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博士学位

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Academic year: 2022

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(1)

博士学位

平成25年度

内容の要旨

及び

審査結果の要旨

(平成 26年3月)

近畿大学大学院

総合理工学研究科

(2)

生年月日 名

学位論文審査結果の報告書

兒玉浩尚

本籍(国籍)

学位の種類

学位記番号 学位授与の条件

(博士の学位) 論文題目

(亟ヲ・平成 60年7月

兵庫県

士(理学) 博

理第 78 学位規程第5条該当

1 5日

Congruences for s iege 1 裂10dular forms

審査委員

(ジーゲルモジュラー形式の合同) 号

(主査) (副主査) (副主査) (副査)

長岡昇勇 大野泰生 知念宏司

P︑⑩二

i"一︑︑

(3)

モジュラー形式の理論は整数論の分野のーつであるが,他分野の問題解決にその有効性

を示してきた。その例のーつにフェルマー予想の解決が挙げあられる。この問題は,問題 そのものとしては初等整数論の闇題であり,専門的にはディオファントス問題のーつと言 える。問題そのものは初等的であるが長い間未解決問題として残されてきた。最終的な 解決のきっかけとなったのは、楕円曲線論とモジュラー形式の理論であった。この他に

も、合同数の存在問題といった初等整数論の問題がモジュラー形式の問題として扱われ、

見通しよく解決された例が挙げちれる。以上のように、モジュラー形式の理論はそれ自体 の理論の美しさに加えて、他の整数論の分野に有効的に応用されてきた。その応用のひ とつとして、 Kubota・Leopoldtによって発見されたP進ι、関数の理論が挙げられる。こ の理論そのものは、ゼータ関数のP進理論から発展したものであるが、1970年代に至り Serreがモジュラー形式を用いた全く新しいアプローチを見出した。これは、モジュラー 形式のP進理論の始まりであると言えよう。 serreのアイデアの核心はアイゼンシュタイ ン級数という特殊なモジュラー形式のフーリエ展開を用いるものである。serreは、この

級数のフーリエ展開の定数項にゼータ関数の特殊値力旺見れるという事実に注目し、P進的

なアイゼンシュタイン級数が構成されれば、そこにP進ι、関数が現れるであろうと考え た。se口eはこのP進モジュラー形式の理論を構築し、 P進ι、関数の構成、さらには代数 体上のP進ゼータ関数の構成にも成功した。当該学位論文は、seneによって始められた P進モジュラー形式の理論の「多変数化」、「高次元化」である。S釘Nの理論が完成した 後その一般化の試みがなされたが、幾何学的なアプローチが殆どで、純粋にモジュラー形 式からのアプローチは十分であったとは言い難い。当該博士学位論文はこの部分を補完す

るもので、新しい事実の発見を含むものである。以下その概要と意義につぃて述ベる。

三△ ク、^

概要と意義

SerreのP進モジュラー形式理論の鍵となるものにラマヌジャン作用素θの利用がある。

これは,モジュラー形式のq・展開にヌ寸して,θ=qιで定義されるもので,モジュラー形 式に作用するが,その像は必ずしもモジュラー形式とはならない。ところが素数Pを通し

て考えることにより,モジュラー形式として扱うことが可能になる。すなわちWeightk のモジュラー形式jに対し, weight がk+P+1 のカスプ形式gが存在して,θ(n Ξ g

(modp)が成り立っている。このラマヌジャン作用素のジーゲルモジュラー形式の場合ヘ の拡張としてテータ作用素θが定義され,一変数の場合と同様の結果が成り立つことが 示されている。学位論文の内容は,このテータ作用素を用いることにより,標語的に次の ように述ベられる。

テータ作用素のmodPの核(kerneD に含まれるモジュラー形式は豊富に存在する この標語の意味は次のとおりである。素数Pに対して, Pによって定まるWeigMをもっ

ジーゲルモジュラー形式四で

なるものが構成される。

θ(F)ミ 0 (modp)

(4)

定理1.井草のカスプ形式X35は次の性質をもつ θ(X闘)Ξ 0 (mod 23)

この結果が得られた後,もうーつの mod23 での合同が存在することが, BδChererに よって報告された。それは,クリンゲン型アイゼンシュタイン級数とよぱれる一変数の力 スプ形式からの持ち上げによって得られる二次のジーゲルモジュラー形式に関するもので ある。一変数のカスプ形式としてラマヌジャンのデルタ関数とよばれるウェイトが姶の

もの△稔をとり,そのクリンゲン型アイゼンシュタイン級数{△姶1を考えると次が成り立

つというものである。

定理:(B6Cherex)

ここで次の関係式に注意する

B6Chererの結果のあとフk本により,つぎの合同式が成り立つことが示された.

(*)

定理.(水本)ウエイトが16の一変数カスプ形式△16が存在して次が成り立つ θ([△那)三 0 (mod 31)

(*)を考慮に入れれぱ,当然ウエイト16+31=47の二次カスプ形式X47で mod31の合 同をもつものの存在が期待されるが,学位論文の二番目の結果はこれを実証したものであ

る。

[△松1のウエイト12 十合同の素数23 θ([△口)三 0 (mod 23)

定理2:ウエイトが47のカスプ形式X47が具体的に構成できて次が成り立つ θ(xq)Ξ 0 (mod 31)

このウエイトが47のカスプ形式の具体的構成には,井草の有理整数環Z上の生成元のう ち 3個X12,γ12,×35 が用いられる

X訂.= X闘(8X口+yn)

以上の結果は,単発的でありこれらの合同式が成立する「意味」は説明してぃない。学 位論文では定理1,2の成立する根拠を解明している。

X35のウエイト35

結果は,非カスプ形式の場合とカスプ形式の場合に分けて説明される.

非カスプ形式の場合:この場合結果は次のように述ベられる

(5)

定理3. PをP三3(mod4), P>3なる素数とする。次数2,ウェイト塑のジーゲルモ

ジュラー升多3弌Fで

F三0 (modp),θ(.左0 (modp)

を満たすものが存在する。

カスプ形式の場合: h(‑P)で虚二次体Q(f1テ)の類数を表すものとする。

定理4. PをPΞ 3 (mod4), h(‑P)> 1なる素数とする。次数2,ウエイト塑旦のジー

ゲルモジュラー形式Gで

G手0 (modp),θ(G)三0 (modp)

を満たすものが存在する。

この定理で,仮定を満たす最小の素数は23であり,次が31であることに注意すれば,こ れが定理1,2を特別な場合として含むことがわかる。また,類数が1である虚二次体が

有限個(9個)であることを考慮に入れれば,定理4はP三3(mod4)なる「ほとんど全

て」の素数について成立することを意味している。その後の研究により,定理4は次の形 に拡張されている。

定理5. PをP三 3 (mod4), h(‑P)> 1なる素数とし, tを3以上の奇数とする。このと き次数2,ウエイト2+ど・tのジーゲルモジュラー形式Gで

G三0 (modp),θ(G)三0 (modp)

を満たすものが存在する。

t=3の場合が,定理4になっている。

上記ジーゲルモジュラー形式F, Gの構成には,二次形式のテータ級数が用いられる。特 にGの構成には,調和多項式っきテータ級数(この場合は行列式)が用いられ,"h(‑P)>

1"なる条件は,このテータ級数が恒等的に消えない条件と同値である。

井草のカスプ形式X35のフーリエ係数のもつ奇妙な現象の発見からスタートし,その現 象の意味付けに成功したといえる。

(6)

背景

モジュラー形式の理論が整数論の各分野の問題との関連を持ち,様々な問題につぃて その解決に有効であることが知られている。例えばそれは,350年間未解決であった「フェ ルマー予想」の解決 a994年解決)に本質的に用いられたことに表われてぃる。

この学位論文の主題は,多変数モジュラー形式のP進理論である。モジュラー形式のP

進理論はJ.・P.セールによって始められ,上記フェルマー予想の証明にも,その基本的考 え方が用いられている。この理論は1970年代に発表され,当時懸案であった総実体上のP 進ゼータ関数の構成を、彼の定義した「P進アイゼンシュタイン級数」の概念を用い、可 能であることを鮮やかに示した。

モジュラー形式そのものは古典的な対象であるが,前世紀中頃より多変数化が試みら れ,現在では一般的なり一群(簡約リー群)に対して考察されている。その中で典型的な 多変数モジュラー形式として挙げられるものがジーゲルモジュラー形式である。これは ジーゲルが彼の二次形式の研究の中で見出したもので,古典的な楕円モジュラー形式を特 別な場合として含んでいる。またこのジーゲルモジュラー形式について,古典的なモジュ ラー形式について成立する事柄がどこまで成立するかが研究課題となった。これにつぃて は,日本人数学者の寄与が大きく佐武一郎(カリフォルニア大),志村五郎(プリンスト ン大),井草準一(ジョンズ・ホプキンス大)が発展に寄与した。

学位論文の主題は,セールの創始したモジュラー形式のP進理論を一変数の場合から多 変数の場合に拡張しようとする試みである。セールの理論が公表された当時から,その多 変数化の試みは多くの整数論学者によってなされていたが,十分とは言えず,現在でもか なりの部分が未開拓のまま残されていると言っても過言ではない。

学位論文では,P進の一次近似であるジーゲルモジュラー形式のmodPの合同を考察 している。研究の発端は,二次ジーゲルモジュラー形式の生成元のなかで,唯一奇数ウエ イトをもつ「井草のカスプ形式と呼ぱれるモジュラー形式X35のフーリエ係数の数値計 算にあった。このモジュラー形式は井草氏の研究の中で定義され考察されてきたが,その 定義の複雑さからフーリエ係数が実際に計算されることはなかった。しかしながら,数年 前伊吹山氏により微分作用素を用いたX35 の表示が発見され,フーリエ係数の計算が理 論上は可能になった。研突の最初の課題は計算機によるX35の数値計算であったが,計算 の途中で「奇妙な現象」に遭遇した。。一般にジーゲルモジュラー形式のフーリエ係数は, 半整数対称行列rによって決まることが知られているが,「奇妙な現象」とはそのフーリ 工係数がほとんどの場合,素数23を因子としてもつという実験結果である。この現象の 成立する根拠の解明が学位論文の主題である。

F=Σ一(Rr)ずの形のフーリエ展開をもっジーゲルモジュラー形式Fに対して形式

的系級数として

F→θ(乃=Σdot(r)・0(Rr)q'

ま△

^

で定義される作用素θを考える。この作用素(ここではテータ作用素とよぶ)は,一変数 の場合はラマヌジャンによって考察され,数論幾何学の分野でも使われていた。このテー 夕作用素を用いると学位論文の最初の結果は次のように述ベられる.

r

(7)

学位論文で与えられた結果の発端は,井草のWeight35のカスプ形式X35のフーリエ係

数の数値計算にあった。この計算により,次の結果が予想され,証明された。

定理:θ(×35)Ξ 0 (mod 23)

この結果は単発的であり,現れている数である35や23の解釈がされていない。しかしこ

の発見が端緒となり,テータ作用素の「modP核」に含まれるモジュラー形式の特徴付

けの研究が始まり,学位論文の結果が得られた。その主結果は次のように述ベられる。

主定理: PをP三 3 (mod4), h(‑P)> 1なる素数とする。次数2,ウエイト隻ヂのジー

ゲルモジュラー形式Gで

G三0 (modp),θ(G)三0 (modp)

となるものが存在する。ここで, h(‑P)は虚二次体@(V‑P)の類数を表す0

この仮定の条件を満たす最小の素数が23であり,主定理の特別な場合が定理の言明となっ てぃることがわかる。またh(‑P)>1を満たさない素数Pは有限個しか存在しないことも 知られており,主定理はPΞ3(mod4)なるほとんど全ての素数Pにっいて成り立っこと を示してぃる。このモジュラー形式の構成は非常に具体的であり,テータ作用素の「mod

P核」に含まれるモジュラー形式が「豊富」に存在することを示している。学位Ξ冊文の結

果から奇数次のモジュラー形式の場合,構成法が難しいこともわかり,これまでの一変数 のモジュラー形式の場合,このようなテータ作用素の「modP核」に含まれるモジュラー 形式が発見されなかった理由も理解されるものとなっており興味深い結果と言える0

成果の発表ならびに評価

この論文の主たる部分は,米国の学術論文誌"Rocky MOU武ainJoumalofMathematics"

に掲載が決定しており,その後得られた成果も学術誌に投稿予定である。これらの成果は 得られた度ごとに日本数学会総合分科会ならびに年会で発表されている。

また主定理が得られた後,ドイッ,マンハイム大学とアーヘンエ科大学から招1寸を受け、

講演を行ってぃる。(マンハイム:2013年12月12日,アーヘン:2013年12月16日0)講

演後反響があり,アーヘンエ科大のMa此血博士から定理の別の解釈①orcherdS積によ

る解釈)の存在を示唆され,現在研究情報のやり取りを行っている。学位Ξ冊文の%0果はこ

の分野の世界の研究者の関心を惹いた興味深いものであり,十分評価されると思われる0

以上の観点から、当該論文が、博士学位論文としてふさわしいものであると評価できる0

参照

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