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外来遺伝子の

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 生 命 科 学 ) 落 合 浩 史

学 位 論 文 題 名

外来遺伝子のsilencing 機構の解析と 持 続 発 現型 DNA 開発 へ の 展 開

学位論文内容の要旨

ca‑)f究目的]

  大腸 菌 由 来の プ ラ スミドDNA (pDNA)を用い た非ウイ ルスベ クターは 、染色 体DNAへ の組み込みによる内因性遺伝子への影響が小さく、優れた安全性を有する遺伝子治療用ベ クターと考えられている。しかし一方で、発現が一過的であることが問題となっている。

  本研 究では 、pDNAの発現 持続性 の向上を 目的と し、発現 量の低 下に伴うpDNAの核内 動 態 の詳 細 な 解析 と 、 解析 結 果 に 基づ い た 新規 遺 伝 子治 療 用DNAの 開発 を 行っ た。

[結果と考察]

!:鎧塞遣伝王Q発現量低王要圏c鰹擾

  遺伝 子 導 入後 のpDNAの 核 内動 態を解 析する ため、CMVプ口モ ーター 制御下で ルシフ ェラ ーゼを 発現するpDNA (pCMV‑luc) 20 Lx9を、hydrodynamics法と呼ぱれる注射圧を利 用した遺伝子導入法を用いて、BALB/cマウスの尾静脈より投与し、肝臓におけるルシフェ ラーゼ活性、および核内ルシフェラーゼ遺伝子量を測定した。その結果、導入後28日後ま でにルシフェラーゼ活性は1/104に低下したのに対し、肝細胞単離核中に含まれるルシフェ ラー ゼ遺伝 子量の減 少割合 は1/26であった。このことから、発現量低下の主要因がpDNA 1分子あたりの発現量の低下(silencing)であることが示された。

  染色 体DNAの場合、 シトシ ン.グア ニンジ ヌクレオ チド(CpG motif)のシトシン5位の メチ ル化や 、DNAと 結合す るヒスト ン蛋白質の修飾状態がsilencingに関与していること が知 られて いる。そ こで、 これらの 機構がpDNAのsilencingに関与している可能性につ いて検討した。しかし、メチル化感受性の制限酵素処理に対する抵抗性を指標としたメチ ル化解析の結果、pDNAのいずれの領域(プロモーター領域、ルシフェラーゼ遺伝子領域、

バックポーン領域)においても、メチル化は僅かしか観察されなかった。また、ク口マチン 免疫 沈降法 による解 析から 、pDNAと結合するヒストン蛋白質の修飾状態も大きく変化し ないことが示された。

  この結果を受けて、pDNAが遺伝子導入初期に一過的な活性化状態にある可能性を考え、

pCMV‑luc投 与後、silencingが観 察された時点(4日または14日後)で、生理食塩水のみ のhydrodynamlcs法によ る投与 を行った 。その 結果、silencingを受 けたpDNAの 活性が 再び上昇し、その後、初回の遺伝子導入後と同様の傾向で減少することが明らかとなった。

この ことか ら、pDNAのsilencingの一因が一過的な活性化状態からの回帰であることが明 かとなった。

呈:撞続発現型DNAQ囲登

  外来DNAの 核内動態 解析の 結果、silencingが可 逆的であ り、細 胞核内に おいてpDNA の転写抑制状態と転写活性化状態が相互に変換可能である可能性が示唆された。そこで、

以下に示す2つの観点から発現持続性の向上を試みた。

‑ 1337

(2)

  まず、 積極的 に転写活 性化状 態を維持 するための自己活性化DNAの開発を行った。この 目 的 で 、 酵 母GAL4蛋 白 質 のDNA結 合 ドメ イ ン と単 純 ヘ ルベ ス ウ イル スVP16の 転写 活 性 化ド メ インを 融合し た人工転 写因子GAL4‑VP16を 利用した 。この転 写因子 の結合配 列 を5つ 直 列 に並 べ た もの(G5)をreporter遺 伝 子のTATA box上 流 に付加 すると同 時に、

GAL4‑VP16を 発 現 す るpDNA (activator)のTA、Abox上 流 に も 付 加 し 、positive feed・back100pによって発現が持続化するよう設計した。このactivator′reporterをHeLa 細胞に導入した結果、持続的な発現が観察されたが、この活性は、polyAシグナルの下流へ のG5の組 み込み によって 増強さ れた。さ らに、CMVプ口 モーター 制御下にあるactivator

/reporterの 発現カセ ットの両 端へG5を 組み込む ことに より、CMVプ口 モーター 制御下 の発現 を持続 化させることに成功した。また、同様のシステムを用いて、マウスの肝臓お いてマ ウスア ルプミン (ALB)プ口モ ーター制御下の発現の消失半減期を、18時間から34 時間に延長させることに成功した。

  一方、 これと は異なる 観点か ら、silencingを回避するDNAの開発を試みた。染色体DNA 上でsilencingを回避する能カがあるとされるインスレーター(二ワトリp・グロビン遺伝子 上流に 存在す る4番 目のDNaseI高 感受性部 位;cHS4冫 を利用し 、これ を2個直列に連結し て、発 現カセ ットの両 端に組 み込んだreporterを作成した。Hydrodynamics法を用いて、

肝 臓に お ける発 現持続 性を評価 した結 果、CMVプ口モ ーター制 御下の消 失半減 期を17時 間から、27時間に延長させることに成功した。

  最 後 に 、上 記 の2つ の シ ス テム を 組み合 わせ、発 現カセ ットの両 端にcHS4を2個直 列 に連結したreporter/activatorを構築し、その発現持続性を評価した。その結果、マウス 肝臓においてALBプロモーター制御下の発現を最も高いレベルで維持することに成功した。

[結論]

  以上 、本研 究では、 外来DNAの発現 量低下要 因の解 明を試み 、pDNAの発 現量低下の主 要因がsilencingであることを明らかとした。また、このsilencingが可逆的であることを 見出 し、細胞 核内に おける◎転写活性化状態の維持と◎転写抑制状態の回避と言う2つの 観 点 から 持 続 発現型DNAの開 発を行っ た。そ して、マ ウスの 肝臓にお いてALBプロモ ー ター制御下の発現を持続化できる可能性を示唆した。

  これ らの成 果は、pDNAの 改変に よって、 発現効率および発現持続性の改善が可能であ ることを示すものであり、非ウイルスベクター開発における核内動態制御の重要性を示す ものである。

ー1338―

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

外来遺伝子のsilencing 機構の解析と 持 続 発 現 型 DNA 開 発 へ の 展 開

    非ウィルスベクターを用いる遺伝子治療の実用化に期待が寄せられている。しかし、非   ウ ィルスベ クターの問題点として、プラスミドDNAからの外来遺伝子発現が一過性である   こ とが挙げ られる。落合君はこの問題の解決のために、プラスミドDNAからの発現の一過   性の原因の解明と新たな発現システムの開発を行った。

    最初に落合浩史君は、外来遺伝子の発現量低下要因を解析した。落合君は、導入後のプ   ラス ミドDNAの核内 動態を解 析するた め、CMVプロモ ーター 制御下で ルシフ ェラーゼ を   発現するプラスミドDNAを、hydrodynamics法(高容量急速静脈注射法)を用いて、BALB/c   マウスの尾静脈より投与し、肝臓におけるルシフウラーゼ活性(蛋白質量)及び核内ルシ   フ ェラ ー ゼDNA量 を測 定 し た。 その結 果、導入 後28日後 までにル シフェラ ーゼ活 性は   1/10,000に低下したのに対し、核中のルシフェラーゼDNA量の減少割合は1/26であった。

  ル シフ ェ ラ ーゼ 活 性 をル シ フェ ラーゼDNA量で 除した値 は、プ ラスミドDNA1分子当 た   りの発現効率に相当するが、この値が急激に減少していた。また、落合君は、ルシフェラ   ー ゼmRNAも同様 に急激 に低下す る事を見出した。このことから、落合君は、発現量低下   の 主要因が プラスミドDNA1分子あたりの転写量の低下であることを見出し、silencingと   命名した。

    次 に落合君 は、プ ラスミドDNAのsilencingの原 因を探 索した。染色体DNA上の遺伝子   の 場 合 に は 、 主 と し て2つ の機 構(DNAのCpG配 列 中のCの メチ ル 化 と染 色 体DNAに 結   合するヒストン蛋白質の修飾やその他の結合蛋白質の変化)が発現低下に関わっていると   さ れて い る 。そ こ で 、落 合 君は 、プラ スミドDNAのCのメチ ル化とプ ラスミ ドDNAに 結   合しているヒストン蛋白質の修飾を経時的に調べた。しかし、落合君の予想とは異なり、

  両者ともにsilencingを説明するほどの変化がなく、この両者の関与はほとんどないものと   結論づけた。

    落合君は、silencingの原因の特定には至らなかったものの、その研究過程で積極的に転写   を活性化ずることによりsilencingを回避できる可能性を着想した。そこで、次に落合君は、

  人 工転写因 子GAIA‑VP16を用い、「自己活性化」しっづけることで発現を維持するシステ   ムの 構築を行 った。GAL4‑VP16とは 、酵母G」`M蛋白 質の配 列特異的DNA結 合ドメイ ン

.と単純ヘルベスウイルスVP16の転写活性化ドメインを融合した蛋白質であり、目的遺伝子   上 流にG心4認 識配列 を付加す る事で 特異的に転写を上昇させる事が知られていた。落合   君 は、G」`M認識配列を直列に5つ並べたもの(G5)をルシフェラーゼ遺伝子の上流に付     一1339―

之 吉

芳 雄

谷 島

賀 原

紙 原

有 木

授 授

授 授

准 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

加するとともに、GALA‑VP16遺伝子の上流にも付加し、positive feed‑back loopによって発 現が持続化するよう設計した。さらに、ルシフェラーゼ遺伝子. GAIA‑VP16遺伝子の下流 (polyAシグナルの下流)にもG5を付加する事により、活性化のさらなる増強を見出した。

落合 君は、こ のシス テムを最適化した結果、HeLa細胞において発現が少なくとも4日間は 持続する事を見出した。

  さらに、加vれりにおけるsilencingを回避することを確認するために、マウスアルブミン

(ALB)プロモーターを用いて同様のシステムを構築し、bydrodynamics法によルマウスに 投与した。その結果、通常のプラスミドからのルシフェラーゼ発現の場合と比較して、肝 臓に おける発 現持続 性が向上 してい る事を見 出した(消失半減期が18時間から34時間に 延長)。

  最後に落合君は、染色体DNA上でsilencingを回避する能カがあるとされるインスレータ ーを このシス テムに 導入し、マウス肝臓において心Bプロモーター制御下の発現を最も高 いレベルで維持することに成功した。

  以上 、落合浩 史君は 、プラスミドDNAからの外来遺伝子発現に関して種々の興味深い事 実を明らかにするとともに、発現持続化のための新しいシステムを構築した。落合君の研 究を基盤として、さらなる研究の展開が可能であると思われる。いずれの審査委員も、博 士の学位の授与に十分な研究を行ったものと判断した。

  よって落合浩史君は、北海道大学博士(生命科学)の学位を授与される資格のあるもの と認める。

‑ 1340

参照

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