・ これからのインフルエンザ対策
(1)
・ 平成22年度定期健康診断の成績について
(3)
・ MDMAはゼッタイ、ダメ!
(5)
NO. 71
2010年10月発行
滋賀大学保健管理センター
(1)
これからのインフルエンザ対策
保健管理センター所長
山本 孝吉
日本では、2010年春以降、新型インフルエンザ(パンデ ミック(H1N1)2009)が一段落したと考えられています。ま た、WHOも2010年8月、ポストパンデミック期への移行を 発表しました。北半球で、気温が徐々に低下し、インフルエ ンザが流行しやすい時期を迎える前に、昨年(2009年)か らの状況を振り返って総括し、今後に備えることが大切と 思われます。 新型インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)はお およそ10~40年ごとに発生するとされ、2003年以降の家禽 でのインフルエンザ(H5N1)のアウトブレイクと人への感染 から、このH5N1によって次のパンデミックが齎らされるこ とが強く危懼されていました。2005年11月、政府によりこれ を念頭に置いた「新型インフルエンザ対策行動計画」が、 2006年9月には「フェーズ4以降の新型インフルエンザ対策 に関する文部科学省行動計画」が策定され、これらに基づ いて健康管理に携わる我々も準備を始めていました。 2009年4月24日、WHOはこのH5N1ではなく、H1N1によ るパンデミックの可能性を突如発表しました。これは我々 保健管理センターにとっても青天の霹靂でした。当初、その 流行が最初に確認されたメキシコでの高い致死率が報告 されたため、H5N1に準じた「水際対策」がとられ、成田空 港でのものものしい対応が連日テレビで放映されました。 WHOがフェーズ6を発表したのが2009年6月11日、用心 深い神戸の臨床医による我が国1例目の報告が6月15日で した。本学では8月26日に1例目が報告され、9月から増加し て11月には約110名のピークとなり、以後漸減して2010年1 月には4名のみの報告でした。2月以降の報告はありません でしたので、昨年からのパンデミック(H1N1)2009流行は 終焉したと考えられました。確認できた本学での患者数は 235名でした。 現在のところ、冬季にあたるニュージーランド、オースト ラリアやインドで流行が続いており、死者も報告されていま す。国内でも、小集団での流行が散発的に起こっているほ か、沖縄で流行が始まりつつあるという状況です。 今後の流行に備えて、これまでに判明したパンデミック (H1N1)2009の特徴を確認しておきましょう。 1)患者の70%以上は20歳未満で、60歳以上の人はほとん ど感染せず、なんらかの免疫の存在が示唆されます。 1957年以前に生まれた人に免疫記憶があるとの報告も あり、「誰も免疫を持たない」という新型インフルエンザ の定義には合わず、「新型インフルエンザもどき」とも 言われています。 2)ほとんどの患者が上気道炎症状(発熱、頭痛、咽頭痛、 咳、鼻症状)と関節痛で、発熱しない例も少なくありま せん。小児重症例では、肺でウイルスが急速に増殖し て呼吸状態が悪化する例が多く、血中IgEの増加を認 め、ステロイドホルモンが奏功したことから、少なくとも 一部の症例で、重症化にアレルギーが関与したことが 示唆されています。 3)小児や若年者では、特別な既往歴や基礎疾患がないに も関わらず、重症化あるいは死亡する例があり、今後、 このハイリスクグループを特定するための検討が必要 です。 4)成人での重症例は気管支喘息を初めとする基礎疾患を 持つ人(海外では妊婦も)が半数程度をしめ、急速に 進行するウイルス性重症肺炎や心筋炎が多く見られま した。 5)致死率は0.5%以下で、先進国では0.05%以下。季節性 インフルエンザは0.1%、スペイン風邪が2%でしたか ら、新型インフルエンザとしては軽い方に分類されま す。再生産率(一人の患者が何人に感染させるか)も1.3 ~1.7で、季節性インフルエンザよりはやや強いという程 度でした。 6)発熱しない感染者がいたため、発熱を指標とした検疫 の意義は少なかったと考えられます。症状の軽微な感 染者もあったので、症状に依存した対応では感染拡大 を防止できません。さらに、迅速診断キットの感度も10 ~70%と低く、診断も容易ではありませんでした。これ らのことから、公衆衛生的な対応の効果は限定的で あったと考えられます。 7)従来のインフルエンザパンデミックでは、第1波よりは 第2、3波の方が病原性は高く、犠牲者も多かったこと日頃から
咳エチケット 手洗い・うがい マスクを用意 (テイッシュを携帯) 栄 養 睡 眠 かかったらどうするかシミュレーションしておく。 特に、喘息や心臓病など持病のある人は、かかった 時どう対応するかを事前に主治医に相談しておく。インフルエンザと診断されたら
大学に電話で連絡する。 経済学部:学務課教務係 (0749-27-1031) 教育学部:教務係(077-537-7707) 大学には絶対出てこないこと。 外出は極力自粛し、必要最低限とする。 安静・十分な睡眠をとる。 水分補給(少しづつ、こまめに)枕元にペットボト ルを置いておく。 食欲がなく食べられない時は、スポーツ飲料がよい。 食事は消化の良いもので、うどん・おかゆ・スープ卵な ど。 部屋の換気1日数回。体温測定1日数回。 医師から指示された自宅療養期間を守る。 (症状消失後48時間まで。) 早めに出歩かないこと。 (2) が該当するか否かを注意深く監視する必要があります が、現在までのところ、南半球の2シーズン目の流行で はそのような兆候はみられないようです。 今回のパンデミック(H1N1)2009では、高齢者には何 らかの免疫の存在が示唆されること、若年者でも感染発 病者に加えて、症状を全く示さなかった感染者も相当程度 あったことから、免疫を獲得したものがある程度の割合に なっていると推測されています。ただ、免疫を獲得した者の 割合は地域によって異なるため、今後も、地域的流行が発 生してくることは十分に考えておく必要があります。さらに、 香港ではこれに加えて、H3N2(A香港型季節性インフルエ ンザ)も流行していますし、国内でも、A/H1N1pdmの小 流行とA/H3N2のそれとで、それぞれ学級閉鎖がなされて います。 今冬のインフルエンザ対策として、以下のことが推奨さ れます。 や休養など)。 2.手洗いを習慣化し、咳エチケットを守ること。発熱・上 気道炎症状などがあれば欠席。 3.インフルエンザワクチン接種。(A/H1N1pdm A/H3N2、Bの3種混合ワクチンが提供され、すでに10 月1日から医療機関で接種が開始されています。) 市町村のホームページで、接種できる医療機関を調べ、 予約が必要です。 <参考文献> WritingCommitteeoftheWHOConsultationonClinical AspectsofPandemic(H1N1)2009Influenza.Clinical AspectsofPandenic2009.InfluenzaA(N1N1)Virus Infection.NEnglJMed2010;362:1708-19. Pandemic(H1N1)2009inEngland:anoverviewof initialepidemiologicalfindingsandimplicationsforthe secondwave.London:HealthProtectionAgency,2009.抗インフルエンザ薬を処方された時の注意点
頭痛、神経症状(眠気、めまい、異常行動、幻覚、意識障害、痙攣など)の他に、消化器症状(腹痛・ 下痢・嘔気)、眼の異常、不整脈、皮膚の異常、劇症肝炎、急性腎不全などが起ることがある 何か変だなと感じたら、すぐに医療機関に電話で相談する。(3)
平成22年度定期健康診断の成績について
保健管理センター所長
山本 孝吉
本年度の定期健康診断の成績について、従来通り、1回 生と2回生以上に分けて解析した。1回生の受診率は昨 年までとほぼ同様で、殆どの学生が受診している。2回生 以上の受診率ついてみると、教育学部では、2回生以上の 95.5%が受診していた。一方、経済学部では、2回生以上の 受診率は48.8%で、昨年に比し6.1ポイント低下しており、2 回生以上の受診率の改善は今後も大きな課題である。 検診の結果、1回生で、再度問診をおこなったものは 12.0%であった。この中には、「胸痛」など重篤な心血管疾 患の可能性がある自覚症状を有するもの、自覚症状がなく ても、突然死を来す可能性を否定できない心電図異常を有 するものが含まれている。また、持病についての記載が不 十分なものや、喘息発作が持続し治療が必要であるにも関 わらず、大学周辺の医療機関の情報がないために治療を受 けていない学生も少数ながら見受けられた。個人情報保護 の観点より、入学前の健康情報が全くない状態から、定期 健診で全ての情報を得ることが必要となり、1回生の健診 に多大のエネルギーを要している。そのため、本年度から、 医師による内科健診の前に、看護師による問診をお願いし た。その成否を速断することはできないが、大変丁寧に身 体的個人歴を聞き出していただいたと感じている。今後も 同様の状況が続くと考えられるので、関係各位の御理解と 御協力をいただき、できるだけ効率的に情報を得られるよ う工夫と努力を重ねたい。なお、2回生以上で再度問診を 行った学生は1.3%であった。 血圧測定で高血圧の学生(表1)は、1回生で78名、2 回生以上で176名であった。再検査に応じた学生の割合 は、1回生で96%、2回生以上で99%であった。再検査時 にも異常値を示したものは、1回生で男子22名(受検者の 4.4%)、女子4名(同1.2%)、2回生以上で男子31名(受検 者の1.9%)、女子1名(同0.09%)であり、これらの学生はほ とんどが経過観察とされたが、男子1名は治療の対象とさ れた。 尿検査では(表2)、糖・蛋白・潜血の陽性者は、1回生 で男子10名、女子10名、2回生以上で男子35名、女子42名 であった。再検査で正常化したものを除いて、最終的に要 経過観察者は、1回生3名、2回生以上7名であり、1回生で 1名(男子1名)、2回生以上で4名(女子4名)が要医療とさ れた。 今年度から、2、3回生の胸部X線検査は希望者のみと なった。その受診率は(表3)、1回生で98.8%、4回生で 76.3%であった。また、2、3回生では、教育学部で95.6%、 経済学部で23.1%であった。精密検査が必要とされた学生 は1回生1名、2回生以上2名で、結核患者は発見されず、治 療を必要とする他の疾患も発見されなかった。節目健診が 推奨されていながら、一方で、実習先や企業に提出を求め られる健康診断証明書には胸部X線検査の結果を求めら れるという矛盾がある。 問診および諸検査の異常者をまとめると(表4)、高血 圧・心電図異常・胸痛などの循環器系の異常ないしその 疑いを示すものが最も多く、次いで泌尿器系(尿蛋白・潜 血)、耐糖能異常(尿糖陽性)、呼吸器系(喘息など)の 異常ないしその疑いを示す学生が認められた。第一次検 査で異常ないしその疑いがあって、再受診(再検査)を勧 奨された学生のうち、約91%の学生がそれに応じて受診し ていた。再受診(再検査)を受けた学生489名のうち20名 (4.1%)が要治療とされた。 再受診(再検査)を勧奨された学生の再受診率は昨年 までの約70%と比較すると、大きく改善している。これは、 滋賀大学キャンパス教育支援システム(SUCCESS)を用い て再受診を繰り返し勧奨する等、関係各位のご尽力の賜物 であると考えられる。 定期健康診断は、自らの健康状態を把握し、疾病を早 期に発見するためばかりでなく、自らの歴史を検証する絶好 の機会である。 保健管理センターでは、健診の受診率向上のために十分 な健診日数をとり、また健診結果を受診者各自が確認でき る体制を整えているので、関係各位の一層の御理解と御協 力をお願いしたい。(4) 生 部 別 検 率 関紹 介 後 未 判 明 血 圧 血 圧 再 検 者 数 再 検 率 検 者 数 常 化 数 血 圧 過 観 察 治 療 1 回生 教 育 男 106 106 100.0% 12 12 11.3% 12 8 4 4 女 147 147 100.0% 3 5 5 3.4% 4 1 3 3 経 済 男女 395194 391182 93.8%99.0% 2 592 592 15.1%1.1% 581 40 181 181 2 回生 以上 教 育 男女 331475 304466 91.8%98.1% 13 386 386 12.5%1.3% 376 295 18 17 1 経 済 男女 1,403648 633368 56.8%45.1% 2 116 11616 18 18.3% 116 934.9% 17 17 23 22 1 回 生 学 部 性 別 対象者数 受検者数 受 検 率 第一次検査 再検査 指導区分 医療 機 関 紹 介 後 結 果 未 判 明 糖 蛋 白 潜 血 要 再 検 者 数 要 再 検 率 再 検 者 数 正 常 化 数 異 常 所 見 経 過 観 察 要 治 療 1 回生 教 育 男 106 106 100.0% 2 2 1.9% 2 1 1 1 女 147 143 97.3% 1 1 0.7% 1 1 経 済 男女 194395 178387 91.8%98.0% 12 2 85 89 2.1%5.1% 35 33 2 2 1 2 回生 以上 教 育 男女 331475 280450 84.6%94.7% 18 4 19 313 4 6.9%1.4% 284 222 62 42 2 経 済 男女 1,403648 513288 36.6%44.4% 38 206 3 317 14 6.0%4.9% 1023 1022 1 1 2 表2 尿検査 回生 学部 性別 対象者数 受検者数 受 検 率 1 回生 教 育 男 106 106 100.0% 女 147 147 100.0% 経 済 男女 395194 394185 99.7%95.4% 2 回生 教 育 男 106 100 94.3% 女 151 147 97.4% 経 済 男女 379212 7239 19.0%18.4% 3 回生 教 育 男 111 100 90.1% 女 153 151 98.7% 経 済 男女 407215 10168 24.8%31.6% 4 回生 教 育 男 114 100 87.7% 女 171 165 96.5% 経 済 男女 617221 410182 66.5%82.4% 表3 胸部X線検査 回 生 学 部 所見者数 所見者の疾患別 第二次検査 指導区分 結果 未 判 明 医 療 機 関 紹 介 後 呼 吸 器 系 消 化 器 系 循 環 器 系 筋・ 骨 格 系 皮 膚・ 皮 下 組 織 神 経 系・ 感 覚 器 内 分 泌 代 謝 性 泌 尿 器 系 血 液 系 そ の 他 内 科 診 察 心 電 図 検 査 検 尿 二 次 検 査 血 圧 検 査 X 線 直 接 撮 影 未 検 者 経 過 観 察 要 治 療 1 回生 教 育経 済 155 1347 5 1 11337 4 1 13 15 143 2 75 31 8 5924 3 3 17 1 21 444 11 81 34 2 回生 以上 経 済教 育 20491 43 1 453 139 12 2 1 11 398 28 2 13 1 33 133 1 16 342 10 32 44 1 6 17 74 13 表4 検査・問診のまとめ