眞
言
陀
羅
尾
の
研
究
栂
尾
詳
雲
目
次
二
)
緒
言
( 二 ) 眞 言 も 明 呪 も 陀 羅 尼 (三 ) 佛敎 以 前 に 於 け る 眞 言 ( 四 ) 佛敎 中 に 眞 官 の 入 り 來 り た る 年 代(五
)
眞
言
陀
羅
尼
の
酸
達
(六
)
眞
言
陀
羅
尼
の
種
子
(
七
)
眞
言
陀
羅
尼
の
組
織
(
八
)
眞
言
陀
羅
尼
の
諦
法
(九 ) 結 言以
上
眞 言 陀 羅 尼 の 研 究 一眞 言 陀 羅 尼 り 研 究 二 一 緒 言 眞 言 宗 の 宗 名 が 指 示 す る 加 く 、 此 の 宗 旨 で は 亡 者 を 廻 向 す る 時 、 石 塔 を 開 眼 す る 時 、 佛 に 供 物 を 捧 げ る 時 、 そ の 他 、 萬 般 の 場 合 に 眞 言 陀 羅 尼 が 使 用 せ ら れ て 居 る 。 眞 言 宗 が 圭 も し て 之 れ を 使 用 し て 居 る の み な ら す 、 現 今 我 日 本 に 於 け る 浮 土 宗 で も 、 禪 宗 で も 、 施 餓 鬼 等 の 法 要 を な す 場 合 に 、 盛 ん に 之 , れ を 用 ひ て 居 る 。 眞 宗 の 稲 名 念 佛 、 法 華 宗 の 御 題 目 の 如 き 、 之 れ を 廣 義 に 解 釋 せ ば 何 れ も 眞 言 も 云 つ て よ い 。 昭 本 の 佛 激 ば か り で な く 、 ネ パ ー ル 、 西 藏 、 蒙 古 等 に 擴 が れ る 喇 麻 教 徒 が 眞 言 宗 も 等 し く 盛 ん に 之 れ を 使 用 し て 居 る 。 た ゞ に 此 等 の 北 方 佛 教 の み で な く 、 錫 崙 、 羅 逞( シ ヤ ム) 、 緬 旬( ビ ル マ) 等 に 弘 ま れ る 南 方 佛 教 即 ち 小 乗 佛 教 で す ら 、 ま た 之 を 用 、ひ て 居 る 。 南 方 佛 教 で は 此 の 眞 言 を パ リ タ ( 帥 ち 護 る も の ) も 云 ひ 、 請 雨 な ご の 時 、 僧 俗 共 に 菩 提 樹 や 、 塔 婆 や 、 彌 勒 菩 薩 等 に 種 々 の 供 物 を 捧 げ つ ゝ 、 大 衆 聲 を 揃 へ て 之 れ を 唱 へ る こ も に な つ て 居 る(1) 。 さ れ ば こ の 眞 言 陀 羅 尼 な る も の は 軍 に 我 が 眞 官 宗 の み で な く 、 全 亜 細 亜 の 佛 教 徒 に 大 關 係 が あ る も の も 云 つ て 可 い 、 爾 る に 古 來 此 の 重 要 な る 問 題 に つ き 、 未 だ 研 究 ら し い も の が 我 が 昭 本 に 發 表 さ れ た 、 の を 聞 か な い 。 た ゞ ワ ツ デ ル 氏 が 東 亜 雑 誌 の 上 に 於 て 、 梢 や 精 密 な る も の を 腰 表 し て 居 る 。 今 之 れ を 参 考 し て 吾 人 の 所 見 を 述 べ て 見 た い も 思 ふ 。
( 一 ) 、 錫 誉 大 島 史 第 四 十 六 章 井 に 八 十 七 章 参 照 。
二
眞
言
と
明
咒
と
陀
羅
尼
諸 経 典 の 中 に 於 て 、 、 の 神 秘 呪 を 表 す る に 眞 言 も か 賜 呪 も か 陀 羅 尼 も か 云 ふ 語 を 用 ひ て 居 る 。 そ こ で 、 此 の 眞 言 陀 羅 尼 を 研 究 す る に 當 り 、 先 づ 此 等 の 語 義 も そ の 由 つ て 來 り た る 廃 も を 説 明 し て 磯 く 必 要 が あ る 。 眞 言 も は 文 法 上 よ り 解 釋 せ ぱ 、 思 念 す る 器 物 の 義 で 、 此 に 由 り て 神 の 聖 徳 等 を 思 念 す る こ も を 得 る が 故 で あ る 。 爾 る に 西 歴 十 二 世 紀 頃 、 ラ ー マ ヌ ジ ヤ に 依 り て 作 ら れ た も 稱 せ ら る る 羅 摩( マー マ) 奥 義 書 に は 宗 教 的 に 之 れ を 解 釋 し て 、 思 念 す る も の を 救 ふ 義 だ も 説 明 し て 居 る 。(一) 此の 眞 言( マ ン ト ラ) な る 語 は 少 く も も 西 歴 紀 元 前 一 千 年 以 前 に 成 立 し た る 梨 倶 吠 陀 を 初 め 、 後 の 三 吠 陀 、 梵 書( ノ ラ ー フ マナ) 、 奥 義 書 、 略 詮( ス ー ト ラ) 等 、 佛 教 以 前 の 印 度 宗 教 交 學 中 に 盗 ん に 用 ひ ら れ 、 此 の 語 を 以 て 古 來 賛 歌 神 呪 を 表 す る こ も に な つ て 居 る 。 さ れ ば 佛 教 殊 に 密 教 の 中 に 此 の 眞 官( マ ン ト ラ) な る 語 を 用 ふ る の は 全 く 古 來 吠 陀 等 に 用 ひ た る 語 を そ の ま 、 借 用 し た も の に 渦 ぎ な い 。 然 る に 明 弁 に 陀 羅 尼 の 語 を 眞 言 に 適 用 す る 様 に な つ た の は 、 全 く 佛 教 以 來 の こ も で 、 そ れ 以 前 の 吠 陀 や 奥 義 書 等 に は 何 れ も 之 れ が 眞 言 を 指 す こ も に な つ て 居 ら な い 。 元 來 明 も は 明 知 若 く は 工 巧 、 換 言 せ ば 技 術 の 義 で あ つ た の だ が 、 佛 教 の 興 起 も 共 に 初 め て 明 智 を 得 し む る 眞 眞 言 陀 羅 尼 の 研 究 三眞 言 陀 羅 尼 の 研 究 四 官 の 義 に な つ た の で あ る 。 此 は 後 に 説 く 如 く 、 吠 陀 の 眞 言 に 對 し 、 佛 教 特 有 の 眞 言 が 出 來 、 眞 盲 は 眞 官 だ が 吠 陀 等 の そ れ で は な く 、 佛 教 の 明 智 を 得 し む る も の だ も 云 ふ 上 か ら 、 明(ビヂ ヤ)も 云 ひ 、 ま た は 明 の 字 を 眞 言( マソ ト ラ) の 上 に 冠 せ て 明 呪 も 云 つ た も の ら し い 。 從 つ て 佛 滅 後 間 も な く 、 大 衆 部 が 上 座 部 の 三 藏 結 集 に 封 し 、 そ の 當 時 、 佛 教 中 に 行 は れ て 居 つ た 眞 言 を 結 集 す る や 、 之 れ を 眞 言( マ ント ラ) 藏 も 名 付 け な い で 、 持 明(◎) 藏 も 云 つ て 居 る(二) 。 南 方 佛 教 で は 此 の 持 明 若 く は 明 呪 の 代 は り に パ リ タ も 云 ふ 語 を 用 ゐ て 居 る 。 之 れ 此 の バ リ タ な る 語 ば 保 護 防 禦 を 意 味 し 、 此 の 眞 言 が 凡 て の 障 礙 を 防 ぎ 持 誦 者 を 保 護 す る が 故 で あ る 。 北 方 佛 教 の 持 明 藏 に 蜀 し 、 南 方 佛 教 に は パ リ タ 藏 が あ る(三) 。 更 に 陀 羅 尼 も は 維 持 若 く は 憶 持 の 義 で 、 此 の 語 は 海 龍 王 經 も か 道 行 般 若 経 も か 法 華 経 も か 云 ふ 如 き 初 期 大 乗 経 典 に 於 て 初 め て 用 ひ ら れ 、 経 典 の 文 義 を 暗 記 し 憶 持 せ し む る も 云 ふ が 本 義 で あ る 。 謂 ゆ る 四 種 陀 羅 尼 の 中 で は 丈 陀 羅 尼 、 義 陀 羅 尼 が そ れ で あ る 。 元 來 初 期 大 乗 教 徒 は 小 乗 教 の 興 起 前 後 に 源 を 發 し た 符 合 的 の 短 文 句 た る 略 詮( ス ー ト ラ) 體 に 模 し て 、 海 龍 主 脛 や 法 華 脛 に あ る 如 き 眞 言 句 を 説 述 し た り 、 ま た 阿 の 一 字 を 以 て 不 生 の 義 を 憶 持 せ し め 、 羅 め 一 字 を 以 て 塵 垢 不 可 得 を 思 念 せ し め る も 云 ふ 様 な 四 十 二 字 門(四) を 構 設 し た り し た 。 而 も そ の 眞 言 は 吠 陀 の そ れ で も な く 、 ま だ 小 乗 佛 教 の 明 呪 も も 異 り 、 大 乗 教 の 文 義 を 総 持 し 憶 持 せ し む る 眞 言 だ か ら 、 之 れ
を 簡 別 し て 陀 羅 尼 眞 言 句(五) も 稱 す る 様 に な つ た の で あ る 。 ( 一 ) 、 ウ パ ニ シ ヤ ツ ト 全 業 第 二 巻 、 一 四 二 頁 参 照 。 ( 二 ) 、 西 域 記 第 九 、 ケ ル ン 氏 著 佛 教 便 覧 四 頁 参 照 。 ( 三 ) 、 チ ル ダ ー 氏 巴 英 辞 典 三 四 入 頁 参 照 。 (四 ) 、 智 度 論 第 四 十 八 巻 (往 三 、 四 二 右 ) 参 照 。 ( 五 ) 、 法 華 經 梵 本 三 九 六 頁 参 照 。
三
佛
教
以
前
に
於
け
る
眞
言
悪 魔 を 斥 ぞ け 病 を 癒 や す 等 の た め に 魔 術 的 神 秘 的 眞 言 を 誦 す る こ も は 、 濁 り 印 度 人 に 限 つ た 課 で は な い 。 遠 く は 埃 及 人 を 初 め 、 バ ビ ロ ン 、 ア ツ シ リ ア 等 の 人 種 何 れ も 皆 之 れ を 用 ひ て 居 つ た の で あ る 。 か の 印 度 ア ー ル ヤ 民 族 の 如 き も 、 彼 等 が 未 だ 印 度 に 浸 入 し 來 ら ざ る 以 前 、 郎 ち イ ラ ン 民 族 も 共 に 生 存 し て 居 つ た 時 代 か ら 、 己 に 眞 言( マ ント ラ) を 有 し て 居 つ た の で 、 彼 等 は 共 に 火 神 を 崇 拜 し 、 此 の 神 に 眞 言( マ ント ラ) を 捧 げ て 敵 を 斥 ぞ け 病 を 治 し 害 毒 を 除 く こ も を 祈 つ て 居 つ た の で あ る 。 從 つ て 彼 等 が 印 度 に 浸 入 し 來 つ て 、 五 河 地 方 に 定 住 し 、 其 所 に 出 來 た も 稱 せ ら る ゝ 印 度 最 古 の 聖 典 、 梨 倶 吠 陀 の 中 に 於 て も 、 此 の 火 神 (agni ) が 眞 言 を 以 て 室 界 を 支 持 す も 稱 せ ら れ 、(一) 此の 火 神 に 對 す る 眞 言 が 最 古 の も の も な つ て 居 る 。 か の 神 秘 語 た る 莎 訶 の 如 き も 、 全 く 此 の 火 神 に 由 來 す る の で 、 此 の 語 は 初 め ﹁ 善 く 置 く も の ﹂ 即 ち ﹁ 火 中 に 供 物 を 善 く 整 へ 置 く 神 ﹂ を 意 味 し た の で 、 彼 等 が 火 中 に 供 物 を 捧 眞 言 陀 羅 尼 の 研 究 五眞 言 陀 耀 尼 の 研 究 六 げ て 呼 び か け る 時 の 火 神 の 異 稱 で あ つ た の で あ る 。 そ れ が 時( 二) を 經 る に つ れ 、 語 義 が 全 く 失 は れ 、 た ゞ 神 聖 語 も し て . 此 の 火 神 の み な ら す 他 の 神 に 對 す る 眞 言( マ ン ト ラ) に も 用 ひ ら る 、 様 に な つ た の で あ る 。 而 も 此 の 印 度 ア ー ル ヤ 民 族 が 初 め て 印 度 に 眞 盲 を 輸 入 し 來 つ た 鐸 で は な く 、 彼 等 .が 印 度 に 移 住 し 來 っ た 時 、 己 に 此 所 に 住 へ る 印 度 原 民 族 之 れ を 所 有 し て 居 つ た の で 、 梨 倶 吠 陀 第 七 雀 を 造 つ た も 稱 せ ら れ る ブ シ ス タ 仙 人 は 此 の 原 民 族 の 眞 言 よ り 來 る 害 を 防 が ん こ も を 神 に 所 つ て 居 る 。 た ゞ 此 所 に 注 意 す べ き と も は 、 謡此 の 原 民 族 が 所 有 し て 居 っ た 眞 言 は 全 く 意 義 な き あ る 特 定 の 語 に 神 秘 力 を 認 め 、 之 れ を 唱 へ さ へ す れ ば 、 張 勢 的 に 神 を 使 役 す る 底 の も の で あ つ た に 反 し 、 ア ー ル ャ 民 族 の 齎 せ る も の は 主 も し て 神 の 聖 徳 を 賛 す る 謂 ゆ る 賛 登歌 .に 過 ぎ な か つ た 様 で あ る 。 彼 等 プ ー ル ャ 民 族 は 此 の 賛 歌 を 以 て 神 の 歓 心 を 得 、 之 れ に 依 つ て 神 を 動 か し 得 るも 信 じ た の で あ る 。 こ の 賛 歌 式 の 眞 言( マ ン ト ラ) を 有 す る ア ー ル ャ 民 族 も 魔 術 的 眞 言 を 事 も す る 原 民 族 も が 次 第 に 傍 觸 し 雑 婚 し 融 合 す る に つ れ 、 宗 教 信 仰 も 入 り 亂れ て 、 阿 他 婆 吠 陀 の 如 き も 田 來 、 息 災 、 増 盆 、 降 伏 等 の 呪 術 を 事 も す る 梯 に な つ た の で あ る 。 そ の 一 方 で は 儀 式 を 事 も す る 梵 書 や 、 そ の 儀 式 に 於 け る 哲 理 を 主 も ず る 多 数 の 奥 義 書 、 さ て は 法 律 、 祭 祀 、 家 憲 を 主 も す る 略 詮 の 如 き も 出 、 少 く も も 酉 暦 紀 元 前 第 六 世 紀 に は 己 に そ の 大 部 分 が 集 録 せ ら れ て 居 つ だ の で あ る 。 さ れ ば 西 紀 前 五 世 紀 に 出 世 せ ら れ た 釋 迦 牟 尼 佛 以 前 、 已 に 印 度 に 於 て は 呪 術 眞 言 が 盛 ん に は れ 、 之 れ を 一
家 庭 の 中 に つ い て 見 る も 、 子 供 が 産 れ た る 時 、 そ の 命 名 を な す 時 、 髪 を 結 び 初 め る 時 、 弟 子 入 り を す る 時 、 結 婚 を す る 時 等 、 凡 て 萬 般 の 場 合 に 種 々 の 儀 式 が あ つ て 、 そ の 儀 式 に は 必 す 眞 言 を 唱 へ る 。 か の 十 二 天 の 眞 言 の 如 き も 己 に ア ー シ ュ ヴ ラ ー ヤ ナ の 家 庭 經 の 中 に 散 説 せ ら れ て 居 る(三) 。 更 に ま た 、 か の奄 字 の 如 き も 、 己 に 佛 出 世 以 前 、 梵 書 や 奥 義 書 等 に 盛 ん に 用 ひ ら れ て 居 る 。 元 來 こ の 庵 宇 な る も の は 梨 倶 吠 陀 時 代 に は 何 等 重 要 視 せ ら れ た も の で な く 、 た ゞ そ の 書 物 の 初 め に 阿 他 な ご の 語 も 同 じ く 、 一 種 の 序 言 も し て 附 加 し て あ る 位 の も の で あ つ た 。 そ れ が 眞 言 も し て 初 め で 用 ひ ら れ た の は 梵 書 で 、 奥 義 書 に 至 つ て は 之 れ を ア 、 ウ 、 ム の 三 音 に 分 解 し 、 次 第 に 之 れ を 毘 紐 天 、 濕 婆 天 、 梵 天 に 配 す る 操 に な つ た 。 チ ヤ ン ド ギ ヤ 奥 義 書( 四)に 依 る も 、 庵 は 慮 諾 の 義 で 、 人 が 慮 諾 し た 時 、 オ ー も 答 へ る 、 そ れ が 庵 義 で あ る も 云 つ て 居 る 。 パ ー ニ ニ の 文 典 に ﹁ 庵(五) は 聖 典 の 初 に め る 長 母 音 な り ﹂ も め る 様 に オ ー も 長 く 引 く か ら 自 然 に ム の 鼻 音 が 附 随 す る の で 、 ム の 音 に 意 味 は な い 。 さ れ ば 此 の 庵 は 普 通 、 呼 び か け 、 應 諾 等 の 場 合 に 發 す る 間 投 詞 の 外 は な か つ た 様 で あ る 。 ( 一 ) 、 梨 倶 吠 陀 第 一 巻 六 七 歌 、 東 方 聖 書 第 四 十 六 巻 六 一 頁 参 照 。 (二 ) 、 マ ク ド ネ ル 氏 著 吠 陀 神 話 一 七 〇 頁 参 照 。 眞 言 陀 羅 尼 の 研 究 七
眞 言 陀 羅 尼 の 砥 究 八 (三 ) 、 東 方 聖 書 第 二 十 九 巻 一 五 九 頁 巳 下 参 照 。 ( 四 ) 、 ウ パ ニ シ ヤ ッ ト 全 書 第 三 、 二 頁 参 照 。 (五 ) 、 パ ー ニ ニ 文 典 第 八 巻 二 章 入 七 節 参 照 。
四
佛
教
中
に
眞
言
の
入
り
來
り
た
る
年
代
西 暦 第 五 世 紀 の 初 、 佛 陀 耶 舎 も 笠 佛 念 も に 依 つ て 共 繹 せ ら れ た 長 阿 含 經 第 十 三 雀 ( 昃 九 、 六 八 八 右 ) に 左 の 文 が あ る 。 摩 納 、 如 二 餘 沙 門 婆 羅 門 一 、 食 二 他 信 施 一 、行 二 遮 道 法 一 、邪 命 自 活 、 或 呪 二 水 火 一 、或 翁 二 鬼 呪 一 、或 誦 二 刹 利 呪 一 、或 誦 二 象 呪 一 、或 支 節 呪 、 或 是 安 宅 符 呪 、 或 火 焼 鼠 噛 能 爲 二 解 呪 一 、或 誦 二 知 死 生 書 一 、或 讃 二 夢 書 一 、 或 相 二 手 面 一 、或 誦 二 天 文 書 一 、或 誦 一二 切 音 書 一 、入 二 我 法 一 者 無 二 如 是 事 一。 こ の 經 文 に 依 つ て 佛 在 世 、 如 何 に 雑 多 の 眞 言 呪 文 が 行 は れ て 居 つ た か ゞ 窺 は れ る も 共 に 、 佛 教 の 本 意 は 斯 か る 呪 衣 を 誦 す る に 非 ざ り し こ も が 易 る 。 而 も 佛 は 徹 頭 徹 尾 此 の 呪 文 の 凡 て を 排 斥 せ ら れ た か も 云 ふ に 、 然 う で は な く 、 人 を 迷 信 に 導 き 佛 道 修 行 の 邪 魔 に あ る 様 な も の を こ そ 斥 ぞ け だ れ ざ も 、 佛 道 の 邪 魔 に も な ら す 、 身 を 護 る 上 に 慰 安 を 興 へ る 様 な 呪 文 は 之 れ を 許 さ れ た 様 で あ る 。 從 つ て 六(一) 群 比 丘 尼 が そ の 當 時 、 盛 ん に 流 行 せ し 種 々 雑 多 の 呪 術 を 事 も せ し 時 、 之 れ 沙 門 の 法 に 非 す 、 浄 行 に 非 中 も て 佛 之 れ を 禁 じ た け れ こ も 、 更 に 若 誦 二 治 腹 丙 愚 病 呪 一 、若 誦 二 治 宿 食 不 消 呪 一 、若 學 レ 書 、 若 誦 二 世 俗 降 伏 外 道 呪 一 、若 誦 二 治 毒 呪 一 、 以 二 護 身 一 故 、 無 レ 犯 。も し て 之 れ を 許 さ れ て 居 る 。 た ゞ に 護 身 の た め に 世 間 の 眞 言 呪 を 採 用 す る こ も を 許 さ れ た の み で な く 、 更 に 進 ん で 、 佛 自 ら 護 身 の た め に あ る 眞 言 呪 を 説 か れ て 居 る 。 即 ち 西 紀 第 三 世 紀 の 初 、 支 謙 に 依 つ て 繹 せ ら れ た 摩 登 伽 經 (宿 六 、 三 〇 左 ) に 依 る も 佛 弟 子 た る 阿 難 陀 が 旃 陀 羅 女 に 戀 せ ら れ 、 呪 術 に 依 つ て 魅 せ ら れ た 時 、 之 れ を 救 ふ た め に ﹁ 悉 梯 帝 、 阿 朱 帝 、 阿 尼 帝 ﹂ も 云 ふ 呪 を 説 か れ て 居 る 。 更 に 南 方 傅 に つ い て 考 ふ る に 、 小 品(二) 小 事 篇 第 五 并 に 本(三) 生 經 第 二 百 三 等 に 蛇 呪 が 説 か れ て 居 る 。 今 ﹁ 本 生 經 ﹂ に よ り て 文 れ を 取 意 す る も 、 あ る 時 、 佛 、 舎 衛 城 の 祇 園 精 舎 に 住 し 給 ふ た 。 そ の 時 、 一 比 丘 あ り 、 蛇 に 咬 ま れ て 死 ん だ 。 そ こ で 諸 比 丘 驚 い て 之 れ を 佛 世 尊 に 告 げ た 。 佛 曰 は く 、﹁ か の 比 丘 若 し 四 龍 王 に 對 し 慈 愛 を 加 へ だ り し な ら ん に は 、 彼 は 蛇 の た め に 咬 ま れ て 死 せ ざ り し も の を ﹂ も 、 そ し て 護 身 の た め に も て 、 諸 比 丘 に 對 し 、 四 龍 王 に 慈 愛 を 示 す べ き 呪 詞 を 説 か れ た 。 曰 く 、 眦(四) 盧 博 叉 蛇 を 我 れ 愛 す 。
翳
羅
畔
拏
蛇
を
我
れ
愛
す
。
車
波
弗
多
蛇
を
我
れ
愛
す
。
黒
喬
答
摩
蛇
を
我
れ
愛
す
。
眞 言 陀 羅 尼 の 研 究 九眞 言 陀 羅 尼 の 研 究 一 〇 も 、 之 れ に 由 つ て 之 れ を 考 へ る も 、 佛 在 世 己 に あ る 種 の 眞 言 呪 文 が 佛 に 依 り て 採 用 せ ら れ 、 且 つ 説 か れ た の で 、 佛 滅 後 間 も な く 大 衆 部 が 此 等 の も の を 結 集 し て 禁 呪 藏(五)もしたのであ る 。 之 れ を そ の 當 時 の 事 情 よ り 推 す も 、 誠 に 然 か あ る べ き こ も だ も 思 は る ゝ の で あ る 。( 一 ) 、 四 分 律 第 廿 七 (列 四 、 六 九 右 )参 照 。 (二 ) 、 國 譯 大 藏 經 論 部 第 十 四 巻 小 品 、 一 二 一 頁 参 照 。 (三 ) 、 濁 譯 本 生 經 第 二 巻 一 六 八 頁 参 照 。 (四 ) 、 義 浄 灘 大 孔 雀 呪 王 經 巻 上 (成 七 、 五 七 左 )参 照 。 (五 )、 西 域 記 第 九 (致 七 、 四 七 右 ) 、 併 に ク ル ン 氏 著 佛 教 便 覧 四 頁 参 照 。 五 眞 言 陀 羅 尼 の 發 達 佛 に 依 り て 説 か れ 佛 滅 後 間 も な く 大 衆 部 の 手 に 依 り て 結 集 せ ら れ た も 云 ふ 小 乗 原 始 乗 教 徒 の 手 に よ り て 更 に 更 に 發 達 し た 。 今 ワ ツ デ ル 氏 の 説 を 参 肴 し て 、 大 體 之 れ に 年 の 通 り に あ る 。 一 原 始 小 乗 の 明 呪 時 代⋮⋮⋮⋮⋮ 自 紀 前 五 世 紀 至 二 世 紀 。 二 初 期 大 乗 の 文 義 陀 羅 尼 時 代⋮⋮⋮⋮⋮ 自 紀 前 二 世 紀 至 紀 後 五 世 紀 。 三 眞 言 乗 の 忍 呪 陀 羅 尼 時 代⋮⋮⋮⋮⋮ 西 紀 第 五 世 紀 以 後 。 原 始 小 乗 時 代 に 馬 す る 眞 言 も し て は 摩 登 伽 經 に 説 か れ た る 旃 陀 羅 女 阿 難 を 招 く 呪 、
釋
尊
阿
難
を
擁
護
す る 呪 、 六 句 神 呪 、 刹 利 呪 、 眦 舎 神 呪 、 首 陀 羅 神 呪 、 大 梵 天 王 婆 眦 羅 呪 を 初 め 、 持 句 神 呪 經 等 に あ る 呪 が そ れ で あ る 。 此 等 は 何 れ も 南 方 佛 教 に あ る 蛇 呪 も 等 し く 、 略 詮( ス ー ト ラ) 體 の 短 丈 句 を 以 て 佛 教 の 旨 趣 を 表 し た も の で あ る ら し い 。 そ の 一 例 も し て 、 支 謙 に 依 つ て 繹 せ ら れ て 居 る 大 梵 天 婆 眦 羅 呪 を 學 げ る も 。 菴(ラ ン) 、 有 形 必 有 欲 、 有 欲 必 有 苦 、 若 能 離 此 欲 、 定 得 梵 天 處 。 ぎ 鬼 ふ が 如 き 60 ち そ れ で あ る 。 之 れ を 吠 陀 時 代 の 賛 歌 若 く は 禁 厭 呪 に 比 す る に 、 全 く 雲 泥 の 相 違 が あ る 。 故 に 彼 に 對 し て 、 原 始 佛 教 特 有 の 眞 言 を 匠 別 す る に 明 若 く は 持 明 叉 は 明 呪 も 云 つ た の で あ る 。 而 し て ま た 、 そ の 明 呪 は 略 詮( ス ー ト ラ) 體 の 短 文 句 を 以 て 成 立 し て 居 る か ら 、 之 れ を 呼 ぷ に 經 即 ち 略 詮 ) の 語 を 以 て し 、 神 呪 經 等 も 云 つ て 居 る 。 此 が 原 始 佛 教 特 有 の 眞 言 で は あ る が 、 さ ら ば も て 吠 陀 式 の 眞 言 た る 賛 歌 や 禁 厭 呪 が 原 始 佛 教 中 に 全 く 行 は れ な か つ た も 云 ふ 譯 で は な い 。 佛 は 比 丘 比 丘 尼 に 對 し て 、 護 身 用 の た め に は 吠 陀 眞 言 を 誦 す る こ も を 許 さ れ た 位 で あ る か ら 、 此 が 佛 教 特 有 の 明 呪 も 相 並 ん で 佛 教 中 に 行 は れ た こ も は 想 像 す る に 難 く は な い 。 而 も 吠 陀 式 の 眞 言 以 上 に 佛 教 特 有 の 明 呪 が 佛 に 依 り て 説 か れ た も 云 ふ こ も は 確 に 眞 言 の 一 發 達 も 見 る こ も が 出 來 る 。 こ の 明 呪 を 本 も し て 、 更 に 一 段 の 發 達 を 遂 げ た も の が 謂 ゆ る 陀 羅 尼 で あ る 。 こ の 陀 羅 尼 眞 言 陀 羅 尼 の 研 究 一一
眞 言 陀 羅 尼 の 研 究 一 二 な る 語 は 己 に 説 明 せ る 如 く 、 西 紀 前 二 世 紀 頃 か ら 興 起 し た も 思 は る ゝ 初 期 大 乗 教 徒 に 依 り て 初 め て 用 ひ ら れ た 語 で 、 謂 ゆ る 大 乗 佛 教 の 特 有 語 で あ る 。 從 つ て 智 度 論 第 廿 八 雀 に は 此 の 陀 羅 尼 な る 説 が 聲 聞 法 の 中 に な き 所 以 を 問 ひ 、 恰 も 小 家 に 金 銀 な き が 如 し も 答 へ て 居 る 。 陀 羅 尼 も 云 つ て も 此 の 初 期 大 乗 教 時 代 に 於 け る も の は 、 文 義 を 暗 記 し 憶 持 す る た め の 字 門 や 短 丈 句 の 義 で 、 之 の こ も は 初 期 大 乗 教 の 首 科 辭 典 も も 云 ふ べ き 智 度 論 を 通 護 す れ ば 分 る 。 智( 一) 度 論 に は 聞 持 陀 羅 尼 や 身 別 替 陀 羅 尼 さ て は 入 音 聲 陀 羅 尼 等 が 説 か れ て 居 る け れ ざ も 、 そ の 陀 羅 尼 も は 何 れ も 能 く 文 義 を 憶 持 す る 明 智 の 義 の 外 は な い 、 謂 ゆ る 四 種 陀 羅 尼 の 中 で は 文 陀 羅 尼 、 義 陀 羅 尼 が 之 れ に 當 る の で あ る 。 此 の 時 代 に 屬 す る 陀 羅 尼 も し て は 、 西 暦 四 世 紀 の 初 、 竺 法 護 に 依 つ て 譯 せ ら れ た 方 等 部 の 海 龍 王 經 を 初 め 、 般 若 經 、 法 華 經 等 の 陀 羅 尼 が 即 ち そ れ で あ る 。 い ま 一 例 も し て 、 法 護 に 依 っ て 譯 せ ら れ て 居 る 海 龍 王 經 の 無 礙 陀 羅 尼 (宇 九 、 三 一 左 ) を 擧 げ る も 。 繰 應 意 、 随 順 意 、 欣 樂 跡 、 直 意 、 越 度 、 無 盛 句 、 次 第 、 曜 面 、 光 目 、 光 英 、 志 造 、 浮 意 、 行 歩 入 、 勇 力 、 濟 冥 、 所 持 、 爲 上 、 寂 門 、 入 寂 、 滅 塵 、 離 居 、 居 善 、 随 順 、 離 次 、 無 所 至 、 所 住 、 無 所 住 、 至 處 、 無 至 處 、 夏 御 、 蓮 慧 、 智 根 、 韓 本 根 、 月 光 、 昭 轄焔 、 光 善 離 垢 、 無 垢 、 浄 諸 垢 、 覚 所 建 立 、 諸 天 祐 、 護 諸 魅 、 告 乗 、 梵 知 化 、 釋 者 蹉 、 四 天 護 、 衆 聖 愛 、 仙 人 歸 、 諸 牲 修 行 、解 牢 獄 縛 、天 人 所 攝 、 捨 諸 塵 労 、 破 壊 衆 魔 、 降 伏 外 道 、 揺 欲 明 智 、 開 化 自 大 、 不 犯 法 師 、 不 亂 衆 會 、 悦 可 樂 法 、 護 於 法 音 、 不 断 三 寳 、慈 愍 衆 生 、讃 慕 徳 義 、 ( 六六 十 二 事 ) 殆 ん ざ 符 號 的 に 出 來 た 略 詮( ス ー ト ラ) 躰 の 何 で 、 現 今 之 れ に 依 つ て 一 貫 し た 意 味 を 見 出 す こ も は 難 事 で あ る 。
而 も 此 が 大 乗 教 の 旨 趣 を 表 し た も の な る こ も は 明 か で あ る 。 更 に 法 護 は 法 華 經 の 陀 羅 尼 を も 譯 し て 居 る が 、 之 れ も 同 工 異 曲 も 云 つ て 可 い 。 西 暦 四 五 世 純 の 頃 出 世 し た 無 著 の 著 、 瑜(二) 伽 論 の 中 に 四 種 陀 羅 尼 の 名 が 見 へ 、 前 來 の 文 陀 羅 尼 、 義 陀 羅 尼 に 對 し て 、 呪 陀 羅 尼 忽 陀 羅 尼 が 注 目 せ ら る 、 様 に な つ た 。 そ の 由 來 す る 所 を 考 ふ る に 、 佛 教 中 に 瑜 伽 思 想 が 高 調 せ ら る ゝ に 至 つ た 結 果 で あ る 。 恐 く 此 の 時 代 に 出 現 し た も 思 は る 、 瑜 伽 を 根 本 思 想 も す る 眞 言 密 教 に 依 る も 、 若 し 人 こ の 瑜 伽 の 三 摩 地 に 入 つ て 絶 對 境 に 合 致 し 、 絶 對 我 に 融 合 す る も 、 其 所 に 不 可 思 議 の 力 を 逮 得 す る こ も が 出 來 る 。 そ の 逮 得 し た 力 を 以 て 世(三) 間 の 言 語 文 字 を 加 持 す る も 、 そ れ が そ の ま ゝ 不 可 思 議 力 を 総 持 し 、 病 を 治 し 悪 魔 を 斥 ぞ け る こ も に な る 、 そ こ で 佛 菩 薩 は 必 ず 先 づ 瑜 伽 三 摩 地 に 入 つ て 呪 を 説 く も 云 ふ 。 此 が 即 ち 呪 陀 羅 尼 で 、 そ の 呪 陀 羅 尼 の 中 に は 吠 陀 の 眞 盲 を 初 め 、 小 乗 教 の 明 呪 、 初 期 大 乗 の 文 義 陀 羅 尼 等 の 凡 て の 形 式 を 悉 く 攝 取 し 採 用 し て 、 自 己 藥 龍 中 の も の も な し 、 之 れ に 悉 く 新 生 命 を 賦 興 し た 。 此 が 謂 ゆ る 眞 言 密 教 の 諸 陀 羅 尼 で 且 つ そ の 特 色 で あ る 。 眞 官 密 教 の 諸 陀 羅 尼 は た ゞ に 攘 災 招 幅 の 現 世 的 利 盆 を 與 ふ る の み で な く 、 之 れ を 直 に 瑜 伽 三 摩 地 に 入 る 方 便 も し て 、 出 世 間 の 悟 り を 聞 く こ も が 出 來 る 。 瑜(二) 伽 論 の 語 を 籍 り て 云 ふ も ﹁ 豆 胝 、 密 胝 、 吉 胝 、 眦 底 ﹂ も 云 ふ 如 き 無 意 義 の 眞 言 な れ ば こ そ 、 そ の 中 に 絶 盲 の 自 性 を 逮 得 し て 忍 智 を 得 る こ も が 出 來 る 。 之 れ を 忍 陀 羅 尼 も 稱 す る の で あ る が 、 そ の 他 、 凡 て の 諸 陀 羅 尼 を 誦 じ 之 れ を 親 じ て 心 を 統 一 し 、 以 て 眞 言 陀 羅 尼 の 研 究 一 三
眞 言 陀 雛 尼 の 研 究 一 四 瑜 伽 の 三 摩 地 に 入 る こ も が 出 來 る 。 さ れ ば こ の 眞 言 陀 羅 尼 こ そ 悟 道 に 達 す る 最 大 捷 徑 で 、 謂 ゆ る 神 通 桑 で あ る も し 、 之 れ を 圭 も す る の が 眞 盲 密 乗 で あ る 。 眞 言 陀 羅 尼 は 此 の 眞 言 密 教 に 至 つ て 、 最 高 頂 に 達 し た も 云 つ て 宜 し い の で あ る 。 ( 一 ) 、 智 度 論 第 五 井 に 第 廿 八 巻 参 照 。 (二 ) 、 瑜 伽 論 第 四 十 五 巻 (來 三 、 二 二 右 ) 参 照 。 (三 ) 、 大 日 縄 第 二 、 具 繰 品 に 曰 く 、﹃ 秘 密 圭 、 云 何 如(ンカ) 來(ノ) 眞 言 道 、 謂(ク) 加 二 持 此(スルナリノ) 書 寫(ノ) 文 字(チ) 一﹄ も 、 更 に 瑜 伽 論 第 四 十 五 巻 (來 三 、 二 一 右 ) 参 照 。
六
眞
雷
陀
羅
尼
の
種
子
眞 盲 密 教 が 心 を 統 一 す る 瑜 伽 の 方 法 も し て , 此 の 眞 言 陀 羅 尼 を 用 ふ る 様 に な り 、 其 所 に 種 子 も 云 ふ こ も が 矢 釜 し く な つ て 來 た 。 そ の 種 子 も は 一 字 一 音 を 以 て 眞 言 陀 羅 尼 の 義 趣 を 該 羅 し 総 攝 す る 様 に 造 つ た ま の で 、 或 は 特 に 定 め た も の も あ り 、 或 は 尊 名 や 眞 言 の 初 若 く は 終 を 取 つ た も の 等 が あ る 。 例 せ ば 千 手 観 音 の 種 子 フ リ ー フ の 如 き は 特 定 せ る も の 、 文 殊 菩 薩 の 種 子 た る 滿 字 、 地 藏 菩 薩 の 種 子 た る 訶 字 は 尊 名 叉 は 眞 言 の 靭 を 取 り 、 金 剛 喜 菩 薩 の 種 子 、 度(ド フ) は そ の 真 言 、 娑 度 娑 度( サ ー ド フ サ コ ド フ) の 終 を 取 つ た も の で あ る 。 元 來 種 子 な る も の は か の 梵 書( プ マー フ マナ) に 於 て 、 ブ フ ー ル の 語 を 以 て 地 界 を ブ フ ヴ フ を 以 て 室 界 を 、 ヌ ヴ ル を 以 て 天 界 を 表 す も す る 三 宣 言 に 源 を 發 し た も の も 云 ふ べ く 、西 紀 前 一 二世 紀 頃 、 出 世 し た も 稱 せ ら る 、 摩 奴 の 法 典 ( 二 、 七 六 ) に 、 此 の 三 宣 言 こ そ 之 れ 梵 ( 生 主 ) が 吠 陀 を 該 攝 し た も の だ も 云 ふ に 至 つ て 、 種 子 の 思 想 は 極 め て 濃 厚 に な つ て 來 た 。 そ れ ぎ 時 を 同 じ う し て 興 起 し た も 思 は る ゝ 大 乗 教 徒 は 此 の 、思 想 を 攝 持 し て 、 謂 ゆ る 字 入 門 陀 羅 尼 な る も の を 説 き 出 し た 。 眞 盲 密 教 の 種 子 は ,此 の 字 入 門 ,陀 羅 尼 を 更 に 發 達 せ し め た も の も 云 つ て 可 い 。 若 し 語 學 上 か ら 云 ふ も 、 此 の 種 子 は 一 字 一 音 の も の で 、 之 れ に 何 等 の 意 義 が あ る 譯 の も の で は な い 。 而 も こ の 種 子 は 阿 の 一 字 を 以 て 本 不 生 を 表 し 、 羅 の 一 学 を 以 て 塵 垢 不 可 得 を 顯 は す 等 の 密 號 ざ な る の み な ら す 、 更 に 進 み て は 此 の 種 子 が そ の ま ゝ 音 聲 文 字 の 上 に 表 は れ だ 佛 菩 薩 の 身 體 だも す る 所 に 種 子 の 實 義 が あ る 。 故 に 大 旦 經 疏 第 七 に は 、 此(ノ) 聲 字 即(チ) 是(レ) 諸 佛 加 持 之 身 、 此 加 持 身 郎(チ) 能(ク) 普(ク) 作 ご(テ) 随 類 之 身(ト) 一無 レ 所 レ 不 在(ラ) 。 も 云 つ て 居 る 。 元 来 佛 菩 薩 は 常 に 人 間 の 姿 を し て 居 る に 限 つ た 譯 で は な く 、 山 の 形 に 表 は る ゝ こ も も あ れ ば 、 劍 や 蓮 花 や 昔 聲 文 字 等 の 上 に 宿 る こ も も あ る 。 故 に 眞 言 密 教 で は 此 の 音 聲 文 字 を 燈 も す る 佛 菩 薩 を 陀 羅 尼 身 も 云 ひ 、 そ の 陀 羅 尼 身 た る 種 子 眞 言 を 念 誦 し て 、 そ の 上 に 表 は る ゝ 佛 菩 薩 の 身 體 に 融 合 す る 、 此 の 融 合 に よ り て 罪 垢 の 穢 身 を 離 れ 、 清 浮 の 佛 菩 薩 身 も な る こ も が 出 來 る の で あ る 。 さ れ ば か の 額 も か 眉 間 も か 頬 も か 云 ふ 様 な 身 體 の 各 支 分 に 種 子 を 親 す る 謂 ゆ る か の 布 字 觀 の 如 き も 、 此 の 穢 身 を 轉 じ て 浄 身 も な す 目 的 に 外 な ら な い の で あ る 。 こ の 布 字 觀 を な す 時 に は 先 づ 初 眞言 陀羅 尼 の 研 究 一 五
眞 言 陀 羅 尼 の 研 究 一 六 に 此 の 穢 身 を 壊 し て 元 素 に 蹄 せ し む べ く 、 地 、 水 、 火 、 風 、 室 の 五 大 の 種 子 を 觀 じ 、 次 に 浄 身 を 建 立 し て 、 更 に そ の 各 支 分 に 種 子 を 觀 す 、 此 は そ の 浄 身 を 荘 嚴 せ ん が た め で あ る こ の 種 子 に 四 種 類 が あ る 。 一 普 通 の 平 字 母⋮⋮⋮⋮⋮ 阿 、 阿(ア コ) . 迦 等 。 二 随 韻 ( ・ )を 有 せ る 字 母⋮⋮⋮⋮⋮ 暗 、 憾 等 。 三 止 聲 (︰) を 有 せ る 字 母⋮⋮⋮⋮⋮ 若(ジ ヤ ク) 、 悪 等 。 四 随 韻 も 止 聲 も を 合 せ 有 す る も の 大 日 の 種 字 ア ー ン フ 等 。 タ ン ト ラ 文(1) 學 に 依 る も 、 平(ひ ら) 字 母 の 種 子 は 知 識 を 與 へ 、 随 韻 を 有 す る も の は 解 脱 を 、 止 聲 を 有 す る も の は 子 孫 を 、 随 韻 も 止 聲 も を 合 せ 有 す る も の は 享 樂 を 賦 與 す る 義 だ も 云 っ て 居 る 。 之 れ 止 聲 の 原 語 ピ サ ル ガ は 棄 捨 の 義 の 外 に 創 造 の 義 が あ る 、 此 の 創 造 の 義 に 依 り て 子 孫 繁 榮 を 與 へ る も 云 つ た も の ら し い 、 佛 教 に は 此 の 棄 捨 の 義 を 本 も し て 、 之 れ を 涅 榮 黙 も 稱 し て 居 る 。 更 に 随 韻 の 原 語 ビ シ ヅ は 解 脱 の 義 で あ る か ら 、 佛 教 に 之 れ を 空 黙 も 云 ふ こ も は 誰 し も 知 る 所 で あ る 、 さ れ ば 眞 言 密 教 の 上 か ら 云 へ ば 、 平(ひ ら) 字 母 は 兎 に 角 、 随 韻 を 有 す る も の は 解 脱 の 室 を 表 し 、 止 聲 を 有 す る も の は 涅 薬 の 義 を 現 は す 、 更 に 室 、 涅 槃 の 二 黙 を 合 せ 有 す る も の は 二 轉 の 妙 果 を 表 す も 解 釋 す べ き で あ る 。
( 一 ) 、 ア プ ロ ン 氏 の タ ン ト ラ 原 理 第 二 巻 三 七 四 頁 参 照
七
眞
言
陀
羅
尼
の
組
織
眞 言 の 初 後 に 置 か る ゝ 神 秘 語 、 俺 、 莎 訶 に つ き て は 、 己 に 上 に 説 明 し た 。 こ れ も 同 じ 様 な も の で 、 吽 、 斜 、 拌 託 等 の 語 が あ る 。 そ の 中 、 畔 は 供 犠 の 時 の 間 投 僻 も し て 、 己 に 吠 陀 の 中 に 用 ひ ら れ 、 後 に は 疑 惑 、 非 難 、 忿 怒 等 の 種 子 も し て 、 人 獅 子( ヌ リ シ ン ハ) 奥 義 書 等(一) の 中 に 使 用 せ ら れ て 居 る 。 更 に 洋 託 の 語 は 飛 箭 の 聲 を 寫 し た も の で 、 タ ソ ト テ 文(二) 學 等 に は 武 器 の 種 子 だ も し て あ る 。 元 來 音 聲 を 主 も す る 眞 言 で は 律 調 も 云 ふ こ も が 非 常 に 大 切 で あ る 。 故 に 寂 災 を 所 る 眞 盲 は 穏 か に 、 悪 魔 を 斥 ぞ け 献 を 降 伏 す る 等 の 眞 言 は そ の 調 子 が 猛 烈 で な く て は な ら ぬ 。 今 瑜(三) 伽 派 等 に 依 る も 、 此 等 の 神 秘 語 を 音 日 調 の 上 か ら 男 、 女 、 中 の 三 姓 に 分 け る こ も が 出 來 る 。 一 女 姓 調⋮⋮⋮⋮⋮ 奄 、 莎 訶 。 二 男 姓 調⋮⋮⋮⋮⋮ 吽 、 解 、 洋 叱 。三
中
姓
調⋮⋮⋮⋮⋮
納
麼
。
從 つ て 大 日 經 第 七 巻 持 誦 品 に は 寂 災 、 降 伏 . 等 の 四 種 法 に 關 す る 眞 盲 の 組 織 を 左 の 通 り に 述 べ て 居 る 。 眞 言 陀 羅 尼 の 研 究 一 七眞 言 陀 確 尼 の 研 究 一 八 (四 種 眞 言 ) (眞 言 の 初 ) (眞 言 の 終 )
一
寂
災
眞
言︱︱
奄⋮⋮⋮⋮⋮
莎
訶
。
二
降
伏
眞
言︱︱
吽⋮⋮⋮⋮⋮
吽
、
發
託
。
三
召
攝
眞
言︱︱
奄⋮⋮⋮⋮⋮
吽
、
發
託
。
四
増
盆
眞
言︱︱
納
麼⋮⋮⋮⋮⋮
納
麼
。
全 く バ タ ソ ジ ヤ リ の 瑜 伽 派 等 も そ の 揆 を 二 に す る も の も 云 つ て 可 い 。 四 種 法 の 中 で は 寂 災 の 眞 言 が 最 も 多 く 用 ひ ら れ る 。 從 つ て そ の 神 秘 語 の 如 き も . 大 抵 は 女 姓 的 な る 奄(ズ ソ) 、 莎 訶( ス ア ー ハ) が 附 加 せ ら れ て 居 る 。 加 之 . 此 の 眞 言 の 不 思 議 力 を 擬 人 化 し て 女 尊 も す る こ も が あ る 。 之 れ 力 な る 語 が 女 姓 な る が 故 で あ る 。 此 の 女 尊 た る 不 思 議 力 を 表 す る た め に 眞 言 の 語 何 が 女 姓 呼 格 に 終 る こ も が 多 い 、 例 へ ば -般 若 心 經 の 掲 諦 掲 諦 の 呪 の 如 き が 即 ち そ れ で あ る 。 眞 盲 陀 羅 尼 に は 長 い も の が あ り 短 か い も の が あ る 。 謂 ゆ る 大 晩 、 中 呪 . 小 呪 が あ つ て 必 す し も 一 様 で な い が 、 そ の 組 織 の 上 か ら 云 ふ も 、 大 體 一 定 の 典 型 が あ る 。 そ れ に つ き 嘉 群 大 師 は 法 華 疏 第 二 巻 に 於 て 、 直 言 呪 所(ノノ) レ 論 、 不 レ 出 二 三 義 一 、 一 説(ニハ) 二(ク) 極 果 勝 徳 或 因(ハ) 中(ノ) 萬 行(チ) 一 、故 聞(ク) 者 發 心(ス) 。 二 説(ニハ) 二(ク) 三 寳(ノ) 名 字 或 諸 佛 別 名 或(ハ) 大 力 鬼 神(ノ) 名(チ) 一 召 二 呼(スルヰ) 此(ノ) 名(チ) 一使 下 魔 邪 聞 者 驚 遽 上(チシテヨリキカ) 。 三 説(ニハ) 二 諸 法深 理 無 相 一(チ) 、使 下 聞 者 悟 レ(チシテ) 道(チ) 得 中 無 生 忍(チ) 上 。 い ま 眞 言 の 例 に 照 し て 之 れ を 圖 示 す る も 。一 三 寳 の 名 字 、 諸 尊 の 別 名 、 大 力 鬼 神 の 名 を 表 す も の ⋮ ⋮ 十 二 天 の 眞 言 等 。 二 極 果 の 勝 徳 、 或 は 因 位 萬 行 を 表 ず る も の⋮⋮⋮⋮⋮ 四 替 護 佛 讃 等 。 三 諸 法 の 深 理 を 表 す る も の 護 身 法 中 の 浄 三 葉 の 眞 言 等 。 以 上 の 眞 言 の 終 り に 、 時 も し て 種 子 が 置 か る 、 こ も が あ る 。 斯 く て 出 來 上 つ た 眞 言 の 初 も 終 に 、 更 に 庵 、 荷 訶 等 の 神 我 語 が 附 加 せ ら る ゝ こ も は 己 に 説 明 し た 道 り で あ る 。 ( 一 ) 、 ウ パ ニ シ ヤ ツ ト 全 書 第 四 、 一 六 〇 頁 参 照 ℃ ( 二 ) 、 ウ ー ド ロ フ 兵 の 二 三 一 頁 以 下 参 照 。 ( 三 ) 、 コ ー ウ エ ル 氏 の 英 譯 ﹃ 一 切 見 集 ﹄ 二 五 八 頁 参 照 。 八 眞 言 陀 羅 尼 の 誦 法 眞 言 は 佛 教 以 前 己 に 存 立 し て 居 つ た 。 面 も そ れ が 如 何 に 誦 持 せ ら れ て 居 つ た か も 云 ふ に . 韻 文 か ら 成 つ て 居 る 吠 陀 の 賛 歌 を ぱ リ ッ チ も 云 ひ 、 此 は 高 く 藤 を 出 し て 人 に 聞 へ る 様 に 隅 へ る 。 同 じ 韻 丈 で も 、 ソ ー マ 祭 等 に 用 ふ る も の は 、 之 れ を サ ー マ ン も 云 ひ 、 此 は 抑 揚 を 附 し て 歌 詠 す る の で あ る 。 更 に 散 文 か ら 成 り 而 も 祭 に に 用 ふ る も の を ヤ ジ ユ ル も 云 ひ 、 此 は 低 く 八 に 聞 へ ぬ 様 に 誦 す 。 此 が 吠 陀 時 代 に 於 け る 眞 言 の 誦 法 で あ る 。 思 ふ に 原 始 佛 教 時 代 も 之 れ も 同 じ 形 式 で 誦 持 せ ら れ て 居 つ た も の ら し い 。 然 る に 大 乗 佛 教 の 興 起 も 眞 言 陀 羅 尾 の 研 究 一 九
眞 言 陀 羅 尼 の 研 究 二 〇 共 に 字 入 門 陀 羅 尼 が 出 來 、 此 は 一 字 眞 言 で あ る か ら 、 唱 へ る も 云 ふ よ り は 寧 ろ 字 義 を 觀 す る も 云 ふ こ ビ が 圭 に な り 、 後 の 眞 言 密 教 に 於 げ る 觀 想 念 誦 若 く は 三 摩 地 念 誦 の 俑 を な し た も の も 云 つ て 可 い 。 從 つ て 略 出 念 誦 經 に は 音 聲 念 誦 . 金 剛 念 誦 、 眞 賓 念 誦 、 三 摩 地 念 誦 の 四 種 を 塞 げ て 居 る 。 そ の 中 、 音 聲 念 誦 は 吠 陀 眞 言 に 於 け る 梨 磋( リ ツ チ) も 薩 瑪( サ ー マ ン) も に 當 り 、 金 剛 念 誦 は 他 に 聞 へ な い 様 に 唯 舌 を 動 か す の み の 念 誦 で あ る か ら 夜 珠( ヤ ジ ュル) 眞 吉 に 當 る 。 眞 實 念 誦 は 種 子 の 字 義 實 義 を 觀 す お 念 誦 で 、 誦 ゆ る 初 期 大 乗 の 宇 入 門 陀 羅 尼 に 當 る の で あ る さ れ ば 眞 言 密 教 に 於 け る 略 出 念 誦 經 の 特 色 も も 云 ふ ぺ き は 三 摩 地 念 誦 で あ る 。 此 の 三 摩 地 念 誦 は 眞 言 を 瑜 伽 の 方 法 も し て 用 ふ る に 至 つ て 、 初 め て 興 つ た も の ら し い 。 そ れ で 眞 言 密 教 も 等 し く 瑜 伽 を 本 ε す る 、 タ(一) ン ト ラ 文 學 で も そ の 念 誦 法 を 音 念 誦 も 金 剛 念 誦 も 觀 想 念 誦 も の 三 種 に 分 ち 、 最 後 の 觀 想 念 誦 を 以 て 最 も 優 れ た も の も し て 居 る 。 此 の 觀 想 念 誦 若 く は 三 摩 地 念 誦 が 密 教 念 誦 法 の 中 核 を な す の で 、 之 れ に 通 達 せ ね ば 出 世 間 の 悉 地 は 勿 論 の こ も 、 世 間 の 成 就 を 得 る こ も も 六 か し い 。 故 に 大 日 經 世 間 成 就 品 な ご で は 、 先 づ 初 に 此 の 意 支 念 誦 即 ち 觀 想 念 誦 を 修 練 し て 、 そ れ か ら 初 め て 理 供 養 念 誦 た る 先 事 法 念 誦 . さ て は 具 支 念 誦 や 作 成 就 念 誦 を な さ し め る こ も に な つ て 居 る 。 元 來 眞 言 密 教 の 目 的 も す る 所 は 此 の 觀 想 念 誦 に 依 り て 種 子 眞 言 の 形 音 義 を 觀 じ 、 そ れ が そ の ま ゝ 本 尊 の 形 で あ り 音 聲 で あ り 意 で あ る も 共 に 、 そ の 本 尊 も 行 者 も 互 に 彼 此 渉 入 し て 無 碍 一 體 を 成 す る に あ
る 。 之 れ が 即 ち 眞 言 の 實 義 で 、 此 の 賓 義 を 知 ら な い で 、 徒 に 眞 言 を 誦 ず る も そ れ は 全 く 吠 陀 の 眞 官 も 何 等 異 な る 所 が な い 。 故 に そ れ は た ゞ 世 間 の 禁 厭( ま じ な ひ) の 用 を な す か は 知 ら な い が 宗 教 も は な ら な い 。 故 に 善 無 畏 三 藏 は 大 日 經 疏 第 七 の 中 に 於 て 、 此(ノ) 悉 曇 字 母( ハ)幼 童( モ) 皆 亦 誦 持( ス)、 至 二(テ ハ)於 護 摩 供 養 等( ニ) 一 、章 陀 世 仙( モ)亦 皆 共 作( コ ス)、 而 今 此( ル チ ノ)眞 言 門( ニ)所 三 以 獅 成( ハ リ ズ)ご 秘 密( ル ナ)一 者 、 以 二 眞 實 義(ノ チ) 一所 二 加 持 一( ズ レ) 耳 、 若( シ)但 ロ 誦( お シ)二 眞 言( チ) 一 而 不(レ バ)レ 思 二 惟( ヒ)其 義( ナ) 一 、 只 可(キ モ)レ 成( ズ)二 世 間( ノ)義 利( チ)一 豊 得(コ ン ヤ)レ成( ス) 二 金 剛( ル ユ ト チ) 躰 性( テ) 一乎 。 ご 眞 言 密 教 徒 た る も の 反 省 一 番 を 要 す る こ も だ も 思 ふ 。 ( 一 ) ウ ー ド ロ フ 氏 の 二 九 六 六 頁 参 照 九 結 言 上 來 、 眞 言 陀 羅 尼 に 關 す る 重 要 な る 事 項 に つ き 、 所 見 を 遠 ぺ 了 つ た 。 今 之 れ を 概 括 し て 條 書 に す る も 左 の 通 り に な る 。 一 眞 言 は 北 方 佛 教 の み な ら す 、 南 方 佛 教 に も 用 ひ ら れ 、 全 亜 細 亜 の 佛 教 徒 に 大 關 係 を 有 す る こ も 。 二 眞 言 な る 語 は 佛 教 已 前 吠 陀 等 に 於 て 已 に 用 ひ ら れ た る も 、 明 呪并 に 陀 羅 尼 な る 語 は 佛 教 に 於 て 初 め て 用 ひ ら れ た の で あ る 。 就 中 、 陀 羅 尼 な る 語 は 大 乗 佛 教 の 特 有 語 な る こ も 。 三 印 度 に 於 け る 眞 言 の 淵 源 は 遠 く 吠 陀 以 前 、 印 度 ア ー ル ヤ 民 族 も 波 斯 人 も が 尚 分 れ ざ り し 勝 代 に 潮 り 得 る こ も 。 四 佛 陀 出 世 以 前 、 己 に 庵 、 莎 訶 等 の 神 秘 語 を 初 め 種 々 の 眞 言 が 日 常 の 事 作 も し て 、 印 度 人 の 間 に 行 は れ て 居 り し こ も 。 眞 言 陀 羅 尼 の 研 究 二 一
眞 言 陀 羅 尼 の 研 究 二 二 五 佛 道 修 行 に 有 害 な る 吠 陀 の 眞 言 は 佛 之 れ を 禁 じ た け れ こ も 、 護 身 用 の た め に な る 様 な も の は 之 れ を 採 用 し た る こ も 。 加 之 、 佛 は 吠 陀 の 眞 言 に 對 し 佛 教 特 有 の 眞 言 を 説 か れ た る こ も 。 六 原 始 佛 教 特 有 の 眞 言 を 吠 陀 の そ れ に 封 し て 明 、 持 明 又 は 明 呪 も 稱 せ し こ も 。 初 期 大 乗 に 於 て 文 陀 羅 尼 、 義 陀 羅 尼 な る も の が 興 り 、 更 に 眞 言 密 教 時 代 に 於 て 瑜 伽 を 主 も す る 呪 陀 羅 尼 忍 陀 羅 尼 が 起 り た る こ も 。 七 眞 言 陀 羅 尼 の 種 子 は 梵 書 の 三 宣 言 に 由 來 し 、 初 期 大 乗 經 を 經 て 眞 言 密 教 に 來 つ て 榮 へ た る こ も 。 八 眞 言 密 教 に 於 け る 種 子 眞 言 は 諸 法 の 賓 義 を 表 す る 密 號 た る の み な ら す 、 此 を 以 て 瑜 伽 の 勢 境 も し 、 種 子 そ の ま ゝ を 佛 の 自 體 も な す こ も 。 九 眞 言 持 誦 法 の 中 、 昔 念 誦 、 金 剛 念 誦 は 吠 陀 に 起 源 し 、 眞 實 念 誦 は 初 期 大 乗 の 字 入 門 陀 羅 尼 に 由 來 し た る こ も 。 觀 想 念 誦 若 く は 三 摩 地 念 誦 は 眞 言 を 瑜 伽 の 對 境 も す る に 至 つ て 初 め て 榮 へ た る こ も 。 そ の 他 、 成 就 法 の 發 達 も 共 に 、 眞 言 が 具 體 化 し 擬 人 化 せ ら れ て 、 随 求 呪 が 随 求 明 王 も な り 、 孔 雀 呪 が 孔 雀 明 王 も な つ た 様 に 、 眞 言 陀 羅 尼 に 由 來 し た 佛 菩 薩 が 多 い 。 そ こ で ワ ツ デ ル 氏 の 如 き は 孔 雀 呪 に 由 來 し た 孔 雀 明 王 が 阿 彌 陀 佛 に も な り 、 ま た そ の 正 法 輪 身 が 金 剛 手 、 教 令 輪 身 が 大 黒 天 等 ピ な つ た の だ も 論 じ て 居 る け れ ざ も 、 此 は そ の ま ゝ 首 肯 し 難 い 所 も あ る 。 之 れ に 封 す る 研 究 は 更 に 後 日 を 期 し て 發 表 し た い も 思 っ て 居 る 。 ( 完 )