九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
配座制御に基盤をおく複素環系不斉制御分子の創製 研究
鬼村, 謙二郎
九州大学総合理工学研究科分子工学専攻
https://doi.org/10.11501/3065553
出版情報:Kyushu University, 1992, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
第3章 キラルアクリルアミドとニトリルオキシドおよびニトロナートとの不斉双極 性環状付加反応
第1節 序
ニトリルオキシドとアルキンあるいはアルケンとの双極性環状付加反応では、 イソ オキサゾールあるいは2-イソオキサゾリンなどの複素環が生成し、 これらは、 簡単 な官能基変換を経て、 以下に述べるように、 種々の重要合成中間体へ誘導することが できるので、 合成化学上最も有用な複素環と見なされているCScheme 3-1)。 ニトリ ルオキシド環状付加反応を利用 した合成化学的研究は、 1980年代にかけて
Kozikowski. 1) J
ägerZ) らの研究グループによって精力的に展開され、 その分子内反
応を鍵反応とする天然物合成などが多数報告されているO 3) 現在では、 分子内ニトロ ン環状付加反応と並んで、 有機 合成化学の分野において立派に市民権を得ている数 少 ない双極性環状付加反応のーっと見なすことができる。
さて、 不飽和度の高いイソオキサゾールは、 N-O結合の還元的切断によってエナミ ノケトンに誘導でき、..,) その加水分解によりβ-ジケトンを与える。 また、 エナミノ ケトンは置換様式の異なった2種類のα,β-不飽和ケトンへ変換できるO
5)一方、
2-イソオキサゾリンは、 同様な還元的関環反応により、 β-ヒドロキシイミンあるい はy-アミノアルコールに直接導くことができ、 さらに、 β-ヒドロキシイミンの加水 分解によりβーヒドロキシケトンへ変換することができるO 6) この系列の複素環の中 で最も不飽和度の低いイソオキサゾリジンは、 ニトロンとアルケンとの反応により容 易に合成することができる。 このイソオキサゾリジンは、2-イソオキサゾリンの場合 と同様な還元的関環反応により、 N-置換y-アミノアルコールへ官能基変換できるo
7}2-イソオキサゾリンの還元的開環反応で得られるβーヒドロキシケトンは、 アルド ール反応における付加生成物でもあるので、 ニトリルオキシドとオレフィンとの双極 性環状付加反応は、 アルドール反応の合成化学的等価反応であるといえる
CScheme 3- 2)。 アルドール反応が、 天然物などの複雑な構造をもっ有機化合物の合成 研究の中で、 過去最も広く、 便利に利用されて来た炭素-炭素結合形成反応の一つで
あることを考慮すれば、 光学活性アルドールの立体選択的構築法の確立は合成化学的 に重要である。 従って、 光学活性アルドールの等価体を生成する不斉ニトリルオキシ
ド 環状付加反応の開発研究 は、 極めて興味ある研究課題である。
-5 0-
。 。 。
R )y� R3 R1 Aγ人 R3
ß-Diketone
Enone
R1ーC三N→0 /
旨 ト 1 λず入 R3 R1 Aÿ人 R3 R1 へん
+ B,
R2 R3
Isoxazole Enamino ketone
R1-C三N→0
ー|小 R1 r N \ H γ 白2 / O 、 、R3 H R1 �人 R3
/、/R3
+R2
2-Isoxazoline ß-Hydroxy imine ß-Hydroxy ketone
R1 N?
Lぐご
R1 �人 R3
�' ''''''''O
+
R2 �R3
Isoxazolidine y-Amino alcohol
Scheme 3-1.
け 3 R1 �入 R3 R1 ßy人 3
ラ/ 7 ;\ R1人〆R2
OMtlandlor +
R1ーC三N→0
\、 o O
H ../
NMl de \「
J R1 ヤ R3 V1 へん 3 〆 H人R3
Aldol reaction
trans antl
今/M 今、ν ρL m 一
ρL
4 4 tt 「同υ .0 一 P3
ニトリルオキシド1. 3-双極子の発生法としては、 ハロゲン化ヒドロキシモイルを トリエチルアミンにより脱塩化水素して調製する “Huisgen法"、8) 一級ニトロ化合 物にイソシアナートおよびトリエチルアミンを作用させて調製する “向山法"、g) さ らに、 最近報告された塩化ヒドロキシモイルに有機金属化合物を反応させて調製する
“金政法"1 0) が知られている。 向山法を除く他の2法は、 -78 ocの低温においてす らニトリルオキシドをスムーズに発生できるので、 高い不斉収率をめざす不斉環状付 加反応のように、 低温での反応が望まれるには都合がよい。
種々の1. 3-双極子を用いた不斉環状付加反応の中でも、 ニトリルオキシドの環状 付加反応は、 効率的な不斉誘導が最も困難な反応のーっとされている。 他の1. 3-双 極子の場合も同様であるが、 ニトリルオキシドは強いルイス塩基として作用し得る。
従って、 キラルオレフィンを親双極子として用いる反応において、 ルイス酸あるいは 金属補助剤の助けを借りて、 反応部位と不斉制御子部位との連結基回りでの配座を固 定し、 高ジアステレオ選択的な反応を達成する方法は未だ 開 拓 さ れて いない 。 まして、
エナンチオ選択的不斉反応の報告例は皆無である。 困難さを増大させている最大の理 由は、 ニトリルオキシドが直線形状(あるいは、 棒状) をもった立体的に嵩の小さい 双極子であることにある。 高い不斉収率を達成するためには、 小さな反応剤の媛近に 対してすら、 反応部位であるジアステレオ面の一方を有効に遮蔽する特別な工夫が要 求される。
これまで、 キラルな親双極子を用いたニトリルオキシド環状付加反応において、 高 い不斉収率を達成した例は極めて少ない。 特に、 立体遮蔽に基づいて効率的な不斉ニ トリルオキシド環状付加反応を成功させた例はほとんど報告されていない。11) 求核
試剤であるニトリルオキシドとの静電反発を利用して、 ジアステレオ面の高選択的な 識別を行う優れた方法が最近報告されたが、12) この方法の問題点は、 第2章第1 節 で 指摘したとおり である。 第1章の記述と多少は重 複するが、 最近のキラルな親 双極子を用いた不斉ニトリルオキシド環状付加反応の例をFigure 3-1に示した。1 2)
一方、 シリルニトロナートは、 トリエチルアミンやLDAなどの塩基の存在下で、
一級ニトロ化合物を塩化トリアルキルシランでシリル化することによって容易に調製 できる1. 3-双極子であるCScheme 3-3)。 ハロゲン化アルキルの亜硝酸ナトリウムに よるニトロ化、1 3) あるいは、 安価なニトロメタンを用いるニトロアルドール反応/脱 水反応1 -1) によって、 種々の置換様式を持つ一級ニトロ化合物が容易に入手できる。
-52-
Curran
(1987) 4%
de。
Cuπan
(1987) 10%
deKanemasa
(1991) 400/0
deFeringa
(1988) 100%
deOlsson
(1988) 6-80%
deCurran
(1987) 12-560/0
deOzaki
(1992) 90%
deMeN‘.NMe
料、
、、
COOMe Kanemasa
(1991)
100%
deτバ
PhN_ _NPh
〈一
向日O
Curran
(1988)
80-90%
de Curran(1989) 74-100%
deOppolzer
(1991) 96%
deFigure 3・1.
円〈U「ヘυ
Et3N
or LDAR
0・
>=ぐ
H OSiMe3
I
X R\_N02 M e3SiC1
Silyl E-nitronate R
「イ H+
orBU4N+F
A、 N‘
x ... 、。; 、OSiMe3 - Me3SiOH ぷl
Scheme 3-3.
この原料の入手の容易さが、 ニトロナートを合成的に魅力ある双極子としている。 シ リルニトロナートにはE体およびZ体の2つの幾何異性体が可能であるが、 立体 的に嵩高いシリル基が存在するため、 専らE-異性体構造として存在することがX線 結品解析によって既に明かにされている。I
5)さらに、 シリルニトロナートとオレフィンとの双極性現状付加反応から得られる 2-シリルオキシイソオキサゾリジンは、 酸あるいはフッ素アニオンの作用により容易
に脱シラノール化を受けて2-イソオキサゾリンへ誘導できるので、 シリルニトロナ ートはニトリルオキシドの合成等価体として用いることができる。 特に、 直線状のニ トリルオキシドと平面性のニトロナー卜とは双極子形状がまったく異なるため、 不斉 環状付加反応における不斉誘導の選択性が大きく異なると予怨され、 その意味で、 こ れら2つの双極子は不斉合成において相補的な役割を担うことが期待される。
シリルニトロナートを用いた不斉環状付加反応の例としては、 以下のような報告が ある。 まず、 Hassner は、 アリルニトロエチルエーテルあるいはアリルニトロエチル チオエーテル基質を用いた分子内1, 3-双極性環状付加反応を報告している
(Scheme 3-4)
0 1 6)β位に不斉をもっニトロアルケンから発生させたシリルニトロナ ー卜の分子内反応でシリルオキシイソオキサゾリジンを得、 これに酸あるいはテトラ ブ チルアン モ ニ ウ ムフルオリド( TBAF )を作用させて2 -イソオキサゾリン体に誘導
している。 このニトロナートの反応がほぼ完全にジアステレオ選択的であったのに対 し、同じニトロアルケンから向山法で調製したニトリルオキシドの分子内反応では、
選択性が著しく低下している。 さらに、 オキシム前駆体から調製したニトリルオキシ
A斗「hd
ドの同様な反応でも、 選択性は低い結果に終わっている。 これらの結果は、 高い不斉 収率の達成が困難であったニトリルオキシド環状付加反応を、 その合成等価体である
シリルニトロナートを用いることで解決できることを示している。
シリルニトロナートと"Oppolzer のカンファーサルタム" を用いた分子聞で:の不 斉反応が最近報告されたCScheme 3-5)017) 反応で得られる環状付加体をp-トルエ ンスルホン酸で脱シラノール化して2-イソオキサゾリンに誘導した後、 環状付加反 応のジアステレオ選択性を求めている。 その結果、 ニトリルオキシドとニトロナート とでほぼ同水準の選択性が観察されている。 18)
e ト 叩O2
O� m f e ト ω→o
PhNCO 0,,-/、
Me.... üH
、-CH=N
。�
! Me3SiCI, Et3N
NitrileOX凶\
M e γ
吋 Me3 二 M Lf 3H +
orBU4型F L N
~、 〉 し人ノ 人人J
Silyl nitronate Yieldl% trans:cis
Ni廿ile oxide 87 2.4: 1 Silyl nitronate 74 >99: 1 Scheme 3-4.
�R-C三N→0/
Aux*
N
=Silyl nitronate Ni甘ile oxide
R 5R:5S 5R:5S
H 89:11
Me 89:11 90:10
Et 89:11 90:10
Ph 85:15 95:5
Scheme 3-5.
「hd「hυ
さて、 既に第2章で詳しく述べたように、 著者らが本研究の中で新規に開発した C2対称性イミダゾリジンおよびオキサゾリジン不斉制御子は、 金属補助剤による助 けがなくても、 アクリルアミドのジアステレオ面の一方を高度に立体遮蔽できるよう に設計されている。 従って、 ニトリルオキシドのように嵩の小さい直線形状の求核試 剤の接近に対してすら効果的に遮蔽して、 高いジアステレオ選択性が達成できると期 待さ れる。 むしろ、 ニトリルオキシドは、 著者の開発した不斉制御子の有用性を試験 するための恰好の反応剤であると言える。
そこで、 本章では、 第2章で合成したイミダゾリジンおよびオキサゾリジン不斉 制御子の合成的有用性を評価するために、 そのN-アクリロイル誘導体との反応相手 としてニトリルオキシドを選び、 不斉環状付加反応を検討することとした。 さらに、
これらのCz対称性イミダゾリジンおよびオキサゾリジン不斉制御子が、 平面性の双 極子との不斉反応に対しても有効に機能し得るかを調べるために、 ニトリルオキシド の合成的等価体であるシリルニトロナートを用いた不斉環状付加反応についても比較 検討を行った。 加えて、 平面性ニトロナートとの反応を解析するための比較材料とし て、 上記のキラルアクリルアミドとニトロンとの反応も行った。 ニトロナート環状付 加体の新規な官能基変換法の開拓も試みたので併せて述べる。
ハhUFhu
第2節 キラルイ ミダゾリジンの不飽和ア ミドを用 いる不斉 ニトリルオキ シ ド環状付
加反応
2-1 不斉ニトリルオキ シド環状付加反応
まず、 光学活性な(4S,5S)-1, 3- ジアクリロイル - 2,2-ジメチルイミダゾリジン [ω 町 ]とベン、ノニ トリルオキ シドとの不 斉双極
性環状付 加反応を行い、ふ ツ アステレオ選択性を調べた(Scheme川べンゾニトリルオキシ
ドは 1uisgenF により調製して用いた 08) すなわち、 塩化ベンズ‘ヒド、ロキシ モイルのジ クロロメタン 溶液に、o Ocでトリエチルアミンを作用させてベ
ンゾニトリルオキシドを調製し、 単 離することなくそのままキラルオレフ
ィン悩別にゆっくり添加した
後、 室温 で反応を行 った。 ニトリルオキ シドはキラル不飽和ア ミド(4S,5S) -Jに対して3等 量用いた。 反応の終点はTLCにより求め、
飽和塩化アンモニウム水溶液により反応 を停止した。
その結果、2 : 1 環状付加体に相 当するビ スイソオキサ ゾリン誘導体の2種類の 立 体異性体の混 合物(80 : 20)が、 ほぼ定 量的に得られた(エ ントリー3) 0 立体異性体 比は、 反応直後の粗生成物の lHNMRスペクトルに基づいて決定した。 なお、 これら の立体異性体は、 シリカゲルクロ マト グラフィ ーを用いて容易に分離、 精製すること ができるo 反応温度を室温からo Ocまで下げても 、 反応のジアステレオ面選択性は ほとん ど 変わらないが(80:20、 エントリ ー2)、 -78 Ocにおける反応では、 選択性は
83:17まで向上した(エント リー1) 0 この時の ジアステ レオ選 択性は、 91:9と計算 される。
単離した主異性体1, l- �の lHおよび 13 CNMRスペクトルにおいては、2つのイ ソオキサゾリン環の3位のメチン水素、
4位のメチレン水素、 イミダゾリジン環の
- 1 あるいは5 位 ) のメチン水 素、2位の2つのメチル基のすべては
、 等 価な鋭 い シ クナルとして観測されたo 従 って、1, l-�はC2対称性構造をもつことがわかり、
ニ トリルオキシドとの反応で2つのアクリルア ミ ド基は、 共に同 一のジアステレオ 面でニトリルオキシドと反応した環状付加体であることが明らかにされたo
円,,』にd
村
守XP
PhC(Cり=NOH+ NEt3 PhC三N→0
V
CH2CI2 (4S,5S)-3
/,/-9
po
ト--\ O-N
Ph
ベ 〈 f Mい入
PhlLE刷
dioxane dioxanereflux reflux
Ph
ペJ〉O
H Phベメ",,-/
OH( +)-10 rac-l0
(96% ee)
Entry TempjOC Time/h Yield/%a I so百ler ratlo b
9 1,1-9:I,u-9
-78 24 97 83:17 (91:9)c
2 。 5 quant 80:20 (90: 10)c
3 rt 3 quant 80:20 (91:10)c
a) Yield of the isolated mixture of diastereomer. b) Determined by 1H NMR spectrum ( 270 MHz) of the crude reaction mixture.
c) Calculated diasterofacial selectivity.
Scheme 3-6.
nxu 「hυ
2-2 環状付加体の絶対配置の決定
得られた環状付加体の絶対構造を明らかにするため、 還元的に不斉制御子を除去す ることにした。 アミド結合を還元的に切断する方法としては、 水素化リチウムアルミ ニウムが最も一般的に用いられるが、 分子内に存在するイソオキサゾリン環のN-O
結合が還元的に開裂する危険性が大きくて、 1. l -�からの不斉制御子の除去には用い 得ない。 そこで、 還元力の弱い水素化ホウ素ナトリウムを用いた還元反応を試みたが、
エタノール中加熱還流下においてすらそのアミド結合は切断されず、 原料回収に終わっ た。 一方、 “スーパーヒドリド還元剤" として知られる水素化ホウ素トリエチルリチ ウムを用いた還元反応も、 THF中室温あるいは加熱還流下で反応は進行しなかったが、
ジオキサン中で30分間加熱還流すると、 低収率ではあるが、 イミダゾリジン不斉制 御子が除去されて(+)-3-フェニル-2-イソオキサゾリン-5-メタノール[(+)-1J).]が得 られた(Scheme3-6)。
5Rの絶対構造をもっ10は負の旋光度をもつことが既に知られているので、I
2) べンゾニトリルオキシドと(4S,5S)-.3_との環状付加反応で生成した主異性体1. 1-9は、
5Sの絶対配置を有すると決定できる。 従って、 この反応では、(4S,5S)-3のSl面 が優先して選択されたことになり、 予想通り、 不飽和アクリルアミドC4S,5S)-3 が syn/s-cis配座を占めた上で、 ニトリルオキシドが 4位の遮蔽置換基の反対側から
接近して反応したことを示している(Figure3-2)。
po
Figure 3・2.
nud kd
不斉制御子を除去して得られたアルコール体盟の光学純度は、 光学異性体分離用
カラム、Chira1ce1
08(ダイセル化学社製)を装着した高速液体クロマトグラフィー を用いて決定した(ヘキサン /2-プロパノール3: 1 v/v) 。 その結果、 光学純度は 96完eeと測定された。 すなわち、 不斉制御子を除去する目的でジオキサン中加熱還 流という過酷な条件下で還元反応を行ったため、 この段階で一部ラセミ化が起こって いることが判った。
一方、 IHおよび 13C NMRスペクトルの測定から、 シリカゲルを用いたカラムクロ
マトグラフィーによって1,1-.9.から単離された副立体異性体1, u-.9.には、 磁気的環 境の異なる2組のイソオキサゾリン環が存在し、 イミダゾリジン環の4位( あるい は5位)のメチン水素および2位の2つのメチル基のシグナルも互いに磁気的に 非等価であった。 この2つのイソオキサゾリン環が異なった絶対配置をもつことは、
水素化ホウ素トリエチルリチウムを用いての1, u-.9.からの不斉制御子の還元的除去 によって、 光学的に不活性な(::t)- 0が得られることからも明らかである。 1 結局、
1.
u-9の生成は、(4S, 5S)-.3_の環状付加反応において、2つのアクリルアミド反応部 位が異なったジアステレオ面で反応したためである。
以上の結果をまとめると、(4S,5S)-.3_とべンゾニトリルオキシドとの環状付加反応 においては、 環上のフェニル基によりアタリロイル反応部位の一方のジアステレオ面 が遮蔽され、 反応のジアステレオ選択性は 91:9 となる。 また、 選択性に及ぼす反応 温度の影響は余り大きくないことが明らかとなった。 不斉収率の向上を期待して、 イ ミダゾリジン環の4および5位のフェニル基を他の置換基に変換することは合成的 に困難であるので、 次節ではα-アミノ酸を還元して得られるβ-アミノアルコールよ
り誘導されるオキサゾリジン不斉制御子を用いて、 立体遮蔽基の効果について検討し
た。ハHUρhU
第3節 キラルオキサゾリジンの不飽和アミドを用いる不斉ニトリルオキシド環状付 加反応
3-1 不斉ニトリルオキシド環状付加反応
第2章で合成した種々の置換様式をもっ3-アクリロイルオキサゾリジン2とべ
ンゾニトリルオキシドとの不斉環状付加反応について検討した。
4-フェニル誘導体C4R)一色とベンゾニトリルオキシドとの反応は、 前節で述べた 反応と同様に、o OCで塩化べンズヒドロキシモイルのジクロロメタン溶液にトリエチ ルアミンを加えることによりベンゾニトリルオキシドを調製し、 これを、 所 定 の反応 温度にまで冷却したC4R)-8aのジクロロメタン溶液に滴下することによって行った。
-50
ocにおける反応 C8時間)では、2種類の環状付加体旦呈が87 :13の異性体 比で得られ、 これらは互いに、 シリカゲルクロマトグラフィー操作により容易に単離、
精製が可能であったCScheme 3-7)。
グポポ ト十R
PhC(Cり=NOH
PhC三N j町
→0 日。
8a-1
1-11a-1 u-11a-1
a: R1 =加ie,R2=Ph,R3=H b:R12=(CH2)5R2=Ph,R3=H
2 ... ...3
c: R�=Me,RL=i-Pr,RJ=H 2 n.. r.TT ... 3 d: R� = Me, RL = PhCH2, R.) = H
e: R1=R3=恥fe,R2=PhCH2 f: R1 = Et, R2 = PhCH2, R3 =Me
g: R 1 = R2 = PhCH2, R3 =Me
2 .... r.TT ...3
h: R.l2 = (CH2)S. RL = PhCH2, R.) = Me i: R1 =恥fe,R22P}12CH,R3=H
2 �1 """ YT T""'IIt.�
J: R�2 = (CH2)S. RL = Ph2CH, R.) = H k: R 1 = Me, R2 2 = 9-Fluorenyl, R3 = H
1: R 1 = R3 = Me, R2 = iso-Butyl
Scheme 3-7.
ρnu
これらの立体異性体が、 イソオキサゾリン環の5位のキラリティーの違いに由来 する立体異性体であることを決定するために、江主のそれぞれの異性体の別途合成を 行ったCScheme3-8)。 すなわち、 まず、 ベン、ノ、ニトリルオキシドとアクリル酸メチ ルとの環状付加反応により、 メチル3-フェニルイソオキサゾリン-5-カルポキシラー
ト(12)を合成し、 エステル基を1N水酸化カリウムにより加水分解し、 さらに、 得 られたカルポン酸誘導体13を塩化チオニルにより酸塩化物旦へと誘導した。 トリ エチルアミンの存在下で、 4-フェニルオキサゾリジン不斉制御子rac-7aを酸塩化物 14でアシル化してrac-11aを合成した。
んH o 山
1) PhC三N→0 2) 1 N KOHaq
3)
SOCI2Ph
人へ(
Rhh k
Et3N
p o
12 (R=OMe) 13 (R=OH) 14 (R=CI)
rac-l1
diastereomer ratio =
1: 1Ph
人エγ タ。
HCI/ MeOH reflux Ph人A - � 1 fl I一\
OH1-11
wet CH2CI2
円
n
Ph
人人ì( �
OHu-ll
Scheme 3-8.
。ノUFhU
このようにして別途合成された rac-江主は、 立体異性体のほぼ1:1混合物であっ
た。 不斉環状付加反応により得られた江主と別途に合成した rac-斗豆のNMRスペ
クトルは完全に一致したので、 前述の不斉環状付加反応で得られた環状付加体の立体 異性体の混合物は、 イソオキサゾリン環の 5位の絶対配置の違いに基づく異性体で あると決定された。 上記環状付加体の2つの立体異性体の内、面IJ異性体u一旦亘は、
少量のトリフルオロ酢酸あるいは重クロロホルム中に僅かに存在する塩酸によって、
室温下でもオキサゾリジン不斉制御子部位が容易に加水分解を受けて、 アミドアルコ
ールu-15を与える。 これに対して、 主立体異性体1-11は、 これらの条件下ではな んら変化せず、 濃塩酸を加えたメタノール中で加熱還流することにより初めて加水分 解を受けて、1-15を与えた(Scheme 3-8)。 このように、 環状付加体の2つの立体 異性体には酸に対する安定性に著しい差が認められるが、 後述するように、 環状付加 体の安定配座の違いが化学的安定性に大きく影響している結果と考えられる。 従って、
不斉環状付加反応におけるジアステレオ選択性を 決定 する場合、 塩 酸を除いた重クロ ロホルムに反応粗生成物を溶かしてNlIR用サンプルを調製し、 直ちに測定に供した。
その結果をTab1e 3-1にまとめた。
オキサゾリジン不飽和アミド(4R)一也とべンゾニトリルオキシドとの環状付加反 応で観察された 87:13 のジアステレオ選択性は、 イミダゾリジンビスアミド
(4S,5S) -3を用いた反応の選択性と類似の値であった(エントリー1と4を比較)。
この事実は、 第2章で述べたように、(4S, 5S)-�と(4R)-8aのアクリロイル反応部 位の磁気的環境が類似していることから、 4位のフェニル置換基による遮蔽効率は同 程度であろうとの反応予想、を裏付ける結果であった。
つdnhU
Table 3・1. Nitrile Oxide Cycloadditions of 1,3・Diacryloyl・2,2-dimethylimidazolidine 3 and 3・Acryloyl・2,2・dialkyloxazolidines 8a-la
Entry Dipolarophile PhCNOb TempfC Time/h Product Yieldl%C Isomer ratiod
3, 8a-1 eqmv 9, l1a-1 L:u
3 3 -78 24 9 97 83: 17 (91 :9)e
2 3 3 。 5 9 quant 80:20 (90: 10)e
3 3 3 口 3 9 quant 80:20 (90: 10)e
4 8a 2 -50 8 lla 95 87:13
5 8a 0.7 。 2 lla quantf 85:15
6 8b 2 。 7 11 b 97 87:13
7 8c 1.25 口 0.5 llc 94 83:17
8 8d 。 8 lld 95 68:32
9g 8d -30 41 lld 78 (23) 70:30
10g 8e -30 42 lle 77 (21) 93:7
Cアコ 11 8e 。 16 l le 99 93:7
よ』
12h 8e 。 2 lle 99 93:7
13 8f -50 83 llf 88 86:14
14 8f 。 5 llf 88 81:19
151 8f 。 5.5 l 1f 87 82:18
16 8g 。 4 1 1g 99 83:17
17 8h 。 4 l1h 87 93:7
18 8h 口 l1h 99 90:10
19 8i 。 3 11 i 99 >99:1
20 8j 。 3 l1j quant >99:1
21 8j -50 70 llj 90 >99:1
22 8k 。 7 llk quant 76:24
23 81 。 9 111 quant 79:21
24g 81 -30 42 111 75 (18) 80:20
a) All reactions were performed in dichloromethane unless otherwise stated. b) Generated in situ仕om benzo-
hydroximoyl chloride and triethylanùne. c) Yield of the isolated mixture of diastereomers. The yield in parenthesis is for the recovered 8. d) Determined by 1 H NMR spectrum (270 MHz) or HPLC (Hib訂LiChrosorbR Si 60, Cica-Merck) of the crude reaction mixture. e) Ca1culated diastereofaciaI selectivity.
f)
Based on the benzohydroximoyl chloride used.g)
Quenched by 3-buten-2-one to trap the unreacted nitrile oxide. h) Solvent: hexane. i) Solvent: acetonitrile.3-2環状付加体の立体化学と化学的性質
得られた環状付加体旦亘の絶対構造を決定するために、 連結アミド結合の還元的 切断を行った(Scheme 3-9)。 イミダゾリジン環状付加体1, l-�からの不斉制御子の 除去と比較して、旦2の不斉制御子の還元的除去は温和な条件下で容易に進行するこ とが見いだされた。 すなわち、1-11aと水素化ホウ素トリエチルリチウムとのTHF 中での反応は、 室温で僅か5分間で完結し、 連結アミド結合が還元的に切断された アルコール(-)-10がほぼ定量的に得られた。 旋光度( [α]
D2
5 =-172.
80) 測定から、
その絶対配置は5Rと決定された。12) この(-)-10は、 キラルHPLCの測定により、
単一のエナンチオマーであった。 このように、 オキサゾリジン不斉制御子の還元的除 去は穏やかな条件下で短時間で行えるので、 イミダゾリジン不斉制御子の場合のよう な部分的ラセミ化が起こり難い長所を有する。
一方、 水素化ホウ素トリエチルリチウムによる、高IJ立体異性体u一江主からの同様
な不斉制御子の除去を試みたが、 複雑な生成物を与えるのみで、 連結アミド結合が還 元的に切断されたアルコール10は得られなかった。
Ph
人ムγ タ。
LiEt3BH THF 吋 Ph人�
OHSingle enantiomer
u-ll
LiEt3BH THF
円
complex mixture
Scheme 3-9.
「hdnhU
以上述べてきたように、 ベン、ノ、ニトリルオキシドの不斉環状付加反応で得られる環 状付加体it, 11は、 その立体化学の違いによって、 加水分解の受け易さに大きな差 異が認められる。 この化学的安定性の違いを考察するために、 それぞれの安定配座を 調べることにした。 Figure3-3に1,1-it, 1,u-it, 1-旦さおよび u-斗呈の lH
NMRスペクトルデータ(27 ocで測定)を示し、 Tab1e3-2にオキサゾリジン不飽和アミ
ドgから得られた環状付加体11におけるオキサゾリジンおよびイソオキサゾリン 環のプロトンの化学シフト値を示した。 第2章の不飽和アミド3, 8の配座解析の 結果を基にすれば、 これらから生じた環状付加体it, 11においても、 連結アミド結 合はsyn配座で安定化されていると考えてよい。
H m
のし
1-11a u-11a
A B
310(cjs) 306(cis) 328・3.47
401(ffans) 403(fmns) (cjs andwans)
1,1-9 l,u-9
C
Figure 3・3.
円huphu
イソオキサゾリン環の5位のプロトンは、主立体異性体1- 11a では δ = 4. 79、
副立体異性体u-旦旦では δ = 4. 99 と、 ほぼ同じ磁気的環境に位置することから 、 それらの最安定配座において イソオキサゾリン環のH-5 が 4位のフェニル基平面に 対しでほぼ似通った位置関係を占めていると予想される。 一方、 1一 江主のイソオキサ ゾリン環の4位のプロトンの内、H-4(trans)(δ = 3. 99 )はH- 4(cis)(δ = 3. 03)
よりも大きく低磁場シフトしており、 明ら か に前者は近接アミドカルボニル基によ
る磁気異方性を強く受けている(Figure 3-3, 配座主 )。 さ ら に 、 オキサゾリジン環 の4位のプロトンの化学シフト を比較すると、l一旦呈(δ = 5. 47)の方がu-斗亘(δ
= 5.
10 )のそれよりも 低磁場シフトしており、前者 が 近接イソオキサゾリン環の酸素 原子による磁気異方性の影響を受けている。 これらのデータは、Figure 3-3に 示し た最安定配座主の妥当性を支持するものである。
それぞれ の最安定配座をこ の よ うに推定すると、 これらの立体異性体の加水分解の され易さに差異があることがうまく説明 できる。 すなわち、副立体異性体u-11aの 最安定配座主では、 アミドカルポニル基酸素原子とイソオキサゾリン酸素原子の間 にプロトン が取り込ま れ易いため 、酸触媒下での加水分解が相対的により容易に起こっ たものと考えられる(Figure 3-3, 配座B)。 また 、 イミダゾリジン不飽和アミド 3 を用いた反応で得ら れた 1.1-.9.および1.u-9の各プロトンの化学シフトは、 前述の 1-斗亘およびu-11aの各プロトン のシフト値に近く、 イミダゾリジン不斉制御子と オキサゾリジン不斉制御子をもっ不飽和アミドから生成する 2-イソオキサゾリン環
状付加体は、窒素隣接炭素上に同じ遮蔽置換基をもっ場合は、類似の安定配座として 存在することがわかる(Figure 3-3, 配座C)。 他の4位遮蔽置換基をもっオキサゾ
リジン不飽和アミドから誘導された環状付加体の場合で も 、 オキサゾリジン および イ ソオキサゾリン環の化学シフト が類似の傾向を示す ことから (Table 3-2)、 同様に 立 体化学を議論できると考えてよい 。
-6 7-
Cアコ 0:コ
Table
3-2. lHNMR Spectra of the Major
1-lla-kand Minor Cycloadducts
u・lla・k.a
Product Oxazolidine's ring protons Isoxazoline's ring protons Ma
j
or/minor H-4 H-5 (cis)b H-5 (trans)b H-4' (cis)C H-4' (trans)C H-5' l-11a/u-l1a 5.47/5.10 4.44/4.41 3.97/3.98 3.03/3.48 3.99/3.48 4.79/4.99 l-11b/u骨llb 5.47/5.08 4.39/4.37 3.94/3.96 3.00/3.49 3.98/3.49 4.80/4.98 l-11c/u-l1c 4.23/3.90 3.99/3.98 3.99/3.98 3.36/3.46 4.12/3.87 5.35/5.23 l-lld/u-lld 4.61/4.27 3.97/3.80 3.89/3.94 3.04/3.50 3.98/4.12 4.78/5.41l-lle/u-l1e 4.27/4.25 _d _d 2.47/3.47 3.69/3.88 3.84/5.16
l-11f/u-llf 4.39/-e d _d 2. 64/-e 3.79/-e 4.21/-e
l-11 g/ u -11 g 4.51/4.12 _d _d 3.23/3.59 4.22/3.99 5.01/5.33
l-llh/u-llh 4.22/4.20 _d ←d 2.44/3.46 3.66/3.84 3.88/5.15
1-lli/u-l1i 4.98/-f 4.09/-f 3.86/-f 2.41/ーf 3.59/ーf 3.78/_f
l-llj/u-llj 4.94/-f 4.03/-f 3.83/-f 2.37/-f 3.55/-f 3.80/-f
l-11k/u-llk 4.25/4.63g 4.25/3.78g 4.25/3.28g 2.59/3.59g 3.81/3.91g 3.99/5.29g
l-ll1/u-lll 4.20/3.86 d _d 3.35/3.49 4.24/3.90 5.25/5.29
a)Measured at room temperature- b)The proton cis (or Irons)to H-5. C)The proton cis(or Irons)toH3. d) No仰向。nding hydrogen exists. e) Miñor p削uct shows broad叩山d
?
EI0mmCMmmons ηThe react10n was absolutely l-selective,no minor cycloadduct being fonned. g Signals of the syn-confOHner are given for u-llk .3-3
4位キラル遮蔽基による遮蔽効率
以上の結果、 オキサゾリジン不飽和アミド(4R)一也とべンゾニトリルオキシドと の不斉環状付加反応においても、 連結アミド結合がsyn/s-cis配座を占めた時、 ニ トリルオキシド がオキサゾリジン環の4位の置換基の反対側のジアステレオ面、 す なわち、 アクリロイル反応部位の re面から接近して反応が進行したことになる。 イ
ミダゾリジンビスアミド(4S,5S)-_aの場合と同様に、 アミド窒素の隣接位上のフェ ニル置換基によりアクリロイル反応部位の効率的な遮蔽が行えることが明らかとなっ た。
そこで、 オキサゾリジン不斉制御子2の4位の遮蔽置換基を種々変えて、 ベンゾ ニトリルオキシドとの双極性環状付加反応におけるジアステレオ選択性について検討 した。 まず、4-イソプロピルオキサゾリジンの不飽和アミド誘導体(4S)一色の室温 における反応で見いだされたジアステレオ選択性(83:17) は、4-フェニル誘導体色 との反応のそれに比較して少し低下し、 イソプロピル基は立体遮蔽置換基としては非 効率的であることがわかる(Table3-1. エントリー7)。
次に、4位の立体遮蔽置換基としてベンジル系置換基を選択した。 第2章で議論 したように、4位の置換基がベンジル系の場合には、 アクリロイル反応部位のプロト ンの磁気的遮蔽の程度を知ることにより、 この置換基による立体遮蔽の程度が推定で きるはずである。 磁気的遮蔽の大きさ、 すなわち、 アクリロイルプロトンの高磁場シ フトは、4-ベンジル誘導体包よりも、4-ベンジル-5, 5-ジメチル誘導体色および 4-ジフェニルメチル誘導体8i がはるかに勝っていることがNMR分析から明らかに なっている。
4 -べンジルオキサゾリジンのアクリルアミド誘導体(4S)一組とべンゾニトリルオ
キシドとのo OCにおける反応のジアステレオ選択性は、68:32と低い。 -30ocでの 同じ反応では70:30と若干向上したものの、 満足できる水準には程遠い(エントリ ー8と9 を比較)。 このように、 白の連結アミド結合回りでの配座異性体比は大き
くsyn配座側に偏っているものの(syn/anti
=94:6, -30 OC)、 4位の遮蔽置換基 による立体遮蔽が不十分であるために高い選択性が得られなかったものと考えられる。
なお、 今回の -30ocにおける反応も含めて、 低温でのニトリルオキシド環状付加反 応を飽和塩化アンモニウム水溶液で反応停止する際、 系中の温度が上昇して反応が急 激に進行し、 選択性の低下を招くことが危倶されたため、 高活性の親双極子であるメ
ハ斗dnhU
チルビニルケトンを反応停止剤として用いる新しいク エンチ法を適用した(エントリ ー9,10, 24 など )。
5位に2つ のメチル基を導入して遮蔽効率を高めた4-ベンジル-5, 5-ジメチル不 飽和アミド誘導体(4S)-8e では、o OCと比較的高い反応温度における反応でも、 5 位にメチル基をもたない(4S)-担と比較して、 著しい選択性の向上が見られた (93: 7 , エントリー8, 9と10, 11. 12 とを比較)。 第2章で行った配座解析の結 果、4-ベンジル-5, 5-ジメチル誘導体(4S)一色は、 配座安定性が測定温度にかなり依 存することが分かっているが、 期待に反して、 反応温度を -30 ocに下げてもジアス テレオ選択性はそれ以上向上しなかった。
著者が第2章で合成したキラル不飽和アミド誘導体2の内、 磁気的遮蔽効率の最 も高い4-ジフェニルメチル誘導体主とベンゾニトリルオキシドとの環状付加反応 では、 反応温度がo OCとかなり高いにもかかわらず完全なジアステレオ選択性が達 成され、 環状付加体11iが単一の立体異性体としてほぼ定量的に得られた(エント
リー19)。
一方、 連結アミド結合回りでの配座異性体比の著'しく低い4-(9一フルオレニル )オ
キサゾリジン不飽和アミド誘導体rac一位Csyn/anti
=71:29 ; 0 OC ) のニトリルオ キシド環状付加反応における選択性は、 予想、どおり76:24 と低かった (エントリー 22)。 この結果は、 配座異性体比を大きくsyn配座側に偏らせて制御することは、 高 いジアステレオ選択性を達成するための必須条件であることを意味している。
- 30 Ocで測定した 'H NMRスペクトルにおいて、4-ベンジル-5, 5-ジメチル不飽和 アミド誘導体(4S)一色のアクリロイル基プロトンの化学シフト、 すなわち磁気的遮 蔽効率は、 4-ジフェニル置換不飽和アミド 誘導体rac-8iとほぼ同程度であったにも 拘わらず、 反応において実際に観察されたジアステレオ選択性はかなり低下していた (93: 7 vs >9 9: 1. エントリー11 と19を比較 )。 この選択性の減少に対する一つの可 能な説明として、 フェニル基が平面的で厚みがないためアクリロイル反応部位とフェ ニル平面との問に隙聞が生じ、 立体的に嵩の小さいニトリルオキシドがこの隙聞をす
り抜けて反応したためと推測した。
そこで、 厚みをもったアルキル基を立体遮蔽基をもっ4-イソブチル-5, 5-ジメチル
不飽和アミド誘導体(4S)-包とベンゾニトリルオキシドとの反応を検討した。 4位 のイソブチル基は一級アルキル基なので連結アミド結合に関する配座異性体比は大き
-70-
くsyn配座側に偏っていて、 反応には都合がよいはずであるC2 0 0 : 1. 27 OC)。 しか し、 ニトリルオキシドとの環状付加反応において実際に観察されたジアステレオ選択 性は、 室温で 79:21. - 30 ocでも80:20と極めて低い値であり、 イソブチル基は立 体遮蔽基としては適当でないことが明らかとなった。
3-4 遷移状態の考察
以上の実験結果から、 c2対称性 イミダゾリジンのビス不飽和アクリルアミド 3お よびオキサゾリジンのアクリルアミド誘導体2においては、
1) 基底状態において、2位のアルキル基との立体反発を利用して、 連結アミド結 合の最安定配座をsyn一/s-cis配座に制御することができる。
2) ニトリルオキシドは4位(イミダゾリジンの場合は4および5位) の遮蔽置
換基の反対側のジアステレオ面から接近して反応する。
3)オキサゾリジン不斉制御子の遮蔽基としてはベンジル系の置換基がよく、 この 場合は5位にメチル基を導 入することで選択 性がl: u
=70:30からl:u
=93: 7 へと著しく向上する(エントリー9と10を比較)。
4)
4位の遮蔽置換基がジフェニルメチル基の場合には、o OCの比較的高温での反 応でも 100完ジアステレオ選択的な反応を達成することができる。
これらの選択性の向上は、 第2章で述べた lH NMR分析に基づいた遮蔽効率の予 測と一致する。 しかし、4-ベンジル-5, 5 - ジメチル不飽和ア ミ ド誘導体C4 S) 8e の - -30 ocにおける磁気的遮蔽の程度は、4-ジフェニルメチル誘導体8iのo OCにおけ る状態と非常に近いにも拘わらず、 前者の反応では 1 00完のジアステレオ選択性を達 成できなかった。 詳細は後述するが、 N-アタリロイル基のC (s
1 p 2) -c (s
2 p2 )単結合 でのねじれの差によるものと考えている。 また遮蔽基が 9-フルオレニル基の場合で は、syn/anti比および磁気的遮蔽の程度も共に低く、 ニトリルオキシドとの反応に
おけるジアステレオ選択性も 76:2 4と低い結果に終わった。
一方、 オキサゾリジン環の2位の置換基の役割について考察することにする。 効 率的な不斉誘導達成のためには、 連結アミド結合の配座をsy n/s-cis型に偏らせる ことが要求されることについては、 第2章の設計思想の項で述べた。 配座異性体比 syn/antiの syn側への制御の成否は主として2位と4位の置換基の相対的な嵩高 さに依存し、4位遮蔽置換基がベンジル基の場合には5位のメチル基の有無も重要
-71-
である。 しかし、4位の遮蔽置換基に何を選択しようとも、anti配座の反応への寄 与を完全に消去することは不可能である。 さて、syn/s-cis配座におけるアクリロイ ル基ジアステレオ面の一方は4位遮蔽置換基による立体遮蔽を受けるが、 他の面は 立体的にほぼ完全にオープンな状態にある。 これに対して、anti/s-cis配座におけ
るアクリロイル基の両ジアステレオ面は2位の置換基によって立体遮蔽されている。
従って、2位の置換基が嵩高くなることは、syn/anti 異性体比を増大させる方向に 働くのみならず、syn配座の関与した遷移状態におけるニトリルオキシド環状付加反 応の反応速度を低下させることとなろう。 これらは共に、 不斉誘導率の向上に寄与す ると期待される。
第2章で述べたように、 lH NVRスペクトルのケミカルシフトの比較を基にすれば、
2位の置換基がメチル基とぺンタメチレン基の場合とで、 アタリロイル反応部位への 磁気的遮蔽効率にはほとんど差が見られなかった。 事実、 ニトリルオキシド環状付加 反応において、 反応のジアステレオ選択性は2位の置換基による影響を受けていな い(エントリー5と6, 11 と17を比較)。 この結果は、 メチル基とぺンタメチレ
ン基とで立体的意高さに大差がないことで説明できるが、 2位の置換基をメチル基よ りも嵩高いエチル基あるいはベンジル基に置き換えた場合、 ニトリルオキシド環状付 加反応のジアステレオ選択性はむしろ低下してしまった(エントリー11 , 14, 16を 比較)。
4-ベンジル-5, 5-ジメチル誘導体8eと4-ジフェニルメチル誘導体8iとが、 -30 Ocにおいて同程度の磁気的遮蔽を示すにも拘わらず、 前者の反応において100児完 全なジアステレオ面選択性を達成できないのは、 N- アクリロイル基のC1CSp2)-
Cz
(Sp2)単結合間に生じるねじれのため、 ニトリルオキシドの遮蔽置換基側からの接 近を完全に阻止できないためであると推測した。 この作業仮説を確認するために、
4-べンジル-5,5-ジメチル誘導体色のMM2分子力場計算を行ってsyn配座異性体 に対する最適化構造を求め、 次いで、C1 CSp2) -C2 CSp2)単結合だけを所定の角度回転 させて生じる配座のエネルギー値を求めた。 その結果を、Figure3 -4に示した。
つムワl
.寸Emω』ロω一同
ド∞.めの
∞0.ON
OE\芯υぷO
守.ωF
o m守1
00のi
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。 ゆ.のN ゆ∞ド.F OF.∞戸 ∞∞.∞F のの.FN
一OE\芯υぷの0.ωF
o mド
00ω
om守
o Oの omF
qぺυ円,i
基質8eのねじれ角C(3)-C(2)-C(CO)- 0(CO)を 0とすると、 最適化構造において は矢印の方向から見てe
=23.60 となっている。 この角度から時計方向に15。 亥11 みで回転させた時のエネルギーの増加を計算した。 ただし、 それぞれのねじれ構造に 対しての最適化は行っていない。 計算の結果、 。が300 までのエネルギー増加は少 なく、 さらに75。 まで回転しでも5. 68 kca1/田01だけエネルギーが増加するにすぎ ない。
これに対して、 反時計四りに回転させた場合、 エネルギーの増加は著しく大きい。
このことは、 N- アクリロイル反応部位のC,(Sp2)ーし(Sp2)単結合は、 反時計回りに
は回転しにくいが、 時計回りには回転し易いことを示している。 従って、 効率的な磁 気的遮蔽を示す4-ベンジル-5,_5- ジメチル置換オキサゾリジン不飽和アミド8eとべ
ンゾニトリルオキシドとの環状付加反応においてジアステレオ選択性が予想通りに向 上しないのは、 反応の遷移状態において、 N- アクリロイル基のC, (Sp2) -C2 (Sp2)単 結合が時計回りに回転して、4位のベンジル立体遮蔽置換基による遮蔽効率が低下し てしまうためと結論づけられる。
』H1門Ie
第4節 キラルオキサゾリジンの不飽和アミドとニトロナートとの不斉環状付加反応 4-1 不斉ニトロナ-ト環状付加反応
第3節では、 主として、 オキサゾリジン不斉制御子をもっ不飽和アミド2を用い
たニトリルオキシ ド、 の不斉環状付加反応につ いて検 討 した結果を述べた。 天然の光学 活性α-アミノ酸に由来するオキサゾリジンのアクリルアミド誘導体の中で、 最も高 い不斉収率を示したものは4-ベンジル-5,5-テトラメチル誘導体色であり、 その時 のジアステレオ選択性は93:7 であった。 一方、 アシニトロアルカンのエステル構造 をもっニトロナートは、 直線形状のニトリルオキシドより嵩高い平面性の双極子であ り、 キラル不飽和アミド坐との環状付加反応での高いジアステレオ面選択性が期待 できる。 従って、 シリルニトロナートの環状付加反応を利用して光学活性な2-イソ オキサゾリンを合成する経路は、 不斉ニトリルオキシド環状付加反応の補完法となり 得るため、 合成化学的に興味がもたれる。
ニトリルオキシドの合成等価体であるシリルニトロナートは、 トリエチルアミン存
在下で一級ニトロ化合物と塩化トリメチルシリルとをo ocで反応させることによっ て容易に 調裂できる(Torssell法 )
0 18)この方法を利用して、 重クロロホルム中で ニトロエタンから発生させたアシニトロエタンのシリルエステルは、 単離することな
く測定した lHNMRスペクトルに基づけば単一の異性体であることから、 熱力学的に より大きな安定性をもっE異性体が優先的に生成していると思われる。 ニトロエタ ン、 ニトロメタンから発生させたシリルニトロナート16(R
=Me, H)とキラル不飽 和アミド邑,Q,豆,よとの環状付加反応は、o OCではほとんど進行しなかったので、 す べて過剰のニトロナート(8当量 )を用いて室温下で行った(Scheme3-10) 。
得られた シリルニトロナート環状付加体江主.Q,�, iおよびll_は すべて2種類 の立体異性体の混合物であった。 環状付加体のイソオキサゾリジン環の3位と5位 に新しいキラリティーが生成しているので、 上の反応では、 これらの閣の相対立体配 置を同じくする2種類の立体異性体が得られたものと予想されたが、 確証はない。
環状付加体は、 触媒量のp-トルエンスルホン酸(PTSA)と共に処理すると直ちに脱 シラノール化して、2-イソオキサゾリン誘導体盟主,Q,豆, 1および20に変換される。
後者の複素環化合物盟, 20はニトリルオキシド環状付加体に相当するので、 立体異 性体の lHNMRスペクトルに基づく構造決定は、 前節で確立した方法に従えばよい。
そこで、 不確かな3位のキラリティーを消去してジアステレオ選択性を決定するた
-75-
R�N02 lMe3SiCl
Et3N
日R3 rγN)ぐ。
一 い 。
8a,b,e,i /-17 a,b,e,i
/-18a,e (R = H)
u-17a,b,e,i u-18a,e (R = H)
ドTsOH Et20
。
O C
日 。 日 。
/-19a,b,e,i /-20a,e (R = H)
u-19a,b,e,i u-20a,e (R = H)
Scheme 3-10.
めに、 シリルニトロナート環状付加反応の後直ちに、 環状付加体17, 18を5
mo1郊のPTSAとo OCで5分間処理した後、 反応停止処理して、 反応粗混合物のlH
NMRスペクトルを測定した。 この方法に従って決定した19, 20についてのジアステレオ 選択性と、 幾つかの17, 18についての選択性をTab1e 3-3にまと めた。
第3節で述べたように、 オキサゾリジンアクリルアミド誘導体8とニトリルオキ シドとの不斉環状付加反応で生成する環状付加体且の副立体異性体u-11は、 主立 体異性体1-11と 比較して格段に加水分解を受け易いこと が分かっている。 そこで、
例えば江主のPTSAに よる脱シラノール化反応の条件下において、 生成した副立体 異性体u-盟主が速やかに加水分解を受けて u-主主に変化してしまうため、 実際に測 定した立体異性体比が不正確になる事が懸念されたがCScheme 3-11)、 重クロロホル ム中当量のPTSAの存在下で、 u-1ge はo OCでは長時間の経過の後でもほとんど加
-76-
u-1ge
p-TsOH
CDCI3 吋J 4day
quant
Scheme 3-11.
N
-01 苧
eMe
,)(_ムγ1
0H水分解されないことが明らかとなった。 室温条件下では少しづ、つ分解するものの、 完 全に加水分解してu-1geが消失するまでには4 日間の日数を要する。 従って、 PTSA 処理によって2-イソオキサゾリンに誘導した後でのジアステレオ選択性の評価には、
何ら問題は生じない。
ニトリルオキシドとの環状付加反応で100郊のジアステレオ選択性を達成できた
4-ジフェニルメチル置換不飽和アミド8iとの反応は、 予想に反して、 低い選択性に 終わった(エントリー4)。 また、 4-ベンジル-2,2, 5, 5-テトラメチル誘導体8eでも、
多少の選択性の低下が観察された(86: 14, エントリー3)。 一方、 ニトリルオキシド 環状付加では選択性の低かった4-フェニル誘導体8aが、 ニトロナートとの反応で は最も高いジアステレオ選択性(90:10) を示した(エントリー1)。 今回もまた、 オ
キサゾリジンの2位の置換基はジアステレオ選択性に大きな影響を与えなかった (エ ン トリー 1 と2 を比較)。 ニトロメタンから調製したシリルニトロナートの親分子 は、 ニトロ エタンからのニトロナートとの反応と比較 して、 選択性には大差はないも
のの、 反応時聞を大きく短縮することができる(エントリー5 と 6を比較)。
以上述べたように、 オキサゾリジンの不飽和アミド8とシリルニトロナートとの 不斉環状付加反応によって、 高収率でN-シリルオキシイソオキサゾリジン体17, 18 を合成することができた。 また、 これらの環状付加体17, 18は、 プロトン酸によっ て容易に2-イソオキサゾリン誘導体19, 20 に変換できるので、 シリルニトロナー
トはニトリルオキシドの合成等価体として有用な双極子であると言えよう。
-77-
-...:J cxコ
Table 3・3. Silyl Ntronate Cycloadditions of 3・Acryloyl・2,2-dialky loxazolidines 8a,b,e,i
VR3 グYX
8a,b,e,i
>=ぐ 只 トー十
13R人À(ソ ps
HEa: R 1 = Me. R2 = Ph.
R'
= H b: R12 = (CH0s. R2 = Ph,R'
= He: R1 = R3 = Me, R2 = PhCH2 i:R1=Me,R2=PhCH,d=H
Entry Dipolarophile Silyl nitronatesa Time/h Product 17, 18
R Isomer ratiob
(l:u)
8a Me
12
17a90:10
2
8b Me9
17b86:14
3
8e Me12
17e85:15
4
8i Me11
17i81:19
5
8a H 18a6
8e H0.7
18e/-19a,b,e,i /-20
(R = H)Product 19,20
Isomer ratiob
(l:u)
Yield/%C19a
89: 11 90
19b
88:12 96
1ge
86:14 95
19i
96
20a
91:9 87
20e
86:14 65
a) Generated in situ from nitro compounds, trimethylsilyl chloride and triethylamine
(0
oC,30
min,�ic�lo�om�th�me).
�)
.I?eterrnined by _1 � N�13-spectrum
(270
MHz) of the cn此reaction mixture. c) Yield of the isolated mixture of diastereomers of 19 or 20.4-2 環状付加体の立体化学
得られた 環状付加体盟の立体化学を、 ニトリルオキシドとの環状付加反応で行っ たように、 還元的に連結アミド結合を切断して イソオキサゾリン-5-メタノール誘導 体へ導いた後、 旋光度の測定により決定しようと計画した。 還元剤として水素化ホウ 素トリエチルリチウムを用いたが、 目的とした還元体を得る ことができなかった
CScheme 3-12)。 また、 還元剤としてビス(2-メトキシエトキシ)水素化アルミニウム ナトリウム(Red-Al) を用いても同様な結果となった。 そこで、 ニトリルオキシドと の環状付加反応で得られた主、 副立体異性体1-, u-11とのlH NMR スペクトルの比 較を行って、 19の2-イソオキサゾリンの5位の立体配置を推定した。 そ の 結果を Table 3-4にまとめた。
その結果、 シリルニトロナート環状付加体 17. 18の脱シラノールで得られた 2- イソオキサゾリン盟. 20の2つの立体異性体は、 ベンゾニトリルオキシドとの環 状付加反応で得られた 11の2つの立体異性体とほぼ類似したスペクトルパターン を示した。 このことは、 上述のスペクトルを基にした19の立体配置の決定が正しい
ことを意味している。 そこで、 N-アクリロイルオキサゾリジン誘導体8とシリルニ トロナートとの不斉環状付加反応でもやはり、 ニトリルオキシド環状付加で選択され
たと同じジア ステレオ面が選択されて反応に与かったと結論できる。
M
e心γ ヲ。
l-19a
LiEt3BH
or
Red-AI
lド
Scheme 3-12.
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M
メ�
OHTable
3・4. l H
NMR Spectra of the Silyl Nitronate Cycloadducts 19, 20 an d Nitrile Oxide Cycloadducts11
a日 。
r---\
ーoI一て
Ph 人 へ f V Ph 人 へ f v
/-19a,b,e,i /-19a,b,e,i /-11a,b,e,i u-ll a, b, e, i
00 /-20
(R
= H) /-20(R
= H)Cこ〉
Product Oxazolidine's ring protons Isoxazoline's ring protons Mり0[,ル1jnor H-4 H-5
(cis)b
H-5(trans)b
H-4'(cis)C
H-4'(trans)C
H-5'/-19a/u-19a 5.39/5.03 4.41/4.37 3.94/3.94 2.63/3.10 3.52/3.01 4.61/4.79 /-
l l
a/u-l l
a 5.47/5.10 4.44/4.41 3.97/3.98 3.03/3.48 3.99/3.48 4.79/4.99 /-19b/u-19b 5.40/5.01 4.37/4.33 3.92/3.93 2.62/3.10 3.51/3.01 4.62/4.79 /-l l
b/u-l l
b 5.47/5.08 4.39/4.37 3.94/3.96 3.00/3.49 3.98/3.49 4.80/4.98/-1ge/u-1ge 4.21/4.17 d _
d
2.10/3.09 3.21/3.46 3.69/5.00/-
l l
e/u-l l
e 4.27/4.25 _d
_d
2.47/3.47 3.69/3.88 3.84/5.16/-19i/u-19i 4.89/4.67C 4.05/4.10e 3.82/4.10e 2.02/2.75e 3.09/3.10e 3.63/3.98e
/-
11
i/u-l
1i 4.98/-[ 4.09/-[ 3.861ーf 2.41/3 3.59/-[ 3.78/-[/-20 /u-20 5.41/4.99 4.41/4.39 3.95/3.97 2.68/3.15 3.61/3.15 4.59/4.98 a)Measured at room temperature-b)The proton
cis
(orIrans)to
H-5. C)The protoncis
(ortmm)
to H-7.d) No co汀espo�di�g �ydrogen .exists.
�)
S_Îþnals of the syn-conformer are give� for u-19i� f) Th; reaction was absolutely /-selecrive, no minor cycloadduct being fo口ned.また、 1一江主の 3位の立体化学の決定はNOE測定に従って行い、 その結果を Figure 3-5に示す。H-5' (δ = 4.57)とH-4'(4' -5' (cis) ;δ = 1. 80)および 日-4'(4' -5' (trans) ;δ = 2. 50) とH-3' (δ = 3. 45) の間に顕著なNOEが観測さ れたことから、 l一江主の立体配置はFigure 3-5に示した通りである。 一方、 u-17a の4'位の 2のメチレンプロトンは互いに化学シフトが近く(δ = 2. 22, 2. 26)、
NOEによる構造決定を行うことができない。 そこでu-17aのそれぞれの結合定数を 1-江主のそれらと比較することにより、 立体配置を決定した。 以上のことから、
l一江主は シリルニトロナートがオレフィンの re面に endo接近して得られた環状 付加体であり、 u一江主は Sl面に endo接近した環状付加体であることが明らかになっ た。
NOE 1-17a
日
u-17a
43i OKU
J 3'-4' = 10.9 Hz (trans) 13・4・=7.3 Hz (cis) 15・-4'= 9.5 Hz (cis) 1 5'-4' = 2.9 Hz (trans)
13・4・= 10.6 Hz (trans) 13・-4'=7.7 Hz (cis) 1 5'-4' = 9.2 Hz (cis) ] 5'-4・= 4.0 Hz (trans)
Figure 3・5.
4-3 ニトロナート環状付加体の変換反応
結局、 光学活性な3-アクリロイルオキサゾリジン誘導体2とシリルニトロナート との不斉環状付加反応では、 ジアステレオ面の選択の違いによる2つの立体異性体
立, 18が得られた。 予想、に反して、 選択性はニトリルオキシド環状付加反応のそれ と比較して著しく向上したとは言えなかった。 しかし、17, 18の立体異性体はシリ カゲル上でのカラムクロマトグラフィー操作により、 それぞれのジアステレオマーに 容易に単離、 精製することができるので、 合成化学的利用の見地からは問題はない。
そこで、 ニトロナート環状付加体の変換反応の検討に歩を進めた。
通常、 N-シリルオキシイソオキサゾリジンのフッ素イオンによる脱シリル化反応で は、2-イソオキサゾリンが生成することが知られている。1
6 -1 7)しかし、 シリルニト ロナート環状付加体である1-江主を触媒量(30皿01先) のフッ化テトラブチルアンモ ニウム(TBAF) と処理すると、 脱シラノール化生成物である2-イソオキサゾリン誘 導体1-盟主ではなくて、 オキシムアルコール1-22aがほぼ定量的に得られた
(Scheme
3-13)。
この異常反応は、 基質アミド江主の特別に嵩高いアミン構造に起因する特異的反 応性によるものであることが見いだされた。 すなわち、 N-アクリロイルピロリジン 24とシリルニトロナートとから合成したイソオキサゾリジン誘導体25をTBFAと
処理した結果、 オキシムアルコール体はまったく得られず、 脱シラノール化生成物で ある2-イソオキサゾリン誘導体26が高収率で得られた(Scheme3-14)。 この反応 の差異を引き起こした直接の要因は、立さが開環することによって、 イソオキサゾリ
ジン環とアミド窒素隣接炭素上の置換基(2位の2つのメチル基と4位のベンジル 基)との聞に働く反発的非結合性相互作用が大きく軽減されためと考えられるが、 詳
しいことは不明である。
η/u nxu
1-17a
HO_ P�
. __ . _. . -N OH
i-ー「fトBU4NF (30 mol% ご ) _A_ .A. ....N‘ �O
H i '. I \ M e'
�'w'" '-..../
THF 11 八
o
Mé Me 1-22a
Me 人へf Q。
�'Y'V � .._ .__ ._. . -N い--y
じ1 t mo ェ ) H人人 出〉
Scheme 3-13.
Z:E = 58:42。 ぺ 。
Me
0・>=ぐ H OSiMe3
83%
Me γ 。 fトBU4NF (30 mol%)
THF
940/0
24
ょエy()
26
Scheme 3-14.
さ て 、 アシニトロエタンから誘導されたニトロナート環状付加体1 - 17 a をTBAF で処理して得られるケトキシムアルコール体1-22豆は、 単一の立体異性体であった
(1
HNJlRおよび 13C NJlRによる)。 一方、 アシニトロメタンからのニトロナート環状 付加体1-18をTBFAで処理すると、 アルドキシムアルコール誘導体1-23の幾何異 性体の混合物が得られたCScheme 3-13)。 その異性体比は、 lH NJlRの測定によると、
Z:E