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マクロ経済動向分析
2018 年 5 月
米中貿易摩擦協議は難航、ハイテク産業発展の中で北斗システム応用進む
2018 年 4 月の中国の経済指標は全体的に安定していた。製造業購買担当者指数はわずか に低下した。春節前後の一時的な需要の影響が消滅したことや米中貿易摩擦の出口が見え ないことへの懸念が背景にあるものの、概ね前月と同水準である。ハイテク産業は引き続き 好調を維持し製造業を牽引している。 中国政府が掲げている産業高度化を目指す長期戦略「中国製造2025」の一環として北斗 測位システムが中国独自の開発が行なわれている。1994 年から始まった開発は現在シェア 自転車など民間の消費分野でも実用化が進んでいる。 5 月 3、4 日に北京で、同月 17、18 日にワシントンで貿易摩擦問題に関する米中協議が 行われた。貿易不均衡解消へは中国側の譲歩もあり一定の進展は得られたが、中国のハイテ ク産業に関しては両者譲らず、朝鮮問題も絡み溝は深まった。世界の二大経済大国の協議の 出口は未だ見えない。 5 月 31 日に中国共産党中央政治局会議が行われた。「農村振興戦略計画(2018-22 年)」と 「脱貧困堅塁攻略戦勝利 3 年行動に関する指導意見」が審議された。この件については次 回検討する。
内容
1.ハイテク産業好調、工業品供給構造は改善方向へエラー! ブックマークが定義されてい ません。 2.PPI が 7 カ月ぶりに上向く、新車販売台数好調 ... 4 3.対外直接投資は持続的な発展を実現、「一帯一路」構想が背景に ... 6 4.外資の出資規制緩和、国内金融規制は先送りへ ... 8 5.米中貿易摩擦、2 度の協議も出口見えず ... 10 6.北斗測位システム、多岐の分野にわたって実用化へ ... 16 7.米中摩擦・米朝首脳会談の影響で、上海市場・香港市場ともに不安定な動き ... 17 参考Web ... 19 参考新聞・資料 ... 192
1. ハイテク産業好調、工業品供給構造は改善方向へ
2018 年 4 月の工業付加価値生産の伸びは前年同月比 7.0%増となり、前月から 1.0 ポイ ント上昇した。企業別の工業付加価値生産の伸びは国有企業の前年同月比7.7%増で前月か ら 0.3 ポイント上昇、外資系企業は前年同月比 6.8%増で前月から 1.9 ポイントの上昇、私 営企業は前年同月比 7.1%増で前月から 0.4 ポイントの上昇となった。ハイテク産業は引き 続き製造業の伸びを牽引しており、4 月のハイテク産業の工業付加価値生産の伸びは前年同 月比11.8%と、全体の工業付加価値生産の伸びと比べて 4.8 ポイント高かった。そのうちコ ンピューター通信電子設備製造業、専用設備製造業などは引き続き比較的高い水準が続い ている。三大部門別に見ると、製造業は前年同月比7.4%上昇、電力・熱生産供給業は前年 同月比8.8%上昇するも、鉱業は前年同月比 0.2%下落している(国家統計局 2018/05/15)。環 境対策として中国政府が命じた生産制限は3 月 15 日に終了したが、大気環境の目標未達や スモッグ再発などにより一部では生産制限の延長や再開が行われたため、鉄鉱石などの需 要が伸びなかったことが鉱業の生産の落ち込みの背景にある(ロイター2018/05/08)。 また、工業製品の生産量の伸びは66.4%増加しており前月から 10.1 ポイント高くなって いる。また、統計対象となっている工業製品596 種中 396 種において生産量が増加してお り、特に3D プリンター設備やバイオ繊維、単結晶シリコン、グラフェン、新エネルギー自 動車、太陽電池、集積回路などの新興産業の成長は著しい(国家統計局 2018/05/15)。3D プ リンター設備や産業用ロボットなどを含むスマート設備産業が世界的にも急速に拡大して いることが背景にある(新華社 2018/05/24)。 4 月製造業購買担当者指数(PMI)は 51.4 と、前月から 0.1 ポイント低下した。米中摩擦を 巡る懸念が高まる中、輸出受注が減速したことが背景にある(ロイター2018/04/30)。しかし ながら、第一四半期の平均値と前年同期と比べるとそれぞれ0.4 ポイント、0.2 ポイント高 い 水 準 で あ る 。 製 造 業 全 体 が 着 実 に 成 長 す る 動 き の 継 続 を 示 し て い る( 国 家 統 計 局 2018/04/30)。国内の工業品供給構造は徐々に改善し、工業価格の上昇が増益につながり、 工業企業の生産意欲を高めている(新華社 2018/05/10)。非製造業 PMI は 54.8 で、前月から 0.2 ポイント上昇した(国家統計局 2018/04/30)。 中国での環境関連の規制強化は急速に進んでおり、環境対策が得意である日本の大企業 であっても変化に対応できず、制裁金や操業停止命令を受けるケースが相次いでいる。日本 貿易振興機構上海事務所の17 年 12 月の調査では中国に進出している日本企業 190 社のう ち、約 37%が1年以内に環境規制に関する指導を受けたと答えた。中国に進出している日 本企業は、国内の環境規制の煽りを受けている(日本経済新聞 2018/05/28)。また、中国が環 境対策の一環として廃棄物の輸入規制を推し進めており、古紙やスクラップ市場に影響を 及ぼしている。2000 年代初め、中国の経済成長と共に非鉄需要が増し、20 年近く雑品スク ラップの輸出が続いていた。しかし、中国のリサイクル業者の不適切な処理で土壌汚染問題 が表面化する中で、中国政府は輸入規制を強めてきた。廃棄物の価格の下落と輸送量の減少3
を招き、日本の古紙問屋や海運会社にも大きな打撃を与えている(日本経済新聞 2018/05/05)。 図表1 製造業購買担当者景気指数(PMI) (出所)国家統計局より作成 図表2 工業付加価値生産額伸び率(単位:%) (出所)国家統計局より作成 51.2 51.2 51.7 51.4 51.7 52.4 51.6 51.8 51.6 51.3 50.3 51.5 51.4 50 50.5 51 51.5 52 52.5 53 6.8 6.5 6.5 7.6 6.4 6.0 6.6 6.2 6.1 6.2 7.2 6.0 7.0 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 7.5 8.04
2. PPI が 7 カ月ぶりに上向く、新車販売台数好調
2018 年 4 月の社会消費品小売総額は 2 兆 8542 億元となり、名目で前年同月比 9.4%増と なり、前月比で0.7 ポイント下落した。これはオンライン小売の伸びが鈍化したことなどが 背景にある。1-4 月のネット小売総額は前年同期比 32.4%増の 2 兆 5792 億元となり、同期 間の社会消費品小売総額11 兆 8817 億元のうち 16.4%を占めた。価格要因を除いた時は前 年同月比実質8.1%増と 1-3 月と同水準であり、さらに季節的な要因を除いた時は前年同月 比0.7%増と 3 月と同水準である(国家統計局 2018/05/15)。 4 月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比 1.8%増と前月より 0.2 ポイント低下した(国家 統計局2018/05/10)。変動の大きい食品・エネルギーを除いたコア CPI は前年比 2.0%上昇 となり前月と変わらなかったが、食品価格指数は 0.7%上昇となり 3 月の 2.1%から大幅に 伸びが鈍化した。春節(旧正月)前後の時期による一時的な需要増加の影響が消滅したことが 食品価格指数の伸びが鈍化した背景にある(ロイター2018/05/10)。 4 月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比 3.4%増と、昨年 9 月以来 7 ヵ月ぶりに上向い た。特にPPI の伸び幅が大きかったのは石油・天然ガス産業、非鉄金属精錬・圧延加工業、 石油石炭及びその他燃料加工業、化学工業製品製造業である(国家統計局 2018/05/10)。 原材料価格の上昇がPPI の伸びが加速した背景である(ロイター2018/05/10)。 4 月の新車販売台数は前年同月比 11.5%増の 231 万 8600 台となり、旧正月の時期ずれが 影響する月を除くと2016 年 11 月以来 1 年 5 ヵ月ぶりの 2 桁増加率となった。中韓関係の 改善を受けて、韓国・現代自動車がセダンやSUV を中心に復調しており前年同月実績の 2 倍に伸びたことが背景にある。車種別に見ると、多目的スポーツカー(SUV)販売台数が前年 同月比18.3%増の 81 万台と市場全体を牽引した。また、電気自動車(EV)とプラグインハイ ブリッド車(PHV)で構成される新エネルギー車(NEV)は前年同月実績の 2.4 倍に近い 8 万 2000 台となった。多くの都市で実施するガソリン車など向けのナンバープレート発給制限 が新エネルギー車販売好調の背景にある(中国汽車工業協会 2018/05/11、日本経済新聞 2018/05/12)。 4 月のスマートフォン出荷台数は前年同月比 15.3%減の 3266.7 万台で、落ち込みが続い ている。携帯電話全体では前年同月比16.7%減の 3425.1 万台で減少幅は前月に比べ 11.2 ポ イント縮小した。また、携帯電話の新機種市場投入は55 種だけで、前年同月比 53.8%減少 した。中国のスマホ普及率はほぼ 1 人 1 台で販売の伸びは鈍化しており国内のスマートフ ォン市場は飽和状態にある。中国携帯電話メーカー各社は5G、人工知能などの新技術の開 発と東南アジアをはじめとする中東、中南米、インドなどの新興地域の海外市場開拓に力を 入れている(中国通信 2018/05/11)。そのうち東南アジア市場では韓国のサムスンと中国の OPPO、vivo、華為が競い合っており、中国メーカーは採算性を重視しない攻撃的な販売促 進策を展開し、スマホ市場のシェアが 3 ブランドの合計でサムスンを上回った。米中の通 信 機 器 を 巡 る 摩 擦 が 強 ま る な か 、 新 興 国 市 場 は 重 要 性 を 増 し て い る( 日 本 経 済 新 聞 2018/05/11)。5
図表3 社会消費品小売総額伸び率(単位:%) (出所)国家統計局より作成 図表4 消費者物価指数(CPI)及び生産者物価指数(PPI)(単位:%) (出所)国家統計局より作成 10.7 10.7 11.0 10.4 10.1 10.3 10.0 10.2 9.4 9.7 10.1 9.4 9 9.5 10 10.5 11 11.5 12 1.2 1.5 1.5 1.4 1.8 1.6 1.9 1.7 1.8 1.5 2.9 2.1 1.8 6.4 5.5 5.5 5.5 6.3 6.9 6.9 5.8 4.9 4.3 3.7 3.1 3.4 0 1 2 3 4 5 6 7 8 CPI PPI6
3. 対外直接投資は持続的な伸びを実現、「一帯一路」構想が背景に
2018 年 1-4 月の固定資産投資は前年同期比 7%増となり、第 1 四半期から 0.5 ポイント 下落した。ハイテク産業への投資は前年同期比10.4%増で、第 1 四半期から 0.7 ポイント上 昇した。投資全体の伸びへの貢献率は 10.1%、製造業投資全体の伸びへの貢献は 27.8%と ハイテク産業が占める比重は年々大きくなっている。インフラ投資は 1-4 月で前年同期比 12.4%にとどまり、伸び率は 1-3 月より 0.6 ポイント縮小した(国家統計局 2018/05/15)。習 近平指導部が地方債務の急増に危機感を抱き、ブレーキをかけたことがインフラ投資の伸 び率の下落の背景にある。民間企業と政府が組んで公共事業を進める官民パートナーシッ プ(PPP)については、5 兆元分の事業が停止された。元々、PPP は地方政府の債務負担を抑 えながらインフラ投資を進める目的から推し進められてきた。しかし、民間の投資を呼び込 むために地方政府が地方債以外の違法な資金調達を行う事例が多く、地方債務の増加につ ながったことが今回の事業停止に繋がった (日本経済新聞 2018/05/16)。 4 月の不動産投資は前年同期比 10.2%増となり、前月から 0.6 ポイント下落した。これは 借り入れコストの上昇や購入抑制政策の強化により需要が圧迫されたことが背景にある。 不動産市場は中国経済の主要な成長エンジンだが、過剰な資金流入を抑制する政府の取り 組みによる鈍化が見込まれている。しかしながら、招商証券のアナリスト張一平氏は実体経 済に対する不動産投資の寄与は大幅に弱まっているものの、不動産投資の伸びは依然とし て堅調だと指摘した。土地価格の上昇と住宅購入規制が厳しくない中小規模都市の不動産 需要は伸びている(ロイター2018/05/15)。 1-4 月の海外から中国への対外直接投資(FDI)は前年同期比 0.1%増の 2867 億 8000 万元、 1-4 月の中国から海外への金融を除く対外直接投資(ODI)は前年同期比 34.9%増の 355 億 8000 万元となった(ロイター2018/05/17)。 対外協力は安定した健全な発展を見せた。特に「一帯一路」沿線国の投資協力が積極的に 進められた。1-4 月中国企業の「一帯一路」沿線関係国に対する新規投資は前年同期比 17.3% 増の 299 億 5894 万元だった。「一帯一路」沿線国の新規対外請負工事の契約額は 1849 億 4996 万元で同期の全体の 47%を占めた。完工高は 1552 億 4762 万元で 54%を占めた(中国 通信2018/05/21)。 4 月の外資系企業の新規設立は前年同月比 39.5%増の 4662 社で、外資利用実績は 1.1% 増の592.4 億元だった。特にハイテク製造業で高い伸びが続いた。ハイテク産業の外資利用 実績は伸び率が前年同期比20.2%増で、外資利用全体に占める割合が 20.8%だった(中国通 信2018/05/21)。7
図表5 固定資産投資及び民間固定資産投資伸び率(単位:%) (出所)国家統計局より作成 図表6 不動産投資伸び率(単位%) (出所)国家統計局より作成 8.9 8.6 8.6 8.3 7.8 7.5 7.3 7.2 7.2 7.9 7.5 7.0 6.9 6.8 7.2 6.9 6.4 6.0 5.8 5.7 6.0 8.1 8.9 8.4 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 固定資産投資 民間固定資産投資 9.3 8.8 8.5 7.9 7.9 8.1 7.8 7.5 7.2 9.9 10.4 10.3 6 6.5 7 7.5 8 8.5 9 9.5 10 10.5 118
4. 外資の出資規制緩和、国内金融規制は先送りへ
2018 年 4 月のマネーサプライ(M2)は、前年同月比 8.3%増の 173 兆 7700 億元となり、 伸び率は前月から 0.1 ポイント上昇した。マネーサプライ(M1)は前年同月比 7.2%増の 52 兆5400 億元となり、伸び率は前月から 0.1 ポイント上昇した(中国人民銀行 2018/05/11)。 4 月末の社会融資総量のストックは 181 兆 4100 億元で、前年同月比 10.5%増加した。社会 融資総量フローは1 兆 5600 億元となり、前年同月よりも 1725 億元多くなった。また、新 規人民元建て融資は1 兆 1800 億元となり、3 月の 1 兆 1200 億元から増加した(中国人民銀 行2018/05/11)。 4 月の財政収入は前年同月比 11%増の 1 兆 8473 億元となり、財政支出は前年同月比 8.2% 増の1 兆 4696 億元となった(財務部 2018/05/14)。 4 月の外貨準備高は前月比 180 億ドル減の 3 兆 1248 億ドルとなり、小幅ながら減少した (外貨管理局 2018/05/07)。中国国家外為管理局(SAFE)によれば背景に、ドル以外の通貨が 対ドルで下落したことや資産価格の調整がある(ロイター2018/05/07)。 ロイターの試算によると、シャドーバンキング(影の銀行)資金供与であるトラストローン は 120 億元減少した。社会融資総量は、通常の銀行貸出システム外のオフバランス融資を 含み、シャドーバンキングの動きを示す目安とされている(ロイター2018/05/11)。中国が経 済政策を国内景気の下支え優先にシフトしているのを背景に、景気を悪化させかねない「影 の銀行」への抜本規制導入の1年半先送りを決定した。導入が予定される「影の銀行」の規 制は銀行、証券、保険などが発行する「理財商品」にメスを入れるものであり、従来の規制 は業種ごとの縦割りなどで抜け穴だらけであったが、投資家から資金を預かって簿外で運 用する金融商品に業種横断で幅広く網をかける。昨秋の規制案公表後、一部の理財商品で投 資家に示した利回りを実現できないケースが出現し、銀行が理財商品の償還資金を手当て できないかもしれないという不安から、投資家が前倒し償還を求めかねないという懸念も 浮上した。金融システムの安定のため、銀行界の要望に沿う形で規制案を緩めるに至った (日本経済新聞 2018/05/29)。 中国政府による海外の金融機関による出資規制緩和を受けて、世界の金融大手による参 入表明が相次いでいる。海外から中国の債務に投資するニーズが高まっているのに対応す るため、米債務運用大手のピムコが年内にも上海などに事務所を開設する。また投資銀行も 積極的で、米JP モルガン・チェースは中国で運営する合弁会社の出資比率を 51%に引き上 げる申請をした。また、野村ホールディングスやUBS グループも既に中国市場で過半の出 資比率で事業を展開するための申請を中国当局にした。各社とも迅速な対応に乗り出して いる背景としては中国市場の拡大、そして中国企業のM&A や IPO が活発であるため、こ の分野で高シェアを獲得できれば世界の金融勢力図を塗り替える可能性を秘めているから である(日本経済新聞 2018/05/15)。9
図表7 通貨供給量(M2)の伸び率(単位%) (出所)国家統計局より作成 10.5 9.6 9.4 9.2 8.9 9.2 8.8 9.1 8.2 8.6 8.8 8.2 8.3 7.8 8.3 8.8 9.3 9.8 10.3 10.810
5. 米中貿易摩擦、2度の協議も出口見えず
2018 年 4 月のモノ貿易の輸出入総額は前年同月比 7.2%増の 2 兆 3600 億元となり、うち 輸出が前年同月比3.7%増の 1 兆 2700 億元、輸入が前年同月比 11.6%増の 1 兆 900 億元と なり1828 億元の黒字となった。黒字幅は前年同月比 27%縮小した(海関総署 2018/05/08)。 また、輸出全体は前年比12.9%増加し、輸入全体は前年比 21.5%増加した。米中間の貿易摩 擦への懸念が高まっているものの、輸出と輸入はともにアナリストの予想以上に拡大した。 世界経済や中国経済が比較的底堅いことが浮き彫りとなった(ロイター2018/05/08)。1-4 月 のデータでは一般貿易の伸び率が高く全体に占める割合が増え、民間企業の全体に占める 割合が一段と増加した。機械・電気製品、特に携帯電話を中心とするハイテク製品は、関税 を巡る欧州との対立がある中で、輸出が伸びた。一方でアパレル、靴類、カバンなどの7 大 労働集約型製品の輸出が減少するなどの特徴があった。また、欧州連合(EU)、米国、東南ア ジア諸国連合(ASEAN)、日本など主要市場との輸出入が伸び、「一帯一路」沿線国との輸出 入伸び率は全体の水準を上回った(ロイター2018/05/08、中国通信 2018/05/10)。 4 月の対米貿易黒字は 221 億 9000 万ドルとなり、3 月の 154 億 3000 万ドルから増加し た。このうち 4 月の対米輸出は前年同月比 9.7%増の 361 億ドルと伸びが鈍化した一方で、 4 月の米国からの輸入は前年同月比 20.3%増の 139 億ドルとなり、伸びはここ 3 カ月で最 高であった(ロイター2018/05/08)。輸入から輸出を差し引いた対米貿易収支は 221 億ドルの 黒字となり前年同月比4%増であった。対米黒字は 3 月前年同月比の水準を下回ったが、4 月は2カ月ぶりに上回った。原油や天然ガスなど中国は輸入を拡大したが、米国の景気が好 調で輸出も増えたため黒字が高止まりしている。 5 月 3、4 日に北京で貿易摩擦を巡る初の公式協議が開かれ、米国は中国に 2020 年まで に貿易赤字を2千億ドル減らすように要求した。従来の 1 千億ドルの削減幅から上積みし た。加えて過剰生産を助長する「市場をゆがめる補助金」はすべて即刻廃止すること、知的 財産権の保護を強化し、中国資本と外国資本の合弁事業において技術移転を求める慣行を 撤廃することも求めた。その他にも2020 年までに輸入関税を米国並みに引き下げるよう要 求した。対して中国政府は黒字削減には米国の協力も必要としてハイテク製品の対中輸出 制限の緩和などを求めており、特に米当局が発動している中国通信機器大手の中興通訊 (ZTE)の制裁緩和を求めている。このように第 1 回貿易協議は米中双方の要望を出し合うに とどまった(日本経済新聞 2018/05/08、2018/05/10)。 5 月 17 日、18 日にワシントンで開かれた第 2 回貿易協議では、(1)貿易不均衡の解消(2) ZTE の制裁緩和(3)中国の産業振興策「中国製造 2025」の見直しが焦点となった。このうち 貿易不均衡の解消には進展があった。中国側は天然ガスや原油、大豆などの農産物、航空機 や半導体に加えて金融や医療などのサービスの輸入も拡大する案を示した。しかしZTE へ の制裁緩和は結論が持ち越され、ハイテク分野の溝は深い。それに加え朝鮮問題も絡み、米 中両国の摩擦を解消する協議の出口は見えていない(日本経済新聞 2018/05/17、2018/05/29)。11 図表8 輸出の伸び推移(単位:%) (出所)海関総署より作成 図表9 輸入の伸び推移(単位:%) (出所)海関総署より作成 8.0 18.3 11.3 7.2 6.9 9.0 11.7 11.6 10.9 18.0 7.4 6.4 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0 18.0 20.0 11.9 22.1 17.2 11.0 14.4 19.5 21.5 17.7 4.5 15.2 11.7 11.7 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0
12 図表10 輸出品目別統計 商品名称 単位 1-4 月累計 前年同期比(%) 数量 金額(億ドル) 数量 金額(億ドル) 機械・電気設備 — - 441,077.40 - 16.2 ハイテク製品 — - 224,617.70 - 携帯電話及び部品 — - 52,870.60 - 21.1 自動データ処理設備及び部品 万台 4.5 50,703.40 -4.2 17 服飾付属品 — - 42,559.80 - -1.2 紡績・織物及び製品 — - 36,372.40 - 11.4 農産品 — - 24,445.10 - 10.8 IC 100 万個 675.8 24,321.10 14 30.9 鋼材 万トン 2,162.40 18,684.90 -20.1 4.3 自動車部品 — - 17,169.30 - 15.6 家具及び部品 — - 16,443.80 - 6 靴類 万トン 135.5 14,293.20 0.9 -3.5 プラスチック製品 万トン 378 12,675.40 9.8 11.1 電灯・照明装置及び類似品 — - 8,150.40 - 2.2 鞄類 万トン 91.3 7,846.60 2.7 0.4 液晶掲示板 100 万個 5.8 7,711.70 6.9 -0.7 船舶 艘 2,310 7,570.50 -15.9 -6.7 陶磁器 万トン 660.8 6,167.70 -1.4 20.4 (出所)海関総署より作成
13 図表11 輸入品目別統計 商品名称 単位 1-4 月累計 前年同期比(%) 数量 金額(億ドル) 数量 金額(億ドル) 機械・電気設備製品 — - 297,228.80 - 23 ハイテク製品 — - 203,215.10 - IC 100 万個 1,251.00 94,716.30 15.5 36.3 原油 万トン 15,142.80 71,982.20 8.9 32.3 農産品 — - 43,244.70 - 10 鉄鋼砂及び精鉱 万トン 35,340.10 25,436.60 0.2 -11.1 プラスチック原料 万トン 1,022.20 17,788.50 7.4 12.9 自動車(セット部品含む) 万台 36.8 16,663.60 2.2 13.9 銅鉱及び銅材 万トン 167.4 12,457.60 15.4 36 自動車部品 — - 11,522.30 - 13.9 大豆 万トン 2,648.70 11,186.00 -3.8 -5.4 銅鉱砂及び精鉱 万トン 622.9 10,827.90 9.3 32.4 天然ガス 万トン 2,741.50 10,680.10 36.4 66.6 自動データ処理設備及び部品 万台 13,285.50 9,655.20 -3.3 25.5 液晶パネル 100 万個 7.2 8,863.20 1.8 -6.6 医薬品 万トン 4.8 8,798.60 8 12.2 ダイオード及び半導体部品 100 万個 1,674.60 6,686.20 8 8.4 廃材・リサイクル原料など 万トン 707.7 5,628.40 -53.9 -25 (出所)海関総署より作成
14 図表12 主要国別輸出入 (出所)海関総署より作成 輸出最終目的国 単位:億ドル,% 当月 1-4 月累計 輸入原産国 単位:億ドル,% 当月 1-4 月累計 金額 金額 前年同期比 金額 金額 前年同期比 合計 12,705.2 48,095.8 6.4 合計 10,877.2 43,033.5 11.7 アメリカ 2,289.5 12,350.8 6.6 韓国 1,027.7 2,251.4 11.4 日本」 778.4 6,641.3 0.8 日本 970.8 3,007.9 6.5 韓国 642.0 6,335.5 2.3 台湾 919.1 964.4 17.2 ベトナム 461.0 2803.0 19.6 アメリカ 883.7 8,772.4 4.3 ドイツ 384.0 3698.8 3.8 ドイツ 558.8 1,514.1 12.6 インド 373.7 1,910.8 6.6 オーストラリア 529.4 896.7 -2.9 オランダ 360.5 1681.5 8.7 ブラジル 883.7 636.1 9.2 イギリス 270.7 1506.7 -7.8 ロシア 284.8 897.3 23.9 台湾 258.8 4,483.4 8.3 ベトナム 264.6 1,615.7 40.9 マレーシア 251.6 2,141.4 4 タイ 230.7 870.6 3.9 インドネシア 247.0 1,612.3 16.2 シンガポール 197.9 1,015.6 0.6
15 図表13 ドル円対人民元相場推移 (2017/12/01-2018/05/31) (出所)中国外貨管理局より作成 図表14 香港ドルユーロ対人民元相場推移 (2017/12/01-2018/05/31) (出所)中国外貨管理局より作成
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/ユーロ(左軸)
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6.
北斗測位システム、多岐の分野にわたって応用
現在、習近平指導部によって2015 年に発表された産業高度化に向けた長期戦略「中国製 造2025」が、米中貿易摩擦問題のなかでやり玉に挙げられている。「中国製造 2025」は次 世代の情報術やロボット、航空・宇宙といった分野でグローバルに通用する中国メーカーの 育成を目指すというものである。5 月 28 日に習近平国家主席は人民大会堂での演説のなか で「戦略的な新興産業群の育成と発展」を優先するとし、国を挙げて独自技術の開発に取り 組む必要性を強調した(日本経済新聞 2018/05/29) そのなかの一つとして「北斗衛星導航系統」が挙げられる。「北斗衛星導航系統」は中国 が産官学軍一体で開発してきた新世代の独自衛星測位システムであり、1994 年に軍が防空 システムとして開発に着手し、2000 年に試験衛星を打ち上げて運用を始め、2011 年末に民 間に開放された。2017 年 11 月に測位精度を高めた「北斗3号」の人工衛星を打ち上げに成 功した。「北斗3 号」は測位精度を従来の 2-3 倍の最大 2.5 メートルに引き上げる。これは 米国の全地球測位システム(GPS)や欧州版 GPS「ガリレオ」に匹敵する精度を持つと言われ ている(日本経済新聞 2017/10/09)。中国の北斗は十数基という巨大チームで稼働している が、中国航天科技集団第五研究院の開発した制御システムにより、各々衛星単体に自律性が ある。この制御システムが衛星のスマート自主運行を実現させていて、地上基地への依存度 を大幅に弱めている(人民網 2017/11/09)。将来的には、2018 年に 18 基を運用し、習近平国 家主席が進める中国と欧州を結ぶ陸路と海路の広域経済圏構想「一帯一路」の沿線各国に衛 星測位サービスを提供する。2020 年には 35 基体制で世界全域をカバーする計画である (日 本経済新聞2017/10/09)。 中国の北斗システムは応用産業化の面で、すでに整った産業チェーンを構築している。北 斗は国家安全及び重点分野で普遍的に使用されており、民間の消費分野においても大規模 応用されている。北斗の高精度サービス網が、2017 年まで全国 300 以上の都市の各種産業 に応用サービスを提供されており、都市ガス供給、都市部の熱供給、電力網、上下水道、ス マート交通、スマート介護など複数の産業で幅広く応用されている。具体的な例を挙げると、 北斗衛星測位システムを搭載する営業車両が500 万台投入され、世界最大の GNSS(全球測 位衛星システム)車載ネットワークプラットフォームを形成している。また、全国の漁船4 万隻以上が北斗を搭載し、計1 万人以上の漁師を救助した(人民網 2018/05/25)。中国衛星ナ ビ測位協会が発表した「中国衛星ナビ・位置情報サービス産業発展白書」によると、2017 年の中国の衛星ナビ・位置情報サービス産業の生産額は2550 億元規模となり、前年度から 20.4%増加した (中国衛星ナビ測位協会 2018/05/18)。 さらにインターネットと融合し「北斗+」という応用新モデルも形成されている。「北斗 +」が誕生を促した新興産業には、電動自転車の安全防犯対策、シェア自転車、都市スマー トパイプラインなどがあり、応用市場で強い存在感を示しており、今後の可能性に大きな期 待がかかっている(人民網 2017/06/19)。17
7.
米中摩擦・米朝首脳会談の影響で、上海市場・香港市場ともに不安定な動き 5 月週明け 7 日の上海市場は米中交渉の進展が期待され、反発して 3100 ポイントまで上 昇した。翌 8 日は減税や良好な貿易統計を材料に続けて上昇した。翌 9 日は中東情勢の不 透明感を背景にわずかに下落するも、翌10 日は堅調な内需や政府の地域振興策が材料視さ れ上昇した。翌11 日は週末要因で上値が重く下落した (内藤証券 2018/05/11)。第 2 週明け 14 日の上海市場は反発が起き、翌 15 日も上昇した。米中摩擦懸念の後退と MSCI 指数へ のA 株採用などが材料視され 3200 ポイント近くまで上昇した。しかし、翌 16 日は高値警 戒感と米中交渉への様子見ムードに加え金利上昇も懸念され、わずかに下落した。翌17 日 は外部環境が冴えずに続落した。週末18 日は米中の交渉進展への期待感から再び上昇した。 先週末の終値を1%弱上回り取引を終了した(内藤証券 2018/05/18)。第 3 週明け 21 日の上 海市場は続伸し、貿易戦争回避に向けた米中両政府の暫定合意を受けて約6 週ぶりに 3200 ポイントを回復した。しかし、23 日に急下落し、24 日はトランプ大統領の発言により朝鮮 半島情勢や米中摩擦への警戒感が再燃し、再び 3100 ポイント台に下落した。週末 25 日は 米朝首脳会談の中止を受けて下落した(内藤証券 2018/05/25)。第 4 週明けの 28 日の上海市 場は米中摩擦と原油安が嫌気され、わずかに下落した。翌29 日は急速な人民元安を背景に 続けて下落した。翌30 日は外部環境の悪化と米国政府による関税発動の方針などが狼狽売 りにより一気に3000 ポイント台の中頃まで急落し、年初来安値を更新した。その反動から 翌 31 日は 7 営業日ぶりに上昇し、4 月末の終値をわずかに上回り取引終了となり、MSCI 採用直前の資金流入もみられた。しかし週末1 日の上海市場は再度上昇し、週間でも 2.1% 安であった(内藤証券 2018/06/01)。 一方で5 月第 1 週明け 7 日香港市場は外部環境の改善を支えに 4 営業ぶりにわずかに上 昇した。翌 8 日は貿易統計や米ハイテク株高を材料に 3 万ポイントの大台まで上昇した。 11 日は米国の利上げ見通しが幾分和らぎ、約 7 週ぶりに 3 万 1000 ポイントまで上昇して 取引を終了した(内藤証券 2018/05/11)。第 2 週明け 14 日の香港市場は米中摩擦懸念の後退 を追い風に上昇し、3 万 1000 ポイント台半ばまで上昇した。しかし、翌 15 日に香港ドル 安を受けて7 日営業日ぶりに下落すると、翌 17 日は5営業日ぶりに3万 1000 ポイントを 割るまで下落した。翌 18 日には幾分戻り、3 万 1000 ポイントを回復して取引終了となっ た(内藤証券 2018/05/18)。第 3 週明け 21 日の香港市場は米中政府の暫定合意が好感されて 続けて上昇した。翌 22 日は仏誕節で休場となった。祝日明けの翌 23 日に国際情勢の悪化 や産油国の減産縮小の観測などから3 万 1000 ポイントを割り込むまで急下落した。翌 24 日は急落の反動からわずかに上昇したものの、米中摩擦と朝鮮半島勢への警戒感は鮮明と なった。翌 25 日は米朝首脳会談の中止決定により続けて下落した(内藤証券 2018/05/25)。 第 4 週明けの 28 日香港市場は再び米朝首脳会談開催の観測が広がると上昇した。30 日は 米中摩擦の再燃も嫌気され、3 万ポイントの大台割れ寸前まで急落した。翌 31 日は中国 PMI などを材料に上昇するも、月間1.1%安で取引を終了した(内藤証券 2018/06/01)。18 図表15 上海総合指数(終値) (2018/04/01-2018/05/25) (出所) kabutan より作成 図表16 ハンセン総合指数(終値) (2018/04/01-2018/05/28) (出所) Searchina Finance より作成 2,950 3,000 3,050 3,100 3,150 3,200 3,250 2018 4 2 2018 4 4 2018 4 6 2018 4 8 2018 4 10 2018 4 12 2018 4 14 2018 4 16 2018 4 18 2018 4 20 2018 4 22 2018 4 24 2018 4 26 2018 4 28 2018 4 30 2018 5 2 2018 5 4 2018 5 6 2018 5 8 2018 5 10 2018 5 12 2018 5 14 2018 5 16 2018 5 18 2018 5 20 2018 5 22 2018 5 24
(
) (2018/04/01-2018/05/25)
28500 29000 29500 30000 30500 31000 31500 32000 2018 年 4 月 3 … 2018 年 4 月 5 … 2018 年 4 月 7 … 2018 年 4 月 9 … 2018 年 4 月 11 … 2018 年 4 月 13 … 2018 年 4 月 15 … 2018 年 4 月 17 … 2018 年 4 月 19 … 2018 年 4 月 21 … 2018 年 4 月 23 … 2018 年 4 月 25 … 2018 年 4 月 27 … 2018 年 4 月 29 … 2018 年 5 月 1 … 2018 年 5 月 3 … 2018 年 5 月 5 … 2018 年 5 月 7 … 2018 年 5 月 9 … 2018 年 5 月 11 … 2018 年 5 月 13 … 2018 年 5 月 15 … 2018 年 5 月 17 … 2018 年 5 月 19 … 2018 年 5 月 21 … 2018 年 5 月 23 … 2018 年 5 月 25 … 2018 年 5 月 27 …ハンセン総合指数(終値) (2018/04/01-2018/05/28)
19