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商業資本と商品価値 (1) : 物神性論の視座から

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Academic year: 2021

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はじめに

(1) 商業資本論と物神性論との結びつきは,マル クス経済学のなかで古くから論じられてきた。 その代表例の一つに,商業資本と「それ自身に 利子を生むものとしての資本」との関係にかん する宇野弘蔵の議論がある。宇野は,企業利潤 が資本家的活動の成果であり,それを超える利 子部分が資本所有の果実であるという物神崇拝 的な観念は,資本家的活動の根幹をなす売買業 務が商業資本によって代表・代位されることで はじめて確立しうるものと論じた。この観念は, 商業資本を利用しない産業資本をも含めた全て の資本に波及され,資本主義社会の通念として の普遍性を帯びるに至る。その結果,資本主義 社会の純粋の理念としての「それ自身に利子を 生むものとしての資本」が媒介され,この理念 が特定の条件の下では株式会社制度として具体 化されるというのである。また以上の見解から, 商業資本論はマルクスのように信用論(利子生 み資本論)の前の位置に置かれるべきではなく, 後の位置,信用論(貸付資本論)と「それ自身 に利子を生むものとしての資本」論との中間の 位置に置かれるべきであると主張された。こう した宇野の見解ないし主張は,ある時期までは マルクス経済学のなかで一定の支持を集めてき たといってよい。 しかし今日では,宇野説に即して商業資本論 と物神性論との結びつきを論じようとする論者 は,宇野学派の間でも少なくなっている。一つ には,原理論では株式資本や株式市場を説くこ とはできないという宇野の見解にさまざまな異 論が提示され,原理論のなかで資本市場論を展 開するための方法が模索されるようになった結 果,「それ自身に利子を生むものとしての資本」 という項目自体が次第に影の薄いものになって いったという背景がある。しかし,それだけで はない。より決定的であったのは,商業資本論 (あるいはそれを含めた市場機構論)のなかに 物神性論的視角からの考察を交えるというマル クスや宇野の方法自体に,根本的な疑義が提示 されるようになったことである。その代表例の 一つに,宇野説を子細に検討・批判した山口重 克の議論がある。 山口は,商業資本論と信用論との前後関係は, 商業機構と信用機構とのどちらがより高度な物 かに求められなければならない。資産の物神性は,貨幣の物神性の発展形というよりはむ しろ商品の物神性の発展形であるが,商品の物神性にたいする宇野の評価はきわめて否定 的なのである。ただその点では,価値実体論に依拠したマルクスの「商品の物神的性格」 論も有効な代案とはならない。商品の物神性は,価値実体の内属性という内容ではなく, あくまで「価値=交換性」の内属性という内容で押さえられるべきである。 宇野の流通形態論は,無規律な市場像を構築することを意図したものであった。しかし その市場像と,宇野の商業資本論のなかで描き出される市場像との間にはかなり大きな乖 離がある。マルクスも宇野も,生産価格で売る以外にないという一物一価的な市場像をベ ースにして,その市場像に適合した「普通の商業」のみを取り上げて商業資本論を展開し ている。こうした展開方法では,商業資本の投機性を考察することは最初から困難となら ざるをえないのである。 JEL 区分:B11,B14,B24,B40,B51,L81

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