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ワークライフバランスの実態と課題

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Academic year: 2021

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(1)

1.はじめに

 近年、ワークライフバランス(以下「WLB」)に対する関心が高まっている。この用 語に対する社会的認知度も上がってきているようだ。ワークライフバランスとは直訳する と、仕事と生活の調和であるが、実はこれは、我々のライフスタイルを変える運動である。

これは、労働時間を無尽蔵に仕事に費やし成果を上げるという仕事中心のスタイルから、

個人が仕事と生活のバランスを自由に選択できるスタイルに変えていくような大きな流れ と捉えられる。確かに認知はされつつあるものの、WLBを制度として整備し効果的に運 用しているのは、大企業を中心とした一部企業にとどまっているのが実態である。特に中 小零細企業では、制度の利用があまり進んでいない。

 労働市場に目を転じると、長引く不況の影響もあり、失業率の高止まり、非正規雇用者 の増大、正規雇用者の負担増など暗い材料が多く挙げられる。加えて労働者を低賃金、長 時間労働で使い捨てにするようなブラック企業も存在する。

 このような厳しい環境下ではあるが、労働者の意識は、仕事はしっかりこなしながらも 生活も充実させたい、社会貢献したいなど徐々に変わりつつあるようである。今後は少子 高齢化による人口減少時代を迎えることが確実であり、いかに労働者を確保するかが日本 全体の大きな課題となってくることが予測される。今までのような仕事の効率性だけを追 求するような企業は淘汰されていくであろう。社会構造の変化や国民意識の変化など時代 のニーズを踏まえた働き方を提唱する企業の必要性がますます高まっているのである。

 本稿では、このような働き方を取り巻く環境の変化を踏まえ、新しい働き方のスタイル としてワークライフバランスを取り上げ、その実態と今後の課題について検討した。

2.ワークライフバランスを取り巻く環境

 本節では、まず、ワークライフバランスの定義について述べ、次にWLBを取り巻く環 境について検討する。

⑴ ワークライフバランスの定義

ワークライフバランス(WLB)とは「老若男女誰もが、仕事、家庭生活、地域生活、

個人の自己啓発など、様々な活動について、自ら希望するバランスで展開できる状態」(内 閣府男女共同参画会議の仕事と生活の調和に関する専門調査委員会)と定義されている。

ワークライフバランスの実態と課題

名嘉座 元 一

(2)

また、「一般的に仕事と生活の調和と訳され、個人の価値観と選択に基づいて、仕事の充 実と仕事以外の生活の充実との好循環を達成しようとする考え方だと捉えられている。」

(守島、2010、p134)

企業にとっては単に、労働時間の短縮、休暇日数の増加などの施策を整備すればいい というのではなく、従業員が仕事にやりがいを感じ、家庭や地域との関わりも持てるよ う、個人が希望するバランスあるライフスタイルを選択できるような支援を図ろうとい うものである。

 少子高齢化とWLB導入政策

WLBという言葉が一般的に認知されてきたのは、2007年頃からであるが、そのきっ かけとなったのは、政府が発表した「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)憲章」

である。そこでは、次のように記述されている。

 「仕事と生活の調和が実現した社会とは、『国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じな がら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、

中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる』社会である」

(内閣府、2007)。

具体的には、①就労による経済的な自立が可能となる社会、②健康で豊かな生活のた めの時間が確保できる社会、③多様な働き方・生き方が選択できる社会を目指すべきとし ている。同じく内閣府による『仕事と生活の調和推進のための行動指針』(2007)では、

具体的な取り組みの推進として、「個々の企業の実情に合った効果的な進め方を労使で 話し合い、自主的に取り組んでいくことが基本である」とされている。WLBは労使が 協調しながら、進めていくものと捉えることができる。

このように、政府がWLB導入に力を入れる背景となっているのは、少子高齢化であ る。日本の人口は2010年の1億2,806万人をピークに2014年の1億2,752万人まで減少傾向 を辿っている。このままの傾向でいくと、2048年には1億人を割り、2060年には8,674万 人になると予測されている(人口問題研究所2012年発表の人口予測による)。したがって、

今後50年間で約4千万人も減少すると見込まれているのである。また、老年人口割合は

2010年の23.0%から上昇を続け、2060年には39.9%に達するような推計になっている。こ

のため、労働力人口も減少傾向となっており、1998年の6,793万人をピークに2014年では

6,587万人と200万人も減少している。

このような労働力人口の減少傾向に対し、政府は危機感を抱き、少子化対策や女性の労

働力率を上げるための施策を図ってきたのである。WLBにつながる政府の最初の取り組

みは、1986年の「男女雇用機会均等法」である。これは、福利厚生、定年、退職、教育機

会などにおいて、女性差別を禁止する法律である。さらに2005年には、「次世代育成支援

対策推進法」が作成され、従業員301人以上の事業主に対し労働者が仕事と子育てを両立

(3)

させることができるよう、行動計画の策定が義務付けられた。これを契機にして、WLB の流れが加速され、2007年の「ワークライフバランス憲章」の制定により、WLBの官民 挙げた運動としての取り組みが本格的になっていくのである。取り組みについても、当初 の「ファミリーフレンドリー」、「男女均等推進」を中心とした施策から仕事のあり方、あ るいは働き方の見直しに係る施策、いわゆる本来の意味でのWLB施策が増えてきている。

⑶ 労働環境の変化と意識の変化

このように、少子高齢化というトレンドを受けて、労働者の確保と経済成長の維持を図 るため、政府はWLB導入を積極的に進めていることが分かる。では、労働者の意識はど う変化しているのであろうか。まず、労働環境としては、バブル崩壊後のデフレ経済基調 の中で、失業率の高止まり(図1)、グローバル化の進行による企業経営の悪化、その対 応策として人件費削減を目的としたリストラを進めた結果としての非正規雇用者の増大、

正規雇用者の負担増、などが挙げられる。

 また、労働者の意識も経済環境の変化の影響を受け、変化してきている。図2は、日本 生産性本部が新入社員に対して行った調査の中で新入社員の働く目的についての推移をみ たものである。「仕事中心」とする者の割合は、バブル崩壊後は増加したものの、1971年 からの長期で見ると減少している。「生活中心」とする者の割合は1990年まで増加してい たものの、その後減少傾向となっている。一方、「仕事と生活の両立」とする者の割合は、

長期的には増加傾向で推移している。このように、仕事か生活かという選択ではなく、ど ちらも両立させたいという意識が強くなっていると言えよう。

表1 企業におけるWLB施策の制度・メニュー例 休業・休暇

①育児休業

②産前産後休業

③介護休業

④子供の看護休暇

⑤その他の休暇

⑥休業中の情報提供 ・学習支援

⑦休業前後の面談制度

③人事評価の見直し 働き方の見直し

①短時間勤務制度

②フレックスタイム

③テレワーク(在宅勤務)

④長時間労働の削減

⑤転勤配慮

経済的支援

①各種手当て・補助

意識改革

①セミナー・研修

②社内報・イントラネット

③コミュニティサイト

④メンター制度 代替要員の確保

①ドミノ人事制度

②シフト人事制度 その他

①事業所内託児施設

②再雇用制度

出所:小室淑恵 『ワークライフバランス 考え方と導入法』2010年

(4)

図1 完全失業率と有効求人倍率の推移

図2 仕事と生活

0.00

1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00

72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99

2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14

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出所:厚生労働省『労働経済白書平成26年版』

出所:(財)日本生産性本部『働くことの意識』2010年

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(5)

次に、同調査より働く目的についてみてみる(図 3)。「経済的に豊かな生活を送りたい」

と「自分の能力をためす生き方をしたい」とする者の割合は景気の動向によって、増減す るものの長期的には減少傾向を示している。その一方、「楽しい生活をしたい」と「社会 のために役に立ちたい」とする者の割合は長期的に増加傾向となっている。特に、2000年 代に入ってから増加傾向が強まっている。このことから、若者が仕事などでチャレンジす るというよりも安定した収入を前提に自分の生活を楽しみたいという点を重視しているこ とが分かる。また、仕事を通じて社会に貢献したいという意向が強まってきていることも 近年の若者の意向として興味深い。

 以上述べてきたように、日本におけるWLBは、少子高齢化対策として政府主導の政策 という背景がある。また、労働市場としては、長引く不況によって、非正規雇用の増大、

正規社員の負担増等で労働者の働く意識も変化し、仕事中心の考え方から仕事と生活の両 立という意識が高まっているという背景もある。

3.ブラック企業

上述したように、2000年後半あたりから、政府の主導によりWLSに対する関心が高 まってきたのであるが、その導入は近年までなかなか進まなかった。バブル経済崩壊後の 長期の不況が続く経済状況にあっては、企業の本音として法令尊守が精一杯で、WLB施 策に積極的に取り組もうという企業は少なく、特に経営余力のない中小企業ではコストの かかるようなWLBの取り組みは消極的にならざるを得なかったというのが実情であっ た。企業収益が縮小する中、企業はコスト削減を第一に掲げた。そのため、非正規雇用の

図3 働く目的

出所:(財)日本生産性本部『働くことの意識』2010年

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45

1971 73 75 77 79 81 83 85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09

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(6)

増大と正規雇用者の労働時間が増大するなど、労働者の負担が増えた。また、企業と中小 企業でも格差が拡がっていった。これはWLBとは正反対の動きである。さらに、近年は 低賃金で労働者を使い捨てにするような、いわゆるブラック企業の存在が社会的にも関心 を集めている。

そもそもブラック企業とは何であろうか。これは学界や行政の正式な用語ではなく、

いつの間にか世間に認知されてきた言葉である。その定義として、ウェブ上ではあるが、

ブラック企業大賞を授けるホームページ(http://blackcorpaward.blogspot.jp)があり、

そこでの定義を引用する(以下同ホームページからの引用)。

「ブラック企業には幅広い定義と解釈がありますが、「ブラック企業大賞」では次のように ブラック企業を定義し、その上でいくつかの観点から具体的な企業をノミネートしていき ます。

ブラック企業とは・・・・①労働法やその他の法令に抵触し、またはその可能性があるグ レーゾーンな条件での労働を、意図的・恣意的に従業員に強いている企業、②パワーハラ スメントなどの暴力的強制を常套手段として従業員に強いる体質を持つ企業や法人(学校 法人、社会福祉法人、官公庁や公営企業、医療機関なども含む)。」

 また、ブラック企業を見極める指標として、以下のような項目を挙げている。

●長時間労働

●セクハラ・パワハラ

●いじめ

●長時間過密労働

●低賃金

●コンプライアンス違反

●育休・産休などの制度の不備

●労組への敵対度

●派遣差別

●派遣依存度

●残業代未払い(求人票でウソ)

ちなみに、2014年のブラック企業大賞は以下のようになっており、いずれもニュース 等で取り上げられ話題になっている企業である。

ブラック企業大賞:

株式会社ヤマダ電機

業界賞:【アニメ業界】株式会社 A-1 Pictures

     【エステ業界】株式会社 不二ビューティ(たかの友梨ビューティ)クリニック

次に、政府が公表したブラック企業の実態をみる。政府はブラック企業に対する世間

の関心の高まりに押され、その実態調査に乗り出した。それが、2013年に実施された、重

(7)

点監督実施調査である。これは、労働基準法違反の疑いのある企業に対し調査を行ったも のである。

この調査によると、重点監督を行った事業場5,111件のうち、労働基準法違反があった のは4,189事業場にのぼり、全体の82.0%であったという。これは違反の疑わしい事業場 に対して行った立ち入り調査なので、企業全体でこのような高い割合で違反があるわけで はない。主な法令違反としては、

① 違法な時間外労働があったもの 2,241 事業場(43.8%)

② 賃金不払残業があったもの 1,221 事業場(23.9%)

③ 過重労働による健康障害防止措置が実施されていなかったもの 71 事業場(1.4%)

であった。

業種別にみると、製造業が29.4%と最も多く、内訳としては労働時間の違反が多い、次 いで高い業種は商業(19.3%)で内訳はやはり労働時間となっている。ただし、このよう な法令違反は、使用者の法令に対する無知や理解の低さによるものもあり、すべてが悪質 なブラック企業というわけではない。

出所:厚生労働省「過重労働重点監督月間」における「重点監督」実施状況 2013年

(注1)主な業種は重点監督実施事業場数が100を超えるものを計上しているため、合計数とは一致しない。

(注2)労働基準法第32条違反〔36協定なく時間外労働を行っているもの、36協定で定める限度時間を超 えて時間外労働を行っているものなど違法な時間外労働があったもの。〕の件数を計上している。

(注3)労働基準法第37条(割増賃金)違反のうち、賃金不払残業の件数を計上している〔計算誤り等 は含まない。〕。

(注4)労働安全衛生法第18条違反〔労働安全衛生規則第22条(衛生委員会において、労働者の健康障害 の防止及び健康の保持増進に関する事項について調査審議を行っていないもの。)及び労働安全衛 生法第66条の8違反〔1月当たり100時間以上の時間外・休日労働を行った労働者から、医師によ る面接指導の申出があったにもかかわらず、面接指導を実施していないもの。〕を計上している。

表2 「重点監督」実施件数等

事項

業種

重点監督実施 事業場数

(注1)

何らかの労働基準関 係法令違反があった

事業場数

労働時間

(注2)

賃金不払残業

(注3)

健康障害防止対策

(注4)

合  計 5,111

(100.0%)

4,189

(82.0%)

2,241

(43.8%)

1,221

(23.9%)

71

(1.4%)

主な業種

製造業 1,501(29.4%) 1,222 647 233 39

建設業 208( 4.1%) 164 88 77 1

運輸交通業 574(11.2%) 491 326 105 3

商業 987(19.3%) 821 428 321 4

金融・広告業 106( 2.1%) 80 36 34 1

教育・研究業 147( 2.9%) 118 65 35 3

保健衛生業 506( 9.9%) 423 171 127 6 接客娯楽業 381( 7.5%) 335 198 141 2 その他の事業 515(10.1%) 396 218 112 10

(8)

4.企業におけるワークライフバランスの実態

本節では企業における休暇や育児・介護休暇制度の導入状況を中心としたWLSに関 連する雇用環境の実態について、まず全国の実態、次に沖縄県が行った調査をもとに沖縄 県の実態について検討する。

⑴ 全国の実態

図4は労働政策研究・研修機構が行ったWLBに関する企業へのアンケート調査におい て、制度を導入した効果について聞いた質問の集計結果である。それによると「効果があっ た」または「ある程度あった」を合わせて最も高いのは、 「社員が働く上での安心感を高める」

であり、

78.3%と8割近い、次いで、

「女性社員の定着率を高める」、 「女性社員のモティベー

ションを高める」と続いている。また、 「効果があった」に注目すると、最も多いのは、 「女 性社員の退職が減る、なくなる」であり、企業のWLB施策が女性社員のモティベーショ ンを上げ、その結果定着率を高めていることが分かる。

次に、同調査から、

WLSに消極的な理由を聞いたアンケート結果をみると(図5)、

「法 律の範囲内で制度を設けており、それ以上は困難」が最も多く(45.0%)、次いで「人手 が不足していて手が回らない」(30.4%)、「子育て期の社員がいない」(26.0%)と続いて いる。中小企業は大企業と違って、少ない人数で仕事をこなしていることもあり、法律で 定められた最低限の条件をクリアすればよいという意識がみえる。そのため、制度はある けど利用実績が低い結果になっていると推察される。

32.8 30.7 13.7 12 2.1 2.1

29.2 7.1

19.8 6.1

9.9 6.1

7.1 20.3 4.5

4 13.9

29.2 29.2 29.5 29.5 30

30 34.2 34.2 17.9

17.9

44.8 44.8 18.4

18.4

49.3 49.3 23.1

23.1 48.8 48.8 33.7 33.7 37.3 37.3

58 58 29.7

29.7 23.1 23.1

42.7 42.7

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

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図4 WLB制度導入の効果

出所:‌‌労働政策研究・研修機構 2011年『労働政策研究報告書』 No.135「中小企業におけるワークラ

イフバランスの現状と課題」

(9)

図6はWLSの充実が社員にどのような影響を与えているのかという観点からみたア ンケートの結果である(脇坂、2009)。この調査では、企業のWLS制度導入の実態を3 つのパターンに分けている。「名目企業」とは、制度があっても利用が進んでいない企業 のことであり、「実態企業」とは制度が充実しかつ利用実績も高い企業のことである。最 後の「制度の少ない企業」とはその中間の企業のことである。これを踏まえて図をみると、

どの項目でも実態企業の割合が高くなっている。特に、「人間関係良好」と「やりがい」、

「成長感」で高いものとなっている。また、名目企業と実態企業の差が大きいのは、「やり がい」、「達成感」である。実態企業の方は、人間関係、信頼関係が良好な職場環境で、W LS制度が浸透しており、それが社員のモティベーションを高めているとみられる、一方、

名目企業ではうまくいっていないと解釈できる。

図5 WLBに消極的な理由

図6 WLB制度導入の効果 出所:‌‌図4に同じ

出所:‌‌脇坂明「WLBの定着・浸透」労働経済雑誌No583 2009年

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15.1 3.7

30.4 22.1

45.0 26.0

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WLB

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No583

2009 3.52

3.32

3.54 3.47

3.22

3.66

3.08

3.44 3.76

3.56

3.76

3.55

3.35

3.81

3.24 3.54 3.57

3.37

3.62

3.42

3.25

3.69

3.12

3.51

3.003.10 3.203.30 3.403.50 3.603.70 3.803.90

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(10)

図7、図8は「就業構造調査」より、育児休業及び介護休業制度があり、かつ利用し ている雇用者がいるかどうかについて、企業の規模別に見たものである。どちらも、従業 員規模の大きい企業が利用率は高く、規模が大きくなるにつれて利用率が高くなっている ことが分かる。中小企業は、人手が少なく利用する余裕がない職場環境であると推察される。

 これを産業別にみたのが、図9である。それによると、育児休業については、教育、学 習支援業が最も高く37.2%となっている。次いで、「金融業、保険業」の34.7%、「公務」

の34.0%と続いている。また、最も低いのは、 「運送業、郵便業」 (11.2%)である。「宿泊業、

飲食サービス業」も12.1%と低い。

 また、介護休業制度の利用については、「電気・ガス・熱供給・水道業」が28.9%と最 も高く、次いで「情報通信業」(28.5%)、「教育、学習支援業」(19.3%)と続いている。

一方、低い順にみると、最も低いのは、 「複合サービス業」の11.6%であり、 「医療、福祉」

(13.4%)、「宿泊業、飲食サービス業」(13.6%)となっている。どちらも利用頻度の高い のは、大企業が多く、正社員比率の高い産業で、利用頻度の低いのは「宿泊業、飲食サー ビス業」など比較的非正規雇用比率の高い企業が多いものとなっている。

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2012

14.0

14.0 16.4 16.4

19.7 19.7

22.5

22.5 23.123.1 23.823.8

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0

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15.7

15.7 14.914.9 17.4 17.4

14.4

14.4 14.214.2 14.214.2 15.615.6

0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0 18.0 20.0

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図7 育児休養制度の活用状況図 図8 介護休業制度の活用

出所:総務省『就業構造基本調査』2012年 出所:図7に同じ

(11)

図9 産業別育児休業利用の状況

図10 産業別介護休業利用の状況 出所:図7に同じ

出所:図7に同じ

12.1 17.7

30.8 30.3 11.2

16.1

34.7 17.3

26.4 12.1

16.9

37.2 28.3

19.9 17.4

34.0 16.1

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(12)

⑵ 沖縄県の実態

ここでは、沖縄県が実施した雇用環境調査に基づきWLB関連の項目について検討す る。この調査は県内の中小企業800社に、有給休暇制度や介護休暇制度などを含む雇用環 境について聞いた県独自のアンケート調査である。

まず、休暇制度等の有無や雇用環境についてみてみよう。2009年調査と2013年調査を 比較したものが、表3である。有給休暇の有無では、2013年が79.4%で2009年に比べ減少 している。育児休業、介護休業制度についてもそれぞれ2013年が69.5%、56.9%となり、

いずれも2009年よりも減少している。また、男女平等という観点からみたのが、管理職に 占める女性の割合であるが、2013年は21.6%で2009年よりも増加している。さらに、パー トタイム労働者に対する育児・介護休業制度の有無では両制度ともあると回答したのは

42.1%で2009年よりも増大している。

管理職の女性登用が進まない原因としては、 「家事・育児と仕事との両立が困難なので、

責任のある仕事を任せられない」が11.9%で、これは2009年が6.3%であるので、管理職 の女性登用は進んでいるが、WLBという観点からは、育児休業、介護休業制度の普及が 進んでいないことを反映したものだと解釈することもできよう。

図11は、育児休業制度の有無について、“制度がない”と回答した企業の割合を示した ものである。それによると、最も高い割合は、「教育、学習支援業」で53.6%がないと答 えている。次いで「建設業」(50%)、 「宿泊業、飲食サービス業」(44.0%)と続いている。

「電気・ガス・熱供給・水道業」では、“ない”と答えたのはゼロで「金融業、保険業」も

“ない”の割合は低く(7.4%)比較的規模の大きな企業が多い産業では、育児休業制度は 充実しているようである。

表3 休暇制度など雇用環境の状況(2009年と2013年比較)

出所:沖縄県雇用労政課 『沖縄県労働条件実態調査』 2009年、2013年

2009

2013

有給休暇の有無

86.8 79.4

育児休業

81 69.5

取得率

 男性

2.4 2.8

 女性

87.6 91.4

介護休業制度

70 56.9

メンタルヘルス対策

50.6 42.6

管理職女性割合

18.2 21.6

パートタイムに対する育児・介護休業制度の有無

38.7 42.1

(13)

 また、これを、企業規模別に見たのが、図12である。全企業では育児休業制度は約3割

が“ない”と答えており、介護休業制度では約4割が“ない”と答えている。育児休業制 度に比べ介護休業制度の普及は遅れているようである。また、規模別では両制度とも“ない”

と回答した企業は、10人以下が多く、育児休業制度で53.5%、介護休業制度で70.4%と大半 の企業で導入されていない。規模の小さな企業程、休業制度の導入が低い結果となっている。

12

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14.3 30.3

33.3 50

0 13.6

24.229.6

7.4 36

40.944

29.6 53.6

0 15.4

34.5

0 10 20 30 40 50 60

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図11 産業別育児休業の有無(制度がないと回答した企業の割合)

図12 規模別育児休業制度と介護休業制度の有無

(制度がないと回答した企業の割合)

出所:「沖縄県労働条件実態調査」沖縄県雇用労政課

出所:図11に同じ

30.3

53.5

29.6

3.8 0 0

43.1

70.4

43.7

14.6

0 0

0 10 20 30 40 50 60 70 80

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(14)

 WLSは休暇制度や休業制度の充実だけでなく、人材育成も重要である。図13は、企業 規模別に職業訓練を受けた雇用者の有無についてみたものである。5人以内の企業では

20.8%であるのに対し1,000人以上の企業では57.6%と半数を超えており、企業規模が大き

い程、職業訓練の機会は増えるようである。

 職業訓練・自己啓発と離職率についてみると興味深いことが分かる。図14は沖縄県の産 業別データに基づき、この2つをプロットしたものである。図を見ると2つの間には負の 相関関係があり、職業訓練・自己啓発を行った者の割合が高い産業ほど離職率は低い傾向 を示していることが分かる。

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28.7 28.9 28.7 28.6 31.9

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図13 規模別職業訓練を受けた正規雇用者の有無

図14 転職者比率と職業訓練・自己啓発 出所:図11に同じ

出所:沖縄県「就業構造調査」2012年より作成

(15)

⑶ まとめ

沖縄県と同様に全国でも、中小企業におけるWLB導入の状況は、産業別に見ても規 模別に見てもほぼ同じ傾向であるが、やはり中小企業において、導入は遅れているようで ある。それは、経営体力が脆弱であり、人材の余力もないため、法令順守のため制度を整 備しているものの、活用には至らないものだと推察される。また、導入の効果としては、

仕事に対するモティベーション増大につながり、それが生産性の向上にもつながるであろ うことが推察された。働くことに対する男女間の意識の違いも制度活用においては重要な 要因となることも分かった。単なる休暇制度等の導入ではなく、職場におけるコミュニケー ションの充実、信頼関係の構築、スキルアップが図れる訓練・研修制度の充実などの基盤 があって初めて制度の活用が図れるものと考えられる。

5.今後の展望と課題

 ワークライフバランスは、少子高齢化による危機感から政府がその導入を主導してきた。

当初は女性の雇用確保のため、育児休暇制度を普及させることを目的としたファミリーフ レンドリー施策の意味合いが強かったが、次第に、介護休暇制度の普及やメンタルヘルス への配慮など男性社員も含めた従業員全体を対象とした施策へと転換してきている。

 しかしながら、WLBは女性従業員に対するものだと誤解されている面も強い。そのた め、WLB制度が整備されていない企業の導入が進んでいない理由として、「育児休暇が 必要な従業員がいない」や「制度でなく運用で切り抜けている」などが多く挙げられてお り、特に中小企業はこの傾向が強い。これには、WLB施策の整備には多大な時間とコス トがかかり、経営資源をその整備に振り向ける余裕がないという実情もあろう。

以上の知見を踏まえた上で、今後のWLB導入の課題について整理する。

⑴ 経営者の意識

中小企業では、比較的平均年齢が高いため育児休暇などに対する従業員のニーズが低 いこと、WLBが女性を対象とした雇用の確保、少子化対策と誤解されている点も大きい。

また、制度を整備しても実際の利用に当たっては、従業員を増やす必要があるなどコスト

がかかり、収益の圧迫につながるとの認識も強い。しかしながら、近年の研究ではWLB

制度の充実度が売り上げなどの業績、生産性の向上、優秀な人材の確保・定着につながる

ことなどが明らかになっている(脇坂、2009年など)。このように、長期的に考えると従

業員の定着による生産性の向上と、より効率的な労働による業績を上げるという本来の企

業経営の目的にかなうものであることが理解されれば、WLBの普及がさらに進むと期待

される。

(16)

⑵ ワークライフバランスに対する従業員全体での意識共有

 トップの意識が変われば従業員の意識も変わるのが、経営者と従業員の距離が近い中小 企業の特徴である。育児休暇制度や介護休暇制度を導入しても、現場の意識が変わらない とその効果は期待できない。例えば、上司と部下、従業員同士の信頼関係が日頃から構築 されていないと、WLBは、まさに絵に描いた餅になってしまう。また、女性の働き方に 対する理解や若手の育成の重要性など、性別、年代を超えた相互理解もWLB普及の土台 としては欠かせない。このため多様な働き方があり、それが今後ますます重要になり、長期 的には会社のメリットにもつながることを従業員全員で共通認識を持つことが必要である。

⑶ 人事制度を含めた総合的な取り組みによる基盤整備

このように、トップ、従業員の意識が変わるためには、セミナー等を通じて意識や考 え方に訴えるだけでは不十分である。働き方の改革を迫られているのであるから、組織体 制の改善も重要である。社員評価の透明性、個人の能力を十分発揮できるような適材適所 への人材配置、休暇を取った場合の人材補充策、休暇の取りやすさ、仕事上の悩みを持つ 人に対するメンタルケアなど、単に育児休業、介護休業制度を整えるのではなく、人事制 度を含めた取り組みが重要になってくる。

 行政の役割

WLB普及のため政府を始めとして地方自治体も様々な施策を展開している。例えば、

沖縄県では、ワークライフバランス認証企業制度で多くの企業を認証し、それを公表して おり、現在54社が認証されている。それにより、優秀な人材の確保や離職への歯止めにな ることが期待される。これは企業にとっても大きなメリットになろう。今後もこのような 表彰制度を続けていくことやWLBに関するセミナーの開催、制度整備にあたっての専門 家のアドバイスを受けられる制度や制度導入に係る補助金など中小企業におけるWLB充 実のための支援は重要である。

6.おわりに

 WLBの現状と課題について述べてきたのであるが、中小企業が圧倒的に多い沖縄県に おいては、県の認証企業は増えつつあるものの、整備していない企業が依然として多く、

本格的な普及は今後を待たねばならない。沖縄労働局によると、労働基準法に違反する疑

いのある企業も多く(森川、2013、p235)、課題で述べたように経営者の意識の問題も大

きいと思われる。沖縄の場合、労働分配率も低く、低い賃金での労働にやむを得ず従事し

ているという現状もある。しかしながら、今後は沖縄も人口減少に向かうことが予測され

ており、労働力不足が深刻化することが懸念される。その場合は、働きやすい職場環境づ

くりとやりがいのある仕事を創出できないような企業は淘汰されていくであろう。

(17)

終戦後、すべての資産を失いゼロからの再生を社員とともに必死で取り組んだ出光興 産の創始者・出光佐三は、会社再生のために人員削減やむなしを進言した幹部に対し「ひ とりの社員の馘首もならん」と一喝した。これを聞いた社員たちは全員一丸となって会社 復興に邁進した。このような経営者が1人でも多く輩出されることを期待しつつ筆を置く。

参考文献

総務省(2012年)『毎月勤労統計』

―― (2012年)『就業構造基本調査』

厚生労働省『労働経済白書平成26年版』

―― (2013年)「過重労働重点監督月間」における「重点監督」実施状況  沖縄県(2013年)『労働力調査』

沖縄県雇用労政課(2013年)『沖縄県労働条件実態調査』

(財)日本生産性本部(2010年)『働くことの意識』

独立行政法人労働政策研究・研修機構(2011年)「中小企業におけるワーク・ライフ・バ ランスの現状と課題」『労働政策研究報告書』No.135

渡辺峻(2010年)「HRM 研究の観点からみたワーク・ライフ・バランス」『日本労働研究 雑誌』No.599

脇坂明(2009年)「WLBの定着・浸透―制度・実態ギャップと中小企業」『日本労働研究 雑誌』No583

森川善樹(2013年)「沖縄県の雇用改善のために」『沖縄における若年就業の可能性』沖縄 国際大学総合研究機構沖縄経済環境研究所

小室淑恵(2010年)『ワークライフバランス 考え方と導入法』日本能率協会マネジメン トセンター

北谷宏監修(2010年)『ワーク・ライフ・バランス 推進マニュアル』第一法規

守島基博(2010年)『人材の複雑方程式』日本経済新聞出版社

参照

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