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Academic year: 2021

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論文内容要旨

The impact of stromal Hic-5 on the tumorigenesis of colorectal cancer through lysyl oxidase induction and stromal remodeling

癌間質 Hic-5 のリシルオキシダーゼ誘導と間質リモデリングを介した大腸癌発 症への関与

Oncogene Vol.37 No.9 P.1205-1219 2018

生理系 生化学専攻 大本智勝

癌関連線維芽細胞(Carcinoma-associated fibroblasts; CAFs)は腫瘍間質内 において腫瘍の発生,進行および転移に影響を及ぼすことが知られている.この ことは CAFs が癌治療において潜在的な治療標的であることを示唆している.

我々は本研究でHydrogen peroxide-inducible clone-5 (Hic-5) がヒト大腸癌の CAFs に高発現していることを見出した.Hic-5 は 1994 年に過酸化水素および トランスフォーミング増殖因子-β1 (TGF-β1) に応答し発現誘導される遺伝子 としてクローニングされ,その後この遺伝子は細胞外マトリックス(ECM) と細 胞の接着点にある細胞接着斑タンパク質をコードしていることが明らかとなっ ている.さらに生体内において Hic-5 は動脈硬化,動脈瘤や肝線維化といった 様々な疾患の発症を誘導していることが Hic-5 欠損マウスを用いた実験から明 らかにされている.

今回我々は大腸癌組織内 CAFs での Hic-5 機能を調べるために,ヒト大腸癌組 織および隣接した非癌部粘膜組織からそれぞれ CAFs,対照として正常線維芽細 胞(Normal fibroblasts; NFs)を単離した.Hic-5 は単離されたヒト由来 CAFs において高発現していることが確認された.また NFs を大腸癌細胞株の培養上 清や、TGF-β、IL-1βおよび間質細胞由来因子 1(stromal cell-derived factor- 1; SDF-1 / CXCL12)などの癌関連サイトカインで刺激したところ,Hic-5 の著 しい発現誘導が認められた.そこで CAFs 内の Hic-5 が癌細胞増殖においてどの ような機能を担うか調べる目的で,Hic-5 ノックダウン NFs 株を樹立し,大腸癌 細胞株と共培養アッセイを行い癌細胞の増殖率を検討した.その結果,Hic-5 が

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発現誘導される NFs と比較して,Hic-5 発現誘導を抑制した NFs との共培養では 大腸癌細胞の増殖は顕著に抑制された.さらにその詳細なメカニズムとして,

Hic-5 が ECM リモデリングに関与するリシルオキシダーゼ(LOX)およびコラー ゲン I の発現を促進することを明らかにした.特筆すべきこととして,Hic-5 は NFs の核内に直接移行することでこれら ECM 関連分子の発現を制御することが 示唆された.

また実際に in vivo で,Hic-5 が大腸癌発症を制御する分子であるか明らか に す る た め に , Hic-5 欠 損 マ ウ ス に 発 癌 物 質 で あ る ア ゾ キ シ メ タ ン

(azoxymethane; AOM)投与を行い,大腸癌のマウスモデルを作成した.その結 果,Hic-5 欠損マウスでは,マウス大腸における AOM 誘導性大腸癌発生がほぼ完 全に抑制された.

以上の結果より,今回我々は大腸癌発生過程において Hic-5 が CAFs の活性化 制御を介し大腸癌発症に関与することを見出した.具体的には,CAFs 中の Hic- 5 が直接核内に移行し ECM 関連分子の遺伝子発現を制御し,腫瘍増殖を促がす癌 微小環境を整備することで大腸癌の発生および増殖を制御していると考えられ た.今後,癌治療において癌間質の線維芽細胞に発現する Hic-5 をターゲット とした分子標的療法開発が期待される.

参照

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