CV -XAFS法の開発とPt 正極触媒の表面ダイナミク ス
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(2) 2015 年度 修士論文要旨. CV-XAFS 法の開発と Pt 正極触媒の表面ダイナミクス 関西学院大学大学院理工学研究科 物理学専攻 水木研究室 草野翔吾 液体燃料を利用した固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell; PEFC)の研究が盛んに行われている [1]。中でもアニオン伝導形の PEFC は、セル内がアルカリ雰囲気になるので電極触媒材料に非貴金属の利用が可能 であり、触媒生産のコスト面で非常に優位である。一方で、産業化に向けては触媒活性を高める必要があり、特に カソード側では酸素還元反応(Oxygen Reduction Reaction; ORR)での活性が直接電池出力と関係しているため、反 応が起こる触媒表面での構造変化や吸着種の動きといった表面ダイナミクスに対する理解が不可欠である。表面反 応のダイナミクスに関する情報を得る方法として、電気化学測定法の 1 種である Cyclic Voltammetry (CV)法があ り、電位掃引しながら電流を測定することで酸化還元に対応した構造変化や反応種の吸脱着に関する反応速度の情 報を得ることが出来る。しかし、CV 法は反応に関する情報だけしか得られないため、表面自身の変化は別な測定 法によって直接観察する必要がある。そこで、酸化還元に対する局所構造や電子状態の変化を観察できる X-ray Absorption Fine structure (XAFS)スペクトルを測定することで、表面の直接観察が可能になると考えられる。つ まり、CV と XAFS 法を組み合わせた新たな測定手段である CV-XAFS 法を開発することにより、触媒機能に関わ る表面ダイナミクスを議論することで触媒反応機構がより明確になることが予想される。もしも、この手法により 一般的に活性の高い Pt/C 触媒の溶液中での反応機構が明確になれば、液体燃料を使用した非貴金属触媒開発だけ でなく、固液界面におけるダイナミクス研究がさらに加速していくことと予想する。そこで、本研究では、アルカ リ雰囲気下における Pt/C 触媒の ORR 機構解明を目標に、CV-XAFS 法の開発とその応用として固液界面における Pt/C 触媒の表面ダイナミクスについての議論をする。 実験には SPring-8 BL14B1 にて分散型光学系を利用して CV の電位変化に対応した Pt LⅢ端の XAFS スペクト ルを測定した。実験は、ORR の起こる状況を想定した酸素バブリングと ORR の起きない状況を想定した窒素バブ リング中の 1 M KOH 溶液下で行い、試料には Pt/C 触媒をカーボンペーパー上に塗付したものを使用した。XAFS スペクトルは 15 ms の間隔で測定し、50 本ずつ積算したものをそれぞれ 1 本のスペクトルとして解析した。 この結果得られた XAFS スペクトルを Arctangent と Gaussian でフィッティングしたものを図 1 に示す。フィ ッティングは、価数変化と吸着状態に敏感な吸収端位置と white line の半値幅を導出した。-0.56 V よりも高電位 側について、ORR に伴った電流の増加が見られる(図 1(a))。そ の時の吸収端位置は ORR の起きない状況に比べて高エネルギ ー側であり、負方向の電位スキャンでは Pt の還元が遅れている ことが分かる(図 1(c))。これは、表面酸素吸着に伴う Pt 還元の 遅れだと考えられるため、ORR においては反応が律速段階であ ることが分かる。また、CV において負方向スキャンでは部分的 に酸化膜となっている表面で、正方向スキャンでは酸化膜の無 い表面で ORR が起きているという予測[2]が、同じ電位に対す る吸収端位置の関係から実験的に確かめられた。また、-0.56 V よりも低電位側では、水素吸着を示す吸収端位置の高エネルギ ー側へのシフトと、white line の半値幅の増大が観測された [2-3](図 1(b,c))。しかし、水素吸着に伴う変化は溶存酸素がある 場合ではほとんど見られなかった。この事から、溶存酸素の存 在は水素吸着を不安定化させる効果があることが分かった。 以上の結果から、ORR は電荷移動律速であることや、水素吸 着の挙動が溶存種によって異なるという表面ダイナミクスに関 する事実が直接観察によって明らかになった。また、ORR の起 こる表面が観測している CV スキャン方向によって異なること も確かめられた。今後は、この測定法を固液界面の表面ダイナ ミクスを観察する新たな電気化学的手法として応用していくと 共に、そこで得た知見から燃料電池における非貴金属触媒の開 発や電極界面反応の機構解明などに繋げていきたいと考えてい る。 [参考文献] [1] 坂本友和 et al., 触媒, 57 (2015). [2] N. M. Markovic et al., J. Phys. Chem., 100 (1996). [3] L. R. Merte, ACS Catal., 2 (2012). 図 1. CV-XAFS の結果。(a) CV 曲線及び 0.25 V に対する (b) white line の半値幅、 (c) 吸収端位置の変化量。 掃引速度は 2mV/s.
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†1 同志社大学大学院理工学研究科 Graduate School of Science and Engineering, Doshisha University †2 同志社大学 研究開発推進機構 Doshisha