /RES/14,September 2016, URL:
1-2 オバマ大 統 領 の「核 兵 器 のない世 界 」 -核 軍 縮 、核 不 拡 散 に係 る最 後 の奮 闘 :CTBT に係 る共 同 声 明 と国 連 安 保 理 決 議 2310- 1. オバマ大統領が模索した核政策の変更 「オバマ大統領の核兵器のない世界:プラハからベルリン、そして広島へ」と題する 記事23で報告したとおり、2009 年 4 月のプラハ演説でオバマ大統領が「核兵器のない 世界」に至る道筋として掲げた核軍縮、核不拡散及び核セキュリティの 3 つの分野に 亘る計 10 個の具体的な方策のうち、核セキュリティ分野では、核セキュリティ・サミット の開催や改正核物質防護条約の発効、核兵器に利用可能な核物質の最小化等によ り、国際的な核セキュリティ強化のモメンタムが形成された。一方、核軍縮及び核不拡 散分野では、2009 年 4 月の米露間での新しい戦略核兵器削減条約(新 START)締 結と、2015 年 10 月のイランの核問題に係る「包括的共同作業計画(JCPOA)」の合意 達成を除いては、目立った進展は見られてない。 この核軍縮及び核不拡散に係り、2016 年 7 月 10 日付のワシントン・ポスト紙 24は、 大統領としての任期が残り約半年と迫ったオバマ大統領が「核兵器のない世界」を目 指す上で、以下を含む米国の核兵器に係る政策(核政策)の大きな変更を模索してい ることを報じた。 ①米国が核兵器の「先制不使用」を宣言すること、 ②国連安全保障理事会で核実験の禁止を求める決議の採択を目指すこと、 ③露国に新 START の 5 年間の延長を求めること、 ④米国の核兵器の近代化に係る長期計画を縮小すること。 加えて同紙は、上院外交委員会のボブ・コーカー委員長(共和党、テネシー州)と 軍事委員会のジョン・マケイン委員長(共和党、アリゾナ州)が、オバマ政権が任期最 後の半年間で上記のような大きな変更を行うことは上院との約束を反故にし 25、また米 国の核兵器の抑止力を弱めるとの懸念等を記載した書簡をオバマ大統領に送付した こと、さらに核政策の変更に反対する議会共和党議員も、オバマ大統領が米国の核の 傘下にある欧州や北東アジアの同盟国への影響を考慮していないと批判している旨 を報じている。 2. オバマ大統領が目指した核実験の禁止 23 「オバマ大統領の核兵器のない世界:プラハからベルリン、そして広島へ」、ISCN ニューズレター、2016 年 6 月 号、URL: http://www.jaea.go.jp/04/iscn/nnp_news/attached/0231.pdf#page=4 24
Josh Rogin, “Obama plans major nuclear policy changes in his final months”, The Washington Post, 10 July, 2016, URL: https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/obama-plans-major-nuclear-policy-changes-in-his-final-months/2016/07/10/fef3d5ca-4521-11e6-88d0-6adee48be8bc_story.html?utm_term=.6644eb6b1b9f
25
両議長は、新 START 条約を承認させるために議会を説得するのと引き換えに、核兵器の近代化をオバマ大統 領に約束させたという。
上記 1.に記したオバマ大統領の核政策の変更の①~④のうち、本稿では②に焦点 を当てる。核実験の禁止に係る国際条約としては、1996 年 9 月に国連総会で採択さ れた包括的核実験禁止条約(CTBT)がある。2016 年 9 月現在、CTBT 署名国は 183 カ国、批准国は 166 カ国 26であるが、条約の発効要件国 44 カ国のうち米国を含む 8 カ国27が条約を批准しておらず、条約採択から 20 年を経た現在も未発効である。しか しこの CTBT には、検証制度の整備など条約実施のための準備を行う CTBT 機関 (CTBTO)準備委員会が既にウィーンに設置されており、また署名国の分担金による年 間約 1.26 億ドル(2015 年)の予算で国際監視制度(IMS)や現地査察(OSI)等の条約 検証能力の整備が進められている。この IMS については、核実験を 24 時間監視する ため、地震学的監視施設、放射性核種監視施設、水中音波監視施設、微気圧振動 監視施設といった観測施設を世界 337 ヶ所に設置することが条約に定められており、 現在、既に 300 ヶ所以上(約 90%)の整備が完了し、未発効段階であっても事実上の 核実験監視体制が運用されていることなど他の条約に類を見ない CTBT の特異性と なっている。 米国クリントン大統領(任期:1993~2001 年)は CTBT 採択直後に同条約に署名し たが、共和党が主導する米国議会上院は 1999 年 10 月に以下を含む事項を理由 28 に CTBT 批准案を否決29し、したがって米国は未だ CTBT を批准していない。 将 来 的 にも核 実 験 を行 わずに核 兵 器 の安 全 性 や信 頼 性 を担 保 できるの か不 明 であり核 実 験 を実 施 する選 択 肢 を残 しておく必 要 があること、 米 国 が条 約 を批 准 しても他 の条 約 未 署 名 ・未 批 准 国 が核 実 験 を行 う可 能 性 を否 定 できないこと、 CTBT の国 際 監 視 制 度 (IMS)が確 実 に核 実 験 の実 施 を監 視 できるのか (否 、できないだろう)。 一方で米国が CTBT を批准すれば、米国を除けば残された唯一の核兵器不拡散 条約(NPT)上の核兵器国である中国も、米国に追随するであろうことが期待されている。 「核兵器のない世界」に至る道程の一方策として、米国が CTBT を早期に批准する 必要性を一貫して訴えてきたオバマ大統領の思惑は、上記②の核実験の禁止を求め る国連安保理決議を採択することにより、CTBT の批准に反対している上院に敢えて 批准を求めずとも、米国が核実験を行わないことを国際的にコミットすることであった。 26 外務省、CTBT 署名・批准-地域別の状況、http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000021240.pdf 27 中国、エジプト、イラン、イスラエル、米国、インド、北朝鮮及びパキスタン。前 5 国は署名済だが批准しておら ず、前 3 国は署名もしていない。 28 共和党のその他の反対理由としては、翌年(2000 年)の大統領選挙での政権奪還を意図していた共和党がクリ ントン民主党政権の失政を際立たせ、大統領選を優位に運ぶとの政治的思惑から、CTBT 批准案を否決したとも 分析されている。出典:末木由紀、「ブッシュ政権による CTBT 離脱~共和党の狙いについて~」、URL: http://fs1.law.keio.ac.jp/~kubo/seminar/kenkyu/mitasai/2002/17sueki.PDF 29 条約の批准には上院議員の 2/3 の賛成(67 票)を必要とするが、批准案は 48 対 51 で否決された
左記に関し、ジュリア・フリンフィールド国務次官補(立法担当)は、米国は核実験の禁 止に係り法的義務を課す国連安保理決議を求めてはいないが、核実験の法的禁止を 5 核兵器国がコミットする新たな政治声明(後述 4.を参照)を発し、さらに核実験のモラ トリアム(一時停止)を求める国連安保理決議を採択することを目指している、と述べて いた 30(ただし後述の 5.に記すように、国連安保理決議に係り、オバマ政権が最初か ら法的義務を課す決議を求めていなかったかどうかは定かではない)。 しかし上記のような声明や国連安保理決議は、CTBT の批准に反対する共和党主 導の議会を迂回(バイパス)することになる。このような上院による条約の承認(不承認) を迂回する手法は、オバマ大統領がイランの核問題に係る包括的共同作業計画 (JCPOA)の合意とその履行に係り採用した手法であり、JCPOA に反対していた上院の 共和党議員は苦い経験を有していることから31、当然に今回も共和党議員が反対する ことが予想された32。 3. オバマ大統領と対峙する議会共和党の反応 上院共和党は予想通り、上述の②について強硬に反対した。上院外交委員会のボ ブ・コーカー委員長は 8 月 12 日付で以下を含む内容の書簡 33をオバマ大統領宛に 送付し、上院が CTBT の批准を否決したにも拘わらず、それを迂回して国連安保理に 対して決議の採択を求めるべきではないこと等を主張している34。 米 国 憲 法 は上 院 にすべての条 約 の批 准 を承 認 (不 承 認 )する権 利 を付 与 しているにも拘 わらず、オバマ政 権 はそれを(無 視 して上 院 を)迂 回 しようと している。 オバマ政 権 は、核 実 験 が CTBT の「趣 旨 と目 的 」を損 なうとの政 治 声 明 を 発 すること、核 実 験 の禁 止 を求 める国 連 安 保 理 決 議 の採 択 を目 指 してい るが、それらにより米 国 は将 来 的 に核 実 験 が必 要 となった場 合 でも核 実 験 を実 施 できなくなる。 30
“State letter reveals plan for U.S. legal commitment to Unratified Nuclear Treaty”, 7 September 2016, The Washington Free Beacon, URL: http://freebeacon.com/national-security/state-letter-reveals-plan-u-s-legal-commitment-unratified-nuclear-treaty/ 31 オバマ政権はイランとの合意(JCPOA)を条約ではなく行政取極と位置付けて議会上院に付議しなかった。これ に対し上院の共和党議員は、JCPOA の履行を阻止するため、JCPOA の不承認決議案を採決する目的で討論終 結の動議を提出したが、民主党及び無所属の 42 名が反対し、共和党は動議を可決させるための 60 票以上を獲 得できず動議は否決された。結果として承認決議案は採決されず、合意が履行されることとなった。 32
Josh Rogin, “Obama will bypass Congress, seek U.N. resolution on nuclear testing”, The Washington Post, 4 August, 2016, URL: https://www.washingtonpost.com/news/josh-rogin/wp/2016/08/04/obama-will-bypass-congress-seek-u-n-resolution-on-nuclear-testing/
33 URL:
http://www.corker.senate.gov/public/_cache/files/3224510d-18c7-467d-aabb-a6ca7d4cdf31/Senator%20Corker%20letter%20on%20CTBT%208-12-16.pdf
34
“Inside the Ring: Senate chairman hits Obama on test ban treaty”, 17 August 2016, Washington Times, URL: http://www.washingtontimes.com/news/2016/aug/17/inside-the-ring-senate-chairman-hits-obama-on-test/
残 り 4 カ月 しか大 統 領 任 期 がないオバマ大 統 領 が上 記 のような重 大 事 項 を決 定 すべきではない。 またマルコ・ルビオ上院議員も、32 名の上院共和党議員と共に 9 月 8 日付でオバ マ大統領に書簡 35を送付し、もしオバマ大統領が上院の反対にも拘わらず、核実験を 禁止するとの国際的な義務を CTBT 署名国に課すとの国連安保理決議の採択を目 指すのであれば、米国が毎年実施している CTBTO 準備委員会への財政支援を議会 が承認しないようあらゆる努力を払う等を述べ、オバマ大統領を脅かした。 4. 5 核兵器国による「CTBT に係る共同声明」 上述した上院共和党議員の反対はあったものの、オバマ大統領のイニシアティブで、 2016 年 9 月 15 日、5 核兵器国(中仏露英米)は、「CTBT に係る共同声明」を発表し た 36。共同声明は、5 核兵器国による核兵器の維持及び管理は NPT 及び CTBT の 趣旨と一致し、また核兵器国として NPT 第 6 条が求める核軍備競争の中止に努力す るとともに核軍備競争に決して関与しない意図を再確認するとして 5 核兵器国による 核兵器の保有を正当化しつつも、以下を含む事項を盛り込んでいる。 5 核 兵 器 国 は CTBT の早 期 発 効 に取 り組 むとともに、すべての国 に CTBT の署 名 及 び批 准 を促 す。 5 核 兵 器 国 は爆 発 を伴 う核 実 験 のモラトリアムの継 続 を再 確 認 する。ただ し左 記 はモラトリアムであり、CTBT の発 効 に伴 う恒 久 的 な核 実 験 の禁 止 に係 り署 名 国 を法 的 に拘 束 するものとは異 なる。 他 の国 にも核 実 験 のモラトリアムを求 める。 爆 発 を伴 う核 実 験 や核 爆 発 を実 施 すれば、CTBT の「趣 旨 と目 的 」を損 な う。 上記を解説すると、まず 1 点目につき、米国は議会上院の立場に拘わらず、CTBT の早期発効に取り組むことにコミットしたことになるが、その点は従来の方針とは変わら ない。また核実験のモラトリアムにつき、5 核兵器国は 1996 年以降、核実験を実施せ ずモラトリアムを維持しており、その点ではこの声明は、5 核兵器国の従来の方針を確 認したものである。一方で 1996 年以降、核実験を実施したのはインド、パキスタン及び 北朝鮮であるが、インドは 1998 年に自発的に核実験のモラトリアムを宣言しており、報 道によれば、2016 年 8 月にパキスタンはインドに対して核実験のモラトリアムを含む二 35 URL: http://www.rubio.senate.gov/public/_cache/files/5144be8b-4cfc-422a-8017-cc19d362a778/6971525E619F533B35207A7868DEB787.ctbt-letter-final-2016.pdf 36
U.S. Department of State, “Joint Statement on the Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty by the Nuclear Nonproliferation Treaty Nuclear Weapon States”, 15 September, 2016, URL:
国間取極の締結を申し出たという 37。またイスラエルは核兵器を保有しているとも保有 していないとも明言していない。したがって、上記の 3 点目の「他の国に核実験のモラ トリアムを求める」との言及は、国名を名指ししていないものの、2016 年 9 月 9 日に 5 回度目の核実験の実施を発表した北朝鮮を暗に牽制したものであることは明らかであ る。しかしそれ以外は、5 核兵器国の従来の立場をあらためて確認したものである。 5. 核実験の自制を求めた国連安保理決議 2310 続いて 2016 年 9 月 23 日、国連安全保障理事会は、米国や日本を含む計 42 カ国 が共同提案した CTBT に関する決議(UNSCR 2310)を、賛成 14、反対 0、棄権1(エジ プト 38)で採択した 39。CTBT に特化した決議を常任理事国が一致して採択するのは 初めてであり40、決議の主要ポイントは以下の通りである。 CTBT 未 署 名 国 及 び未 批 准 国 、特 に発 効 要 件 国 による遅 滞 ない CTBT への署 名 または批 准 を奨 励 する。 全 CTBT 署 名 国 による CTBT の普 遍 化 及 び早 期 発 効 の促 進 を奨 励 す る。CTBT の早 期 発 効 は核 軍 縮 と核 不 拡 散 への効 果 的 な措 置 であり、核 兵 器 のない世 界 の達 成 に貢 献 する。 すべての国 に核 実 験 その他 の核 爆 発 の自 制 及 び核 実 験 のモラトリアムを 求 める。核 兵 器 の実 験 的 爆 発 その他 の核 爆 発 が CTBT の「趣 旨 及 び目 的 」を損 なうとの 9 月 15 日 の 5 核 兵 器 国 による「CTBT に係 る共 同 声 明 」 に留 意 する。 すべての国 際 監 視 制 度 (IMS)施 設 所 在 国 による国 際 データセンターへの データ送 付 を奨 励 する。 CTBT の検 証 体 制 による監 視 ・分 析 が信 頼 醸 成 措 置 として地 域 的 な安 定 に寄 与 し、核 不 拡 散 ・軍 縮 体 制 を強 化 していることを確 認 する。 上記決議は、2.に記したジュリア・フリンフィールド国務次官補が述べたように、あく まで「慫慂する」、「奨励する」といった努力目標となっており、米国を含め署名国は義 務を負わない。この点、当初米国は、法的拘束力を求める表現を決議に入れることを 37 ただし、この理由はパキスタンがインドとともに加盟を望む原子力供給国グループ(NSG)対応を有利に運ぶため の一つであると報じられている。“Pakistan offers India moratorium on nuclear tests”, The Express Tribune Pakistan, 17 August 2016, URL: http://tribune.com.pk/story/1164259/pakistan-offers-india-moratorium-nuclear-tests/
38
エジプトは決議案に核保有国による核軍縮義務への言及がないとして棄権したと報じられている。
39 外務省、「包括的核実験禁止条約(CTBT)に関する安保理決議(第 2310 号)の採択」、平成 26 年 9 月 27 日、
URL: http://www.mofa.go.jp/mofaj/dns/ac_d/page25_000543.html、 “Adopting Resolution 2310 (2016), Security Council Calls for Early Entry into Force of Nuclear-Test-Ban Treaty, Ratification by Eight Annex 2 Hold-Out States”, 23 September 2016, URL: http://www.un.org/press/en/2016/sc12530.doc.htm
40
朝日新聞、「核実験の自制求める決議採択 国連安保理、法的義務なし」、2016 年 9 月 14 日、URL: http://www.asahi.com/articles/ASJ9R5HNGJ9RUHBI023.html
要求していたが 41、露国や中国の反対を考慮して最終的には法的拘束力を含まない 決議で妥協し、結果として核実験の自制やモラトリアムを「奨励する」等との努力目標と しての決議となったとの報道もあり 42、拘束力が伴わないことで決議の重みが落ちたと も評されている43。 6. 解説:CTBT に係る共同声明と国連安保理決議 2310 の意義と現実 上述したようにオバマ大統領は、残り僅かな大統領在任期間の中で、議会上院共 和党の反対にひるまず、議会上院の権限を事実上、迂回することになることは十分承 知の上で、残り少ない大統領としての任期の中で CTBT に係り、5 核兵器国による共 同声明及び国連安保理決議に踏み切った。しかし、それらに法的拘束力はなく、した がって米国が上院の反対で CTBT を批准できない現状に変化はない。また、CTBT 批 准に反対する上院共和党の反対を押し切ったが故に、さらに残り少ない任期中での 批准は到底不可能であろう。つまり、オバマ大統領が CTBT に係り奮闘したが、米国 内では現在の CTBT を巡る状況を打開できないということである。一方で将来につい て、「2016 米国大統領選 その1:民主党及び共和党の政策綱領と両党候補者の主張 等の分析」と題する記事44で報告したように、ヒラリー・クリントンが大統領になれば上院 に対して CTBT の批准に向けた努力を続けるであろうし、反対にドナルド・トランプが 大統領になれば、批准を求めさえしないであろう。 しかし、結果論は別にして、CTBT 採択後の 20 周年に鑑み、オバマ大統領が奮闘 し、CTBT に特化した初めての国連安保理決議という形で、改めて世界に CTBT の重 要性等を訴え、CTBT にスポットライトを当てた、という点では、彼の奮闘はそれなりに 意味あるものだったのと言えよう。 また、CTBT の早期発効に向けてアクションを起こしているのはオバマ大統領だけで はない。1999 年以降、CTBT の条項 45に従って隔年で各国大臣レベルが出席する CTBT 発効促進会議が開催されている。また 2002 年以降は、CTBT の発効促進活動 を調整・推進するため、日豪蘭を含めた計 6 カ国 46により、フレンズ外相会合も開催さ れている。さらに CTBT より前進し、2016 年 8 月に国連の核軍縮作業部会は、核兵器 禁止条約の締結交渉を 2017 年中に開始するよう国連総会に勧告する報告書を多数 決 47で採択するなど、核兵器国による核軍縮努力に頼らないメキシコやオーストリア等 による独自の動きも加速している(ただし米国は早急すぎるとの理由で核兵器禁止条 41 法的拘束力を伴う決議には、国連安保理による「決定」を必要とする(国連憲章第 25 条) 42 NHK、「国連安保理、核実験の自制を各国に求める決議採択」、2016 年 9 月 24 日 43 朝日新聞、「核実験抑止、遠い理想 安保理決議、法的拘束力盛らず」、2016 年 9 月 25 日、URL: http://www.asahi.com/articles/DA3S12576240.html 44 「2016 米国大統領選 その1:民主党及び共和党の政策綱領と両党候補者の主張等の分析」、ISCN ニューズ レター、2016 年 9 月号、URL: http://www.jaea.go.jp/04/iscn/nnp_news/attached/0234.pdf#page=8 45 CTBT 第 14 条 2 は、署名開放後 3 年を経過しても発効しない場合、批准国の過半数の要請によって、発効促 進のための会議を開催することを定めている 46 日豪蘭の他、加国、フィンランド及び独国の計 6 カ国。 47 賛成 68、反対 22、棄権13。日本は棄権した。
約の制定には反対のスタンスである 48)。その意味で、オバマ大統領は米国自身の核 軍縮に向けた動きを必ずしも促進することはできなかったが、プラハやベルリン、広島 を訪問して「核兵器のない世界」を繰り返し主張し、自らも国際的な行動を起こすこと で「核兵器のない世界」に向けたモメンタムを盛り上げることには貢献したと言えるので はないだろうか。 【報告:政策調査室 田崎 真樹子】 1-3 フランスで放 射 性 廃 棄 物 の地 層 処 分 場 の設 置 許 可 条 件 と可 逆 性 に関 する法 案 が上 下 両 院 で可 決 【概要】 2016 年 7 月 11 日、フランス国民会議(下院)で放射性廃棄物の処分における可逆 性について定める法案「高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の可逆性のある 地層処分場の設置許可条件について規定する法律」が可決された 49。同法は、2016 年 5 月 17 日に上院で可決されていた 50。この法律は、地層処分のプロジェクトである
CIGEO (Centre industriel de stockage géologique)で実施する高レベル放射性廃棄物と 長寿命の中レベル廃棄物を貯蔵するための施設建設を進める内容になっており、こ れは 2006 年の「放射性廃棄物等管理計画法51」における、放射性廃棄物の貯蔵に関 連し「可逆性(réversibilité)の原則」を定め設置許可を発給する、との規定に対応したも のである52。 【内容】 1991 年に制定された放射性廃棄物管理研究法で、主に安全の観点から可逆性に 48 毎日新聞、「米次官補、核兵器禁止条約に反対 「機能しない」」、2016 年 7 月 1 日、URL: http://www.sankei.com/world/news/160701/wor1607010034-n1.html 49
ANDRA ‘L’Assemblée nationale adopte la loi sur la réversibilité et les modalités de création de Cigéo’ http://www.andra.fr/download/site-principal/document/communque-de-presse/communiqur-de-presse-loi-11-juillet-def.pdf 50 原子力環境整備促進・資金管理センター「フランスで地層処分場の設置許可条件と可逆性に関する法律が成 立」 http://www2.rwmc.or.jp/nf/?p=17682 51 1991 年に放射性廃棄物の管理研究に関する法律が制定された。社会党バタイユ議員が中心となり制定された ため、バタイユ法とも呼ばれる。2006 年の放射性廃棄物管理計画法により改定され、放射性廃棄物管理公社 (Agence Nationale pour la gestion des Dechets Radioactifs:ANDRA)が放射性廃棄物の研究と管理を行う組織とし て CEA から独立した。ANDRA はフランスにおける放射性廃棄物処分の実施主体として低中レベルの放射性廃 棄物処分場を操業するとともに、高レベル放射性廃棄物処分に関する深地層処分研究開発を行っている。
52 ACTU environment.com ‘Enfouissement des déchets radioactifs : l'Assemblée fixe les modalités de création de
Cigéo ’
http://www.actu-environnement.com/ae/news/enfouissement-dechets-radioactifs-cigeo-bure-vote-assemblee-loi-27202.php4
ついての方針を法律に含むことが定められていた 53。その後、2006 年放射性廃棄物 等管理計画法で、可逆性を必要とする期間に関しては、処分場閉鎖後、100 年以上 の可逆性を確保する期間を設けることが規定され、ANDRA が 2015 年に設置許可申 請書を提出することが規定された。さらに、設置許可申請書が提出された後は、政府 が地層処分の可逆性の原則条件を定める法案を提出することを規定しており、今回は これを受けた立法となる。また、2006 年の法律で 2015 年に予定していた設置許可の 申請時期については、2013 年に実施された国民討論会の結果を受け、2018 年に延 期し、許可の発給は早くて 2025 年頃、廃棄物受け入れは 2030 年頃になるとみられて いる54。 可逆性については「地層処分場の建設・操業を段階的に継続すること、又は将来世 代が過去の選択を見直し、管理方法を変更することを可能にすること」と定義し 55、環 境法典 56に可逆性についても盛り込まれることになった。可逆性の定義 57は下記のと おり。 「可 逆 性 」とは、地 層 処 分 場 の建 設 ・操 業 を段 階 的 に継 続 すること、または 過 去 の選 択 を見 直 し、管 理 方 法 を変 更 することが将 来 世 代 にとって可 能 とすることである。 可 逆 性 は、将 来 の技 術 進 歩 を反 映 し、エネルギー政 策 の転 換 による廃 棄 物 インベントリの変 更 に対 応 するために、地 層 処 分 場 の建 設 を段 階 的 に 進 め、設 計 を調 整 可 能 とし、操 業 の柔 軟 性 を確 保 することによって実 行 さ れる。 可 逆 性 には、定 置 済 の廃 棄 物 パッケージが、処 分 場 の操 業 ・閉 鎖 戦 略 と 整 合 した方 法 及 び期 間 において、回 収 可 能 であることが含 まれる。 53 当時 CEA の一部門であった ANDRA が 4 つの地域での地質調査に着手したが、地元の反対を受けて調査の 停止に至った。その後、1991 年放射性廃棄物管理研究法で高レベル・長寿命放射性廃棄物の管理方策に関し 3 つのオプション①長寿命の核種の核変換②可逆性のあるまたは可逆性のない地層処分の実現可能性③長期中間 貯蔵の方法、および事前の前処理方法に関する調査を行うことと定めた。その調査結果等を受け、2006 年の放射 性廃棄物等管理計画法が成立する。
54 Reuters, ‘Feu vert au projet d’enfouissement des dechets radioactifs’
http://fr.reuters.com/article/topNews/idFRKCN0ZR27W 55 電気事業連合会「放射性廃棄物地層処分の可逆性を条件とした法案成立」 https://www.fepc.or.jp/library/kaigai/kaigai_topics/1255054_4115.html 56 環境法典 Code de l'environnement は憲法の下位に位置する法律。比較的古い民法典、商法典、刑法典等と異 なり、第二次世界大戦後に環境関連法が整理されて作られた。2006 年原子力基本法に相当する「原子力に関す る透明性及び安全性に関する法律」が制定され原子力規制機関 ASN が設立したが、その後の改定により、現在 の設置根拠法は環境法典になっている。 http://www.legifrance.gouv.fr/affichCode.do?cidTexte=LEGITEXT000006074220&dateTexte=20110118 57 今回の法律に記載されている可逆性の定義(フランスにおける地層処分に際し使用する可逆性についての定 義) 原子力環境整備促進・資金管理センター http://www2.rwmc.or.jp/nf/
可 逆 性 は、環 境 法 典 に定 める公 衆 の安 全 、保 健 、衛 生 の保 証 、自 然 環 境 の保 護 の目 的 を遵 守 するよう確 保 されなければならない。可 逆 性 の原 則 については少 なくとも 5 年 に 1 度 の頻 度 でレビューを行 う。 上記のとおり可逆性について、将来世代が過去の選択を見直すことができるよう「定 置済み廃棄物を、回収可能(récupérabilité)であることが含まれる」と規定し、可逆性を 持たせる期間は 100 年以上と想定されるが、詳細については規定されていない。 フランスでの使用済燃料は年間約 1150 トンでありそのうち約 850 トンが再処理され、 約 200 トンがそのまま蓄積されている。プルサーマル用 MOX 燃料の使用済燃料は毎 年約 100 トン発生しており、これについても当面はそのまま貯蔵する方針となっている。 CIGEO には使用済燃料の直接処分は行われない予定であるが、民生用原子炉(使 用済燃料の再処理による廃棄物、59%)、研究用(26%)、安全保障(11%)、産業・医 療(4%)由来の高レベル放射性廃棄物58と長寿命の中レベル放射性廃棄物59を処分 する予定である。長寿命核種 60また CIGEO における処分初期の段階においては、
「safeguards by design approach」の概念と合わせて、保障措置を実施することになって
いる 61。それぞれガラス固化、セメント固化、アスファルト固化等に固化されている物質 を含め、CIGEO で地層処分するにあたり、保障措置が終了できる物質であるかどうか、 また処分後の知識の連続性をどのように保持するか等の課題が検討されている。 【今後】 今年 1 月にフランスの放射性廃棄物管理公社 ANDRA から処分に際し可逆性をい かに確保するかについて考え方やシステムに関するポジションペーパーが出された。 今回の定義により可逆性の原則については 5 年に一度レビューを行うという事であり、 処分場の操業・閉鎖と整合した方法及び期間において回収可能であるようにと規定さ れたが、具体的にどのような方法で回収可能とするかについては、前述したとおり明確 ではない。今後、フランスが使用済燃料を全量再処理しない場合には、可逆性を持た せる処分に際しては、保障措置と核セキュリティ面からの検討が必要となるだろう。そ のため、現時点で、核不拡散の観点からはあまり言及はないが、関連して今後の再処 理政策と合わせ、地層処分に際しての核不拡散と核セキュリティの観点からどのような 対策が採られていくかという点が注目される。 【報告:政策調査室 小鍛治 理紗】 58 主にガラス固化体 59 使用済燃料からの廃棄物、原子炉からの化合物、研究炉等からの廃棄物等。それぞれガラス固化、セメント固 化、アスファルト固化等に固化し、飛び散らないよう取り扱いやすい形態に調整されている。
60 ANDRA ‘Types of waste to be disposed of at Cigeo’,
http://www.cigeo.com/en/types-of-wastes-to-be-disposed-of-at-cigeo
61
IAEA symposium ‘Cigeo’ : the french industrial project of deep geological repository developed by Andra’, http://www.iaea.org/inis/collection/NCLCollectionStore/_Public/46/066/46066140.pdf?r=1