DOI: http://doi.org/10.14947/psychono.39.17
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2019年度日本基礎心理学会第2回フォーラム
共感覚と色情報処理
Synesthesia and color processing
日 時： 2020年1月25日（土）13時30分–18時00分 会 場： 新潟大学脳研究所 統合脳機能研究センター6F 中田記念ホール テ ー マ： 共感覚と色情報処理 企 画 者： 白井 述・中嶋 豊・新美亮輔（新潟大学） 司 会 者： 白井 述（新潟大学） 指定討論者： 横澤一彦（東京大学） 講 演 者： 伊藤浩介（新潟大学）「共感覚とは何か？―再定義の試み」 浅野倫子（立教大学）「色字共感覚： 色と文字と学習の結びつき」 栗木一郎（東北大学）「脳内における色情報の表現形式について」 共 催： 新潟心理学会・新潟大学人文学部プロジェクト「ヒト認知系の総合的研究」 企 画 趣 旨 本フォーラムの企画をお引き受けした際にテーマは何 でもよいと伺ったので，企画者 3名の関心の赴くまま に，近年盛り上がりを見せている共感覚研究について， 幅広く，かつ最先端の知見に触れてみたいということに なり，共感覚を本フォーラムのテーマとして据えること となった。特に色知覚との関わりから共感覚を捉え直し てみることを志向して，共感覚の定義についての議論を 伊藤先生に，色字共感覚研究の最前線の紹介を浅野先生 に，色情報の脳内表現に関する知見の解説を栗木先生 に，それぞれ話題提供をお願いした。さらに，それらの ご講演内容を総括する形で，横澤先生に指定討論をお引 き受け頂いた。 フォーラム当日は，最初の講演者である伊藤先生か ら，共感覚の定義が研究者によってまちまちであること から，その定義を再考する必要性についてお話があり， そうした状況の解決に向けての試論をご紹介頂いた。オ ンラインのコメントシステムを用いてフロアからリアル タイムにコメントを集め，その結果についても議論する など，フォーラムの開始直後であるにもかかわらず大い に盛り上がりをみせた。次に，浅野先生から色字共感覚 研究の近年の動向についてご講演頂いた。過去十年にわ たるご自身の研究成果も含めた関連分野の動向を詳細に ご紹介いただき，さらには，それらの知見から導き出さ れうる色字共感覚の発生機序について，高次の認知的過 程と低次の視覚情報処理過程との関係性に注目した議論 もご提案頂いた。栗木先生には，ヒト視覚系における色 表現についてfMRIやEEGによる脳活動測定によるご自 身の研究成果を中心にお話頂いた。ヒト視覚野におい て，赤緑，青黄の反対色系の色表現とは異なる，中間色 間の反対色を軸とした脳内表現が確認されたこと，中間 色の色相には大きな個人差があること，一方でそうした 個人差は行動レベルでの色知覚の感度とは必ずしも一致 しないことなど，非常に興味深い知見をご紹介頂いた。 その後の指定討論では，横澤先生より各講演者の講演内 容への質疑がなされ，それに各講演者が答えるという流 れで，いつのまにかフロアの聴衆も交えて新たな議論が 再構成されるなど，時間いっぱいまで活発な議論が展開 された。 残念ながら本フォーラムにご参加頂けなかった方々 も，話題提供者の先生方のご講演概要に目を通して頂く ことで，共感覚と色情報処理に関するエキサイティング な議論を追体験して頂けるのではと考える次第です。 （新潟大学 白井 述・中嶋 豊・新美亮輔）
The Japanese Journal of Psychonomic Science 2020, Vol. 39, No. 1, 103
