論文内容要旨
論文題名:人工股関節全置換術後患者の回復期リハビリテーション病棟 入院時のエネルギー充足率が身体機能に及ぼす影響
専攻領域名:運動障害リハビリテーションと呼吸ケア領域 氏名:米谷 将吾
【背景】回復期リハビリテーション病棟入院中の患者の半数が、低栄養であると報告され ている。その中でも人工股関節全置換術(THA)前の患者は、約 20%が低栄養であるとされて いる。術後リハビリテーションでは、栄養状態だけではなく、エネルギーの摂取量から消費 量を除した値であるエネルギー充足率を基に負荷量を設定する必要性が近年指摘されてい る。エネルギー充足率に関するUmezawaらの報告では、股関節骨折後患者のエネルギー充足 群で退院時のFIM)が高く、FIM利得が高値を示したとしている。しかし、THA患者のエネル ギー充足率が筋力の改善率や歩行能力にどのような影響を与えるかについては明らかにな っていない。そこで、本研究の目的は、片側THA後患者の回復期リハビリテーション病棟入 院時のエネルギー充足率が、退院時の身体機能に及ぼす影響について明らかにすることと した。【方法】変形性股関節症の診断を受け、片側THAを施行した回復期病棟入院中の患者 17例(年齢68.6±13.5歳、身長153.7±8cm、体重53.8±11kg)が対象となった。エネルギー 消費量はオムロン活動量計で入院日翌日から計5日間測定し、中3日の平均値を算出した。
エネルギー摂取量は「指示栄養量×摂取割合」で計算し、入院日翌日から計5日間の平均値 を算出し、「(エネルギー摂取量)÷(エネルギー消費量)」の計算式からエネルギー充足率を 求めた。身体機能は股関節外転筋力、膝関節伸展筋力、握力、10m歩行時間、TUGを入院日 翌日、退院時前日に測定し、エネルギー充足群・非充足群の2群間で比較を行った。【結果】
エネルギー非充足群は、エネルギー消費量、退院時術側股関節外転筋力が高値を示した。在 院日数やエネルギー摂取量、その他の身体機能には有意差を認めなかった。 【考察】エネ ルギー出納と在院日数に関係を示した先行研究とは、対象疾患やエネルギー出納の評価方 法に違いがあったことで差異を示したことが考えられる。また、結果よりエネルギー充足率 ではなく、エネルギー消費量が退院時術側股関節外転筋力に影響することが示唆された。エ ネルギー充足率評価は様々な要素が関与し、研究者によって方法は統一されていないため、
充足率評価方法の標準化が求められる。これより、回復期病棟入院中の摂取エネルギーが良 好で、活動性の高い片側THA施行後の患者に対しては、入院時エネルギー充足率の評価を行 う有用性は低いことが示唆された。