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更新日:2008/6/3 調査部:古幡 哲也

カザフスタン:原油輸出税を6月1日から導入

(各種情報誌) • 原油輸出税は2009年1月からの導入が示唆されていたが、これが前倒しされることとなり、マシモ フ首相は4月8日に原油輸出税を導入するための法律にサイン、6月1日に発効した。 • 当初の税率は、原油輸出1トン当たり109.90ドル(およそ15ドル/バレル)。その目的は国内製 油所への原油供給を増加させ、国内市場への石油製品供給量を増加させることにあるといわれ る。ただし、その目論見が実現するかどうかは不透明である。 • カシャガンなど国際コンソーシアムの事業は、契約に基づき原油輸出税が免除されるとみられてい たが、2009年からは、契約条件にかかわらずすべてのプロジェクトに原油輸出税を課したいとの 財務大臣発言があり、雲行きが怪しくなってきている。

• 国営石油会社 KazMunaiGaz(カズムナイガス)傘下の KazMunaiGaz Exploration and Production

(KMG E&P)は業績上も大きな影響を受ける見通しであり、反発している。KMG E&Pは資本投資、 生産量、埋蔵量、買収計画などの抜本的に見直しに入っている。 • カザフスタンの原油輸出税の負担は、ロシアに比べれば小さく、カザフスタンの地質的ポテンシャ ルを考慮すれば、すぐに外国投資がストップするわけではないだろう。しかし、現在政府が検討中 とされる他の税制・石油法制(2009年1月施行見込み)の仕上がり方によっては、カザフスタンの石 油産業への投資の阻害要因となりうる。 1. 原油輸出税の導入前倒しとその対象事業について カザフスタンでは今年 2 月、石油・ガス産業からの税収を非エネルギー産業の育成や加工製品の輸 出促進等の政策に充てることを目的として、ナザルバエフ大統領、マシモフ首相が政府によるエネルギ ー資源管理強化や石油・ガス産業に対する税制の抜本的見直しの方針を打ち出した。 その中では新たに原油輸出税(Export Duty)を2009年1月から導入する方針が示唆されていたのだ が、その導入が早まり、必要な改正法案にマシモフ首相が4月8日にサイン、6月1日に発効している。 その税率、原油1トン当たり109.90ドル/トン(およそ15ドル/バレル)は、2008年第1四半期の平 均原油価格に基づいて計算されており、これによりカザフスタンの国庫は10億ドルの増収が見込めると もいわれる。(算定方式については巻末資料参照。) 原油輸出税を導入する目的は、カザフスタン国内の石油製品価格の上昇を抑えることにあるとされて いる。『原油輸出への課税⇒輸出した場合と国内製油所向けに販売した場合のネットバック(井戸元)価 - - 1

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格の接近⇒国内製油所向けの原油販売インセンティブ増⇒国内製油所での石油製品精製量増大⇒国 内市場への石油製品供給量増加⇒価格下落』、といったシナリオが期待されているのである。 この原油輸出税の前倒し施行に先駆けて、マシモフ首相からの指示に基づき、5月19日には石油製 品の輸出を禁止する規制が施行された1。加えて、ロシアとカザフスタンのエネルギー当局者が、今後、2 020年までエネルギー・燃料の需給バランスを適正に保つための共同プログラムを検討することになっ たり、政府当局が石油製品の価格操作の疑いで捜査を始めたりしているとの報道もあり、カザフスタンで も石油製品の価格高騰が喫緊の課題になっているのは間違いないだろう。 次に、原油輸出税の対象だが、国際コンソーシアムが開発・生産に取り組むテンギス油田、カルチャ ガナク油田、カシャガン油田といったプロジェクトは、石油契約で税制の安定性が規定されていることか ら原油輸出税が適用されることは無いと見込まれており、実際に政府が5月18日に発表した原油輸出税 対象企業のリスト(次ページ、表1)にも、国際コンソーシアムプロジェクトは含まれていなかった。しかし、 カザフスタンのジャミシェフ財務大臣は、議会で、これらの国際コンソーシアムにも2009年以降は原油 輸出税を支払わせたい、と発言したと報じられており、雲行きが怪しくなってきている。ただし、一時期、6 月からの輸出が税関に差し押さえられる恐れがある、と報じられたカルチャガナックからは、今のところ、 輸出が継続している模様である。 カルチャガナック ガス田 カシャガン油田 テンギス油田 カラジャンバス油田 カズゲルムナイ ウゼン油田 図 1:カスピ海周辺の主要油・ガス田 (JOGMEC 作成) - - 2 1 この措置は6月1日から9月1日までの限定的なものであり、その目的は穀物の収穫に必要な農耕用機械向け燃料価格を抑えることにあ るとされる。

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表1.カザフスタン政府が5月18日に発表した原油輸出税の対象となる事業会社 1. Kazmunaigas Exploration Production、2. Kazakhturkmunai、3. Kazakhoil-Aktobe、

4. Petrokazakhstan —Kumkol Resources、5. Turgai Petroleum、6. Oil Co. KOR、7. CNPC - Aidan Munai 8. South Oil、9. Zhaikmunai、10. Fial、11. Tasbulat Oil Corp.、12. Khazar Munai、13. Karakudukmunai 14. Zhalgiztobemunai、15. Emir Oil、16. Firma Fiztech、17. Lancaster Petroleum、18. Caspi Neft TME 19. Sagiz Petroleum Co.、20. Aral Petroleum、21. Kazneftekhim Kopa、22. Sazankurak

23. Alties Petroleum、24. Atyraumunai、25. Svetland Oil、26. Arnaoil、27. Gyural、28. Caspi Neft 29. Pricaspian Petroleum Co.、30. Adai Petroleum Co.、31. NBK、32. Tobearal Oil、33. JV Matin 34. Potential Oil、35. Ekogeoneftegas、36. Embavedoil、37. Samek International、38. Kozhan

原油輸出税がカルチャガナックなどの既存事業にも適用されるとなると、その採算性に悪影響を与え る可能性がある2。また、中長期的にもカザフスタンでの新たな石油・ガス開発投資を阻害する要因となら ないか心配される。カザフスタンには膨大な地質的ポテンシャルがあり、大規模埋蔵量も期待される残り 少ないエリアであるため、潜在的投資家が急にいなくなることはないだろうが、今年3月から抜本的な見 直しが行なわれている税制・石油関係法制の全体像次第では、投資意欲が格段に落ちることが懸念さ れる。

なお、原油輸出税の導入に伴い、現在徴収されているExport Rent Tax3との間の二重課税を避けるた

めの緩和措置がとられる、あるいは現在検討中の税制改正においては、法人税やExcess Profit Taxを緩 和する、あるいは税制そのものを簡素化する方針であるとの情報もあり、引き続きフォローアップが必要 である。いずれにしても、石油・ガス開発投資の促進のためには早急に明確な制度の構築が望まれると ころである。 2.原油輸出税の影響を大きく受ける KMG E&P KMG E&P は国営石油会社 Kazmunaigaz の一翼でありながら、原油輸出税の悪影響を最も受けるとい われている。KMG E&P が50%株式を保有している一部のプロジェクト(カズゲルムナイ、カラジャンバ ス)は税制の安定性を定めた条項が存在していることから原油輸出税の対象にはならないとのことだが、 ウゼン油田等同社の主力油田は原油輸出税の対象になる。このため、KMG E&P は原油輸出税の導入 には早くから懸念を表明していた。また、原油輸出税の導入が6月にずれ込んだのは、KMG E&P から - - 3 2一部には、2004 年以降の厳しい税制・石油法制が適用されている事業の場合、原油輸出税の影響は極めて限定的になるとの分析もある。

3 Export Rent TaxはPSAでは免税。JV契約や利権契約が課税対象となる。原油価格に応じた税率を原油の輸出価額に乗じて産出される。た

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の陳情によるものであって、KMG は5月中にできるだけ余剰在庫の輸出に努めたとも言われている。 次に財務面のインパクトについてだが、原油輸出税は8億ドルのコスト増になると KMG E&P は発表し ており、別の試算でも売り上げの1/4程度に相当すると見積もられている。KMG E&P の2007年の売り 上げは約40億ドル、純利益は13億ドルであり、8億ドル~10億ドルのコスト増のインパクトは決して小さ くない。KMG の株式はカザフスタンの年金基金も大量に購入していると言われており、株価が下落すれ ば国民にとっても大きな損失なることから、親会社であるKMGやKMG株を多く保有している国の資産管 理会社Samruk は政府に相当なロビー活動を行なったのだが、結局、政府は KMG を免税にしなかった。 ただ、直近の KMG E&P 株価を見ると、このところ株価は皮肉にも好調であり、必ずしも株式市場が原 油輸出税の導入を悲観的に評価しているわけではないようだ。 (図2)ロンドン株式市場の KMG E&P 株価推移) 3. ロシアの原油輸出税との比較 図1:ロシアの石油生産量(百万b/d) (出所:BP統計) 0 2 4 6 8 10 12 14 1985198619871988198919901991199219931994199519961997199819992000200120022003200420052006 ( 単位: 百 万b / d) 図2:ロシアの原油生産量(百万b/d) (出所:ロシア産業エネルギー省) 9.0 9.2 9.4 9.6 9.8 10.0 10.2 2006年 5月 2006年 6月 2006年 7月 2006年 8月 2006年 9月 2006年 10月 2006年 11月 2006年 12月 2007年 1月 2007年 2月 2007年 3月 2007年 4月 2007年 5月 2007年 6月 2007年 7月 2007年 8月 2007年 9月 2007年 10月 2007年 11月 2007年 12月 2008年 1月 2008年 2月 2008年 3月 2008年 4月 2008年 5月 お隣りのロシアでは原油生産量の減少が徐々に顕著になってきていると言われており、プーチン首相 も首相就任時の所信表明演説(5月8日)で、石油・ガス開発を促進するために石油・ガスの開発に関連 する税制を緩和する方針を明らかにした。その後、ヤマル半島やティマンペチョラ地域、また海上での 油田開発にかかる資源産出税課税を緩める方針も発表されている。 また、ロシアの原油輸出税は、現在は1トンあたり340.1ドル(約46/バレル)、また6月からは油価の (図3)カザフスタン株式市場の KMG E&P 株価推移) - - 4

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上昇を反映して398.15ドル(約54ドル/バレル)にも達すると見られている。ただ、資源産出税などの 減税だけではロシアの原油生産量を復元するには不十分であるとの観測から、原油輸出税を引き下げ る可能性もささやかれ始めており、カザフスタンが原油輸出税を新たに導入するのとは対照的である。こ の原油輸出税は、ロシア企業にも外国企業と同様に等しく課される負担であることから、例えば Lukoil の アレクペーロフ社長などもその弊害をたびたび発言している。 ロシアと比較して、いまのところカザフスタンはカシャガンプロジェクトの生産開始も控えていて、あまり 生産量減少を心配しなくてもよく、逆に言えば、そのような実害に接しなければ、その政策を一気に転換 させることが難しいのかも知れない、とロシアの動きを見ていると考えさせられる。 4.国内の製品供給量の増加につながるか 表2:CIS・バルト海諸国のガソリン価格(米ドル/1リットル、出所:Turan Energy) Early 2007 Early 2008 Country レギュラー ハイオク レギュラー ハイオク Azerbaijan 0.45 0.53 0.65 0.71 Armenia 1.12 No change 1.18 No change Belarus 0.86 0.98 0.99 1.13 Georgia 0.76 0.85 1.04 1.12 Kazakhstan 0.68 0.76 0.76 0.87 Kyrgyzstan 0.7 0.77 0.71 0.8 Latvia No sale 1.03 No sale 1.38 Lithuania 1.14 1.3 1.5 1.6 Moldova 0.87 0.91 1.17 1.23 Russia 0.92 0.96 0.84 0.9 Tajikistan 0.7 1.06 0.83 1.12 Turkmenistan 0.017 0.02 0.13 0.16 Ukraine 0.84 0.91 0.97 1.01 Uzbekistan 0.48 0.55 0.62 0.76 – 1.16 Estonia No sale 1.0 No sale 1.4

上記の表2を見るとカザフスタン国内のガソリンの小売価格は、他の CIS、バルト海諸国の価格と比較 して、決して高いわけではない。ただ、確かに昨年と比べて上昇していることは間違いなく、別の情報源 でもカザフスタンの石油製品価格は2005年、2006年、2007年に、それぞれ10%、18%、14%上昇 しているとのことである。 また、2007年にカザフスタンで実際に精製された原油は約8,800万バレル(日量およそ24万バレ ル)であり、これはカザフスタンの主力製油所(アティラウ、パブロダール、シムケント)の精製能力のおよ - - 5

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そ65%に過ぎないと分析されている。別の情報源でも、2006年は53%、2007年は60%の稼働率で あるとの分析があり、国内製油所には余剰精製能力があると考えられ、もしも国内製油所に原油が供給 されれば製品生産量が増加する余地は十分にあるものと思われる。 ただし、KMG 関係筋からは、「カザフスタン国内には原油の売り先は無いので、結局輸出しなければ ならない。そのため、原油輸出税はコストが増えるという財務上の問題にしかならない。」との声もある。こ れを裏付けるように、15ドル/バレル程度の原油輸出税では負担が軽すぎて、カザフスタンの国内向け 原油販売価格(30ドル程度?)に到底近づくことはできず、原油を輸出するほうがまだ高いネットバック が得られるとの分析もある。また、ロシアでは国際市場での原油価格の騰勢があまりに急で、原油輸出 税額の調整(2ヵ月毎)が追いつかないため、やはり輸出したほうが経済的になっている、という事例もあ り、原油輸出税の導入によりカザフスタン国内の石油製品供給量の増加や国内製品価格の下落に実際 につながるかどうかは不透明である。 【参考:カザフスタンの原油輸出税 課税額算出方法(報道より)】 原油の平均価格:P(米ドル/バレル) 原油輸出税 算出方法 19 < P ≦ 60 P と19ドルの差の5% 60 < P ≦ 75 2.05ドル+(Pと60ドルの差の22.83%) 75 < P ≦ 90 5.48ドル+(Pと75ドルの差の38.21%) 90 < P ≦ 105 11.21ドル+(Pと90ドルの差の48.48%) 105 < P ≦ 120 18.48ドル+(Pと105ドルの差の55.82% 120 < P 26.85ドル+(Pと120ドルの差の61.34%) - - 6

参照

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