ひずみ分布計測システムによる鋳造アルミ合金の特性評価
春山繁之*1 内野正和*1 貝田博英*1
Verification of the Material Property for Aluminium Casting Alloy using Strain distribution measurement system
Shigeyuki Haruyama, Masakazu Uchino, Hirohide Kaida
鋳造材の信頼性の高い機械的特性の評価を行うためには,欠陥の影響を考慮することが可能な全視野的,かつ局 所的なひずみ計測方法を用いることが有効であることから,デジタル画像相関法により,アルミ合金に関する局所 ひずみの影響について評価検討を試みた。その結果,解析時の画素移動量を所定の範囲に設定することにより精度 の高い変位計測が可能となり,本計測条件を用いることにより鋳造アルミ合金の内部欠陥が試験片の表面ひずみに 影響を与えることを確認した。
1 はじめに
複雑形状を低コストで大量生産できるという利点か ら,鋳物が広く利用されている。しかし,鋳物は,型 に溶けた金属を流し込むという製造方法から,凝固収 縮による巣と呼ばれる空洞や,ノロと呼ばれる酸化物,
およびライニング材との反応によって生じるカス等が,
内部に欠陥として存在する可能性がある。鋳造材はこ れら欠陥の影響1)により,同一材料・形状でも一様な 変形をしないことがあり,内部の欠陥の分布状況も製 造状態のわずかな違いから異なってくる。このことか ら,鋳造材の信頼性の高い機械的特性の評価を行うた めには,欠陥の影響を考慮することが可能な全視野的,
かつ局所的なひずみ計測方法を用いることが有効であ ることから,デジタル画像相関法2)により,アルミ合 金に関する局所ひずみの影響について評価検討を行う。
2 計測に用いたひずみ分布計測システムの特徴 1)局所的な材料特性評価が可能
2)計測部位・範囲を任意に設定できる
3)計測部位全体のひずみ(公称・真)の計測ができ,
コンター図として表示できる
4)任意部位,部位間の変位,ひずみが計測できる 5)複雑な画面操作を極力排除した,ユーザーフレン
ドリーなグラフィカルユーザインターフェイス
2-1 計測方法
本計測システムは,図1に示す画像取り込みソフトウ ェアで画像の記録を行う。このソフトウェアは1度に2
台のカメラから同時に2000×2000画素の画像を取り込 むこと出来るようになっており,一定間隔で8ビットの デジタル画像を連続的にパソコンのハードディスクに 記録することが出来る。また,任意の部位を指定して 取り込むことも出来る。
図1 画像取り込みソフトウエア画面
図2 画像解析ソフトウェア画面
*1 機械電子研究所
図1のソフトウェアで画像を取り込んだ後,図2に示 す画像解析ソフトウェアに画像を読み込ませる。図2 では既に数枚の画像を読み込んでいる。基本的な操作 は,全て画面下に配置されているボタンから行うこと が出来るようになっている。
試験片上のメッシュの領域は解析領域であり,試験 片の解析したい部分をドラッグすることによって,任 意に設定できる。解析開始ボタンを押すことにより,
設定したメッシュの交点に位置する画素全てにおいて,
移動量の計算が行われる。計算終了後,AVS出力ボタン を押すことにより,MicroAVS(株式会社ケイ・ジー・テ ィー社製)形式に計算結果を出力することが出来る。さ らに,メッシュ領域内の任意の2点をクリックすること によって,その2点間距離を評点間距離とした場合の変 位量,公称ひずみ,そして真ひずみを出力することも 可能である。また,このソフトウェアでは,取り込み ソフトウェアで取り込んだ画像を,任意の枚数で飛ば して読み込むことが可能である。さらに画像のキャリ ビレーションを行うための機能として,拡大ウインド ウ を 使 用 す る こ と に よ り , 正 確 な ピ ク セ ル 長 さ (pixel/mm)を簡易に計測できる。本計測システムを用 いてまず初めに,アルミ合金材の歪み計測条件につい て検討を行い,その計測条件を用いて鋳造アルミ合金 の表面ひずみ分布計測を行った。
2-2 アルミ合金材の歪み計測条件の検討
アルミ合金材の変形を計測するため,各種計測条件 を変化させた結果とひずみゲージを貼った試験片によ る引張試験の結果との計測結果を比較することにより アルミ合金を計測するための条件の検討を行った。
2-2-1 供試材
試験片には,変形時の絞りによるひずみゲージの剥 離の影響を極力排除するために,ひずみの分布が比較 的平均的な展伸材アルミ合金A2017材3)を用いた。図3 に試験片形状を示す。また,材料の機械的性質を求め るため,図4に示すように試験片にひずみゲージを張引 張試験により応力―ひずみの関係を求めた。また,同 時にひずみ分布計測システムにより試験片の変形の様 子を,2(frame/sec)の条件で計測した。
図3 引張試験片
図4 ひずみゲージを貼った試験片
2-2-2 計測状条件の検討結果
図5にひずみゲージおよびひずみ分布計測システム により求めた応力とひずみの関係をそれぞれ示す。ま た図6にひずみ分布計測システムでの変形計測の解析 の様子を示す。図から分かるように試験片の変形状態 に対応した解析が行われていることが確認できる。
0 50 100 150 200 250 300
350
図5 応力ひずみ線図
図6 計測システムによる変形解析の様子
3 鋳造材の表面ひずみ分布計測実験
前節で用いた歪み計測条件と同一な条件により鋳造 アルミ合金の表面ひずみ分布計測を行った。その際,
内部欠陥が表面のひずみ分布にどのような影響を与え
400 450
0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0.1 Strain
Sts Pares(M)
るかについて検討を行った。
3-1 実験方法
供試材には,自動車用鋳造材料として多く使用され ている(株)日立金属製のAC4CH材を用いた。また,供試 材は内部欠陥が発生しやすい条件で鋳造を行った。ま た,内部欠陥の確認には,(株)テスコ製マイクロフォ ーカスX線CT装置(HMX225-ACTIS+3)を用いた。
CT装置から得られた試験片断面のスライス画像を,
(株)レキシー製三次元再構築ソフトウェアを用いて3D 化した試験片内部の様子を図7に示す。画像は試験片の 平行部のみを3D化したものでる。欠陥を見やすくする ために,試験片のひとつの表面を切り落として三次元 再構築させたもので,コの字型の部分が試験片の表面 をあらわし,その内部にある塊がボイドを示している。
この画像から,試験片内部に大小様々な大きさの欠陥 が存在していることがわかる。
図7 試験片の内部欠陥の様子
また,欠陥の分布を平面的に観察できるように三面 図にしたものを図8に示す。
図8 試験片の内部欠陥の様子(三面図)
本試験片を用いて引張試験を行い,試験片の変形の 様子をひずみ分布計測システムにより2(frame/sec)の 撮影条件で記録し解析を行った。その際同時に,ビデ オ変位計により評点間の伸びの記録も行った。その後,
引張試験後の内部の変形の様子を確認するため,引張 実験は2.3%まで引張,その後除荷し,再び試験片内部 の様子をX線CT装置により観察した。実験装置の様子を 図9に示す。
図9 計測実験
3-2 実験結果
図10に,ビデオ伸び計から得られた公称応力―公称 ひずみ線図と計測システムより得られた結果を示す。
計測システムの計測結果とビデオ変位計の計測結果は ほぼ一致している。解析によって得られたひずみ分布 のコンター図を,図11(D)〜(G)まで時系列的に示す。
コンター図は,図下から上部にかけてひずみが大きい ことを示しており,最大の箇所は10%のひずみが計測さ れていることを示している。
厚さ方向
F G E
D
0 50 100 150 200 250 300
0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05
Strain
Stress (MPa)
Displacement meter DICM λ=12.6(Pixel/Frame)
図 10 応力ひずみ線図(鋳造材)
D E F G 図 11 ひずみコンター図(引張試験)
次に,このコンター図と前述の欠陥の分布を図12に それぞれ示す。この図から,大きな欠陥が密集してい る位置と,局所的にひずみが大きくなっているところ が対応しているのがわかる。
図12 内部欠陥とひずみコンター図
図13(a)(b)に引張試験前後のひずみ集中部の内部欠 陥の変化の様子を拡大したものと,その部位のひずみ コンター図13(c)に示す。同図から,欠陥の体積が引張 試験前から後にかけて大きくなっており,表面に向か って欠陥が拡大していることも確認できる。これは,
大きい欠陥の密集した箇所で応力集中が起き,局所的 な変形が起こったためと考えられ,このひずみが本計 測システムにより,局所的なひずみとして計測された と考えられる。以上のことから,表面ひずみの計測に より,鋳造欠陥の影響による局所ひずみの変化の評価 が可能であると考えられる。
(a)引張試験前 (b)引張試験後
(c)ひずみコンター図 図13 ひずみ集中部の内部欠陥の変化とコンター図
4 まとめ
本研究では,デジタル画像相関法を用いたひずみ分 布計測システムを用いて,鋳造アルミ合金の計測条件
の検討,ならびに,鋳造材の局所的な材料特性評価を 行い,次のような成果が得られた。
(1)画素移動量を所定の範囲に設定することにより,精 度の高い変位計測が可能である。
(2)所定の計測条件を基に,鋳造材のひずみ分布計測を 行うことにより,内部欠陥が表面ひずみに与える影 響を評価することが可能である。
5 参考文献
1)春山繁之,上西研,貝田博英,小川俊文,関根務:
日 本 機 械 学 会 論 文 集 (A 編 ) , Vol.70 , No.690 , p.82(2004)
2)梅崎栄作:日本実験力学会誌,Vol.3,No.2,p.53 (2003)
3)http://210.225.184.19/alumi/AL00S0001.cfm
1mm