熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター・ 臨床薬理分野 平田純生
0 5 10 15 20 25 30 35 40 報 告 件 数 ( 件 )
CKD患者における副作用経験薬と経験数
和泉 智, 他: 日本病院薬剤師会雑誌. 2010; 46(8) : 989-992. 尿中排泄型薬物を腎機能に応じた適切な減量を怠った、 また腎毒性薬物を投与したために起こった中毒性副作用3 透析患者の持参薬(プロパフェノン)が院内薬局に採用さ れておらず、代替薬を処方することになった。病院薬剤師 が持参薬の鑑別報告書を作成し、医師は鑑別報告書の 同系統(Ic群)のサンリズム(ピルシシカイニド)と記載されてい たので、タツビルシンカプセル(ピルシシカイニド)50mg・3カプセルで7 日分処方した。 平成22年10月13日 日本医療機能評価機構『医療事故情報収集等事業第22回報告書』より引用
ピルシカイニド中毒症例
この透析患者は意識障害で救急搬送
プロパフェノンは肝代謝型薬物で減量の必要はない ピルシカイニドは尿中未変化体排泄率約90%の腎排泄 性薬物で透析患者では25mg/日から開始すべきバラシクロビルによる急性腎障害
全日本民医連薬剤委員会・副作用モニター情報(415) 80代、女性、体重36kg ヘルペスのため他院でバルトレッ クス錠500mg 6錠・分3、ロキソニン60mg 3錠/日開始。 SCr:0.7、BUN:9.8mg/dL 投与4日目にAKIのため、紹介入院。SCr:6.2、BUN:45.7 内服薬はすべて中止。尿量減少。受け答えはできるが、傾 眠傾向となりJCS-IIレベル。 中止翌日、透析施行。終了後も意識レベル大きな変化なし。 中止3日後、2回目の透析施行。意思疎通可能になる。 中止4日後、意識レベル改善し「数日前のことは覚えていま す。」透析不要となり食事再開。SCr:2.9mg/dLに改善。 高齢者はS-Crが低くても体格や年齢を考慮して減量。吸収率の低いアシクロビル のほうが良いかも?鎮痛を併用する際にはGFR低下しないアセトアミノフェンを選 択し、水分摂取を促す必要がある。剤型・プロドラッグの違いによる
血清アシクロビル濃度推移
血 漿 ア シ ク ロ ビ ル 濃 度 時間 0 6 12 18 24 (hr) 0 10 14 12 2 4 6 8 平均値±標準偏差(n=6) ゾビラックスⓇ 500mg1時間静注 バルトレックスⓇ錠500mg内服 ゾビラックスⓇ錠800mg内服 (μg/mL) バルトレックスⓇ錠のインタビューフォームより引用 ゾビラックスⓇに関してはインタビューフォームの動態パラメータより推算これが水腎症
尿路狭窄などの尿路通過 障害のため、腎盂、腎杯が 尿の逆流によって拡張した 状態。超音波検査でわかる。 両側の尿路閉塞では無尿 になる。尿路感染による 発熱・膿尿、蛋白尿を伴う ことがある。腎盂内圧の上昇 に伴い疝痛をもたらす。 薬剤性の場合には通常は 輸液で治癒する。経皮的 腎瘻を要することは薬剤性 AKIでは聞いたことがない。10 75歳男性糖尿病性腎症患者、身長168cm、体重47kg、BMI 16.7 グルファスト® 10mgを1日3回投与でもHbA1cが7.8と高 値であったため、ダオニール® 2.5mgを1日2回朝夕食後に 変更された。
グリベンクラミドによる低血糖
ポイント! グリベンクラミドはSU薬の中で最も低血糖を起こしやすい 薬物であるが腎排泄型ではない。 2日後、低血糖で意識消失により緊急搬送されると、血清ク レアチニン値が4.5mg/dLと高値であった。 強力なβ細胞によって分泌されたインスリンは腎で代謝 グリベンクラミド、グリメピリド、クロルプロパミド、グリベン クラミド、ナテグリニドには活性代謝物あり。11 脂 溶 性 薬 物 極性高 極性低
薬物の排泄経路
尿 中 排 泄 抱 合 体 第1相反応 (主に肝) 酸化・還元・ 加水分解 代謝物 第2相反応 (肝) 抱合体X
X
X
水 溶 性 薬 物 OH R R O-Glu R遷延性低血糖を起こす活性代謝物
薬物名
活性代謝物(活性比)
グリベンクラミド
4-OH体(75%), 3-OH体(50%)
グリメピリド
ヒドロキシグリメピリド(1/3)
アセトヘキサミド ヒドロキシヘキサミド(同等)
クロルプロパミド 不明
ナテグリニド
M1代謝物(1/5だがfe80%)
SU薬は腎不全患者の低血糖リスクとなる
薬物名(商品名) 生体内物質 アセトアミノフェン アラキドン酸 イソプロテレノール(イソメニール) アンジオテンシンⅠおよびⅡ イミペネム(チエナム) 黄体形成ホルモン放出因子(LHRH) インスリン オキシトシン インターフェロンα ガストリン インターフェロンβ カルシトニン エキセナチド(パイエッタ) グルカゴン エルカトニン(エルシトニン) コレシストキニン グルカゴン C-ペプチド サリチル酸 成長ホルモン シスプラチン(ランダ) セクレチン スリンダク(クリノリル) ソマトスタチン スルフィソキサゾール(サイアジン) バソプレシン セファピリン(販売中止) 25-ヒドロキシコレカルシフェロール セファロチン(コアキシン) 副甲状腺ホルモン タゾバクタム(タゾシン) ブラジキニン テリパラチド(フォルテオ、テリボン) プロインスリン モルヒネ(MSコンチン、アンペック、カディアン) プロラクチン NT-proBNP リゾチーム
Shuler C, et al: " Brenner & Rector's The Kidney. 5th ed. Brenner BM ed. Philadelphia, W.B. Saunders Company., p.2653-2702, 1996
腎で代謝される薬物および生体内物質
デュロキセチンは高度腎障害には禁忌
高度の腎障害のある患者では血中濃度が上昇することがあるため投与禁忌。
尿中未変化体排泄率0%なのにCmax, AUCが高度腎障害で2倍になる。
デュロキセチンは高度腎障害には禁忌
高度の腎障害のある患者では血中濃度が上昇することがあるため投与禁忌。 尿中未変化体排泄率0%なのにCmax, AUCが高度腎障害で2倍になる。 サインバルタⓇインタビューフォームより 尿毒素の蓄積 CYP・トランスポータなどの機能性 タンパク質の翻訳語修飾の阻害 血中濃度の上昇 代謝・排泄の遅延?腎排泄性薬物の腎機能と血中濃度の関係
プラミペキソール(Oct1, Oct2の基質?) fe = 79% F = 90~93% 常用量 :初回1日投与量:0.25mg/日 最大1日量:4.5mg CCr< 30:初回1日投与量:0.125mg×1回 最大1日量:1.5mg×1回 ビ・シフロール®添付文書より引用 CCr(mL/min) <30 30-49 50-79 >80 0 10 20 30 AUC ng・hr/mL ダビガトラン(P-gpの基質, CYPで代謝 されない。グルクロン酸抱合体に活性 あるが、血中には2~8%のみ存在) fe = 82.5% F = 6.5%(吸収率7%) 常用量 :1回150mgを1日2回 CCr< 30:禁忌 CCr(mL/min) <30 30-49 50-79 >80 0 2000 4000 6000 AUC ng・hr/mL プラザキサ®添付文書より引用ロスバスタチン fe = 6% F = 20% 常用量 : 1日1回2.5mgより開始し、 漸次10mgまで増量(1日最大20mg) CCr< 30:2.5mgより投与を開始 (1日最大5mg) テリスロマイシン fe = 13% F = 57% 常用量 : 600mgを1日1回 CCr < 30:300mgを1日1回
Huang SM, et al: Clin Pharmacol Ther 86:475-479, 2009およびケテック®添付文書より 引用 CCr(mL/min) 血 漿 濃 度 上 昇 率 ( 倍 ) <30 30-50 50-80 >80 0 1.0 2.0 3.0 上 昇 率 ( 倍 ) AUC CCr(mL/min) <30 30-49 50-80 0 1.0 2.0 3.0
腎排泄性薬物でないのに血漿濃度が上昇する薬物
腎不全で減量すべき薬物
(ほとんどの場合、尿中未変化体排泄率の高い薬物) 尿中への活性体の排泄率の高い薬物 そのほかにも 代謝物に活性のある薬物 尿毒症性物質の蓄積により機能性蛋白である代謝酵素・ トランスポータが正確な翻訳後修飾を受けなかったため、 発現量・機能が低下 デュロキセチン・ロスバスタチンなど 腎で代謝される薬物 インターフェロン・エキセナチド・インスリンなど 腎毒性が強い薬物 ヨード造影剤、シスプラチンなど アロプリノール、ジソピラミドなど多数緊急入院の2/3を抗血栓薬、糖尿病薬が占める
Budnitz DS, et al: N Engl J Med 365: 2002-2012, 2011
・米国では年間推定10万人の高齢者 が薬剤有害反応のために入院する。 ・緊急入院の原因のほとんどが4つの 一般的な製剤による。 ・有害事象の48%が80歳以上でその 2/3が過剰服用による ワルファリン インスリン 抗血小板薬 血糖降下薬 麻薬 ジゴキシン 通 常 使 用 さ れ る 薬 剤 ハ イ リ ス ク 薬 ジゴキシン除く Beers criteria 10,000人の外来患者あたりの緊急入院者数 HEDIS Beers criteria 0 5 10 15 20 25 30 35 不 適 切 使 用 薬
80歳代女性で、ワルファリンカリウムから切り替えを行い、1日 220mg/日を投与。投与開始から12日目で血痰、鼻出血を認め、 15日目(投与中止日)に血痰、呼吸困難を認め、救急外来に搬 送され、翌日に死亡している。発症した副作用は、肺胞出血、 呼吸不全、鼻出血、喀血、貧血、血尿、タール便。臨床検査値 は、血清Crが投与開始50日前に2.21mg/dL、投与中止日は 4.2mg/dL、BUNは投与中止日に53.8mg/dL。
ダビガトランによる中毒性副作用症例
ダビガトランの尿中排泄率は85%と高く、70歳以上の患者で は1回110mgを1日2回を考慮する。本症例は38.9kgの体重だ が85歳と仮定すると、血清Cr2.21mg/dLであればCCrは 11.4mL/minなので明らかに投与禁忌の症例。Cockcroft & Gault 法
推算CCr(mL/min)= (140−年齢)×体重(kg)×0.85(女性) 72×血清Cr(mg/dL)
体 重(kg)
体重とeCCr、eGFRの関係
85歳女性血清Cr値1.0mg/dL、身長150cmの場合 eCCr (mL/min) 30 40 50 60 70 80 30 40 50 30 40 50 ダビガトラン TS-1 禁忌領域 eGFR (mL/min/1.73m2) eGFR (mL/min) 本症例の体重が30~40kgであればCG式によるCCrではダビガトランは禁忌のはずだが、50kg以 上であれば投与可能になるが、出血のリスクも増大する。ワルファリン服用者の
大出血発生率と腎機能の関係
Jun M, et al: BMJ 2015;350: h246 2.0 4.0 50.0 <15 15-29 大出血発生率 (95%CI) 腎機能 eGFR (mL/min/1.73㎡) P値 0 1.0 3.0 5.0 10.0 30-44 45-59 60-89 >90(対照) 0.492 0.228 0.275 0.070 ― 6.0 0.002 45.54 PT-INRの目標値は通常2.0~3.0だが日本の高齢者では1.6~2.6、透析患者は2.0以下リン吸着薬の話
~第1選択にすべきだが一番使い方
の難しいカルタン
Ⓡ
~
高リン血症患者の生命予後
相 対 死 亡 リ ス ク <3 3~4 4~5 5~6 6~7 7~8 8~9 >9 (mg/dL) 血清リン濃度 相対死亡リスク±95%信頼区間 (Reference) 2.2 2.0 1.8 1.6 1.4 1.2 1.0 0.8 0 透析患者における血清リン濃度と死亡リスク(海外データ) 【対 象】 北米のデータベースに登録された透析患者40,538例 【方 法】 血清リン濃度と死亡リスクの関連を解析、相対死亡リスクは年齢、性別、人種、糖尿病、アルブミンなどで補正 Block GA, et al.: J Am Soc Nephrol. 2004; 15: 2208-2218.より一部改変血管石灰化病変
透析患者の血管石灰化は中膜の石灰化
カルタンのリン吸着能のpH依存性
Ca3(PO4)2 不溶性 ・排泄 PO4 3-食事中のリン カルタンのリン吸着機序 250 200 0 50 100 150 300 350 pH 1.2 pH 4.0 pH 6.8 n = 3 Mean ± S.D. 炭酸Ca N.S. P< 0.001 P< 0.001 カルタンのpH変動に 伴うリン吸着能の変化 リ ン 吸 着 量 ( m g/ g) Ca2+ 溶解 HCI 胃酸 CaCO3 炭酸Ca製剤 in vitro 炭酸Caの効果は pHに依存する3 4 5 6 7 血 清 リ ン 値 (m g/ d L ) P=0.029 P=0.032 ファモチジン群 ランソプラゾール群
胃酸分泌抑制剤投与前後の血清リン値の変化
投与前 投与後 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100 120 140 P 変化率 NS % 投与前後のリンの変化率 ファモチジン群 ランソプラゾール群小泉 晶子, 平田純生, 他: 日病薬誌 44: 1365-1368, 2008
リン吸着薬をいつ飲めばよいか理解できていない。
リンが高いとなぜよくないか理解できていない。
リン吸着薬の飲み忘れが最も多い。
外食時にリン吸着薬を持参しない人が最も多い。
理解度調査による血清リン値
7mg/dL以上群の特徴
リン吸着薬に関する指導不足・理解不足が高リン
血症を招いている可能性があるのでは?
患者指導用パンフレット
●血清リン値が高いと骨だけでなく、心臓や血管系に 悪影響を及ぼすこと。 ●リン吸着薬は食事をしない時に飲んでも効果がな いだけでなく、薬によっては異所性石灰化や鉄過剰 が起こることがある。食直前、食事中または食直後の いずれかに飲まなければ効果がないこと。 ●リン吸着薬はいつも携帯して、外食時やリンの多く 含まれる間食時にもきちんと服用すること。4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 n=24 n=68 6.0~6.9mg/dL 7.0mg/dL≦ 前 後 前 後 P<0.0001 P<0.05 血清リン濃度 (mg/dL )
服薬指導前後の血清リン値の変化
30 40 50 60 70 80 90 n=24 n=68 6.0~6.9mg/dL 7.0mg/dL≦ 前 後 前 後 P<0.0005 P<0.01 100 P<0.0001 前 後 n=120 5.0~5.9mg/dL Calc ium -pho spho rus produ ct (mg 2 /d L 2 )
服薬指導前後のCa・P積の変化
血中のリン濃度を上げないためは?
透析による除去
リン吸着薬を正しくのむ
P
リン吸着薬の効力比と服用時間
1.0gの効力 = 2gの効力
=3gの効力
カルタン フォスブロックレナジェル ピートル リオナ キックリン1
1
1.5 1.5
3
ホスレノール3
食直前 食直前 食直前 食直後 食直後 食直後 あまり使われていない250mg錠各種リン吸着薬
カルタン
Ⓡ 安価・消化器系副作用少ない 保存期に使いやすい 石灰化の助長 胃内pHの影響 レナジェルⓇ フォスブロックⓇ 石灰化抑制 脂質代謝改善 便秘アシドーシス・腹部膨満ホスレノール
Ⓡ 作用が強力 石灰化抑制? 嘔気・嘔吐 臓器蓄積・憩室炎利点
欠点
リン吸着薬
キックリン
Ⓡ 腹部膨満なし アシドーシスなし 石灰化抑制? 軽度便秘 カプセルが大きいリオナ
Ⓡ 石灰化抑制? 鉄補給の必要なし?鉄過剰?
ピートル
Ⓡ 作用が強力下痢
石灰化抑制?キックリン
®による腸管穿孔症例
75歳男性、透析暦11年。原疾患:急性間質性腎炎 入院3か月前、血清Ca9.8mg/dL、血清リン値6.3mg/dLの ため、キックリン2,250mg/日から3,000mg/日に増量。 センノシド+ピコスルファートNaを内服するも排便状況は 4~5日に1回のみ。 17時より突然の腹痛が出現し(透析日か否かは不明)、 便秘による腹痛と考えピコスルファートNaを内服したが 排便なく、腹痛も改善せず緊急入院。 腹部CTにて下部結腸に憩室が多発、腹腔内にフリーエアー を多数認めたため、緊急手術。直腸部分切除し、人工肛門 増設術施行。上部直腸に腸管穿孔を認め、腹腔内に硬便を 認めた。術後、敗血症ショックが疑われ、CHDF, PMX-DHP 施行により救命できた。 元 志宏,他: 透析会誌46: 1069-1073, 2013噛み砕かずに服用したホスレノール
Ⓡ錠が
原因と考えられる結腸虚血の1例
-70歳の男性患者。激しい右上腹 部痛を突然訴え、入院。 -臨床検査および症状などから、急 性腹症と診断され、開腹術を実施。 上行結腸の虚血を認め、結腸半切 除術を実施。 -結腸虚血は、噛み砕かずに服用 した炭酸ランタンの集塊による可能 性が高かった。患者は主治医の注 意を無視し、本剤を噛み砕かずに 服用したことが明らかになった。 -回復は速く、良好な全身状態のも とに退院。ホスレノール
®の体内での行方
Behets GJ et al.: J Am Soc Nephrol. 2004; 15: 2219
尿中排泄率 0.6~1.8% 排泄されたLaの97%が 糞便中排泄(ラット) 胆汁排泄 消化管吸収 <0.0012% 炭酸La 経口投与 吸収率:0.0013% (Alは0.01~0.1%) ほとんど吸収されない 血漿蛋白結合:99.7%以上、 毒性を示す遊離型濃度は 測定できないくらい低い
Hutchison AJ, et al:Nephron Clin Pract 110:c15-c23, 2008 Hutchinton AJ: Kidney Int 75: 355-357, 2009
脳には移行しない Semin Dial 19:195-199, 2006 経口投与では、いかなる動物 実験でも肝内濃度は蓄積しない 1年間投与のHD患者34人の骨濃度 1.8µg/g 、4-5年間投与のHD患者13 人の骨濃度は5µg/g湿重量と 骨への蓄積が懸念される
Fe
2++H
2
O
2→Fe
3++HO
-+
HO・
(Fenton反応)ヒドロキシルラジカルは、存在するのは100万分の1秒間と寿命が 短いが、酸化力は強く、酵素蛋白質や細胞骨格蛋白質、脂質、糖質、 核酸(DNA、RNA)、などと反応する。 鉄原子は細胞毒であり、肝細胞内でも、またマクロファージ 内でも、毒性が発現しないように鉄結合性蛋白である フェリチンと結合した形態で貯えられている。 透析患者では静脈回路があるため静注鉄剤投与が一般的 だが、ガイドラインに推奨されている週1回13回投与法は 毎透析後13回連続投与に比し酸化ストレスが軽減される。
ピートル
®は鉄剤だから怖い?
~怖いのは静注鉄~ 静注鉄よりはるかに安全でフェリチンが300ng/mL以上に なれば中止・減量すればよい。ただし用量変更は高齢者 のコンプライアンス不良を招くかもしれない。タール便と鉄剤やリオナ
Ⓡ、ピートル
Ⓡ投与による黒色便は違う
タール便 胃・食道などの上部消化管で大量出血を起こすと胃液と 混ざり、胆汁に含まれるビリルビンの影響で黒くなって タール便と呼ばれるものになって排泄される。タール便 はコールタール状の便で、海苔の佃煮のようなドロッと した形状で鉄のにおいがあり生臭く、便器に付くとなか なか流れないのが特徴。消化管から出血した便がなる。 血便は胃酸の影響のない十二指腸以下の出血による。 黒色便 鉄剤やリオナⓇ投与や海苔、イカスミによる黒色便は通常 便が単に便の色が黒色に着色したもの。透析患者の
この数値は?
2015年末の統計調査
男性194人(1.0%)
女性113人(1.1%)
透析患者の腸閉塞による年間死亡者
透析患者の死亡原因病名リストには「腸閉
塞」しかないが、透析患者の致死性腸病変は
腸閉塞だけでなく、虚血性腸炎、腸管穿孔、
腸管壊死など様々。これらの病変に続発する
腹膜炎や敗血症は感染症に分類されるかも?
少なくとも
年齢
年齢と便秘の割合
~49 N=34 50~59 N=44 60~69 N=91 70~79 N=58 80~ N=8 0 20 40 60 80 100 % 18% 46% 54% 67% 88% P = 0.0098 P = 0.0003 P < 0.0001 P < 0.0001 西原 舞, 平田純生, 他:透析会誌37: 1887-1892, 2004 2010年国民生活基礎調査より作成. 1.04.0 1.44.1 3.05.9 8.1 9.8 12.511.9薬剤性消化管穿孔の報告
CPS(カリメートⓇ・ アーガメイトⓇなど) ホスレノールⓇ 塩酸セベラマー グリセリン浣腸 ビキサロマー コレスチミド バリウム 現像液 不明(イオン交換樹脂) 医中誌により透析患者、消化管穿孔など により検索し非薬剤性のものを除外した52
報62症例
PMDAの報告では 2009-2015で CPSでイレウス 消化管穿孔 結腸虚血 消化管穿孔 結腸穿孔薬剤性消化管穿孔の報告
透析患者×消化管穿孔 250件のうち非薬剤性(魚骨に よる穿孔、透析アミロイドーシス、コレステロール塞栓症、 PTP誤嚥による穿孔など)を除外(医中誌;2013/5/15) ポリスチレンスルホン酸×腸管穿孔30件(医誌;2015/5/) 重複は除外 52報62症例 CPS(カリメートⓇ・アーガメイトⓇなど) ホスレノールⓇ 塩酸セベラマー ビキサロマー SPS(ケイキサレートⓇ) グリセリン浣腸2、不明なイオン交換樹脂、コレスチミド、 バリウム、現像液(炭酸カリウム) 42症例 9症例 4症例 1症例 各1症例 0症例症 例1
年齢:63歳、女性、透析歴:2年5ヶ月 投薬歴 カリメート® 20g 分4×28日/月 CaCO3 2g 分2×30日/月 リン酸ジヒドロコデイン 1g 分3×12日/月 下剤の投与なし 原病歴 平成8年11月1日透析終了1時間後より腹痛が発現し、 痛みは次第に増強。嘔吐も発現する。緊急入院し腹 部X線上free air(遊離ガス)を認め、開腹手術となる。 下行結腸に穿孔を認め穿孔部にカリメート®と思われ る堅固な便塊を認めた。手術後回復。 筆本真由美, 平田純生, 他: 大阪透析研究会会誌, 15: 179-181, 1997手術症例の便塊の性状
(我々の報告) 筆本真由美, 平田純生, 他: 大阪透析研究会誌15:179-181, 1997 年齢:63歳、女性、透析歴:2年5ヶ月、平成8年11月1日透析終了1時間後よ り腹痛が発現 樹脂を含む多量の黄白色便塊 (Ca型resin 20g/日+リン酸ジヒドロコデイン1g/日+CaCO3 2g/日投与、下剤の 投与なし) 年齢:65歳、女性、透析歴:3年7ヶ月、平成3年10月19日透析中便意を催し、 排便中に、冷や汗、強度の腹痛が発現 直腸後壁穿孔部に多量の堅固な便塊(最大直径7cm) (Ca型resin 20g/日+CaCO3 2g/日投与、下剤の投与なし) 年齢:51歳、男性、透析歴:7年8ヶ月、原疾患:DM、平成8年10月31日20時頃、 食事摂取1時間後に嘔吐が発現し、疼痛緩和したが、翌日再び腹痛が増強し緊 急手術 上行結腸に堅固な便塊(最大直径5cm) (Ca型resin 20g/日+CaCO3 3g/日投与、下剤の投与なし) 中毒性巨大結腸症手術症例の便塊の性状(1)
固形の便塊
(水酸化Alとケイキサレートの併用) Minford EJ, et al: Postgrad Med J
68: 302, 1992
イオン交換樹脂を 含む2Kgの硬い便塊
(Ca型resin 15~30g/日を経口投与)
Foresti V: Clin Nephrol
41(4): 252, 1994 (モルヒネ、水酸化Al、ケイキサレートの併用)多量の白く硬い便塊 Gracia-Pard G, et al: Nephrol
Dial Transplant 11(4): 751, 1996 樹脂を含む硬い便塊 (Ca型resin 50g×2/日を注腸投与) .
Chatelain G, et al: Ann Diagn Pathol
11:217-219, 2007 樹脂を含む硬い便塊 (Ca型resin 50g×2/日を注腸投与) Courtney, et al: N Engl J Med
288(20): 1058-9, 1973
S状結腸に結晶を認める
(Ca型resin を経口投与したPD患者) Kao CC, et al: J Formos Med Assoc
小林和裕, 他: 透析会誌 41:199-205,2008
樹脂の結晶を多数認める (Ca型resinのゼリー製剤 25g×2/日投与)
Bomback AS, et al: Am J Emerg Med 27(6):753.e1-2, 2009
結腸壊死
(経口・注腸ケイキサレートの連用) Chen ES, et al: Burns
28: 189-190, 2002
結腸壊死と穿孔・便性状不明
(透析患者ではないが全身熱傷による虚血あり、 経口ケイキサレートの連用)
Scott TR, et al: Dis Colon Rectum 36: 607-609, 1993 結腸壊死 (注腸ケイキサレート50g+ 20%ソルビトール200mL) 経口カリウム吸着薬+ソルビトールによる消化管穿孔 の報告は未熟児・直腸内投与を除くと非常に少ない。
手術症例の便塊の性状(2)
0 10 20 30 40 50 虚血性腸炎発症群 (n=15) 対照群 (n=692) P <0.0001 服 用 患 者 の 割 合 ( % )
陽イオン交換樹脂製剤服用患者の割合
西原 舞, 平田純生, 他:透析会誌38: 1279-1283, 2005.透析患者における虚血性腸炎(穿孔)の発症因子1
虚血性腸炎群 (n=15) 対照群 (n=692) P値 陽イオン交換樹脂製剤 の服用患者(%) 46.7 9.1 <0.0001* 昇圧薬の服用患者(%) 40.0 16.9 0.0196* ヘマトクリット(Ht値:%) 35.9±7.5 32.5±3.7 0.0009** 透析による体重減少率(%) 4.9±1.2 3.9±1.8 0.0323** *:χ2 検定, * *:unpaired t 検定 Ca・P積(mg2/dL2) 53.9±17.4 52.6±14.2 0.7306** 総Chol値(mg/dL) 152.5±35.9 154.8±32.8 0.7840** ASO合併率(%) 33.3 24.0 0.4031* 西原 舞, 平田純生, 他:透析会誌38: 1279-1283, 2005.透析患者の結腸壊死・穿孔はなぜ起こる?
食物繊維不足 便秘する薬剤投与 蠕動力・排便力の低下 結腸壊死・穿孔 常習便秘 硬便による結腸の通過障害 HDによる腸管虚血 HDによる腸間膜動脈血流障害 HDによる除水 Risk Factors イオン交換樹脂服用者 昇圧薬服用者 Ht値の異常高値者 水分管理不良者 動脈硬化?硬結便の形成から腸管穿孔を
起こす過程(平田の仮説)
1.硬結便の形成 2.宿便の貯留 3.結腸壊死 4.結腸穿孔 × × × × 結腸穿孔 腸間膜動脈の血流不全 結腸壊死 宿便の貯留 硬結便 硬結便 回結腸動脈 上腸間膜動脈 下腸間膜動脈Ca型レジン vs
Na型レジン
累積湿/乾糞量・消化管通過時間
累積湿糞量 (g ) 累積乾燥糞量( g ) 0 2 4 6 8 10 12 14Control Lop ip Lop ip +CPS Lop ip +SPS ** ## **## P<0.01 CPSで累積糞重量の減少、 および消化管通過時間の 延長が認められた SPSはLopによって延長した 消化管通過時間を短縮した
Control Lop ip Lop ip +CPS Lop ip +SPS ** ## P<0.01 0 5 10 15 20 25 30 35 40 Mean±SD (n=2×4) Mean±SD (n=2×4) 0 1 2 3 4 5 6 7 8
Control Lop ip Lop ip +CPS 消化管通過時間( hr ) ** **## # P<0.01 Lop ip +SPS Mean±SD (n=2×4) 福元浩一, 他:日本腎臓学会, 2015
累積糞数・累積糞中水分率
Mean±SD (n=2×4) Mean±SD (n=2×4)Control Lop ip Lop ip +CPS Lop ip +SPS 0 10 20 30 40 50 60 70 80
Control Lop ip Lop ip +CPS Lop ip +SPS ## ** * P<0.01 累 積 糞 数 ( 個 ) 累積糞中水分率( % ) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 ** ## P<0.01
CPSで累積糞数・累積糞中水分率が減少した
硬結便及び便秘の増悪が認められた
福元浩一, 他:日本腎臓学会, 2015遠位結腸(便中)K+濃度は90mM、Na+濃度は40mM で選択的にK+を吸着しているわけではない。 Na型レジン(ケイキサレートⓇ)は ①もともと吸着力がCa型レジンの2倍。 ②アンモニアも吸着し、HCO3-濃度を増加させアシドーシスを改 善。それにより血清Kがさらに低下。 ③便秘しにくいため糞便中K排泄も促進し、これも血清K低下に 貢献。 ④ただしNa摂取量増加による溢水には注意が必要?Ca型は高Ca 血症による異所性石灰化が懸念される。 ⑤Ca型レジンは効果が低いため大量投与を必要とし、重篤な便 秘になりやすいのかも? ケイキサレートⓇ添付文書1,236例:下痢39件(3.2%)、浮腫25件(2.0%)、便秘23件 (1.9%) カリメートⓇ添付文書1,182例:便秘109件(9.2%)で腸閉塞の患者には禁忌〔腸管穿 孔を起こすおそれがある。〕
Na型レジンとCa型レジンの違い
シンメトレルⓇ (精神錯乱) シベノールⓇ (低血糖) ジゴキシンⓇ (ジゴキシン中毒) 透析で抜けない 致死性副作用あり ゾビラックスⓇ /バルトレックスⓇ H2遮断薬(ガスターⓇなど) ザイロリックⓇ リリカⓇ 副作用発生率頻度 が高い アルダクトンⓇ A+RAS阻害薬 バクタⓇ+RAS阻害薬 高カリウム血症による 突然死の危険性 ワルファリン+NSAIDs 出血死