〔研 究 ノ ー ト〕
国 際 物 品 売 買 国 連 条 約 第79条 に関 す る
各 国 裁 判 例 と仲 裁 判 断 例
損害賠償責任 が 「
障害」 によ り免責 される場合
北
山
修
悟
は じめ に 1概 説 2第79条 の 位 置 づ け と適 用 範 囲 (1)類 似 の法 理 との 関 係 (2)契 約 上 の リス ク配 分 との 関 係 (3)不 適 合 物 品 の 引 渡 し (4)第79条 の適 用 肯 定 例 3「 障 害 」 の 存 在 と い う要 件 (1)「 障害 」 の 存 否 の判 断 (2)売 主 へ の供 給 者 の不 履 行 (3)履 行 の費 用 ま た は 目 的物 の 価 値 の変 化 0 4 R J ρ U 7 8 9 1 障害 が 「支 配 」 を 超 え て い る と い う要 件 障害 を 「考 慮 」 す る こ と が で き なか った と い う要 件 障害 の 「回 避 」 「克 服 」 が で き な か った と い う要 件 証 明責 任 自己 の 使 用 した第 三 者 に よ る不 履 行(第79条(2)) 免 責 の 効 果(第79条(5)) 第79条 と不 可 抗 力 条 項 と の 関 係 74-120は じ め に 本 稿 は 、 国 際 物 品売 買 国 連 条 約 の 第79条(債 務 者 の支 配 を 超 え た 障 害 に よ る不 履 行)に 関 す る数 多 くの各 国 裁 判 例 ・国 際 商 事 仲 裁 判 断 例 の な か か ら、 そ れ らの 分 布 状 況 と一 般 的 な 傾 向 を知 るた め に重 要 と判 断 さ れ た も の を 選 択 し、 ご く簡 単 な 解 説 を付 して 紹 介 す る も ので あ る。 本 稿 は も と も と、 多 くの共 同執 筆 者 に よ る同 条 約 全 体 に わ た って の く判 例 コ ンメ ン タ ー ル〉 の た め の原 稿 と して執 筆 され た もの で あ るが 、 そ の 判 例 コ ンメ ン タ ー ル は未 だ 刊 行 さ れ る に至 って い な い。 と こ ろが 、 本 年3月 11日 に、 東 日本 大 震 災 が 発 生 した 。 広 範 囲 に わ た る激 しい 揺 れ 、 ひ き続 い て の津 波 、 そ して原 発 事 故 。 これ ら未 曽有 の 大 災 害 は、 ま さ に 同条 約 の 第 79条 に い う 「障 害 」 に 該 当 す る可 能 性 が 高 い も ので あ る。 そ こ で、 今 後 の 震 災 後 復 興 の 過 程 に お い て 、 わ ず か なが らで あ って もそ の 法 律 実 務 上 の 支 援 と な る こ と を期 待 して 、 判 例 コ ンメ ン ター ル 編 集 部 の 了 解 を得 た うえ で 、 こ こ に本 稿 を 公 表 す る こ と と した 。 以 下 の う ち の 解 説 の 部 分 中 で は 、 参 照 し た 文 献 は 省 略 形 で 示 し て あ る 。 そ れ ら は 以 下 の と お り で あ る 。 ・ シ ュ レ ヒ ト リ ー ム:ペ ー タ ー ・ シ ュ レ ヒ ト リ ー ム(内 田 貴=曽 野 裕 夫 訳)「 国 際 統 一 売 買 法 成 立 過 程 か ら み た ウ ィ ー ン 売 買 条 約 』(商 事 法 務 研 究 会 、1997年) ・曽 野 一山 手:曽 野 和 明=山 手 正 史 『国 際 売 買 法 」(青 林 書 院、1993 年) ・注 釈II:甲 斐 道 太 郎 ほ か 編 『注 釈 国 際 統 一 売 買 法IIウ ィ ー ン 売 買 条 約 」(法 律 文 化 社 、2003年) ・S/S:IngeborgSchwenzered .,Schlechtriem&Schwenzer: Commen亡aryon伽UNConventionon亡 んeln亡erna亡TonalSale ofGoods(CISG),ThirdEdition(OxfordUniversityPress, 2010) ・Honnold:JohnO .Honnold,EditedandupdatedbyHarryM. Flechtner,UniformLawforInternationalSalesunderthe 1980UnitedNationsConvention,FourthEdition(KluwerLaw International,2009) 74…119 (74)
な お、 本 稿 は、2009年2月 に す で に脱 稿 して い た もの で あ り、 今 回 は限 られ た 時 間 の な か で そ れ に若 干 の 加 筆 を した だ けで あ る。 具 体 的 に は、1 件 の 重 要 な 最 近 の判 決(79-20)を 加 え 、 参 照 文 献 の1つ で あ るS/Sの 新 し く出 た 版(第3版)と の照 合 を 行 う こ と しか で き な か っ た。 そ の た め 、 先 行 著 作 で あ る井 原 宏=河 村 寛 治 編 『判 例 ウ ィ ー ン売 買 条 約 」(東 信 堂 、 2010年)を 十 分 に参 照 し得 て い な い。 この点 を ご容 赦 願 い た い。 第79条 (1)当 事 者 は、 自 己 の義 務 の 不 履 行 が 自 己 の支 配 を 超 え る 障 害 に よ って 生 じた こ と及 び 契 約 の 締 結 時 に当 該 障 害 を考 慮 す る こ と も、 当該 障 害 又 は そ の 結 果 を 回 避 し、 又 は 克 服 す る こ と も 自 己 に 合 理 的 に期 待 す る こ とが で き な か っ た こ とを 証 明 す る場 合 に は 、 そ の 不 履行 に つ い て責 任 を 負 わ な い。 (2)当 事 者 は、 契 約 の 全部 又 は一 部 を 履 行 す る た め に 自 己 の 使 用 した第 三 者 に よ る不 履 行 に よ り 自 己 の 不 履 行 が生 じた 場 合 に は 、 次 の(a)及 び(b)の 要 件 が 満 た され る と きに 限 り、責 任 を 免 れ る。 (a)当 該 当 事 者 が(1)の 規 定 に よ り責 任 を 免 れ る こ と。 (b)当 該 当事 者 の 使 用 した第 三 者 に(1)の 規 定 を適 用 す る と した な ら ば、 当 該 第 三 者 が 責 任 を 免 れ るで あ ろ う こ と。 (3)こ の条 に規 定 す る免 責 は、(1)に 規 定 す る障 害 が 存 在 す る間、 そ の 効 力 を 有 す る。 (4)履 行 を す る こ とが で き な い当 事 者 は、 相 手 方 に対 し、(1)に 規 定 す る障 害 及 び そ れ が 自 己 の 履 行 をす る能 力 に及 ぼ す 影 響 に っ い て通 知 し な け れ ば な ら な い。 当 該 当 事 者 は 、 自 己 が そ の 障 害 を 知 り、 又 は知 る べ きで あ った 時 か ら 合 理 的 な 期 間 内 に相 手 方 が そ の 通 知 を受 けな か った場 合 に は 、 そ れ を受 け な か った こ と によ って 生 じた 損 害 を 賠 償 す る責 任 を負 う。 (5)こ の 条 の規 定 は、 当 事 者 が 損 害 賠 償 の 請 求 を す る権 利 以 外 の こ の条 約 に基 づ く権 利 を 行 使 す る こ とを 妨 げ な い。 1概 説 (1)第79条 は、 契 約 の一 方 当 事 者 が そ の 義 務 の 不 履 行 の責 任 を 負 わ な い状 況 、 及 び、 義 務 か ら の免 責 の 適 用 が あ る場 合 の救 済 方 法 を規 定 して い る。 第1項 は、 次 の よ う な要 件 を 満 たす 場 合 に は、 不 履 行 当 事 者 が そ の 義 務 の不 履 行 の 責 任 か ら解 放 さ れ る 旨を 規 定 して い る。 す な わ ち、 ① 当該 当 事 者 の不 履 行 が 「障 害 に よ る」 もの で あ った こ と、 ② そ の 障 害 が不 履行 当 事 者 の 「支 配 を超 え る」 もの で あ っ た こ と、 ③ 不 履 行 当 事 者 が そ の 障 害 を 契 約 の締 結 時 に 「考 慮 す る」 こ とを 合 理 的 に 期 待 す る こ とが で き な か っ た 74-118
こ と、 ④ 不 履 行 当事 者 が そ の 障害 を 「回 避 す る」 こ と を 合 理 的 に期 待 す る こ と が で きな か った こ と、 ⑤ 不 履 行 当 事 者 が そ の障 害 又 は そ の 結 果 を 「克 服 す る」 こ と を合 理 的 に期 待 す る こ とが で きな か った こ と、 で あ る。 (2)第79条(2)は 、 一 方 当事 者 が 「契約 の 全 部 又 は一 部 を履 行 す るた め に 」 第 三 者 と契 約 し、 そ の 第 三 者 が履 行 を しな か っ た と い う場 合 に適 用 され る。 (3)第79条(3)は 、 免 責 の期 間 を 、 免 責 を正 当 化 す る 障 害 が 継 続 す る間 に 限 定 して い る。 第79条(4>は 、 不 履 行 にっ き免 責 を主 張 した い当 事 者 に 、 障 害 の発 生 とそ れ が 自 己 の 履 行 の能 力 に与 え る影 響 に っ き、 他 方 当事 者 に対 して 通知 を す る こ とを要 求 して い る。第79条(4>の 第2文 は、履 行 を しなか っ た当 事 者 が そ の障 害 を 知 り、 又 は 知 るべ き で あ っ た 時 か ら合 理 的 な期 間 内 に そ の よ うな 通 知 を しな か った場 合 に は、 適 切 な通 知 を 怠 っ た 当事 者 は通 知 の不 着 に よ っ て生 じた 損 害 を賠 償 す る責 任 を 負 う こ とに な る 旨 を 規 定 し て い る。 (4)第79条(5)は 、 不 履 行 当 事 者 が 免 責 を認 め られ る場 合 の 、 そ の不 履 行 に よ って損 害 を被 った 他 方 当 事 者 が 行 使 可 能 な 救 済 方 法 に っ き、 第79条 が 限 定 さ れ た 効 果 しか有 しな い こ とを 明 らか に して い る。 す なわ ち、 第79条 ⑤ は、 免 責 は被 害 当事 者 の損 害 賠 償 請 求 の み を 排 除 し、 この 条 約 の下 で の 当 事 者 の 他 の い か な る権 利 を も排 除 す る もの で は な い こ とを 宣 言 して い る。 2第79条 の 位 置 づ け と適 用 範 囲 (1)類 似 の 法 理 と の 関 係 第79条 は 、 不 履 行 当 事 者 の 過 失 の 有 無 や 帰 責 事 由 の 有 無 を 問 題 と す る も の で は な い 。 ま た 、 い わ ゆ る 「不 可 抗 力 」 や 「履 行 不 能 」 と 同 一 視 で き る も の で も な い 。 第79条 は 、 既 存 の い ず れ の 国 内 法 理 と も 混 同 な い し 同 一 視 さ れ な い よ う に 、 注 意 深 く設 計 さ れ た 規 定 で あ る(シ ュ レ ヒ ト リ ー ム144-145頁 、 曽 野 一山 手[152][153]、 注 釈H(鹿 野)201-206頁)。 実 際 の 裁 判 例 ・仲 裁 判 断 例 の 中 に は 、 第79条 の 下 で の 免 責 は 「履 行 不 能 」 に 等 し い 場 合 に の み 認 め られ る も の で あ る こ と を 示 唆 す る も の が あ る。 す な わ ち 、79-1、79-2、79-3は 、 売 主 は 、 適 切 な 目 的 物 い ず れ も種 類 物 で あ る が 市 場 で は も は や 入 手 で き な い 場 合 に の み 、 そ の 引 渡 し の 不 履 行 の 責 任 か ら免 責 さ れ る こ と を 示 唆 し て い る 。 ま た 、79-4は 、 第79条 の 規 定 が 、 イ タ リ ア 国 内 に お け る 事 情 変 更 法 理 で あ る 「過 度 の 負 担 」 法 理 (eccessivaonerositasopravvenuta)と は 異 な る も の で あ る と 述 べ て い る 。 74…117 (76)
な お 、 後 出 の79-12は 、 第79条 に よ る免 責 の可 能 性 を 、 不 履 行 当 事 者 の 側 の 不 誠 実 な行 為 の 有 無 と結 び っ け て 判 断 して い る が 、 こ れ は、 障 害 の 「克 服 」 可 能 性 の判 断 の一 側 面 を表 して い る もの と解 され る。 79-1ド イ ッ:ハ ン ブ ル ク 上 級 地 方 裁 判 所(OLGHamburg)1997年7月 4日 http://cisgw3.law.pace.edu/cases/97070491.html 売 主Y社(フ ラ ン ス)が 買 主X社(ド イ ッ)に ト ラ ッ ク20台 分 の トマ ト 缶 詰 の 売 買 契 約 を 申 し込 み 、Xが こ れ を 承 諾 し た 。 しか し、 ト ラ ッ ク1台 分 だ け しか 引 渡 しが な か っ た の で 、Xは 契 約 解 除 の 意 思 表 示 を し、 引 渡 し が な か っ た 分 に っ い て の 未 払 い 代 金 と 、Yの 契 約 違 反 か ら生 じ た 損 害 の 賠 償 額 と を 相 殺 す る と主 張 し た う え で 、 そ の 残 額 をYに 対 して 請 求 し た 。 裁 判 所 はXの 請 求 を 認 容 し、 契 約 価 格 と 解 除 時 の 時 価 と の 差 額 を 損 害 賠 償 額 と認 め 、Xの 相 殺 の 主 張 も認 め た が 、 こ の 結 論 に 至 る 過 程 で 、 次 の よ う に 述 べ た 。 す な わ ち 、 売 買 契 約 締 結 後 の フ ラ ン ス で の 大 雨 は トマ トの 収 穫 を 減 少 さ せ 、 トマ トの 市 場 価 格 の 上 昇 を も た ら し た が 、 引 き 渡 す べ き 種 類 の 目 的 物 が 皆 無 と な っ た の で な い こ と に は 疑 い が な く、 ま た 、 買 主 が 望 ん だ と して も引 渡 し が 不 可 能 で あ る 旨 を 売 主 は 知 らせ て も い な か っ た 、 そ れ ゆ え 、 第 79条 に よ っ て 売 主 の 不 履 行 責 任 が 免 責 さ れ る理 由 は 存 在 し な い 。 79-2ド イ ツ:ハ ン ブ ル ク 上 級 地 方 裁 判 所(OLGHamburg)1997年2月28 日 CLOUTNo.277,http://cisgw3./aw.pace.edu/cases/97022891.html 買 主X(イ ギ リス)と 売 主Y(ド イ ッ)が 、 中 国 か ら の 鉄 モ リ ブ デ ン の 供 給 契 約 を 締 結 した 。 し か し、Yは 自 身 が 中 国 の 供 給 元 か ら 目 的 物 の 引 渡 し を 受 け られ な か っ た の で 、 目 的 物 はXに 引 き 渡 さ れ な か っ た 。 引 渡 し に っ い て の 付 加 期 間 の 経 過 後 、Xは 、 第 三 者 と 代 替 取 引 を 行 い 、Yに 対 して 当 初 の 契 約 価 格 と代 替 取 引 価 格 と の 差 額 に っ き 損 害 賠 償 を 請 求 し た 。 こ れ に 対 し てYは 、 契 約 条 項 中 の 不 可 抗 力 条 項 に よ る 免 責 、 及 び 、 第79条 に よ る 免 責 を 主 張 し た 。 裁 判 所 は 、XY間 の 契 約 の 解 除 を 認 め 、 第75条 に 基 づ くXのYに 対 す る 損 害 賠 償 請 求 を 認 め た が 、Yの 免 責 の 主 張 に 関 し て は 、 次 の よ う に 判 示 し 74-116
た。 「Yは 不 可 抗 力 条 項 に よ っ て もCISG第79条 に よ って も免 責 さ れ な い。 契 約 中 の 不 可 抗 力 条 項 は第79条 よ り も広 い効 果 を有 す る免 責 を導 く もの と は認 め られ な い の で、 同 条 項 に っ き検 討 す る必 要 は な い。 … … 売 主 へ の 供 給 元 か らの 目的 物 の 引 渡 しは 目的 物 の 一 般 的 な 調 達 リ ス クの 一 部 で あ り、 契 約 に お け る典 型 的 な 意 識 に従 うな らば、 当該 契 約 が一 定 の 製 品 や保 管 物 に限 定 さ れ て い る の で な い場 合 に は、 売 主 が そ の リス クを 負 う。 た とえ 供 給 元 が売 主 へ 引 渡 しを せ ず 、 か っ 、 当 該 供 給 元 の行 為 が 予 見 不 可 能 で あ り 契 約 違 反 で あ る と して も、 売 主 は 免 責 さ れ な い。 市 場 に 入 手 可 能 な代 替 品 が 存 在 す る限 り、 そ の よ うな 障害 は克 服 可 能 で あ る。 … … そ れ ゆ え、 目的 物 が 類 似 の 品 質 で は 入 手 不 可 能 で あ る場 合 や、 契 約 の締 結 時 に売 主 が こ の こ と を考 慮 に入 れ る必 要 が な か った 場 合 に の み 、 調 達 リス クを 超 え る も の と して売 主 は免 責 され る。 … … ま た、Yは 、 他 所 か ら 目 的物 を 調 達 す る た め に よ り高 い代 金 を 支 払 わ ね ば な らず 相 当額 の 金 銭 的損 害 を 被 る こ と に な る と い う事 実 に よ って も免 責 さ れ な い。 売 主 は一 般 的 に 、 他 所 で 目的物 を 調 達 す る こ と に関 して 相 当 額 の追 加 費 用 支 払 い の リス クを 負 っ て お り、 さ らに は、 調 達 リス ク を 甘 受 しな が ら一 定 の 価格 以 下 で 目的 物 を調 達 で き な か った場 合 に生 じる取 引 上 の損 失 の リス ク を 負 って い る。 中 国 の鉄 モ リブ デ ンに支 払 わ ね ば な らな か った市 場 価 格 が3倍 に な った と して も、 そ れ は 犠 牲 の絶 対 的 な限 界 を 超 え る もの で は な い。 非 常 に投 機 的 な側 面 を有 す る 部 門 に お いて 取 引 を行 う当 事 者 に っ いて は、 合 理 性 の制 限 は非 常 に 高 い と こ ろ に あ る。」 79-3オ ラ ン ダ:シ ェ ル トヘ ン ボ ッ シ ュ 地 方 裁 判 所(Rb「s-Hertogenbosch) 1998年10月2日(MalaysiaDailyIndustriesPte.Ltd.v.1)airexHol-land、Bの http://cisgw3.law.paceedu/cases/981002nl.html 売 主Y(オ ラ ン ダ)と 買 主X(シ ン ガ ポ ー ル)が 、 粉 ミル ク の 売 買 に っ き い くっ か の 契 約 を 締 結 し た 。 放 射 能 に 汚 染 さ れ た 食 品 に 対 す る シ ン ガ ポ ー ル 政 府 の 輸 入 禁 止 令 の 条 件 を 満 た す た め に 、XとYは 、 粉 ミル ク を シ ン ガ ポ ー ル 当 局 に よ っ て 汚 染 さ れ て い な い も の と認 め ら れ る よ う な 一 定 割 合 以 下 の 放 射 能 しか 含 ま な い も の に 限 る こ と に 合 意 し た 。 し か し、 契 約 の 締 結 後 、Yは 必 要 な 粉 ミル ク を 見 っ け る こ と が で き ず 、Xへ の 引 渡 しが で き な 74…115 (78)
か った。 そ こで 、XがYに 対 して 損 害 賠 償 を請 求 した 。 シ ンガ ポ ー ル政 府 の 規 制 が 不 可 抗 力 ま た は予 見 不 可 能 な 事 情 だ った とす るYの 主 張 に つ き、 裁 判 所 は以 下 の よ うに 述 べ て退 けた 。 「不 可 抗 力(forcemajeure)の 抗 弁 の 適 用 可 能 性 は 、 ウ イ ー ン売 買 条 約 第79条 とオ ラ ン ダ法 の ど ち らの 下 で も否 定 され る べ きで あ る。 契 約 締 結 の 時 点 で シ ンガ ポ ー ル の 当該 基 準 の 存 在 をYが 知 って い た とい う事 実 が 認 め られ る こ と(下 記 の点 を 参 照)は 別 と して 、Yが 契 約 か ら生 じる 自己 の 義 務 を 果 たす た め の(Yの 支 配 を 超 え た)事 実 上 の 障 害 は何 も なか った の で あ る。 当 該 基 準 に基 づ くな らば 、 当 事 者 に と って の リス ク は、 最 悪 の 場 合 で も当 該 粉 ミル クが 破 棄 され る で あ ろ う こ とで あ り、 そ れ はYに と って の 不 可 抗 力 で は な い 。 … …Yは1993年9月 に は す で に シ ンガ ポ ー ル政 府 の 厳 し い要 求 の 内 容 を 知 って い た。 問 題 と な る契 約 は1994年 の 終 わ りか ら 1995年 の 初 め に か け て 締 結 され た の で あ る か ら、 民 法 第6:258条 に 基 づ く 予 見 不 可 能 な 事 情 の抗 弁 もま た認 め られ な い。」 裁 判 所 はYの そ の 他 の主 張 もす べ て 退 け 、Yに 対 して 損 害 賠 償 を 命 じ た。 79-4イ タ リ ア:モ ン ザ 地 方 裁 判 所(TribunalCivildiMonza)1993年1 月14日(NuovaFucinatiS.P.A.v.FondmetalllnternationalA.B.) CLOUTNo.54,http://cisgw3.law.pace.edu/cases/930114i3.htm1 買 主Y(ス ウ ェ ー デ ン)に 売 買 目 的 物 で あ る 鉄 ク ロ ム の 引 渡 し を し な か っ た 売 主X(イ タ リ ア)が 、 目 的 物 の 価 格 が 契 約 締 結 の 後 か ら 引 渡 し の 前 ま で に43.71パ ー セ ン ト上 昇 し た こ と を 理 由 に 、 事 情 変 更 イ タ リ ア 民 法 1463条 以 下 の 「過 度 の 負 担 」(eccesivaonerositasopravvenuta)に 関 す る 規 定 を 根 拠 と して 、 売 買 契 約 の 解 除 を 主 張 し た 。 裁 判 所 は 、CISG第79条 と イ タ リ ア 民 法 の 「過 度 の 負 担 」 法 理 に 関 す る 規 定 と を 比 較 し て 、 第79条 は 解 除 と い う救 済 方 法 を 定 め た 規 定 で は な く、 「CISGの 下 で は 、 解 除 と い う 救 済 方 法 は 契 約 違 反 に っ き規 定 さ れ て い る の で あ り 、 『過 度 の 負 担 」 法 理 は 、 抗 弁 又 は 契 約 解 除 の 根 拠 と し て 主 張 さ れ る 場 合 に は 、CISGの 構 造 に 適 合 し な い 。 仮 に 本 件 にCISGが 適 用 さ れ た と して も、 そ の 要 件 が 事 実 と し て 満 た さ れ て い る か 否 か に か か わ らず 、 引 渡 し義 務 の 後 発 的 な 過 度 の 負 担 性 を 基 礎 と す るXの[解 除 の]主 張 が 認 め ら れ な い こ と は 明 ら か で あ る 」 と判 示 し た 。
(2)契 約 上 の リ ス ク 配 分 と の 関 係 以 下 に 掲 げ る79-5か ら79-8(及 び 、 前 出 の79-2、 後 出 の79-10、79-16) の よ う に 、 多 く の 裁 判 例 ・仲 裁 判 断 例 が 、 第79条 の 適 否 の 判 断 に お い て は 、 免 責 を 主 張 す る 当 事 者 が 契 約 を 締 結 し た 時 に 引 き 受 け た リ ス ク の 評 価 が 焦 点 と な る 旨 を 述 べ て い る 。 す な わ ち 、 第79条 に よ る 免 責 の 問 題 は 、 当 事 者 間 で の 契 約 上 の リス ク 配 分 の 解 釈 に 密 接 に 関 わ っ て い る。 こ こ で は 、 フ ラ ン ス の 裁 判 所 の 判 例 で あ る79-6と79-7に 注 目 し た い 。 こ れ ら は い ず れ も リス ク 配 分 に 関 す る 契 約 条 項 の 有 無 を 重 視 して お り、 そ の 意 味 で 、 当 事 者 間 の リス ク 配 分 に っ い て の1っ の 解 釈 の 基 準 を 明 示 して お り、 リス ク 配 分 に 関 す る 当 事 者 意 思 の 解 釈 に お け る 裁 量 の 幅 に 一 定 の 制 限 を 付 し て い る よ う に 思 わ れ る 。 な お 、 免 責 に っ い て の リス ク 分 析 ア プ ロ ー チ は 、79-8に 見 ら れ る よ う に 、 危 険 負 担 の 問 題(第66条 以 下)と 関 連 す る 場 合 に も用 い ら れ て い る 。 79-5ド イ ツ:ハ ン ブ ル ク 商 工 会 議 所 仲 裁 裁 判 所(SchiedsgerichtderHan-delskammerHamburg)1996年3月21日 CLOUTNo.166,http://cisgw3./aw.pace.edu/cases/96032191.html 売 主X社(香 港)と 買 主Y社(ド イ ッ)が 、 中 国 で 製 造 さ れ た 製 品 の 独 占 的 供 給 と 販 売 に 関 す る 基 本 契 約 を 締 結 し た 。 こ の 基 本 契 約 で は 、 売 主 は 中 国 の 製 造 業 者 と の 取 引 関 係 に 責 任 を 負 い 、 買 主 は ヨ ー ロ ッパ で の 製 品 の 販 売 に っ き 責 任 を 負 う こ と と な っ て い た 。XとYは こ の 基 本 契 約 に 基 づ き 定 期 的 に 個 別 の 製 品 売 買 契 約 を 締 結 し履 行 し て い た が 、 そ の 後 、 中 国 の 製 造 業 者 の1人 が 財 務 上 の 問 題 か ら 注 文 さ れ た 製 品 をXに 引 き 渡 す こ と が で き な く な っ た 。XはYに 対 し て 、 過 去 に 引 き 渡 し た 製 品 の 一 部 に つ い て の 未 払 い 代 金 が 支 払 わ れ な い 限 り は 当 該 個 別 契 約 上 の 義 務 を 履 行 し な い と 主 張 し た 。 そ の た め 、YはXと の 取 引 関 係 を 終 了 さ せ た 。 Xは 仲 裁 手 続 き を 申 し 立 て 、 未 払 い 代 金 の 支 払 い を 請 求 した が 、 こ れ に 対 し てYは 、 個 別 売 買 契 約 の 違 反 と 基 本 契 約 の 違 反 の 両 方 に っ い て の 逸 失 利 益 の 賠 償 を 反 訴 請 求 し 、 そ れ ら と相 殺 す る と 主 張 し て 、Xか ら の 支 払 い 請 求 を 拒 絶 し た 。 仲 裁 廷 は 、XのYに 対 す る 代 金 請 求 を 認 め る と 共 に 、YのXに 対 す る 個 別 売 買 契 約 の 違 反 に 基 づ く賠 償 請 求 を 認 め て 、 相 殺 の 主 張 も 認 め た 。 た だ し、 基 本 契 約 の 違 反 に 基 づ く賠 償 請 求 は 認 め な か っ た 。 そ し て 、Xへ の 中 74…113 (80)
国 の製 造 業 者 の財 務 上 の 問 題 に 関 して は、 次 の よ うに判 示 した。 「損 害 賠 償 請 求 は第79条 に よ って は排 斥 され な い。 … … 供 給 下 請 人[中 国 の製 造 業 者]は 、 相 当 額 の現 金 の 早 急 な 入手 を条 件 と して 、 そ の事 業 の 継 続 とXへ の 製 品 の 引 渡 しを 約 束 した 。Xの 製 造 業 者 又 は供 給 下 請 人 に 対 す る立 場 は、 第79条 ② にお け る 自己 の 使 用 す る第 三 者 又 は 自 己 の従 業 員 に 対 す る立 場 と同 じで はな い。 製 造 業 者 に お け る財 務 上 の 困 難 と そ の現 金 の 必 要 性 は、 不 可 抗 力(forcemajeure)や 経 済 的 不 能(economicimpossi-bility)や 過 度 の 負 担(excessiveonerousness)の よ うな 、 管 理 不 可 能 な リス クで はな く、 ま った く例 外 的 な 事 態 で もな い。 む しろ 、 供 給 者 に 関 係 す る リス ク はXに よ り負 担 さ れ るべ き もの で あ り、 た と え そ れ が よ り大 き い場 合 で も同 様 で あ る。 さ らに、Xは 履 行 の た め の 自 己 の財 務 上 の能 力 を 保 証 しな けれ ば な らず 、 それ は債 務 者 の責 任 の 範 囲 に 含 ま れ る典 型 的 な 要 素 で あ る。 た とえ 後 発 的 か っ 予 見 不 可 能 な 事 態 に よ ってXが 必 要 な手 段 を 失 った場 合 に お い て も、Xは 、 履 行 の た め の 財 務 上 の 能 力 に っ いて の 自 己 の 責 任 か ら は解 放 さ れ な い。 同様 の こ と は 、 供 給 下 請 人 の 政 府 か らの 圧 力 に よ る国 家 融 資 金 の 回 収 の結 果 と して の、 中 国 の供 給 下 請 人 と の関 係 に お け る現 金 の 不 足 に つ い て も妥 当 す る。 … …契 約 に お け る リス ク の配 分 だ け が こ こで は問 題 とな るの で あ」 る。 79-6フ ラ ン ス:コ ル マ ー ル 控 訴 院(CAColmer)2001年6月12日 (SocieteRomayAGv.SARLBehrFrance) CLOUTNo.480,http://cisgw3ユaw.pace.edu/cases/010612f1.htm1 自 動 車 用 の エ ア コ ン の 製 造 業 者 で あ るY(フ ラ ン ス)が 、1991年4月 に 、 そ の 部 品 供 給 業 者 で あ るX(ス イ ス)と 「共 同 事 業 契 約 」 を 結 ん だ 。Xと Yは こ の 契 約 に お い て 、Yの 顧 客 で あ るA(ト ラ ッ ク 製 造 業 者)のYへ の 注 文 量 に 応 じ て 、8年 の 間 に 最 少 で20,000個 の 外 装 部 品(エ ア コ ン の ポ リ ウ レ タ ン製 カ バ ー)がXか らYへ 引 き 渡 さ れ る こ と を 予 定 し て い た 。 こ の 外 装 部 品 に っ い て は 仕 様 の 詳 細 が 定 め ら れ 、 そ の 価 格 に っ い て も契 約 期 間 全 体 に わ た っ て 一 定 の 算 出 方 法 が 定 め ら れ て い た 。 し か し、 ト ラ ッ ク市 場 の 突 然 の 不 況 と い う 理 由 に よ っ て 、AがYに 対 して エ ア コ ン の 購 入 価 格 の 大 幅 な 値 下 げ を 言 い 渡 し、Aの 購 入 価 格 はXがYに 売 却 し て い た 外 装 部 品 の 価 格 よ り も50パ ー セ ン ト下 回 る も の と な っ た 。Yは1993年12月 に 、Xが 製 作 す る 外 装 部 品 の 使 用 を 取 り止 め た い 旨 をXに 伝 え 、Xへ の 注 文 を 打 ち
切 っ た。 そ の 時 点 で は 、20,000個 の う ち の8,495個 の 引 渡 しだ け が 終 了 し て い た。 そ の 後 、XY間 で 補 償 にっ い て の 合 意 が 整 わ ず 、1996年6月 に 、 XはYに 対 して 損 害 賠 償 を 求 め る訴 訟 を 提 起 した。 1審 の コ ル マ ー ル商 事 裁 判 所 は、XY問 の 「共 同 事 業 契 約 」 は い わ ゆ る 「枠 契 約 」 で あ り、 当 事 者 に 確 定 的 な購 入 義 務 を生 じさせ る もの で は な く、 CISGに い う売 買 契 約 に は該 当 しな い と して、Yの 請 求 を棄 却 した 。 こ れ に対 して 控 訴 院 は、XY間 の 契 約 の 具 体 的 な 内容 を検 討 し、 同契 約 はCISGに い う売 買 契 約 に該 当 す る と した。 そ の 上 で 、 控 訴 院 は、Yは 契 約 関 係 の 終 了 時 点 で8,495個 の 外 装 部 品 の 引 渡 しを 受 け て い た が 、Yは20,000個 を 受 領 し代 金 を 支 払 う意 図 で あ っ た の で 、Yは そ の義 務 を 未 だ 履 行 して い な い と した。 そ して 、Yの 顧 客 で あ るAの 大 幅 な 契 約 内容 の 変 更 が 第79条 に よ る免 責 の 根 拠 と な る の で な い 限 り、XはYに 対 して 第61条 に よ って 損 害 賠 償 を 請 求 で き る と した 。 これ に 続 け て 控 訴 院 は 、 このAに よ る契 約 内 容 の 変 更 は 、Xに よ って 製 作 さ れ た 部 品 の使 用 を 続 け る 場 合 のYの コ ス トを 非 常 に大 き い も の に は す るが 、 「経 験 が示 す と こ ろ に よ れ ば、8年 と い う期 間 の 間 で は、 価 格 の 変 動 は 、 た と え そ れ が 突 然 で重 大 な もの で あ っ た と して も、 そ れ は 例 外 的 な こ とで も、 ま して 予 見 不 可 能 な こ と で もな い。 さ ら に、1991年4月 に締 結 され た もの の よ う な長 期 的 か っ 特 徴 的 な供 給 契 約 を 結 ん だ場 合 に は、Yは 、 国 際 市 場 で事 業 を営 む 経 験 を有 す る専 門 家 と して 、Xに 対 して負 う契 約 上 の 義 務 の履 行 の 保 証 、 ま た は、 そ れ ら契 約 義 務 の 改 訂 の、 い ず れ か を手 配 す る べ きで あ った 。 さ もな けれ ば、Yは 不 履 行 の リス クを負 うべ きで あ る。 … … 以 上 の こ とか ら、Yは 第79条 の 規 定 を援 用 す る こ と はで き な い 」 と判 示 し た。 結 論 と して 控 訴 院 は、Xの 損 害 賠 償 請 求 を 認 め、 そ の上 で 、 損 失 軽 減 の 可 能 性(第77条)を 考 慮 に入 れ た 上 で の賠 償 額 を確 定 す る ため に専 門 家 に 鑑 定 を依 頼 す る こ とを 決 定 した。 79-7フ ラ ン ス:破 棄 院(CourdeCaseation)2004年6月30日(Societe RomayAGv.SARLBehrFrance) http://cisgw3.law.pace.edu/cases/040630fl.htm/ 事 実 関 係 に つ い て は 、79-6(本 件 の 原 審 判 決)を 参 照 。 第79条 の 適 用 の 可 否 に 関 す る 控 訴 院 の 判 断 に っ き 、 破 棄 院 は 次 の よ う に 74…111 (82>
判 示 した。 「控 訴 院 は、Yが 、Aか らの 価 格[引 き下 げ]指 示 を 、 エ ア コ ン ・カバ ー の 価 格 の再 交 渉 の必 要 性 の根 拠 とす る の で はな く、 は るか に少 な い報 酬 に よ る別 の 部 品 の必 要 性 の根 拠 と した と判 示 した 。 しか しな が ら、Yは こ の 目的 物 の 販 売 条 件 の変 更 の予 見 不 可 能 性 を証 明 しな か った 。 国 際 取 引 実 務 に通 じて い る専 門 家 と して 、 保 証 ま た は契 約 改 訂 の た め の 契 約 条 項 を 規 定 す る こ と は、Yの 役 割 で あ っ た。 控 訴 院 は 、 そ の よ う な条 項 が 規 定 し落 と さ れ て い た と い う事 実 を 追 求 し、 そ の よ う な 条 項 が 存 在 しな い場 合 に は CISG第79条 の 規 定 か ら利 益 を得 る こ と な しに 不 履 行 の リス ク を 負 うの は Yで あ る こ と を矛 盾 な しに導 き出 した点 で 正 当 で あ」 る。 79-8ハ ン ガ リ ー:ブ ダ ペ ス ト商 工 会 議 所 仲 裁 裁 判 所(ArbitrationCourt oftheChamberofCommerceandIndustryofBudapest)1996年12月10日 CLOUTNo.163,http://cisgw3.law.pace.eduses/961210h1.html 売 主 で あ るA社(ユ ー ゴ ス ラ ビ ア)が 買 主 で あ るY社(ハ ン ガ リ ー)に キ ャ ビ ア を 売 却 し、 引 き 渡 し た 。 売 買 契 約 で は 、Yは キ ャ ビ ア をAの 住 所 地 に お い て 引 き 取 り、 ハ ン ガ リー の 自 社 施 設 へ 運 搬 し な け れ ば な ら な い と さ れ て い た 。 ま た 、 代 金 の 支 払 期 日 は 目 的 物 引 渡 し の2週 間 後 と定 め ら れ て い た が 、 しか し、 そ の 時 点 で 国 連 に よ る ユ ー ゴ ス ラ ビ ア に 対 す る 輸 出 禁 止 措 置 が ハ ン ガ リ ー 国 内 で 発 効 し て い た 。Aは 代 金 債 権 を キ プ ロ ス のX社 に 譲 渡 し、Yは そ の 譲 渡 を 承 認 し て 、 何 度 かXへ の 支 払 を 試 み た が 、 輸 出 禁 止 措 置 の 影 響 も あ り、 結 局YはXに 支 払 が で き な か っ た 。 そ の た め 、X は 譲 り受 け た 代 金 債 権 及 び そ の 利 息 の 支 払 い を 求 め て 仲 裁 を 申 し立 て た 。 Yは 、 自 分 は キ ャ ビ ア の 占 有 を 現 実 に 取 得 す る こ と は な か っ た の で 、 代 金 を 支 払 う 必 要 は な い 等 と 主 張 し た が 、 仲 裁 廷 は 、 キ ャ ビ ア に つ い て の 危 険 負 担 と 所 有 権 はAY間 の 売 買 契 約 の 規 定 に 従 っ て 引 渡 し期 日 にYへ 移 転 して い た と 認 定 し、 さ ら に 、 「不 可 抗 力(forcemajeure)に よ り生 じ た 損 害 に っ い て は 、 不 可 抗 力 事 由 が 発 生 し た 時 点 で 目 的 物 の 危 険 を 負 担 して い た 当 事 者 す な わ ちYが 負 わ な け れ ば な ら な い 」 と判 示 し て 、Yに 代 金 と 利 息 の 支 払 い を 命 じ た 。 (3)不 適 合 物 品 の 引 渡 し 契 約 内 容 に適 合 しな い 物 品(不 適 合 物 品)を 引 渡 した売 主 が 第79条 に よ 74-110
る 免 責 を 主 張 す る こ と が で き る か ど う か は 、 起 草 過 程 の 段 階 か ら議 論 さ れ て き た 争 点 の1っ で あ る(曽 野 一山 手[156]、 注 釈 且(鹿 野)229-232頁)。 現 在 で は 、 肯 定 説 が 多 数 の よ う で あ る(S/S/Schwenzer,Art.79,para6) が 、 有 力 な 否 定 説 も あ る(Honnold,para427)。 こ の 争 点 に 関 す る 有 名 な 判 決 が 、79-9と79-10で あ る 。79-9は 、 第79条 の 適 用 を 肯 定 す る 見 解 を 示 し た(た だ し結 論 と して は 別 の 理 由 で 免 責 を 否 定)。 し か し、 そ の 上 告 審 で あ る79-10(ド イ ッ 連 邦 通 常 裁 判 所)は 、 上 告 を 別 の 理 由 か ら棄 却 で き た こ と も あ り 、 こ の 点 に っ い て の 明 示 の 判 断 を 避 け て い る 。 な お 、 そ の 後 に 現 れ た79-11(こ れ も ド イ ッ 連 邦 通 常 裁 判 所) も 、 や は り 明 示 の 判 断 を 避 け て は い る が 、 し か し、 そ の 判 示 内 容 は 、 売 主 が 不 適 合 物 品 を 引 き渡 し た 場 合 に も 第79条 が 適 用 さ れ る こ と を 前 提 と して い る よ う に 思 わ れ る 。 な お 、79-12は 、 不 適 合 物 品 を 引 き 渡 し た 売 主 に っ い て 、 第79条 に よ る 免 責 と い う 結 果 を 明 確 に 認 め た 判 決 で あ る 。 79-9ド イ ツ:ツ ヴ ァ イ ブ リ ュ ッ ケ ン上 級 地 方 裁 判 所(OLGZweibrUcken) 1998年3月31日 CLOUTNo.272,http://cisgw3./aw.pace.edu/cases/98033191.htlm 買 主X(オ ー ス ト リ ア)は 、 ワ イ ン ぶ ど う畑 を 経 営 し、 ぶ ど う の 樹 を 育 て 、 ワ イ ン を 精 製 し販 売 して い る 。 ぶ ど う の 木 の 接 木 の 過 程 で 、Xは 、 木 の 枯 れ を 防 ぎ 感 染 の 危 険 を 減 ら す た め に 、 特 別 な ワ イ ン ワ ッ ク ス(vine wax)を 使 用 して い た 。Xは ワ ッ ク ス を 売 主Y(ド イ ッ)か ら長 年 に わ た っ て 購 入 し て い た 。 ワ ッ ク ス の 製 造 者 はA社 で あ り 、YはA社 か らB社 を 通 じて ワ ッ ク ス を 入 手 して い た 。 あ る 年 にYの 指 示 に よ っ てXに 引 渡 さ れ た ワ ッ ク ス は 、Aが 新 た に 開 発 し た タ イ プ の ワ ッ ク ス(黒 ワ イ ン ワ ッ ク ス) だ っ た 。 目 的 物 は 、Bを 通 し たYの 指 示 に よ り 、Aか らXへ 直 接 に 引 き 渡 さ れ た た め 、YはXへ の 引 渡 し の 前 に 目 的 物 を 現 実 に 受 け 取 る こ と も検 査 す る こ と も し な か っ た 。 そ の 後 、XがYに 対 し て 、 ワ ッ ク ス に 欠 陥 が あ っ た と し て 、 ぶ ど う 畑 に 生 じた 損 害 の 賠 償 を 請 求 し た 。 こ れ に 対 し てYは 、 そ の 損 害 は 霜 に よ る も の で あ り、 ま た 、 自 分 は 売 買 の 仲 介 人 で あ っ て 、 損 害 の 発 生 は 自 分 の 支 配 を 超 え た も の で あ る か ら 、 第79条 に よ っ て 免 責 さ れ る と 主 張 し た 。Yは さ ら に 、 売 買 約 款 中 に 規 定 さ れ て い た 免 責 条 項 に よ り 賠 償 責 任 を 負 わ な い 旨 も 主 張 し た 。 74-109 (84)
裁 判 所 は、Yが 引 き渡 した ワ ッ ク ス は契 約 の趣 旨 に適 合 して い な か っ た と して、Yの 損 害 賠 償 責 任 を認 め た(第35条(1))。 そ して 、CISGは 免 責 条 項 の有 効 性 に関 す る 規 定 を設 け て い な い の で、 こ の点 は 国 際 私 法 の準 則 に よ り適 用 され る国 内法 に従 って判 断 さ れ ね ば な らな い と して 、 ドイ ッ法 を 適 用 して 、 過 失 の程 度 に関 わ らな い責 任 の全 部 免 除 は無 効 で あ る と判 示 し た。 裁 判 所 は ま た、 欠 陥 の あ る 目的 物 の 引 き渡 しは第79条(1)に い う 「障 害 」 と な り う る こ と を 認 め た が 、 しか し、 本 件 に お い て は 、 目的 物 の 欠 陥 はY の 支 配 を 超 え た も の で は な い と判 示 した 。 す なわ ち 、 た とえXとYと の 間 に継 続 的 な取 引 関 係 が 存 在 して い た と して も、YがAの 製 品 を 検 査 す る こ と な しに 信 頼 した こ と は合 理 的 で は な い、 何 故 な らば 当該 製 品 は新 し く開 発 さ れ た もの だ った か らで あ る、 と した。 裁 判 所 は さ ら に、 た と えYが 単 な る仲 介 人 と して 行 動 した と して も、Y は 目 的物 の 適 合 性 の 欠 如 にっ き責 任 を 負 うの で あ り、 この 場 合 、 供 給 者 や 仲 介 人 は 第79条 ② に お け る 「第 三 者 」 と は み な され な い 、 と した。 79-10ド イ ツ:連 邦 通 常 裁 判 所(Bundesgerichtshof)1999年3月24日 CLOUTNo.271,http://cisgw3./aw.pace.edu/cases/99032491.html 79-9の 上 告 審 で あ る 。 事 実 関 係 に っ い て は79-9を 参 照 。 売 主Yの 上 告 を 受 け た 連 邦 通 常 裁 判 所 は 、 以 下 の よ う に 判 示 し た 。 「Yは 第35条(2Xa>に よ り ワ イ ン の 樹 の 手 入 れ に 適 し た ワ ッ ク ス を 引 き 渡 す 義 務 を 負 う が 、1994年 にXに よ り 引 き渡 さ れ た 黒 ワ イ ン ワ ッ ク ス は 、 両 当 事 者 が 認 識 し両 当 事 者 が 適 用 した 業 界 の 基 準 を 満 た す も の で は な く、 し た が っ て 当 該 ワ ッ ク ス は 第35条 の 規 定 の 下 で は 契 約 に 適 合 して い な か っ た と す る控 訴 裁 判 所 の 認 定 は 正 当 で あ る 。」 「第79条 が 、 損 害 賠 償 責 任 を 発 生 さ せ る 契 約 義 務 の 不 履 行 の 想 定 さ れ る 全 て の 場 合 と 形 式 に 、 し た が っ て 欠 陥 の 存 在 の た め に 契 約 に 適 合 し な い 目 的 物 の 引 渡 し に っ い て も 適 用 さ れ う る の か 、 … … そ れ と も 欠 陥 の あ る 目 的 物 を 引 き 渡 し た 売 主 は 第79条 を 援 用 す る こ と は 常 に 不 可 能 な の か … … に 関 して は 、 未 だ 議 論 の あ る と こ ろ で あ る 。 … … 第79条 に よ る 免 責 は 、 控 訴 裁 判 所 が 正 当 に そ の 判 決 の 基 礎 と し た も の で あ る が 、 い ず れ に し て も、 ワ イ ン ワ ッ ク ス の 欠 陥 はYの 支 配 を 超 え た も の で は な い の で 、 同 条 は 適 用 さ れ な い 。 そ れ ゆ え 、Yは 契 約 に 適 合 し な い 目 的 物 の 引 渡 し の 結 果 に っ き責 任 74-108
を負 う。」 「第79条 の 下 で の 免 責 は 、 契 約 上 の リス ク の 配 分 を 変 更 さ せ な い 。 CISGに よ るな らば 、 売 主 の 責 任 の 根 拠 は、 売 主 が 契 約 に 適 合 した 目的 物 を購 入 者 に供 給 す る こ と を合 意 した こ とに あ る。 仮 に売 主 へ の 供 給 者(ま た は供 給 者 ら)の 契 約 違 反 が 第79条 の 規 定 に お け る一 般 的 な障 害 だ とす る と、 そ れ は売 買 契 約 の 内 容 に従 って 売 主 が 回避 又 は克 服 し な け れ ば な ら な い障 害 で あ る。 … …買 主 の観 点 か らす る と、 売 主 が 目 的 物 を 自分 で製 造 す る この 場 合 に は 不 履 行 は一 般 に売 主 の 支配 下 に あ るの で 、 第79条 の 適 用 は原 則 と して 排 除 され る の か 、 ま た は売 主 が 目 的 物 を そ の供 給 者 か ら入 手 す るの か で、 何 ら違 い は な い。 … …売 主 が そ の供 給 者 に よ る期 限 内 の 引 渡 し につ き責 任 を 負 う場 合 、 売 主 は そ の供 給 者 が欠 陥 の な い 目的物 を 引 き渡 す こ との 確 認 に も ま た 義 務 を 負 う。 この よ うな 観 点 か らす る と、 CISGは 最 終 的 な 引 渡 し と契 約 に 適 合 しな い 目的 物 の 引 渡 しと を 区 別 して い な い。 ど ち らの契 約 違 反 に っ い て も責 任 に 関 す る 同一 の 基 準 が 適 用 され る。」 「第79条 に よ れ ば、 契 約 に適 合 しな い 目 的物 に よ る損 害 の 結 果 か らの 売 主 の免 責 は、 … … 当該 不 適 合 が売 主 の 支 配 下 に あ る と み な せ な い場 合 に の み 検 討 さ れ う る。 売 主 は 調 達 リス ク を 負 っ て い る の で 、(目 的物 の 欠 陥 の 原 因 が た とえ 売 主 へ の 供 給 者 又 は 供 給 者 へ の供 給 者 に あ っ た と して も)当 該 欠 陥 が売 主 自身 の 支 配 の外 に あ り、 か っ 、 売 主 へ の供 給 者 の 支 配 の 外 に あ る事 情 に よ る もの で あ る場 合 に の み 、 第79条(1)又 は第79条(2>の 下 で売 主 の 免 責 が 可 能 と な る。」 「CISGの 下 で の 責 任 は、 上 級 地 方 裁 判 所 の 見解 と は 異 な り、Xへ の 引 渡 しの前 に 目的 物 を検 査 す る とい う供 給 者 の義 務 に基 づ くの で は な く、 そ の よ うな検 査 は、 上 告 理 由 に よ るな らば、 過 去 に購 入 した ワ イ ン ワ ック ス に は欠 陥 が 存 在 した こ と は な か った の で あ り、 本 件 で は 必 要 は な か った 。 法 規 定 に よ る リス ク の 配 分 、 及 び 、 当 事 者 間 で の リス ク配 分 に関 す る別 段 の 合 意 の 不 存 在 と い う理 由 か ら、Yの 有 責 性 は重 要 で は な く、 結 果 的 にY が 保 証 責 任 を 負 う こ と と な る点 で 、 これ は そ の 通 りで あ る。」 結 論 と して は 、 連 邦 通 常 裁 判 所 は、Yが 第77条 の 損 失 軽 減 義 務 を 負 うか 否 か 、 ま た ど の程 度 負 うか と い う問 題 を原 審 が 判 断 して い な い とす る上 告 理 由 を容 れ て 、 原 判 決 を 破 棄 し差 し戻 した。 74-107 (86)
79-llド イ ツ:連 邦 通 常 裁 判 所(Bundesgerichtshof)2002年1月9日 http://cisgw3.law.pace.edu/cases/02010991.htm1 買 主X(オ ラ ン ダ)と 買 主A(オ ラ ン ダ)は 、2557.5ト ン の 粉 ミル ク を 、 売 主Y(ド イ ッ)か ら 買 い 受 け た 。XとAは 、 こ の 粉 ミル ク の う ち の2550 ト ン を ア ル ジ ェ リア のB社 へ 売 却 し た 。Yに よ っ て 包 装 さ れ 引 き 渡 さ れ た 粉 ミ ル ク は 、XとAに よ っ て 抜 き 出 し検 査 さ れ 、 特 に 異 常 が 発 見 さ れ な か っ た の で 、 粉 ミ ル ク は 新 た に ア ン ト ワ ー プ 港 で 保 管 さ れ 、 そ の 後 、 ア ル ジ ェ リ ア へ 船 積 み さ れ た 。 と こ ろ が 、 ア ル ジ ェ リ ア へ 引 き 渡 さ れ た 粉 ミル ク に よ り製 造 さ れ た ミル ク の 一 部 に 酸 敗 し た 味 が し た 。 そ こ で 、XとAは 、B へ 補 償 金 を 支 払 う 約 束 を し た 。 ま た 、Aは 、Yに 対 す る 損 害 賠 償 請 求 権 を Xに 譲 渡 し た 。 Xは 、Yに 対 し て 損 害 賠 償 を 請 求 し、Bに よ り 指 摘 さ れ た 酸 敗 し た 味 は 、 粉 ミル ク の 誤 っ た 製 造 過 程 で リパ ー ゼ 酵 素 が 侵 入 し た こ と に よ る も の で あ り、 リパ ー ゼ 酵 素 は 目 的 物 の 危 険 移 転 の 時 点 で す で に 存 在 して い た と主 張 し た 。 こ れ に 対 して 、Yは 、 粉 ミル ク へ の リパ ー ゼ 酵 素 の 侵 入 が 最 初 に 起 き た の は 危 険 移 転 の 後 で あ っ た か 、 ま た は 、Yに よ っ て 引 き 起 こ さ れ た も の で は な い と 主 張 し た 。 原 審 は 、 欠 陥 の 原 因 に 関 す る 鑑 定 の 結 果 、Xの 請 求 の 一 部 を 認 容 し た 。 Yが 、 請 求 全 部 の 棄 却 を 求 め て 連 邦 通 常 裁 判 所 へ 上 告 し た 。 連 邦 通 常 裁 判 所 は 、 以 下 の よ う に 判 示 し た 。 「CISGが 証 明 責 任 を 明 示 的 に(第79条)又 は 、 黙 示 的 に(第2条(a)) 規 定 し て お り 、 し た が っ て 国 内 法 の 適 用 は そ の 限 り で 妨 げ られ る こ と 、 及 び 、CISGは ル ー ル/例 外(rule/exceptiQn)原 則 に 従 っ て い る と い う 上 告 理 由 の 出 発 点 は 正 し い 。 … … しか し、 上 告 理 由 は 、CISGの 証 明 責 任 の ル ー ル が そ の 実 質 的 な 適 用 可 能 性 の 範 囲 を 超 え る こ と は で き な い と い う 点 を 見 落 と し て い る 。 そ の 範 囲 は 、 第4条(1)に よ っ て 決 ま る 。 す な わ ち 、 同 条 項 に よ る と 、CISGは 売 買 契 約 の 履 行 及 び 当 該 契 約 か ら 生 じ る 買 主 と 売 主 の 義 務 と 責 任 に っ い て の み 規 定 して い る 。 … … 原 審 は 、1998年8月24日 付 の[YがX側 に 対 し て 目 的 物 の 契 約 不 適 合 の 事 実 を 認 め た]手 紙 の 結 果 と し て の 証 明 責 任 の 転 換 に 基 づ き 、Yが 問 題 の 粉 ミル ク が 危 険 移 転 の 時 点 で 契 約 に 適 合 し て い た こ と を 主 張 立 証 し な け れ ば な ら な い と 、 正 し く推 定 して い る。」 し か し、 連 邦 通 常 裁 判 所 は 、 原 審 はYに よ っ て 指 摘 さ れ た 鑑 定 意 見 の 矛 74-106
盾 点 を探 求 す べ きで あ っ た と して 、 本 件 を原 審 に差 し戻 し た。 そ の 際 、 以 下 の よ う に述 べ た。 「新 た な 事 実 審 理 に よ って 、 微 生 物 学 的 な 不 活 性 の リパ ー ゼ酵 素 の粉 ミ ル ク へ の 侵 入 が 、 危 険 移 転 の 時点 で 排 除 さ れ得 な い場 合 に は、 そ の結 論 は、 Yが この 侵 入 にっ き第79条 の下 で 責 任 を負 わ な い か 否 か に よ って 決 ま る。 上 告 理 由 は、 第79条 は契 約 の要 請 に合 致 しな い 物 品 の 引 渡 しに もま た 適 用 さ れ る と い う意 見 で あ る(当 法 廷 に お い て は 残 さ れ た 問 題 で あ る 。 BGHZ141,129,132)。 上 告 理 由 は、 粉 ミル ク は最 新 の 科 学 知 識 と技 術 に 基 づ き製 造 され て お り、 標 準 的 な 工 程 に よ って は存 在 す る リパ ー ゼ酵 素 株 を排 除 す る こ と はで き な い か ら、Yは 第79条 の下 で は責 任 を 問 わ れ な い と 主 張 して い る。 これ に関 連 して 、 我 々 は、 念 の た め、Yが た とえ さ らな る 加 工 の前 にお い て必 要 な 分 析 方 法 が 注 意 深 く実 施 さ れ た と して も引 き渡 さ れ た粉 ミル クへ の リパ ー ゼ酵 素 の 侵 入 が 何 ら検 出 さ れ な か っ た で あ ろ う こ と、 及 び 、 粉 ミル ク の製 造 に お い て 起 こ り う る侵 入 がYの 影 響 範 囲 の 外 に あ る理 由 に基 づ い て い る こ と を証 明 し得 た場 合 に の み 、Yは 契 約 に適 合 さ せ る こ との 不 履 行 に よ る損 害 賠 償 を 支 払 う義 務 か ら解 放 され る、 とい う こ と を述 べ て お く。」 79-12フ ラ ン ス:ブ ザ ン ソ ン 商 事 裁 判 所(Tribunaldecommercede Besancon)1998年1月19日(FlippeChristianv.SARL1)ouetSportCol-lections) http://cisgw3.law.pace.edu/cases/980119f1.htm1 買 主X(ス イ ス)が 売 主Y(フ ラ ン ス)と 柔 道 着 の 売 買 契 約 を 締 結 し 、 柔 道 着 がXに 引 き 渡 さ れ た 。 そ の 後 、Xか ら の 購 入 者 た ち か ら 、 こ の 柔 道 着 は 洗 濯 す る と6∼8セ ンチ も縮 む と い う ク レ ー ム がXに 対 して あ っ た 。 XはYに 対 し て 柔 道 着 の 契 約 不 適 合 性 を 理 由 と して 売 買 契 約 の 解 除 を 主 張 し、 代 金 の 返 還 と 損 害 賠 償 を 請 求 し た 。Yは こ の 柔 道 着 の 製 造 元 で あ るA 社 に 問 い 合 わ せ 、 そ の 程 度 の 縮 み は 通 例 で あ る と い う 回 答 を 得 た の で 、X の 請 求 を 拒 絶 し た 。 裁 判 所 は ま ず 、 柔 道 着 の 契 約 不 適 合 性 を 認 め 、 契 約 の 解 除 権 の 存 在 を 認 め た 。 し か し な が ら、 そ れ に 続 け て 、 次 の よ う に 判 示 し た 。 「一 方 で 、X は 目 的 物 の 全 て が 問 題 を 有 し て い た と い う証 拠 を 提 出 し て お らず 、 引 き 渡 さ れ た 目 的 物 の 一 部 に よ り利 益 も得 て い る の で あ り、 他 方 で 、Yは そ の 製 74-105 (88)
造 過 程 と りわ け製 品 の素 材 の 合 成 に関 して はYの 支 配 を超 え て い る よ う な 製 品 の売 主 と い う地 位 に あ るか ら、Yの 側 が 不 誠 実 だ と認 め られ な い 本 件 で は、Yに 第79条 の 利 益 を認 め る こ と が 適 当 で あ る」。 裁 判 所 は結 論 と して 、 購 入 代 金 の35パ ー セ ン トの減 額 を 認 め、 そ の返 還 をYに 対 して 命 じた が 、 損 害 賠 償 の請 求 に っ いて は棄 却 した。 (4)第79条 の 適 用肯 定 例 第79条 は、 訴 訟 や仲 裁 で 不 履 行 当 事 者 に よ って 主 張 さ れ る こ とは 多 いが 、 認 容 さ れ る こ と は あ ま り な い。 本 稿 執 筆 時 に参 照 可 能 で あ っ た裁 判 例 ・仲 裁 判 断 例 の 中 で は、 以 下 の もの で 、 免 責 が 認 め られ て い る。79-26(売 主 の 物 品 引 渡 しの遅 延 。 売 主 が 期 限 内 に運 送 手 配 を して物 品 を 運 送 人 に 引 き 渡 した こ と に よ って そ の 履 行 を完 了 した場 合 に は、 売 主 は 引 渡 しの遅 滞 に よ る損 害 賠 償 か ら免 責 され る と判 示 した)、79-12(売 主 の不 適 合 物 品 の 引 渡 し。 た だ し、 損 害 賠 償 責 任 は免 責 され た が 、 裁 判 所 は売 主 に対 して受 領 した代 金 の一 部 返 還 を 命 じた)、79-22(買 主 の 代 金 支 払 い の 遅 延 に対 す る 利 息 支払 い義 務 にっ き、 買 主 を 免 責 した)、79-23(物 品 の買 主 国 へ の輸 入 許 可 の 国 家 機 関 に よ る拒 否 。 す で に代 金 を 支 払 って い た 買 主 にっ き、 引 渡 しに対 す る受 領 の不 履 行 に よ る損 害 賠 償 義 務 か らの免 責 を 認 め た)。 な お 、79-20は 、 第79条 の 要 件 が 満 た され て い る こ と を認 め た うえ で 、 そ の効 果 にっ い て、 第79条 が 規 定 す る免 責 で は な く、 国 際 取 引 法 の一 般 原 則 に よ るべ き も の と して 、 一 方 当 事 者 の主 張 に従 った契 約 価 格 の改 訂 を 認 め て お り、 注 目 に値 す る。 3「 障 害 」 の 存 在 と い う要 件 (1)「 障 害 」 の 存 否 の 判 断 第79条 に よ り 免 責 さ れ る た め の 要 件 の 第1は 、 「障 害 」 が 存 在 す る こ と で あ る 。 条 約 の 起 草 過 程 で は 、 「障 害 」 概 念 を 狭 く定 義 し 、 そ の 有 無 が 客 観 的 に 認 定 で き る も の と な る よ う に 意 図 さ れ て い た 。 ま た 、 「障 害 」 は 、 そ れ が 契 約 締 結 前 か ら 存 在 し て い た か 契 約 締 結 後 に 生 じ た か を 問 わ な い も の と さ れ て い た(シ ュ レ ヒ ト リー ム145頁 、 注 釈II(鹿 野)208-209頁 、S/ S/Schwenzer,Art.79,para12)0 し か し な が ら 、 多 く の 裁 判 例 ・仲 裁 判 断 例 は 、 何 が 第79条(1)に お け る 「障 害 」 を 構 成 す る か と い う 問 題 に は 焦 点 を 当 て て い な い 。 免 責 を 肯 定 し 74-104
た数 少 な い事 案 に お い て も、 免 責 を 否 定 した 数 多 くの事 案 にお い て も、 第 79条(1)で 規 定 す る 「障 害 」 が 存 在 す る ・あ る い は ・しな い こ と を示 唆 す る 言 葉 を 用 い て は い るが 、 しか し、 そ れ らの 結 論 は、 「障 害 」 そ の も の の 存 否 の判 断 に基 づ い て い る と い うよ り も、 「障 害 」 に要 求 され る 後 述 の諸 性 質(支 配 可 能 性 、 考 慮 可 能 性 、 回 避 可 能 性 、 克 服 可 能 性)の 存 否 の判 断 に 基 づ い て い る場 合 が 多 い 。 た と え ば 、 下 に掲 げ る79-13に お け る 、 売 主 の 国 に よ る石 炭 輸 出 の 禁 止 や 石 炭 採 掘 者 の ス トラ イ キ は、 学 説 上 、 第79条(1) の 「障害 」 を 構 成 す る典 型 例 と され るが 、 しか し、 仲 裁 廷 は、 そ れ らが 契 約 締 結前 にす で に生 じて お り、 した が って 契約 締 結 時 に 「考 慮」 可 能 で あ っ た こ とを 実 質 的 な理 由 と して 、 売 主 の 免 責 の主 張 を否 定 して い る。 これ に対 して 、79-14は 、 第79条(1>に い う 「障 害 」 と は、 個 人 的 な事 情 と は 関係 な しに、 契 約 義 務 の履 行 を 妨 げ る客 観 的 な状 況 の こ と で あ る と明 確 に述 べ た も の で あ る。 79-13ブ ル ガ リ ア:ブ ル ガ リ ア 商 工 会 議 所 仲 裁 廷(ArbitrationTribunal ofBulgarianChamberofCommerceandIndustry)1996年4月24日 http://cisgw3.law.pace.edu/cases/960424bu.html 事 案 の 詳 細 は 不 明 だ が 、 概 ね 次 の よ う な も の で あ る 。 売 主X(ウ ク ラ イ ナ)と 買 主Y(ブ ル ガ リ ア)が 、 一 定 品 質 の 石 炭 の 一 定 量 の 売 買 契 約 を 締 結 し、XがYに 石 炭 を 送 付 し た が 、 そ の う ち の1割 が 契 約 で 定 め ら れ た 品 質 よ り も 劣 っ た 品 質 の も の で あ っ た た め 、Yは 目 的 物 の う ち の1割 が 引 渡 しの 遅 滞 に 陥 っ て い る と して 、 約 定 代 金 の9割 しか 支 払 わ な か っ た 。 仲 裁 廷 は 、1割 分 の 引 渡 し 遅 滞 に つ い て はXとYが50対50の 割 合 で 責 任 を 負 う べ き だ と し た が 、 そ の 仲 裁 判 断 の 中 で 、 以 下 の よ う に 述 べ た 。 「不 可 抗 力(forcemajeure)状 態 と は 、 予 見 不 可 能 か つ 回 避 不 可 能 な 異 例 の 性 質 の 出 来 事 の 結 果 と し て 、 契 約 締 結 後 に 生 じ る 事 情 か ら な る も の で あ る。 不 可 抗 力 の た め に そ の 義 務 を 履 行 で き な い 当 事 者 は 、[XY間 の] 契 約 の 第8条 に 従 い 、 た だ ち に 他 方 当 事 者 へ 通 知 す る 義 務 を 負 っ て い る 。 政 府 に よ る 石 炭 の 輸 出 の 禁 止 も 、Yが 根 拠 と し て い る[XY間 の 契 約 に 基 づ く]石 炭 に つ い て の ウ ク ラ イ ナ 政 府 に よ る 輸 出 制 限 命 令 も、 ど ち ら も CISGに よ る 不 可 抗 力 の 存 在 の 要 件 に も 本 契 約 の 諸 規 定 に も 該 当 し な い 。 そ れ ら は 契 約 締 結 の 前 に 生 じて い る。Xは 、 ウ ク ラ イ ナ の 炭 鉱 で の ス トラ 74-103 (90)
イ キ の発 生 にっ い て の 通 知 の み を 根 拠 と して 不 可 抗 力 を 主 張 す る こ と も、 そ の 時期 に はす で に履 行 を遅 滞 して い た の で 、 で き な い。」 79-14ド イ ツ:ミ ュ ンヘ ン上 級 地 方 裁 判 所(OLGMunchen)2008年3月 5日 http://cisgw3.law.pace.edu/cases/08030591.htm1 売 主Y(ド イ ッ)と 買 主X(イ タ リア)は 、 どち らも専 門 の 自動 車 デ ィー ラ ー で あ っ た が、 あ る 中古 車 の売 買 契 約 を締 結 した。Yは そ の 自動 車 を 別 の 自動 車 デ ィ ー ラー か ら購 入 した 。 警 察 の審 査 で は何 も問 題 は 出 な か っ た が 、 後 に な って そ の 自動 車 が 盗 難 車 で あ る こ とが 判 明 し、 イ タ リア の警 察 が そ の 自動 車 を元 々 の 所 有 者 に返 還 した。 そ の た め、 す で に第 三 者 に そ の 自動 車 を 販 売 して い たXは 、 自動 車 の購 入 代 金 と して 受 け取 って い た 小 切 手 を購 入 者 に 返 還 しな け れ ば な らな か っ た。Xは 、Yの 契 約 違 反 を理 由 と して 損 害 賠 償 を請 求 した。Yは これ に対 して 、 自分 は善 意 で あ っ た と主 張 して 請 求 の 棄 却 を求 め た 。 1審 は、Xの 請 求 を 棄 却 した。 す な わ ち 、Yの 契 約 違 反 は そ の 支 配 を 超 え た 障害 に よ る もの で あ り、 そ の 障 害 を契 約 締 結 の 時点 で 考 慮 す る こ と を 合 理 的 に み て 期 待 で きず 、 そ れ を 回 避 す る こ と も そ の結 果 を 克 服 す る こ と もで きな か った の で 、Yは 第79条(1>に よ り責 任 を 負 わ な い と した。Xが 控 訴 。 裁 判 所 は、Yは 当 該 自動 車 の所 有 権 をXに 移 転 す る契 約 上 の 義 務(第30 条)を 履 行 しな か った と認 定 した 上 で 、 第79条 の適 用 に っ き次 の よ う に述 べ て1審 判 決 を一 部 破 棄 し、Xの 損 害 賠 償 請 求 を認 め た 。 「第1審 判 決 の判 断 と は逆 に、 損 害 賠 償 の請 求 は第79条(1)に よ って は妨 げ られ な い。 本件 に お け る状 況 を正 し く検 討 す る な らば 、 契 約 違 反 はYの 支 配 を超 え た 障 害 に よ る もの で は な い し、 契 約 締 結 の 時 点 で 考 慮 す る こ と や 当 該 障 害 又 は そ の結 果 を回 避 す る こ と や克 服 す る こ とが 合 理 的 に期 待 で き な か った わ け で もな い 。 ま ず第 一 に、 第79条 は契 約 上 の リス ク の配 分 を 変 化 さ せ る も の で は な い こ と に留 意 しな け れ ば な らな い。 国 際 物 品売 買 条 約 に お い て は、 売 主 が 負 う責 任 は 、 売 主 が 物 品 を引 き渡 して 物 品 の所 有 権 を買 主 に 移 転 す る義 務 を 負 って い る こ とに基 づ いて い る。 第79条 に よ る と、 契 約 義 務 の 違 反 の結 果 か らの売 主 の 免 責 は、 当 該 違 反 を売 主 に帰 せ しめ る こ と が 合 理 的 に み て 不 可 能 な 場 合 に の み 可 能 で あ る(BGH,NJW1999,p. 74-102
2440参 照)。 か く して、 第79条 に お け る免 責 は、 売 主 の 個 人 的 事 情 と は何 ら関 係 を 有 す る もの で は な く、 契 約 上 の義 務 の 履 行 を妨 げ る客 観 的 な 状 況 が 存 在 す る場 合 に の み 問 題 とな り う る。 … …YのXへ の 所 有 権 移 転 の不 履 行 は、Yの 個 人 的 な 事 情 と して 扱 わ れ ね ば な らず、 当 該 不 履 行 はYの 支 配 を 超 え た 障 害 に よ って 生 じた もの で は な い。 第79条 に よ る免 責 は契 約 上 の リス クの 配 分 を 変 化 させ る もの で は な い の で 、Yは 、Y自 身 が 警 察 や登 録 事 務 所 へ 何 度 か 確 認 を して 契 約 上 の 義 務 を 果 た す た め の あ らゆ る必 要 な 手 続 き を踏 ん だ と い う事 実 を、 自己 に有 利 に援 用 す る こ とは で き な い」 と判 示 した。 さ らに 、 裁 判 所 は、 障 害 が 契 約 締 結 の時 点 で 合 理 的 に み て 考 慮 に 入 れ る こ と や、 障 害 又 は そ の 結 果 を 回避 し又 は克 服 す る こと が 合 理 的 に期 待 す る こ と が で きな か った とい う主 張 は 説 得 的 で はな い、 何 故 な らば 、 本 件 で は、 Yに 自動 車 の 来 歴 に疑 い を 抱 か せ る状 況(車 種 と走 行 距 離 に 照 ら して 低 い 価 格 、 第 一 の 買 主 の フ ァ ー ス トネ ー ムが 登 録 証 記 載 の フ ァ ー ス トネ ー ム と 違 って い た と い う事 実 等)が 存 在 して い た か らで あ る、 と した。 (2)売 主 へ の 供 給 者 の 不 履 行 「売 主 が そ の契 約 目的 物 の供 給 源 と して い る第 三 者 た る供 給 者 に よ る不 履 行 」 が 、 売 主 を免 責 す る 「障害 」 で あ る とす る主 張 に っ いて 、 裁 判 例 ・ 仲 裁 判 断 例 で しば しば 問 題 と さ れ て い る(こ の 状 況 は第79条 ② の適 用可 能 性 の 問 題 と も関係 す る。 後 出 の 「8自 己 の 使 用 した第 三 者 に よ る不履 行」 を参 照)。 す な わ ち、 多 くの事 案 で 、 売 主 が 、 そ の 供 給 元 た る者 が 売 主 へ 契 約(適 合)目 的 物 を 引 渡 さ な か っ た こ とを 「障 害 」 と して 主 張 し、 そ の 結 果 と して 、 ① 売 主 に よ る買 主 へ の 目的 物 引渡 しの不 履 行 や 、 ② 売 主 に よ る買 主 へ の 契 約 不 適 合 物 品 の 引渡 しにっ き、 売 主 は免 責 され るべ きで あ る と主 張 して い る。 ① の 目的 物 の 引 渡 し不 履 行 の ケ ー ス に っ い て は、 下 に掲 げ た79-15と79-16(及 び 、 前 出 の79-2と79-5)が 、 売 主 は 通 常 そ の 供 給 者 が 違 反 す る リス ク を負 担 して い る こ と、 そ して、 売 主 は そ の 不 履 行 が売 主 の 供 給 者 の 不 履 行 に よ り引 き起 こさ れ た 場 合 に は 一 般 的 に は免 責 を受 け られ な い こ とを 判 示 して い る。 ② の 契 約 不 適 合 物 品 の 引 き渡 しの ケ ー ス に つ い て は、 前 出 の79-10が 、 CISGの 下 で は、 当 事 者 が そ の 契 約 の 中 で 別 途 の リス ク配 分 に合 意 して い 74…101 (92)
る の で な い限 り、 売 主 は 「調 達 リス ク」 そ の供 給 者 が 物 品 を期 限 内 に 引 き渡 さ な か っ た り不 適 合 物 品 を 引 き渡 す と い う リス ク を負 担 す る こ と、 そ して 、 売 主 は そ れ ゆえ そ の 供 給 者 の不 履 行 を第79条 にお け る 免責 の た め の根 拠 と して主 張 す る こ とは 通 常 は で きな い こと を 、 詳 細 に述 べ て い る。 た だ し、 例 外 的 に、 前 出 の79-12は 、 契 約 不 適 合 の柔 道 着 が第 三 者 に よ っ て 製 造 さ れ た こ とを理 由 と して、 不 適 合 物 品 の 引 渡 しに よ る損 害 賠 償 か ら の 免 責 を そ の 売 主 に認 め て い る。 そ の 結 論 と論 理 構 成 に は 、 な お検 討 す べ き点 が残 され て い る よ う に思 わ れ る。 79-15ロ シ ァ:ロ シ ア 連 邦 商 工 会 議 所 国 際 商 事 仲 裁 廷(TribunalofInter- nationalCommercialArbitrationattheRussianFederationChamberofCom-merceandIndustry)1995年3月16日 CLOUTNo.140,http://cisgw3.law.pace.edu/cases/950316r1.html 売 主Y(ロ シ ア)と 買 主X(ド イ ッ)の 間 で 、 化 学 製 品(金 属 性 ナ ト リ ウ ム)の 供 給 契 約 が 結 ば れ た が 、 目 的 物 は 指 定 期 間 内 にXに 引 き 渡 さ れ な か っ た 。 そ の 結 果 、Xは 当 該 化 学 製 品 を 第 三 者 か らYと の 契 約 価 格 よ り も 高 額 で 購 入 せ ざ る を 得 な か っ た 。Xが 契 約 価 格 と第 三 者 か ら の 購 入 価 格 と の 差 額 に っ き 損 害 賠 償 を 請 求 し た 。 Yは こ れ に 対 し、Yの 支 配 を 超 え る 障 害 、 す な わ ち 、 目 的 物 を 製 造 して い る 工 場 の 緊 急 の 製 造 停 止 の た め に そ の 引 渡 しが で き な か っ た こ と を 理 由 と し て 、 損 害 賠 償 義 務 か ら の 免 責 を 主 張 し た 。 仲 裁 廷 は 「製 造 業 者 に よ るYへ の 当 該 目 的 物 の 供 給 の 拒 絶 は 、Yの 義 務 を 免 責 す る 障 害 と は 認 め ら れ な い の で あ り、Yは そ の 義 務 の 不 履 行 の 責 任 を 免 責 す る よ う な 障 害 の 存 在 を 立 証 で き な か っ た 」 と 述 べ 、Yに 損 害 賠 償 の 支 払 を 命 じ た 。 79-16国 際 商 業 会 議 所 仲 裁 裁 判 所(CourtofArbitrationoftheInterna-tionalChamberofCommerce)1995年(CaseNo.8128) http://cisgw3.law.pace.edu/cases/958128i1.htm1 第 三 者 へ の 転 売 契 約 を 履 行 す る た め に 、 買 主X(ス イ ス)は 、 売 主Y (オ ー ス ト リ ア)と 化 学 肥 料 の 売 買 契 約 を 締 結 し た 。Yは 、 ウ ク ラ イ ナ の 供 給 者 に 化 学 肥 料 の 一 部 の 手 配 を 依 頼 し た 。Xは 、 引 渡 し の 際 に 使 用 す る 74-100
た め の 包 装 物(Yの 指 示 に 基 づ い てXが 製 造 した 袋)を ウ ク ラ イ ナ の供 給 者 に送 付 した。 しか し、Xが 送 付 した袋 が ウ ク ライ ナ の化 学 業 界 の技 術 的 基 準 に適 合 しな か った の で 、 供 給 者 は そ れ らの 袋 を使 用 で き な か った。 結 果 と して 、 目 的物 は約 定 され た期 間 内 に 引 き渡 さ れ な か っ た。Xは 、 す で に転 売 相 手 と締 結 して い た契 約 を 履 行 す る た め に、 よ り高 い価 格 で の代 替 取 引 を せ ざ るを 得 な か っ た。XがYに 対 して 損 害 賠 償 を 求 め て 仲 裁 手 続 き を 申 し立 て た 。 仲 裁 廷 は、 供 給 者 に っ いて で は な く自分 自身 にっ い て 履 行 を妨 げ る状 況 を克 服 す る こ とが で き な か っ た、 と い うYの 主 張 に 対 して、 次 の よ う に述 べ た。 「この 主 張 は正 当 で は な い 。 第79条(2)が 規 定 す る よ う に、Yは 不 履 行 に よ り生 じる責 任 か ら免 責 さ れ な い。 … … も し もYがXに 包 装 物 にっ い て 指 示 を し、Yが 供 給 者 を 使 用 す る の で あ れ ば 、Yに は、 自分 が 指 定 した包 装 物 を供 給 者 が 使 用 で き る こ と を事 前 に確 認 す る義 務 が あ る。Yは 明 らか に 供 給 者 へ の問 い 合 わ せ を怠 っ た。 しか しな が ら、 仮 にYが 供 給 者 に 問 い合 わ せ 、 供 給 者 が誤 っ た情 報 を 与 え た と して も、 そ れ に よ っ てYの 義 務 が 免 責 さ れ る こ と は な い。Xと の 契 約 を 履 行 す る た め に当 該 供 給 者 を 選 ん だY は、 当該 供 給 者 の行 為 につ い て責 任 を 負 わ ね ば な らな い。 この こ と は第79 条 ② か ら導 き 出 さ れ る。 売 主 が使 用 す る供 給 者 にっ い て の 売 主 の責 任 は、 目的 物 の 供 給 に関 す る一 般 的 な リス ク の一 部 を なす もの だ か らで あ る。」 仲 裁 廷 は、 結 論 と して 、Xの 一 部 解 除 の主 張 を認 め(第51条(1)、 第73条)、 損 害 賠 償 の 請 求 も認 め た 。 (3)履 行 の 費 用 ま た は 目的 物 の 価 値 の 変 化 履 行 費 用 の 上 昇 や 目的 物 価 格 の 下 落 とい った 経 済 的事 情 の 変 化 が、 第79 条(1)にい う 「障 害 」 に 含 まれ るか 否 か にっ い て は、 起 草 過 程 の 段 階 か ら議 論 が あ った(シ ュ レ ヒ トリー ム145-146頁 、 曽 野 一山 手[154]、 注 釈II(鹿 野)227-229頁 、S/S/Schwenzer,Art.79,para30)。 裁 判 例 ・仲 裁 判 断例 で は、 契 約 の 経 済 的 側 面 の変 化 を 理 由 とす る損 害 賠 償 責 任 か らの 免 責 の主 張 は、 繰 り返 し現 れ て い る。 売 主 は 、 契 約 履 行 の 費 用 の増 加 は売 主 の物 品 引 渡 しの不 履 行 に よ る損 害 賠 償 を 免 除 す べ きで あ る と主 張 し、 買 主 は、 売 却 され た物 品 の 価 値 の 減 少 は物 品 の 受 領 や代 金 支 払 い の拒 絶 に よ る損 害 賠 償 か ら免 責 され るべ きだ と主 張 す る。 しか し、 本 稿 74-99 (94)
執 筆 時 点 で 参 照 可 能 だ っ た 裁 判 例 ・仲 裁 判 断 例 の 中 に は 、 こ れ ら の 主 張 が 認 め ら れ た ケ ー ス は な か っ た 。 下 に 掲 げ た79-18と79-21(及 び 、 前 出 の79-2と79-5)は 、 一 方 の 当 事 者 が 契 約 の 経 済 的 結 果 に 影 響 す る相 場 変 動 の リス ク や そ の 他 の 要 因 を 負 担 し た も の と 見 な さ れ る 旨 を 述 べ て い る。 ま た 、 前 出 の79-6は 、 物 品 の 市 場 価 格 が 相 当 程 度 に 下 落 した 後 の 買 主 に よ る 免 責 の 主 張 を 否 定 す る に 当 た り 、 そ の よ う な 価 格 の 変 動 は 国 際 取 引 に お け る 予 見 可 能 な 事 態 で あ り、 そ れ ら が も た ら す 損 失 は 「国 際 市 場 で 事 業 を 営 む 専 門 家 が 負 う べ き 」 通 常 の リ ス ク の 一 部 で あ る と判 示 し た 。 経 済 的 な 状 況 の 変 化 を 理 由 と す る 免 責 を 否 定 す る 際 の 根 拠 と し て は、 以 上 の ほ か に 、 当 該 変 化 の 結 果 が 克 服 可 能 で あ っ た こ と(前 出 の79-1)、 及 び 、 当 該 変 化 の 可 能 性 は 契 約 締 結 時 に 考 慮 さ れ る べ き で あ っ た こ と(下 に 掲 げ た79-17、79-18、79-19、 及 び 、 前 出 の79-6)が あ る 。 な お 、79-19で も 言 及 さ れ て い る よ う に 、 事 情 の 変 更 に 際 し て は 、 当 事 者 又 は 裁 判 官 に よ る 契 約 内 容 の 改 訂 の 方 が 現 実 的 な 対 応 と な る 。 そ の 点 で 、 CISGの 第79条 に は 機 能 的 限 界 が あ る 。 こ の 問 題 を 克 服 す る た め の 手 段 と して は 、 諸 種 の 契 約 条 項 の 活 用 が ま ず は 検 討 さ れ る べ き で あ る が 、 学 説 上 は 、 こ の 問 題 に っ い て は 第79条 を 含 め たCISG全 体 と し て 規 定 が 欠 け て い る の で あ っ て 、 第7条 ② に 基 づ い て 、 そ の 欠 落 を(a)準 拠 法 と な る 国 内 法 理 で 補 充 す る べ き で あ る 、(b)ユ ニ ド ロ ワ 国 際 商 事 契 約 原 則(PICC) や ヨ ー ロ ッパ 契 約 法 原 則(PECL)と い っ た 一 般 原 則 で 補 充 す る べ き で あ る 、 と い っ た 考 え 方 が 提 唱 さ れ て い る(S/S/Secondedition,Art.79, Para31,32)。CISG第7条(1>の 考 え 方 か ら す れ ば 、(a)よ り も(b)が 望 ま し い で あ ろ う 。 こ の 点 に つ き(b)の 考 え 方 を 採 っ て 、 売 主 に よ る事 情 変 更 の 主 張 と 売 買 価 格 の 改 訂 の 請 求 を 認 め た 原 審 判 決 を 支 持 し た ベ ル ギ ー の 最 上 級 審 判 決 が79-20で あ り、 画 期 的 な 判 決 と 言 え よ う 。 79-17国 際 商 業 会 議 所 仲 裁 裁 判 所(CourtofArbitrationoftheInterna-tionalChamberofCommerce)1989年8月26日 CLOUTNo.102,http://cisgw3ユaw.pace.edu/cases/896281i1。html 買 主X(エ ジ プ ト)と 売 主Y(ユ ー ゴ ス ラ ビ ア)が 鉄 鋼 棒8千 ト ン の 売 買 契 約 を 締 結 し、 契 約 が 履 行 さ れ た 。 た だ し、 同 契 約 に は 、 当 初 の 売 買 に お け る と 同 一 の 価 格 及 び 条 件 で 鉄 鋼 棒 を8千 ト ン追 加 購 入 で き る 権 利(オ 74-98