章 環 境 問 題 と 化
この章では,改めて環境問題を僻献し,全体像を把握すると共に,個別の 問題における化学的な側面を解説する.化学が,問題の原因,発生機構に深 く関わっている例もあるし,また,その解決に化学,化学技術が貢献した例 や貢献できる場合も多い.
‑ 重 量 4 . 1 現代の環境問題一概要
1 9 9 0 年代はじめの環境白書は. 公害別の記述になっていて,公害として大 気,水質,土嬢 ・地盤,騒音 ・振動,悪臭,生物汚染,廃棄物があげられている.
この中には,悪臭, 騒音, 地盤のように解消されつつある問題がある 一方で,
土壊汚染や廃棄物のように拡大している問題もある.また ,このほかに地球 規模で新しく起こった環境問題や,経済・社会と深い関わりが認識された例 もある.現状を 表 4 . 1にまとめて示す.地球環境問題としては, 地球温暖化,
オゾン層破壊,酸性雨,熱帯林減少,砂漠化, 海洋汚染,野生生物種の減少,汚 染物の越境移動,貧困に起因する環境問題があげられる
警 4 . 2 地 球 温 腰 化 問 題
地球温暖化とは,対流圏,成層圏中の 二酸化炭素, メタン. CFC ( ク ロロ フ ルオロカーボン類) .一酸化二窒素 ( N
20 )などの温室効果ガスの濃度が高く なり,地表の気温が上昇することをいう.地球温暖化の問題を考えるには,
『化学の指針シリーズ化学環境学~ ( 御 園 生 誠 著/裳華房)
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第
4章 環 境 問 題 と 化 学
表
4.1主な環境問題 項 目
地球温暖化
オゾン層破嬢 酸性雨
森林破壊 土地劣化 水質汚染 大気汚染
廃棄物問題 化学物質 ヒート アイランド
被害 ・ 影響
20世紀で
0.6.C上昇 将来の不安
生態系の被害(未確認) 森林,魚類への影響 (日本では未確認) 年間
0.3%減少 年間
2 %弱減少 有機物,重金属
窒素・硫黄酸化物.粒子状物質 光化学オキシダント
処理コスト ,景観,汚染 健康,生態系
火災,爆発
その他(騒音,振動,悪臭,地盤) 広義の環境問題
エネルギー ・資源供給不安,価格の上昇 食 糧
水 生物多様性 人口増加
供給不足(地域的不均衡)
供給不足(地域的不均衡) 生態系の変化
希少生物種消滅
資源,エネ ルギー不足,所得 格差
主な原因, メカニズム 人間活動によリ発生する温室効果 ガスが主因.ただし,太陽活動と の相関もあり
CFC
の使用, 地表の紫外線量僧大 火山活動,化石燃料からの SOx
伐採
過放牧,過剰農業,自然現象など 産業 ・ 農業・生活排水,管理不備 化石燃料,火山活動
大量生産 ・ 消費,管理不備 リ スク管理不備,情報不足
大都市化
( ヱネルギー消費密度大)
多くの資源が,枯渇性で可採年数 は 5 0 年程度
増産の鈍化,人口増,個人消費増 (肉食増)
人口,人間活動の増大
人間活動の増大や自然環境の変化
まず,温室効果ガスによる地球温暖化のメカニズムと ,温室効果ガスの濃度 変化,地球平均気温の変化の実態,および温室効果ガス以外の気温変動要因 の四つを把握 しておかなければならない.
まず,温暖化のメカニズムであるが,温室効果とは, 地表に吸収された主
に短波長(主に紫外線領域)の太陽エネルギーが,地表に吸収されてから長
波長の赤外線領域のエネルギーとして宇宙に向けて再放出される際,大気中
全入射太陽 エネルギー:
π
R
2S 。
全球反射太陽エネルギー : π
R2SoA‑ = : 1 ナ 4 f
一 / 汐町~ R7ガ {
放射エネルギー:
一 一 一 一
4πR
2εσT
S4表面温度:
Ts地球断面積
π :
R2j
図4.1
地球温暖化のメカニズム(単純化したモデル図)
の温室効果ガスに より吸収され,その吸収されたエネルギーの半分が再び地 表へ向 けて放射されて戻ってくることに よって地表が暖 まる現象である.
このことを簡単なモデルで確認しておこう.大気および地表を均質層と仮 定すると, 地表の エネルギー収支は, 図 4 . 1を参考にして,
π R
2S
0( 1 ‑A)
=4 πR
2ε σT
S4( 4 . 1 ) と表せる.左辺第 1 項が太陽から地上へ入射するエネルギー( 地球断面積に 比例) .右辺が地表から逸散するエネルギーである (地球表面積に比例) .こ こで .R は地球半径.5, 。 は太陽定数と 呼ばれるもので.太陽から 地球 ( 地上 ではない)へ入射する単位断面積当たりのエネルギー .A は太陽光に対する 全球平均反射率(ア ルベ ドという .通常 0 . 3 とされる ) . ε は 地表面からの赤 外線の宇宙への逸散割合(温室効果に依存 し ,現在は 0.6 程度) . σ はステ
ファン
ーボルツマン定数• T s は全地球平均地表温度.ここで,地表に供給さ れるその他のエネルギーは,太陽エネルギーの 1 . 0 0 0 分の l 程度なので無視
してい る. ( 4 . 1)式を書き換えると,
T
S4 =S O ( 1 ‑ A) / 4e σ ( 4 . 2 )
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第
4章 環 境 問 題 と 化 学
となり,これに,
e= l . 0 (温室効果がなく 地表からの放出エネルギーがすべ て宇宙へ逸散する場合) , S o =1 , 367W m ‑
2, A=0.3 , σ = 5 . 6 7
X1 0 ‑
8W m ‑ 2 K ‑ 4 を代入すると , T
s= 2 5 5 K (= ‑ 1 8 O C) となる.現在の平均気温 2 8 8 K より 33K 低い 現実の大気は温室効果があって,前記のように ε= 0 . 6 程度なので約 15t である .ε の値が増加するとそれに応じて地表温度が上 昇することになる
各種の温室効果ガスの地球温暖化への寄与の大きさを, 二酸化炭素をl. 0
として相対的に表した係数を,その気体の地球温暖化係数というが,この値 は,大気中の寿命,赤外線吸収能を用いて 1 0 0 年間について, 二酸化炭素 l . 0 , メタン 2 , 1 ‑酸化二窒素 3 1 0 のように計算される. 主な温室効果ガスの濃度 変化を図 4 . 2 に示す.近年,増加の傾向にあるが,増加率 は 気体により異な る(縦軸の原点が気体により違うことに注意) .なお, ここにはあげていない が,地球温暖化係数が大きい CFC や HCFC ( ハイドロフルオロカーボン,
CFC の水素置換体)の発生は,次節で述べるように日本では近年大幅に低下 していて,地球温暖化防止に相当貢献しているはずで=あるが,京都議定書で はカウントされない ( 第 8 章コラム ( p .1 5 7 ) 参照) •
濃度と温暖化係数を考慮すると,温室効果が最大の気体は二酸化炭素であ る
t1人為的に放出された 二酸化炭素の約半分が大気中に残存する. 二酸化 炭素として世界で年間 2 5 2 億 t ( 炭素基準, 6 9 億 t ) が人為的に排出され,京 都議定書の基準年 1 9 9 0 年に対し 1 3 %程度増加し た ( 2 0 0 3 年)
t2.日本の排 出 量 は 1 2 . 8 億 t ( 2 0 0 4 年) , 一人当たりでは約 1 0 t / 年であり,基準年 1 9 9 0 年 に対し 11%増加.他の温室効果ガスも 二酸化炭素に換算して含めた場合,
排出 量 はl3 . 8 億 t で , 1 9 9 0 年比で約 1 0 %増加.部門 別では 産業部門 4 . 6
T 1
温 室効果の寄与度 は , 産業革命以後の 通 算で。 C0
260% , メ タ ン
20%.CFC . HCFC 1 4 %
.N
206
%大気中の
CO2の正味の増加量の大部分 は化石燃料の燃焼 に起因する 森林減少に よる分が
20‑25%とする試算があ る
口 世界各国の
CO2排 出量 京都議定書批准国
29% (EU 18.ロシア6.日本
5).米国
22% . 中 国
18% . インド
4%( 了
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事 当
一酸化二 窒素
310
290
(D
aa )O同
Z
270 r . .
一 」
2000 年
温室効果ガスの大気中 濃度変化(
二酸化炭素,メタン,
一酸化二窒素)
( r 化学便覧(応用化学編
)J(丸善,
2003)より改変)
よ
800
よ
600
よ
1400
i
1200 250
1000
図 4
.2
億 t
(全体に占める割合は3 6
%),運輸部門2 . 6 億 t ( 2 0 %),業務部門その他 そのほかにエネル
2 . 3 億 t ( 1 8 %),家庭部門
l.7 億 t ( 1 3 %)となっている.
ギ一転換,
工 業プロセス
(セメント製造など) .廃棄物からの排出がある
産その他の 近年は漸減傾向にある
. 他方,
業部門からの排出が最大であるが,
主要三部門は基準年に対し
2 0 ‑40% も増加している
長期的には第 2 章 図 2 . 5 ( p . 2 0 ) の変化を示している.
遠い昔の気温は,当時の気温を反映
していると思われる樹木,さんご,海底堆
地球の平均気温は,
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