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No. 80

http://www.agulin.aoyama.ac.jp/

社会へ出るあなたへ 社会へ出るあなたへ

Jan. 10, 2008

百万塔(本館所蔵)

巻頭エッセイ

 進化経済学的図書館論

平澤典男 ………2

特 集 「社会へ出るあなたへ」

卒業後も大学図書館を  活用しよう 稲生衣代 ……4 文学作品を読む理由

中野 茂 ……5 書を携えて、社会へ出よう

米澤義衛 ……6 社会へ出るあなたへ

石井 光 ……7 社会にでてからの読書

矢内一利 ……8 社会へ出るあなたへこの一冊

竹田憲史 ……9 会社員から農家へ

〜私があなたに伝えたいこと〜

菊野里絵 10 読書の楽しみ

久保 健 11 社会へ出るあなたへ

福岡伸一 12 書物の情報的価値とは?

井上良二 13

Webサービス紹介

 予約が便利になりました …… 14 展示資料紹介

「中聖武切」

「無垢浄光經根本陀羅尼」 ……… 15 図書館広報板 ……… 16

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経済学部長 

平 澤 典 男

HIRASAWA Norio

■ 巻 頭 エ ッ セ イ

進 化 経 済 学 的 図 書 館 論 進 化 経 済 学 的 図 書 館 論

ルネサンスやバロック音楽の演奏で定評のあ るスウェーデンのギタリスト、イョラン・セルシェ ルは、「音楽は数百年の時を越えて作曲家の 心と僕らの心をつなぐタイムマシンなのだ」と 語っている(朝日新聞 12 月7日夕刊)。なるほど、

芸術家らしい気の利いた表現だと感心する。と ころで、書籍もそうだ。数十年、場合によって は数百年の時を隔てて、先人の知的な営みを現 代によみがえらせることができる。また、若干(い やいや、相当)努力すれば、われわれの考えを 数十年、場合によっては数百年後の誰かに伝え ることができる。かくして、図書館はタイムマ シン機能を持つちょっと大きな「智の外部記憶 装置」ということになる。

しかし、セルシェルは気づいているだろうか。

現代によみがえらせることができなかった音楽 もあったことを。そして、図書館に入らなかっ た数え切れないほどの情報が、確実に存在して いたはずであることを。後世に伝えられるもの と、伝えられないもの。その間に智の生存競争 があったことが伺われる。

ところで、私見であるが、経済学という学問 分野では5,6年単位で「はやりもの」が登場す る。ラディカル・エコノミクス、サプライ・サイ ド経済学、カタストロフィー理論、ファジー理論、

カオス理論、複雑系、経済物理学、等々。経済 学に影響を与えるかに見えて花火のように消え ていったアプローチもあるが、華々しい成果に つながり経済学を変容させるにいたっている分

野もある。ゲーム理論は生き残った数少ないひ とつにあげてもよいだろう(登場間もなく、ま だ判断を下すには早すぎる実験経済学、行動経 済学などの分野も後者に分類されてほしいと筆 者は思う)。ここにも智の生存競争が垣間見ら れる。なぜ、ある理論は消え去り、あるものは 受け入れられたのだろうか。

近年、生物学における進化理論と経済学のコ ラボレーションに、経済学の側から熱い視線が 投げかけられている(進化心理学、進化言語 学、進化認識論などを考えると、進化概念に魅 力を感じているのは経済学者のみではないらし いが)。「進化的経済学」あるいはその範疇に含 まれる「進化ゲーム理論」である。進化といえ ば、もちろん、ダーウィンだが、『種の起源』(ダー ウィン著、岩波書店、 1963 〜 1971)には経済 学の強い影響があったというのは常識のようで ある。確かに、適者生存は市場において競争に 勝ち残った企業が二重写しになって捉えられる。

さて、そういうことならば、経済学が種を植え た進化概念を経済学に返してもらって、智の生 存競争への援用を試みよう。

進化には「突然変異」、「選択」、「遺伝」の 3つの要素が必要であり、いずれのひとつが欠 けても進化は発生しない。生物の遺伝は遺伝 子、DNAによってなされるが、智の生存競争 の文脈では、遺伝は情報のコピーである。そし て書籍の場合は智の外部ストレージとしての図 書館を経由して、(もちろん、ネット上のデータ

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も)時を隔て、距離を隔てて読者に共感を呼び、

思想のコピーを生む。1つの個体からわずかし か子孫を生まない人類が、智に関しては1つの 書籍から実に多数の子孫を生み出すことができ る。生物の生存競争よりもなんと壮大なことか。

そしてある確率で、本の内容を読み誤る者が出 る。教師はそういった学生にしばしば出会うか ら、この想定も現実味があると言ってよいであ ろう。より素晴らしいのは本を批判する着想が わき起こったり、本の内容から新しいアイデア が生まれる場合である。これが智の突然変異で あろう。地理の本から国際経済の着想を得たり、

ユダヤ教の聖典(タルムード)から合理的分配 の原理を発見したり、等々。そして、突然変異 で生じた着想はその時々の時代的文脈、またそ の地域の持つ社会的環境のなかで篩ふるいにかけられ る。あるものは捨て去られ、あるものは生き残 る。これが智の選択の過程である。図書館とネッ トの違いはその篩(フィルター)のかけ方かも しれない。ところで、今日の生物進化の常識で は、よいものが生き残るとは限らないらしい。「あ る考えが栄えることと、その考えの価値に関係 があるとしても、それは偶然であり不完全な関 係でしかない。幾多のよい考えが消失してしま うこともあれば、悪い考えが社会全体に影響を 与えることもある。」(ダニエル・デネット『ダー ウィン文化論』(産業図書、2004)序文)だか ら、くだらない本が一世を風靡したり、貴重な 本が古本屋に埋もれていくこともある。この意

味でも図書館は大切だということがわかる。ネッ ト上には雑駁な情報が乱れているが、情報をあ る考えで集めた図書館はそうではない。大学の

(あるいはより広く学校の)図書館はさらに重要 な意味をもつ。本の読み方、情報の調べ方を教 える機能が大学には併設されているからである。

データを解読するプログラムを諸君ら学生にイ ンストールする場が大学である。かくて、学校 は智のインキュベーターとなるのである。

ところで、「現在、大学は激動の中にある。

生き残りには大改革が必要である。」とは多くの 大学の学長の話によく出てくるフレーズである。

このエッセイの筋道から言うと、生き残りには 突然変異が必要で、そのなかから現在の環境に マッチしたものをえらび、その複製が作られて いかなければならない。それならばわれわれの 大学は安心かもしれない。突然変異とおぼしき 変わり者を捜すに苦労は無いから。実に個性的 な先生方の集まりだから。

さて、私の研究室に次の一文が貼られている。

「それは鳥のようなもの。強く握らなければ飛 んでいってしまい、強く握り

すぎると死んでしまう。」

この一節を読んで、私の部 屋に来た英語教師は「それは 愛ですね。」といった。学部 長である私は、「それは改革 です。」と答えた。

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特集  社 会 へ 出る あなた

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卒業後も大学図書館を活用しよう

稲 生 衣 代

INO Kinuyo これから社会人になる皆さんは在学中、ど

のくらいの頻度で大学の図書館を利用しました か ? 図書館にこもって勉強をしていた方もいる でしょうが、レポートの執筆あるいは期末試験 前にだけ図書館を利用した方が最も多いのでは ないでしょうか。

卒業したら、大学図書館と縁が切れてしまう と思っているかもしれませんが、そんなことは ありません。実は卒業後にも図書館利用カード を作成し、本を借りることが可能です。

私の場合、学生時代よりも卒業後に大学図書 館の御世話になったと言えそうです。平日は午 後 9 時半過ぎまで開館、土日にも開いているこ とが多く、青山キャンパスの立地の良さも魅力 的です。卒業後、仕事で詳しい文献にあたり調 べる必要が出てきたとき、あるいは米国大学院 への留学を考えたとき、専門書が揃っている大 学図書館に足を運びました。

卒業後のお気に入りのスポットは洋書が並ぶ 地下1階に配置された独立した空間を提供して くれる個人席「キャレル」でした。大量の本に 囲まれながら、静かな環境で一人の時間を堪能 できる幸せな空間は日ごろ慌しい生活を送らざ るを得ない社会人の私がゆっくりと過ごせる秘 密の場所でした。

私のゼミでは早いうちから図書館の魅力を 知ってもらおうと考え、前期に蔵書検索「OPAC」

の使用法について説明してから、ゼミ生を図書 館に案内しています。専門書を一冊選んでもら い、レポート提出を義務付けています。専門書 を読み、勉強してもらいたいと同時に、図書館 の有効な活用法を教えるのも狙いです。

最近では多くの大学図書館が地域住民の利 用を受け入れるようになってきており、大学図 書館の良さが改めて認識されているようです。

社会人になる皆さん、卒業後、大学の図書館 で知的な時間を過ごしてみてはいかがでしょう。

仕事に少し疲れていたら、大学図書館でお気に 入りのキャレルを見つけて、大都会のオアシス で少し一息ついてみたらいかがでしょう。ただ し、休館日もありますので、くれぐれも事前に インターネットで開館スケジュールの確認をお 忘れなく。

(文学部専任講師 通訳・翻訳論)

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特集  社 会 へ 出る あなた

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文学作品を読む理由

中 野   茂

NAKANO Shigeru 最近学生から「一体何のために文学作品を

読むのですか」と訊ねられることが幾度かあっ た。確かに、本を読まなくても生きてはいけるし、

ましてや、小説や詩を読まなかったからといっ て生活に支障をきたすこともないだろう。

この問いに対して、最近私は次のように答え ることにしている。

多様な人物が登場する物語を体験することで、

人は他者、さらには自己の内に存在する多様性 を理解するようになるのではないだろうか。物 語の中で展開されているのは、ある時は立身出 世のために全てを抛なげうつ人物の成功と挫折であり、

またある時は愛する人のために命まで捧げる人 物の歓喜と絶望であり、さらにある時は相反す る価値観の間で揺れ動く人物の懊悩である。読 書とは、内側から克明に描かれた主人公の人生 を、数時間あるいは数日にわたって共に生きる、

バーチャルな体験に他ならず、実際、多くの人 が愛や死に初めて触れるのは、小説の中におい てではなかっただろうか。

また同時に、文学作品は「有益性」に従属し て生活している私たちに、別の視点から世界に アプローチすることが可能なのだと教えてくれる。

すなわち、世界とは「神秘と美」に満ちた詩的 な性格を持ちうるのだと教えてくれるのである。

このような貴重な体験のきっけが無限に詰 まっているのが図書館であるが、特に私が図書 館で好きなのは、既に多くの人の手垢のついた 紙の感触を通して、過去の読者のバーチャルな 体験に想いを馳せることであり、また、同じフ ロアーで本に没頭している他の読者と空間を共 有することである。

本学の学生だった頃、私はいつも暇をもてあ

ましていて、気がつくと、いつの間にか足が図 書館に向いていた。別に何をするわけでもなく 三階に上がり、静まり返った雰囲気の中で、面 白そうな本を見つけては手当たり次第に読み 漁っていたことを覚えている。

その後、修士論文の準備を始めた頃、レファ レンスカウンターで日本中の図書館から、時に は海外の図書館から本を取り寄せてもらったこ ともよく覚えている。図書館はそれ自体に莫大 な蔵書を抱えているだけでなく、日本中のそし て世界中の図書館とつながっているのである。

また、仕事柄いろいろな大学の図書館のレファ レンスカウンターを利用する機会があるが、本 学のレファレンスカウンターほど、人間味溢れ る接し方をしてくれたレファレンスカウンターも なかった。私はこれを勝手に「青学精神」と理 解している。

大学を卒業し社会に出る方たちには、いつで もこのひっそりとした空間がそこにあり、レファ レンスカウンターの人たちがそこにいるという ことを時々思い出して欲しい。そして時にはこ の静かな空間に戻り、社会とは違った時間が流 れていることも思い出して欲しい。

最後に、私が当時読み、今でも図書館の雰囲 気とともに記憶している小説の、日本語訳のタ イトルを記しておこう。

『ゴリオ爺さん』(バルザック、岩波書店、1997 他)

『ドミニック』(フロマンタン、岩波書店、1937)

『異邦人』(カミュ、新潮文庫、1966)

『田園交響曲』(ジッド、筑摩書房、1973、

「筑摩世界文学大系」 55 巻)

『悪童日記』(アゴタ・クリストフ、早川書房、1991)

(文学部非常勤講師 フランス文学)

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特集  社 会 へ 出る あなた

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書を携えて、社会へ出よう

米 澤 義 衛

YONEZAWA Yoshie 大学の生活と勉学を終えようとして , いまど

んな感慨にひたっていますか?あなたの大学生 活と勉学の軌跡は、どのような形で残るのでしょ うか?一枚の学士証明書だけだとしたら、すこ し淋しい気がしませんか?

この小文を読む頃には部屋の整理に取り掛か り、新たな旅立ちへの期待で身震いしているこ とでしょう。うまく整理ができそうですか?とこ ろで卒業を控えた学生にとって、本棚の整理は 欠かせない大仕事の一つかもしれません。入学 時から本など買う必要はなかったし、本棚のよ うな余計なものはないよ、という返事が、デジ タル時代真只中に生きているあなたから返って きそうで、こうした問いかけは、そもそも問い にすらならないかもしれません。また在学中の 本はすべて図書館で済ましてしまったよ、とい う賢明な学生にとってもこれは愚問かもしれま せん。

しかし、捨てるかどうか悩む本があったとし たら、それはとても幸せなことかもしれません。

その本がどこまであなたの傍に置かれるか確か ではないが、その本を見るたびに学生時代を鮮 やかに思い出すことになると思うからです。ま た必ずその本を読み返したくなる時がやってき ます。その時多分大きなショックを受けるはず です。実は学生時代に自分は何も読んでいな かったのだと愕然とするからです。そのことを 痛感するくらいに自分も成長したことを誇りに 思うと同時に結局、自分は何を知っているかと いう謙虚な気持ちにさせてくれます。これはと ても大事なことです。

捨ててしまった本で絶版になり、悔しい思い

をする懐かしい本があったりします。そんな本 こそまた無性に読みたくなるものです。その時 威力を発揮してくれるのがインターネット検索 です。いまでは大概の本は瞬時にして全国の 古本屋の販売リストから注文可能になりました。

探し出した本が手元に届き、学生時代そのまん まの造作であれば、それを読んでいた時の情景 が鮮やかに思い出されます。

『書を捨てよ、町へ出よう』(寺山修司著、角 川書店、1975)は院生を卒業するとき捨てた本 の中の一例です。ぐずぐず考えるのは学生で けりをつけ、社会へ旅立なければとの思いが あったからでしょう。しかし、最近文庫版でそ れを買い戻しました。やはり捨ててはいけない 書はあるのです。内容はもちろんですが、重量 感、ボリューム感、手触り感、インクや紙の匂い。

頭だけでなく五感でその存在感を感得させてく れる本という形だからこそ捨てられぬのかもし れません。愛読書という言葉はこうした存在感 と切り離せない言葉かもしれないのです。

デジタル社会では、紙媒体の本はやがて消え ていくと思われます。機能的に考えれば、知の 媒体として紙の活字印刷本の形は無用だからで す。本はデジタルコンテンツとして、ネットの なかからどこでもいつでも読めることになるで しょう。しかしそうした電子本は書物としての 存在感が希薄になるはずです。したがって本を めぐるこうした感傷的な小文も書かれることも なくなるでしょう。それでも言いたい。「書を携 えて、社会へ出よう」そんな本が一冊でも本棚 に残っていることを祈ります。

(経済学部経済学科教授)

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特集  社 会 へ 出る あなた

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社会へ出るあなたへ

石 井   光

ISHII Akira 皆さんは 16 年以上の学生生活を終えて、は

じめて社会に出ようとしています。

社会人になると、学生時代と違って、遅刻は あり得ない、多少の熱があっても簡単に仕事は 休めないという生活が待っています。私のゼミ の卒業生でも、業界によっては、入社1年目か ら、毎日会社で2、3時間仮眠をし、時々家に帰っ て寝ることができるという人もいますし、夜の 8 時ごろゼミの食事会に参加し、10 時ごろ会社に 戻っていく人もいます。

そのような生活の中で、慢性疲労症候群で倒 れた人や、新しい知識を得て入ってくる新入社 員に遅れをとってしまうため、悔しくて歯ぎし りして会社で気を失ったという人もいます。

学生時代と違って、プロとしての厳しい毎日 が待ち受けているといってよいでしょう。

ですからそのような生活の中でも、やりがい を感じ、楽しいと感じられるかどうかがとても 重要になってくると思います。

5 月の連休に、青い顔をして銀杏並木のベン チに座っていた卒業生に声をかけられたことが あります。4 月から土日もなしに働き、連休で 初めて休みが取れたら、自然と足が大学に向 かっていたというのです。 私の人生は定年まで このままでいくのだろうかと考えたら、恐ろしく なってしまったとのことでした。

将来は、勤務先が倒産したり、リストラにあっ たりということも考えられます。卒業生の中に は、勤めた先が 2 度倒産しながらも、さらに勤 務先をかえ、自分のやりたいことを、生きがい を持って続けている人もいます。

現在、花形産業だからといって、30 年後に

もそうであるとは限りません。かつて社会から 嘱望される職業は軍人でした。それが戦後炭鉱、

製鉄、造船、繊維、電機器具、金融、不動産、

保険、航空、IT 業界等と時代を追って花形産 業が変わってきました。この先も、いろいろな 移り変わりがあるでしょう。

ですから、一度限りの人生を、いつ何が起こっ ても悔いのないように、自分の信念にしたがっ て生きていっていただきたいと思います。会社 が倒産しても、リストラにあっても、体をこわ して倒れても、自分はやりたいことをやってき たと言えること。それが大切だと思います。

新しい社会に入るのですから、まずはそこに 適応することが重要だとは思いますが、その先 は、常に自分にとってこの場所にいることが正 しいのかどうかをチェックしていくことが大事 ではないでしょうか。

卒業してからも大学図書館を利用している人 はたくさんいます。勤務先で必要とされている 勉強のために、転職の準備や、就職をせずに めざす資格試験や公務員試験の勉強のために、

そして自分の教養、趣味のためにと、その目的 はさまざまです。

皆さんにも、自分の原点に戻り、その先の人 生を考えるためにも、卒業後も大学図書館を利 用されることをお勧めしたいと思います。

そして、常に自分を見つめ、生きがいを感じ つつ、社会人として、家庭人として、それぞれ の持ち場で、灯をかかげていっていただきたい と願っています。

(法学部教授 犯罪学)

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特集  社 会 へ 出る あなた

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社会にでてからの読書

矢 内 一 利

YANAI Kazutoshi 社会に出て、仕事をして給料をもらうように

なると、仕事に追われて自分の趣味に使う時間 がないと言う人がよくいる。そのような趣味の 中で、社会にでるとなかなかできないのが読書 ではないかと思う。

若いうちに読書をしておくべきだということ はよく言われる。なぜそう言われるのかについ て、私なりに解釈すると、一つは時間があること、

もう一つは体力があるから、ということではな いか。例えば、純文学でいうと、ドストエフス キーやトルストイは、内容・分量ともに時間が あり体力があるころでないと読み通すのが難し い。それに一度読めば、年をとってからも再度 読み返すのが苦ではなくなる。

ただし、やはり若い頃(特に大学生の頃)は 読書のような知識を得ていく趣味よりも、もっ と他のいろいろな遊びに没頭してしまいがちで ある。そうすると、社会にでてから、読書を今 まであまりしていなかった、今さらやりたくても 時間がないと思う人がいるかもしれない。

ところが、実際には「時間がない」といっても、

目的もなくインターネットを見たり、時間をつぶ すためにゲームをしたりして時間を過ごすこと が実は多いのではないかと思う。このような漫 然と過ごす時間を少しでも読書に振り向けるこ とはできるであろう。

また、社会にでてからも読書が必要なのは、

やはり効用があるからだ。その効用としては知 識を身につけ、語彙が豊富になるということが あげられるだろう。加えて、書くことにおいて も、話すことにおいても、様々な表現力が身に つくこともあげられる。つまり、自分の言いた いことをきちんと伝えるコミュニケーション能力

が手に入れられるのではないかと思う。それで は、社会にでてから読書をしていくにはどうす ればよいのだろう?、

まずは、(ネットのくだらない掲示板を見ると いったような)漫然と過ごしている時間を見つ け出し、それを読書にあてるということだ。そ れと、幅広い知識を身につけるために、純文学、

ミステリ、ノンフィクションというあらゆるジャ ンルの本を満遍なく読むということである。面 白そうだと感じたものから、しかもなるべく薄 いものから読んでいけばいい。ドストエフスキー なら、『地下室の手記』(光文社、2007)あたり の短めの作品から読んでおいたほうがいい。い きなり『罪と罰』(岩波文庫、1999)などから読 み出すと投げ出す可能性が大である。このよう にしていけば、まだ体力があるうち(20 代から 30 代にかけて)なら、分厚い本にも何とか挑戦 できるようになるはずである。

それと、今読んでいる作品がどんな作品に影 響を受けているかを意識して、さらに読書の範 囲を広げることもいいのではないかと思う。例 えばウィリアム・バロウズの作品を読んだ後に、

バロウズの影響がある作品としてウィリアム・

ギブスンにふれていくと、「サイバーパンク」と いうジャンルの作品を知ることが出来る。「そん なことを知ったからなんの役に立つのだ?」と いう人がいるかもしれない。しかしながら、こ のような好奇心を持つことは、読書していく上 での「楽しみ」であり、自分の心を潤わせてく れるものであると思う。このような楽しみを馬 鹿にする人には、つまらない人生しか送れない というのが、私の偏見である。

(経営学部専任講師 会計情報論)

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特集  社 会 へ 出る あなた

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社会へ出るあなたへこの一冊

竹 田 憲 史

TAKETA Kenshi 図書館や図書に関係する内容で、「社会へ出

るあなたへ」というテーマで執筆してほしいと 依頼されたとき、正直なところ途方にくれてし まった。この依頼を受けたとき、私の文章の読 者としてまず思い浮かべたのは、大学を卒業し てすぐに新社会人となるあなただ。そして、そ んなあなたに贈るメッセージを考えた時、読書 や就職にまつわる私の経験が参考になるとは思 えなかったのだ。まず、私は大学卒業後にすぐ 社会に出たわけではなく、日本の大学院を経て アメリカの大学院に留学し、学位取得後に日本 に帰国してようやく就職した。就職したときに は、すでに 30 代も半ばにさしかかろうとしてい た。そして、大学院時代から就職後の今にいた るまで、読書と仕事(研究)が直結する特殊な 生活をしている。私の生活では、経済学の学術 論文や経済に関する本などを読み、それを自分 の研究にフィードバックするという作業が欠か せない。つまり私の生活では、読書が仕事に役 立つというよりも、そもそも読書なくしては仕 事があり得ない。これほどまでに読書と仕事の 距離が近いという生活は、やはり特殊な生活な のだろうと思う。つまり、大学を卒業してから 就職するまでの時間も、就職する年齢も、そし て(おそらくは)就職してからの生活と読書の 関係も、あなたと私とではまったく異なる。だ から、社会に出るあなたに図書館や図書に関係 する内容でどのようなメッセージを送ったらい いのか、見当がつかなかったのだ。

しかし、それでも縁あって、あなたは今こう して私の文章を読んでいる。あなたとは全く無 縁のように思える私の文章はどのようにあなた

の手元に届けられたのだろう。今あなたが手に 取っているこの小冊子があなたのもとに届けら れる(あるいはこのホームページがあなたの目 に触れる)までには、私の原稿を回収する人、

小冊子の印刷や配布に携わる人、ホームページ に原稿を掲載する人など、いろいろな違った仕 事をするたくさんの人々がその間に介在してい る。つまり、さまざまな形で、あなたと会った こともない人々、そしてこれからも会わないで あろう人々がそれぞれの仕事を通じてつながっ ていて、そのおかげで私の文章があなたの目に 留まることとなった。そんなことを考えている と、一冊の本が頭に浮かんだ。それは『君た ちはどう生きるか』(吉野源三郎著、岩波文庫、

1982)だ。書名から受ける印象とは異なり、こ の本では「君たちはどう生きるか」について直 接書かれているわけではない。この本では、主 人公の少年が、社会において自分と他人とがど のようにつながっているのかを真剣に考えてい くプロセスが描かれている。社会の中で自分の 仕事がどんな人とどのようにつながっているの か、自分の仕事の社会における位置づけ、そ して自分がどう生きるかを考える上で、この本 は貴重なヒントに満ちていると信じて疑わない。

これから社会に出るあなたにこそ、この本を読 んで頂きたいと思う。

(国際政治経済学部専任講師 金融論専攻)

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特集  社 会 へ 出る あなた

特集  社 会 へ 出る あなた

くの異業種からの参入組の私たち。でも、こう いう自分たちにしかできないこともたくさんあり ます。農業をやるには少し回り道をしましたが、

大学で学んだものも、会社勤めの経験も、今の 私に無駄になっているものは一つもありません。

そういう私自身の財産を生かして、農業をもっ と面白いビジネスにすることも夢ではありませ ん。今、私はそんなチャレンジの真っ只中にい ます。

皆さんの中に、これから飛び出す社会を前に して悩み、戸惑っている方がいれば、是非お伝 えしたいことがあります。それは、どんな道で あれ、あなたが選ぶ道を信じて進んでほしいと いうことです。その道を、あなたが思う存分に 進めば、あなたにとって最高の財産となること でしょう。

皆さんのこれからのご活躍を、お祈り申し上 げます。

(国際政治経済学部 1994 年度卒業)

会社員から農家へ 〜私があなたに伝えたいこと〜

菊 野 里 絵

KIKUNO Rie 大学を卒業して、電力会社に勤務して 12 年。

私が人生の舵を大きく切ったのは、昨年の4月 でした。電力会社を退職して、子ども2人を連 れて、夫と二人で新規就農への扉をノックした のです。

会社では、第一線の現場業務から秘書業務、

新しい組織の設立準備そして運営、新入社員 から管理職層まで対象とした研修業務・・・と、

やりがいのあるさまざまな業務を経験しました。

素晴らしい上司や同僚にも恵まれ、とても充実 した毎日を送っていました。

その中で、少しずつ膨らんでいったのが農業 への想いでした。農村に行くと、多かれ少なか れ、後継者不足で荒れていく農地を目にします。

美しい日本の原風景が失われてしまうんだなぁ と若い頃は他人事のようにぼんやりと考えてい ました。それが、いつしか自分がその担い手に なろう、と思うようになり、なるならまだ体力の ある若いうちがいいのではないか、と思うに至 り、ついに夫を説き伏せ、二人で新規就農の道 を選択することになったのです。

会社員から農家への転身という選択に、私自 身迷いがなかったとはいえません。しかし、自 分たちの一番大切な、家族という社会の原単 位で仕事をし、生活をすることができ、生産か ら販売まですべて自分が主体になれる農業とい うビジネスに魅力を感じました。子供たちとの 時間もたくさん持つことができるし、それは何 物にも代え難い価値となるに違いない。そして、

荒れていく土地を、自分たちが少しでも救うこ とができる。そんな風に考えたのです。

大学での専門ともかけ離れているし、まった

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特集  社 会 へ 出る あなた

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読書の楽しみ

久 保   健

KUBO Kenn 私の専門は物理学だが、物理の本を読む事

は余り無い。本当はこれではいけないのだろう が、関係する論文を読めば大抵仕事上の用は 足りるからである。勿論、学生時代には、物理 や数学の本もよく読んだ。全ての数式を導き出 し、納得するまで考えながら読んだ物理、数学 の教科書は、どこに何が書いてあるか分かって いるので、今でも必要があると手に取り利用し ている。このような本を学生時代に何冊か作っ ておく事は、理工系なら学生時代にやっておく べき事の一つだと思う。

しかし専門分野以外の読書の楽しみも大きい。

私の幼児時代には、まだ今のように児童書を 手軽に手に入れることはできなかった。そこで 手が届く範囲の本は、それが難し過ぎない限り、

内容に関わらず手にとって読んだものだ。私の 母はある時期『婦人之友』(婦人之友社)とか

『栄養と料理』(女子栄養大学出版部)という雑 誌を講読していたが、小学生の頃からそれらを 拾い読みしていた。『栄養と料理』という雑誌 はなかなか面白い雑誌で、私が今料理好きなの は、この雑誌によってその素養が与えられたか らだと思う。

中学校時代になると世の中が豊かになり、世 界文学全集ブームが起こった。これは、予約購 読すると数ヶ月に1冊欧米近代のいわゆる古典 的名作小説が届けられるというもので、我家で も購読したので、それらに読みふけったものだ。

これで文豪と呼ばれる人達の作品を知った。

大学入学後は小説も読んだが、歴史書もか なり読んだ。中でもギボンの『ローマ帝国衰亡 史』(岩波書店、1959)は岩波文庫で 10 巻の長

編だが、キリスト教会史に関する多くの挿話が 載っており、ギボンの皮肉なものの見方が私に は面白かった。また、ローマ帝国最後の皇帝が コンスタンティヌス・パレオログスだという事を この本で知ったとき、苦沙彌先生のオタンチン・

パレオロガスに対する長年の疑問が解けたので あった。

何でも目に付いた面白そうな本を全く脈絡無 く読んできたのは、読むこと自体が楽しいから だが、読書には思わぬ発見もあるし、読書によっ て得られた知識は私のこれまでの人生を豊かに してくれたと思う。 

前に挙げた料理もその一つだが、旅行で訪 れた土地が、読んだことのある小説や歴史書 の舞台となっていれば、旅の楽しみも倍加する。

カンタベリー寺院を訪ねたとき、ここでトマス・

ベケットが殺されたと聞き、昔読んだ『聖者』(岩 波書店、1942)という小説を思い出し、一人寺 院の庭のベンチに腰をおろして、小説に描かれ た情景に思いを馳せたのであった。

また印象派以前の西洋絵画は、そのほとんど がギリシャ・ローマ神話、聖書、聖人伝説を題 材にしている。読書を通してこれらの話をいく らか知っていたお陰で、私の美術鑑賞の楽しみ も深まった。

社会の変化は非常に急激で、若い人達が私 の読んだ昔の名作小説に共感することは難しい だろうと思う。しかし、様々な分野の読書を幅 広く楽しむ事が、人生を豊かにする事は今も昔 も変わらないだろう。

(理工学部物理数理学科教授)

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特集  社 会 へ 出る あなた

特集  社 会 へ 出る あなた

社会へ出るあなたへ

福 岡 伸 一

FUKUOKA Shinichi おそらく教える側に特別な意図はなくとも、

教えられる側の心のどこかにずっと残り続け る言葉というものがある。大学に入りたての頃、

生物学の時間の最初に、ある教師がこう問うた。

人は瞬時に、生物と無生物を見分けるけれど、

それは生物の何を見ているのでしょう。そもそ も、生命とは何か、皆さんは定義できますか ? そのあとにどんな講義が続いたのか私はすっか り忘れてしまった。おそらくそこでは私の心に ストンと納得をもたらすような答は与えられな かったのだろう。生命とは何か?なんといって もこれは人類史始まって以来の、究極の問いな のだから。生物学者となって今でも、私はこの 問いに十分答えることができない。ただ、あの ときから、同じ場所の周りをぐるぐる回りなが らも少しは深度を深めることができたのかもし れない。

現代の分子生物学が用意している解答はシ ンプルだ。生命とは、自己複製を行なうシステ ムである。DNA は二重ラセンをしている。ラセ ンはほどけてポジとネガになる。ポジはネガを、

ネガはポジを新たに複製し、DNA は倍加する。

こうして生命は自らを 38 億年間紡いできた。そ のことがわかったのは 1953 年、ワトソンとクリッ クが DNA の構造を解いたときである。

彼らに啓示を与えたのは一冊の小著だった。

物理学者エルヴィン・シュレーディンガーの『生 命とは何か』(岩波新書、1975)である。ここ で彼は二つの予言をした。遺伝子の本体は非 周期性の結晶である。この予言は、その後の DNA 構造の決定によってある意味で見事に証 明された。しかし、もうひとつの予言は宙に浮 いたままとなった。生命は無数の、ランダムに

揺らぐ原子から成り立っているにも関わらず秩 序だっている。それを統御する物理学がある はずだ。ちょうど電気の存在を知らない人間が、

動くモーターを初めて見たとしよう。彼がすべ きことは、モーターの中に幽霊を想像するので はなく、新しい原理を見出すことである。

私が大学に入学したのは 1978 年のことであ る。この年、画期的な本が出た。清水博『生命 を捉えなおす』(中公新書、1978)である。こ の本には大胆すぎる仮説が盛り込まれていた。

分子生物学が明らかにしたように、生命は分子 から成り立っている。しかし、より重要なのは 部品としての分子ひとつひとつの存在ではなく、

その関係性なのだ。つまり、生命は「関係子」

によって成り立っている。私はその言明に魅了 された。と同時に、その関係性の実体が記述し きれないことに、もどかしさを感じた。

長じて私は今、生命現象が持つ関係性を解く ために不可欠なもうひとつの変数について考え ている。それは「時間」である。分子生物学は様々 な生命現象を、分子の、再現性のよい相互作用 によって記載する。しかし、そこに立ち現れて いるのは、実は、一回限りの時間の関数として の現象なのである。橋元淳一郎『時間はどこで 生まれるのか』(集英社新書、 2006)は、この 問題に真っ向勝負を挑んだ好著である。また関 係性が生まれる原理に肉薄するものとして蔵本 由紀『非線形科学』(集英社新書、2007)がある。

集英社はなかなか果敢である。

私は、彼らの絶え間のない認識の旅を引き継 いで、大学初年度の問いにいつの日か新しい言 葉を与えることができれば、と夢想する。

(理工学部化学・生命科学科教授)

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特集  社 会 へ 出る あなた

特集  社 会 へ 出る あなた

書物の情報的価値とは?

井 上 良 二

INOUE Ryoji 最近では、若者の活字(書物)離れが激し

いといわれる。それはインターネットでの容易、

かつ迅速な情報収集が可能になったということ と無縁のことではないであろうし、物事をイメー ジでとらえる若者が増えたということとも無縁 ではないであろう。

自然界が物質とエネルギーによって組成さ れていることは誰も疑いを差し挟む余地はない。

そこに、ノバート・ウィナーが自然を組成させ ているもう一つの要素としての情報の存在を指 摘してから久しい。吉田民人によれば、情報は 意味をもった記号の集まりであるといい、この 情報は①認知機能、②指令機能、③評価機能 という三つの機能をもっていると分析している。

指令機能は、主体がなすべき反応を表示する記 号の機能をいうものとされる。また、評価機能 は主体の目的等の達成に望ましいもの・望まし くないもの、あるいは充足・不充足を判断せし める機能をいうとされている。

ここでの話にとって重要なのは、認知機能で ある。認知機能は、何らかの主体が主体を巡 る環境を記号表示(情報化)することによって 環境の認識を行うものである。ここで注意すべ きことは、この情報の持つ認知機能は単用的な、

言い換えれば一度かぎりの環境認識にとって有 用なものだけではなく、それらの蓄積によって 形成される耐用的な情報をも含んでいるという ことである。知識といわれるものはこの耐用情 報である。情報を耐用認知情報と考えるかぎり は、ばらばらな知識では意味がなく、体系化さ れた知識が有用である。よって、この意味での 知識を考えるときには、当然に、体系的な知識

を獲得する方法を考察する必要がある。北川敏 男が情報に関連して演繹論理、帰納論理、発 想法の論理に言及するのは故なきことではない。

単なる知識と物事の理を悟らせる知恵との差は、

案外体系化されていない断片的な知識と体系 化されている知識との差にあるのかもしれない。

ところで冒頭で述べたインターネットによる 情報収集は手軽で便利であり、即席の物知りを 創り出すには好都合であり、人間生活を豊かに した側面があることは否定できない。また、最 新情報を入手して即時に対処することにも有 用であろう。ゆえに、インターネットの効用を 無視することなどできない。使い方によっては 限りない可能性の世界を展開してくれる。だが、

それが万能ではないことを知ることも大事であ る。その善し悪しの判断は別として、そこで収 集された情報は脈絡のない特定目的にのみ有用 な情報である危険性は決して低くない。それに 対して、書物は、情報の斬新さには欠けるもの の、通常は章編成に盛りこまれた体系化が行わ れており、それは単なる断片的な知識ではなく、

知恵の源泉となる体系的な耐用認知情報となっ ていると思われる。だから、書もまた良しである。

(会計プロ研究科教授 財務会計論)

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予約 便利 になりました

青山・相模原キャンパス間の本の取り寄せと、

貸出中の本の予約について、パソコンから自分 で申し込めるようになりました。操作方法は簡 単です。従来の予約カードを記入する必要はあ りません。

① OPAC を検索して、書誌詳細画面の左上にあ る     ボタンをクリックします。(図 1)

②利用者 ID とパスワードを入力します。

③画面の表示内容を確認して依頼完了です。

※利用制限があります。詳細は画面の説明を確 認してください。

キャンパス間の取り寄せをした場合、本の到 着の目安は以下のとおりです。

●青山キャンパスの方

相模原への依頼日時 到着予定 月〜金曜 11:30 まで 当日 17:00 月〜木曜 11:30 以降 翌日 17:00 金曜 11:30 以降、土〜日曜 月曜 17:00

●相模原キャンパスの方

青山・短大への依頼日時 到着予定 月〜金曜 8:00 まで 当日 14:00 月〜木曜 8:00 以降 翌日 14:00 金曜 8:00 以降、土〜日曜 月曜 14:00 予約した本が 利用できるようになったら e-mail でお知らせします。大学生・大学院生は、

情報科学研究センターの e-mail が登録されて いますが、「利用状況照会」から登録・変更す ることもできます。(図 2)

予約の確認や取り消しは、利用状況照会の「予 約一覧」を参照してください。(図 3)

取寄・予約依頼 図 1 OPAC

e-mail 登録・変更

予約一覧 図 2 利用状況照会

予約取消 図 3 予約一覧

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Web サービス紹介

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「中聖武切」は、聖武天皇(45 代 701 〜 756 年)

筆と伝えられる経典の断片。本学所蔵は 27.2 × 30.4cm の荼毘紙に、写経 14 行。字の大きさに より「中聖武」と呼ばれている。聖武天皇は文 武天皇と藤原不比等の娘宮子の皇子で 724 年 即位した。長屋王の変、藤原広嗣の乱など政 治的危機を乗り切り奈良時代の最盛期を迎える。

全国に国分寺・国分尼寺の建立を命じ、唐より 鑑真を招き、東大寺、大仏鋳造を発願するなど 仏教興隆につとめ、唐の文物を積極的に取り入 れ天平文化を開花させた。数々の御物が正倉院 に現在も保存されている。749 年に孝謙(=称 徳)天皇に譲位する。孝謙(46 代)天皇、32 才。

聖武天皇は上皇となり、7年後に没する。

「無垢浄光經根本陀羅尼」は、百万塔(木製 の小塔)1基の塔身部中心に陀羅尼経1巻が納 められている。本学所蔵は塔身部(高約 13cm、

底部直径 10.3cm)と相輪部(高約 8.9cm)に分 解できる。中の陀羅尼経は、5.7 × 43cm。根本 陀羅尼の終わり 22 行が補修紙に貼られている。

「百万塔陀羅尼」は、奈良時代の女帝称徳(46 代 718 〜 770 =孝謙)天皇の発願により、宝亀 元(770)年4月に完成した百万塔の小塔の塔 身に納められた『無垢浄光大陀羅尼経』。「根本」

「相輪」「自(慈)心印」「六度」の4種が、合 計百万枚印刷された。現存する印刷年代が明 確な最古の印刷物として有名である。

孝謙(48 代=称徳)天皇は、聖武天皇の第 一皇女で、藤原不比等の娘光明子を母とし、養 老2(718)年に生まれている。立太子を経て 天皇に即位した最初の女帝である。天平宝字2

(758)年、41 歳で淳仁天皇に譲位する。父の 死後、母光明皇太后と甥の藤原仲麻呂が権勢を ふるうようになる。母の死後、出家し、上皇と

「中

ちゅう

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ぎ れ

「無

じょう

浄 光

こ う

きょう

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ぽ ん

なる。天平宝字8(764)年藤原仲麻呂(恵美 押勝)の乱を追討、淳仁天皇を淡路に流し、重 祚して 47 歳で称徳天皇となる。乱の懺悔、鎮 魂のため百万塔の作成が始まった。1万個ごと に七重の塔(高約 50cm)を 100 個作り、10 万 個ごとに十三重塔(高約 60cm)を 10 個作っ た。1万節塔、10 万節塔と呼ばれている。53 歳で亡くなった年に完成している。約5〜6年 で 100 万個作ったことになる。「百万塔」は当 時の十大寺、奈良法隆寺、東大寺などに配られ た。現在残っているのは、法隆寺のみである。

聖武天皇、称徳天皇父娘ゆかりの資料の紹 介で、少しでも、天平文化の一端を味わってい ただけたら幸いである。

(本館運用課閲覧係担当)

参考文献

1 「日本古代国家の展開 下」 門脇禎二編

009625462 210.3/ K 10-6 2 「最後の女帝 孝謙天皇」 龍浪貞子

009930199 288.41/ K 8-1 3 「日本の女帝」(別冊歴史読本 04)

000233297 288.41/ N1 4 「天皇一二四代」 009315695 288.41/ T 6 5 「民衆救済と仏教の歴史 上」 中屋宗寿 郁朋社 2006 6 「日本出版文化史展’96 京都 図録」

009802115 023.1/ N 7-1 7 「朝日ジャーナル」梅原猛 v.32 no.28 1990 pp64 〜 67

“孝謙天皇 12 仲麻呂の怨霊鎮魂のために作られた

「百万塔」と「頭塔」”ほか孝謙天皇 1 〜 24 のシリーズ 8 「神戸女子大学紀要」 v.2 1971 pp.68-90 “百万塔陀羅尼の研究”

中聖武切

無垢浄光經根本陀羅尼

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 日  月  火  水  木  金  土 3

 日  月  火  水  木  金  土 2

本   館 

万代記念図書館

● 試験期貸出・・・・・・1/8 〜 1/28   冊 数:通常通り

  貸出期間:1週間(学部生・短大生)

  延長期間:1週間(全利用者)

※山手線コンソーシアム利用停止、卒業生は   貸出停止

● 試験期貸出・・・・・・1/8 〜 1/28   冊 数:通常通り

  貸出期間:1週間(学部生・短大生)

  延長期間:1週間(全利用者)

※卒業生は貸出停止 月〜金 9:00 〜 21:40 土 9:00 〜 21:00

月〜土 9:00 〜 19:00 12:00 〜 19:00 通 常 開 館

休業中の開館 休 日 開 館

月〜金 9:00 〜 20:00 土 9:00 〜 17:00 月〜金 9:00 〜 17:00 土 9:00 〜 13:00 10:00 〜 17:00

通 常 開 館 休業中の開館 休 日 開 館

● 春期特別貸出・・・・・・1/29 〜 3/28   冊 数:10 冊

  返却日: 在校生 4/11

     卒業・修了予定者 2/29

● 春期特別貸出・・・・・・1/29 〜 3/28   冊 数:10 冊

  返却日: 在校生 4/11

     卒業・修了予定者 2/29

*1/19( 土)、1/20(日)はセンター試験のため休館

*4/4(金)から通常開館

*3/5(水)から 3/7(金)は蔵書点検のため休館

*4/11(金)から通常開館  日  月  火  水  木  金  土 1

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モンテーニュは『随想録』の中で、彼にとって必要な「三つの交わり」、つまり友愛と恋愛、

それに書物との交わりについて述べています。前二者の一方は稀で、他方は年齢とともに色 あせる、それに対して書物は一生私に付き従ってくれる、と。 (鳥居正文)

青山学院大学図書館報“AGULI”第 80 号 2008 年1月 10 日発行 カット/一瀬 実香瑠(文学部英米文学科4年)

編 集 青山学院大学図書館報編集委員会・大学図書館広報担当 TEL. 03-3499-1402 FAX. 03-3407-4472 発 行 青山学院大学図書館 〒 150-8366 東京都渋谷区渋谷 4-4-25 http://www. agulin. aoyama. ac. jp/

青山学院スクール・モットー 地の塩、世の光 The Salt of the Earth、 The Light of the World

編 集 後 記 編 集 後 記

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卒業後も図書館を利用できます

身分証明書の提示により、入館、資料の閲覧ができます。また、「図書館利用カード」(発行手続きが必要)

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参照

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