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理工学部の学生が入学後に物理学の基礎として最初に学ぶのが力学であ り,本書はその次に学ぶ電磁気学の教科書として書いたものである.筆者自 身の学生の頃を思い出してみると,力学がニュートンの運動方程式を基礎に して体系化されていることがすぐに見抜けなかっただけでなく,次の電磁気 学は一層バラバラな現象の羅列のように思われて,全体像の理解に苦しんだ ものである.それでも力学の場合には,モノを落としたり投げたりしたらど うなるかは目に見え,子供でも知っているので,かなり早い段階でニュート ンの運動方程式に出会ってもそれほど戸惑わないし,力学を学ぶにつれて,
いろいろな力学的現象の理解に果たすニュートンの運動方程式の重要な役割 が自然にわかるようになってくる.
それに比べると,電磁気学で活躍する電荷,電流,電場,磁場のどれをとっ ても,直接目にはみえない.日常的にみられる雷は確かに電磁気的な現象で はあるが,電磁気学の理解にそれほど役に立つわけではない.電磁気学は力 学に比べてかなり抽象的な学問体系であり,そのことが一層,電磁気学の理 解を難しくしている.
力学の基本方程式であるニュートンの運動方程式に対応して,電磁気学の 全体をまとめ,体系化している基本的な方程式がマクスウェル方程式である.
しかし,電磁気学にはじめて出会う者には,電磁気学固有の概念を学び,実 験的に明らかになった各種の個別的な電磁気現象の法則を知り,少しずつ理 解しながら進まざるを得ない.こうして,初学者向けの電磁気学のテキスト は,本書のように,基本方程式であるマクスウェル方程式にはすぐにお目に かかれず,終わりの方になってようやく出会う構成になってしまうのである.
筆者の経験では,電磁気学の理解をさらに困難にしているのが,そこに使 あ と が き
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われている数学の難しさであったように思う.電磁気学の主役である電場,
磁場がベクトルであり,その空間的,時間的変化を扱うともなると,微分・
積分を含んだベクトル解析が必須となる.電磁気学のごく初歩的な段階です でに,ガウスの定理やストークスの定理など,ベクトル解析の積分定理の厄 介にならざるを得ない.それでも私たちの目標は物理学としての電磁気学の 理解であって,数学ではない.筆者自身が学生時代につい数学に目を奪われ て何度も迷路に迷い込んだ経験もあり,その後に大学の初年級の物理学の授 業を担当するようになったおかげで,初学者はどこでわからなくなり,どこ でつまずくことが多いのかがわかってきたと思っている.それを踏まえて,
本書では電磁気学をなぜ学ぶのかから始まって,どのように考えるのかを,
初学者にとっつきやすいように,わかりやすく説明することを心掛けた.理 工学部の学生を対象に書いたので,少々の数学は避けられない.しかし,そ れは電磁気学を学ぶための道具として必要なのであって,数学にとらわれす ぎたり,おぼれることのないように,随所で戒めてある.
本書は,大学ではじめて電磁気学を学ぶための講義用のテキストとして書 かれている.そのために,力学や熱力学と同様に,電磁気学をどのように考 えたらよいかを最小限の分量でわかりやすく書くことに重点をおいた.おか げで,興味深い応用例を十分に取り上げることはできなかった.また,物質 中の電磁場についてはほとんど無視せざるを得なかったことを大いに反省し ている.これらについては,以下に記す他のテキストを参照されたい.
一方,一見複雑にみえる電磁気学の全体像の単純さを強調するために,ス カラー・ポテンシャル,ベクトル・ポテンシャルを詳しく説明するように心 がけた.さらに,初学者向けのテキストでは通常省略される電磁ポテンシャ ルの話題も最終章に入れたが,これははじめて電磁気学を学ぶ際にはさらり と読むだけでよいかもしれない.
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本書は電磁気学の基礎の理解のためのテキストであり,当然ながら筆者は,
読者が本書を読み終えた後も電磁気学をさらに学ぶことを期待している.力 学と同様,電磁気学のテキストも数が多く,選択に困るほどである.そんな 中で,筆者の目にとまったテキストをいくつか列挙しておく.
*砂川重信:「電磁気学の考え方」(岩波書店)
電磁気学の基礎をコンパクトに,わかりやすくまとめてある入門書.
*長岡洋介:「電磁気学Ⅰ,Ⅱ」(岩波書店)
電磁気学の基礎がわかりやすく丁寧に書いてある.
*岡崎 誠:「電磁気学入門」(裳華房)
電磁気学の基礎だけでなく,物質中の電磁場の性質もコンパクトにま とめてある.
*原 康夫:「電磁気学 (Ⅰ),(Ⅱ)」(裳華房フィジックスライブラリー) 上の 3 著より網羅的な教科書.
*飯田修一 監訳:「バークレー物理学コース 2 電磁気学 上,下」(丸善) 物理的な説明が詳しい.ただし,監訳者による脚注がやたらに多いが,
特に参照しなくてもよい.
*R. P. ファインマン・R. B. レイトン・M. L. サンズ 著,宮島龍興 訳:「ファ インマン物理学Ⅲ 電磁気学」(岩波書店)
このシリーズの他の教科書と同様,物理的な説明が素晴らしい.ただ し,学部 1,2 年生に対する授業を教科書としたものであるが,内容は独 創的かつ高級で,一通り電磁気学を学習したのちに取り掛かる方がよい.
*霜田光一・近角聰信 編「大学演習 電磁気学 (全訂版)」(裳華房) 電磁気学で出会う公式と問題を集大成したハンドブックのような著 書.手元にあると,何かと役に立つ.
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