コメント: 海藻に潜る甲殻類
C o m m e n t a r y : C r u s t a c e a n s b o r i n g into algae青木優和
l M asakazu A o k i 甲殻類における寄生 ・共生を扱う場合,通常は動 物対動物の種間関係が取り上げられる. 本シンポジ ウムにおける発表もこの範鴎にあった. 一方で,甲 殻類と植物の相互関係も海洋生物群集の構成要素と しては重要である (Brawley, 1992). 海藻および海 草の形成する藻場とそこに棲み込む小型甲殻類との 聞にも寄生 ・共生関係と呼ぶべき関係性が存在する (D u助" 1990). 海中における植物体の表面は,餌と なる着生藻類資源をめぐる競争の場となり,また, 住み家として利用すべき空間資源、の奪い合いの場と もなる. 本シンポジウムでは,コメントとして,海 産植物 と小型甲殻類の種間関係のなかで,餌資源と 生息空間資源に対する要求が同時に満たされる植物 体穿孔型の生活についての事例紹介を行った. 陸上における動物と植物の相互関係のなかで,植 物体に穿孔する昆虫については多くの研究がなされ ている. 代表的なものは潜葉性昆虫( リーフマイ ナー) と呼ばれるもので, ハモグリガなどの幼虫が 植物の柔組織に潜って食害し,表皮組織やその外壁 は残すものである (Hering,195 1). 海洋における穿孔性小型甲殻類には,非生物であ る砂岩に穿孔するイワホリコップムシ CM urata & W ada, 2002),木材に穿孔する等脚類のキクイムシ (Limnoria 属) (Cragg,2003) や端脚類のキクイモド キ (Chelura 属) (Kuhne & B ecker, 1964) も知られ るが,これらは資源量不変の基質に穿孔するもので1 東北大学大学院農学研究科
干98 1-8555 仙台市青葉区堤通雨宮町 lーl
G raduate School of Agricultural Science, Tohoku Univer-sity, 1- 1 Tsutsu mi-dori, Arnamiya-machi, A oba, Sendai 98 1-8555, Japan E -mail: [email protected] C a陀inologicalSocie勿ofJapan ある. マングロープの堅い木部に潜るのは前述のイ ワホリコップムシと同属のSphaeroma terebrans であ る CThiel,1999) . これらの種の利用する資源も短期 間に大きな変化を示すものではないだろう . 枯死し か け た ケ ル プ の 茎 部 に 潜 り 込 ん で い た ヨ コ エ ビ Peramphithoe sぴpotrupetes も増大する資源を利用し ていたとは考えがたい (Conlan & C hess, 1992). 一 方,生きた海産植物に穿孔するもので,もっとも リーフマイナ 一様の生活型をもつのは,アマモ類 (Posidonia) の葉に潜る等脚類の Lynseia annae であ る CBrearley & W alker, 1995). この種の利用する葉 は,餌であると同時に住み場所であり,短期間に供 給されては枯れてゆく資源である. 海洋環境におけ る海藻類の一次生産速度は大きく,それはコンブ目 やヒパマタ目の大型褐藻類において顕著である. こ れらは急速に生み出される資源であり,それを利用 するのが,その藻体を摂食しながら穿孔して坑道を 形成するコンブノネクイムシCeinina japonica やガ ラモノネクイムシBiancolina japonica である. コン ブノネクイムシは新種記載 CStephensen,1933) 以 来, コンブおよびワカメからの採取記録が北海道か らなされてきた( 名畑ら. 2003). しかしながら, 継続的な調査に基づいて行われた生態調査は 1997-2001年に北海道で行われたコンブ目海藻類への寄 生率の長期変動に関するもののみである( 赤池ら, 2002). 我々が静岡県下田市のワカメ群落において 継続してきた調査の結果から ,コ ンブノネタイムシ の生活史についての全体像が浮かび上がってきた. 巣穴坑道内での家族の社会性やワカメ資源のフェノ ロジーとの対応関係など多くの知見が積み重ねられ ている . これらについては,まもなく発表される一 連の論文に掲載される予定である. 一方, ガラ モノ
ネクイムシについても,我々の調査からある程度の 知見は得られてきた . コンブノネクイムシとのワカ メ藻体上での棲み分けや,繁殖様式の違いなど興味 深 い点が多くあ る. その生態につ いても近々に論文 掲載を行う . 海洋における穿孔性小型甲殻類の生態学的な研究 は,まだ緒に就いたばかりである . 陸上における植 物と昆虫の相互関係についての研究の発展と比する と,全体像の解明への道はまだはるかである . しか し,これからの研究によって,多くの未知の知見が 転がり出てくることは間違いない. 種間で資源利用 に多様なバターンがあり,その生活史との関わりに ついては興味深い. また , いろいろな程度の社会性 の存在することが示唆されており , その究極要因に ついても追求したい.
圃 百 六扉
本 研 究 の 一 部 は,JSPS科 研 費07740594お よ び 1187411, 筑波大学学内プロジェク卜研究費( 奨励1 研究) ,平成6 年度ミキモト海洋生態助成基金によ る助成を受けたものです.. 百両支献
赤池章一 ・瀧谷明郎 ・津田藤典,2002. 北海道沿岸に おけるコンブノネクイムシの出現状況( 短報) 北海道立水産試験場研究報告 25-28.72
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