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圧 子 押 込 み 特 性 の 解 析 に よ る硬 さの 評 価 山 田 啓 司

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Academic year: 2022

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(1)論文. MD. 法 に よ る DLC. 薄 膜 の 機 械 的 特 性 の評 価 *. 圧 子 押 込 み 特 性 の 解 析 に よ る硬 さの 評 価 山 田 啓 司**. 上 田 隆 司**. Evaluation. of Mechanical Evaluation. 上 野 康 晴***. 舟 田義 則 †. 粟津. 薫 † †. 杉 田 忠 彰**. Properties of DLC Film with Molecular Dynamics of Hardness by Analysis of Indentation Behavior. Simulation. Keiji YAMADA, Takashi UEDA, Yasuharu UENO, Yoshinori FUNADA, Kaoru AWAZU and Tadaaki SUGITA In order to evaluate the mechanical properties of diamond-like carbon(DLC) thin films formed on the substrate of single crystal copper or aluminum by EBD, the indentation test using Vickers diamond is carried out both in an ultramicro hardness tester and in a computer. Experimental results obtained are compared with those obtained by MD simulation. The natural vibration of carbon atoms in DLC model made by MD simulation using Tersoff potential energy coincides well with the Raman spectra of the DLC film which is measured to characterize the structure. MD simulation makes it possible to observe the mechanical phenomena occurred in the DLC film in the order of atomic scale during the indentation process, and to determine the raw hardness of DLC thin film by means of subtracting the influence of the substrate from the experimental result. Key words: diamond-like carbon, DLC film, Molecular Dynamic Simulation, ultra-micro hardness, Vickers diamond, Raman spectra. 1.. 緒. 言. 近 年 の薄 膜 創 製技 術 の 進 歩 に よ り硬 質膜 の形 成 が可 能 と な り,よ り高 度 な 表 面機 能 が要 求 され るエ レク トロニ ク ス分 野 や光 学分 野,精 密 機 械 な ど多 方 面へ の 応用 が 進 め られ てい る. そ の 中で もアモ ル フ ァス状 炭 素 か らなる DLC (Diamond‑ Like Carbon) 薄 膜 は低 摩 擦係 数,耐 摩耗 性,耐 薬 品性 に優 れ る と共 に,通 常 の ダ イヤ モ ン ド薄膜 で は不 可能 で あ っ た極 め て平 滑 な面 を容 易 に得 る こ とが で きる な ど,優 れ た機 械 的特 性 を数 多 く兼ね備 え た膜 と して幅 広 い応 用 が期 待 され て い る.特 に最近 で は,磁 気 記録 機 器 や 半導 体 装 置 な どへ の 適用 が試 み られ,DLC薄 膜 が 一段 と脚 光 を浴 び る よ うに な って きた.し か し,こ れ らの 最 先端 産 業分 野 へ の 適用 に際 し,マ イ クロマ シ ンにお け る摩擦 や 半導 体 製造 装 置 で の微 細 な粉塵 な ど,原 子 オー ダでの 現 象が 新 た に 問題 とな り,微 視 的 な機 械 的特 性 の 解明 が 重要 な課題 とな って い る. そ こ で本 論文 は,DLC薄 膜 の 原 子 オー ダで の機 械 的特 性 の 評価 を 目的 と し,薄 膜 の動 的 な性 質 や構 造 を評価 す るた め に分 子動 力 学(Molecular Dynamics :MD) 法 を用 い た コ ンピュ ー タ シ ミュ レー シ ョンで の 解析 を試 み る .薄 膜 の 評価 法 と し ては,変 形 特性 を表 わす 指標 と して 最 もよ く用 い られ てい る. (ElectronBeam Deposition:EBD) 法 でDLC膜 を成 膜 した材 料 (成膜 材 料)を 用 い た.各 単 結 晶試 料 は,X線 背 面 反 射 ラ ウエ 法 に よっ て結 晶 方位 を測 定 し,Cu,Alの い ず れ も測 定 面 が (001)で あ る こ と を確 認 した.さ らに,ワ イ ヤ カ ッ ト放電 加 工 機 を用 い て所 定 の方 位 に切 断 し,電 解研 磨 に よ って表 面 を 仕 上 げ た. 圧 子押 込 み 実 験 は,ビ. ッカー ス 圧子 を取 り付 け た超微 小 硬. 度 計(島 津 製作 所DUH‑50)を 用 い た.超 微小 硬 度 計 は防振 台 上 に設置 し,測 定 の際 に は装 置 の時 間安 定性 を考 慮 し, 電 源 投 入 後1時 間以 上経 過 した後 に試 験 を行 った.ま た,空 気 中 の対 流 な どの影 響 を防 ぐため,試 験 中 は装置 を カバ ー で覆 い,さ ら に測 定 値 は試験 結果 が ば らつ くこ と を考 慮 し,1 つ の試 料 に対 し10回 の測 定 を行 い,平 均 値 を採 用 した.硬 さ 測定 は結 晶 方位 の影 響 を考 慮 して,図1に 示 す よ うに圧 子稜 線 を単 結 晶 基 板 の[100]と[110]の2方 向 に合 わせ て試験 を行 っ た(以 下,こ れ らの 試 験 条件 をそ れ ぞ れ[100],お よ び[110]と 呼 ぶ). 試料 の硬 さ評価 は,圧 子 押 込 み 過程 を解 析 す る手 法1)を 用 い,負 荷 速 度 が1.2mN/s,0.24mN/s,0.12mN/sの3つ の条 件 に つ い て行 っ た. 3.. MD. 法 に よ る圧 子 押 込 み シ ミュ レー シ ョ ン. 硬 さ を対 象 と し,実 験 結 果 と シ ミュ レー シ ョ ン結 果 を比 較 す る こ とに よ り,マ ク ロな性 質 と ミク ロな性 質の 両 面 か ら DLC薄 膜 の特 性 を明 らか に す る と と もに,MD法 の有 効 性 を. 晶,Al単. 示 す こ とにす る.. ボ ン を積 層 し た 構 造 のDLC3次. 3.1. シ ミュ レー シ ョン方 法. MD法. を用 い た 圧 子 押 込 み シ ミュ レ ー シ ョ ン で はCu単 結 晶,お. 元 モ デ ル を試 料 と し,ビ. カ ー ス 圧 子 は 完 全 剛 体 の ダ イ ヤ モ ン ドを 想 定 し た(図. 2.. 結. よ び そ れ ら の 基板 上 に ア モ ル フ ァ ス カ ー ッ 2).. 圧 子 押 込 み 実験 方 法. 試 験材 料 と して ブ リ ッジマ ン法 に よ り作 製 され た純度999 %のCuとAlの 単 結 晶 基板,お よ び基板 上 に電 子 ビーム 蒸着 * * *. * * * †. † †. 原稿 受付 正 会 員. 平成 9 年 6 月 9 日 金 沢 大 学工 学 部(金. 学 生会員 正 会 員. 金 沢 人 学 大学 院(現,松下 電 器産 業(株);門 石 川 県 工業試 験 場(金 沢 市戸 水町 口 1). 石川県工 業試験場. 沢 市小 立野 2 ‑40 ‑20) 真 市 1006). Fig. 1 The forms of indentation along (a) the [100] direction and the [110] direction 精 密 工学 会誌. Vol.. 63,. No.. 12,. 1997. 1735.

(2) 山 田 ・上 田 ・上 野 ・舟 田 ・粟 津 ・杉 田 : MD. 法 に よ る DLC. 薄膜 の機械的特性 の評価. (a) Cu model. Fig. 2. Atomic. location. after relaxation. 1. Table. (b) Al model. Potentials. 2. in indentation. MD simulation. (a) Cu model. 293K. of DLC. film on Cu Table. 293K. 293K. (b) Al model. 293K. simulation. conditions. (c) DLC model. 293K. (c) DLC model. 293K. ビ ッ カー ス型 の圧 子 押 込 み に対 して試 料 が 等 方性 の 影響 を受 け る と仮 定 し,試 料 全 体 の1/4を 実 セ ル と す る境 界 条件 を与 え,原 子 間 には 表1に 示 す よ うな ポ テ ンシ ャル2)〜4)を採 用 した.表2にMDシ ミュ レー シ ョンの試 験 条 件 を示 す. CuとAlの モ デ ル はfcc構 造 に配 置 した原 子 に, 293Kに 相 当 す る速 度 を与 え て十 分 に緩 和 した. DLC モ デ ル は,乱 数 を用 い て ラ ン ダム に初 期 配 置 した. Fig. 3 Velocity. models,which. Tersoffポテ ンシ ャル を有 す る炭 素原 子 に5000Kに 相 当す る速度 を与 え,1Mbarの 圧 力 を加 え なが ら 1000Kま. で 冷 却 し た 後,圧. も し くはAl上. に 若 干 離 し てDLCモ. た,緩. で冷. 和 後 の Cu. デ ル を 配 置 し,さ. 和 す る こ と で 膜 は 基 盤 に 吸 着 さ れ,成. らに緩. 膜 試 料 モ デ ル が作 製 さ. れ る. 圧 子 押 込 み シ ミ ュ レ ー シ ョ ン は,293Kで な っ た 試 料 モ デ ル を用 い て132.6m/s, つ の 圧 子 押 込 み 速 度 で 行 い,[100]お 込 み 特 性 を 求 め,実. 2653m/s. よ び[110]の. の 3. 圧子 押. 験 と同様 の方 法 で試 料 の 硬 さを評 価 し. た.試 料 モ デ ル は 最 下 層 でz方. 向 の 原 子 移 動 を 固 定 し,荷 重. は ビ ッ カ ー ス 圧 子 のz方 向 に 加 わ る 力 か ら算 出 した. 3.2. 布 に従 う こ と で 確 認 した.そ て(a),(b),(c)は,そ. の 結 果 を 図3に. の 速 度 分 布 を 示 し た も の で あ り,こ 分 布 はMaxwellの. 示 す.図. 1736. ピ ー ク を持 っ て い る.こ. 熱 平 衡 状 態 と な っ て い る モ デ ル の 動 径 分 布 (Radial. Vol.. 63,. No.. 12,. 1997. れ は ダ イ ヤ モ ン ドの. 結 合 長 さ1.56Aよ. り も若 干 長 い だ け で あ る.原. 以 上 で は,RDFに. 目立 っ た ピ ー ク は 見 られ ず,ア. 構 造 が 得 られ て い る.以. 子 間距 離 2 A モ ル フ ァス. 上 よ り,各 試 料 の 結 晶 構 造 が 妥 当 で. あ る と い え る. さ ら に,薄. 膜 を構 成 す る 原 子 の 固 有 振 動 数 を調 べ,薄. 膜の. の 操 作 は ラ マ ン分 光 法 に よ り散 乱 光 を観 マ ン分 光 法 はDLC薄. 膜 の 構 造評. 示 す .図. 対 応 す る 波 数 の 強 度 分 布 を 求 め た 結 果 を 図5(b)に よ り,EBD法. で 創 製 され た 薄 膜 は,ダ グ ラ フ ァ イ ト(Raman. 示 す. (a). イ ヤ モ ン ド (Raman shift=1333cm‑1). ピ ー クの 間 に な だ らか に 分 布 して お り,一 般 的 なDLC膜 ラ マ ン ス ペ ク トル6)と 同 様 の 分 布 を して い る.一. よ. シ. ミュ レ ー シ ョ ン に お い て 薄 膜 を 構 成 す る 原 子 の 固 有 振 動 数 に. shift=1581cm‑1)と. 精 密工 学 会誌. た, DLC. 造 を ラ マ ン 分 光 法 に よ り評 価 した 結 果 を 図5(a)に,MD. 平衡 状 態 で あ る こ とが. を 調 べ た 結 果 を 図4に. ほ ぼ 等 しい こ とが 分 か る.ま. 薄 膜 は 最 初 に 乱 数 を用 い て 配 置 し た に も か か わ らず 最 短 原 子. にお い. デ ルの 緩 和 後. 各 モ デ ル に つ い て 結 晶 構 造 上 の 妥 当 性 を 確 認 す る た め に, 293Kで. 約. 最 短 原子 間. 価 を 目的 と して 利 用 さ れ て い る5).実 験 で 創 製 した 薄 膜 の 構. 分 か る.. Disthbution Function : RDF). 約2.45A,Alで. な り,一 般 的 に 知 ら れ て い るCuとAlの. 速度分. の 図 よ り各 モ デ ル の 速 度. 理 論 値 と 一 致 し,熱. 短 原 子 間 距 離 の 平 均 値 は,Cuで. 距 離2.55A,3.11Aに. function. (RDF) of the models, which is in equilibrium state at 293K. 察 す る こ と に 相 当 す る.ラ. 子 の 速 度 がMaxwellの. れ ぞ れCu,Al,DLCモ. り,最 2.95Aと. 構 造 を解 析 した.こ. シ ミュ レー シ ョ ンモ デ ル の構 造 解 析. 各 モ デ ル の 熱 平 衡 状 態 は,原. in Fig. 4 The radial distribution. is in equilibrium. 間 距 離1.80Aで 熱平衡状態 と. 66.32m/s,. of atoms. state at 293K. 力 を 除 去 して さ ら に293Kま. 却 す る こ と で ア モ ル フ ァ ス 構 造 を得 た.ま. distribution. のMD法. で 得 ら れ た 原 子 振 動 の 波 数 分 布 は,実. の の. 方, (b). 験 結 果 に比べ.

(3) 山 田 ・上 田 ・上 野 ・舟 田 ・粟 津 ・杉 田 : MD. 法 に よ る DLC. 薄膜の機 械的特性の 評価. (a) Experiment. (b) MD simulation (a) Fig. 6. Fig. 5 Raman. spectra. of DLC. curves. for Cu single. (b). Fig. 7 Parameter. u for Cu single. and Al single loading て ピ ー ク の 位 置 が 若 干 ス ラ イ ド して い る もの の,そ で 作 成 さ れ たDLC薄. load-depth. crystal. film at 293 K (a). 形 状 は よ く 一致 して い る.こ. (b). Indentation. れ よ り,MDシ. crystal. (b). (a). Fig. 8 Hardnass. crystal. crystal. in different. constant. and Al single. different. speed. a for Cu single. loading. crystal. in. speed. の分布の. ミュ レー シ ョン. 膜 モ デ ル が 実 際 のDLC薄. 膜 とほぼ 同. 一. 構 造 で あ る こ とが わ か る. 以上 の 検 討 よ り,緩 和 後 の 各 モ デ ル が 熱 平 衡 状 態 を示 し, 結 晶 構 造 上 も 妥 当 で あ る こ とか ら,圧. 子押 込 み シ ミュ レ ー. シ ョ ン に こ れ ら の モ デ ル を 用 い る こ と に す る.. 4. 4.1 4.1.1. 実 験 結 果 及 び シ ミ ュ レ ー シ ョ ン結 果. 単結 晶 試 料 の圧 子 押 込 み 試 験 圧 子 押 込 み 速度 の 影 響. 基 板 に 使 う 単結 晶CuとAlの を 図6に. 示 す.(a)が. 圧 子押 込 み 試験 を行 った結 果. 実 験 結 果,(b)が. シ ミュ レ ー シ ョ ン. (a). 結 果 で あ り,.圧 子押 込 み 速 度 を 変 化 して い る.こ. れ らの 実 験. 結 果 よ り荷 重pと圧 子 押 込 み 深 さdの 問 に は,次. の 関係 が 成. 26.53. m/s. (Cu. [100]). m/s. (Cu (100]). り 立つ.. (1) た だ し,a,uは. 材 料 や 測 定 条件 で 決 ま る 定 数 で あ る.. 図6の. 結 果 に 式(1)を. 図7,8で. あ る.図7(a)よ. 当 て は め,定. 数u,aを. り,定 数uは. 求 め た結 果 が. 圧 子押 込 み 速 度 や試. 験 材 料 の 種 類 に 影 響 を受 け ず 一 定 と な り,u≒1.65と な って い る.一 方,MDシ ミュ レー シ ョ ン に お い て も定 数uは 押 込 み 速 度 に 依 存 せ ず 一定 と な り,そ の 値 もu≒1.65と と 一 致 して い る.こ る と考 え られ,ビ. れ よ り,定 数uは. 圧 子 形状 の み に依 存 す. ッ カ ー ス 圧 子 を用 い た 場 合 は 常 にu=1.65. あ る と推 定 で き る.uが. 一定 の 値 を と る こ と か ら,定. 材 料 の 硬 さ を 表 す こ と に な り,aを. (b) 132.6. 実験結果 で. 数a が. 硬 さ定数 と呼 ぶ こ とにす. Fig. 9 Distribution. of moved. to 0.2 nm for Cu single. distance crystal. of atoms in different. from depth 0 nm indenting. speed. る1).. 精密 工 学会 誌. Vol.. 63,. No.. 12,. 1997. 1737.

(4) 山 田 ・上 田 ・上 野 ・舟 田 ・粟 津 ・杉 田 : MD. 法 に よ る DLC. 薄膜 の機械的特性 の評価. 図8に. 圧子 押 込 み 速 度 に 対 す る 硬 さ 定 数aの 変 化. を示 す.圧子 定 数aが. 押 込 み 速 度 が 速 くな る と と も に 硬 さ. 大 き くな る 傾 向 に あ り,押. 込 み速 度 が速 く. な る と材 料 が 硬 く作 用 す る こ と が わ か る.こ 向 は 添 字Mを. 編 で も 観 察 さ れ る. こ の 現 象 を 詳 細 に 検 討 す る た め,MD法 て,圧子. の傾. 付 け て 表 わ す シ ミュ レー シ ョ ン結 果. を0nmか. ら0.2nmま. に おい. で 基 板 に 押 し込 む 過. 程 で の 原子 移 動 量 とポ テ ン シ ャ ル の 変 化 量 を 算 出 し た.代. 表例 と し て 押 込 み 速 度 が(a)26.53m/s. と. (b) 132.6m/s を 比 較 し た 結 果 を図9に 示 す.図 中 の 単線 は 移 動 方 向 を 示 す.図9よ り,押 込 み 速 度 が 速 い(b)に (b). (a) Fig. 10. Hardnass. constant. a-depth. d curves. for Cu single. お い て 広 い 範 囲 で ひ ず み が 増 大 し,. 系 の ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー の 増 加量 も173.2eV (a) の41.2eVよ 分 か る.材. crystal. と. り は る か に 大 き くな っ て い る こ とが. 料 内 に 蓄 積 す る ひ ず み エ ネ ル ギ ー が,. 圧子 が 行 っ た 仕 事 量で あ る こ と を 考 慮 す る と, エ ネ ル ギ ー の 増 加量 は,そ. の 間 圧子 に 加 わ る 力 の 大 き さ を 示 す. と考 え る こ とが で き る.し. た が っ て,押. 込 み速 度 が 大 きい場. 合,図9に 示 す よ う に広 範 囲 に 大 き な ひ ず み を 形 成 す る た め エ ネ ル ギ ー の 増 加 量 が 大 き く な り,硬 さ を 表 すaが 大 き く な っ た と 解 釈 で き る. 4.1.2. 圧 子 押 込 み方 位 の影 響. 圧 子 押 込 み 方 位 の 影 響 を 調 べ る た め に[100]お [110]の. 圧子 押 込 み 特 性 を 求 め た.得. 硬 さ定 数aの MDシ. 関 係 を 図10に. 示 す.(a)が. ミ ュ レー シ ョ ン結 果 で あ る.い. 向 を 示 して お り,fcc構. よび. ら れ た 押 込 み 深 さd と 実 験 結 果,(b). が. ず れ の 結 果 も同 様 の傾. 造 の 銅 単 結 晶(001)面. で は, [110]. 方 向 に 圧子 稜 線 を 合 わ せ た と きの 方 が 硬 さ 定 数aが. 大 き く,. 硬 く作 用 して い る こ と が 分 か る. こ の 現 象 を 考 察 す る た め,MD法 ら0.2nmま. (a) [100] (Cu, 132.6m/s). を 用 い て,圧子. を0nm. か. で 基 板 に押 し込 む 過 程 で の 原子 移 動 量 と ポ テ ン. シ ャ ル の 変 化 量 を算 出 した.そ 図 は,圧子. れ ら の 結 果 を 図11に. 示 す.. 押 込 み 中 心 付 近 の 断 面 図 と して モ デ ル 全 体 の 1/4. の み を 示 し た も の で あ る.(a)が[100],(b)が[110]で. あ. る が,図. に 付 した ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー の 増加 量 よ り,. [110]の. 押 込 み の 方 が 蓄 積 す る ひ ず み エ ネ ル ギ ー が 大 きい こ. とが 分 か る.ま. た,[100]の. 押 込 み は,圧子. 押 込 み 中心 か ら. 深 さ 方 向 に 円 柱 状 に ひ ず み が 増 大 して い る の に 対 し, [110] の 押 込 み で は,圧子 し て い る.す. 接 触 面下 に お い て 半球 状 に ひ ず み が 増 大. な わ ち,圧子. て い る こ と に な り,こ 向 で 硬 さ 定 数aが. (b)[110] (Cu, 132.6m/s). よ う に,結 Fig. 11 Distribution. of moved. distance. to 0.2 nm in indentation. of atoms. from depth 0 nm. 接 触 面 の広 い範 囲で押 込み を支 え. の た め 図10に. 方 の. 晶 方 位 の 影 響 で 圧子 押 込 み に 対 す る 材 料 の 変 形 形. 態 が 異 な る こ とが わ か る. 以上 の よ う に,MD法. process. 見 る よ う に,[110]. 大 き く な っ た と 考 え る こ と が で き る.こ. シ ョ ン に よ り,硬. 様 の 傾 向 が 得 ら れ,結 る こ と か ら,こ. に よ る 圧子 押 込 み シ ミュ レ ー. さ定 数a,定. 数uと. もに実験 結 果 と同. 晶 方 位 の 影 響 も 調 べ る こ とが で き. の モ デ ル に よ り圧子 押 込 み 現 象 を十 分 再. 現 で き る こ とが わ か っ た. 4.2. DLC. 4.2.1. 成 膜 材 料 の 圧 子 押込 み試 験. 成膜 材 料 の 硬 さ. 薄 膜 の 硬 さ測 定 は,膜 る た め,超. 厚 や 基 板 材 料 の 硬 さ に 影 響 され. 微 小 硬 度 計 を用 い る 従 来の 測定 法 で は膜 本 来. の 硬 さ を 評 価 す る こ と が で き な い.そ 料 の 測 定 硬 さ にMDシ. こ で,DLC成. 膜材. ミュ レー シ ョ ン結 果 を 適 用 す る こ. と に よ り,測 定 硬 さ か ら基 板 材 料 の 影 響 を 除 い た 膜 本 来 (a). Fig. 12. 1738. (b). a-d curves. 精 密 工 学会 誌. Vol.. 63,. for DLC. No.. 12,. films on Cu single. 1997. crystal. の 硬 さ を 導 出 す る 手 法 を検 討 して み る. Cuの. 単 結 晶 板 を 基 板 に 用 い たDLC成. 膜 材 料 の 硬 さ試.

(5) 山 田 ・上 田 ・上 野 ・舟 田 ・粟 津 ・杉 田 : MD. (a). Fig. 13. 法 に よ る DLC. 薄膜 の機械的特性 の評価. (b). a-dR curves. for DLC. films on Cu single. Fig. 15 The curves. crystal. hardness. of effect. coefficient. on relative. Cu single. crystal. of substrate. depth dR for DLC. films on. and Al single crystal. by MD. simulation. Fig. 14. a-d curves. 験 を 行 っ た.異 定 数aの. for DLC. by MD simulation. な る 膜 厚 の 試 料 に 対 し,押. 関 係 を 調 べ た 結 果 を 図12に. よ う に,実. 込 み 深 さdと 硬 さ. 示 す.図12(a)に. 験 に お い て 成 膜 材 料 の 硬 さ は,押. ほ ど基 板 材 料Cuの. (a) DLC0.31nm film on Cu(001)[100] (Indenting speed : 132.6m/s). 硬 さに 近 づ き,膜. 示す. 込 み深 さが増 す. 厚 が 薄 くな る ほ ど そ の. 傾 向 は よ り小 さな 押 込 み 深 さで 現 わ れ て い る.と. こ ろ が,. 子の 押 込 み 深 さdを 膜 厚 で 除 し た圧子 相 対 押 込 み 深 さdR 図12を. 整 理 しな お した 図13を. 見 る と,膜. 圧 で. 厚 に 関 係 な く1 本. の 曲 線 で 表 さ れ る こ とが わ か る. 一 方 ,MD法 に よ っ て 押 込 み シ ミュ レー シ ョ ン を 行 っ た 結 果 を 図12(b),図13(b)に. 示 す が,実. 験 結 果 と同様 の 傾 向が. (b) DLC0.31nm film on Al(001)[100] (Indenting speed : 132.6 m/s). 得 ら れ て い る. 4.2.2. 基 板硬 さの影 響 度. 成 膜 試 料 の 硬 さaは,基. Fig. 16. 板 材 料 の 硬 さ をas,膜. をaf,基 板 硬 さ の 影 響 度 をRと. す る と,前. Distribution. 報1)よ. position. り. 分 か る.す. (2) と 表 さ れ る.そ (2). こ で,MDシ. ミュ レ ー シ ョ ン に 対 して も, 式. が 成 り 立つ と仮 定 し,添 字Mを. ミ ュ レー シ ョ ン で は DLC. 膜 本 来 の 硬 さ 定 数 編 を求 め る こ とが で き る.そ 押 込 み 深 さdが. ら,こ. れ ら の 値 を 式(3)に. が で き る.そ. き くな る と と も に 影 響 度Rは 近 い 値 を持 ち,薄. 示 す.相. to depth 0.38 nm in indentation. な わ ち,圧. process. 子の 押 込 み 深 さが 薄 膜 の 厚 さ と 同 程 度. ら か いAlを. 基 板 に 用 い た 場 合,Cu基. 板 よ り もRの. 方,. 軟. 値 が大 き. 成 膜Al試 み た.押. 薄. 一 定値 に収. 料 と DLC. 料 の圧 子 押 込 み 過 程 に お け る 原 子 挙 動 を 観 察 し て 込 み 深 さd=0.38nmで. の 原 子移 動 量 の 分 布 図 を 図 16. れ ぞ れ の 図 に は,DLC薄. 膜 と基 板 の ポ テ ン シ ャ. ル エ ネ ル ギ ー の 増 加 量 を 示 した .図16よ た 方 が,基. 膜Cu試. り,Alを. 基板 と じ. 板 内 に ひ ず み の 増 大 す る 範 囲 が 広 く,Al基. に 蓄 積 す る ひず み エ ネ ル ギ ー も 大 き く な っ て い る.ま. 板内 た, モ. あ る こ とが 分 か る.. デ ル全 体 に対す る基 板 材料 の ひず みエ ネル ギ ーの 占め る割 合. り与え られ る こ とか. は,DLC成. 代 人 して 影 響 度Rを. の 結 果 を 図15に. from starting. に な る と,薄 膜 の 硬 さ は 測 定 で き な い こ と に な る.一. に 示 す.そ. の結 果 を図. 大 き くなる に従 い. 束 して お り,afMは 約2284mN/μm1.65で 畠 方 ,asMは 図10(b),aMは 図13(b)よ. of atoms. 基 板 材 料 の 影 響 を 検 討 す る た め,DLC成. 薄 膜 単独 の モ デ ル に 対 して 圧 子押 込 み 試 験 が で き,DLC 14に 示 す.圧子. distance. くな っ て お り基 板 硬 さ の 影 響 が 現 わ れ や す い こ と が 分 か る.. 付 け て 表す と. (3) と 書 き 直 す こ と が で き る.MDシ. of moved. 本 来の 硬 さ. 求め るこ と. 対 押 込 み 深 さdRが. 大 き くな り,dR≒1付. 大. 近 で1 に. 膜 の硬 度 の影響 が ほ とん どな くな る こ とが. 膜Al試. 料 の 方 が 大 き く な っ て お り,基. を よ りつ よ く受 け て い る こ と が わ か る.こ 材 料 は 軟 ら か い ほ ど 大 き く変 形 し,成. 板 の影 響. の 結 果 よ り,基. 板. 膜 材 料 と して は,基. 板. の 影 響 を よ り受 け や す い こ と を 示 し て お り,図15の. 結果を. よ く 説 明 して い る.. 精 密工 学会 誌. Vol.. 63,. No.. 12,. 1997. 1739.

(6) 山 田 ・上田 ・上 野 ・舟田 ・粟津 ・杉 田 : MD. 法 による DLC. 薄膜の機械 的特性 の評価. く圧 子押 込 み 速度 に も依 存 せず に成 立 し,ビ ッカー ス圧 子 を用 い た場 合 は8≒1.65で あ る. (2) 圧 子 押 込 み 速度 の増 加 と と もに,よ り広 範 囲 に ひずみ を 形成 す るた め 試料 の硬 さ定 数aは 増 す. (3) 薄膜 材 料 にお け る基 板硬 さの影響 度Rは,薄 膜 の膜厚 や 圧子 押 込 み 速度 に よ らず1つ の単 調 に増 加 す る 曲線 で 近 似 で きる. (4) MD法 に よ り,DLC薄 膜 単 独 の 試 料の 硬 さ評 価 を行 うこ とが で きる.そ れ を もとに得 られ た基 板硬 さの影 響 度 を 用 い る こ とでDLC成 膜 材 料 の 測定 値 か ら膜 本 来 の硬 さ を求 め る こ とが で きる. 終 わ りに,CuとAlの 単 結 晶 試料 を提 供 して頂 い た金 沢 大 学 工 学部 金 属 材料 研 究 室 の 北 川和 夫 教授 に感 謝 致 します. [付 Fig. 17. Measured constant. Table. hardness af for DLC. 3 Raw hardness. 4.2.3. DLC. constant. a and raw hardness. films on Cu single. constant. of for DLC. crystal. films by experiment. 録]. 基板 硬 さの 影響 度Rを 圧 子 押 込 み深 さdで 整 理 す る と, 膜 厚 や 圧子 押 込 み速 度 に よ って 変化 す る.と こ ろが,Rを 相 対 押 込 み深 さdRで 整 理 す る と,こ れ らの 量 に関 係 な く1本 の 曲線 で表 す こ とが で きる1).図 は ガ ラス 基 板 に金 薄膜 を製膜 した と きの 結 果 で あ るが,影 響 度 曲線 は圧 子押 込 み 速度 に依 存 しな い こ とが分 か る.. 薄膜の硬 さ. 式(2)に お い て,Cu基 板 の硬 さ定 数 へ は図10(a)で 与 え られ,押 込 み 深 さ 儀 にお け る成 膜 試料 の硬 さ定 数a及 び基 板 材料 の影 響 度Rは そ れ ぞ れ図13(a)及 び 図15で 与 え られ る こ とか ら,こ の と きのDLC薄 膜 の硬 さ定 数afを 求 め る こ と が で きる.得 られ た結 果 を図17に 示 す.実 験 に よ るaは dR が 大 き くな る と と もに減 少 して基 板 のCuの 硬 さ に近づ い て い くが,導 出 したafはdRに 依 存 せ ず 一定 値 を とっ て お り, 薄膜 本 来 の硬 さが 求 ま った と考 え る こ とが で き る. こ の方 法 を適 用 して,基 板材 料Cu,お よ びAl上 に異 な る. Fig. A. 膜 厚 で成 膜 したDLC薄 膜 の膜 本 来 の 硬 さ を,測 定 硬 さか ら 導 出 した 結 果 を表3に 示 す.硬 さ試験 の押 込 み 速 度 も変 えて い る.表3よ り,DLC薄 膜 の硬 さ定 数afは,す べ て の成 膜 材 料 にお い て,押 込 み 速度 の増 加 と と もに硬 く作 用 す る傾 向 が 見 られ,同 じ押 込 み 速度 で はDLC薄 膜 の厚 さ にか か わ らず, ほ ぼ同 一 の値 が 得 られ て い る こ とが分 か る.し た が って, MD法 で 得 られ た影 響 度 を用 い る こ とに よ って,押 込 み 深 さ や膜 厚 に関係 無 く,基 板硬 さの 影響 を受 け ないDLC薄 膜 本 来 の 硬 さ4を 算 出 で きる. この結 果 よ り,MDシ ミュ レー シ ョンを微 視 的 な分 子 レベ ルの 解析 だ けで な く,実 験 結 果 か らマ ク ロ情報 を引 き出 す手. relative. 舟 田 義 則,粟. 津. coefficient depth. 考. 薫,杉. of substrate. dR to thickness. 文. hardness. on. of films. 献. 田 忠 彰,西. 誠,加. 藤. 昌:. 圧 子 押 込 み 特 性 の 解 析 に よ る 超 硬 質 薄 膜 の 硬 さ評 価 , 精 密 工 学 会 誌,61,9(1995) 1290. 2). 稲 村 豊 四 郎,鈴. 木 裕 幸,武. 澤 伸 浩:銅. と ダ イ ヤ モ ン ドの. 原 子 配 列 モ デ ル に よ る 計 算 機 内 で の 切 削 実 験,精 密 工 学 会 誌,56,8(1990). 3). 4) 結. of effect. indentation. 参 1). 段 と して も利 用 で きる可 能 性 が あ る こ とが わ か る 。 5.. The curves. 言. 1480.. N.Ikawa, Sh.Shimada and H.Ohrnori : An Atomistic Analysis of Nanometric Chip Removal as affectedvby Tool-Work Interaction in Diamond Turning, Ann CIRP, 40, 1 (1991) 551. J.Tersoff : Empirical Interatomic Potential for Carbon , with Applications to Amorphous Carbon, Phys. Rev. Letters, 61,25 (1988) 2879.. DLC薄 膜 の原 子 オー ダーで の 機械 的特 性 の 評価 を 目的 と し,薄 膜 の動 的 な性 質 や 構 造 をMD法 を用 い た コ ン ピュ ー ター シ ミュ レー シ ョ ンで 解析 した.得 られ た結 果 を要約 す る と以 下 の よ うに な る. (1) 圧 子 押 込 み特 性 の 関係p=aduは,試. 1740. 精 密工 学 会誌. Vol.. 63,. No.. 12,. 料 の種 類 だ け で な. 1997. 5). ダ イ ヤ モ ン ドに 関 す る 研 究(5.ラ ヤ モ ン ドの 特 性 づ け),科 書,39(1984). 6). 50.. 吉 川 正 信:ラ 評 価,The. マ ン分 光 法 に よ る ダ イ. 学 技 術 庁 無 機 材 質研 究 所 報 告. TRC. マ ン 分 光 法 に よ る ダ イ ヤ モ ン ド(状)膜 News, 35 (1991). 16.. の.

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参照

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