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Citation 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 69(1): 415‑425

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(1)

Author(s) 星, 裕; 福岡, 真理子; 越川, 茂樹

Citation 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 69(1): 415‑425

Issue Date 2018‑08

URL http://s‑ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/9901

Rights

(2)

協同学習と模擬授業を用いた授業が学生の授業実践力に与える効果

星   裕・福岡真理子・越川 茂樹

北海道教育大学釧路校

北海道教育大学釧路校保健体育研究室

EffectsofUniversityLessonsUtilizingCooperative LearningandMockTeachingonStudent’sPractical

AbilitiesinClass

HOSHIYutaka,FUKUOKAMarikoandKOSHIKAWAShigeki

KushiroCampas,HokkaidoUniversityofEducation

DepartmentofHealthandPhysicalEducation,KushiroCampas,HokkaidoUniversityofEducation

概 要

 本稿は,協同学習と模擬授業を取り入れた授業実践が,学生の学びを深め,授業実践力を高 めることに対する効果を検討した実践報告である。教員養成課程において,学びを深め,授業 実践力を高める観点から,アクティブ・ラーニングを大学授業の中で実践していくことが求め られている。また,アクティブ・ラーニングの実施に向けては,従来から取り組まれていた模 擬授業や教育実習との関連付けが重要な視点として指摘されている。そこで,2年生の基礎実 習と3年生の教育実習の間に位置する「学習指導実践論」の中で,協同学習と模擬授業を取り 入れた授業を実践した。本実践の結果,協同学習を通して実感を伴いながら学んだ学習過程や 指導方法に関する内容を模擬授業という形で学生自身が実践したことで,実際の授業の場面で も生かすことができる授業実践力の向上にもつながっていったことが示された。したがって,

協同学習と模擬授業を取り入れた授業を実践することは,学生が学習者として学びを深め,将 来の教育者としての授業実践力を高めることにつながる可能性が示唆された。

1.はじめに

 近年,グローバル化や情報化の進展,少子高齢 化などの社会の急激な変化が社会のあらゆる側面 に影響を及ぼし,予測困難な時代が到来しつつあ ることが指摘されている。それに伴い,我が国で

は大学教育の質的転換が求められており,その流 れの1つとして大学教育において,これからの困 難な時代を生き抜くために学生が確実に身に付け ることが望まれる力を「学士力」と定義し,高等 教育段階で育成することが期待されている。具体 的には,学士力の育成に向けて,従来のような知

(3)

識の伝達・注入を中心とした授業から,学生が主 体的に問題を発見し解を見出していく能動的学修

(アクティブ・ラーニング)への転換が求められ ている(中教審答申,2012)。

 アクティブ・ラーニングは,「教員による一方 向的な講義形式の教育とは異なり,学修者の能動 的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総 称」(中教審答申,2012)と定義されており,本来,

大学教育の質的転換の視点として出されてきた キーワードである。しかし,次期学習指導要領に おいては子ども達が「どのように学ぶか」につい ても重視され(論点整理,2015),小中高等学校 の教員においてもアクティブ・ラーニングの視点 からの授業改善が必要とされている。次期学習指 導要領においてアクティブ・ラーニングとは,子 ども達の「主体的・対話的で深い学び」を実現す るために,共有すべき授業改善の視点とされてい る(中教審答申,2016)。そのため,教員養成課 程においても,アクティブ・ラーニングに関する 指導力や適切な評価方法を身に付けることができ るよう各教科の指導法に関する授業に取り入れて いくこと,教職課程における授業そのものを,課 題探究的な内容や,学生同士で議論をして深め合 うような内容としていくことが求められている

(中教審答申,2015)。

 一方,教員養成課程におけるアクティブ・ラー ニングの実践事例は極めて少ないと言われている

(国立教育政策研究所,2015)。これは,教育実 習や模擬授業等の既存の取り組みが,教員養成に おいて効果的と考えられていることに関係してい ると指摘されている。教員養成課程においてアク ティブ・ラーニングを取り入れ,学生の授業実践 力の育成を図っていく上で,これら既存の取組(教 育実習,模擬授業等)との関連を図ることで,効 果的なカリキュラムにしていく必要性が指摘され ている。

 北海道教育大学釧路校(以下,本校)は,教育 実習注1)を3年生の夏季休業中に実施している。

また,それ以前に,1年生前期には新入生研修と して小規模校への一日訪問,学校体験として4回

の学校訪問を行っている。1年生後期には,教育 フィールド研究Ⅰ,2年生前期には教育フィール ド研究Ⅱを受講することになっている。教育 フィールド研究の目的は学校現場に入り,児童生 徒とのふれあい,授業参観や校舎内外の環境整 備,行事等の参加を通して学校の教育活動や教師 の指導について学び,理解を深めることであり,

各8回ほど現場の学校で一日活動している。2年 生の夏季休業中には,基礎実習を通して5日間の 授業観察を行っている(表1)。

 教育フィールド研究での学びとして,授業観察 の視点が学生に養われることが指摘されている

(栢野ら,2011;森ら,2015)。これは,1年生 から2年生へと経験を積むことで,「発問」や「工 夫」といった指導技術にも目が届くようになり,

授業観察の視点を多く持つようになってきたため と指摘されている。その上で,基礎実習で明らか にしたい問いとして,「授業は,どのように構成 されていたか」,「授業をつくる上で,大切にした いことは何か」が挙げられている(北海道教育大 学釧路校,2016)。したがって,教育フィールド 研究を経て基礎実習に臨むことにより,授業の構 成や工夫を各自の視点で観察することができると 考えられる。学生は,このような学びを経て,3 年生の夏季休業中に教育実習を履修する。

 学生は,教育実習において,教育フィールド研 究や基礎実習を通して授業観察の視点を持ち,授 業を観察してきた後に,教育実習で子ども達を相

表1 教育実践フィールド科目

時期 内容

1年前期 新入生研修(小規模校訪問)

学校体験

1年後期 教育フィールド研究Ⅰ 2年前期 教育フィールド研究Ⅱ

基礎実習

2年後期 教育フィールド研究Ⅲ  3年 教育実習Ⅰ

教育実習事前事後指導 4年 教育実習Ⅱ

(4)

手に実際に授業を行うことになる。しかしなが ら,観察することと実践することの間には,大き な壁があると考えられる。実際,教育実習に行く にあたり授業を進めることに不安を抱えている学 生は多い。中野(2000)は,教材選びや指導案の 書き方,計画性など,実際の授業を進めることに 関する項目で,不安が強いことを明らかにしてい る。また,姫野(2003)は,8割近くの学生が教 育実習前に,「授業実施」に対して不安に感じて いたことを取り上げ,模擬授業や板書の仕方,指 導案の書き方の指導等を行う必要性を指摘してい る。さらに,清水ら(2011)も教育実習の前に多 くの模擬授業を経験することや学習指導案の書き 方について学ぶことが重要であることを指摘して いる。これらの先行研究を踏まえると,本校の基 礎実習と教育実習の間に,学生が指導案の作成や 模擬授業を行っておくことは,効果的であると考 えられる。

 本校では,2016年度より,2年生の後期に「学 習指導実践論」という講義が開講されることに なった。この講義は,平成27年度以降入学者を対 象とした新カリキュラムから実施し,学習指導に 関わる基礎的・基本的な知識・技能を身に付ける ことを目的としている。2年生の後期に位置する この授業の中に,模擬授業を取り入れることで,

基礎実習と教育実習をより効果的な取組にするこ とができると考えられる。また,アクティブ・

ラーニングを意図した学習を通して,学生が主体 的に学びつつ,学生自身のアクティブ・ラーニン グに関する指導力等の育成を図ることができると 考えられる。

 アクティブ・ラーニングに関する教育方法の1 つとして協同学習がある。関田・安永(2005)は,

①互恵的相互依存関係の成立,②二重の個人責任 の明確化,③促進的相互交流の保障と顕在化,④

「協同」の体験的理解の促進の4条件を満たすグ ループ学習を協同学習と定義している。また,安 永(2009)は,教師はグループ活動の目的を明確 に意識し,意図的に導入すべきであり,授業の中 で漫然と導入するだけでは協同学習とはなりえな

いと指摘している。このような協同学習の考え方 や手法を理解することは,授業者として学生が授 業実践力を高めていく上でも意味があるものと考 えられる。

 そこで本研究では,協同学習と模擬授業を取り 入れた授業実践が,学生の学びを深め,授業実践 力を高めることにつながる可能性を検証すること を目的とした。

2.方 法

2.1.授業実践の内容

 対象とした学生は,2年生39名(男子18名・女 子21名)である。2016年度の「学習指導実践論」

は,12月に集中講義の形で実施した。

 本実践では,①学習指導に関わる考え方と方法 の理解,②学習指導案の作成とそれをもとにした

(模擬)授業の実践,③視点を明確にした授業観 察と事後交流を通して自己の学びにつなげる力,

の3点を実習前に必要な授業実践力として設定 し,これらを育成することを目標として実施する ことにした。また,今回の実践の授業内容と用い た方法を表2にまとめた。ポイントとしたのは,

以下の2点である。

 1点目は,授業の中に協同学習を取り入れたこ とである。協同学習を通して学習を進めることに より,今回の講義で意図した授業実践力の①学習 指導に関わる考え方と方法について実感を伴って 理解することができると考えた。実際に取り入れ た方法は,シンク・ペア・シェアとラウンド・ロ ビンを毎回の授業で用いつつ,ワールドカフェ

(派遣員)注2)やジグソー法等を特定の授業の時間 に活用することにした。取り入れる方法を選定す る際は,活動の目的にあっていることに加えて,

学生が実際に授業を行う際に日常の授業を充実さ せるために活用しやすいものから選定することと した。次期学習指導要領においてアクティブ・

ラーニングは,一部の教科・領域等で行われるも のではなく,全ての教科等における学習活動に関 わるものであり,これまでも充実が図られてきた

(5)

学習を更に改善・充実させるための視点とされて いる(審議のまとめ,2016)。指導方法を特定の 型にはめ,教育の質の改善が図られないというこ とを避けるためにも,日常の授業の中で活用で き,学習の充実につながるという視点を持つこと が重要であると考えた。

 2点目は,授業の後半に模擬授業を位置付けて いることである。これは,実際に自分で学習指導 案を作成し,模擬授業を実施したり,授業の観察・

交流を行うことで,授業実践力として意図した② 学習指導案の作成とそれをもとにした(模擬)授

業の実践,③視点を明確にした授業観察と事後交 流を通して自己の学びにつなげる力を育成するこ とに繋がると考えたためである。また,2年生後 期の時期に模擬授業を講義に取り入れることで,

基礎実習等における授業観察と教育実習における 実地経験をより効果的に接続することができると 考えた。実施する教科は,小学校3年生の国語科 にした。教育実習後の学生への調査の結果,教育 実習で実際に授業をすることが多いのは,国語と 算数の2教科であったため注3),そのうちの国語 科で実践することにした。

2.2.分析の方法

 自記式質問紙による調査を実施し,その回答状 況を分析した。回収できたのは,38名分であった。

質問紙は,「授業の方法」,「講義を通した学び」

の2項目から構成し,それぞれについて自由記述 するようにした。なお,授業の方法については,

4件法で「4 参考になった」,「3 まあまあ参 考になった」,「2 少し参考になった」,「1 あ まり参考にならなかった」から選択した上で,自 由記述するようにした。これによって,今回の協 同学習と模擬授業を取り入れた授業実践を学生が どのように捉えたのか,講義を通してどのような 学びがあったのか把握し,そこから学習者として の学びを深め,授業実践力の高まりを示す傾向を 見ることができると考えた。

 記述の分析は,テキストファイルにして,テキ ストマイニングの手法を用いて分析した。分析に は,フリーのソフトウェア「KH Coder3」を 用いた。本研究では,このソフトウェアで用いる ことができる「階層的クラスター分析」と「共起 ネットワーク」を使用した。樋口(2014)による と,「階層的クラスター分析」は,出現パターン の似通った語の組み合わせにはどんなものがあっ たのかを探索することができる。また,「共起 ネットワーク」では,出現パターンの似通った語,

すなわち共起の程度が強い語を線で結んだネット ワークを描くことができるとしている。上記の手 法を用いて分析を行うことで,学生が,授業の方 表2 授業15回の内容と方法

週 関連 内容 方法

1 ガイダンス ~授業概要 説明・個人目標設定~

KJ法+ワー ルドカフェ 2 ①学習指導に関わる考え方と方法の理解 今日的な教育課題 KJ法+ワー

ルドカフェ 3 授業づくりの工夫Ⅰ

~学習過程と発問構成~

ジグソー法

4 授業づくりの工夫Ⅱ

~グループ活用の工夫・

思考ツール~

ジグソー法 思考ツール の活用 5 授業づくりの工夫Ⅲ 

~へき地複式指導~

講 義・ 授 業 観察 6 授業づくりの工夫Ⅳ 

~ ICTの活用法~

講義・実演

7 授業づくりの工夫Ⅴ 

~板書とノート指導~

講義・演習

②学習指導案作成と模擬授業の実践

学習指導案の作成Ⅰ 指導案作成 9 学習指導案の作成Ⅱ 指導案の交

流と改善 10 学習指導案の作成Ⅲ

~教材準備・授業練習~

教 材 準 備・

授業練習 11 模擬授業の実施Ⅰ 授業実施と

観察・交流 12 模擬授業の実施Ⅱ 授業実施と

観察・交流 13 ③授業観察と交流 授業観察と指導案検討Ⅰ

~観察の視点設定~

KJ法+ワー ルドカフェ 14 授業観察と指導案検討Ⅱ

~授業観察+事後交流~

授 業 観 察・

KJ法+ワー ルドカフェ 15 学びの振り返り KJ法+ワー

ルドカフェ

(6)

法をどのように思ったか,講義を通して何を学ん だかについて明らかにすることとした。

3.「授業の方法」に対する学生の記述にみる 学びの深まりと授業実践力の高まり

3.1.階層的クラスター分析による検討  授業の方法に関わっては,質問紙に「4 参考 になった」,「3 まあまあ参考になった」,「2  少し参考になった」,「1 あまり参考にならな かった」の4件法から選択した上で自由記述する ことにした。4件法での選択の結果は31名が「参 考になった」と回答し,7名が「少し参考になっ た」と回答した。「4 参考になった」を4点と 配点したところ,平均点が3.8点となった。ほと んどの学生が肯定的に捉えていると考えられる。

 次に,授業の方法への学生の意見・感想を検討 した。授業の方法に関わって自由記述したものか ら抽出されたキーワードを階層的クラスター分析 にかけたものが,図1である。

 最初に前処理を行い,文章の単純集計を行った 結果,42の段落,78の文が確認された。総抽出語

(使用)は1,534(605),異なり語数(使用)は,

338(213)であった。細かく分割され意味をなさ なくなる語が出てきたので,「ICT」,「シンキン グツール」,「シンク・ペア・シェア」,「ワールド カフェ」,「アクティブラーニング」注4),「グルー プ」,「指導案」については,強制抽出する語に指 定した。それにより,分析に使用される語として,

総抽出語(使用)1,520(594),異なり語数(使用)

339(215)が抽出された。

 階層的クラスター分析を実行する際には,

Jaccard係数を用いたward法にて分析を行った。

出現回数の制御を行っており,最小で3回と設定 している。品詞の制限は行っていない。上記の条 件により,48語,5クラスターに整理された。分 類されたクラスターは下記の5通りである。

1)「班」,「交流」,「他」,「思う」,「良い」,「出 来る」,「付箋」,「使う」

2)「得る」,「多い」,「学び」,「指導」,「機会」,

「形態」,「深める」,「人」,「自分」,「考え」,「意 見」,「聞く」

3)「理解」,「行う」,「実感」,「深まる」,「思考」,

「活用」,「方法」,「ツール」,「ジグソー」,「ワー ルドカフェ」,「有効」,「実際」

4)「具体」,「活動」,「授業」,「模擬」,「種類」,

「知る」

5)「ワーク」,「グループ」,「分かる」,「取り入 れる」,「様々」,「手法」,「アクティブラーニン 図1 階層的クラスター分析による授業の方法への

学生の自由記述の樹形図

(7)

グ」,「感じる」,「たくさん」,「学ぶ」

 次に,分類されたクラスターに含まれる語同士 の類似性から,授業の方法についての学生の意 見・感想を「KH Coder3」のKWICコンコーダ ンスのコマンドを参考にし,検討した。KWICコ ンコーダンスは,分析対象のファイル内で抽出語 がどのように用いられていたのかという文脈を探 ることができる(樋口,2014)。各クラスターに 含まれる語がどのような語と接続していたのか探 ることで,どのような意図で語が用いられていた のか捉えることができると考えた。

1)交流の進め方と交流による考えの広がりへの 気づき

 1つ目のクラスターは,「班」,「交流」,「他」,

「思う」,「良い」,「出来る」,「付箋」,「使う」の 語で構成されていた。「交流」は,交流によって 考えを深めることができた,自分が経験すること で考えを広げる良さを実感できた等の記述が見ら れた。「他」は,他の人,他のグループ,他の班 という使われ方をしていた。「思う」は(学生自 身が)~と思うという使われ方をしていた。付箋 を使うなどの具体的な交流の進め方が理解できた ということと,学生自身が他の学生との交流によ り考えの広がりを経験できたことを示していると 推察できる。

2)交流を通した考えや意見の深まりへの気づき  2つ目のクラスターは,「得る」,「多い」,「学 び」,「指導」,「機会」,「形態」,「深める」,「人」,

「自分」,「考え」,「意見」,「聞く」の語で構成さ れていた。「指導」は,「学習指導実践論」や次期 学習指導要領という使われ方をしていた。「深め る」は,理解を深める,思考を深めるという使わ れ方をしていた。「人」は,周りの人や他の人と いう使われ方をしていた。1つ目のクラスターと 重複するが,他の人の話を聞くことが自分の考え や意見を深め,学びを得る機会となった,という 学生の考えが推察できる。

3)学習方法に関する学びと実践への意欲の高ま り

 3つ目のクラスターは,「理解」,「行う」,「実

感」,「深まる」,「思考」,「活用」,「方法」,「ツー ル」,「ジグソー」,「ワールドカフェ」,「有効」,「実 際」の語で構成されていた。「思考」は,思考ツー ル,思考を深めるなどの使われ方をしていた。

「有効」は,学生が技法を有効に使ってみたいと いう使われ方をしていた。「実際」は,実際に経 験したという使われ方をしていた。語の組み合わ せからは,2つの内容が考えられる。①ジグソー,

ワールドカフェなどを実際に経験したことで有効 に使ってみたいと思ったこと,②それらの方法や ツールを活用することで理解や思考の深まりを実 感したことが示されていると推察できる。

4)グループワークや模擬授業の経験による実践 に向けた学び

 4つ目のクラスターは,「具体」,「活動」,「授 業」,「模擬」,「種類」,「知る」の語で構成されて いた。「種類」はグループワークとつながる使わ れ方をしていた。グループワークの種類を経験し ながら学んだり,模擬授業を行ったりすること で,具体的な活動を通して実践に向けた学びを得 たことを示していると推察できる。

5)アクティブ・ラーニングの手法に関する学び  5つ目のクラスターは,「ワーク」,「グループ」,

「分かる」,「取り入れる」,「様々」,「手法」,「ア クティブラーニング」,「感じる」,「たくさん」,

「学ぶ」の語で構成されていた。グループワーク 等,様々なアクティブ・ラーニングの手法の授業 への取り入れ方についてたくさんの学びを得たこ とを示していると推察できる。

 各クラスターの内容の重複している部分をまと め,今回の授業方法に関する学生の意見・感想を 下記の2つに整理した。

1)アクティブ・ラーニングの効果に関する気づ き

 1,2のクラスターからは,実際に協同学習に よる交流を経験したことで,自分の考えの広がり や深まりを実感したことが推察できる。アクティ ブ・ラーニングの効果を学生自身が実感したと考 えられる。

2)アクティブ・ラーニングの実施に向けた学び

(8)

と実践への意欲の向上

 クラスターの1,3,4,5からは,学生自身 が経験したことで,具体的な方法の実施の仕方に ついてのイメージが持て,実践への意欲につな がったことが推察できる。

3.2.共起ネットワークによる検討

 授業の方法について自由記述したものから抽出 されたキーワードを共起ネットワークで表したも のが,図2である。分析に使用する語の抽出まで は,「階層的クラスター分析」と同様の手順で進 めている。

 「KH Coder3」で,共起ネットワークのオ プションの設定に当たっては,最小出現数を3,

品詞による語の取捨選択はなし,共起関係(edge)

の種類は「語-語」,描画数は60,強い共起関係 ほど太い線にし,出現数の多い語ほど大きい円で フォントも大きく描画するようにしている。また,

どの共起関係(edge)が重要かを示す手掛かり となるように最小スパニングツリーだけを描画す ることとした。これにより他の共起関係(edge)

を省略したシンプルなネットワークを描くことが できるとされている(樋口,2014)。さらに,ラ ベルが重ならないように位置を調整している。そ の 結 果,46語,44の 共 起 関 係(edge), 密 度

(density)が.043となった。出てきた語の色分け は「中心性(媒介)」による。媒介中心性を見る ことによって,どの語(node)が他の2点間を 結ぶ最短経路上にあるかの度合いがわかり,学生 の授業の方法への印象に関する全体構造上キー ワードとなっている語(node)を捉えることが できると考えた。

 高い媒介中心性を持つ語(node)は,「アクティ ブラーニング」,「学ぶ」,「ツール」,「活用」の4 つである。このことから,アクティブ・ラーニン グの手法や思考ツールの活用の仕方を学んだとい うことが全体に関わるキーワードとなっていると 考えられる。また,出現数の多い語(node)が 大きく描画されており,「グループ」,「ジグソー」,

「ワールドカフェ」,「方法」,「交流」,「意見」等

の語の出現数が多いことがわかる。したがって,

アクティブ・ラーニングの手法や,アクティブ・

ラーニングの効果に関する内容を,多くの学生が,

今回の授業方法を通した学びとして挙げていると 考えられる。

4.「講義を通した学び」に対する学生の記述 にみる学びの深まりと授業実践力の高まり

4.1.階層的クラスター分析による検討  次に,講義を通した学生の学びについて分析し ていく。講義を通した学びについて自由記述した ものから抽出されたキーワードを階層的クラス ター分析にかけたものが,図3である。

 授業の方法と同様に前処理を行い,42の段落と 118の文,分析に使用される語として,総抽出語(使 用)2,287(929),異なり語数(使用)454(300)

が抽出された。

 階層的クラスター分析を実行する際には,授業 の方法の際と同様の設定で実施した。ただし,出 現回数の制御については,授業の方法の際と同程 度の語が抽出されるように最小で4回と設定し た。上記の条件により,48語,6クラスターに整 理された。分類されたクラスターは下記の6通り である。

図2 授業の方法への学生の自由記述の共起ネット ワーク(n=38)

(9)

1)「経験」,「授業」,「模擬」,「実際」,「作成」,

「指導案」

2)「良い」,「人」,「自分」,「見る」

3)「使う」,「講義」,「時間」,「大切」,「書く」,

「得る」,「大きい」

4)「分かる」,「展開」,「導入」,「使い方」,「作 る」,「子ども」,「部分」,「必要」,「行う」

5)「学習」,「内容」,「種類」,「基本」,「学ぶ」,

「出来る」,「参考」,「思う」,「特に」,「教育」,

「知る」

6)「活用」,「ICT」,「取り入れる」,「活動」,「グ ループ」,「工夫」,「板書」,「課題」,「考える」,

「方法」,「アクティブラーニング」

 次に,分類されたクラスターに含まれる語同士 の類似性から,「学習指導実践論」を受講し,学 生がどのような学びを得たのかについて「KH Coder3」のKWICコンコーダンスのコマンドを 参考にし,検討した。

1)指導案の作成と模擬授業の経験による学び  1つ目のクラスターは,「経験」,「授業」,「模 擬」,「実際」,「作成」,「指導案」の語で構成され ていた。「経験」は,模擬授業に関する経験とし て使われていた。指導案の作成を実際に行ったこ とや,模擬授業を経験したことから実践的な学び を得たと捉えていることが推察できる。

2)模擬授業の相互観察等による学び

 2つ目のクラスターは,「良い」,「人」,「自分」,

「見る」で構成されていた。「人」は,周りの人 として使われていた。「見る」は,授業を見る,

授業を見てもらうという使われ方をしていた。自 分の授業を他の人に見てもらったり,他の人の授 業を見たりしたことが良かった,と捉えていると 推察できる。

3)時間の使い方や板書に関する学び

 3つ目のクラスターは,「使う」,「講義」,「時 間」,「大切」,「書く」,「得る」,「大きい」で構成 されていた。「時間」は,模擬授業における時間 に関して使われていた。「書く」は,指導案を書 くことと,板書の書き方に関わって使われてい た。指導案の書き方や板書の仕方,模擬授業の実

施の際の時間配分に関する学びがあったと推察さ れる。

4)実態を踏まえた指導方法と学習過程に関する 学び

 4つ目のクラスターは,「分かる」,「展開」,

「導入」,「使い方」,「作る」,「子ども」,「部分」,

「必要」,「行う」の語で構成されていた。「使い方」

は,ICTや黒板の使い方等,ツールの使い方とし て使われていた。「作る」は,指導案を作るとつ ながることが多く見られた。「子ども」は,子ど もの実態に合わせるとして使われていた。子ども の実態を踏まえた指導方法を選択する大切さと,

図3 階層的クラスター分析による講義を通した学 びへの学生の自由記述の樹形図

(10)

導入から展開という学習過程についての学びが あったと推察される。

5)教育課題や指導方法に関する学び

 5つ目のクラスターは,「学習」,「内容」,「種 類」,「基本」,「学ぶ」,「出来る」,「参考」,「思う」,

「特に」,「教育」,「知る」の語で構成されていた。

「学習」については,学習活動という使われ方と,

学生自身が学習したという使われ方をしていた。

「種類」は,アクティブ・ラーニングやシンキン グツールの種類として使われていた。「教育」は,

教育実習として使われていた他,教育課題や教育 の方法として使われていた。教育課題やアクティ ブ・ラーニングの手法,シンキングツール等の指 導方法について基本的なことを学び,参考にでき たと推察できる。

6)指導方法に関する学び

 6つ目のクラスターは,「活用」,「ICT」,「取 り入れる」,「活動」,「グループ」,「工夫」,「板書」,

「課題」,「考える」,「方法」,「アクティブラーニ ング」で構成されている。「課題」は,授業で提 示する課題としての使われ方と,学生自身の課題 としての使われ方が見られた。学生が自分自身の 課題としていたICTの活用,グループ活動の取り 入れ方,板書の工夫等,アクティブ・ラーニング の手法について学びがあったと考えていると推察 できる。

 これらの目標をまとめ,学生が今回の講義を通 して学んだことを下記の2つに整理した。

1)学習過程と指導方法についての学び

 1つ目は,指導方法についての学びである。4

~6のクラスターからは,学習過程と指導方法に ついての学びが示されている。指導方法として は,グループ活動,板書の工夫,ICTの活用,シ ンキングツールの種類など,アクティブ・ラーニ ングの手法についての学びが示されていた。子ど もの実態に応じてという視点やどのように取り入 れるかという視点に触れている部分もあり,た だ,方法を学んだだけでなく実態に応じて何をど のように取り入れるかという意識もあると考えら れる。

2)実践的な学び

 2つ目は,実践的な学びである。1~4のクラ スターからは,具体的な実践に向けて学びの機会 になったことが推察できる。模擬授業に向けて指 導案の書き方や導入・展開・まとめなどの学習過 程についての押さえ,指導方法の選択,時間に関 する意識など,実践的な学びがあったと考えられ る。

4.2.共起ネットワークによる検討

 講義を通した学びについて自由記述したものか ら抽出されたキーワードを共起ネットワークで表 したものが,図4である。共起ネットワークのオ プションの設定については,授業の方法の際と同 様に行っているが,最小出現数は,4に設定して いる。その結果,44語,41の共起関係(edge),

密度(density)が.043となった。

 高い媒介中心性を持つ語(node)は,「工夫」,

「板書」,「大きい」,「見る」,「自分」の5つであ る。「工夫」は,授業づくりの工夫(板書・指導 過程・グループワーク等含む)として使われてい た。「見る」は,他の学生の模擬授業を見る,ビ デオで現場の先生の授業を見るとして使われてい た。「自分」は,自分で模擬授業を実施した,自 分の課題として多く使われていた。このことから,

図4 講義を通した学びへの学生の自由記述の共起 ネットワーク(n=38)

(11)

授業づくりの工夫について学ぶ上で,他の人の実 践を観察(学生同士の模擬授業・現場教員の授業)

したこと,そして,自分自身で模擬授業を実践し たことが,大きな役割を果たしていると推察され る。また,「授業」,「模擬」,「指導案」が,出現 数の多い語(node)となっており,このことか らも,学生が講義を通した学びとして模擬授業や 指導案の作成を挙げていることが推察される。

 したがって,授業を観察し,学生自身が指導案 の作成,模擬授業の実践を行ったことが,学んで きたアクティブ・ラーニングの手法を中心とした 授業づくりの工夫を授業に取り入れ,実践するこ とに効果的であったと考えていると推察される。

5.全体考察

 今回の実践では,協同学習と模擬授業を取り入 れた授業を実践することが,具体的な教育の方法 についての学びを深めるとともに,学生自身がア クティブ・ラーニングを経験し,授業者として実 践できる力を培うことにつながる効果を検討した。

 まず,授業の方法への4件法による学生の評価 は,3.8と肯定的な評価であった。また,学生に よる授業の方法への意見や感想を,階層的クラス ター分析を通してアクティブ・ラーニングの効果 への気づきと具体的なイメージを持てたことによ る実践への意欲化の2点にまとめることができ た。したがって,今回の協同学習を取り入れた授 業を通して,他者と交流しながら学ぶことで学習 指導に関わる考え方と方法の理解が深まったこ と,さらに,協同学習の手法を学生自身が経験し たことで実践の具体的なイメージが持てたことが 示されたといえよう。その結果,実践への意欲に つながったと推察される。また,共起ネットワー クによる分析からも,アクティブ・ラーニングの 活用の仕方を学んだことが全体に関わるキーワー ドとなっており,知識として習得するだけではな く,実際に活用していく上で効果的だったことが 示されているといえる。

 また,講義を通した学びも,階層的クラスター

分析の結果から2つにまとめることができた。学 習過程と指導方法についての学びと,実践的な学 びである。講義を通して学習過程や指導方法につ いて知識として習得していくとともに,指導案の 作成や授業の観察,模擬授業の実施等を実践する ことで,実践的な学びになったことが示されてい る。特に,重要な視点として共起ネットワークに よる分析から,授業づくりの工夫について学ぶ上 で,授業観察や学習指導案の作成,模擬授業の実 践が大きな役割を果たしたことが示唆されてい る。学生が学んだ授業づくりの工夫の内容につい ては,階層的クラスター分析の中で多くの指導方 法が挙げられていた。協同学習を通して,実感を 伴いながら学んだそれらの内容が,授業を観察 し,指導案の作成や模擬授業の実施という形で学 生自身が実践したことにより,実際の授業場面で も生かすことができる授業実践力の向上にもつな がっていったと考えられる。

 したがって,今回実践した協同学習と模擬授業 を取り入れた授業を実践することは,学生が学習 者として学びを深め,授業実践力を高める上で一 定の効果があったと考えられる。

6.今後の課題

 本実践では,「学習指導実践論」の受講学生に 実施した質問紙の分析・検討を行ってきた。その 結果,協同学習と模擬授業を取り入れた授業を実 践することは,学生の学びを深め,授業実践力を 高める上で,一定の効果があったと考えることが できた。

 一方,今後の課題として,2点が挙げられる。

まず,本実践と教育実習との関連の検討である。

本実践は,2年生の後期に模擬授業を取り入れた 講義を実施することで,基礎実習と教育実習の関 連を図り,学生の授業実践力の効果的な育成を図 ることを目的としていた。今回の実践が,学生の 教育実習やその後の授業実践力の育成にどのよう に寄与したのか検証する必要がある。

 2点目は,教育実習後の学生にどのような学習

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を実施するとよいのかということがある。教員養 成に関する課題として,教員となる際に必要な最 低限の基礎的・基盤的な学習を行う段階であるこ とを認識する必要があることが指摘されている

(中教審答申,2015)。学生は,教育実習での実 地経験を経て,多くの学びと共に様々な課題を抱 えてくる。その学生の課題を解決し,教員となる 際に必要な授業実践力を向上させていくために,

どのような学びの場を教育実習後の学生に設定し ていくといいのかということである。この2点に ついて検討していくことを今後の課題として挙げ ておく。

注1)釧路校においては,2年生の夏季休業中に観察実 習である基礎実習,3年生の夏季休業中に5週間の 教育実習Ⅰを実施している。なお,4年生では2週 間の教育実習Ⅱを実施している。

注2)派遣員とワールドカフェを組み合わせたような形 で用いており,本実践では,ワールドカフェで名称 を統一している。

注3)2016年度に教育実習後の学生へアンケートを実施 したところ,実際に授業で行った回数が多かったの は,国語と算数であった。

注4)「アクティブ・ラーニング」については,文科省が 使っている「アクティブ・ラーニング」を用いてい るが,学生の記述についてはそのまま「アクティブ ラーニング」としている。

引用文献

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参照

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