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数の近似

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Academic year: 2021

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現代数学への流れ

浪川 幸彦 April 25, 2007

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数の近似

1.2 小数計算と誤差の評価

1.2.1 例題

初回の課題を考えてみよう:

問.log102: 0.3010, log103: 0.4771であることをも使って,log10n, n = 1,2, . . . ,10(の 近似値)を求めて下さい。

問での近似値は正確に言えば

log102 = 0.3010±5×10−5, log103 = 0.4771±5×10−5

ということである。

したがって解答は次のようになる:

変数 計算式 近似値 誤差限界 真の値

1 = 1 0 0 0 0

2 = 2 0.3010 5×10−5 0.3010

3 = 3 0.4771 5×10−5 0.4771

4 = 22 2×0.3010 0,6020 1×10−4 0.6021 5 = 10/2 10.3010 0.6990 5×10−5 0.6990 6 = 2×3 0.3010 + 0.4771 0.7781 1×10−4 0.7782

7 後述

8 = 23 3×0.3010 0.9030 1.5×10−4 0.9031 9 = 32 2×0.4771 0.9542 1×10−4 0.9542

10 = 10 1 0 1

1

(2)

log107. 48 = 24×3<49 = 72 <50 = 102/2に注意すると,

1

2log1048 = 0.84085×10−4;

1

2log1050 = 0.8495 + 2.5×10−5

より,log107 = 0.845±5×10−3. 真の値は0.8451.

1.2.2 誤差の限界の見積もり

近似計算では,誤差を持つ量を扱って,出した結果の誤差を評価する。

また計算する際,不必要な精度で計算を行わないように,当初の精度を無駄に悪くしてしま わないように制御する。すなわち,当初の誤差の影響の計算と,計算誤差による新たな誤差 の評価をする。まずは前者について考えよう。

二つの(絶対)誤差を持つ量(近似値)x=a±∆a, y =b±∆bがある。

Theorem 1.2.1. 近似値の和と差の絶対誤差の限界は,それぞれの絶対誤差の限界の和に等

しい。

Definition 1.2.2. ∆a/aを相対誤差という。

Theorem 1.2.3. 誤差が十分小さければ,近似値の積と商の相対誤差の限界は,それぞれの相

対誤差の限界の和に等しい。

1.2.3 近似値の計算結果の誤差限界,丸めの規則

量を小数で表したとき,どこまでが信用できる値であるかが分かっているが,真の値が分 からない場合がある。このような値を計算処理した結果がどこまで信用できるかについても,

評価を行うことができる。容易に次のような規則が得られる。

●丸めの規則I.近似値の足し算引き算では,結果の小数部分の桁数は,与えられた近似値の うち小数部分の桁数が最も少ないものに合わせる。

Remark. 大きい方の数については,10のべきを使って,有効桁数を明示することが望ましい:

345000でなく3.45×105 のように。

●丸めの規則II.かけ算と割り算では,結果の有効数字は,与えられた近似値の有効数字の 少ない方と同じ数だけ残す。

●丸めの規則III.平方と立方を求めるときには,結果の有効数字はもとの近似値と同じ数だ け残す。

ただし,最後の桁の数字は必ずしも信用できない。

●丸めの規則IV.平方根や立方根を求めるときには,結果の有効数字は元の近似値と同じ数 だけ残す。

この場合最後の桁の数字は逆に信用を増す。

(3)

●丸めの規則V.計算途中では,これまでの規則で決まるよりも一つ多い桁まで取る。

ただし最後の結果では,その数字を棄てる。

●丸めの規則VI.与えられた数字が他よりも良い精度を持っているときは,一桁だけ他より 多くしておいて後は丸める,等々

1.3 方程式の近似解法

方程式f(x) = 0の解を求める問題を考える。どんな場合にも適用できる,一般的な方法

として「一次補間法」と「ニュートン法」がある。

いずれにせよ,これは関数y= f(x)を近似して,得られるものなので,本質的には後半 の話題である。したがってここでは最も簡単な場合の記述にとどめる。

1.3.1 一次補間法

区間(a, b)に方程式の実解がただ一つあることが分かっており,f(a)f(b)<0, f00(x) 6= 0 あるとする。するとこのグラフy=f(x)は上に凸であるか,下に凸である。

このとき,f(x)を,(a, f(a)),(b, f(b))を通る直線 y =f(a) + f(b)f(a)

ba (xa) で置き換えてその零点

b1 =a f(a)(ba) f(b)f(a) を近似値とするのが,一次補間法である。

これは数表の間の値を補間するときなどによく使われる。

誤差が大きいときは2次補間を使う場合もあるが,1次補間を繰り返す方が方法としては簡 単。

Remark. 一般にn+ 1個の点を定めて,そこで値が一致するようなn次多項式を求めること

ができる(Lagrangeの補間法)(後述)。

1.3.2 ニュートン法

もう一つの方法は,f(x)を,(a, f(a))での接線

y=f(x) =f(a) +f0(a)(xa) で置き換える。すると新たな近似値として

a1 =a f(a) f0(a) が得られる。

この方法は上の補間法でbaに近づいて一致した極限と考えられる。

(4)

前回の出席レポートについて

●問題:1 = 0.999. . .を証明して下さい

[解答例]

0.999· · · = 0.9 + 0.09 + 0.009 +· · ·

= 0.9(1 + 0.1 + (0.1)2+ (0.1)3+· · ·)

= 0.9 lim

n→∞

1(0.1)n 10.1

= lim

n→∞(1(0.1)n) = 1

[講評]:上のような数学的な証明を与えた人と,いわゆる通俗的な「証明」を書いた人が半 ばしています。後者のほとんどは

1/3 = 0.333. . . . 両辺を3倍して1 = 0.999. . . .

x= 0.999. . .とおき,両辺を10倍すると10x= 9.999. . . . 最初の式を引いて9x= 9. えにx= 1.

というものでした。しかしこれらは「証明」とは言えません。いずれも“. . .”のきちんとし た数学的定義を与えずに議論しているからです。上の解答例での第1行目がそれに当たりま

す。特に1/3 =は問題を言い換えているだけで,何もしていません。後者の「証明」は形式

的に小数点以下が消えますが,そうしていいことはきちんとした定義を元に示されなければ なりません。無限級数の足し算引き算をするときに注意が必要なことはご存じのはずです。

数学的な定義がはっきりしないままの推論は「説明」であって,「証明」ではありません。

ただし新しいことを見つけるために,ある程度無謀な議論をしてみるのは許されることで す(これをheuristicな議論と言います)。しかしその場合にも最終的には数学的に厳密な議 論によって正当化しなければなりません。

●ゼノンの背理のうち,アキレスと亀の話を説明し,その「正しい」解釈を与えて下さい。

[解答例][ゼノンの主張]アキレスの走る速さが亀より速いとしても,アキレスが亀のいた 地点に達するときは亀はすでに前にいくらか進んでいる。アキレスが再びその時の亀の地点 に達したとき,亀は再び前にいくらか進んでいる。このようにしてアキレスが亀の1ステッ プ前にいた所に到達するたびに亀はさらに前に進んでいるので,アキレスはいつまでもか目 に追いつくことができない。

[解釈]この考察では時間が考慮されていない。アキレスが各ステップで亀の前にいた地点 に到達するための時間を考慮する必要がある。例えばアキレスの速さが亀のそれの2倍であ るならば,追いつくために要する時間はステップ毎に半分になっていく。したがってこのス テップを積み重ねてもそれに要する時間は,最初にアキレスが初め亀のいた地点に到達する のに要した時間の倍を超えることはない。時間がちょうど倍になったときにアキレスは亀に 追いつく。つまりゼノンの主張はアキレスが亀に追いつくまでは追いつくことができないと いう当たり前のことを言っているに過ぎない。

[講評]かなり良く出来てはいましたが,とても有名な話なのに,名大生で知らない人がか

(5)

なりいるのはちょっと残念な気がします。インターネットで検索をするなどして調べてみて 下さい。

ゴールデンウィークの宿題

次々回講義(5月9日)までの間に,何でも結構ですから(ただし教科書,演習書,雑誌 記事の類はダメ),数学に関する本を1冊読み,それについてレポートを書いて下さい(選 んだ理由,内容の紹介,内容に対する意見,そこから自分の得た新たな知見・考え方等)。

・長さはA4レポート用紙2〜3枚(ワープロ印刷),3〜5枚(手書き)程度(もっと長くて もいい)。提出は5月9日授業時。電子メールによる提出も可(ただしファイル様式はpdf,

MSWordのいずれか)。

・電子メールで受け取ったときは必ず受領した旨の返信メールを出します。したがって送っ てから3日経っても受領の返事が来ない場合には未着の可能性があるので,確認のメールを 出すか,再送信してください。

・レポートには学生番号・氏名および読んだ本の著者名・書名・出版社名を最初に必ず明記 してください。

・このレポートは返却しません。

連絡先

研究室:理1号館506号室

オフィスアワー:木曜日11:30〜12:30(それ以外の場合は事前にアポを)

E-mail : [email protected]

Tel.: (052-789-) 4746

Website : http://www.math.nagoya-u.ac.jp/˜namikawa/

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