2
2.
.科学的研究と科学的研究と統計統計手法手法2.1 科学的研究の進め方―仮説演繹法
科学的研究の進め方は
W
型解決法を応用するとわかりやすい※W型解決法は
KJ
法で有名な川喜田二郎博士が考案した問題解決法。書斎科学…主として頭の中で行う作業だけで成立する科学 野外科学…現場の調査や観測が中心になる科学
実験科学…実験や試験を中心にした科学
<仮説演繹法の手順>
(1) 問題提起
問題を提起して研究テーマを明確にする。科学的研究の最も重要な段階であり、研究テーマを 短い文章(ミッションステートメント)で表現していつも意識しておく。
理論・仮説の 確認・修正
調査観測 実験
試験 理論仮説
問題提起 実質科学的
評価 客観的事実
(
定量的)
客観的事実(
定性的)
思考レベル
野外科学 実験科学
経験 レベル
W
型解決法の応用による仮説演繹法の手順 推論直感
考察 フィードバック
フィードバック
探索 的ア
プロ ーチ
調査 計画
法・
PE R T
演繹的 推理
・確 認的 微積 分学
・実 験計
画 記 法
統述 学計
・
K J
帰法 的納 理推 発・ と想 統合
測推 計統 学 納帰 整的
・理 証検 書斎科学
(2) 調査・観測
調査・観測などの探索型研究を企画・立案・実施し、結果を科学的に解釈し評価する。探索型 研究は研究テーマに関する理論やモデルを組み立て、仮説を設定するための材料を集めることが 主目的。スクリーニングや予備実験がこれに相当する。
計画を立案する段階で、ある程度の理論と定性的な仮説を想定しておく。そして検証型研究で 用いる評価項目と評価指標を選択するために、なるべく多くの候補項目を観測する。
(3) 理論構築・仮説設定
探索型研究で得られた結果に基づいて理論やモデルを組み立て、それから導かれる定量的な 仮説を設定する。仮説は、理論やモデルの妥当性を評価することができるものにする。
(4) 実験・試験
実験・試験などの検証型研究を企画・立案・実施し、結果を科学的に解釈し評価する。検証型 研究は仮説を検証し、理論の妥当性を評価することが主目的。検証試験や本実験がこれに相当 する。
計画を立案する段階で、仮説を検証するための評価項目と評価指標、そして統計手法と有意 水準、信頼係数等を決定し、必要例数を計算する。
(5) 理論・仮説の検証または修正
検証型研究で得られた結果に基づいて、仮説を検証または修正し、理論を検証または修正す る。これにより新たな問題提起や理論修正を行ない、適当な研究段階にフィードバックする。
日本人の体重が医学的に正常かどうか検討する
作業仮説:日本人の平均体重は医学的な正常値
50kg
よりも10kg
重い日本人の平均体重は
58
~62kg
であり、正常値50kg
よりも少し重い2.2 科学的研究の種類とデザイン
科学的研究には観察的研究と実験的研究がある
科学的研究の種類とデザインを統計学的に理解するためには、原因と結果を次のような
2×2
分割表(4分表)にまとめたものが役立つ。結果:無 結果:有 計
原因:無
a b (a+b)
原因:有
c d (c+d)
計
(a+c) (b+d) N
科学的研究のデザインを統計学的な観点から理解する
(1) 観察的研究
原則として、研究者が直接的な介入や管理を行わない研究法。疫学研究や社会学研究でよく 用いられる。
1) 横断的研究
ある時点におけるデータを横断的に観測する研究法。
原因と結果の分割表において、全体の例数
N
を指定し、ある時点における原因と結果の有無を調べて
a、b、c、d
を観測する。原因の有無も結果の有無も指定せずに観測する研究法。科学的研究
観察的研究
アンケート調査等 横断的研究
実験的研究
前向き研究
後ろ向き研究
コホート研究等
症例対照研究等
動物実験等
疾患:無 疾患:有 計 危険因子:無
55(55%) 5(5%) 60(60%)
危険因子:有25(25%) 15(15%) 40(40%)
計
80(80%) 20(20%) 100(100%)
このデザインでは全体の例数
N
を分母にし、a、b、c、d、(a+b)、(c+d)、(a+c)、(b+d)の割合を計算 する。原因が例えば喫煙のような危険因子で、結果が例えば肺癌のような疾患の時、次のような 値が定義できる。危険因子の出現率(危険因子頻度):
p R = c+ d N = 40
100 = 0.4
疾患の有病率(prevalence):p d = b +d
N = 20 100 =0.2
四分点相関係数(ファイ係数):ϕ= a d −b c
√ ( a+ b)( c+ d)( a+ c)( b+ d ) =
15 ×55−25×5
√ 40×60× 20× 80 ≈ 0.357
クラメールの連関係数:
V =θ= | a d −b c |
√ ( a + b)(c+ d)( a +c)( b +d ) =
| 15×55− 25× 5 |
√ 40×60 ×20×80 ≈ 0.357
※四分点相関係数(ファイ係数):2×2分割表における相関係数
※クラメールの連関係数:2×2分割表の関連性または独立性または適合度の指標
1
度数あたりの実現度数と理論度数の食い違い量を表す<横断的研究の特徴>
・比較的手軽で迅速に実施できる。
・因果関係の検証はできない。
・主として探索的研究や予備調査に用いられる。
・アンケート調査やスクリーニング調査が代表例。
2) 前向き研究
ある時点から未来に向かってデータを観測する研究法。
原因と結果の分割表において、原因無の例数(a+b)と原因有の例数(c+d)を指定し、それらの群 について結果の有無を経時的に調べて
a、b、c、d
を観測。原因の有無を指定し、結果の有無を観測する研究法。
疾患:無 疾患:有 計
危険因子:無
40(80%) 10(20%) 50(100%)
危険因子:有20(40%) 30(60%) 50(100%)
計
60(60%) 40(40%) 100(100%)
このデザインでは(a+b)を分母にして
a
とb
の割合を計算し、(c+d)を分母にしてc
とd
の割合を 計算する。(a+b)と(c+d)の例数を任意に指定できるため、危険因子の出現率と疾患の有病率も任意の値
にすることが可能。そのため、このデザインではそれらの値は定義できない。代わりに次のような値 が定義できる。危険因子有群における疾患の発症率:
p + = d c +d = 30
50 =0.6
危険因子無群における疾患の発症率:p - = b
a + b = 10 50 = 0.2
リスク差(絶対危険度):RD=p + −p - = d
c+ d − b
a + b = 0.6 −0.2 =0.4
リスク比(相対危険度):
RR= p +
p - = d (a + b ) b( c+ d ) = 0.6
0.2 =3
危険因子有群における疾患オッズ:O + = d
c = 30 20 =1.5
危険因子無群における疾患オッズ:O - = b
a = 10
40 =0.25
オッズ比:
O R= O + O - = d / c
b / a = a d
b c = 30× 40 10×20 =6
※オッズ(見込み比):有の確率と無の確率の比
※オッズ比:ある群のオッズと別の群のオッズの比 この場合は危険因子と疾患の関連性の指標
<前向き研究の特徴>
・実施に手間と時間がかかる。
・因果関係の検証が可能。
・主として検証的研究に用いられる。
・コホート研究が代表例。
※コホート:共通した因子を持ち、時間を追って観察される集団
3) 後ろ向き研究
ある時点から、過去にさかのぼってデータを観測する研究法。
原因と結果の分割表において、結果無の例数(a+c)と結果有の例数(b+d)を指定し、それらの群 について過去にさかのぼって原因の有無を調べて
a、b、c、d
を観測。結果の有無を指定し、原因の 有無を観測する研究法。疾患:無 疾患:有 計
危険因子:無
40(80%) 20(40%) 60(60%)
危険因子:有10(20%) 30(60%) 40(40%)
計
50(100%) 50(100%) 100(100%)
このデザインでは(a+c)を分母にして
a
とc
の割合を計算し、(b+d)を分母にしてb
とd
の割合を 計算する。(a+c)と(b+d)の例数を任意に指定できるため、危険因子の出現率と疾患の有病率、発症率と相
対危険度と疾患オッズも任意の値にすることが可能。そのため、このデザインではそれらの値は定 義できない。代わりに次のような値が定義できる。疾患有群における危険因子オッズ:
O d = d b = 30
20 =1.5
疾患無群における危険因子オッズ:O c = c
a = 10 40 =0.25
オッズ比:
O R= O d O c = d / b
c /a = a d
b c = 30× 40 10× 20 = 6
※この場合のオッズ比は危険因子オッズの比だが 結果的に前向き研究の疾患オッズの比と一致する
<後ろ向き研究の特徴>
・心筋梗塞のような稀な疾患の研究に適している。
・因果関係の検証はできない。
・主として探索的研究に用いられる。
・稀な疾患では検証的研究に用いられることもある。
・症例対照研究が代表例。
(2) 実験的研究
研究者が直接的に介入し、結果に影響を及ぼす要因を管理して行う研究法。化学実験や動物 実験でよく用いられる。
実験的研究は必ず原因の有無を指定して結果の有無を観測するため、デザイン的には前向き 研究と同じ。
臨床試験は実験的研究に相当するものが多く、臨床研究は観測的研究に相当するものが多い。
臨床試験では、結果に影響を及ぼす要因を全て管理するのが不可能な場合が多い。そのため に考案された試験法が、被験者を無作為に原因無群(対照群)と原因有群(薬剤投与群)に分けて 結果を比較する「無作為化比較対照試験(RCT:Randomized Controlled Trial)」。
さらに心理的なプラセボ効果を均等にするために考案された試験法が、対照群にプラセボ(偽 薬)を投与して、被験者と評価者にブラインドをかける「二重盲検法(Double Blind Method)」。
<実験的研究の特徴>
・実施に手間と時間がかかる。
・因果関係の検証が可能。
・主として検証的研究に用いられる。
・化学実験や動物実験が代表例。
2.3 データの種類
統計学で取り扱うデータは尺度によって
3
種類に大別される<サンプルデータ>
(1) 尺度によるデータの分類
・尺度…データが表している情報の性質によってデータを分類する基準
1) 計量値(計量尺度)
身長
160cm、体重 60kg
のように、測る性質のデータ。最も一般的なデータで、計量尺度(metricscale)のデータまたは計量データともいう。
データが具体的な連続した数値で与えられ、数値と数値の間隔が等しいため四則演算が可能。
絶対
0
点があるかないかで、比例尺度(ratio scale)と間隔尺度(interval scale)に細分される。i) 比例尺度
体重や濃度のように、絶対
0
点が存在する計量データ。データ
計量値
絶対
0
点あり 計量尺度計数値
比例尺度
測る 間隔尺度
順序尺度
名義尺度 数える
絶対
0
点なし 順序あり順序なし
計量データ
順序データ
分類データ
データとデータの間に比例関係があり、データの値が大きくなるほど変動も大きくなる性質が ある。現実のデータでは最も一般的。
・主な要約値…平均値、幾何平均値、標準偏差、変動係数
幾何平均値:
m * =( x 1 ×⋯×x i ×⋯×x n ) 1/ n =( ∏
i=1 n
x i ) 1/n
log (m * )= 1 n ∑
i= 1 n
log ( x i )
変動係数:
CV= SD m
・例…サンプルデータの年齢、検査値
1~3、重症度指標 ii) 間隔尺度
ある点からの距離のように、絶対
0
点が存在しない計量データ。データとデータの間に比例関係はなく、データの値とは無関係に変動は一定という性質がある。
統計学で取り扱う最も一般的なデータ。
・主な要約値…平均値、標準偏差
・例…サンプルデータの年齢、検査値
1~3、重症度指標
実際の研究現場では比例尺度と間隔尺度を厳密には区別せず、どちらも計量尺度として取り 扱うことが多い。
2) 計数値
男
10
人・女15
人のように、数える性質のデータ。対象の属性をいくつかのカテゴリーに分類して、各カテゴリーに属する例数を数える。
カテゴリー間に順序が付けられるかどうかで、順序尺度(ranking scale)と名義尺度(nominal
scale)に細分される。
i) 順序尺度
重症・中等症・軽症・無症状といった疾患の重症度のように、カテゴリー間に実質科学的な順 序が付けられる計数データ。
アンケート調査などではよくあるデータで、順序尺度のデータまたは順序データともいう。
このデータは、原則として軽症+中等症=重症というような四則演算を行うことはできない。そ のためデータそのものではなく、データに順位を付け、その順位を用いて色々な統計計算を行う。
・主な要約値…順位和、順位平均値、中央値(データを小さい順に並べた時の中央の値)
順位和:
T r = ∑
i= 1 n
i= n (n + 1) 2
順位平均値:
m r = T r
n = n +1 2
・例…サンプルデータの検査スコア
1
と2 ii) 名義尺度
疾患の有・無、男・女のように、カテゴリー間に実質科学的な順序が付けられない計数データ。
医学・薬学分野ではよくあるデータで、名義尺度のデータまたは分類データともいう。
このデータは男+女=恋愛というような四則演算を行うことができないだけでなく、データに順 位を付けることさえできない。そのためデータの度数(例数)に注目し、それを用いて色々な統計計 算を行う。
・主な要約値…度数、割合、最頻値(度数が最も多いデータ) 割合:
p= f
n (f
:度数n
:全例数) 有=1、無=0と数値を割り当てると:m = 1
n ∑
i =1 n
x i = f + n =p +
→ この時の平均値は有の割合p +
になる( f +
:有の度数)・例…サンプルデータの喫煙、家族歴、疾患
順序が付けられても、2分類しかなければ実際上は名義尺度として扱うことが多い。
データの尺度合わせは不可能ではないが、やらない方が良い
データは計量尺度→順序尺度→名義尺度の順に情報量が少なくなり、「レベルが低い」と表 現される。
・尺度合わせ…レベルの高いデータをレベルの低いデータに変換すること
逆尺度合わせ、つまりレベルの低いデータをレベルの高いデータに変換することは、特別な場 合を除いて不可能。
原則として尺度合わせはしない方が良い。元のデータが持っている情報を最大限有効に利用 することが大切である。→第
3
章第2
節参照名義尺度 順序尺度 計量尺度
データのレベル
低
高 (データのレベルを落とす尺度合わせは可能 )
逆尺度合わせは 通常は不可能
(
データのレベルを上げる)
体重の実測値体重を軽・中・重 に分類
体重を軽量級と 重量級に
2
分データには対応のある場合と対応のない場合がある
(2) 標本の数によるデータの分類
・標本…標本集団から得られた一連のデータ
1) 1
標本第
1
章の100
名の体重のデータのように、 1つの標本集団から得られた1
種類のデータ。最も基本的なデータ。
2) 多標本
2
標本以上ではデータに対応があるかないかで取り扱い方法が変わる。3
標本以上の時は2
標本を拡張した手法を適用するため、原理は同じでも手法の名前が変わ る時がある。i) 対応のあるデータ
お互いに共通の基盤――同じ被験者、同じ動物等――があるデータ。データ間に相関関係が ある。
原則として、同一項目について時期を変えて得られた
2
つのデータ――反復測定データ――は 平均値や差や比を計算し、3つ以上のデータは平均値を計算し、1標本にして取り扱う。同時に得られた
2
項目のデータは相関分析や回帰分析によって、3項目以上のデータは多変50 → 52 → 55
120 → 140 → 135
収縮期血圧 開始時
4
週後8
週後被験者
2 69 → 68 → 70
130 → 128 → 125
対応のあるデータ 対応のあるデータ
対応のあるデータ 被験者
1
開始時
4
体重週後8
週後対応のないデータ
量解析によって項目間の関係を要約する。
ii) 対応のないデータ
共通の基盤がないデータ。データは独立であり、データ間に相関関係はない。
2
つ以上の群から得られたデータは、要約値を比較してそれらの群が同じ母集団から得られた ものかどうか検討する。データの尺度と標本の数に対応した統計手法
1
標本 対応のある2
標本 対応のない2
標本 対応のある多標本 対応のない 多標本
計量尺度
1
標本t
検定 対応のあるt
検定(1
標本t
検定) 相関分析 回帰分析対応のない
t
検定(2標本t
検定)二元配置分散 分析
多変量解析 時系列解析
一元配置分 散分析 多変量解析
順序尺度
ウィルコクソ ンの
1
標本検 定ウィルコクソンの 符号付き順位検 定(ウィルコクソン の
1
標本検定) スペアマンの順位 相関係数ウィルコクソン の順位和検 定(ウィルコク ソンの
2
標本 検定、マン・ホ イットニィのU
検定)フリードマンの 検定
拡張マンテル 検定・一般化 拡張マンテル 検定
クリスカル・
ウォーリスの
H
検定名義尺度
二項検定
χ
2検定符号検定
マクネマーの検定
4
分点相関係数フィッシャーの 正確検定
χ
2検定マンテル・ヘン ツェルの検定
コクランの
Q
検定多変量解析 生存時間解析
(生命表解析)
χ
2検定 多変量解析2.4 研究デザインと統計手法
科学的研究の目的は科学法則の発見と確立
気体の体積
V
を変化させると圧力P
が変化し 温度を変化させるとV
が変化する↓ 因果関係あり
Vと
P
は反比例し、TとV
は正比例するPV=一定、V=aT+V0
→PV=nRT
ボイル・シャルルの法則↓
理想気体の状態方程式
PV=nRT
ボイルの法則
V
P V
-273 0 T PV=
一定V=aT+V
0
V
0シャルルの法則
ある項目と別の項目の間に因果関係があるか?
原因項目が結果項目にどのような影響を与えているか?
その関係を関数で表すとどのようになるか?
科学法則の発見
横断的研究から得られたデータには相関分析系の統計手法を適用
科学的研究の第一段階では、探索型研究によって関連性のありそうな項目を探索する。
この段階では
2
つの項目の間の相関性を探索→相関性と因果関係は異なるので注意!・相関性…相互関連性のことで、2つのデータがお互いに影響を与え合っている状態
2
つのデータの間の因果関係の有無や方向がわからない時、つまりどちらが原因でど ちらが結果かわからない時に、2つの項目の間の現象論的な関連性を表すこともある。・因果関係…一方のデータが原因になり、もう一方のデータに結果として影響を与えている状態 図 2.1 横断的研究における 2 項目のデータ
項目
1
相関係数r=0.816
データは重心を中心にして上下左右に変動 相関方向にはより変動しやすい 項目
2
m
1m
2横断的研究によって
2
つの項目の間の相関性を検討どちらの項目にも誤差変動がある時は相関分析を適用し
2
つの項目の間の相関性を相関係数によって要約・相関係数…2つのデータの直線的な大小関係が一致している程度を表す指標 相関性の指標として用いることが可能。
相関係数を求め、それがどの程度信頼できるか検討する手法を相関分析という。
相関分析は
2
つのデータのどちらにも誤差変動がある時、つまり横断的研究で得られ たデータを解析するための手法。相関性のある項目が見つかると、因果関係の有無と方向を検討する。これは統計学で行うので はなく、実質科学的な理論や知見に基づいて検討する。
<例>
・図
2.1
の項目1
が薬剤の用量で、項目2
が薬剤効果の指標の時→薬理学的知見に基づいて、「薬剤の用量が多いほど薬効が強くなる」という仮定が 成り立つ。
前向き研究から得られたデータには回帰分析系の統計手法を適用する
↓
※右回りに
90
度回転して表にすると前向き研究の2×2
分割表になる効果:無 効果:有 計
薬剤:無 40(80%) 10(20%) 50(100%) 薬剤:有 15(30%) 35(70%) 50(100%) 計 55(55%) 45(45%) 100(100%)
科学的研究の第二段階では、検証型研究によって因果関係を検証する。
前向き研究によって
2
つの項目の間の因果関係を検証結果項目だけ誤差変動がある時は回帰分析を適用し
2
つの項目の間の因果関係を回帰直線によって要約図 2.2 前向き研究における 2 項目のデータ
説明変数が 名義尺度の時
目的変数が 順序尺度の時
両方の変数が 名義尺度の時
(
回帰係数の検定回帰分析)
2
標本t
検定(
平均値の差の検定)
ウィルコクソンの
2
標本検定(
順位平均の差の検定) χ
2検定(
出現率の差の検定)
回帰直線y=3+0.8x
y=1.4+1.5x
y=6+5x
y=0.2+0.5x 6
11 5
0.7
0:
無1:
有y
y y
3
0.8
1 1
0.5 0.2
1.5 2.9
0:
無0:
無1:
有0:
無1:
有1:
有 回帰誤差の分布回帰直線をデータは 中心にして 上下に変動
1.4
x:
薬剤の用量y:
効果x:
薬剤の有無x:
薬剤x:
薬剤の有無y:
効果のグレード1
1
この段階では
2
つの項目の間の因果関係を検証し、それを適当な関数で表す。医学・薬学分 野の場合、その関数を直線で近似することが多い。・回帰直線…2つの項目の因果関係を直線で近似したもの
回帰直線を求め、それがどの程度信頼できるか検討する手法を回帰分析という。
原因項目を説明変数または独立変数、結果項目を目的変数または従属変数という。
回帰分析は説明変数には誤差変動がなく(研究者が任意の値を指定するため)、目的 変数にだけ誤差変動がある時、つまり前向き研究で得られたデータを解析するための 手法。
・回帰係数…回帰直線の傾き
説明変数が
1
増加した時、目的変数が平均的にいくつ変化するかを表す値。回帰分析では回帰係数の推定と検定を行うことができる。
(1) 説明変数が名義尺度の時
説明変数:薬剤の用量、目的変数:効果→説明変数:薬剤の有無にすると、
回帰直線:薬剤無群の効果の平均値と、薬剤有群の効果の平均値を通る直線 定数:薬剤無群の効果の平均値
回帰係数:2群の効果の平均値の差
回帰係数の推定と検定: 2 標本 t 検定 ( 平均値の差の検定と推定 )
(2) 説明変数が名義尺度、目的変数が順序尺度の時
説明変数:薬剤の有無、目的変数:効果→目的変数:効果のグレード(著効・有効・やや有効・
無効等)にすると、
回帰直線:薬剤無群の効果の順位平均と、薬剤有群の効果の順位平均を通る直線 定数:薬剤無群の効果の順位平均
回帰係数:2群の効果の順位平均の差
回帰係数の推定と検定: ウィルコクソンの 2 標本検定 ( 順位平均の差の検定と推定 )
(3) 説明変数が名義尺度、目的変数も名義尺度の時
説明変数:薬剤の有無、目的変数:効果→目的変数:効果の有無にすると、
回帰直線:薬剤無群の有効率(効果有の出現率)と、薬剤有群の有効率を通る直線 定数:薬剤無群の有効率
回帰係数:2群の有効率の差
回帰係数の推定と検定: χ 2
検定 ( 出現率の差の検定と推定 )
1
標本の場合は基準値と比較するため、回帰直線の定数項が誤差変動のない定数になる。変数の尺度によって回帰係数の検定が色々な名前の検定手法になるが どの手法も因果関係を直線で近似する回帰分析の一種
回帰直線→近似的な科学法則
図 2.3 1 標本データの回帰分析
目的変数が 順序尺度の時
両方の変数が 名義尺度の時
1
標本t
検定(
平均値の検定)
ウィルコクソンの
1
標本検定(
順位平均の検定)
二項検定(
出現率の検定)
y=2.5x
y=50+10x
y=0.5+0.2x 50
60 10
0.7
0 1
1
2.5
0 1 0:
非肥満0 1
1:
肥満y:
肥満度y:
体重y
0.5 0.2
変数の尺度に対応した回帰分析系の統計手法
目的変数
Y
(誤差変動あり )
計量尺度 順序尺度 名義尺度
説明変数
X (誤差変動なし)
計量尺度 回帰分析
(回帰分析)
(ロジスティック回帰
分析)コクラン・アーミテージの 傾向検定
ロジスティック回帰分析 順序尺度 回帰分析
(回帰分析)
(ロジスティック回帰
分析)コクラン・アーミテージの 傾向検定
ロジスティック回帰分析
名義尺度
1
標本t
検定2
標本t
検定分散分析
ウィルコクソンの
1
標本検定ウィルコクソンの
2
標本検定(ウィル コクソンの順位和 検定)クリスカル・ウォーリ スの
H
検定二項検定
χ
2検定後ろ向き研究では、結果項目の値を研究者が指定するため結果項目には誤差変動がなく、原 因項目に誤差変動がある。
・原因項目に誤差変動がある時の統計手法(判別分析系の統計手法)を適用する
・結果項目にも擬似的に誤差変動があると考えて相関分析系の統計手法を適用する
・原因項目の誤差変動を擬似的に結果項目の誤差変動と考えて、回帰分析系の統計 手法を適用する。
後ろ向き研究は因果関係を検証するための研究デザインではないため、回帰分析系の統計手 法を適用しても因果関係を検証することはできない。
第第
2 2
章章 演習問題 演習問題第
1
問 次の文章について正しいものには○を、間違っているものには☓
を付けよ。(1) 検証型研究は仮説を組み立てるためのデータを収集することが目的である。( ) (2) 観察的研究では原則として研究者は直接的な介入はしない。( )
(3) 同じ被験者について治療前後に測定した 2 つの体重データは対応のあるデータである。
( )
(4) 変動係数は中央値を標準偏差で割った値である。( )
(5) レベルの高いデータをレベルの低いデータに変換することを尺度合わせという。( )
第
2
問 次の文章の括弧の中に、下記の罫線枠の中から適当な語句を選んで入れよ。臨床試験は研究者が介入する( 1 )に相当するものが多く、臨床研究は介入をしな い( 2 )に相当するものが多い。そして介入する場合は、介入の効果を厳密に検討する ために、被験者を介入群と非介入群(対照群)に無作為に分けて結果を比較する( 3 ) が考案されている。また薬剤の臨床試験では、心理的な( 4 )を均等にするために対照 群にプラセボ(偽薬)を投与し、被験者と評価者にブラインドをかける( 5 )が考案されて いる。
実験的研究 観察的研究 希望的観測 無作為化比較対照試験 無芸大食人畜無害 プラセボ効果 鰯の頭も信心から 二重盲検法 多重人格法
第
3
問 次の文章の括弧の中に適当な語句を入れよ。統計学で取り扱うデータは測る性質のものつまり( 1 )と、数える性質のものつまり ( 2 )に大別できる。( 1 )は計量尺度のデータとも呼ばれ、要約値として ( 3 )や( 4 )などを用いる。( 2 )はさらに( 5 )の データと( 6 )のデータに細分される。( 5 )のデータは疾患の重症度のよう
にカテゴリー間に実質科学的な順序が付けられるもので、要約値として( 7 )や ( 8 )などを用いる。それに対して( 6 )のデータは性別のようにカテゴリー 間に実質科学的な順序が付けられないもので、要約値として( 9 )や( 10 )などを用いる。
第
4
問 薬剤A
と薬剤B
の効果を比較するために、20
名の患者を無作為に10
例ずつ2
群に分け、薬剤A
と薬剤B
を投与してその効果を観察したところ下表のような結果になっ た。この表について薬剤と効果に関する有意義な指標を求め、その結果について考察せよ。効果無 効果有 計
薬剤
A
投与群5 5 10
薬剤
B
投与群1 9 10
計
6 14 20
第