UV重合型液晶性モノマーを用いたリバースモード型(高分子/液晶)
複合膜の光スイッチング特性
蓮尾 東海*1 山口 雅裕*1
Light Switching Characteristics of Reverse Mode Type (Polymer/Liquid Crystal) Composite Films using UV curable Liquid Crystal monomer
Haruumi Hasuo, Masahiro yamaguchi
電界OFF時に光透過,電界ON時に光散乱状態をとるリバースモード型(高分子/液晶)複合膜の高性能化を目 的とし,液晶セグメントを有する光重合性モノマーの合成及び複合膜セルを作製し,電気光学特性の測定・評価を 行った。その結果,液晶性モノマーに4-cyanophenyl (4-acryloyloxy) benzoate(AcBPCN)を用いて作製したセルは,電 界OFF及びON時光透過率はそれぞれ99.6% 9.0%, (コントラスト:11.1),駆動電圧16.3Vrms,ヒステリシス3.9Vrms, 立ち上がり(τ )及び立ち下がり(τ )応答速度R D 3.6ms 9.5ms 20Vrms, ( )の電気光学特性を示した。
1 はじめに
電気光学表示素子の代表となった低分子液晶を用い た表示素子は,電場による液晶分子の再配列に伴う光 学的変化を利用しており,低電力消費・低電圧駆動か つ小型,薄型,軽量が特徴である。しかし,表示の為 には2枚の偏光板を必要とすることから,暗く視野角 特性に問題がある。これに対し(高分子/液晶)複合 膜は,偏光板を必要しないために明るく視野角特性に 優れている。通常の(高分子/液晶)複合膜は電界無 印加では液晶相と高分子マトリクス界面の屈折率の違 いやダイレクタがランダム配向となるために光散乱状 態で,電界印加により光散乱状態から透過状態に変化 する(ノーマルモード)。(高分子/液晶)複合膜の応 用の面,特に窓などに使用する場合に置いては故障時 に不透明な白濁状態になるという問題点がある。この ため,電界無印加時に光透過,印加時に光散乱となる リバースモード特性が期待されている。
リバースモード型複合膜は,液晶/モノマーの混合 物をラビングにより配向処理を施されたITO透明電極 間で重合反応を行うことにより作製出来き,モノマー としてネマッチク相を有する2官能液晶性モノマーと 正 の誘 電率 異方 性を 持 つ液晶 を 用い てホ モジニ アス
(平行)配向状態で重合する系 と負の誘電異方性を1) 持つ液晶を用いてホメオトロピック(垂直)配向状態 で重合する系2)が報告されている。また,誘電異方性
が低周波数で正,高周波数で負となるような液晶とモ ノマー混合物を用いて低周波の電圧を印加した(ホメ オトロピック配向)状態で UV 重合する系も報告され ている 。この系はラビング処理なしにリバースモー3)
ド型複合膜が作製できる事より注目されている。
しかし,これらの複合膜は高駆動電圧,低コントラ スト等の問題があり,実用化のためには前述の電気光 学特性の更なる向上が期待されている。
本研究は,リバースモード型複合膜の電気光学特性
(コントラスト,ヒステリシス,駆動電圧)の向上を 目的とし,ポリマーネットワークを形成する新規モノ マーの設計・合成を行い,最適モノマー構造の探索,
及び複合膜作製条件の最適化を行っている。前報 で4)
は3種の液晶性ジアクリレートモノマーを用いた複合 膜について検討したが,更なる,モノマー構造また重 合条件の最適化の必要性が示唆された。
*1 化学繊維研究所
今回,新たに2官能液晶性モノマー,及び単官能液晶 性モノマーを合成し,複合膜の電気光学特性に与える モノマー種の影響について検討した。
2 実験
2-1 光重合型液晶性モノマーの合成
2官能液晶性モノマー2,3,5,6-tetraflouro 1,4-phenylene bis{4-[6-(acryloyloxy)hexyloxy]benzoate}( TFPBAHB), 4,4'- bis [6-(acryloyloxy) hexyl oxy] biphenyl(BAHBP), 及び単官能液晶性モノマー4-cyanol 4'-[6-(acryloyl oxy) hexyloxy] biphenyl( C6BPCN), 4-cyanophenyl {4-[6- (acryloyloxy) hexyloxy]benzoate C6PBCN( ),4-cyanophenyl (4- acryloyloxy) benzoate ACPBCN( )を合成した。その 構造式を図-1に示す。
2-2 複合膜セルの作製
液晶性モノマー,液晶 E7(メルク社製 ,及び重合開) 始剤を所定の重量比で混合し,Tc 点以上の温度でキ ャピラリー法によりITO電極付き標準セル(アンチパ ラレル配向処理,10μm 中に導入した 重合反応は) 。 , 室温まで冷却したセルをホットプレート上,所定温度 で所定時間UV照射する事により行った。
2-3 電気光学特性評価法
複合膜の電気光学特性(ヒステリシス,TOFF,TON, コントラスト,しきい値電圧 VT10%,駆動電圧 VT90%, 応答時間τR,及びτD)の測定は電界印加装置 前報( 4) 参照)を用いて行った
3 結果と考察
3-1 2官能液晶性モノマーを用いた複合膜特性
前 報 で は 重 合 開 始 剤 に 2,4-Diethyl-9H-thioxanthen
-9-one(DTX)を使用していたが,今回は重合開始剤
に Dimethoxyacetophenone(DMAP)を用いて複合膜の 作製を行った。
2官能液晶性モノマー 液晶/ (E7)の重量比を 7/93, 重合条件50℃-15分/-10mWcm-2の複合膜作製条件でモ ノマー種の影響を調べた。それらの複合膜の電気光学 特性を表-1 に示す。まず,駆動電圧について比較す る と PBAHB,MePBAHB,MeOPBAHB( 以 上 3 種 は
前報 合成物)4) では 30Vrms 以上と高く,TFPBAHB, BAHBP では 28 ,25Vrms, とやや減少している。駆動 電圧は液晶 ポリマー間の相互作用に大きく影響する- と考えられており,類似した構造を有する前者4つの 中ではフッ素基を有する TFPBAHBが液晶との相互作 用が最も小さいと考えられ,駆動電圧の低下はフッ素 基導入に起因していると推察される。ビフェニル構造を有
する BAHBP は他のモノマーと比較して最も直線的な
構造を取っており,重合後に剛直なポリマーが生成す ると考えられ 液晶との相互作用も低いと考えられる, 。
次に,ヒステリシスを比較すると分子短軸方向に置 換基が有る MePBAHB,MeOPBAHB TFPBAHB, の時 大きく,直線性の高い BAHBP で最小を示した。これ は生成したポリマーの剛直性が高いほど液晶との相溶 性が低下するためと考えられる。以上の結果より低駆 動電圧,低ヒステリシスを達成するにはフッ素基の導 入 及び重合後のポリマーの剛直性の向上 非相溶化, ( ) 等が有効であると思われる。
これまで2官能液晶性モノマー種の影響について調 べたが 駆動電圧はいずれも, 25Vrms以上と高かった。 これは,用いたモノマーが2官能系化合物であるため 高分子ネットワークが密に形成され,高分子による液 晶の界面規制力が大きくなったためと考えられる。駆 動電圧低下のためにはモノマー添加量,及び単官能液 晶性モノマー添加による架橋密度のコントロールが重 要であると考えられる。
3-2 単官能液晶性モノマーを用いた複合膜特性 高分子ネットワークの架橋密度低減のためモノマー として単官能液晶性モノマーを用いて複合膜の作製を 行った。液晶コア部とアクリレート基の間にメチレン スペーサー,及び末端にシアノ基を有する単官能液晶 性モノマー(C6PBCN,C6BPCN) を用いて作製した複 合膜は,電界印加により一瞬白濁状態になるがすぐに 透明状態に戻り,リバースモード特性を示さない事が 明らかとなった。この現象は,モノマー量20mass%ま で増加しても同様であった。
これは,高分子主鎖と液晶コア部間にフレキシブル なメチレンスペーサーが存在するために,液晶コア部 が電界印加により低分子液晶と同様に電界方向に配向 するためと考えられ 上記の現象を改善するためには, , 電界による影響を受けない,もしくは受けにくいポリ マーを形成する液晶性モノマーの設計が必要である。
そこで,高分子主鎖と液晶コア部間にフレキシブル なメチレンスペーサーを持たない単官能液晶性モノマ ー(ACPBCN)を合成し,40℃-30分/2.5mWcm-2のUV 重合条件で複合膜を作製した結果を表-2に示す。
ACPBCN を用いた場合 7mass%ではモノマー不足の
為電界除去後初期透過率に戻らなかったが,モノマー 量 8mass%で 液 晶 の 配 向 が 固 定 化 で き , 駆 動 電 圧 も
20Vrms 以下での駆動が可能であることが明らかとな
った。これはメチレンスペーサーがないために重合後 の高分子液晶が電界の影響を受けにくく,水平配向を 保っているためと考えられる。更なる性能向上を目的 に,ACPBCN 量を 7mass%に固定した系への2官能液 晶性モノマーの添加の影響について調べた(図-2)。
その結果,2官能液晶性モノマー PBAHB 添加量の 増加に伴い駆動電圧は上昇するが,ヒステリシスは減 少 し ,PBAHB 添 加 量 1.5mass%の 条 件 で は 駆 動 電 圧 16.3Vrms,ヒステリシス 3.9Vrms を示した。このヒス テリシスの減少は,少量添加した2官能液晶性モノマ ーにより高分子の架橋密度が増し,生成した高分子と
液晶との相溶性が低下したためと推察される。また,
この条件で作製した複合膜のヒステリシス曲線,及び 電気光学特性を図-3 に示す。駆動電圧 20Vrms,応答 速度 10ms 以下等有る程度の目標値はクリアしている が,コントラスト,及びヒステリシスの更なる改善が 必要である。今後,特に光散乱強度を改善する必要が ある。
4 まとめ
今回,2官能,及び単官能液晶性モノマー用いてリ バースモード型(高分子 液晶)複合膜のモノマー種/ の影響について調べた。その結果メチレンスペーサー を持たない単官能液晶性モノマーAcPBCNを用いた複 合膜は 駆動電圧, 20Vrms以下と良好な結果が得られ, 2官能液晶性モノマー PBAHB の添加により駆動電圧 16.3Vrms,ヒステリシス3.9Vrmsを達成した しかし。 , 依然として,電界印加時の光散乱強度が低く,コント ラストが悪い。今後の方針としては,コントラスト向 上のためカイラル化合物のドープ等を検討する。
最後にこの研究を進めるに当たり適切なご指導頂き ました九州大学の梶山千里教授,菊池裕嗣助教授に深 く感謝します。
5 参考文献
1) R.A.M.Hikmet J.Appl.Phys.vol.68 p.4406(1990): , 2)Y.-D.Ma 他2名:SPIE vol.1257 p.46(1990), , 3)T.Goto 他 1名 :J,Appl.Phys.Lett.,vol.60,p.392(1992) 4)蓮尾東海 他1名:平成10年度福岡県工業技術セ ンター研究報告,p.90