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中小企業流通業務効率化促進法成立までの経緯と同法の持つ意味

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(1)

論 説

中 小 企 業 流 通 業 務 効 率 化 促 進 法 成 立 ま で の

経 緯 と 同 法 の 持 つ 意 味

中 田 信 哉

1 1はじめに

中小企業庁では平成三年一〇月に施行された﹁中小企業流通業務効率化促進法﹂(以下︑

(1)理由については後述する)についてその成立までの経過を以下のようにまとあている︒

(答申)

平成三年九月︑一五日

一〇月八日 ﹃物流効率化法﹄と略す︒その

産 業 構 造 審 議 会 流 通 部 会 ・ 中 小 企 業 政 策 審 議 会 流 通 小 委 員 会 合 同 会 議 の 下 に 物 流 問 題 小

委 員 会 を 設 置

第 一 回 物 流 問 題 小 委 員 会

物 流 問 題 小 委 員 会 の 下 に 中 小 企 業 分 科 会 を 設 置

第 一 回 中 小 企 業 分 科 会

(2)

商 経 論 叢 第29巻 第1号

一二日

一八日

一九日

一月八日

一九日

一耳三日

平成四年一月︑三一日

(法律)

平成四年三月一〇日

四月二二日

二四日

五月二一日

二五日

第 ︑ 一回 中 小 企 業 分 科 会

第 二 回 物 流 問 題 小 委 員 会

第 三 回 中 小 企 業 分 科 会

第 四 回 中 小 企 業 分 科 会

﹁ 中 小 企 業 の 物 流 問 題 に つ い て ﹂ 報 告 書 取 り ま と め

第 三 回 物 流 問 題 小 委 員 会

第 四 回 物 流 問 題 小 委 員 会

第 五 回 物 流 問 題 小 委 員 会

産 業 構 造 審 議 会 よ り

﹁物 流 効 率 化 対 策 の 総 合 的 推 進 に つ い て ﹂ 中 間 答 申

中 小 企 業 政 策 審 議 会 よ り

偏 物 流 効 率 化 対 策 の 総 合 的 推 進 に つ い て ﹂ 意 見 具 申

﹁中小企業流通業務効率化促進法案﹂閣議決定︑

衆議院商工委員会審議︑採決(全会一致で可決)

衆議院本会議審議︑採決(全会一致で可決)

参議院商工委員会審議︑採決(全会一致で可決)

参議院本会議審議︑採決(全会一致で可決)

国 会 提 出

(3)

中小 企 業 流通 業務 効率 化 促 進 法 成 立 まで の経 緯 と同法 の持 っ意 味  

3 (制令)

平成四年

(省令)

平成四年 五月二九日公布

一〇月一日施行

八 月 = 日

一四日

九月二五日

三〇日

C

九月三〇日

﹁中 小 企 業 流 通 業 務 効 率 化 促 進 法 施 行 令 ﹂ 閣 議 決 定

﹁中 小 企 業 流 通 業 務 効 率 化 促 進 法 施 行 令 ﹂ 公 布

﹁中 小 企 業 流 通 業 務 効 率 化 促 進 法 の 施 行 期 日 を 定 め る 政 令 ﹂ 閣 議 決 定

﹁ 中 小 企 業 流 通 業 務 効 率 化 促 進 法 の 施 行 期 日 を 定 め る 政 令 ﹂ 公 布 施 行

﹁ 中 小 企 業 流 通 業 務 効 率 化 促 進 法 施 行 令 ﹂ 施 行

﹁中 小 企 業 流 通 業 務 効 率 化 促 進 法 施 行 規 則 ﹂ ︑ ⁝ 中 小 企 業 保 険 法 施 行 規 則 及 び 中 小 企 業 近

代 化 資 金 等 助 成 法 施 行 規 則 の 一 部 を 改 正 す る 省 令 ﹂ 官 報 掲 載

(基本指針)

平成四年一〇月一日中小企業近代化審議会に対し︑通商産業大臣から基本方針案について諮問

六日中小企業近代化審議会において審議︑原案のとおり答申

一五日公表(告示)

以上のとおりであるがこれによって当初の答申からわずか一年で通商産業省と運輸省が共同で立案し︑国会(第一

.一三国会)に提出された物流効率化法は実現を見たのである︒立案・提出は確かに通商産業省と運輸省の共同というこ

とになっているがこの経緯を見ても分かるようにこの法律は巾小企業庁がセ体となって作成したものである︒それも

(4)

ごく短い時間で行なわれている︒

本論ではこの物流効率化法がどのような考え方で発案され︑どのような議論の中で日の目を見ることになったの

か︑そしてそれはどのような目的を持つものであるかを論じてみたい︒

H発端となる答申

発端となる前記﹁物流効率化の総合的推進について﹂(中間答申)は以下のような構成となっている︒

はじめに

1我が国物流の現状と問題点

(1)物流量の急増

(2)物流の質的変化

(3)物流供給面の変化

(4)物流の需給不均衡

(5)物流コストの上昇

(6)外部不経済・エネルギー消費の状況

2物流に対する取組みの現状

(1)事業者の取組みの現状

(2)中小企業の物流を巡る状況

(3)物流規格の現状と課題

(5)

中小企業流通業務効率化促進法成立までの経緯と同法の持っ意味  

5 (4)情報化の現状と課題

(5)物流関係インフラの現状と課題

3物流を巡る諸問題に対応する基本的考え方

(1)経済活動の変化に対応した﹁物流システム化﹂

(2)物流の需給不均衡への対応

(3)物流の需要面での合理的対応

(4)物流供給面の対応

(5)外部不経済・省エネルギーの観点からの対応

4物流効率化対策の総合的推進

(1)事業者の取組みの方向

(2)行政に求められる対応策

(3)物流の供給面の拡大

(4)外部不経済・省エネルギーへの対応

(5)革新的な技術開発・システム開発

(6)物流効率化対策の総合的推進のための体制整備

資料

物流問題小委員会の審議経過

物流問題小委員会中小企業分科会の審議経過

(6)

産 業 構 造 審 議 会 流 通 部 会 ・ 中 小 企 業 政 策 審 議 会 流 通 小 委 員 会 合 同 会 議 委 員 名 簿

産 業 構 造 審 議 会 流 通 部 会 ・ 中 小 企 業 政 策 審 議 会 流 通 小 委 員 会 合 同 会 物 流 問 題 小 委 員 会

委 員 名 簿

(2)以上であるがこの内容や趣旨については既に述べてある︒

簡単にそれをまとめてみるなら﹁我が国の物流は︑生産活動の多様化・高度化に伴い︑質量ともに大きく変化して

いる︒その結果︑物流需給の不均衡︑物流コストの上昇︑非効率な物流システムの顕在化︑外部不経済など様々な問

題を惹起している﹂との理解から﹁物流は︑種々の経済活動の中で生じるものであり︑その変化は企業活動・消費者

行動の変化に伴い生じている﹂ものであるために﹁物流問題をトータルな社会システムの一環として評価していく視

点が︑事業者にも行政にも求められる﹂ということから﹁物流需給は多種・多様であることから︑﹃物流システム化﹄

達成のためには︑幅広い各種の対策を組み合わせ︑これを総合的に推進していくことが必要かつ有効であり︑また︑

(3)外部不経済の深刻化を回避する観点からも︑これらの対策を推進すべきとの考えを示している﹂ということである︒

問題は中小企業についてである︒この中間答申の中で中小企業問題はどのように取り扱われているのであろうか︒

(4)まず︑輪物流の需要面での対応﹂について以ドのような記述がある︒

﹁また︑中小企業の共同化・組織化が物流の合理化を図る上で重要である︒すなわち︑中小企業は経営幕盤が脆弱で

あり︑効率性を上げるだけの物流量の確保が困難であること等により︑物流を巡る環境変化に的確に対応することが

難しい状況にある︒このような中小企業が効率的な物流を行なっていくためには︑複数の中小企業が共同することに

より︑各事業者の資金調達力を糾合し積極的な物流効率化投資を実施していくとともに︑効率性を上げるたあの物流

量を共同して確保していくことが重要である︒(中略)複数の多様な中小企業が共同物流センターを設置すること等に

(7)

中 小 企 業 流 通 業 務 効 率 化 促 進 法 成 立 まで の経 緯 と同 法 の持 っ 意 味  

7 より共同物流加工・共同輸送等を実施し︑共同物流情報ネットワークを構築する等︑積極的な物流効率化投資を実施

していくことは︑中小企業自身の物流の効率化にとって極めて効果的であるとともに︑こうした対応は︑全体として

の物流の合理化の実現にも資すると考えられる﹂

(5)このような認識に基づいて﹁行政に求められる対応策﹂として以下のように述べている︒

﹁中小企業が共同して︑共同配送や共同物流加r等の物流効率化事業を実施することは︑その中小企業にとっては︑

投資規模・内容いずれの面においても︑その後の事業活動の成否に係わる重大な投資である︒したがって︑行政とし

ても︑このような中小企業の取り組みが円滑に遂行できるよう︑事業の実施内容や方法︑実施時期︑資金調達方法等

に関する十分かつきめ細かな指導・助言を行なうとともに︑多大な資金負担を踏まえた金融面・税制面からの支援を

行なう等︑積極的・抜本的な支援措置を講ずることが求められる﹂︒そして︑次のように言うのである︒﹁このような

支援策関連では︑工場団地・卸商業団地の集団化事業等に対する高度化資金助成措置等があるものの︑中小企業の共

同による物流効率化の取り組み自体に着目して手厚く支援する施策はこれまでなかったため︑新たな立法措置による

抜本的な支援策を講ずることが重要である﹂︒

ここで﹁新たな立法措置﹂というものがうたわれているのである︒この答申から﹁物流効率化法﹂が生れたといっ

て良いであろう︒ただ︑ここでいくつか明らかにしなければならないことがある︒一つはこの答申で述べられている

中小企業問題はボリューム的には少ないにもかかわらず︑いきなり立法措置が出てきていることに関する疑問であ

る︒もう一つの問題はこの合同会議の審議の過程において平成三年九月二五日に第一回の﹁物流問題小委員会﹂が開

かれ︑すぐその直後の一〇月八日に﹁中小企業分科会﹂が開かれていることである︒つまり︑初めから中小企業問題

を別に大きく取り扱うことが決まっていたと言うことであろう︒

(8)

そこで次に﹁中小企業分科会﹂について見ていくことにしよう︒

皿 中 小 企 業 分 科 会 の 内 容

﹁中小企業分科会﹂は前記門物流問題小委員会﹂の下部機関である︒ここでなされた議論は﹁報告﹂として小委員会

(6)に提出されるものである︒ここでの認識は以下のようになっている︒

﹁我が国では物流は︑これまで基本的に︑製造︑販売等に付随する行為としてみなされてきたこともあり︑とりわけ

中小企業においては物流に着目してこれを合理的・効率化しようとの試みは︑必ずしも十分になされず︑また︑自主

的に行いづらい状況にもあった﹂

そして︑近時の物流量の伸びを指摘した後にこのように言う︒﹁これら物流のいわば質・量双方に係わる需要の増大

は︑我が国の物流量の約八割を占めている中小企業の物流にも当てはまる傾向であるが︑特に中小企業は︑取引にお

ける力関係の弱さのために︑以下に述べるように︑物流の内容について納品先や荷主事業者から一層厳しい要求を受

けることが少なくない﹂

﹁以下に述べる﹂というところでは﹁多頻度小口配送の進展﹂と﹁物流内容の高度化﹂について例を挙げて示してい

るがいずれにせよ︑状況の変化に中小企業が対応しずらいことを言っている︒

(7)こういう状況の中で中小企業には大きな問題が生れていると言い︑その内容として次の二つのことを上げている︒

1中小企業の対応能力の限界

2中小企業の物流コストの上昇及び配送・取引の停止

(8)そういう中で中小企業が適切にその状況に対応できない理由としてこの報告では次のことをあげている︒

(9)

中小企業流通業務効率化促進法成立までの経緯 と同法の持っ意味  

9 まず︑﹁物流条件及び流通コストの算定方法の不明確性﹂である︒﹁取引先との物流条件の契約状況について︑﹃すべ

ての取引先と契約﹄しているものは︑中小製造業で6・4%︑中小卸売業で3・3%とごくわずかであり︑﹃全く契約

していない﹄とするものも約5割に上っている﹂と言い︑﹁また︑物流コストの算定に当って﹃物流作業に係わる全費

用を抽出﹄して行なうものは︑中小製造業で3・2%︑中小卸売業で6・7%とごく少数であり︑納品する中小企業

において物流に係わる適格なコスト計算を行なっていない場合︑あるいは納品先の事業者の物流コストの算定方法と

異なる場合が多く︑その結果物流コストを適正に評価し支払ってもらえない中小企業が少なくない﹂と説明している︒

この結巣︑﹁このように物流条件が明確にされていないたあ︑取引における力関係を利用した急場の納品・輸送要求

や一方的な返品(納入業者に責任のない汚損商品の返品︑納入業者が再販売不可能な商品の返品︑月末又は期末の在庫調整のため

の返品︑店舗又は売り場の改装に伴う返品︑納入先の販売予測の見込み違いによる返品等)がなされることがある︒これらが納

品︑配送する中小企業の物流コストをさらに上昇させ︑中小企業の物流状況の悪化に拍車をかける結果となっている﹂

と言うo

次には﹁中小企業の物流効率化投資の困難性﹂である︒﹁中小企業は︑物流を巡る状況の変化に直面した場合であっ

ても︑経営基盤が脆弱であり︑十分な資金調達力を持たないため︑物流対策として積極的に設備投資を実行すること

が困難である﹂としている︒さらに﹁中小企業は︑単独ではその取り扱う物流量が大企業に比べて少ないため︑設備

投資を行なって効率性を上げるだけの規模が不足している﹂という﹁物流量確保の困難性﹂が上げられ︑そのほかに

﹁物流関連施設用地の確保難及び施設整備の制限﹂や﹁その他の中小企業特有の諸要因﹂が上げられている︒この諸要

因としては﹁生業性・家業性﹂﹁特定取引先への依存性﹂﹁地域密着性﹂﹁人材不足﹂等が上げられている︒

(9)こうした中小企業の特性を分析した上で﹁中小企業の物流問題への取り組みと課題﹂を掲げている︒

(10)

そこで﹁中小企業が現下の物流を巡る状況に対応していくに当たっては﹂次の二つのことが考えられるとしてい

る︒

1自ら物流の効率化を図り︑多頻度小口配送等の増大する高度な物流内容の要求への対応能力を向上させること

2納品先の事業者との間で物流に係わる取引条件を明確にし︑物流内容に関する行き過ぎた要求を排除するとと

もに︑物流コストの適正な負担を求めること

この取組みについて二つの方向があるとしているがそれは﹁個別の中小企業による取組み﹂と﹁中小企業の止ハ同に

よる取組み﹂である︒ただ︑これについて﹁個別の取組み﹂は簡単に項目が上げられているに過ぎないが﹁共同によ

るもの﹂については八ページにわたって共同化の方向が詳細に述べられている︒

それは﹁巾小企業が単独で効率化を行なうよりも︑複数の中小企業が共同して物流効率化を行なうことによって︑

輸送ロットの人口化︑帰り便の活用︑交錯輸送の回避等が可能となり輸送効率の向上の効果も大きいものになる﹂と

述べられているように明らかにここでは﹁中小企業の共同化﹂こそが求められるべきだという方向が示されているこ

とが分かる︒それは﹁複数の中小企業が共同して物流効率化を行なうことにより各事業者の資金調達力を糾合して積

極的な物流効率化投資を実現していく﹂ことが可能になるということでもある︒

そうして次に上げられるような共同化の事項がケースとともに列挙されている︒

1共同物流加工・共同配送の実施

2共同物流情報ネットワークの構築

3標準化された物流関連機材及びビジネスプロトコルの採用

こうしたことを﹁同業種の中小企業の共同化﹂﹁異業種の中小企業の共同化﹂﹁荷主事業者と物流専業者との共同化﹂

(11)

中 小 企業 流 通 業 務効 率 化 促 進 法 成 立 まで の経 緯 と同法 の持 っ意 味 11

﹁大企業との共同化﹂﹁組合員会社との共同化し等多くの場合を想定してあげている︒

(m)こうしたことを前提とした上で﹁行政に求められる物流問題への対応策﹂として以下のように述べられている︒

ここでは︑﹁物流効率化に向けた取組みの支援﹂として﹁新規蹉法を含めた抜本的支援﹂が上げられている︒つまり︑

﹁中小企業が共同して︑共同配送や共同物流加工等の物流効率化事業を実施することは︑その巾小企業にとっては︑投

資規模・内容いずれの面においても︑その後の事業活動の成否に係わる重大な投資である︒したがって︑行政として

も︑このような中小企業の取組みが円滑に遂行できるよう︑事業の実施内容や方法︑実施時期︑資金調達方法などに

関する十分かつきめ細かな指導・助言を行なうとともに︑多大な資金負担を踏まえた金融面・税制面からの支援を行

なう等︑積極的・抜本的な支援措置を講ずることが求められる﹂

そして︑この支援措置としては﹁商店街ぐるみで行なう共同荷受け施設の設置や︑ボランタリーチェーンによる共

同配送の実施等の中小小売業者の物流問題への取組みについても︑中小小売商業振興法に基づく支援を積極的に行

なっていくべきであり︑また︑中小トラック運送業者に対しては︑中小企業近代化促進法に基づく構造改善事業への

支援も引き続き行なうことが必要である﹂という﹁現行法の活用による支援﹂のほかに﹁現行法の措置や工場団地・

卸売商業団地の集団化事業に対する高度化資金助成制度等があるものの︑中小企業の止ハ同による物流効率化の取組み

自体に着目して手厚く支援する施策はこれまでなかったため︑新たな立法措置による抜本的な支援策を講ずることが

重要である﹂という﹁新規立法を含めた抜本的支援﹂を打ち出しているのである︒

(11)そして︑﹁結び﹂として次のように言う︒

﹁行政としても︑中小企業が共同して行なう物流効率化への取組みが︑個別の事業者では行ない得ないような大きな

投資であり︑その後の事業活動の成否に係わるものであることを踏まえて︑新たな立法措置による抜本的な支援策を

(12)

併せ行なっていくことが求められる︒その際︑関係行政機関が相互に協力して対策を講ずることが重要であろう﹂

この報告は前記小委員会に報告され︑受け入れられたことから小委員会の答申に結び付くのである︒ただ︑これを

見ても小委員会の審議と分科会の研究がほぼ同時に行われ始めたことについてはまだ︑疑問が残る︒それと﹁関係行

政機関の協力﹂ということについても何らかの意味がある︑と思える︒物流効率化法が運輸省も含んで立案︑提出さ

れていることを考えれば︑当然︑何らかの関係があると思うのが自然である︒

そこでこの小委員会が発足する以前にさかのぼって検索すべきであろう︒

W 運 輸 政 策 審 議 会 答 申

平成二年一二月四日に運輸政策審議会答申﹁物流業における労働力問題への対応について二一世紀に向けての

物流戦略ll﹂が発表された︒この時期︑物流問題が社会的に関心を浴び始めたそのきっかけとなるものである︒と

いうより︑既に昭和六二年ごろから物流問題が産業界において騒がれ初め︑それを行政が正面から取り上げた最初の

(12)ものと言った方がよいだろう︒

というのは既にこの答申の元となる運輸大臣・江藤隆美から運輸政策審議会会長・斉藤英四郎に対して﹁運輸政策

審議会に対する諮問について﹂が出されたのは平成元年一一月二七日であったからである︒この答申は物流が持つ最

大の問題として﹁労働力不足﹂というものを取り上げており︑来る二〇〇〇年時点までの物流の社会的・企業的な改

善の方向を示したものである︒

この答申の中で中小企業問題が取り上げられている︒それが第四節の﹁労働力確保対策を進めるために求められる

(13)経費の適正な負担と中小企業に対する配慮﹂である︒

(13)

中 小 企 業流 通 業 務効 率 化 促 進 法 成 立 ま で の経 緯 と同 法の 持 っ 意 味 13

ここではこのように言う︒

﹁労働力不足に対応し︑労働力確保及び物流効率化のための総合的対策を進めていくたあには︑物流事業者が労働力

の構造的不足という経営環境の変化に適切に対応して経営全般にわたる努力を傾注することが必要である︒しかしな

がら︑物流業は中小企業が圧倒的に多い︒大企業と異なり︑経済力や組織力の乏しい中小企業がこのような施策(この

答申で述べられている各種施策のこと筆者注)に単独で取り組んでいくことは容易なことではない︒

したがって︑物流業界においては︑これまでにも増して業界団体として中小企業が抱える様々な課題に共同して取

り組んでいくことが必要となっている︒また︑政府は︑物流業界の自助努力を促す一方︑省力化投資の促進など生産

性の向上に係わる支援措置の充実などにより積極的に取り組んでいくことが望まれる﹂

(14)このほか︑中小企業については﹁中小企業の情報システム化の推進方策﹂が上げられている︒

﹁中小企業の情報システム化を推進するたあには︑事業者団体︑組合が中心となって︑低廉で比較的使用しやすいパ

ソコンなどの活用を前提として︑ソフトウエアの共同開発︑業務用の汎用ソフトの活用方策の開発などを行ない︑あ

わせて︑巾小企業の情報化に対して認められている税制上の優遇措置について一層の周知徹底を図ることが望まれ

る﹂といい︑更に﹁一方︑中小企業が情報化を進めやすい環境を形成するためには︑業界団体︑組合などに専任の相

談員や指導員を設置し︑または物流業務に精通した外部コンサルタントを活用することにより︑情報システムに対す

る啓蒙・指導活動を推進することが必要であると考えられる﹂

(15)そして︑この答申の﹁結び﹂としてこのように︑︑茜う︒

﹁政府は︑物流業における構造的な労働力不足が大きな制約条件となって︑今後我が国全体の円滑な物流サービスの

提供をおびやかし︑ひいては産業活動や国民生活に重大な影響を与えるおそれがあることに鑑み︑労働力不足問題の

(14)

解決のために︑各種の支援措置を積極的に講じていく必要がある︒その際︑物流事業者の大部分が中小企業であるこ

とに鑑み︑その近代化及び経営基盤の強化を図るたあの支援措置を拡大することも重要である︒また︑本答申で取り

上げた対策には複数の省庁に関わる問題が含まれていることから︑関係各省庁の協力関係の強化を図ることが望まれ

る﹂

この運輸政策審議会の答申でも中小企業に対する支援措置の拡充を要求している︒それとともに関係各省庁の協力

が必要であるということを言っている︒実はこの答申が出た直後から通商産業省と運輸省の非公式の担当課長級の連

絡会が持たれているのである︒運輸政策審議会が開かれている時に並行的に後で述べる通商産業省による﹁物流と経

済成長研究会﹂が開かれており︑その報告が後で出されている︒

(16)この時の両省の考え方としては﹁物流の需給﹂ということが取り上げられた︒これはそれまでにない考え方である︒

このことから﹁物流問題はその需給双方から改善していかねばならず︑双方の調整が必要である﹂という考え方が生

まれたのであろう︒

具体的には通商産業省がその後の運輸政策審議会流通部会の会議にオブザーバーとして参加しているし︑前記の小

委員会のメンバーとして運輸側といえる人が委員として参加している︒つまり︑(社)全日本トラック協会理事長・沼

越達也(運輸省OB)と(社)日本倉庫協会理事長・橋本昌史(運輸省OB)の二人である︒また︑中小企業分科会には

(社)全日本トラック協会常務理事・相沢正人である︒こういう委員の人選はこれまであまりなされないものであっ

た︒

通商産業省と運輸省の共同による物流問題への取組みがなされていたのである︒それが実際の作成は通商産業省の

中の中小企業庁でありつつ︑その国会への提出は運輸省と共同になった理由であろう︒

(15)

中小 企 業 流 通 業 務 効 率 化 促 進 法 成 立 まで の経 緯 と同 法 の持 つ意 味 15

運輸省の考え方はこの運輸政策審議会の答申で明らかになり︑運輸省はその方向で動き出してきたが通商産業省側

はこの時どのような方向を考えていたのであろうか︒どのように小委員会の答申に結び付くのであろうか︒

それを理解するためには通産省にとって省をあげて物流問題に取組むときっかけになったといわれる﹁物流と経済

成長研究会﹂の報告を見ていく必要がある︒

V 二 つ の 報 告 書

前記合同部会の答申が物流効率化法の施行に結び付くわけであるがこの合同部会はこの答申に先だって﹁物流等検

討分科会﹂報告ということを行なっている︒この分科会は主にその当時︑問題となっていた艸多(高)頻度小口配送問

題﹂を取り上げているのがこの分科会が設置された時期と同じ頃︑通商産業省では﹁物流と経済成長研究会﹂という

ものを発足させていた︒

この研究会は通産省が(財)工業立地センターに委託した研究調査事業である︒この研究会が設置された目的につい

(17)ては前に述べている︒この研究会の報告書は平成.一年一一月に発表されているがこの報告は社会に人きな波紋を生

み︑同時に多くの行政担当者に影響を与えている︒特に物流需給については前記運輸政策審議会の答申と同じ方向を

(18)示すものであり︑それと合わせてその後の物流の取り方のスタンスを決めたものといえる︒

この報告書は本来の目的が﹁社会への警鐘と通商産業省内での問題点の明確化﹂であったために特に中小企業問題

(19)()には触れていない︒ただ︑こういう記述が行なわれている︒

﹁我が国の物流は︑商慣行ひいては卸売業等中間流通の存在や特約店制度等我が国の流通構造と密接不可分の関係

があるため︑物流を考える際には流通構造及び関連する流通政策・競争政策等について考慮すると同時に︑流通構造

(16)

などを議論する場合にも︑物流について配慮する必要がある﹂

これは明らかに中小企業問題を意味しているものである︒なぜなら︑我が国の流通構造の特徴として巾小流通業が

その主体であり︑流通問題は中小企業問題であるというのは当然のことだからである︒流通政策はまた︑中小企業政

策でもある︒

また︑﹁政策的対応﹂として﹁物流の効率化に資する共同物流組織の設立や︑物流共同センターの整備の促進に資す

(21)るような措置の実施が望まれている﹂ということも述べられている︒

﹁物流と経済成長研究会﹂は通商産業省が委託した調査事業であるからこれから述べる﹁物流等検討分科会﹂と直接

関係があるかどうかは分からない︒しかし︑通商産業省側の担当者と委員はほぼ︑共通であるから少なくとも内容に

ついては十分関係があると見て差し支えない︒

この﹁物流等検討分科会報告﹂は平成三年六月に発表されている︒この分科会は産業構造審議会流通部会・中小企

業政策審議会流通小委員会合同部会・企画調査小委員会の下部機構として設置されたものである︒

(22)この分科会の設置については報告書の﹁はじめに﹂で次のように言っている︒

﹁産構審流通部会・中政審流通小委合同会議企画調査小委員会では︑一昨年六月の﹃九〇年代流通ビジョン﹄及び日

米構造協議等における諸外国からの指摘を踏まえ︑我が国流通における事業者の商慣行の見直しの方向について議論

を行い︑昨年六月に中間答申﹃商慣行改善の基本的方向について﹂を取りまとめた(これを受け︑通産省からは﹃商慣行

改善指針﹄が策定されたところである)︒(中略)

このような状況に鑑み︑本企画委員会では︑より正確な現状分析を行ない︑配送などに係わる合理的な商慣行の在

り方を更なる検討︑都市環境問題と配送の関連の検討︑更には物流全般の抱える課題の解決の方向についてまで視点

(17)

中小企業流通業務効率化促進法成立までの経緯と同法の持つ意味

17

を広げた議論を行なうべく︑本年二月より物流等検討分科会を設置し︑計八回の議論を行ない︑以下のような結論を

得た﹂

これを見る限りにおいてはこの分科会はあくまでも商慣行の改善が目的であり︑その中で特に近年︑問題となって

いると思われる物流を取り上げたと理解すべきであろう︒それではこの分科会の報告がどういう結論を出しているか

である︒その結論を持つこの報告は二つの審議会の合同会議に報告されるからである︒

まず︑この報告では問題となる﹁多頻度小口配送﹂も﹁一部の流通業者︑メーカーでは︑物流コストを正確に把握

した上でその削減のため情報システムなどを駆使して︑各店舗への配送の集約化︑共同化や計画.巡回配送︑物流作

業の省力化等に取り組んでいる﹂ものと﹁これらの対応が不十分な業者においては︑業者間の力関係等を背景に非効

率な配送が行なわれており︑その結果︑納入業者の労働時間や作業量の増大︑積載効率の低下が発生している﹂もの

(23)に分けられるとしている︒

この報告ではこれらの多頻度小口配送問題の解決のための施策を述べた後︑その取組み方について提言を行ってい

(24)る︒その中に中小企業問題が取り上げられている︒﹁事業者の取組み﹂のところで次のような記述が見られる︒

﹁一方︑卸売業︑特にその大宗を占める中小卸売業においては︑自らが流通の中で如何なる役割を求められており︑

如何なる機能を小売業に対して提供できるか︑または提供すべきか真剣に考えた上で︑個々の事業者の置かれた状況

に応じて自らの機能の高度化と他者との差別化を図らねばならない︒特に︑中小小売業の品揃えの充実等は卸売機能

の充実︑特に卸売業の機能の高度化なくしては不可能であり︑そのための取組みが早急に求められる︒物流機能を考

えた場合︑その機能の高度化とは物流のシステム化を図ることであり︑中小卸売業においては︑システム化のメリッ

トを十分に発揮するため︑共同化︑協業化︑合併等の取組みが急務である﹂

(18)

(25)また︑﹁行政に求められる施策﹂として︑次のような部分がある︒

﹁システム化投資のメリットがf分発揮されるよう︑共同物流施設︑共同情報化施設の設置をはじあとする中小の事

業者の事業の共同化︑協業化に対する支援措置の拡充が必要である﹂

ここで中小企業に対する﹁支援措置﹂が出てくるのである︒この報告書は産業構造審議会・中小企業政策審議会に

対して報告がされるわけであるから︑その後の合同部会の物流問題小委員会につながることは十分考えられる︒

この審議会の過程において﹁物流問題﹂に関して﹁特別な支援が必要である﹂と公式に出てくるのはこれが初めて

であろう︒この報告が発表されたのが平成三年六月であり︑同審議会合同部会物流問題小委員会が発足したのが同年

九月であることを考えるならこの後に物流効率化法の策定が考えられ始めたといって良いかと思われる︒

気になるのはそれ以前にこういう考え方は既にあったかどうかということである︒これについて次に見てみる︒

W 九 〇 年 代 の 中 小 企 業 政 策

平 成 二 年 六 月 に 中 小 企 業 政 策 審 議 会 企 画 小 委 員 会 が 中 間 答 申 を 出 し た ︒ こ れ が ﹁九 〇 年 代 の 中 小 企 業 政 策 の 在 り 方 ﹂

(26)である︒その第一章では八〇年代の経済・経営環境を述べた後︑このように述べられている︒

﹁このような不安定で先行きを見通し難かった八〇年代にあって︑中小企業は厳しい情勢変化によく適応してきた︒

すなわち︑石油危機との関連では現燃料投入単位の削減や代替エネルギーへの転換︑円高との関連では生産合理化や

製品の高付加価値化の推進︑内需の掘り起こしや新分野への進出︑更には︑積極的な海外投資などにより︑時代の変

化に適応する企業体質を強化してきた︒

しかし︑一方では︑業種︑地域によっては深刻な状況に直面し︑市場から退出せざるをえなかった企業も見られる

(19)

中小企業流通業務効率化促進法成立までの経緯 と同法の持つ意味  

19 など︑個々に見れば︑中小企業は様々な課題を抱えている﹂

このような中で中小企業政策は次のように展開されたとしている︒

﹁以上の状況の下で︑主な中小企業政策としては︑円高などの影響を受けた業種・地域の中小企業の事業展開等を円

滑にするための政策︑異分野中小企業の知識の融合による新分野の開拓を促進する政策︑地域産業の創造︑魅力ある

商店街の形成等の地域経済の活成化に向けた政策など︑構造転換のための政策等が推進され︑今日に至っている﹂

このように八〇年代の中小企業政策は主に構造転換がL体であり︑物流問題は出てきていない︒それでは九〇年代

はどうであるべきか︑というのがこの答申の目的であるがその点に関しては物流について第二章の﹁九〇年代におけ

る中小企業の対応﹂においては状況認識としては一切触れられていない︒

第三章では﹁中小企業政策の方向﹂として多くのことが上げられているが物流についてはほとんど触れられていな

(27)い︒ただ︑次のような記述がある︒

﹁中小卸売業については︑流通システム全般の合理化が進む中で︑他産業が情報・配送技術の発達等により卸売機能

を遂行する等の構造変化が見られる︒こうした変化の中で︑巾小卸売業は︑商晶の企画・開発︑販売先小売り店の業

態に対応した適格な品揃え︑多頻度少量配送等の機能強化に努めることが重要である︒このため︑中小卸売業と小売

業︑製造業との情報機能を軸としたネットワークの形成を支援していくことが特に重要である﹂

物流問題としては多頻度少量配送が上げられているがそれは自助努力の対象であり︑支援は情報機能を軸としたも

のとして上げられているに過ぎない︒この段階では中間答申のための基礎資料を見ても同じように物流が議論された

(28)形跡はない︒これはこの企画小委員会のメンバー構成を見ても︑問題の把握においても物流問題は取り上げるべきと

は思われていなかったことを示している︒

(20)

この中闇答申が九〇年代を通しての中小企業政策のべースとなるものであるためにこの段階では中小企業政策は相

変わらず構造転換が中心となっていることが分かるだろう︒物流問題がにわかにクローズ・アップされ始め︑中小企

業から悲鳴が上げられるようになったのが平成二年頃であることを考えるならこの小委員会がそれ以前において議論

(29)をしていたことを理解しておく必要がある︒

それだけ︑物流問題はにわかに起こり︑看過できないものとなったのである︒そのために平成三年になって中小企

業庁は新しい法律の策定に乗り出したものと考えて良い︒それは中小企業の経営危機が起こり︑民間よりの突き上げ

があったということと共に中小企業庁が他省庁が物流問題に乗り出してきたことに対して﹁船に乗り遅れまい﹂とい

う気持ちを持ったことも考えられるかもしれない︒

こうして物流効率化法が作られていった︒この法律については当初︑﹁中小企業物流効率化支援法﹂といったような

﹃物流﹄という言葉を入れたものにする予定であったと聞く︒しかし︑法立案の作成段階において内閣法制局より﹁物

流という言葉は法律用語としては適切でない﹂という助言があり︑その結果︑﹁流通市街地整備に関する法律﹂など既

に認知を受けている﹃流通﹄という言葉に変えたものであるという︒

そのために﹁流通業務﹂という言葉を使っているがこの持つ意味は物流そのものを指すのが妥当である︒それは本

(30)法の第二条の定義においてその対象となる事業について次の二つを上げているがその解説を見るなら明白である︒

1流通業務を行なうたあの施設又は設備を設置する事業

2前号の施設又は設備を利用して当該構成員たる中小企業者の流通業務の全部又は一部を一体的に行なう事業

﹁﹃流通業務を行なうための施設又は設備﹂とは︑流通業務を行なうためのあらゆる施設又は設備であり︑例えば︑

共同配送施設︑共同倉庫︑自動仕分け装置︑小ロ分け機械︑電子計算機︑共同配送用トラック等が上げられる﹂と﹁﹃当

(21)

中 小 企 業流 通 業 務 効 率 化 促 進 法 成 立 まで の経 緯 と同 法 の持 つ意 味 21

該構成員たる中小企業者の流通業務の全部又は一部を一体的に行なう﹄とは︑複数の構成員たる中小企業者の流通業

務を一体的に︑すなわち一括して処理することを指している︒例えば︑共同配送施設に運び込まれた構成員の貨物を︑

事業協同組合等が配送方面別に仕分け︑各方面別のトラックに積み合せて自ら運送することは︑事業協同組合等が道

路運送という流通業務を一体的に行なうことに当たるものである﹂

これを見ても流通業務というのが物流を意味していることが分かるものであり︑そのために運輸省.通商産業省

(中小企業庁)が自らこの法律を﹁中小企業物流効率化法﹂と呼んでいることが分かるのである︒マスコミは﹁中小物流

法﹂などと分けのわからない略称で呼んだりするのである︒こうした経過で物流効率化法が出現した︒

冊 物 流 効 率 化 法

この法律の目的は次のように定められている︒

﹁この法律は︑物資の流通をめぐる経済的社会的事情の変化に対応して中小企業者が行なう流通業務の効率化のた

めの措置を促進することにより︑中小企業の振興を図るとともに︑物資の流通の円滑化に資し︑もって国民経済の健

全な発展に寄与することを目的とする﹂(第{条)

これについてはこれまで述べてきた通りであるが︑簡単に言うなら﹁物資の流通をめぐる経済的社会的事情が変化

して︑中小企業者が自らに求められる流通業務を円滑に遂行できなくなり︑これに係わる経費が上昇し︑あるいは納

品・運送を断わらざるをえなくなっているとの状況に鑑み︑中小企業者が行なう流通業務の効率化のための措置を積

極的に支援することにより︑かかる状況に対応し得る中小企業の経営︑振興を図ることにした﹂ということである︒

これを見てもこの法律が緊急の事態に対応するために考えられたということが分かる︒なぜなら︑平成四年に入っ

(22)

て経済が沈滞し始めた段階で物流の能力問題は消えていたからである︒ただ︑前記運輸政策審議会の巾間答申に述べ

られているように物流に関する労働力問題︑およびその後の前記﹁物流と経済成長研究会﹂報告にも見られるように

物流における需給関係のアンバランスは近未来に向けての構造的労働力不足が強調されていたがその時にはこの問題

は﹁未来﹂と言いつつ︑現在の問題として﹁パニック状態﹂的に取り上げられていたからである︒

次にこの法律の対象であるがそれは当然︑﹁中小企業者﹂ということになる︒対象である中小企業者については第∴

条で規定がされている︒ここでは個別の企業としての中小企業の範囲(中小企業基本法第.条の規定)とともに次のもの

があげられている︒

1企業組合

2協業組合

3事業共同組合︑協同組合連合会その他の特別の法律により設立された組合及びその連合会であって︑政令で定

めるもの

この三者が本法の中で助成・支援の対象となる﹁事業協同組合等﹂になるのである︒このことはこの法律の趣旨が

﹁中小企業の共同による流通業務効率化への取組み(共同配送施設の設置等)に対し︑立法措置を柱とする積極的かつ抜

(32)本的な支援を行なうことが重要﹂ということに基づくからであろう︒

(33)この法律の運用を簡単に流れで見てみると以下のようになる︒

︑臣

lI‑‑[‑■

(23)

23中 小 企 業流 通 業 務 効 率 化 促 進 法 成 立 まで の経 緯 と同 法 の持 っ 意 味

「事

道 業

府 共

県 同

知 組

事 合

及 等

E

運 効

輸 率

局 化

長 計

認(

一「

定i聾

i ー 上

雇 計 画 に 基 豆 同 配 送 嚢 等 の 箋 務 効 率 化 騰 隆

( 予 羅 慶 化 馨 税 制 禦 に よ る 驚 的 ・ 抜 本 的 な 毒 )

(35)こうして支援の対象となった事業については以下のような支援措置が展開されることになる︒

1税制上の支援措置

(1)事業協同組合等が設置する共同利用施設に係わる特別償却制度の創設

(2)事業協同組合等が設置する共同利用施設に係わる特別土地保有税の非課税制度の創設

(3)事業協同組合等が設置する共同利用施設に係わる事業所税の減免制度の創設

(4)共同配送用車両の自動車取得税の減免措置の創設

2金融上の支援措⁝置

(1)中小企業事業団による高度化融資

①本法の認定計画に基づき実施する共同施設事業を構造改善事業(特定)に追加する

(24)

②本法の認定計画に基づき実施する以下の高度化事業を構造改善等高度化事業(一般)に追加する

イ集団化事業

ロ設備リ!ス事業

③本法の認定計画に基づき中小企業者等が相互に合併したり︑共同出資会社を設立して行なう物流効率化に

資する事業を高度化事業の対象とする

(2)中小企業金融公庫︑国民金融公庫による低利融資(商業近代化貸付(物流近代化資金)の拡充)

3その他の支援措置

(1)

(2)

(3)

(4)

予 算 上 の 支 援 措 置 (中 小 企 業 庁 予 算 )

地 域 中 小 企 業 物 流 効 率 化 推 進 事 業

広 域 中 小 企 業 物 流 効 率 化 推 進 事 業 等

中 小 企 業 信 用 保 険 法 の 特 例

巾 小 企 業 近 代 化 資 金 等 助 成 法 の 特 例

中 小 企 業 投 資 育 成 株 式 法 の 特 例

以上のことから見てこの法律の特性というのは﹁巾小企業の物流効率化﹂であるがそのために方策としてこの法律

によって﹁中小企業に対する従来の各種支援﹂を援用して行なおうということである︒つまり︑これまでになかった

これら巾小企業に対するいろいろな面における近代化︑構造改善のための各種の支援の対象を広げた︑というところ

に特色がある︒

そうであるが故にこの法律が短期間のうちに成立できたといえるのであろう︒国会に提出するにあたって各政党に

(25)

中小企業流通業務効率化促進法成立までの経緯 と同法の持っ意味 25

対しての根回しを行なったがその際︑各政党ともに基本的な反対はなかった︑といわれるがそれはこの法律が従来の

(36)支援に対するその﹁対象枠の拡大﹂という性格を持っていたからである︒

こういうところからこの法律が時代の緊急の要請から生れ︑それは全く新しい局面を生むという何かを廃止した

り︑交代させたりするようなデメリットを生む対象を存在させなかったというところが特徴として上げられるだろ

う︒

物流効率化法の新機軸とその位置付け

物流効率化法はいくつかの点でこれまでにない特色を持つものである︒それは﹁物流﹂という経営の一機能を対象

としているために物流というものの持つ特色を法律に反映させねばならない︑ということから生まれるものである︒

企業における物流というものの性格を言うならそれは﹁それぞれの企業によって物流のあり方は異なる﹂というこ

とであろう︒これは物流というものが施設︑技術などの形態的なある形において優劣の判定ができないことによるも

のである︒それは次のような条件によって物流のシステムは異なるからである︒

1

2

3

45

6 各企業の経営資源

直面する市場競争

顧客に対する個別の取引条件

商圏とする地域の状況(インフラなど)

その企業における経営戦略の方向

その他(それ以前のその企業の物流システムなど)

このことは物流システムの効率化といってもそれぞれの事情で異なるということを示している︒この上に中小企業

(26)

同士の止ハ同化という条件が加わって来るなら更にその個別性は高まるだろう︒

したがってそれに対する支援策というものについてはある目標とする具体的な形が存在し︑その形態的なものに対

する支援では適当といえないということである︒本来︑物流というものはハードよりもソフトが重要である︒という

よりもハードはソフト作成によって導入されるものである︒

そうであるなら︑物流改善に対する支援はその計画という一種のソフトあるいは無形なものに対してまず行われな

ければならないであろう︒しかし︑これまでの経験から︑遮口うならこの計画作りがもっとも難題であった︒それは﹁人

材の不足﹂﹁研究開発投資の力不足﹂﹁人力・時間の余裕のなさ﹂という問題が中小企業にあったからである︒

そうであるならこの問題については﹁まず︑物流効率化計画があって︑それに対してその実現の支援を行なう﹂と

いう形では困るのである︒計画の作成が問題だからである︒この法律では物流効率化計画の認定においては次の項目

(37)を必要としていることになっている︒

1流通業務効率化事業の目標

2流通業務効率化事業の内容

3流通業務効率化事業の実施時期

4流通業務効率化事業の実施に必要な資金の額及びその調達方法

こうした基本計画を作成することに関して本法では﹁テーマに係わる調査研究・基本計画作成事業︑事業計画・シ

ステム設計事業︑実験的事業運営事業﹂に対して支援措置を講じている︒

多分︑このことがこの法律の最大の特徴ではないかと思われる︒更に﹁大企業の参加﹂や﹁組合以外の員外利用を

計画に含めること﹂などが認められている︒このことはこの法律の策定において(中小企業の)物流というものの性格

(27)

中小 企業 流 通 業 務 効 率 化 促 進 法 成 立 まで の経 緯 と同法 の持 っ 意 味 27

を最大限︑内容に盛り込もうという考えが働いているからである︒

(38)このことは﹁中小企業流通業務効率化事業の実施に関する基本的な指針﹂に述べられている︒

そこでは次のように言う︒肺流通業務効率化事業は︑一体的に行なう流通業務の種類や設備投資の内容により様々な

事業が考えられる﹂ものであり︑﹁同業種の中小企業による共同事業に限らず︑例えば︑同一の納品先を有する異業種

の中小製造業者や中小卸売業者による共同事業︑物流に係わる取引の両当事者である中小荷主事業者と中小物流業

者︑納品側と納品先の中小企業者による共同事業も考えられる﹂としている︒

更に﹁中小企業者の流通業務を一体的にだ41なうための施設又は設備は︑必ずしも複数の構成員たる中小企業者が共

同して利用するものに限らない﹂などということが上げられている︒

つまり︑基本的な考え方として計画認定の段階においては﹁物流システムについてはどのような形であっても構わ

ない﹂という許容性の高いものになっているのである︒このことが多くの人達から﹁この法律はよく分からない﹂と

いう意見となって現われるのである︒それは﹁計画から始まる﹂というこの法律の性格であり︑初めにモデルとなる

ような形がないからであろう︒

そうであるためにこの法律は計画認定︑運用において大きな問題を持っているといえるのだろう︒法律を運営する

側の能力が問われることになる︒また︑もう一つの意見として﹁協同組合など﹂に支援の対象が絞られていることが

上げられている︒個別の企業や協力会のような対象では﹁なぜ︑いけないのか﹂ということであるがこのことはこの

支援策がすべて従来からある支援措置の枠の拡大による援用だということから理解すべきであろう︒

いずれにしても多くの問題を持ちつつ︑物流効率化法は生れ︑既に多くの協同組合などがこの法律の適用申請を考

えていると聞くがそれがどのように展開されていくかは初年度の認定計画とその実施に係わる問題であろう︒

(28)

図一1

〔予算 等 の支援 措 置〕

中小企 業流 通業務 効率化 促進法 の支援策

〔法律 上 の スキー ム〕 〔法律上 の支援 措置〕

L予 算 」

① 地 域 中 小 企 業 物 流 連 携 促 進 事 業

② 地 域 中 小 企 業 物 流 効 率 化 推 進 事 業

〈基 本 計 画 策 定,事 業 計 画 策 定, モ デ ル 実 験 〉

③ 広 域 中 小 企 業 物 流 効 率 化 推 進 事 業

〈基 本 言十L画策 定,事 業 言十1画策 定 〉

④ 中 小 卸 売 業 活 性 化 推 進 事 業 等 く基 本 計 画 策 定,事 業 計 画 策 定, モ デ ル 実 験 〉

[融 資 」

⑤ 高 度 化 融 資 制 度 〈組 合 〉 イ.荷 主 が2業 種(日 本 標 準 産 業

分 類Lの 細 分 類)以 ヒで,物 加1二,情 報 化,物 流 高 度 化 施 設

を 備 え る高 度 な 事 業

融 資 割 舎:80%,金 利:無 利 子 ロ.そ の他

融 資 割 合:70%,金 利:2.7%

⑥ 物 流 近 代 化 貸 付 制 度 〈組 合 及 び 企 業 〉(中 小 公 庫,国 民 公 庫)

イ.先 進 的 な シ ス テ ム を 導 入 す る

もの 特 利3(4.9%)

ロ.そ の他 特 利2(5.4%)

⑦ 地 域 中 小 卸 売 業 物 流 変 化 調 整 対 策 貸 付 企 業 〉(約4.85%)

(体 質 強 化 資 金 助 成 制 度)

通産 大 臣及 び運 輸大 臣 に よる 指針 策定

(流 通 業 務 効 率 化 計 画 に つ い て の基 本的 かっ 一般 的 な事 項 を示 す)

事 業協 同組 合等 に よ る計 画策

都道 府 県知 事及 び地 方運 輸局 長 に よ る言十画認 定

L綱 ﹁ 囎

画 ‑ ← 灘

システム化する﹂という形

共 同配 送等 の実施

共 同配 送施設 等 の建設

物流 規 格 の標 準化

その他 の流通 業務 効率 化

[事業 資金 調達 の円滑 化]

① 中小企 業信 用保 険法 の特 例

組 合及 び企業 〉

(付 保 限 度額 の別 枠 化,保 険 料率 の引 き下 げ等)

② 中小 企業投 資育 成株 式 会社法 の特

企 業〉

(資 本 金1億 円超 の 中小 企 業 を投 資立寸象6こ追力口)

t融資1

③ 中小 企業近 代化 資金 等 助成 法 の特 企 業〉

(償還 期県月を5年 一・7年)

税制]

④流 通 業務効 率化 施設 の特 別償 却制 組合>goo分 の8

⑤ 流通 業務 効率化 施設 に係 る特 別k 地保 有税 及 び事業所 税 の非課 税 ・ 軽減 組 合〉

[道路 運送 の効率 化]

⑥ 貨物 運送取 扱事 業法 の特 例 組 合及 び企業 〉

⑦ 貨物 臼動 車運送 事業 法 の特例

組 合及 び企業 〉

て言われたように﹁集めて 通システム化行政におい

中小企業庁指導部取引流通課監修 「巾小企業物流効率化法の解説」

というのが普通であり︑流 はこれまで↓体化される だ︑構造改善と機能高度化 置付けられるだろう︒た

法 は 機 能 高 度 化 の 中 に 位 当 然 な が ら 物 流 効 率 化

3

機 能 の 高 度 化

2

構 造 改 善

1

中 小 企 業 の 保 護

次のような方向性を持っ れまでの中小企業施策は 置付けをしておきたい︒こ

中 小 企 業 政 策 の 中 で の 位

さて︑最後にこの法律の

(29)

中小 企業 流 通 業 務 効 率 化 促 進 法 成 立 まで の経 緯 と同法 の持 つ 意 味 29

になっていたはずである︒

つまり︑構造改善において集団化︑共同化を行ない︑その中で機能高度化を実現させようというものである︒ただ︑

考えてみるとこの方向においてはまず︑先に構造改善があり︑その結果として機能高度化を行なうというのが普通で

あった︒物流効率化法においても協同組合などがその支援の対象になっていることでもそれは伺われる︒

そうであるために機能の高度化はパターン化され︑集団化・共同化がされた場合︑それで機能の高度化の方は形さ

え整っていればよい︑という傾向になりがちだったろう︒それは構造改善が具体的な目に見える︑評価のできるもの

である一方︑機能高度化の方は目に見えにくいものであり︑その評価が難しかったからである︒したがって︑機能高

度化はパターン化された制度的なものになる傾向があった︒つまり︑機能高度化といいつつ︑それはインスティ

(39)テユーショナルな性格を持っていた︒

しかし︑本来はファンクショナルなものでなければならない︒物流というものはファンクショナルなものである︒

現在︑進められつつある﹁中小企業の情報化の促進﹂政策と合わせて新たに本格的な機能高度化が的を絞った形で行

なわれようとする新しい方向を示すものと位置付けられる︒

ただ︑これまで行政の当事者も中小企業もインスティテユーショナルなものに慣れてきているために物流のような

形が明確化されないものについては当初は要領も分からず︑苦労すると思われる︒いくつかのケースをこなし︑ノウ

ハウが蓄積された時に効果を出し始めるだろう︒もっとも︑いくつかのケースをこなした結果︑それがパターン化さ

(40)れ︑それが一つの枠を作っていくようなことになるとまた︑構造的なものに戻ることも危ぐされるところである︒

構造改善があって︑機能高度化が行なわれるのではなく︑機能高度化のために構造改善が行なわれるべきだからで

ある︒

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