Ⅰ はじめに
現行の高等学校学習指導要領 (文部科学省 2009) で分 子生物学の内容が盛り込まれたことから,DNA の抽出 実験は全教科書に記載され,現在多くの学校で実施さ れている.また市民向け講座でも簡便な実験として広 く行われており(例えば,品川区環境情報活動センター (2014)),インターネット上にも多くの方法が掲載され ている (例えば,一般財団法人バイオインダストリー協 会).教科書には魚の白子やヒトの口腔上皮細胞などの 動物材料,ブロッコリーやタマネギなどの植物材料が取 り上げられている.これらをまとめたものが表1であ る.ブロッコリーやタマネギからは肝臓から抽出した DNA と同じ,白く不透明で糸状の DNA がエタノール 沈殿で析出する.しかしDNAを抽出するためにはブロッ コリーやタマネギを押しつぶさなければならず,乳鉢な どの道具を必要として簡便とは言いがたい.そこで学校 外では簡単に圧し潰すことができるバナナの利用も多 い.キッチンでできる簡易実験として DNA 抽出実験が とりあげられ (Carlson 1998),それ以降,インターネッ ト上には果実からの DNA 抽出実験が多く掲載されてい る (バナナは Nova scienceNow, SCIENTIFIC AMERICAN (2011), イチゴは The Kitchen Pantry Scientist (2012)).バナナは果肉が柔らかいため潰しやすく,エタノー ル沈殿で外見が繊維状の DNA と考えられている物質 (以下,DNA 様物質) が多量に析出するため DNA を抽 出する材料に選ばれている.しかし,この DNA 様物質 には DNA が含まれていないことも報告されている(日 野 2012,馬場ら 2013,倉林・片山 2015).生き物に DNA が含有されているのは当然であり,なぜバナナか ら DNA が抽出できないのかは不明であった.抽出され た繊維状の DNA 様物質内には主として DNA が含まれ るが,同時に RNA も析出していると考えられる.そこ で本研究では潰しやすく実験時間短縮にもなるバナナ から DNA を抽出する生徒実験の妥当性を検討すると共 に,その理由を考察した.
DNA 抽出実験におけるバナナ利用の検討
Can Bananas be Used for DNA Extraction Experiment?
佐 田 貴 子
*渥 美 茂 明
**笠 原 恵
***SADA Takako
ATSUMI Shigeaki
KASAHARA Megumi
Banana have been presented to be a simple material for DNA extraction with neutral detergents, table salts, and ethanol. They are cheap, available at any time, and easy to crush. And a large quantity of white and filiform DNA-like sediments can be extracted from them. So that, the DNA extraction from bananas are being widely performed in junior and senior high schools. However, the DNA-like sediments are now suspected not to contain essential DNA. Here, we evaluated the use of bananas for DNA extraction.
The amount of the DNA-like sediments did not significantly change during the ripening process. And then, the aqueous solution of the DNA-like sediments did not show any apparent absorption peak at 260 nm. After the extraction mixture of bananas was treated with pectinase before ethanol sedimentation, no DNA-like sediments were detected. On the other hand, neither DNase nor RNase did affect the DNA-like sediments.
Further, when the cell of ripened bananas were stained with DAPI, no nuclei were observed. These results indicate that the DNA of banana cell might have degraded into short oligonucleotides during the ripening process, and the DNA-like sediments extracted from banana consist of large amounts of pectin-like substances. In conclusion, bananas and other ripened fruits are unsuitable for DNA extraction experiments.
キーワード:バナナ,DNA 抽出実験,高等学校,中学校
Key words : bananas,DNA extraction experiment,senior high school,junior high school
表 1 中学校「理科」・高等学校「生物基礎」の教科書で 扱われている DNA 抽出実験の実験材料 図表 (図表は全て,幅が半ページに収まるようにして下さい.) 50 µm 50 µm 50 µm
1日
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1日 3日 4日 5日 6日 9日 0 20 40 60 80 100 8 10 12 14 16 18 20 22 24 D N A 濃度 ng/µL (破線) 糖度(実線) 図1 購入後の経過日数に対するバナナの糖度とDNA 濃度の変化 実線は糖度,破線はDNA 濃度として機器に表示された値を表 す.横軸は追熟の経過日数を表す.購入当日を0 日とした. 表1 中学校「理科」・高等学校「生物基礎」の教科書で 扱われている DNA 抽出実験の実験材料 教科書 中学校「理科」 高等学校「生物基礎」 教育出版 タマネギ(図のみ) 大日本図書 ブロッコリー 学校図書 ブロッコリー 東京書籍 ブロッコリー(図のみ) ブロッコリー 啓林館 ブロッコリー ヒトの口腔上皮細胞 数研出版 ブロッコリー 第一学習社 タラの精巣 ブロッコリー 実教出版 ブロッコリー 図2 ヨウ素ヨウ化カリウム溶液でデンプンが染色された細胞 購入後1 日目の細胞にはデンプンが詰まっていた(左).3 日目 にはデンプンが減少し(中央),5 日目には消失していた(右). 55 兵庫教育大学学校教育学研究, 2020, 第33巻, pp.55-59 *兵庫県立津名高等学校 令和2年6月26日受理 **兵庫教育大学名誉教授 ***兵庫教育大学大学院教育実践高度化専攻理数系教科マネジメントコース 教授Ⅱ 実験方法
1 バナナの追熟過程における DNA 様物質の抽出 市販のバナナ 1 房から日を追って1本ずつ取り出し, 果実の中央付近より試料を採取し,糖度をポケット糖 度計(ATAGO PAL - 1)を使って測定するとともに, その 5 g を冷凍庫(- 20℃)で保存した. 冷凍保存し た試料から,笠原・渥美 (2018) の方法に従って DNA を抽出した.まず 5 g のバナナを純水で 0.5%に希釈し た中性洗剤(除菌ジョイコンパクト / P & G)5mL と塩 化ナトリウム 3 gを加えてビニール袋(8.5 × 13 cm) 内で指先で押し潰した.その後,5 m L の 0.5%中性洗 剤をさらに加え,ろ紙(ソフライナー/ピジョン)を 使用してろ過した.ろ液に氷冷したエタノールを 25mL 加え,析出した DNA 様物質を回収し,10mL の純水に 溶 か し た.5,000 g で 10 分 間 遠 心(KUBOTA 6500) したのち,上澄みの吸収スペクトルを測定した(ND - 1000 / Nano Drop).なお,この簡易抽出方法は以降の全 ての DNA 抽出実験に共通している.対照実験として新 鮮なブロッコリー5gについても同様の方法で抽出し た. 2 酵素処理 5 gのバナナおよびブロッコリーから1の方法でろ液 を得た.それらを各 1 mL ずつマイクロチューブに入れ, DNase(5U/mL /Takara)を 10µL 添加し,37℃の恒温 槽で2時間保持し,反応させた.その後,氷冷したエタ ノールを 2.5mL 加えて DNA が析出する様子を観察した. 同様に RNase を同温で同時間反応させたのち DNA 抽出 を行い,その様子を DNase で処理したものと比較した. 次に 5 g のバナナをビニール袋内で潰した後,ペクチ ナーゼ(CAS 9032-75-1/ 東京化成工業)1% 水溶液を 5 mL 添加し,50℃の恒温槽で 15 分保持した.その後前 述通りの抽出方法で DNA 抽出を行った.対照実験とし てペクチナーゼ水溶液を加えず,50℃,15 分置いたバ ナナを用意し,同様の抽出を行った.さらに,ブロッ コリーは1の方法のろ液をペクチナーゼ処理したもの (50℃,15 分放置)としなかったものから DNA を抽出 した. 3 核の顕微鏡観察 バナナの徒手切片を,酢酸オルセインで染色し,光 学顕微鏡で観察した.さらにバナナに加え,DNA 抽出 実験にしばしば使われる新鮮なブロッコリーやタマネ ギ の 切 片 を 600 nM DAPI(Mcllvaineʼs Buffer 溶 液 ) で 15 分間染色し,蛍光顕微鏡(BIOREVO BZ - 9000/ KEYENCE)で観察した.また,収穫直後のまだ固いキ ウイフルーツと追熟し柔らかくなったキウイフルーツ, 市販されているイチゴも同様に観察した.Ⅲ 結果および考察
1 バナナの追熟と DNA 析出量の変化 輸入された未熟で緑のバナナは,エチレンガスを使っ て追熟させてから市場に出回る.追熟が進むと黄色のバ ナナに黒斑が出現すると共に(図1),小島(2000)が 報告した細胞内のデンプン粒の消失が観察された(図 2).デンプン粒の減少に伴って糖度は,17. 0%から 21.7%へと緩やかな上昇が見られたが,デンプン粒が見 られなくなると 17.6%まで下降した(図1).DNA 様物 質は追熟過程のどの時期でも多量に析出し (図3),そ 図 1 購入後の経過日数に対するバナナの糖度と DNA 濃度の変化 実線は糖度,破線は DNA 濃度として機器に表示され た値を表す.横軸は追熟の経過日数を表す.購入当日を 0 日とした. 図表 (図表は全て,幅が半ページに収まるようにして下さい.) 50 µm 50 µm 50 µm1日
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1日 3日 4日 5日 6日 9日 0 20 40 60 80 100 8 10 12 14 16 18 20 22 24 D N A 濃度 ng/µL (破線) 糖度(実線) 図1 購入後の経過日数に対するバナナの糖度とDNA 濃度の変化 実線は糖度,破線はDNA 濃度として機器に表示された値を表 す.横軸は追熟の経過日数を表す.購入当日を0 日とした. 表1 中学校「理科」・高等学校「生物基礎」の教科書で 扱われている DNA 抽出実験の実験材料 教科書 中学校「理科」 高等学校「生物基礎」 教育出版 タマネギ(図のみ) 大日本図書 ブロッコリー 学校図書 ブロッコリー 東京書籍 ブロッコリー(図のみ) ブロッコリー 啓林館 ブロッコリー ヒトの口腔上皮細胞 数研出版 ブロッコリー 第一学習社 タラの精巣 ブロッコリー 実教出版 ブロッコリー 図2 ヨウ素ヨウ化カリウム溶液でデンプンが染色された細胞 購入後1 日目の細胞にはデンプンが詰まっていた(左).3 日目 にはデンプンが減少し(中央),5 日目には消失していた(右). 図 3 バナナから抽出された DNA 様物質 白い繊維状物質が大量に析出した.日数は追熟の経過 日数である.追熟 3 日目の DNA 様物質を再度エタノー ル沈殿させると,半透明のゲル状物質が析出した(下). 他の経過日数のバナナからの抽出物でも同様であった. 図3 バナナから抽出されたDNA 様物質 白い繊維状物質が大量に析出した.日数は追熟の経過日数である. 追熟3 日目のDNA 様物質を再度エタノール沈殿させると,半透明のゲ ル状物質が析出した(下).他の経過日数のバナナからの抽出物でも同 様であった.1 日 3 日 5 日
図4 DNA 様物質のUV 吸収スペクトル 下:バナナ 上:ブロッコリー DNA 抽出は材料購入日の翌日に行った. 垂直線はDNA の吸収波長である260nm を表す. 材料 バナナ バナナ ブロッコリー ブロッコリー ペクチナーゼ + - + - 材料 バナナ バナナ ブロッコリー ブロッコリー DNase + - + - RNase - + - + 図5(上)ブロッコリーとバナナのDNase,RNase 処理後のDNA 抽出 ブロッコリーではDNase 処理で白濁するが,バナナをDNase・RNase 処 理しても繊維状物質が析出する. (下)バナナとブロッコリーから抽出したDNA 様物質の析出の様子 ペクチナーゼ処理したバナナではDNA 様物質の析出は見られない. 図 2 ヨウ素ヨウ化カリウム溶液でデンプンが染色され た細胞 購入後 1 日目の細胞にはデンプンが詰まっていた (左).3 日目にはデンプンが減少し(中央),5 日目には 消失していた(右). 50 µm 50 µm 50 µm1
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図2
学校教育学研究, 2020, 第33巻 56の量に大きな変化は認められなかった.しかし DNA 様 物質を水で溶解して吸収スペクトルを測定しても DNA 溶液ならば検出されるはずの 260nm の吸収極大は観察 できなかった (図4).ブロッコリーから抽出された白 い沈殿物を水に溶解して吸収スペクトルを測定すると 260nm に吸収極大を検出した.その値は試料 1 g 当り 71 µg となった(図4). 含有量を求めると試料 1 g 当り 7.8 ~58.6 µg の DNA が 抽出された計算になり,追熟過程のどの時期でもブロッ コリーと比較して少なかった (図1).これは馬場ら (2013)と同様の結果である.さらに,DNA 様物質を純 水に溶かしたあと,再度エタノール沈殿を行うと, DNA とは認めがたい透明ゲル状の物質が析出した(図3). 一方,ブロッコリーからの析出物の 260nm と 280nm の 吸光度の比は 1.92 であった.この事からブロッコリー からは純度の高い DNA が抽出されていると考えられた. 2 酵素処理 バナナの抽出物を DNase で処理しても RNase で処理 しても,バナナからは未処理のものと同様の白い繊維状 の DNA 様物質が析出した.ブロッコリーでは RNase 処 理をしたものにエタノールを加えると未処理のものと 同様の白い繊維状物質が析出した.DNase 処理をしたも のにエタノールを加えるも白濁したが,繊維状物質の沈 殿は見られなかった(図5).ブロッコリーの DNA 様 物質は,大部分が DNA で構成されているので抽出液の DNase 処理によって沈殿は生じなくなったが,バナナの 抽出液を DNase や RNase で処理してもアルコールで繊 維状の沈殿物が生じたので,沈殿物は DNA や RNA を 主成分としていないと推察された. 次に,バナナから抽出した DNA 様物質は半透明のゲ ル状物質であり,触ると弾力があり,エタノールで沈 殿する性質から,緒方(1963)が指摘したペクチンも しくはペクチン類似物質(ペクチン酸・ペクチニン酸) を主体とした多糖類の可能性があった.そのためペクチ ン類を酵素により分解処理したのち DNA を抽出すれば, 純度の高い DNA が抽出されると期待された. 結果,ペクチナーゼ処理を行わないと,バナナでもブ ロッコリーでも DNA 様物質が析出するが,ペクチナー ゼ処理をしたバナナ抽出液にエタノールを重層しても, 抽出液が白濁するにとどまり,DNA 様物質は析出しな かった.一方ブロッコリー抽出液にペクチナーゼ処理を しても繊維状の DNA 様物質は析出した (図5). ブロッコリーより析出した DNA 様物質は DNA を主 成分としているが,バナナから通常の抽出方法で析出し ている DNA 様物質はペクチン類を主成分としていると 推察された. バナナの DNA 様物質が DNA を含有していなかった のは, DNA の抽出が多糖類によって阻害されたのでは なく,出荷前の追熟の過程と購入後の更なる追熟により DNA そのものが消化・分解されている可能性が考えら れた. 3 核の顕微鏡観察 バナナから DNA らしい白い繊維状の沈殿が得られな かったのは,追熟の結果 DNA そのものが消失したため と考え,さまざまな材料を使い,DNA を含む核の有無 を顕微鏡で観察した.しかしバナナの細胞には酢酸オル セインで染色される核は観察されなかった.これは小島 (2000)がヨウ素液を利用し,デンプンのほぼない細胞 で核を観察した結果とは異なっている. DAPI 染色した ブロッコリー,タマネギ,収穫直後のキウイ,イチゴ では鮮明な核が観察されたが(図7・8・9・11),バ ナナと追熟を経たキウイフルーツでは核を観察できな かった(図6・10). キウイフルーツでは,収穫直後には観察された核が, 追熟を経ると観察されなくなった.追熟という過程は, 細胞あるいは組織が加水分解される過程であり,核の構 図 4 DNA 様物質の UV 吸収スペクトル バナナ(下),ブロッコリー(上) DNA 抽出は材料購入日の翌日に行った . 垂直線は DNA の吸収波長である 260nm を表す . 図3 バナナから抽出されたDNA 様物質 白い繊維状物質が大量に析出した.日数は追熟の経過日数である. 追熟3 日目のDNA 様物質を再度エタノール沈殿させると,半透明のゲ ル状物質が析出した(下).他の経過日数のバナナからの抽出物でも同 様であった.
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図4 DNA 様物質のUV 吸収スペクトル 下:バナナ 上:ブロッコリー DNA 抽出は材料購入日の翌日に行った. 垂直線はDNA の吸収波長である260nm を表す. 材料 バナナ バナナ ブロッコリー ブロッコリー ペクチナーゼ + - + - 材料 バナナ バナナ ブロッコリー ブロッコリー DNase + - + - RNase - + - + 図5(上)ブロッコリーとバナナのDNase,RNase 処理後のDNA 抽出 ブロッコリーではDNase 処理で白濁するが,バナナをDNase・RNase 処 理しても繊維状物質が析出する. (下)バナナとブロッコリーから抽出したDNA 様物質の析出の様子 ペクチナーゼ処理したバナナではDNA 様物質の析出は見られない. 図 5(上)ブロッコリーとバナナの DNase,RNase 処 理後の DNA 抽出 (下)バナナとブロッコリーから抽出した DNA 様 物質の析出の様子 ブロッコリーでは DNase 処理で白濁するが,バナナ を DNase・RNase 処理しても繊維状物質が析出する. ペクチナーゼ処理したバナナでは DNA 様物質の析出 は見られない . 図3 バナナから抽出されたDNA 様物質 白い繊維状物質が大量に析出した.日数は追熟の経過日数である. 追熟3 日目のDNA 様物質を再度エタノール沈殿させると,半透明のゲ ル状物質が析出した(下).他の経過日数のバナナからの抽出物でも同 様であった.1 日 3 日 5 日
図4 DNA 様物質のUV 吸収スペクトル 下:バナナ 上:ブロッコリー DNA 抽出は材料購入日の翌日に行った. 垂直線はDNA の吸収波長である260nm を表す. 材料 バナナ バナナ ブロッコリー ブロッコリー ペクチナーゼ + - + - 材料 バナナ バナナ ブロッコリー ブロッコリー DNase + - + - RNase - + - + 図5(上)ブロッコリーとバナナのDNase,RNase 処理後のDNA 抽出 ブロッコリーではDNase 処理で白濁するが,バナナをDNase・RNase 処 理しても繊維状物質が析出する. (下)バナナとブロッコリーから抽出したDNA 様物質の析出の様子 ペクチナーゼ処理したバナナではDNA 様物質の析出は見られない. 57 DNA抽出実験におけるバナナ利用の検討造を失い消失し,DNA も加水分解されることを示唆し ている.追熟したバナナでも DNA が低重合のオリゴヌ クレオチドへと分解されたと考えられる.
Ⅳ 結論
バナナは入手しやすく,実験時間の短縮に最適であ ると考えられ DNA の抽出材料として用いられてきた が,近年抽出物に DNA が含まれないと報告されるよう になった(日野 2012,馬場ら 2013,倉林・片山 2015). 追熟したバナナでは核が消失し,DNA が低重合のオリ ゴヌクレオチドへと分解しているため,DNA 抽出実験 で析出する透明なゲル状の DNA 様物質には,DNA は 含まれず,その実体はペクチンを主体とする物質である ことが示唆された.キウイフルーツやイチゴについて も,ペクチナーゼ処理においてバナナと同様の結果が得 られた.これらのことから,熟して甘くなった果物類は 柔らかく押し潰しやすいが,DNA 抽出実験の材料には 適さないことが明らかとなった.謝辞
この実験に際し,快く収穫前のバナナを提供ください ました(公財)兵庫県園芸・公園協会兵庫県立フラワー センター花づくり事業課課長の土居寛文さん,加古川フ ルーツセンターの柳さんに厚くお礼申し上げます.引用文献
馬場典子,片山隆志,香西武,米澤義彦(2013) 中学校 理科第二分野における DNA 抽出実験の再検討.生物 教育 53(4):168-175.Carlson S. (1998) “THE AMATEUR SCIENTIST, Spooling the Stuff of Life” Scientific Amerian, September, 754-775. 日野晶也 (2012) 「DNA の抽出実験」 の指導法.神奈川 大学心理・教育研究論集 31:141-142. 笠原恵・渥美茂明 (2018) 中等教育課程における安全 で簡便な DNA 抽出法の開発と抽出法の適用範囲.兵 庫教育大学研究紀要 52:65-71. 小島晶夫 (2000) バナナの果肉細胞を用いた生物実験. 北海道立理科教育センター研究紀要 12:82-85. 倉林正・片山豪 (2015) 簡易 DNA 抽出実験における蛍 光試薬を用いた DNA の検出とその有用性.生物教育 図 6 バナナの DAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.蛍光像に輝点は見えない. 図6 バナナのDAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.蛍光像に輝点は見えない. 図7 ブロッコリーのDAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.細胞内の輝点が核を表す. 図8 タマネギのDAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.細胞内の輝点が核を表す. 100 µm 100 µm 図9 追熟前(収穫直後)のキウイフルーツのDAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.蛍光像に無数の輝点が見える. 図 10 追熟後のキウイフルーツのDAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.可視光像の内部に見える点は色素体 である.蛍光像に輝点は見えない. 図 7 ブロッコリーの DAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.細胞内の輝点が核を表す. 図6 バナナのDAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.蛍光像に輝点は見えない. 図7 ブロッコリーのDAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.細胞内の輝点が核を表す. 図8 タマネギのDAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.細胞内の輝点が核を表す. 100 µm 100 µm 図9 追熟前(収穫直後)のキウイフルーツのDAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.蛍光像に無数の輝点が見える. 図 10 追熟後のキウイフルーツのDAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.可視光像の内部に見える点は色素体 である.蛍光像に輝点は見えない. 図 8 タマネギの DAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.細胞内の輝点が核を表す. 図6 バナナのDAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.蛍光像に輝点は見えない. 図7 ブロッコリーのDAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.細胞内の輝点が核を表す. 図8 タマネギのDAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.細胞内の輝点が核を表す. 100 µm 100 µm 図9 追熟前(収穫直後)のキウイフルーツのDAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.蛍光像に無数の輝点が見える. 図 10 追熟後のキウイフルーツのDAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.可視光像の内部に見える点は色素体 である.蛍光像に輝点は見えない. 図 11 イチゴの DAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.蛍光像には輝点が見える. 図 9 追熟前(収穫直後)のキウイフルーツの DAPI 染 色像 左は可視光像,右は蛍光像.蛍光像に無数の輝点が見える. 100 µm 100 µm
図9
図 10 追熟後のキウイフルーツの DAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.可視光像の内部に見える 点は色素体である.蛍光像に輝点は見えない. 図6 バナナのDAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.蛍光像に輝点は見えない. 図7 ブロッコリーのDAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.細胞内の輝点が核を表す. 図8 タマネギのDAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.細胞内の輝点が核を表す. 100 µm 100 µm 図9 追熟前(収穫直後)のキウイフルーツのDAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.蛍光像に無数の輝点が見える. 図 10 追熟後のキウイフルーツのDAPI 染色像 左は可視光像,右は蛍光像.可視光像の内部に見える点は色素体 である.蛍光像に輝点は見えない.図11
学校教育学研究, 2020, 第33巻 5856(1):21-28. 文部科学省 (2009) 高等学校学習指導要領 東山書房 緒方邦安 (1963) 果実の追熟生理と貯蔵. 日本食品工業 学会誌 10(11):470-481.
本文中で参照した教科書
(中学校理科) 有馬朗人 他 62 名(2016)新版 理科の世界3. 大日本図書 . 平成 27 年検定 . 岡村定矩 他 50 名(2016)新編 新しい科学3. 東京書籍 . 平成 27 年検定 . 霜田光一 他 30 名(2016)中学校 科学3. 学校図書 . 平成 27 年検定 . 塚田捷 他 61 名(2016)未来へ広がるサイエンス3. 啓林館 . 平成 27 年検定 . 細矢治夫 他 29 名(2016)自然の探究 中学校理科3. 教育出版 . 平成 27 年検定 . (高等学校生物基礎) 浅島誠 他 24 名 (2017) 改訂 生物基礎 . 東京書籍 . 平成 28 年検定 . 嶋田正和 他 14 名 (2017) 改訂版 生物基礎 . 数研出版 . 平成 28 年検定 . 庄野邦彦 他 11 名 (2017) 新訂版 生物基礎 . 実教出版 . 平成 28 年検定 . 本川達雄 他 17 名 (2017) 生物基礎 改訂版 . 啓林館 . 平成 28 年検定 . 吉里勝利 他 20 名 (2017) 改訂 生物基礎 . 第一学習社 . 平成 28 年検定 .本文中で引用した資料
一般財団法人バイオインダストリー協会 , みんなのバ イ オ 学 園「 バ ナ ナ か ら の DNA 抽 出 実 験 」 https:// www.jba.or.jp/top/bioschool/club/clu_02.html(アクセス 2020.6.26)The Kitchen Pantry Scientist (2012) “Kitchen Table DNA Extraction”
http://kitchenpantryscientist.com/kitchen-table-dna-extraction/(アクセス 2020.6.26)
Nova scienceNow, “Extracting DNA from Bananas” https:// www.pbs.org/wgbh/nova/education/activities/pdf/3214_01_ nsn_01.pdf#search='Nova+scienceNow%2C+“Extracting+ DNA+from+Bananas”'(アクセス 2020.6.26)
SCIENTIFIC AMERICAN (2011) “Find the DNA in a Banana” https://www.scientificamerican.com/article/find-the-dna-in-a-banana-bring-science-home/(アクセス 2020.6.26) 品川区環境情報活動センター (2014) 「バナナの DNA 抽 出実験で生きものの保護について学ぼう」 http://shinagawa-eco.jp/wp/kouza/?p=238 ( ア ク セ ス 2020.6.26) 59 DNA抽出実験におけるバナナ利用の検討