【論 文】
UDC :624
.
Ol4.
2 :624.
072 :624.
042.
7日 本 窪築学 会 構 造系論 文報 告 集 第 4ZO 号
・
1991 年 2 月Journal of Struct
.
Constr.
Engng、
AIJ、
No.
420,
Feb.
,
19.
91
崩 壊 問題
の
動 的解 析
と
静 的 解
と
の
比 較
材料
お よ び幾何学的非線形
を
考
慮
し た鋼構造
骨
組
の動的崩壊解析
その2
DYNAMIC
ANALYSIS
FOR
THE
COLLAPSE
PROBLEMS
AND
THE
COMPARISON
OF
ITS
RESULTS
WITH
STATIC
Amaterial
andgeometrical
nonlineardynamic
collapse analysisfor
the
space steelframe
Part
2
久
保
田英
之
* ,和
田
章
* * ,林 賢
一
* * *Hideyuki
.
KUBOTA
,
Akira
WAI
)A
andKenichi
且4
YA
盟1
There
are manydifficulties
in the nQnhnear statical analysisfor
the collapse of structures,
In the case of considering しhe discontinuity of the mechanicalbehavior
of a materials,
further
hardships
will obstruct to obtain a gQQd solutionbecause
of the abruptdropping
of the strength.
AII structural problems which many researchers had treated as sta 巨cally should have a
dynamic
effect tacitly such as the
inertia
force
of the own weight ofdeforming
structural element.
At
thecritical or
llmit
pomt,
the inertia term willhelp
to solve the equlibrium eqations.
In
this paper,
a comparisonbetween
statical analysis method anddynamic
isdone,
and threenumerical examples show the eHectiveness of the
dynamlc
method.
1
.
yielding andbreaking
analysis of straightbar
2
.
snap through problem of ret 重culated space truss
3.
material and geometrical nonlinear analysis ofdouble−layered
space frame
Keywortts
;dyiamic
analysis,
collaPse,
nonlinear,
sPa‘eframe,
buckling
’
1.
序 論 すべ て の力 学 現 象は,
た と え そ の変 化が緩い と し ても,
広 義の動11
勺問題 と考え るこ と がで き る。
力 学 現 象 を,
釣 合い状 態の変 化と して静的に扱うこ とよりも, 運動 状態 の変化 と し て と らえ た方が実 現 象に忠 実であ る。 我々はこの考えに基づ き実 現 象に忠 実な解 析モ デルを 設定し, そ の モ デル を用い て数 値 解析によ り 構 造 物の崩 壊 挙 動 を 追 跡する こと を目標と して い る。 その 1凵で は 材 料お よ び幾 何 学的非線形 を考慮し た動 的 構 造 解 析 法の提 案と,
不 安 定 現 象を 生 じ る 簡単な例題 に よ る解析 法の確 認につ い て論 じ た。 その中ではま ず,
節 点に存 在 する回転自由度を消去し 並進 自由度だ けの運 動 方 程 式 を導く手 法,
解 析 手法の基 礎と し た静 的 解 析 法か らの改 良 点につ いて述べ た 。 つ い で,
非 線 形 問 題,
不 安 定 問題の 解の 存 在 条 件と動 的 解 析 法をそ こに適 用 す る 是 非に つ い て 論 じ,
エ ネル ギー
的 立 場か ら 動的解析 法による解の解 釈を行っ た。
例題 と し て,
直線部 材の引 張 破 断 問 題と圧 縮 座 屈 問題 を解析し, 静 的 解 析 法の適 用し に くい不 安 定 問題で あっ ても動 的 解 析 法 を用い るこ とに よ り解を得られ ること を 明らか に し た。
本 論 文では,
直 線 部 材の引 張 破 断 問 題,
網状ス ペー
ス ト ラスの非線形解析, 実 験の行わ れ て い る実 規 模 構 造の 複層立 体 トラス の非 線 形 解 析につ い て,
載 荷 速 度 を変 化 させ た考 察 等を行い,
従 来 静 的に解か れ ていた問題 を動 的に扱うことの意 義と有 効 性につ い て述べ る。2.
動的解 析 と静 的 解 析 静 的 解 析は動 的 解 析の特 殊な もの である と考え られ る。
こ こ で は単純 化のた め,
減 衰がない理 想 的な状 態を仮 定する。
構 造 物の 剛 性K は時 刻 tの状態の ま まで t+ At まで変 化し な い と す る と,
時 刻 t+At
に お け る 運 動 方 程 式は式 〔1)の よ うに書け る。
Mat
,At+KtAx +ft=
Ft,.
。t………・
…’
・
……・
・
(1> こ こにM
は質量マ ト リッ クス, a は加 速 度,
Ax は増 1 日本 電 信 電 話 株 式 会社 # 東 京工 業 大 学 教授・
工博 # * 東 京工業 大学 大 学 院生NipPon Telegraph and Telep卜Qne
Corporahon
Prof
.
,
Tokyo Institute of Technobgy,
Dr.
Eng.
Grad
.
uate Student of Tokyo Institute of Tec卜nology分変 位ベ ク トル
,
’ は構 造 物が発 揮 し て い る内 力,
F は外 力ベ ク トル である。 ま た添字 t,
t+At
は そ れ ぞ れ 時 刻t,
t+At にお け る値であ る。
式 (1)で慣 性 力Ma
が恒等的に0
で あると する立場 が 静的解析で あ り,0
で な く て も構わ ない とす る立 場 が 動 的解析である。
慣 性 力Ma が無 視で き る の は次の 2つの場合である。
1) M が無 視で きる, す なわ ち大 変 軽い。
し かも積Ma
が無 視できる程 度の a である。
2> a が無 視できる,すな わち変形が大変緩やか であ る。 しか も積 〃 ご が無 視で き る程 度のM
で あ る。
M
は あ る程度大き く な るの が 通例で あり,
仮 定 1は 考え に くい の で,
仮定 2 に帰 着す る。一
般に静 的 解 析が 行わ れ るの は2
の仮 定に基づいてい る と考え ら れ る。
静 的 解 析 を行う た めに は, 式 (1)か ら慣 性 力の項 を 除い た式 (2)が常に成り立つ こ と が必 要で あ る。
KtAx 十ft=
F,+at・
…………・
………・
……・
…
〔2) 外力変化が非 常に緩や かであっ た と して も そ の応 答が 緩 や かであ る とは限 ら ない。
た と え ば 系に材料非線形,
あ るい は幾何 学的非線形を示す部分が存在し,
部 材の座 屈や破断に伴う急 激な変化が生じ る と,
部分的に大き な 加速度 が 発 生 し,
式 (2
)の前 提 が 必 ず し も 成 り 立 た な く な る。 材料 非線形を例に と る と,
部材の破断 現象は内力 の 急 激な減 少をもた ら す。 式 (2)が成り立つ と する な らば,
内 力の急 激な減 少は,
外 力が ほ と ん ど変わ ら ない こと を 仮 定す れば、KtAx
が 急 激 に増加す るこ と を意 味す る。
.
部材の破 断に よ っ て剛性が 増 加 す ることはないか ら,
結 局 Ax が急 激に増 加する, すな わ ち変 形が急 激に進 行 す ることに な る。
そ の ため,
式 (2) を 満たす よ うな Ax を静 的に求め る ことは通 常 大 変 難し い ことに な る。
ところ が 式 (1)の下では,
部 材の破 断 現 象が発生 し た と き は,
’ の減 少 分ci〃Mat
.rlt+KtAx
で吸 収さ れ る。 加 速度は変位,
時 間と独立で はない か ら,
式 (11 を満 た す よ うにAx ,
at.dt を定め ること は可 能であ る。 シェ ル など幾何学 的非線形性が強い場合は,
静的な釣 合い経路が非常に複雑にな ること が あ る。 こ の ような時 間の経 過 を 無 視 し た釣合い経路 を求め る ことは力 学 的お よ び数 学 的 研 究と して の意 味は大きいが,
実 現 象の解 析 を 目 的 と す る 場合に は,
そ の結 果の意 味 付け は難し い と 考え る。
釣 合い 経 路 を 求 め た だ けで は,
外 力に対 す る構 造 物の応 答 を 求め たことにな ら ないか ら で あ る。
3.
解析方法 3.
1 概 要 解析手法の基本的な考え方は そ の ユ1) で述べ た 。 こ こ では要点だ け を ま と め る。
1 )動 的 数 値 解 析に は運 動 方 程 式を短い時 間 間 隔で逐 次 積 分し てゆ く直 接 積 分 法の一
種である Newmark一
β法 (β=1
/4:定加 速 度 法 )を用いる。 2) 解 析で用いる自 由度は1節 点につ い て,
並 進 3成分,
各軸回りの回 転3成 分で ある。 本論文で は部材と して鋼 管 を用いてい るのでこ の6
成分の 自 由度に よっ て解 析い るいる,
H型 鋼の よ うな開 断 面 部 材の解析の ために断 面 の そ りを考 慮し た解 析 も行え る よ うに理 論 展 開し てあ る。
3
) 回転 自 由度の項に は慣 性 力 お よ び外 力は作 用せず 骨 組の各節点に おける並 進 運 動の項だけに慣性が作用す る と す る。
4) 構 造 物の 剛 性は時 刻 tの 状 態の ま まで t+At
まで 変化し ないと する。
3.
2 収 束 計 算 本 研 究で は各 積 分ステップで外 力と (ひずみ に よる内 部 節点 力+慣 性力〉との釣合い を チェ ッ ク し,
釣 合い の 精 度が 悪 け れば収 束計算を行うことに よ り精 度を確 保し てい る。
し か し,
以下の例題で はAt
を 十分に小さ く取っ て い る の で収束 計 算の必 要は な か っ た。
4.
数値解 析 例1一
単純引張 問 題 こ の問 題 は, その lnで も 取 り上げ た,
図一
1の よ う な直線 部材を材軸方 向に引 張り, 破 断さ せ る とい う簡単 な もの で あ る。
本 解 析 例は,
破 断 を伴う急 激な状 態の変 化に よ りa=O
とい う 静 的解 析が可 能で あ る た めの前 提 が崩れ る た め, 動的 解 析によ ら な くて は厳 密な解は得ら れ ない。
こ こ で は,
3種 類の載 荷 速 度に対 して解 析を行い , そ の結 果を 比較 検 討する。 4.
1 解 析モ デル 表一
1に諸元 を示す。
な お部 材の途中に は質量 を置か な い。 表一
1 材 料 定数等 R 名称 記号 数値 単 位9
:
]
ddL 1 内部 筋点 M δ F 図一
1 単純 引張 問 題 部材長 ’ 2.
om 軅 ぱ 0.
1m 内 径 dL0.
09m 囀 41.
49xlO−
3m3 弾 性 剛 性 E2.
06× 101, Pa 塑性剛性 EP5.
15xlO8Pa 降伏 応 力度 σ, 235xlO6P & 降伏ひず み ‘ ” 1.
14xlO−
3 破 断ひずみ ε61.
14・
×10嘗
1 質量 M1.
00xlO2Kg 弾性固有周期 T5.
07xlO−
38 降伏後 固 有周期 r5.
07x10’
33 稠 分間隔 △ε LO ×10−
4s外力
F
[N
]は時間t
[sec ]の関 数と して式 (3)に従っ て作 用 さ せ る
。
F
(t)=
=
ξttt・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
…
tt・
…
tt・
…
(3} ξは載 荷速 度 を表すパ ラメー
タ である。
文 献1) と同 じξ= IOT [
N
/sec ] (以下 case F と呼ぶ )の ほ か に,
速 度の小さ な IOG [
N
/sec](以 下case M と呼ぶ ),
ユ05[N/sec コ(以 下case
S
と呼ぶ )の全3ケー
ス の解 析を行い,
結 果 を比 較する。
4.
2 解 析 結 果 今 回の解 析では材料の力 学的牲 質に速度の影 響を無 視 し,
中 間の質量を考慮し て いない た め,
反 力R
と変形 δとの 関 係は図一
2に示 す よ うに ξに よ らず同 じで あ る。 反 力 R と時 刻を ξで基 準 化し た もの との関 係は 図一
3 の よ うに な る。 また加速度 α と時刻 を ξで基準化 し た もの との関 係は図一
4の ように な る。 系に減 衰を考 慮 し て い な い た め,
図一
3,
図一
4ど ち らの関係に も 固有 振 動の影 響が見ら れ る。
固有周期は降伏前5.
07
×10
−
3 [sec ], 降 伏 後1.
02× 10−
L [sec]で あ る。
固有 周 期は ξに よ らず一
定で ある0
一
1一
2R [105N]−
3一
4一
5一曾
3一冒
25− .
2− .
15− .
1−
O.
05 0 6回 図一
2 変 位一
反 力 関 係 0一
1一
2R [105NI− 3
一
4 01 2 3 4 t!ξ[10−
5sec2 /N] 図一
3 反力時刻 歴 56 ]一
0
一
1一
2一
3 α[103m!s21−
4一
5一
6一
7 012 3 4 t1ξ[lo’
5sec2!N] 図一
4 載 荷 点 加速度時 刻 歴 56 の で,
ξ が小さ く現 象に 時 間 を長く要する もの ほ ど,
固 有 振 動 数の影 響が相 対的に目立た な く な る。
具 体 的に は caseF
で は降 伏まで約7
回 , case M で は約70回,
caseS
では約 700回の振 動が起こっ て いる。
こ の振 幅は 1/4固有周期の間の変 位量で決 定 さ れ るの で,載 荷 速 度の小さい もの ほど振 幅も小さ く なっ ている。
加 速 度の変 動 も同 様の理由で載荷速度の小さい もの ほど 小さくなっ て い る、 こ の 関係 は 降 伏 後 も変わ らない。
こ れら の こと が,
ξが小さい もの ほ ど時刻 歴が直線 的に な る理 由であ り,
外 力 の変化につ いて考えると,
問 題 を静一
的に扱っ て いることに近 く な る。
e 図 中a 点で降 伏し た後は降 伏に よる剛性低 下の た め に 固 有 周 期が約20
倍に伸び る。
caseF
で は固 有 周 期の 1/4程 度の時 間で破 断ひ ず みb
点に 達 し破 断する が,
case S で は破 断まで固有周期の 90 倍程 度の時 間を要す る。
b
点で破 断 し た 後 は Mα=
F(t)の 直線に乗る こと が 分か る。
こ の解 析 例で分か るよ うに,
部 材の状態の変化によっ て系に大き な加速度が 急 激に発生す るこ と がある。
慣 性 力を無 視 し た静 的解析 法で は この よ うな現象 を扱うこ と は難しい。5.
数値解 析 例2一
網 状 スペー
ス トラス 図一
5に示す解析 例題は多くの研 究 者 (たとえば半 谷 ら31,
Tachibana“,
WilliamssJ
,
Zienkiewicz
らa ),
D.
Karamanlidis らη,
K,
Kondoh らs 〕な ど)が解 析を行っ て き た有 名な網 状スペー
ス トラス の snap through問 題 である。
かつ て筆 者ら も文 献g
)で静 的 解 析 を行っ た。 こ の例は釣 合い経路一
ヒに特 異 点を持つ 構 造 物 で,
通 常 の手 法では解 析する ことは難し い。 5、
1 解 析モ デル 部 材はすべて同一
の材料・
断 面と す る。
こ こ で は鋼 材 を想 定 し ヤン グ係 数E
; 2.
06×1011 [Pa
] , 断 面 &’
A・
=
一 45 一
0
一
50 F[10−
4EA ]− 100
一
150↑
Pt9 z,
E
..‘ 9’ u〈:i
. L_
星 」 単 位:m一
200 0 図一
5 網 状スペー
ス トラス問題 12 3 4 tlsec】 図一
6 外 力 時 刻 歴5
6
4.
77×ユ0−
z [m2 ]と する。
部 材 は常に弾 性 を 保 ち 個材座 屈は 生 じ ないものと し,
また部 材 接 合 部ばすべ て ピン接 合と す る。 載荷点であ る中 央の節 点に 2.
82×IO4 [kg],
それ以 外の節点に2,
59×IO2 [kg]の質 量を付 加し て質 点と す る。 こ の状態で総 自由度 数21,
固 有 周 期は 1次が0.
354 [sec ],
2次 が O.
0513 [sec],
21次が0.
00256 [sec]であ る。 滅 衰マ ト リッ ク ス は
,
初 期 剛 性か ら求め た1次固有円 振 動 数 ω,と そ れに対する減 衰 定 数 h,よ り2hi /ωtを求 め,
現 時 点の剛性マ ト リッ ク ス に乗じ る瞬 間 剛 性 比 例 型 とし,
並 進 自 由 度の項に作 用 するものとす る。
節 点 ユ の 2 方 向に外 力F
を 作 用 さ せ る。
外力 は 図一
6に示すように最 大 値は 150 [10−
4EA ]と し, 外 力 を0
に戻す まで の秒 数の違いで 2ケー
スの解 析す る。
す な わ ち,
2 [sec ]後に 0 に戻る場 合 (caseF
)と,
caseF の 3倍の時 間 をか け る case
S
の 2ケー
スである。
0一
5一
10dfm 】−
15−
16.
432一
20一
25 00
一5
一
10d [m】−
15−
16.
432一
20一25
0.
5 1t 【sec】 1.
5 図一
7 変 位 時 刻 歴 [case F] 2 100 0一
100 P[10−
4EA ]−
200一
300一
400一
500 1 2 3 4 5 t[sec】 図一
8 変 位 時 刻 歴 [case S亅6
0.
5 1 1.
5 t[sec] 図一
9 中央 点 内 力 時 刻 歴 [case F] 2 積 分 間 隔は O.
OOI 【sec],
減 衰 定 数h
,は 3% と す る。 5.
2 解 析 結 果 図一
7,
8は中央の 節点 1の z 方 向 変 位の時 刻 歴で あ る。
a 点において構 造物は 反転 位 置に達して い る。 質 量 は節 点1に大き く偏っ て い る た め,
こ の 節点の 挙 動が全 体に支配的であ る。
この例は減衰が あ り,
最 終 的に荷 重 が 0にな る た め, 反 転 位置で振 動が収まっ て いる。100 0
一
1dO P[lo−
4EA 】−
200一300
一
400一
500 1000
1 2 3 4 5 ¢圜 図一
10 中 央点反 力 時 刻 歴 [caseS
] 6 0一
100 P[10−
4EA ]−
200一300
一
400一
500 ← d冶 認
論
ノ
7
丶 b一
25−
20−
15−
10−
5 d[m ] 図一
11 中央 点変位一
内 力 関係 0 加 力 点の z 方 向 内 力の時 刻歴 を表 し た もの が 図一
9,
lGであ
る’
1
構 造 物が反 転 位 置に達 し た後,
内力の 変動 が激 し く な り,
急激な運 動 が生じ て い る こと が 分 か る。
図一
ユ1は節 点1の 2 方 向の 内 力 と変位の関係で ある。
b
点までは 静 的 解 析結果 とほぼ一
致 して い る。b
点 を過 ぎ る と自ら変 位 を 進め ようと す る力が発 生 し,
snap through 現 象が 起 こっ て い る の が分か る。 こ の snap through現 象は載 荷の 遅い case S の 方が載 荷の 速い caseF
に比べ相 対 的に急 激で あ ること が 分牟る。
その 後 c−d
点 問で振 動 し ながら減 衰し反転位置E
点に落 着 くが,
こ の c−
d点 閙に描か れ る曲線は,
この 構造 物の 初 期 状 態に対し て z 方 向上向きに外 力を作 用さ せ た 場 合の原 点か ら描か れ る曲 線と同一
である。
な お, こ こ で示 した反 転位置と は
,
節 点 1の 2 方 向 変 位が一
16.
432 [m ユの 時を指 して い る。 ま た図一11
に お ける静 的 解 析 結 果は文献9)におい て得られ た もの である。 こ の よ うに,
実現象に忠 実に,
系が運 動 を 起こすこと を考慮す れ ば,
釣 合い経 路 上の特 異 点を超えて の解 析が 司.
能である。
較 材:
節点数.
呂2 郁材凱92 89.
1φx32 山=
関.
8 ・,=
3、
41・1伊IP司 N,=
2・
肘・105四一
● 支点.
.
載荷点 斜材:
60.
5φx3.
8 λ=
86、
6 σ,
訓.
03×1皚 P 司 馬=
2.
了3xLOじ圖 E=
2.
06×10且互[Pa],
8=
2.
06xl困P己
1p
a
}
2000 2000 2eOO 2000 2000 図一
12 複 層立体ト ラス構 造 物の解 析 例6.
数値解析 例3一
複 層 立 体 トラス そ の11
] と本 論 文の 4,
5で は簡 単な例 題を用いて,
従 来 静 的に扱わ れ て き た問題 を動 的に扱う意義につ いて述 べ てきた。
こ こ で示し た方法 を実際に設計さ れ建 設され る規 模の構 造 物に対して も応 用す ることが できれば, 設 計の時 点で構 造 物の 力 学 的 性質を最終崩 壊ま で把 握で き,
非 常に有 意 義である。
こ こ で は1984
年に実 験 が 行 わ れ た立 体 トラス構 造1°) を例 題と して この解析法を適用 し てみ る。
こ の実 験は文 献2
}で も 比較対象と し て扱っ てい るQ 解 析に要 した時 間は CRAY−
2 を使っ て lcase につ きCPU
で 3時 間 程 度で あ り,
現時点で は実用的と は言え ない。
し か し計 算 機の 進歩に は目覚ま しい ものがあり,
近い将 来には実用 的 な 計 算時間で 処理で き る よ う に な る と考え る。
6.
1 解 析モ デル こ の解析 例は図一
12に形 状を 示す 複 層 立 体 トラス構 造 物で ある。
各 節 点の質 量は,
その節 点に取りつ いてい る部材の質 量の み からな るとす る。
す な わ ち,
各 部 材の質量 を その 部 材の両 端の節 点が均 等に負 担 する ものと して定め る。 解 析の境 界 条 件は,
図一
12中 ●で示す点を 鉛直方向 に支持し,
▲ で示す点 を水 平 方 向に支持す る。 各 部 材の端 部は節 点に剛 接 合し てあるもの と す る。 荷 重は中 央 部 下 弦 材の 4交 点 に均 等に作 用さ せ る。
解 析は載 荷 速 度の違い により 2通 り行う。
静 的 解 析で の最 大 耐 力 (約 50 ton = :4.
9xlo5 [N
]〉の約 2倍が 1秒 後に作用 す る よ うにす る caseF ,
5秒 後に作 用する よ うにす るcaseS
で あ る。
いずれ の場 合 も荷 重が一
定の一
47
一
o
一
〇.
02一
〇.
04d [m ]− O .
06一
〇.
08一.
10
0.
3/2.
O t[s 】(ca8e F!case S) 図一13
中 央点 変 位一
時刻 歴 O.
6/3.
0 0一
1一
2R [1(糊一
3一
4一5
− .
1一
〇。
05 己回 図一
15 反 カー
変 形 関 係 o 0一
1一
2H [1PtNl−3
一
4一
50
0 .3
/2 .
O
t[sec](c畿 F!case S) 図一
14 反力時 刻 歴 割 合で増加す る よ うに作 用さ せ る。 こ の 構 造 物 は87
自 由 度あ り,
0.
0436秒, 2次, 3次 が 共 に 0.
0372秒,
0.
00168秒で ある。
O .6
/3 .0
固有周期 は 1次が87
次 が 数 値 解 析の時 間積 分の間 隔は 0.
001秒とする。
6.
2 解 析 結 果 図一
13 に中 央 点の 鉛 直 変 位の 時 刻 歴を示す。 また図一14
に支 持 点 (図一12
の● }の 鉛直方向反 力の 時 刻歴 を 示 す。
図一
15には 反 力 と 鉛直 変 位との関 係を示す。 図中に示し た 「実 験 結 果 」は 上述の 実 験 結 果lo) であ る。 解析結果と 比べ,
実 験 結 果の方が反 力が小さい のは,
実 験では部 材 端 部が細くな っ ており,
ボル トに よ り接 合 して いる のに対 し,
解 析で は一
様 な 太 さで節 点で剛に接 続 して い る もの と仮 定し た ためであると考える。
図一
13 の 曲 線の折 れ 曲 が り a 点は,
中央 上 弦材が 塑性座屈す る ことに よ り生じて い る。
ゆっ く り 載荷 し た caseS
の方 が例 題2の場 合と 同様に座屈後 急 激に変形 が進行し,
こ の間の支 持 力は ほ と ん ど増 加し てい ない こ と が分か る。
a 点で上弦 材が塑 性 座 屈し たあと, 静 的 解 析と動 的解 析と は反 力一
変 形 関 係が異なっ て い る。図一
ユ3によれ ば,
4 2 丼1
醐 0−
2一
4−
0.
06−OgO4
− 0 .02
d[m ] 図一
16 変 位一
軸 力 関 係 [case F] 4 2 N [10SN】10
一2
0
一
4−
0.
06−
O.
04−
0.
02 d[m] 図一
17 変 位一
軸 力 関 係 [case S]0
座屈 後急激に変形が進 行し て い る。
こ の時の加 速 度によ る慣 性 力の影 響で全 体の変 形が変 化し たものと考え る。
図一16
か ら18
に中 央 部の変 形と代 表 的 部 材の軸 力と の関 係 を 示 す。
座 屈 発 生 までは どの 解 析 法でも 同 じ結 果 で あ るが, 座屈 発生によ り急 激 な 運 動 が始ま る と,
質 点 に作 用す る慣 性 力の影 響で,
変 形が運 動 状 態に よっ て異4 2 丿vにOSN]
0
一2
一
4−
0.
06一
〇.
04d 回一
〇,
02 図一
18 変位一
軸 力関 係 [静 的 ] な る た め,
微妙な違い が見ら れ る。 07.
考 察 例 2,
例3
の よ う に静 的解す な わ ち釣 合い経 路が得ら れ てい るものと 動 的 解 を 比較す る と,
載 荷 開 始 当 初は同 じ変 位一
荷 重 曲 線を描 く。
幾 何剛性の 変 化あ るい は塑 性 化に よる剛 性の低 下によっ て変 形が急 激に進行す る よ う に な ると,
静 的 解 析 解と,
動 的 解 析解 とで違 う変位一
反げ
力関 係に な る。 また,
動 的 解 析で あっ て も, 載荷の仕 方 に よっ て も か なり異なる変 位一
反 力 関 係になる こ と も 分 か る。
その他に も質量の 分布形に よっ て も挙 勤が異な る川 。 これら はすべ て動的解析の場 合に質 点に作 用す る 慣 性 力の影 響であると考える。
8.
結 論 構 造 物に外 力が作 用 し た時の挙動を,
材料の構 成 則,
釣 合い条 件,
適 合 条 件の 3つ の基
本 式を用い て, 静 的な 釣 合い条 件の変 化と考え て解 析す る方 法が静 的 解 析であ る。 つ まり構 造 物に生 じ る加 速 度,
速 度は 無視で き る と 考えて いる。 静 的 解 析 は構 造 物 が安 定 範 囲に あ る と き に は, 外力に 対 して生じ る変形, 応 力状態 が 1対 1に対 応し,
その結 果 得られ る変 形,
ひずみ,
応 力は構 造 物の力 学 的 挙 動を 理解す る の に非 常に有益で あ る。
構 造 物が不 安 定状 態に入っ た後の挙動の 解 析につい て も,
静 的に与え た外 力 と構 造 物の抵 抗の釣合いとい う考 え方で解を得る研 究は数 多くな され ている。
し か し,
本 論 文で述べ たよ うに, 部 材の座 屈, 破断な どによっ て構 造 物の中に急 激な変 化が生じ た と き,
あ く まで外 力と構 諠 物の抵 抗の釣 合い を保つ とい う考え方で解を得る こと は非 常に難しくな る。
実 際 現 象とし て も構 造 物に は質量 が存 在し,
急 激な構 造 物の変 化に は大き な加速 度,
速度 が 生 じ るか ら,
こ の ような不 安 定 問 題は動 的に扱う方が合理的で あ る と考え られる。
その 1に引き続き本論文では 3つ の例 題を用い,
特に 外 力の作用 時 閙 を 変 数 と して数 値 解 析を行い考察する こ と に よっ て, 不安定問題の構 造 解 析 を動 的に扱 うこ との 有 効 性を示し た。
動的解 析は こ の よ うに 利 点 が多い が,
膨 大な計 算を 必 要と す る とい う欠 点が あ る。 解 析 例か ら分か るよ うに,
構 造 物の最 も長い固 有 周 期の 数倍の時間に わ た っ て解析 し な け れ ば,
構 造 物の 固有振 動の影 響 を 強 く う け る。一
方で,
数 値 積 分の制 約か ら, 構 造物の最も 短い固 有 周 期 より短い積 分 刻み で積 分 を行わ な け れば発散 現 象を 起こ して しま う。
し たがっ て,
数 千,
数万の時間ステッ プにわた り非 線 形 解 析 を行わな けれ ばな ら な く な る。 次には,
部 材の中 間にも 質量 を分 布させ て部 材 内の動 きに も慣 性 力 を考 慮し な が ら構 造 物の非 線形 挙 動 を 追 跡 することを考え て い るが, こ の場 合, 最短固有周期は本 論 文で扱っ たもの より さ らに短く な る難 し さ が あ る。 自然現 象は連 続 的な現象で あ り,
数値解 析 に用い てい る時 間 刻み At は必 要な く,
載 荷 時間 はい く らで も 遅 く す ること がで き る。 わ かりやすく言い換え ると 自然界は 無 限 回の積分 を行っ て い る こ と に な る。
以 上 述べ て き た ように,
現 状の計 算 機に よ っ て自然に 起き ている現象を そ の ま ま再 現しよ うとする の は非 常に 難しいが,
計 算 機の 能 力の 向上に は目 覚まし い もの があ り, 近い将 来こ の よ う な解 析を行うことも可 能になると 考えて いる。 参考 文 献 1) 久 保 田英 之,
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