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初等教育教員養成課程学生の理科指導に関する調査

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『就実論叢』第44号 抜刷

就実大学・就実短期大学 2015年2月28日 発行

福 井 広 和

初等教育教員養成課程学生の理科指導に関する調査

Survey on the Science teaching of primary education teacher training course students

(2)

初等教育教員養成課程学生の理科指導に関する調査

Survey on the Science teaching of primary education teacher training course students

福 井 広 和

1 問題の所在

平成23年3月に独立行政法人国立科学博物館が公開した「小学校教員をめざす文系学生の ための理科講座」の実施報告書に次のような一文がある。

「小学校教員の多くは文系出身であり,理科の指導に苦手意識がある」(1)

国立科学博物館のような公的機関が文書に記す位であるから,小学校教員養成系学部学生 は文系であり,理科が苦手だと一般に考えられているのであろう。しかし,それは本当だろ うか?

もしそれが本当だとすると,理科に苦手意識をもつ学生が将来教壇に立ち,児童を指導す ることで「理科嫌い」が再生産されてしまうのではないかという危惧がある。

そこで,本研究では,

①小学校教員養成系学部の学生が本当に理科に対して苦手意識をもっているか

②学生達はどのような授業を理想と考えているのか

を明らかにすることを目的とする。

2 理科指導に関する意識調査

(1)調査の概要 1)目的

小学校教員養成課程の学生が理科に苦手意識をもっているのかどうかを明らかにする。

2)対象および人数

就実大学教育学部で理科教育法を受講する3年生,44名(男子18名,女子26名)

3)実施日時

平成26年(2014)4月10日(木)2限

(3)

4)調査内容

① 高校で学んだ理科関連科目

② 小中高で好きだった理科学習

③ 小中高で嫌いだった理科学習

(複数選択式)

(自由記述)

(自由記述)

(過去)

④ 現時点での教職希望

⑤ 理科に対する印象

⑥ 授業実践上必要だと考える項目

⑦ 理科授業の自信度

(複数選択式)

(5件法)

(5件法)

(5件法)

(現在)

⑧ 子どもを理科好きにする方法 (自由記述) (将来)

(2)調査結果

①高校で学んだ理科関連科目

理科教育法を受講する学生のほとんどが生物と理科総合を学習しているが,地学につい ては1名しか履修していない。物理・化学を高校時代に学習していない学生もいる。

表1.高校で学んだ理科関連科目一覧

(4)

②小中高で好きだった理科学習

小中高で好きだった理科学習については自由記述で回答を求めた。選択式ではないので,

印象が強く残っている実験・観察が挙げられる傾向が見られた。

全体的には「小学校>中学校>高校」の順で回答が多かったが,履修単元数が違うので 単純には比較できない。小学校ではソーラーカー作りなどの物理的内容,中学校では炎色 反応などの化学的内容,高校では解剖などの生物的内容が目立つ。直接理科の授業内容と は言い難いが,べっこう飴やカルメ焼きを作ったことが楽しい記憶として残る傾向が見ら れる。

表2.小中高で好きだった理科学習

(5)

③小中高で嫌いだった理科学習

小中高で嫌いだった理科学習についての回答は,好きだった理科学習の裏返しとなり,

「小学校<中学校<高校」の順で回答が多かった。これにより理科についてのネガティブ なイメージは年齢が上がるほど強く受けることが裏付けられた。

理科が嫌いになるきっかけの学習としては,「座学」「難しい計算」「解剖などの生理的嫌 悪」「実験の失敗」が上位に挙げられている。こうした自分自身の経験をもとに授業を改 善することができるならば,理科の得意だった教師よりも,多くの児童に受け入れられる 授業を創りだす潜在的可能性をもっていると考える。

表3.小中高で嫌いだった理科学習

(6)

④現時点での教職希望

学部3年生時点での将来の教職希望を「小学校教員・中学校理科・高等学校理科」のそ れぞれ五択で尋ねた。理科教育法は初等教育学科の学生が多く,小学校教員を目指す学生 が多数であった。また,中学校理科,高等学校理科には「1.まったくなる気はない」と する回答が顕著で,小学校教員になりたいという回答よりも極端な分布であることに「教 育学部学生は文系である」という風説を心ならずも裏付けてしまう結果となった。

図1 ④現時点での教職希望(複数選択式)

⑤理科に対する印象

理科に対する印象を尋ねたアンケートから は興味深い調査結果を得た。右のグラフは現 時点で「理科をおもしろいと感じているかど うか」を尋ねた結果であるが,

「つまらない」 … 6人

「どちらでもない」… 9人

「おもしろい」 …29人

であった。「教育学部学生は文系である」と いう風説からすると,これは意外な結果であ る。

教師をめざす多くの学生が,理科(自然科

学)そのものを嫌っている訳ではない。 図2 ⑤理科に対する印象(1)

(7)

一方で,「理科を教えることに不安を感じ ますか」という質問に対しては,図3のグ ラフのように多くの学生が不安を感じてい ることが分かった。

理科(自然科学)をおもしろいと感じて いる学生が多いのに,なぜ理科を教えるこ とには不安を感じており,中学校理科,高 等学校理科教員にはなりたくないと考える のだろうか。

その答えは図4のグラフに現れていると 考える。

必修選択科目である理科教育法を受講す る多くの学生が「理科はおもしろいけれど 難しい科目」であると感じているのだ。質 問項目③の理科が嫌いになるきっかけの学 習として挙げられていた「座学」「難しい 計算」「実験の失敗」がこのような形で影 響しているのではないかと推測する。

理科(自然科学)は嫌いではない が難しい。将来,教師として教え ることに不安がある。

それでは,その難しいと感じている理科 を学生はどのようにしたいと考えているの だろうか。

図5のグラフは「あなたは理科をもっと 学びたいですか」という質問であるが,そ れによると多くの学生が苦手である理科を 学びたい,苦手を克服したいとポジティブ に考えていることが分かる。

図3 ⑤理科に対する印象(2)

図4 ⑤理科に対する印象(3)

図5 ⑤理科に対する印象(4)

(8)

⑥授業実践上必要だと考える項目

以下の項目について教師が理科の授業を行う上でどの程度必要だと考えているのか五件 法で尋ねたところ,いずれの項目でも必要性を高く認識していることが明らかになった。

科学への興味・関心 / 学習内容に関する知識 / 学習指導技術

観察・実験の基礎技術 / 観察・実験の指導力 / 児童・生徒理科

図6 ⑥授業実践上必要だと考える項目(5件法)

⑦ 適性の自己評価

一方で理科指導の自信度については,厳しく自己分析していることが分かった。

図7 ⑦理科授業の自信度(5件法)

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⑧ 子どもを理科好きにする方法

理科に対して苦手意識をもつ学生達は将来教壇に立った時どのような授業をしたいと考 えているのかを自由記述で尋ねた。

【授業内容】

・目に見える変化や不思議さを体験させてやること(3人)

・実験や観察を多く取り入れる(17人)

・生活の中で活用されていることが分かるようにする(13人)

・身近なものや現象,他の教科とと関連付けて教える(2人)

・時々カルメ焼きなどのお楽しみ実験を取り入れる(2人)

・子供の興味や関心をひく話を盛り込む(3人)

【授業運営法】

・はじめに予想したり話し合ったりして興味を高める(2人)

・楽しいと思わせ好奇心を持たせる

・予想を立てながら授業作りをする

・知識をただ教えるのではなく実際にやって自分で確かめさせる

・子供たちが不思議だなと思うことを実験に取り入れる(3人)

・自分の目でみて実験したり発見したり,調べて実感させる(4人)

・自分たちでたくさん気づかせて発見をさせる

・実験後の変化や驚きが感じられる授業をする

・子ども自身が達成感や成長を感じられるようにする

・どうしてこうなるのだろうと考えることを大切にする

・ゲーム性を取り入れる

【教師の資質向上】

・難しい実験でも成功できるように準備をしっかりする

・正しい結果が出るように準備をする

・毎日何か1つでも楽しい実験をする

・教師自身が科学に興味を持ち自然科学の知識を増やす(3人)

・子どもを夢中にさせる教師の声かけ(2人)

・先生のパフォーマンス

⑥の授業実践上必要だと考える項目のアンケートでは,すべての項目が大切であると回答 していたが,自由記述では実験・観察などの直接体験を取り入れることや児童・生徒の興味 関心を高めることが大切だと考えていることが分かった。学生自身が児童・生徒として経験 してきた授業を念頭に置き,自分が理想とする理科授業の型やそれを実現するための方略が 具体的にイメージできつつあるようである。

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3 おわりに

小学校教員養成系学部学生が文系であり理科に苦手意識をもっていることで彼らが将来教 壇に立ち児童を指導する際に「理科嫌い」が再生産されてしまうのではないかという危惧を きっかけに本調査を行った結果,以下のことが明らかになった。

調査① 小学校教員養成系学部の学生が本当に理科に対して苦手意識をもっているか

教職希望は全員が小学校志望であり,中学・高校の教員を目指している学生はわずかであ

る。

高校では,ほとんどの学生が理科総合と生物を履修しており,約3分の1が化学・物理を

履修しているが,地学を学んだ学生はほとんどいない。

理科に苦手意識を持つようになった時期は中学・高校がほとんどで,「座学が多く実験が少

ない」「計算が難しい」「実験結果が思い通りにでない」「解剖などで生理的嫌悪を感じた」

などの理由が多く見られた。

理科に対する印象としては,理科(自然科学)そのものは決して嫌いではないが,自分に

とっては難しく,将来教師として理科を教えることに不安を感じている。

教師の資質として,科学への興味・関心,知識,指導技術,児童理解…等の項目について

は,すべて授業実践上必要だと考えている。一方でそれらが現在身についているか,また 理科授業の自信度はという項目についての自己評価のポイントはたいへん低かった。

しかし,理科を敬遠しているのではなく,学生時代にもっと学びたいという意欲をもって

いる。

調査② 学生達はどのような授業を理想と考えているのか

自分たちの経験をもとに,実験・観察などの直接体験を取り入れることや児童・生徒の興

味関心を高めることが大切だと考えている。

「小学校教員養成系学部の学生が理科に対して苦手意識をもっている」という風説は,決 して根も葉もない誹謗ではなかった。確かに今回の調査結果からそうした傾向の存在も確認 できた。

しかし,一方で学生達は自分たちの弱点を自覚して,それを克服しようとポジティブに考 えている実態が明らかになった。理科教育法授業担当者として彼等のスキルを伸張するため の授業法を模索していきたいと思う。

(11)

参考文献

1)独立行政法人国立科学博物館「小学校教員をめざす文系学生のための理科講座」実施報 告,p.2,2011

参照

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