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(1)

木質バイオマス熱分解過程の反応速度解析と簡易炭化炉

における炭化条件の検討

Kinetic analysis of devolatilization reaction of woody biomass and optimum

operation condition for a simple carbonizer

木 村 隆 則

・ 鈴 木 善 三

**

・ 守 富 寛

***

Takanori Kimura Yoshizo Suzuki Hiroshi Moritomi (原稿受付日2007 年 8 月 16 日,受理日 2008 年 2 月 26 日) 1.はじめに 地球温暖化問題への関心の高まりと共に,化石燃料を代替 するエネルギー源としてバイオマスが注目されている。木質バイ オマスをエネルギー資源として利用する場合,石油や石炭など の化石燃料が限られた地域に集中的に存在しているのに対し, 木質バイオマスは小規模に賦存し,(1) 含水率(伐採後 30%以 上)が高く,発熱量(8-15 MJ/kg)が低い1)(2) 形状や性状が多 様であり貯蔵性が劣る。(3) 収量および品質の変動が大きい。 (4)かさ密度が小さく,輸送効率が低い,などが木質バイオマス をエネルギー資源として活用する場合の課題となっている。これ らの課題を克服して,木質バイオマスのエネルギーのより効率的 な利用を図ることを目的として,筆者等は,わが国において小規 模に分散している未利用木質バイオマスに着目し,これを賦存 拠点(例えば山地,製材所)で炭化処理を行った後,炭化物とし て収集・ガス化し,利用する地域型エネルギーシステムを提案し てきた2),3),4) この場合,炭化時にエネルギー損失を伴うが,賦存地での炭 化によるエネルギー密度の向上,搬送の利便性・貯蔵性の向上, 均質性が達成される。加えて,ガス化時のタールフリー化は木 質バイオマスをガス化して利用する場合に,タールによる種々の トラブルを回避することができ,ガス化設備および保守管理を簡 素化できる。 筆者等は提案するシステムの検討のため,先に木質バイオマ ス炭化物の水蒸気ガス化速度を測定し,上記システムのガス化 装置の基本的な設計データを入手した 5),6),7)。筆者等のシステ ムを検討する場合,これに加えてガス化の前段である木質バイ オマスの炭化の過程についても検討する必要があり,炭化過程 の詳細な情報,特にシステムに最適な炭化条件を知ることが必 要である。 木質バイオマスの炭化については,これまで木炭の製造に関 して林学分野を中心に多くの研究が報告されてきた。しかしなが ら,既往研究のほとんどは良質の木炭を効率良く製造することを 目的としたものであり,既往研究は必ずしも筆者等の提唱する 炭化-ガス化プロセスに適応できるものではない。筆者らのシス テムでは,炭化は木質バイオマスの欠点を解消するのが主目的 であり,木炭としての品質は必ずしも必要としない。むしろ,最終 Abstract

This paper describes a kinetic analysis of devolatilization rates of woody biomass by a model based upon distributed activation energy model and calculation results of proceeding of devolatilization of woody biomass in a simple carbonizer. Weight loss during pyrolysis of the woody biomass was measured by a TG in three different heating rates. The data of weight loss with time were processed according to the method proposed by Miura to determine provability density functions of activation energy distribution,

f(E), and corresponding frequency factors k0. Original method proposed by Miura cannot be adapted directly for the analysis of devolatilization of biomass because of decreasing in the activation energy with proceeding of the devolatilization. However, approximate activation energy distribution functions and frequency factors, with which devolatilization reaction could be well simulated, were obtained for woody biomass by a modification of original method proposed by Miura. For woody biomass, the provability density functions for the activation energy distribution were so different from those of coals that f(E) could not be expressed by a simple distribution function such as Gaussian distribution. This may correspond to the pyrolysis behaviors of the major components of biomass such as cellulose, hemi-cellulose and lignin. Predicted and measured amounts of remaining volatile matters in the chars were in good agreement. Thus, an optimum operation condition of a simple carbonizer was determined by a model using the parameters obtained. Calculations show a combination of highest heating temperature of 700K, rapid heating, short holding time, and rapid cooling is the best operating condition for a simple carbonizer in the view point of operability and energy saving.

*株式会社エルウィング

〒350-0222 埼玉県坂戸市清水町 30-11 **独立行政法人 産業技術総合研究所 〒305-8569 つくば市小野川 16-1

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段のガス化に適した反応性の大きい木炭を効率的に製造するこ とが重要となる。さらに,筆者等のシステムでは,安価な操作性 に優れた簡易炭化装置を念頭に置いている。この装置での運 転パラメーターと製造される炭化物の性状の関係を知ることがシ ステムの設計には必要となる。この目的からは,やはり良質の木 炭製造を目的とした既往研究の結果をそのまま簡易炭化装置 の設計に使用することは不適当と考えられ,簡易炭化装置での 木質バイオマスの炭化特性について研究する必要があると考え る。 熱分解反応が複数の反応から成るとするモデルには, (1)並 列反応モデル, (2)競争反応モデル, (3)逐次反応モデル, (4)並 列反応と逐次反応からなる複合反応モデル, 等がある8)。さらに 近年は石炭やバイオマスに対しその構成成分を分子レベルで モデル化し,熱分解過程で生じる原子間結合の開裂を予測し, 分解過程で生成されるガス,タール類とその収率を予測する詳 細なモデルも提案されている 9),10)。熱分解の直後にガス化や燃 焼が生じる場合には,その反応生成物を予測するために熱分解 過程での生成物中の化学種を定量的に予測することが必要で あり,前述のモデルはこうした解析には極めて有効である。しか しながら,筆者等のシステムの解析のためには熱分解過程での 分解生成物に関する詳細な情報までは必要ではなく,揮発分 の放出速度,残留揮発分量を予測可能な単純なモデルで充分 である。 石炭の熱分解反応速度解析では,Miura が提案した非等温 解析手法が良く知られている 11)。前述の逐次並列反応モデル では反応経路を仮定し,それぞれの反応の速度定数,活性化 エネルギーを決定する手法であるので,反応経路の決定の過 程で任意性が許される。これに対しMiura の提案する方法は活 性化エネルギー分布を考慮するだけで,反応経路そのものは仮 定しないので任意性は排除されている。また,活性化エネルギ ー分布を表す確率密度関数に対しても正規分布等を仮定する 必要はなく,任意の関数として取り扱うことが特長である。このよ うな活性化エネルギー分布モデルを仮定した非等温解析法は, 石炭をはじめとする有機物の熱分解過程を解析する場合には 非常に簡便な方法で利用価値が高い。この非等温解析手法に より熱分解反応の活性化エネルギー分布と頻度因子を知ること ができれば,有機物の熱分解過程をモデル化して刻々の揮発 分発生量を計算により求めることも可能となる。バイオマスの熱 分解過程をモデル化できれば,任意の温度履歴における木質 バイオマスの熱分解過程を計算することが可能で,これにより想 定される簡易炭化装置での木質炭化物の炭化の程度を予測す ることが可能となり,筆者等の提唱するシステムの簡易炭化装置 の合理的な設計が可能となる。 そこで,木質バイオマスの熱分解反応に対して非等温解析法 を適用し,熱分解反応の活性化エネルギー分布確率密度関数 と活性化エネルギーに対応する頻度因子を求める反応速度解 析を行うことを試みた。さらに,簡易炭化装置で製造した炭化物 の熱分解率(炭化度)と簡易炭化装置の温度履歴および決定し た木質バイオマスに対する活性化エネルギー分布および頻度 因子により計算した熱分解率を比較し,本手法による木質バイ オマスの炭化過程のモデル化の妥当性を確かめた。次いで,解 析結果を用いた計算により筆者等の提唱する前処理としての炭 化操作のための木質バイオマスの最適炭化条件を検討した。 2.実験装置および実験方法 示差熱天秤(理学製水平差動型TG-DTA8120)を窒素雰囲 気として,5, 10, 20 K/min の 3 通りの昇温速度で室温から 1223 K まで加熱し,2 秒毎の重量変化を記録することによ り熱分解過程の解析に必要な熱重量減少曲線を取得した。 加熱途中で378 K,10 min 間保持し,木質バイオマス試料の 乾燥重量を求めた。使用した木質バイオマス試料はスギお よびスギ樹皮の2 種であり,その分析値を表 1 に示す。解 析においては,1223K までの重量減少量と乾燥重量より最 大揮発分量V*を決定した。3 通りの昇温速度で得られた重 量減少量から得られる刻々の d(V/V*)/dt の値を用いて前述 の非等温解析手法により活性化エネルギー分布確率密度関 数と活性化エネルギーに対応する頻度因子k0を決定した。 解析により得られたパラメータによる熱分解反応の進行 度予測と実際の炭化物の炭化度(残存揮発分率)を比較す 表1 木質バイオマス試料の分析値

Cedar saw dust Cedar bark

47.64 47.93

6.18 5.32

0.00 0.47

46.18 46.28

Moisture (wt%) 3.20 6.90

Fixed carbon (dry wt%) 17.70 18.10

Volatiles (dry wt%) 80.50 80.30

Ash (dry wt%) 1.80 1.60

Proximate analysis N S&O

Ultimate analysis (daf wt%) C

H

(3)

300 400 500 600 700 800 900 0 50 100 150 200 250 10-873-60 3-773-30 3-673- 0 T e mper at ure [ K ] Time [min] Cedar 図 2 簡易炭化装置による炭化温度履歴の一例 Sample 名は,昇温温度(K/min)-最高到達温度(K)-保持時間 (min)を表す。 るため,図 1 に示す固定層形式の簡易炭化装置および,坩 堝とマッフル炉を使った簡易炭化装置により木質バイオマ スを炭化した。図 1 は,内径 45mm,長さ 720mm の石英製 の反応管内部に木質バイオマス試料を充填するための内径 45mm の石英フィルターを設置し,その上に粒径 150μm 以 下のスギ(芯材)を約5g 充填した。N2を1×10-4 m3N の流 量で上部より流し,反応管を電気炉で加熱し熱分解反応さ せた。20K/min で室温から 283K まで昇温した後,10min 間 保持することで水分を蒸発させた。その後,炭化条件を次 のように変化させた。 (1) 昇温速度を 3K/min および 10K/min の 2 通りとする。 (2) 到達最高温度 Tmaxを673, 773, 873 K の 3 通りとする。 (3) その温度での保持時間を 0,30,60min の 3 通りとする。 この3 種のパラメーターの組み合わせにより 18 通り(2×3 ×3)の炭化物試料を作成した。試料近傍の温度は石英管内 に設置したJIS-K 熱電対により測定したが,昇温過程はプロ グラムにほぼ従って直線的な昇温であった。一定の保持時 間経過後,冷却は電気炉上部を開放することにより行った。 これら一連の操作による温度履歴を記録した。図 2 に簡易 炭化装置における温度履歴の一例を示す。製作した炭化物 中の残存揮発分量は前述の熱重量分析装置により,試料を 1223K まで 5K/min で加熱し,その際の重量減少量と木質バ イオマス試料の分析値より計算した。 非等温解析により決定された木質バイオマスの熱分解反 応のパラメータを用いて熱分解過程の計算を行い,製作し た炭化物中の残存揮発分量の予測を行った。木質バイオマ スの熱分解過程における残存揮発分率 1-V/V*は,熱分解反 応に活性化エネルギー分布を考慮するモデルで,その分布 を表す確率密度関数が f(E),反応の頻度因子が k0で与えら れるとき次式で計算できる。 dE E f dt e k V V t RT E ) ( exp 1 0 0 0 *

− ⎟⎟ ⎠ ⎞ ⎜⎜ ⎝ ⎛ − = − (1) 解析によって得られたバイオマス試料の熱分解反応の活 性化エネルギー分布確率密度関数 f(E)と活性化エネルギー に対する頻度因子k0を(1)式に代入し,前述の炭化装置の温 度履歴を用いて任意時刻の残存揮発分率 1-V/V*を計算した。 計算では,活性化エネルギー分布を表す確率密度関数f(E), それに対応する頻度因子 k0,および記録された簡易炭化装 置の温度履歴を与え,(1)式を数値積分することにより任意 の時刻 t におけるバイオマス中の残存揮発分率 1-V/V*を計 算した。 3.実験結果及び考察 3.1 熱天秤によるバイオマスの熱分解データの解析結果 図 3 (1), (2)に非等温解析法により決定されたスギ及びス ギ樹皮の活性化エネルギーE と熱分解率 V/V*の関係を示す。 活性化エネルギーは,熱分解初期では熱分解率の増大と共 に急激に増大するが,熱分解中期ではほぼ一定の値をとる ものの僅かに熱分解率の増加と共に減少する傾向が認めら れた。さらに熱分解終期では活性化エネルギーは再び急激 に増大する。この分解中期に活性化エネルギーが僅かに低 下する現象は石炭等では認められず,木質バイオマス特有 の現象と考えられる。林12)はこれを,バイオマス中のセル ロースが熱分解を受けて構造が変化して,より熱分解が進 行しやすい形態になるためと説明している。 この非等温解析手法では活性化エネルギー分布を表す確 率密度関数f(E)は,熱分解率 V/V*と活性化エネルギーE との 関係を示す図で,V/V*を E で図上微分することにより求め られる。 ) ( * f E V V dE d = ⎟ ⎠ ⎞ ⎜ ⎝ ⎛ (2) 活性化エネルギーE に対応する頻度因子 k0は活性化エネル ギーE と E

e

k

0

=

α

β (3) の式でほぼ近似することが可能である。図 3 に示されるよ うに木質バイオマスでは分解中期で僅かに熱分解率の増加 と共に活性化エネルギーの値が低下する傾向があり,(2)式 で微分係数が無限大となる E が存在するため(2)式により f(E)を決定することは困難であり,石炭の熱分解反応の解析 に有効であったこの非等温解析手法を木質バイオマスの熱 分解反応の解析にはそのままでは適応できないことが解っ た。

(4)

(1) スギ樹皮 0 100 200 300 400 500 600 700 800 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 V / V* , -Cedar bark (2) スギ心材 0 100 200 300 400 500 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 V / V* , -Cedar 図 3 活性化エネルギーと熱分解率V/V*の関係 そこで,工学的な観点から非等温解析手法を修正し、木 質バイオマスの熱分解反応の進行を予測可能な,活性化エ ネルギー分布およびk0の近似値の決定を試みた。すなわち, V/V*E の曲線を数値微分し f(E)の概略の形を決定し,E の 増加率の大きな部分(微分係数無限大)には有限の値を与 え制限した。こうして概略を決定したf(E)を確率密度関数の 制約条件,

=

0

f

(

E

)

dE

1

(4) に留意しつつ,さらにk0についても(3)式に留意しつつαと βの値を修正し,計算による熱重量減少曲線と実際の熱天 秤による熱重量減少曲線が一致するようにし,最終的な活 性化エネルギー分布確率密度関数f(E)の近似値および k0を 決定した。 この様な手順で最終的に決定された活性化エネルギー分 布確率密度関数f(E)と頻度因子 k0を図4 と図 5 にそれぞれ 示す。スギ試料では240 kJ/mol に,スギ樹皮では 210 kJ/mol に鋭いピークをもつ活性化エネルギー分布を示した。両試 料とも活性化エネルギー分布確率密度関数はピークを越え た高活性化エネルギー領域でE の増加に対する f(E)の減少 率が一旦低下した後,f(E)がなめらかに減少する傾向を示し, 正規分布の様な単純な分布は示さなかった。頻度因子k0に ついては、スギ,スギ樹皮とも,熱重量曲線を最も良く近 似する値は,

k

8 0.043E 0

=

1

.

00

×

10

×

10

s -1 0.0000 0.0050 0.0100 0.0150 0.0200 0.0250 0 100 200 300 400 500 f(E ) [ m o l/ kJ ] E [ kJ/mol ] Cedar bark Cedar 図4 活性化エネルギー分布 となった。 図 6 に熱天秤により 5, 10, 20K/min の昇温速度で測定した スギ試料の熱重量減少曲線と,決定されたスギの f(E)と k0 の2 種のパラメータを用いて(1)式により計算した同一昇温 速度における重量変化曲線の比較を示す。図 6 に示される とおり,今回試みた方法により決定した f(E)および k0を用 いて計算した熱重量曲線と実際の熱重量曲線は概ね一致し ており,熱天秤の条件では充分スギ試料の熱分解速度を予 測している。図 4 に示されるスギ樹皮試料による f(E)を用 いた場合も同様に試料の熱分解速度を予測していた。 木質バイオマスでは温度に対して,熱分解曲線が屈折す る特長が認められ,スギ試料の場合は図 6 の条件では 650K 付近で熱分解曲線が屈折する。図には示さないが,その傾 向も充分再現した。これは前述の活性化エネルギー分布曲 線でピークを越えた高活性化エネルギー領域で一旦減少率 0 10 20 30 40 50 60 0 200 400 600 800 1000 Cedar Cedar Cedar bark Cedar bark Lo g( k0) E [kJ/mol] Log(k0)=8+0.043*E L og [ k 0 ] 図 5 活性化エネルギーと頻度因子の関係

(5)

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 1000 2000 3000 4000 W / W 0 Time [min]

Cedar saw dust

5 K/min 10 K/min 20 K/min Time [sec] 図 6 測定値と計算結果による重量減少率の比較 が低下する部分の影響である。木質バイオマスの主要構成 成分であるセルロース,ヘミセルロース,リグニンの熱分 解特性の相違による熱分解反応の活性化エネルギー分布の 相違を反映しているものと考えられる。このように,ここ で試みたf(E)の決定手法によって,木質バイオマスの熱分解 過程を充分モデル化していると判断できる。 3.2 炭化物の残存揮発分率と計算結果の比較 前述(1)式による計算値と実際のバイオマス炭化物中の残 存揮発分率 1-V/V*の比較を試みた。種々の温度履歴により 製作したスギ炭化物の残存揮発分率 1-V/V*の実測値と計算 による値との比較を図 7 に示す。図 7 に示されるとおり, 計算結果と分析値は概ね一致しており,今回試みた方法に より決定したf(E),k0及び実際の炭化装置での温度履歴を用 いて,(1)式より残存揮発分率 1-V/V*を充分な精度で予測可 能であることが解る。 4.ガス化利用を考慮した場合の 木質バイオマスの最適炭化条件 筆者等が提案する前処理操作としての木質バイオマスの 炭化に要求される炭化炉の操業条件としては,(1)炭化炉利 用率の向上と収炭率の向上のために短時間,低温炭化であ ること,(2)また炭化物の性状としては,集積・搬送性の観 点から良好な破砕性,(3)ガス化の観点から大きなガス化速 度とタールフリーであること,が求められる。これらを考 慮し,目標炭化度として,残存揮発分率1-V/V* 10%を設定 した。この目標値に対し最適なエネルギー効率および生産 性を与える操作条件を,前述の熱分解反応の解析によって 得られたパラメータを用いて炭化の進行度の計算を行うこ とにより決定した。具体的には,スギ試料のf(E)と k0,を用 いて種々の炭化条件における揮発分の発生量を計算し,木 0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50

Gas flow type Melting pod type

Me as u red v a lu e of 1 -V /V* [-] Predicted value of 1-V/V* [-] 図 7 スギ炭化物試料の残存揮発分率 1-V/V*の 実測値と計算値の比較 質バイオマスの炭化に及ぼす主な操作因子として昇温速度, 最高到達温度Tmax,保持時間,冷却過程の影響を調べた。 スギ試料に対し,昇温速度を3,10,20K/min,保持時間 を0min に固定し,熱分解温度を 573~973K まで変化させた 計算結果を図 8 に示す。すべての昇温速度において熱分解 温度が上昇すると残存揮発分率 1-V/V*は大きく減少し, 700K で炭化物性状の目標値である残存揮発分率 10%となっ た。熱分解温度に対する残存揮発分率1-V/V*の依存性は,3 つの温度区間に分かれた。すなわち,750K までの低温区間, 750-923K までの中温区間,923K 以上の高温区間である。特 に923K 以上では残存揮発分率 1-V/V*は急激に減少し,973K ではいずれの昇温速度においても揮発分はほぼ完全に放出 されることが計算上示された。図 8 で残存揮発分率 1-V/V* の熱分解温度に対する依存性が,3 つの温度区間に分かれる ことは,木質バイオマスを構成する主要成分毎の熱分解特 性が温度によって異なることを反映しているものと推定さ れる。また,昇温速度の相違は残存揮発分率 1-V/V*にはほ とんど影響しないことがわかる。昇温過程で残存揮発分率 1-V/V*を支配しているのは,最高到達温度 Tmaxであることが 明確に示された。 昇温過程以外の保持,冷却過程についても同様な計算が 可能であり,昇温速度,最高到達温度Tmax,保持時間別の操 作による熱分解過程全体での揮発分の放出に対する昇温, 保持,冷却過程の寄与率を図 9 に示した。なお,図 9 に示 されるSample 名は,昇温温度(K/min)-最高到達温度(K)-保持 時間(min)を表している。 図 9 から次のことが解る。(1)最高到達温度 Tmaxを固定し た場合,昇温速度の増加により揮発分発生量は若干低下し, 温度を一定に保つ保持過程内での揮発分発生量が逆に増加 する。しかしながら,昇温と保持期間の全体ではほぼ一定

(6)

0.0001 0.0010 0.0100 0.1000 1.0000 500 600 700 800 900 1000 3K/min 10K/min 20K/min 1-V/ V* [ -] Temperature [K] Slope = -1.2 x 10-2

Hold time = 0 min

8 熱分解温度と残存揮発分率 1-V/V* の昇温速度別計算値分布図(スギ試料) の揮発分放出量となり,最終的な揮発分発生量は最高到達 温度Tmaxに依存する。(2)最高到達温度 Tmaxの上昇と共に昇 温と保持過程を合わせた揮発分放出量が増大する。(3)冷却 過程は揮発分放出量の増加にはほとんど寄与しない。 このように,要求される炭化物性状からは最高到達温度 Tmax=700K,炭化炉の操業性および消費エネルギーの観点か ら,速やかな昇温,必要最小限の保持時間および速やかな 冷却,の組み合わせが最適操作であることが計算結果では 示された。しかしながら実際の炭化炉の操業では様々な要 因が存在するため,ガス化の前処理装置としての炭化炉最 適な操作条件を決定するためにはより詳細なシュミレーシ ョンが必要であるが,概ねここに示された結果が反映され ると考えられる。 70 75 80 85 90 95 100 1-673-10 3-673-10 10-673-10 10-773-10 10-873-10 10-873-30 10-873-60 Cooling Holding Heating Sample V/ V * [% ]

Heatig rate -Max temp -Hold time

図 9 熱分解時の揮発分放出率に対する 昇温・保持・冷却過程の寄与 5.結論 木質バイオマスを簡易炭化装置により一旦炭化し,バイ オマスの有する種々の欠点を解消した後,最終的に水蒸気 ガス化を行い燃料ガスを製造・利用するシステムの検討の ため,木質バイオマスの熱分解(炭化)過程を解析した。 解析に当たっては,活性化エネルギー分布モデルを採用し, 3 通りの加熱速度における熱重量減少曲線を解析し,活性化 エネルギー分布確率密度関数f(E)と頻度因子 k0を決定する 非等温解析手法を適応した。その結果下記の結論を得た。 (1)石炭の熱分解反応速度解析でよく知られる,Miura が提案し た非等温解析手法では木質バイオマスの熱分解過程の解 析にはそのまま適応できない。しかしそれを修正するこ とによって,炭化反応を解析し,解析結果より炭化反応 の進行度を十分な精度で予測可能である。 木質バイオマスの熱分解過程は石炭より複雑で,活性化 エネルギー分布は単純な正規分布ではない。 次に,この解析結果を基に,実際の簡易炭化炉で製作する 木質バイオマス炭化物の炭化条件を決定する計算を行い下 記の結論を得た。 (2)炭化反応で残存揮発分率 1-V/V*を支配しているのは最高 到達温度Tmaxであり,保持時間,冷却時間の寄与は小さ い。 (3)最適操作条件は,最高到達温度 Tmax=700K,速やかな昇温, 必要最小限の保持時間および速やかな冷却,の組み合わ せである。 謝辞 熱天秤によるバイオマス熱分解データの取得,熱分解デ ータの解析および熱分解過程の計算に協力頂いた東京理科 大学大学院,梶原大介君に感謝します。 使用記号 E: 活性化エネルギー [kJ/mol] T: 温度 [ K ] Tmax: 最高到達温度 [ K ] V: 時刻t までに放出された揮発分量 [kg] V*: 最大揮発分量 [kg] f(E): 活性化エネルギー分布確率密度関数 [mol/kJ] k0: 頻度因子 [s-1] t: 時間 [ s ] α: 定数 [s-1] β: 定数 [mol/kJ]

(7)

参考文献

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図  1 ガスフロー式固定層炭化実験装置
図   8 熱分解温度と残存揮発分率  1-V/V*  の昇温速度別計算値分布図(スギ試料)  の揮発分放出量となり,最終的な揮発分発生量は最高到達 温度 T max に依存する。 (2)最高到達温度 T max の上昇と共に昇 温と保持過程を合わせた揮発分放出量が増大する。 (3)冷却 過程は揮発分放出量の増加にはほとんど寄与しない。 このように,要求される炭化物性状からは最高到達温度 T max =700K,炭化炉の操業性および消費エネルギーの観点か ら,速やかな昇温,必要最小限の保持時間および速やかな

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