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中央学術研究所紀要 第44号 137西康友, 河﨑豊, 竹村牧男, ライナ・シュルツァ「第21回国際宗教学宗教史会議世界大会パネル発表報告」

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Academic year: 2021

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137  2015年8月23 29日の7日間、ドイツ・エアフルト大学において開催された第21回国 際宗教学宗教史会議世界大会1のうちの24日午前9:00 11:00(現地時間)に「巧み な方便−インド・東アジアの仏教における発展」2と題するパネル発表を行なった。  従来、仏教における方便研究のテキストは『般若経』、『法華経』、『維摩経』などで あった。特に中国仏教においては天台三大部などの方便解釈が多く議論されてきた。  本パネルでは、これまであまり議論されてこなかった方便解釈を取り上げ、議論す ることとした。従来の方便解釈研究に異なる視点から一筋の光をあてることができた らと考えたのである。  本パネル要旨は以下の通り:  約2500年前に誕生したとされる釈尊から現代日本に至るまで、あらゆる方法・手段 によって釈尊の教えが伝承され、その内容が受容・実践されてきた。この教えは、東 北インドを発祥とし、インド全域に広がり、中央アジア、中国、日本へと受け継がれ てきたのは周知の通りである。  本パネルでは、仏教における最も重要な用語「方便」「善巧方便」に焦点をあてる。 発表者4人は、代表的な初期大乗仏教経典の一つである『法華経』における方便、南 方上座部における方便、日本真言密教における方便、日本の哲学者の一人である井上 円了における方便をそれぞれの視点から論じたものである。  本パネル発表者・題目・要旨は以下の⑴−⑷である:

⑴ 西 康友「法華経における方便」(On the Skilful Means in Saddharmapund44arīka)

 本発表では、初期大乗経典の一つである梵文「法華経」における方便とはなにかを 明らかにすることを目的とする。伝統的に法華経研究は漢訳に基づいていた。我が国

第21回 国際宗教学宗教史会議世界大会

パネル発表報告

西 康友・河  豊・竹村牧男・ライナ=シュルツァ

 XXI World Congress International Association for the History of Religions (IAHR), Augst 23 29, 2015,

Erfurt, Germany (URL:http://www.iahr2015.org/iahr/index.html)

 Skilful Means:Developments in Indian and East Asian Buddhism (URL:http://www.iahr2015.org/

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中央学術研究所紀要 第44号 138 で『法華経』と言うとき、ほとんどの場合は鳩摩羅什による漢訳文献としての『妙法 蓮華経』を指す。『妙法蓮華経』は仏教思想の深遠な内容を汲み取った達意訳として知 られている。法華経成立研究は、梵文「法華経」について注意深い文献学的アプロー チを通じてなされるべきであると考えている。  ここでは法華経成立過程に着目し、法華経の根源的概念を見出すことの足がかりと して、梵文「法華経」第2章方便品におけるupāyakauśalya(善巧方便)について論じ ることを試みる。

⑵  河  豊「南方上座部における善巧方便」(On “Skill in Means” in Theravāda Bud-dhism)  大乗仏教における「善巧方便」は豊富に研究されてきた。「方便」は最も重要な宗教 的概念のひとつであり、多くの仏教教義がこれに関係する。しかしながら、この観念 がどのように出現したのか、それは佛世尊自身の教説において彼自身が説いたのか否 か、という問題については推測の域に留まっている。  この発表において、私はまず、テーラワーダ仏教聖典を主に用いて、初期仏教とい うコンテクストにおける「善巧方便」なる術語の用法を検討する。次に、若干の「テー ラワーダの論典における「善巧方便」の扱われ方を調査する。最後に、初期仏教聖典 の中で、佛世尊が実質的に「善巧方便」を用いていると看做しうる教説やエピソード を取り上げる。

⑶ 竹村牧男「密教の方便」(On the Skilful Means in Esoteric Buddhism)

 密教の重要な文献『大日経』には、「菩提心を因とし、大悲を根とし、方便を究竟と す」という有名な句がある。この句に出る「方便」の本来の意味は、修行のことであ ると理解されるが、その前に大悲の語もあることから、衆生を救済する「手だて」の 意味に解釈されることも多い。いったい、密教において「方便」はどのような意味で 用いられるのかの検討を行い、密教における「方便」の内容について明らかにすると ともに、密教における「手だて」としての方便はどのようなものとして考えられてい るのかを究明し、密教独特の「方便」とはどのようなものかを明らかにしたい。 ⑷ ライナ・シュルツァ「井上円了における救済的方便と仏教心理療法」  (Soteriological Pragmatism and Buddhist Psychotherapy in Inoue Enryō)

 「方便のみであって、真理ではない」という否定的な意味以外に、近代仏教者井上円 了には、方便のより肯定的な使い方も見つけられる。四つの解釈を区別したい。①宗 教的真理のプラグマティズムとしての方便解釈:苦を減らす教えは、正しい教え。② 宗教寛容の概念としての方便解釈:宗教的「機根」は、多様的であるので、教えも多

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第21回 国際宗教学宗教史会議世界大会 パネル発表報告 139 様的であるべき。③解釈論的ツールとしての方便解釈:科学的世界観と矛盾する仏教 の教理は、方便として解釈できる。④心理療法のアプローチとしての方便解釈:信仰 は、治療において「自己充足的予言」のように機能できる。  なお、4人の発表内容は加筆・修正し、論文としたものを本紀要の次頁以降に所収 した。

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