• 検索結果がありません。

ウリ類炭疽病菌におけるホメオボックス転写制御因子の機能解析

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ウリ類炭疽病菌におけるホメオボックス転写制御因子の機能解析"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

58

1.はじめに

 植物病原糸状菌が引き起こす植物への病害は 8 割以上を占めると言われており、世界各地で経 済的に重大な損失を与えている。新たな病害防 除法を確立するためには、植物病原糸状菌の感染 メカニズムの解明が重要である。ウリ類炭疽病菌 (Colletotrichum orbiculare)を含む多くの植物病原 糸状菌は、宿主植物に感染するために付着器と呼 ばれる構造を形成し、宿主に侵入する。また、ウ リ類炭疽病菌などのヘミバイオトロフィックな病 原菌は、宿主への侵入初期にバイオトロフィック (共生)状態の侵入菌糸を形成し、その後、ネク ロトロフィック(殺生)状態に移行して、宿主細 胞を破壊し、感染を成立させることが知られてい る。特に、この侵入菌糸のバイオトロフィからネ クロトロフィへの切り替えについては、近年より 注目されるようになり、様々な研究が行われてい る。  これまで、ウリ類炭疽病菌の病原性関連遺伝 子の探索のために、AtMT法を用いてウリ類炭疽 病菌の野生株 104−T株から突然変異株を作出し、 病原性欠損変異株を選抜してその変異遺伝子の特 定を行ってきた。得られた推定病原性関連遺伝子 の 1 つであるホメオボックス遺伝子は、ショウジ ョウバエの形態変異から発見された転写因子をコ ードする遺伝子であり、形態分化に重要な役割を 持つことが知られている。また、昆虫だけでなく 様々な生物が保有しており、植物病原糸状菌にも 保存され、研究が行われている。しかし、植物病 原菌において、ホメオボックス転写因子の病原性 との関連については未解明である。  ウリ類炭疽病菌のホメオボックス遺伝子の 1 つ であるCoHo1遺伝子の遺伝子破壊株を作出して表 現型解析を行った。その結果、ホメオボックス転 写因子CoHo1は侵入菌糸の形態分化に関与してい ることがわかった(図1)。また、もう1つのホ メオボックス遺伝子CoHox3遺伝子についても同 様に遺伝子破壊株を作出して表現型解析を行った 結果、ホメオボックス転写因子CoHox3は付着器

ウリ類炭疽病菌における

ホメオボックス転写制御因子の機能解析

平岩

(横山)

 綾

近江化学工業株式会社 形成に関与していることがわかった(図 1)。また、 他のホメオボックス転写因子についても解析を行 っており、分生胞子の形成や発芽感染過程の様々 な段階に関与していることが示唆されている(図 1)。

学位論文の概要

図1.ウリ類炭疽病菌におけるホメオボックス転写因子の 感染過程への関与

2.ウリ類炭疽病菌のホメオボックス

Co H o x1 は宿主植物への侵入菌糸の

形態形成に関与する

  ウ リ 類 炭 疽 病 菌 の ホ メ オ ボ ッ ク ス が ど の よ うな機能を持っているかを明らかにするため、 CoHox1遺伝子を破壊した菌株を作出し、野生株 との比較による表現型解析を行った。CoHox1遺 伝子破壊株は、宿主葉への病原性が欠損し、加熱 処理した宿主葉上でも病斑を形成しなかった(図 2)。CoHox1遺伝子破壊株は、ガラス面、人工セ ルロース膜および宿主葉上で成熟した付着器を形 成し、人工セルロース膜への侵入も正常であっ た。一方で、CoHox1遺伝子破壊株は宿主植物へ の侵入率が野生株よりも低下し、侵入菌糸の進展 が途中で停止していた(図3)。熱処理した宿主 葉を用いて、宿主の抵抗性誘導について試験を行 った結果、CoHox1遺伝子破壊株は病斑を形成せ ず、侵入菌糸の伸長停止に関与しないことがわか った。CoHox1遺伝子破壊株が宿主侵入の途中で 死滅しているかを調査するため、宿主へ接種して 長期間の培養後を行ったが、CoHox1遺伝子破壊 株の生存が確認された。以上の結果、CoHox1は ウリ類炭疽病菌の侵入菌糸の形態分化に関与し、

(2)

59 宿主への感染に必須であることがわかった。 図2.CoHox1遺伝子破壊株の病原性試験胞子懸濁液を接 種して7日間培養した。 図3.CoHox1 遺伝子破壊株の宿主葉への侵入菌糸観 察 Co:胞子、Ap:付着器、I n:侵入菌糸 図4.CoHox3遺伝子破壊株の胞子発芽胞子懸濁液を 24 時間培養した。図下:形成率、Co :胞子、Ap :付 着器、バーは 10μm を示す。

3.ウリ類炭疽病菌のホメオボックス

CoHox3 は付着器形成に関与する

 ウリ類炭疽病菌のホメオボックス転写因子の1 つであるCoHox3の機能解析のため、遺伝子破壊 株を作出し、その表現型解析を行った。その結果、 CoHox3遺伝子破壊株は正常な付着器を形成でき ず、人工膜への侵入率および宿主キュウリ葉への 病原性が低下することがわかった(図4)。また、 付着器で特異的に発現する遺伝子CoGAS1のプロ モーターにeGFPを付加させたベクターの導入株 を用いて蛍光観察をした結果、野生株では付着器 形成時にeGFP蛍光が認められたが、CoHox3遺伝 子破壊株では認められなかった。胞子発芽時の核 の挙動についてはCoHox3遺伝子破壊株の核分裂 が野生株よりも遅い結果となった(図5)。以上か ら、CoHox3はウリ類炭疽病菌の付着器形成に関 与していると結論づけられる。  以上の結果に加えて、すでに報告されているCST1

(Tsuji et al. 2003)および CoHox2、CoHox4(小幡 2018)もまたウリ類炭疽病菌の感染過程に関与 しており、ホメオボックス転写因子が感染に重要 な因子であることがわかった。これらのことから、 ホメオボックス転写因子の更なる研究がウリ類炭 疽病菌の感染メカニズム解明に貢献すると期待さ れる。

引用文献

Ts uji G, Fujii S, Tsuge S, Shiraishi T and Kubo Y, 2003. The Colletotrichum lagenarium Ste12-like gene CST1 is essential for appressorium penetra-tion. Molecular plant-Microbe Interactions 16: 315-325; https://doi.org/10.1094/MPMI.2003.16.4.315. Yo koyama A, Izumitsu K, Sumita T, Tanaka C, Irie T,

Suzuki K, 2018. Homeobox transcription factor Co-Hox3 is essential for appressorium formation in the plant pathogenic fungus Colletotrichum orbiculare. Mycoscience, 59: 353-362; https://doi.org/10.1016/ j.myc.2018.02.001.

Yo koyama A, Izumitsu K, Irie T, Suzuki K, 2019. The homeobox transcription factor CoHox1 is re-quired for the morphogenesis of infection hyphae in host plants and pathogenicity in Colletotricum orbiculare. Mycoscience 60: 110-115; https://doi. org/10.1016/j.myc.2018.11.001.

(3)

60 図5.CoHox3 遺伝子破壊株の胞子発芽時の核の挙動

Co:胞子、Ap:付着器

学位論文の概要

参照

関連したドキュメント

今日のお話の本題, 「マウスの遺伝子を操作する」です。まず,外から遺伝子を入れると

第四章では、APNP による OATP2B1 発現抑制における、高分子の関与を示す事を目 的とした。APNP による OATP2B1 発現抑制は OATP2B1 遺伝子の 3’UTR

線遷移をおこすだけでなく、中性子を一つ放出する場合がある。この中性子が遅発中性子で ある。励起状態の Kr-87

が作成したものである。ICDが病気や外傷を詳しく分類するものであるのに対し、ICFはそうした病 気等 の 状 態 に あ る人 の精 神機 能や 運動 機能 、歩 行や 家事 等の

「海洋の管理」を主たる目的として、海洋に関する人間の活動を律する原則へ転換したと

   遠くに住んでいる、家に入られることに抵抗感があるなどの 療養中の子どもへの直接支援の難しさを、 IT という手段を使えば

※ CMB 解析や PMF 解析で分類されなかった濃度はその他とした。 CMB

本起因事象が発生し、 S/R 弁開放による圧力制御に失敗した場合 は、原子炉圧力バウンダリ機能を喪失して大 LOCA に至るものと 仮定し、大