博 士 ( 農 学 ) 文 舷 植
学位論文題 名
Processes of Nutrient Availability in Different SOi1 ‐ P1antECOSyStemSEStabliShedon V01CanOMt .ShOWa ‐ShinZan
(昭和新山に成立した異なる土壌―植物生態系における養分可給化過程)
、学位論文内容の要旨
森林生態 系が関与 してい る物質循 環系は 、そのレ ベルか ら、グ口 一バルな 地球化学的 過 程、植 生と土壌 間の生 物地球化 学的過 程、植物 体内の生 物化学 的過程の 三つのレベル に 区分で きる。森 林生態 系におけ る養分 循環の研 究には、 植生と 土壌間の 生物地球化学 的 過程が 最も直接 的で重 要である 。本研 究は火山 噴火後に 成立し た植生構 造が異なる林 分 で、土 壌一植物 生態系 の養分可 給化の 特徴を明 らかにし 、植生 と土壌と の間での養分 循 環過程 を検討す ること を研究目 的とし た。方法 としては 、土壌 の理化学 性、土壌微生 物 に よ る 土壌 呼 吸 量、 優 占 樹種 の 各 器官 とAo層およ びり夕― フオ― ルの養分 分布、土 壌 中 の 窒 素 動 態 等 を1994年8月 か ら1996年7月 ま で の2年 間 調査 を 行 い、 そ れ ら の季 節変化を含めて検討した。
第1章序論
森林生態 系での物 質循環 や、国内 外にお ける火山 噴火後 の植生回 復につい ての研究を 総説し、本研究の目的について述べた。
第2章調査地及ぴ調査林分の概要
調 査 対象 は1944−45年 の 噴火 に よ り生 成 さ れた 北 海 道 南西 部 の 昭和 新山( 標高407 m) で あ る。 調 査は 現在の昭 和新山 の植生を 代表す る裸地( 標高307m) 、草本群 落(同 295m)、ヤマナラシ林(同270m)、ミヤマハンノキ林(同293m)、ド口ノキ林(同185m)、
二セアカシア林(同125m)の六っの調査地で行った。
第3章各調査地における土壌の理化学性
各 調 査地 に お ける 土 壌 水分 、pH、 土 壌 有機 物 量 、TotalC、N、可 給 態リン 、交換 性 陽イオン(くニa2+,Mg2+,K+,Na+)を測定した。土壌水分と有機物量は植生高が高くなるに し た が っ て 増 加す る 傾 向が 認 め ら れた 。 各 調査 地 で の土 壌 有 機物 量 は6月 〜7月に 高
〈 な り 、 明瞭 な 季 節変 化 を 示し た 。pHは ミヤ マハン ノキ林と ニセア カシア林 で他調査 地 よ り も 低い 値 を示し た。TotalNは ミヤマハ ンノキ 林で低い 値を示 した。(‑/N比は 裸 地 で8.8、 植 物 群落 で10.2〜12.7とな り 、 ド□ ノ キ 林 でや や 大 きい 値 をしめ した。 各 調 査 地 のC/N比 は土 壌 中 の有 機 物 の集 積 が 少な い こ とを う か が わせ た 。可給 態リンと 交換性陽イオンは植生との対応は明らかではなかった。
第4章土壌呼吸量
各調査地 の土壌呼 吸量は 地温の増 加とと もに高く なり、 明瞭な季 節変化を 示した。土
壌 呼吸 量と 地温 は高 い相関関係を示 し、この関係式から年間の土壌呼吸量は、ド口ノキ 林 が3.74kgC02/m2/yrlとなり最も高 〈、次いでヤマナラシ林、二セアカシア林、草本群 落 、ミ ヤマ ハン ノキ 林、 裸地 の順 とな った 。裸 地はドロノキ林 の250/0と推定された。
こ のよ うに 、火 山噴 火後の植生回復 の初期段階では、群落の種組成やサイズによって土 壌呼吸量が異なることが わかった。
第5章優占樹種の各器官と林床およびり夕―フオ―ル の養分分布
優占 樹種 であ るニ セアカシア、ド 口ノキ、ミヤマハンノキ、ヤマナラシについて葉、
枝 、 根 の 各 器 官 と 各調 査地 のAo層は8月に 、リ 夕一 フオ ール につ い ては 年間 を通 して 窒 素、 リン 酸、 くニa2+、Mg2十、K゛、Na+等の養分分布や含有率を測定した。分析した 全 ての 養分 量は 、枝 や根 より も葉 に多 く分 布し て いた 。葉 の窒 素含 有率 は、窒素固定 植 物 で あ る ニ セ ア カ シ ア と ミ ヤ マ ハ ン ノ キ が 高か った 。各 調査 地 のAo層に おけ る窒 素 量は 、ミ ヤマ ハン ノキ林が最も多 く、ド□ノキ林、二セアカシア林、ヤマナラシ林、
草 本群 落の 順で あっ た。 リ夕 ―フ オ― ル量 はミ ヤ マハ ンノ キ林 とニ セア カシア林で多 か った 。リ 夕一 フオ ―ル によ る林 床へ の窒 素還 元 量も ミヤ マハ ンノ キ林 で最も多く、
ニ セア カシ ア林 、ド 口ノ キ林 、ヤ マナ ラシ 林の 順 であ った 。こ のよ うに 、窒素固定植 物 であ るミ ヤマ ハン ノキ 林と ニセ アカ シア 林は 、 ヤマ ナラ シ林 とド □ノ キ林に比べ植 生からの窒素還元量が多 いことがわかった。
第6章土壌中の窒素動態
各調 査地 での 土壌 中の 窒素 動態 を把 握す るた め に、 アン モニ ア態 窒素 (NH4゛―N) と硝酸態窒素(N03−―N)を測定した。さらに、窒素無機化(NH4゛mineralization)と 硝化作用(Nitrification)は室内で土壌を培養することによって分析した。その結果、土 壌 中の 窒素 動態 は各 調査地で違うパ ターンを示した。アンモニア態窒素量は裸地を除け ば 、各 調査 地間 に大 きな差は見られ なかったが、成育期間中に高い値を示す季節変化を 示 した 。硝 酸態 窒素 量は裸地、草本 群落、ヤマナラシ林、ド口ノキ林では大きな差は見 ら れな かっ たが 、ミ ヤマハンノキ林 とニセアカシア林では年間を通して高い値を示し、
こ れは 窒素 固定 植物 群落 の特 徴と 考え られ た。 窒 索無 機化 も全 ての 調査 地で5月〜7月 に 高い 値を 示し た。 硝化作用はヤマ ナラシ林で最も高い値を示したが、硝酸態窒素量は 低い値を保っていた。草 本群落とド□ノキ林では硝化作用がほとんど見られなかったが、
窒素固定植物群落である ミヤマハンノキ林とニセアカシア林でfよ他調査地に比べ高い硝 化作用が見られた。
第7章総合考察
土壌 中の 窒素 動態 は、土壌微生物 の分解能の指標である土壌呼吸量とは明瞭な関係は 見 られ なか った 。ミ ヤマハンノキ林 とニセアカシア林のり夕一フオ―ルによる窒素還元 量 は他 調査 地と 比ベ 多かったが、土 壌中の全窒素量は低い傾向を示し、窒素固定植物群 落 では 有機 物の 分解 が早いことを窺 わせた。窒素固定植物群落では必要窒素量めほとん ど が、 窒素 固定 菌に よる空中窒素の 固定によってまかなわれているとの研究もあり、養 分 循 環 に お い て は 独 特 の 群 落 形 成 が 行 わ れ て い る と 考 え ら れ た 。 第8章結論
本研 究に より 、昭 和新山に成立し た種々の土壌―植物生態系の土壌の理化学性、土壌 呼 吸量 、養 分分 布、 土壌窒素量の季 節変化や温度等の環境要因との関係が明らかにされ た 。ま た、 土壌 中の 窒素循環につい て考察した結果、窒素固定植物群落に特徴的な窒素 動 態― 循環 系が ある ことが明らかに された。火山噴火後の植生回復には、植生構造と土 壌 が 対 応 し て お り 、 特 に 土 壌 中 の 窒 素 循 環 が 重 要 な 意 味 を も つ こ と が 示 さ れ た 。
学 位 論 文 審 査の 要 旨 主 査
副 査 副 査 副 査
教授 教授 教授 助教授
高橋 波多野 松田 矢島
邦秀 隆介 彊 崇
: 学位論文題名
Processes of Nutrient Availability in Different Soil‑Pl 、 antECOSyStemSEStabliShedon V01CanOMt .ShOWa  ̄ ShinZan
( 昭 和 新 山 に 成 立 し た 異 を る 土 壌 ― 植 物 生 態 系 に お け る 養 分 可 給 化 過 程 )
本 論 文 は 図27、 表40を 含 む8章 、149頁 の 英 文 論 文 で 、 参 考 論 文6編 が 添 え ら れ て い る 。
本 研 究 は 火 山 噴 火 後 の 新 し い 土 壌 に 成 立 し た 植 生 構 造 が 異 な る 林 分 で 、 土 壌一 植 物 生 態 系 の 養 分 可 給 化 の 特 徴 を 明 ら か に し 、 植 生 と 土 壌 と の 間 で の 養 分 循 環 過 程 を 検 討 す る こ と を 研 究 目 的 と し て い る 。 調 査 地 は 北 海 道 南 西 部 の 昭 和 新 山 に 、 噴 火 後 の 代 表 的 な 植 生 夕 イ プ と し て 、 裸 地 、 草 本 群 落 、 ヤ マ ナ ラ シ 林 、 ミ ヤ マ ハ ン ノ キ 林 、 ド □ ノ キ 林 、 ニセ ア カ シア 林 を 選び 、 調 査及 び 試 料 採取 を 行 って い る 。 得 ら れ た 成 果 は 、 以 下 の よ う に 要 約 さ れ る 。
1. 土 壌 の 理 化 学 性
土 壌 水 分 と 土 壌 有機 物 量 は植 生 高 が高 く な るに 従 っ て 増加 す る 傾向 が み られ 、 有 機 物 量 は 各 調 査 地 と も6〜7月 に 増 加 す る 季 節 変 化 を 示 し た 。pHは 、 窒 素 固 定 植 物 で あ る ミ ヤ マ ハ ン ノ キ と ニ セ ア カ シ ア の 林 分 で 他 の2林 分 よ り や や 低 い 値 と な っ た 。 植 物 群 落 地 で のC/N比 は 裸 地 に 近 〈 、 土 壌 中 の 有 機 物 集 積 量 が 少 な い こ と を 示 し て い る 。 可 給 態 リ ン 、 交 換 性 陽 イ オ ン と 植 生 の 関 係 に は ― 定 の 傾 向 は み ら れ て い な い 。
2. 土 壌 呼 吸 量
各 調 査 地 と も 、 呼吸 量 と 地温 の 高 い相 関 が みら れ 、 明 確な 季 節 変化 を 示 した 。 年 間 の 土 壌 呼 吸 量 は 、 ド □ノ キ 林 が最 も 大 きく 、 ヤ マナ ラ シ 林 、ニ セ ア カシ ア 林 、 草 本 群 落 、 ミ ヤ マ ハ ン ノ キ 林 、 裸 地 の 順 と な っ た 。 裸 地 は ド 口 ノ キ 林 の25% で 最 も 小 さ 〈 な っ て お り 、 群 落 の 種 組 成 や サ イ ズ に よ る 違 い が 反 映 さ れ て い る と 推 察 さ れ る 。