九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
化学物質の染色体異常誘発性検索のための代謝的活 性化法の確立と応用に関する研究
松岡, 厚子
https://doi.org/10.11501/3054258
出版情報:Kyushu University, 1990, 薬学博士, 論文博士 バージョン:
権利関係:
化学物質の染色体異常誘発性検索のための 代謝的活性化法の確立と応用に関する研究
1991 年
松 岡 厚 子
1 )
化学物質の染色体異常誘発性検索のための 代謝的活性化法の確立と応用に関する研究
松 岡 厚 子
第 一 章 緒 言 第 一 節 第 二 節
1 ) 2 ) 3 ) 第 三 節
目 次
研 究 の 目 的 と 概 要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・幽岨・・・掛白・ー‑‑‑‑‑‑‑‑‑ 1 染 色 体 異 常 ーー・ーー‑‑‑ーーーー・ーーーー・ーーーーー・・ーーー・ー・ーー・晴ーーーーー・ー‑‑‑ 3
染 色 体 異 常 の 意 義 ..̲‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑・・・・"・・・・・ー‑ 3
染 色 体 異 常 の 分 類 と 判 定 ーー帽・・‑‑‑‑‑‑‑ーーー・ー‑‑‑‑‑‑ーーーー・ー‑‑ 4
染 色 体 異 常 誘 発 の 基 本 原 理
代 謝 活 性 化 の 意 義 と 導 入 の 必 要 性 ‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑10 1 ) 化 学 物 質 の 代 謝 に よ る 活 性 化 ー司ー・ーーーーー・・ーーーー‑‑‑‑‑‑ー・‑‑‑・ 10 2 ) 1 n v i tro細 胞 遺 伝 学 的 研 究 へ の 代 謝 活 性 化 系 導 入 ・..... ‑.. ...・ 10
第 二 章 代 謝 活 性 化 法 の 確 立
第 一 節 振、遺法 ーーーーーーー白ーーー・・・ーーーーーーーーー・ーーー'ーーーーーーーー齢・・ーー‑‑‑・ー‑‑・ 14 1) DMNのS9mix存 在 下 で の 染 色 体 異 常 誘 発 性 ーーーーーーーーーーーーーー‑‑ 14 2 ) 処 理 時 間 の 検 討 ・・幽‑‑‑‑‑‑‑ー・・ーーーーーーーーーーー・...... ... ...ーーーー.... ‑..ーー‑.. 15 3 ) 回 復 時 間 の 検 討 ー・司ー・ーーーーー・・ーーーー..... .. ...ーーーーーーーー‑‑ーーー・ーー‑‑‑‑. 16 4 ) 酸 素 ガ ス 添 加 の 必 要 性 ーー司ーーーーーー・ーーーーーーーーーーーーーー..... .. ‑・ーー・ー‑. 17 5 )
6 ) 7 ) 第 二 節
S9 mix中 の 各 成 分 の 誘 発 異 常 頻 度 に 及 ぼ す 影 響 ‑‑‑‑‑‑‑18 酵 素 誘 導 剤 の 比 較 ー・ーー・ーー・ー・ーーーーー‑‑.. ‑‑ーー・・・・・岨幽綱帽骨ーーーー‑‑ 19
溶媒エタノ-ルの影字~ .~---~...-.---司・ー--- 21
静 置 法 ーーーーーーーーー...‑. ..ーー・ーーーーー骨・ーーー晴ーーー・ーーーー・ーー‑... .. ‑. ‑ーーーーー‑.. 24 1) S9濃 度 の 影 響 お よ び 処 理 時 間 の 検 討 .. ... .... ‑.....ーー・・ーーーー‑‑‑ー,ー 24 2 ) 回 復 時 間 の 検 討 ーーー・・‑‑‑‑‑‑‑‑‑ー・ー・・噌司ー・ーー'岨‑‑・・・帯・"・ー・帽・ 26
3 ) 振 混 法 と 静 置 法 の 比 較 . ‑‑ーーーー司ーーーーーーーー・・・・・・・ー,ーーー・・ーー・ー 27
第 三 章 抗酸化弗
UBHA
の 染 色 体 異 常 誘 発 性第 一 節
BHA
及びその代語、!物 . ‑‑・司・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ー・‑‑‑‑‑‑‑2 9
第 二 節 実 験 結 果 ーー'ーー・・・・ー'ーーー・・ーーーー...‑‑‑...ーーーーー" ・ーー・・・ーー'ーー‑‑‑ 30
第 三 節 考 察 ‑‑‑‑‑‑‑‑‑̲...̲̲...̲‑‑̲.......‑‑‑‑‑̲..̲‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑̲.....̲‑ー嗣‑‑35
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̲i ニ ト ロ ピ レ ン 類 の 染 色 体 異 常 誘 発 性 気、iA節 被 験 物 質 ・・・...‑...‑‑‑‑‑‑‑‑‑̲...‑..̲‑‑‑‑̲...‑..‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑・・・・ 37
本 研 究 で は , 以 下 の 略 語 を 用 い た . [ J内の数字はChemicalAbstract Registry Numberである.
﹄庁
H H h
町 付μ
﹄ 月 日 hF LR Uμ
第
第 実験結果 "ーーー"ーー骨ーーーーーーーー由ーー・ーー‑‑ーー・ーーーーーーーー・ーーー一‑‑‑‑‑‑ 38 考察 ‑‑‑‑‑‑...‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑・・・・・・・・・・・・・・・・・・"・・嗣・‑‑‑‑‑‑‑ 43
な い
1
'γ nH
羽附 73
AAF : 2‑acetylaminofluorene 1‑AP : 1‑aminopyrene
B(a)P : benzo[aJpyrene
BHA : 3‑tert‑butyl‑4‑hydroxyanisole
BHA‑OH : 3‑tert‑butyl‑4,5‑dihydroxyanisole BHA‑o‑Q : 3一回旦‑butylanisole‑4,5‑quinone BHQ : tert‑butylhydroquinone
BHT : 3,5‑di‑tert‑butyl‑4‑hydroxytoluene BQ : tert‑butylquinone
BQO : tert‑butylquinone oxide CMC : carboxymethylcellulose sodium DEN : diethylnitrosamine
diBHA : BHA dimer
DMBA: 7,12‑dimethylbenz[a]anthracene DMN : dimethylnitrosamine
DMSO : dimethyl sulfoxide 1,3‑DNP : 1,3‑dinitropyrene 1,6‑DNP : 1,6‑dinitropyrene 1,8‑DNP : 1,8‑dinitropyrene G‑6‑P : glucose 6‑phosphate
[53‑96‑3 ] [1606‑67‑3]
[50‑32‑8J [121‑00‑6J [80284‑15‑7] [2940‑63‑8 ] [1948 ‑33‑0]
[128‑37‑0] [3602‑55‑9 J 第 五 章 水 道 水 中 に 含 ま れ る 微 量 有 機 物 質の 染 色 体 異 常 誘 発性
第 」節 被 験 物 質 ‑‑ーーーーーーーーーーーー"・町ー ーーーーーー・・・・ーーーーーーーーーーーーーーーーー‑ 45 第二節 実 験 結 果 ー・ーー一‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑ーー・ー幽ーーー‑‑‑・ー事...... ... ... ...ー・ー‑‑‑ 46 第三節 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・"・・ 52
第 六 草 総 括 ‑‑ーー・・ーーーー‑ー..... .... ...ーー‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑ー司ーーーーーーーーー・ーーーーーーーーー‑ 56
実験の百!5 . ‑ー・・ーーー・・ーーーー・・ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー‑ー‑ーーーーーー‑ 59
1 . C H L
納胞の謀本‑代と保存 2.染 色 体 異 常 試 験3.よ吉地,試薬などの調製 4. TLC
5. HPLC
参巧文 t~ 63
[9004‑32‑4 ] [55‑18‑5] [14078‑41‑2] [57 ‑97‑6] [62‑75‑9 ] [67‑68‑5J [75321‑20‑9 ] [ 42397 ‑64‑8] [42397 ‑65‑9 J
[56‑73‑5J HEPES : N‑2‑hydroxyethylpiperazine‑N' ‑2‑ethanesulfonic acid
[7365‑45‑9 ] HPLC : High Performance Liquid Chromatography
MC : 3‑methylcholanthrene
3' ‑MeDAB : 3' ‑methyl‑4‑dimethylaminoazobenzene MEM : minimum essential medium
NADP : nicotinamide adenine dinucleotide phosphate
[56‑49‑5J [55‑80‑1 ]
[53‑59‑8]
1‑NP : 1‑nitropyrene PB : phenobarbital
PCB : polychlorinated biphenyl TLC : Thin Layer Chromatography
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第 一 章 緒 言
第 一 節 研 究 の 目 的 と 概 要
化 学 物 質 の 安 全 性 評 価 と い う 観 点 か ら , 実 験 動 物 を 用 い る 毒 性 試 験 , 発 婚 試 験 等 の 長 期 試 験 と 並 ん で , 短 期 検 索 法 と し て 変 異 原 性 試 験 が 行 わ れ て い る . 変 異原性試験は, DNAに生じた損傷を検出する試験系で,そのrfJに染色体異常を桁 標に検索する方法がある.
本 研 究 で 実 施 す る 担 註 立 旦 染 色 体 異 常 検 索 法 は , シ ャ ー レ で 培 養 し て い る 細 胞 を , 一 定 時 間 被 験 化 学 物 質 で 処 理 し , そ の 細 胞 か ら 作 製 し た 染 色 体 標 本 を 観 察 し , 染 色 体 の 数 や 形 の 変 化 を 分 析 し て , そ の 化 学 物 質 が 染 色 体 に 傷 雪 を 及 ぼ すか否かを調べる方法である.
ところで,化学物質には,それ自体でDNAに作用して変異原性を示すものもあ るが,生体内で代謝を受けて初めて変異原性を示すものもある.本研究で,化 学 物 質 の 染 色 体 異 常 誘 発 性 を 検 索 す る 目 的 で 用 い た 細 胞 株CHL(チャイニー ズ ・ ハ ム ス タ ー 肺 由 来 線 維 芽 細 胞 株 ) は , 長 い 間 継 代 培 養 し て き た た め に , 薬 物 を 代 謝 す る 能 力 が な い か , あ っ て も 非 常 に 活 性 が 低 い と 考 え ら れ て お り , 化 学 物 質 の 真 の 変 異 原 性 を 検 索 す る こ と は で き な い . こ う し た 化 学 物 質 の 代 謝 活 性化の重要性が認識され, 1975年頃から培養細胞を用いるinvitro試験系にも 代 謝 活 性 化 系 を 導 入 し た 研 究 が 報 告 さ れ 始 め た1‑7) 使用細胞,試験指標,処 理 方 法 な ど は 研 究 者 に よ っ て さ ま ざ ま で あ る が , 主 に ラ ッ ト ま た は マ ウ ス の 肝 臓 の ホ モ ジ ネ ー ト の9000x g上清あるいはそれに類する分間が代謝活性化系と
して用いられていた.
本 研 究 で は , こ れ ま で に 行 っ て き た 染 色 体 異 常 検 索 法 に 代 謝 活 性 化 系 を 導 入
することを目的として, 1) 実験手技が簡便で, 2) 結果の再現性が良く, 3)
広 範 な 化 学 物 質 の 染 色 体 異 常 誘 発 性 を 検 出 で き る 方 法 を 目 指 し て 検 討 を 行 っ た . まず第二章で, 1976年にNatarajanらによって紹介された方法8) (トリプシン 処 理後 調 製 し た 細 胞 懸 濁 液 , 代 謝 活 性 化 系 お よ び 被 験 物 質 を 恒 温 槽
t p
で振滋さ せ て 処 理 す る と こ ろ か ら 「 振 漫 法 」 と 称 す る ) の 追 試 か ら 始 め て , い く つ か の 実 験条 件 を 修正し確立した,当研究室の振漫法g)について述べる.このjj法をTlム
染 色 体 異 常
染 色 体 異 常 の 意 義
染 色 体 は 遺 伝 子DNAの担体で,細胞分裂を経て 2つの娘細胞へ均等に分かれる.
染 色 体 の 数 お よ び 形 は , 生 物 の 種 , 系 統 で 特 異 的 で あ り , ヒ ト で は46本,本研 究 で 用 い て い る チ ャ イ ニ ー ズ ・ ハ ム ス タ ー で は22本である.細胞周期の分裂則 第二節
(M期)にのみ染色体としての構造を観察することができ,特に分裂中期にお いて最も凝縮して太くなり,塩基性色素によく染まり観察に最も適した状態に 肘いて,実際に, 1978年から1981年までの4年間に約70種の検体についてスクリ
ーニングを行った.しかし,本来単層で増殖している細胞を振漫するという非 生 理 的 条 件 で 処 理 を し て い る こ と , 被 験 物 質 , 特 に 多 環 芳 香 族 炭 化 水 素 の 処 理 濃度が非常に高いことの2点の問題点を改良するために,静置法(シャーレで増 殖している細胞をそのまま処理するところからこう呼ぶ)を試みた.その結果,
静置法の方が振霊法より優れた方法であることが明らかになり 10),現在では静 置法を用いて被験物質の代謝活性化を行っている.
第三章で、は抗酸化剤3一回rt‑butyl‑4‑hydroxyanisole(B H A)の11),第四 章 で は 環 境 汚 染 物 質 ニ ト ロ ピ レ ン 類 の12),そして第五章では水道水中に含まれ
なる.染色体の観察を容易にするために,染色体標本作製前に紡錘糸形成問
1 7 3
剤 ( コ ル セ ミ ド ま た は コ ル ヒ チ ン ) で 細 胞 を 処 理 し , 分 裂 中 期 像 を 宅 す る 細 胞 る微量有機物質の13)染 色 体 異 常 誘 発 性 を , 静 置 法 を 使 っ て 検 討 し た 結 果 に つ い
て述べる.
を 蓄 積 す る . さ ら に , 標 本 作 製 時 に 低 張 処 理 を行い,細胞を膨張させて染色体の広がりを 医 薬 品 毒 性 試 験 法 ガ イ ド ラ イ ン ( 厚 生 省 ) ,農薬の毒性試験の適正実施に関
す る 基 準 ( 農 林 水 産 省 ) ,化審法毒性試験法(通産省) , OECDガイドラインの
動 原 体
. . 園 ・
‑
腕
腕
染 色 分 体 染色体の模式図
これまでに染色体異常との関連が報告されている生物学的事象には次のよう よくしている.染色体の構造は,図 1の模式
図 の よ う に , 細 胞 の 有 糸 分 裂 の 際 に 紡 錘 糸 が 付 着 す る 動 原 体 を 有 し , そ の 位 置 に よ り 腕 の 長 さ の 比 が 異 な る 数 種 の 形 を 示 す . 1本の染 色 体 は2本 の 染 色 分 体 か ら 成 り , お 互 い を 姉 日南乳類の培養細胞を用いる染色体異常試験にも代謝活性化法を併用することが
要 求 さ れ て お り , 国 内 で は こ の 静 置 法 が 標 準 的 な 方 法 と な っ て い る .
図1 妹 染 色 分 体 と よ ぶ .
なものがある.
1 ]ヒトの先天性染色体異常疾患(ダウン症候群,ターナー症候群など)
2 J
放 射 線 や 化 学 物 質 に 起 因 す る 染 色 体 異 常 ( 職 業 的 暴 露 に よ る ヒ ト リ ン パ 琢 で の 染 色 体 異 常14,15)など)3 J
ヒトの癌での病型に特異的な染色体異常(慢性骨髄性白血病で観察される P h 1染 色 体 な ど )染色体異常を指標に,広義の疾病(化学物質に起因するものも含む)の診断,
分 析 が 可 能 で あ る .
q υ
n/臼
こうしたことから,化学物質のヒトへの安全性を評価する際,染色体異常誘 発性を検索することは,非常に重要な生物学的情報を我々に提供してくれる.
2 ) 染色体異常の分類と判定 染 色 分 体 型 ギ ャ ッ プ
( c t g )
染 色 分 体 型 切 断 ( c t b ) 染色体異常には,数的異常と構造異常とがある.
数的異常には,異数性と倍数性とがある.異数性とは,染色体の数が 1~ 数 本増加または減少するもので,倍数性は,染色体数が倍加する現象をいう.株 細胞では,本来,染色体数にばらつきがあるため,異数性を検出することは困 難である.
構造異常は大きく分けて染色分体型と染色体型とに分類される.前者は,細 胞周期のS期 (DNA合成期)以後に DNAに生じた損傷がその直後の分裂期で片方 の染色分体に観察されるもので,後者は, G 1期 (
s
期前の間期)に生じた損傷 がS期を経て形成されるものをいう.紫外線や化学物質で誘発される異常は,大部分前者の型である.
" υ A H '
染 色 分 体 型 交 換 ( c t e )
染 色 体 型 切 断 ( c s b )
~9ド " ︒ ︒ ︒ " " ︑ .
"
︒ ︒
構造異常の分類(図2) 染色分体型
ギャップ (chromatidgap: ctg)
:染色分体上にみえる,狭い非染色性の部分で, 一見この部分で 切れているようにみえるが,先端部は,染色分体の長軸上にあ る. (図2.左上)
切断 (chromatidbreak: ctb)
:染色分体上に明らかな不連続が生じ,その先の染色分体片が長 軸からはずれている場合をいう. (図2.右上)
交換 (chromatidexchange: cte)
: 2カ所以上で起こった切断が互いに結合する異常をいう. 1本 の染色体の中で交換が起こる場合と,別の染色体に生じた切断 が交換を起こし, 2本以上の染色体が関与して複雑な構造をと る場合もある. (図2.左中)
染 色 体 型 交 換 ( c s e )
断 片 化
図2 染色体異常の模式図
組4・ ﹁
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染色体型
ギャップ (chrornosornegap: csg)
:2本の染色分体の同位置に見える非染色性の部分で,先端部は 長軸上にある.
切断 (chrornosornebreak: csb)
:動原体をもたない切断端が生じ,この切断端は必ず対になって いる. (図2.右中)
交換 (chrornosorneexchange: cse)
:交換の結果生じる二動原体染色体および環状染色体として識別 することができる. (図2.左下)
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断片化 (fragrnentation: frg)
染色体の形跡が確認でき,交換型異常を含まず,ギャップあるいは切断が 全染色体の約80%以上に生じている. (図2.右下)
本研究では,染色体異常の観察はよく広がった分裂中期像で、行い, 100個の細 胞あたりの異常をもっ細胞の数を記録した.実際には,写真 1のように,顕微 鏡下で染色体を観察することができる.a)の分裂中期像には, 25本の染色体が 観察され,正常な染色体が広がっている.b)では,ギャップと染色体断片が,
c)で、は,染色分体型切断と交換が, d)では,染色分体型交換が, e)で、は,染色 分体型交換が4カ所に観察される.b),d),e)で・全部または一部が観察される丸い 影状のものは,静止期の細胞の核である.
これまでの当研究室の蓄積データから,無処理または溶媒処理の陰性対照群 の染色体異常頻度は仰を越えないことから,当研究室での判定基準を基に,異 常頻度が4おまでを染色体異常誘発性を陰性, 10% (陰性の約2倍)以上を陽性
とし, 5%から9見を疑陽性と判定した.
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写真1 CHL細胞の分裂中期像
( a) 正常な25本の染色体 (b)ギャップおよび染色体断片 (c)染色分体型切断および交換 (d)染色分体型交換
(e)染色分体型交換
矢印が染色体異常を示している.
‑7 ‑
3 ) 染色体異常誘発の基本原理
染色体異常生成の機構に関する研究報告は少なく,その詳細は未だ不明の点 が多い.現在までに提唱されている染色体異常の生成機構に関する説には,
Sax (1938)による「切断再結合説J(Breakage‑and‑reunion theory)とRevell ( 1959)による「交換説J(Exchange theory)とがある.
前者は,初期損傷は染色体の切断であって,その大部分は元どおりに修復す るが,あるものは切断のまま残り,あるものは2個の切断が誤った再結合をお こし,交換型異常を形成するという説である.後者は,全ての異常は, 2個の 回復可能な損傷の相互作用によって形成され,切断は不完全な交換によるもの であるとする説である.その後両説を支持する結果も両説に反する結果も報告 されており両方の説が染色体異常の形成に関与していると考えられている16)
図3に染色分体型交換と染色体型交換を例にその形成の過程を模式図で表わ した.例1では 2本の染色体が G 2期 (S期後の間期)に起こった損傷部位で誤 った再結合を起こして, M期で 2つの異なるタイプの異常として検出できるこ とを示している.例2ではG1期に起こった損傷がやはり誤った再結合を起こ してS期で複製され, M期で2つの異なるタイプの異常(相互転座と二動原体 染色体)として検出できることを示している.
例1 染色分体型交換
M期 G 2期
L J 1 1 l l F ' 対称型開放射状
L
/ ノV a n
L J L
間放射状、 ¥
非対称型
例2 染色体型交換
G1期 S期 M期
¥ ‑ 1 1 L = 守 1 1 L 1 1 q
11~~と f片
関3 染色体異常形成の模式図
‑8 ‑ QU
代謝できるようにするかが当面の課題であった.初めは,宿主経由法(host‑ mediated assay)17・18)や細胞経由法(cellmediated assay)191が報告されたが,
Amesらが微生物と肝のミクロソームを組み合わせた系で代謝を必要とする化学 物質の変異原性の検出を報告20)して以来,日雨乳類培養細胞を用いる系にも肝の
ミクロソームが導入されるようになった.
表1に1975年頃から
i
旦註立旦細胞遺伝学的試験に導入された代謝活性化系の 主なものをまとめた.導入する代謝系としては,げっ歯類の肝臓の 9000x g上清 (
s
9 ) がt
に用いられている.89にはP‑450を含む肝ミクロソームの薬物代謝酵水系の他に 種々の酵素が存在しそれらが細胞に毒性を示す1,21・22)という短所があるが,
逆に,広範囲の物質を代謝できるという長所もある.
第 1節 代謝活性化の意義と導入の必要性
1 ) 化学物質の代謝による活性化
In註voで、の化学物質の生物学的作用を考える時,動物体内での代謝による化 学物質の変化を考慮にいれなければならない.多くの発癌物質 (dimethyト nitrosamine(DMN) , benzo[~Jpyrene(B(a)P) など)あるいは変異原性物質は主に
ミクロソーム分画に存在する薬物代謝酵素系によって代謝的に変化を受けて最 終活性体になることが知られている.例えば,本研究で陽性対照物質として用 いているDMNはチトクロムP‑450により酸化的脱メチル化を受け,生成するmono‑ methylnitrosamineは分子内変換によりmethyldiazohydroxideとなり, methyl‑ diazonium cationを経て生成するmethylcarboniumionが核酸,蛋白質と反応す る.さらに,化学物質は動物体内で代謝的に活性化されるだけでなく一連の酵 素によって解毒化される.この代謝的活性化と解毒のバランスで化学物質の生 物作用例えば毒性,発癌性などが現われてくる.
ところが, in vitroの系,たとえば細菌や株化された動物細胞などはそれ自 身は代謝活性化能をもたないため, i旦註盟での化学物質の生物作用評価の材料
としては制約があった.しかし,代謝活性化の研究,活性化体の有機合成の研 究の進展によって,薬物代謝系を導入することにより担註立旦で代謝を必要と する化学物質の研究が可能になった.実際,染色体異常を検索する時にも,例 えば, DMNを直接細胞に作用させただけでは,細胞毒性も染色体異常誘発性も認 められないが, 89 mix (ラット肝の9000x g上清に補酵素を添加したもの)存 在下では高頻度の染色体異常を誘発する.この時,代謝活性化系が存在しなけ れば,化学物質の変異原性を見逃すことになる.
然 一
標一突
2
指 一 胞 思 索一細
2
検一体表1 動物細胞を用いる担註生旦試験系への代謝活性化系の導入
代謝活性化
細胞* 処理方法 処理時間 8 9など料 文献 L5178Y 回車えドラム 4 h Aroclor‑rat‑89 23 L5178Y 静置法 2 h PB‑rat‑89 24 V79 静置法 1 h mice‑810,microsomes V79 静置法 3 h M C , P B ‑r a t ‑89 3 V79 静置法 1 h PB‑rat‑S15 4 V79 静置法 5 h PB‑rat, mice‑815 25 V79 静置法 1h, 3 h PB,MC,Aroclor‑raト81526 FM3A 振、造法 30 min mice‑S15 27 V79 静置法 3 h PCB‑rat‑815 28 V79 静置法 24 h hamster feeder cell 28 V79‑E 静置法 1 h rat, human‑89 29 CHO 静置法 3 h Aroclor‑rat‑S9 30 CHO 振漫法 1 h Aroclor‑rat‑89 31 CHO 静置法 5 h Aroclor‑rat‑89 21,32 染色体異常
2) ln vitro細胞遺伝学的研究への代謝活性化系導入
化学物質の代謝活性化の重要性が認識されて, in
丘
troの系に代謝活性化系 を導入する試みがなされてきた.一般に化学的に不安定であるとされる活性中 間体をいかに効率よく指標生物に作用させるか,また,いかに広範囲の物質をハυ
噌t・4 令E
a ‑ ‑ 喝'0
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表1 (つづき)
代謝活性化
検索指標 細胞* 処 理 方 法 処 理 時 間 89など料 文献 染色体異常 CHO 静 置 法 1 h PB‑mice‑S9 33
CHO 振、遺法 1 h Aroclor‑rat‑S9 8 C3H/10T1/2CL8振 塗 法 1 h Aroclor‑rat‑S9 34 A(TdCl‑3 振 塗 法 1 h Aroclor‑rat‑S9 34 ヒ ト リ ン パ 球 透 析 バ ッ グ 3 h PB‑mice‑S9 22 ヒ ト リ ン パ 球 振 漫 法 45 min PB‑mice‑microsomes 35 ヒ ト リ ン パ 球 静 置 法 3 h rat liver perfusate 36 ヒ ト リ ン パ 球 透 析 バ ッ グ 3 h PB‑mice‑homogenate 36 WI‑38 静 置 法 1 h Aroclor‑rat‑S9 7 姉 妹 染 色 V79‑E 静 置 法 1 h rat,human‑S9 29 分 体 交 換 CHO 静 置 法 1 h PB,MC,Aroclor‑rat‑S9 2,37 CHO 静 置 法 30 min Aroclor‑rat‑S9 6 CHO 静 置 法 20 min Aroclor‑rat‑S9 5 CHO 振、遺法 1 h Aroclor‑rat‑S9 31 CHO 静置法 1 h PB‑mice‑S9 33 CHO 静 置 法 2.5, 5 h Aroclor‑rat‑S9 38 CHO 振 温 法 1 h Aroclor‑rat‑S9 8 C3H/10T1/2CL8振 漫 法 1 h Aroclor‑rat‑S9 34 A(Tt)Cl‑3 振 漫 法 1 h Aroclor‑rat‑S9 34 WI ‑38 静 置 法 1 h Aroclor‑rat‑S9 39 形 質 転 換 C3H/10T1/2CL8振 塗 法 1 h Aroclor‑rat‑S9 34 BHK‑21/Cl 13振 漫 法 4 h Aroclor‑rat‑S9 40
* 細 胞 L5178Y :DBA/2マウスリンパ細胞性腹水腫場 V79 :チャイニーズ・ハムスター肺由来細胞株 CHO :チャイニーズ・ハムスター卵巣由来細胞株
FM3A :C3Hマウス乳癌由来細胞株 C3H/10T1/2:C3Hマウス胎児由来細胞株
A(T1)Cl‑3 :シリアン・ハムスター由来疑2倍体細胞株 WI ‑38 :ヒト胎児肺由来正常2倍体線維芽細胞株 BHK‑21/Cl 13:シリアン・ハムスター腎由来線維芽細胞株
料誘導剤‑使用動物一肝の使用画分, Aroclor: Aroclor 1254, PB: pheno‑ barbital, MC: 3‑methylcholanthrene
n/u
噌I l
‑ ‑ 司ム1 qu
細胞の処理)の結果では, 2.0 mg/mlまで処理しでも染色体異常誘発性は認めら れなかった41) そこで, PCB誘導を行ったWistarラット肝より調製した89を用 いて上記の振漫法でDMNの染色体異常誘発性を検討した.DMNの処理濃度を,
1.0, 2.0, 3.0および4.0mg/mlとし, 370Cの恒温水槽中で試験管を350 の角度 で固定して振、還しながら3時間処理した.回復時間として24時間おいた後,染色 体標本を作製した.
当研究室で発表した134種の化合物の染色体異常誘発性に関する研究41)では, dialkylnitrosamine類やquinolineのような発癌前駆物質は培養細胞に直接作用
させても明らかな染色体異常誘発性を示さなかった.
代 謝活性化法の確立
振漫 法 第 三 章
.kt
E日
第
その結果,図4のように4.0mg/mlまで処理しても89mix非存在下では,陰竹 対照レベルと同等であったのに対し, S9 IDix存在下で、は濃度依存性のある,符 しい,染色体異常誘発頻度の増加が認められた.1. 0 mg/mlでは 40.0見, 2.0
100
with S9 mix
n u n u n u
a u a U
必斗
( J F ) ω c
︒
一首﹄﹄@﹄句oEo ωo EO
﹄z
oz z= mg/mlで、は54.7お, 3.0 mg/ml では62.0先,そして,最高濃 しかし, 1976年にNatarajanら8)はDMNおよびdiethylnitrosamine(DEN)が89
mix存在下,染色体異常を誘発することを示し,微生物の系で使われているミク ロソーム活性化系を哨乳動物細胞の細胞学的研究に用いることができることを 実証した.彼らの代謝活性化法(振漫法)の手順を以下に示す.
度4.0mg/mlで、は77.3%という 高頻度の異常をもっ細胞の出 現が認められた.4.0 mg/mlよ
り高い濃度では細胞に毒性効 果が現れ観察可能な染色体標 Natarajanらの方法
1 ]細胞をトリプシンではがし,遠心して回収後, 1'"'‑'2 X 107 cells/mlの細胞 浮遊液を調製する.
2]試験管に0.5mlのS9mix, 0.1 mlの被験物質溶液, 0.1 mlの細胞浮遊液を入
3.0 4.0 5.0 (mg/ml) 1.0 2.0
Dose 20
0 0.0
品別
= ω υ
本の作製は困難であった.
以上のように, Natarajanら の方法でDMNがS9mix存在下,
染色体異常を誘発することを れて,数秒間酸素ガスを吹き込んで固くふたをする.
3 J 370C恒温槽中で1時間振還しながら処理する.
4 J
遠心して細胞を回収し,培養液で洗ってシャーレにまく.5]標本作製2時間前にコルセミド処理を行い,空気乾燥法で染色体標本を作製
DHNの染色体異常誘発性 図4
確認できた.
各点は3枚のシャーレの平均値士標準 偏差を示している.
処理時間の検討 2 )
S9 mix存在下, DMN 3.0 mg/mlで、
4時間までの処理時間についてその影響を調べた.回復時間は24時間とした.
Natarajanらは, CHO細胞(チャイニーズ・ハムスター卵巣由来の株細胞)を 用いているが,本研究ではこれまでに蓄積された化学物質の染色体異常誘発性 に関するデータがあることから, CHL細胞を用いて,陽性対照物質DMNに関する Natarajanらの方法の追試,実験条件の検討を行った.
し,ギムザで染色する.
図5から明らかなように,染色体異常誘発頻度は処理時間に比例して増加し,
3時間処理では48.0見, 4時間処理では85.5見の染色体異常の山現が観察された.
ただし,細胞の生存率は3時間の振渥処理だけで50お近くまで低下した.これは,
本来,単層で増殖する細胞を浮遊状態で振湯することによる物理的影響のため DMNのS9IDix存在下での染色体異常誘発性
DMNは,当研究窒の直接法(代謝活性化系を用いない化学物質のみによる培養
15 ‑ 1 )
‑14 ‑
間とした.
と考えられる.そこで,以後の実験における処理時間として,細胞を回収して 染色体標本を作製できる範囲で最も長い時間である 3時間を採用した.
D M N : 2,0 mg/ml Incubatlon tlme : 3h
wlth S9 mlx
nU
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﹂工UZ一こ玄O
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U with 5‑9 mix
DMN: 3 mg/ml Expression time: 24 h 100
80
60
40 (ポ )凶
CO 之O﹂﹂
20 ωε oS EE r‑ υ 壬一 三ヱ 一 ωU
wlthout S9 mlx /φー ー 『 司 令 』 一 人 ー ー 田 ‑<r‑‑ーーイトーー‑..().. ‑‑‑...()..ーーーの
/ 6 12 18 24 30 36 42 48
。
20
。
2 3 4 Incubotion time (h)Recovery tlme (h) after treatment DMNの染色体異常誘発頻度に及ぼす処理時間の影響
図5 DMNの染色体異常誘発頻度に及ぼす回復時間の影響
S9 mix非存在下および存在下, 2.0 mg/mlのDMNで細胞を3時間 処理後,図中の各回復時間をおいて染色体標本を作製した.
各点は3枚のシャーレの平均値±標準偏差を示している.
回復時間の検討
3 ) 4 ) 酸素ガス添加の必要性
本研究で用いているS9mixは主に肝ミクロソームにある薬物代謝酵素系の活 性を利用するものである.その活性発現には分子状酸素が必要とされることか ら, Natarajanらは酸素ガスを添加したものと推測される.そこで,酸素の添加 が染色体異常誘発頻度に及ぼす影響を調べた.
細胞をS9mix存在下, 3.0 mg/mlのDMNで、処理し,酸素処理群には酸素ボンベ その結果図6のように, S9 mix存在下では, 24時間の回復時間をおいた時に,
最高頻度52.7児の染色体異常をもっ細胞の出現を観察できた.24時間以降48時間
より酸素ガスを試験管に数秒間吹き込んだ.
そこで,回復時間は24時 までは非常にゆっくりと出現頻度は低下していった.
図6
S9 mix存在下, 3.0 mg/mlのDMNで細胞を処理し, 24時間 の回復時間をおいて染色体標本を作製した.各点は3枚 のシャーレの平均値±標準偏差を示している.
細胞をS9mix非存在下および存在下, DMN 2.0 mg/ml、で3時間処理後,遠心し て回収し,新しい培養液で再播種後, 6時間から48時間までの, 6時間毎, 8点の 回復時間をおいて染色体標本を作製した.
ηー 唱 ︐ょ
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DMN : 2.0 mg/ml Incubation time: 3 h Expression time: 24 h
60
50
40
30 (ポ )20 一 ちと
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Oω E0 8ε
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壬一 主ヱ 一 ωU
それぞれ42%あるいは48%の異常 の出現がみられたが, MgC12, G‑6‑P あるいはNADPを除いたS9 mix存在下 では,異常出現頻度はそれぞれ, 30%, 24おあるいは3おにまで減少した.生理 食 塩 液 お よ びS9だけの存在下ではDMN は5児以上の染色体異常は誘発しなか った.最も必須な成分はNADPである ことが判明した.
は, どの処理時間でも酸素を添加
しない場合に比べて酸素を添加した群の方が高い値を示しているが,酸素を添 加しない場合でも明らかな陽性結果を示した.このことから空気中の酸素で十 分であると解釈した.高濃度の酸素は染色体異常を誘発するというSturrockら の報告42)もあり,また,実験操作をより簡便にするために,酸素ガスの添加は 行わないことにした.
DMN: 3 mg/ml Expression time : 24 h
その結果図7のように,染色体異常出現頻度は,
20
10 酵素誘導剤の比較
Phenobarbital(PB)型P‑450と3‑ 6 )
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2 0
methylcholanthrene(MC)型P‑450の両 方を誘導する基質としてPCBが用いら れるが,その他の誘導剤も含めて実
。 ‑ < >
DMN+ $‑9 + 0̲.......... DMN+ $‑9 ω60 E
。
ν3 0 Ee
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U
..r:: 主
的 20
u ω
。
際に染色体異常誘発頻度にどのよう な影響を及ぼすかを調べた.S9はPCB
4
DMNの染色体異常誘発頻度に及ぼ 図8
2 3
Incubotion time (h) ot 370(
すS9 mix中の各成分の影響 以外にPB,MCで処理したWistarラット
肝より調製したものと,無処理のラッ トから調製したS9を対照として用いた.
DMNの染色体異常誘発頻度に及ぼす酸素ガス添加の影響 図7
DMN 2.0 mg/mlで細胞を3時間処理し,
酸素ガス添加群
(0)
には,細胞を3.0mg/mlのDMNでS9mix存在24時間の回復時間をおいて染色体様 本を作製した.各点は 3枚のシャ‑
レの平均値±標準偏差を示している.
染色体異常を誘発するモデル物質とし てDMN 3.0 mg/ml, 2‑acetylamino‑
fluorene(AAF) 0.5 mg/ml, 7,12‑ 下処理する時に,数秒間酸素ガスを吹き込んで密閉した.酸素ガ
ス非添加群 (A) は細胞, DMN, S9 mixを試験管に入れてそのま ま密閉した.
d imethy 1 benz 呈[]anthracene(DMBA)
0.5 mg/mlを用いた.CHL細胞を被験物質と各種S9 mix存在下, 3時間の振滋処理 を行い, 24時間の回復時間後染色体標本を作製した.
図9に示すように,同じモデル物質で処理しでも,誘導剤によって異常頻度は S9 mix中の各成分の誘発異常頻度に及ぼす影響
5 )
変わる傾向を示した.DMNはPB処理のS9mixを用いたときに, AAFはPCB処理の S9 mixを用いたときに, DMBAはMC処理のS9 mixを用いたときに,それぞれ最高 成分を一つず、つ除いたS9mixと2.0mg/mlのDMNで細胞を3時間処理後, 24時間
の回復時間をおいて染色体異常を観察した.
図8にその結果を示した.完全なS9mixあるいはKClを除いたS9 mix存在下で
19 ‑ 18 ‑
MC‑S9
PCB‑S9
STYRENE門ONO門ER
20
10
弘 、 で : 一 一 一 一 ̲ ‑
‑0 S9‑0,0625 0,125
o
0 s e (mg/ml)0,25
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(肘
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20
また, styreneは, PCB誘導の S9よりもMC誘導のS9を用いたと きに明らかな染色体異常を誘発
(図10) 頻度の染色体異常を誘発する傾向を示した.PBはDMNでは最も効果的であったが,
AAFでは無処理ラットのS9よりも低い頻度の異常しか誘発しなかった.しかし,
この結果は, AAFの肝発癌性がPBの同時投与によって低下するという報告43)と
関連があるようで興味深い. した.
このように化学物質によって はPCBが必ずしも最も効果的な DMN 3.0mg/ml
誘導剤とは限らない. しかし,
本研究で用いているPCBすなわ ちKanechlor400(KC‑400)につ いて, PB型のP‑450ならて)どにMC
Styreneの染色体異常誘発頻度に 及ぼす酵素誘導剤の影響
図10
MC‑S9:MC誘導を行ったS9 PCB‑S9 : PCB誘導を行ったS9 型のP‑450による代謝活性化を
両方とも誘導し得るという生化 学 的 報 告44)があり,広範な化 学物質をスクリーニングする目 的では,やはりPCBが適切な誘 導剤といえる.
AAF 0.5 mg/ml
S9一:S9非 添 加 群
当研究室では染色体異常誘発性を検索するときの被験物質の溶媒として生理 食塩液(最終濃度10見),エタノール(lわ, dimethyl sulfoxide(DMSO)(0.5お),
Non圃treated PC8
P8
MC
亡二二コ
~ 匿密密ヨ
11111 1 1111 1ft
溶 媒エタノールの影響 7 )
DM8A 0.5 mg/ml 70
60
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40
30
20
10
( ポ
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20
ωE
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1%carboxymethylcel1ulose sodium(CMC)水溶液(10先)の4種を用いている.最終
。
濃度は細胞毒性試験を行い,溶媒自身の細胞毒性が認められない濃度を選んで 決定した.通常は,前3者の溶媒のうち最も溶解度の高い溶媒を選んで被験物 質を溶解して,細胞を培養しているシャーレに添加しているが,どれにも溶解
しない物質については, 1見CMC水溶液に懸濁させて添加している.
染色体異常誘発頻度に及ぼす酵素誘導剤の影響
細胞をDMN 3.0 mg/ml, AAF 0.5 mg/mlおよびDMBA0.5 mg/mlで,無処理およびPCB,PBあるいはMCで酵素誘導を行っ 図9
エタノールを溶媒に用いた時 これまで対照群では観察されなかった程の高率の ところが, S9 mixを用いる代謝活性化法では,
に,溶媒対照で表2のような,
cteを含む染色体異常の出現が認められた.
1i
ηL
たWistarラットから調製したS9mix存在下処理した.
各点は3枚のシャーレの平均値士標準偏差を示している.
‑20 ‑
表2 エタノール対照群で観察された染色体異常
染 色 体 異 常 出 現 頻 度 ( %)
標本番号 実験条件 倍 数 体 ctg ctb cte csb cse total B‑2209 EtOH
。 。 。 。 。 。 。
B‑2210 EtOH+S9 mix
。
2 11 17。 。
21 B‑3182 EtOH+S9 mix 2。
2 5。 。
6S9 mix存在下の被験物質処理群で、染色体異常が観察された時, 溶媒エタノー ルの影響か,被験物質の影響か,区別することができない.そこで,この検ぷ 法ではエタノールを溶媒としては用いないことにした.
最終的には以下の点についてNatarajanらの方法を修正した振温法を用いて,
1978年から1981年まで約70検体について染色体異常誘発性を検索した.
1 ]酸素ガスの添加は行わない.
これは,エタノールがS9mixで、酸化されてアセトアルデヒドを形成したため 2]処理時間は3時間とする.
ではないかと推察されたのでアセトアルデヒドの染色体異常誘発性を調べた. 3]回復時間は24時間おく.
その結果,表3のように明らかな染色体異常誘発性が確認された.
しかし,この振漫法には,基本的に以下の2つの問題点が含まれていた.
表3 アセトアルデヒドの染色体異常誘発性
1.本来単層で増殖している細胞を浮遊状態で振浸するという非生理的条件で実 処理時間 濃度 倍数体 染 色 体 異 常 出 現 頻 度 ( %) 判 定 験を行っていること.実際, 3時間振、還すると生存率は50見近くまで低下す
(h) (mg/ml) (見) ctg ctb cte frg csb cse total る.
24 O(none)
。 。 。。。。
2.化学物質の処理濃度が非常に高い.特に,多環芳香族炭化水素においてその 24 O(saline) 0。。。。。。 。
傾向が顕著で,溶解限界をこえて,懸濁状態で処理してやっと陽性結果をぷ 24 0.02。
2 2。。。
5+
した.24 0.03
。
2 9 10。。。
19 +24 0.04 6 27 21
。。。
40 + Natarajanらは1976年に発表した報告の中でDMNについて振滋法と静置法の簡 単な比較も行っており,両法は,同程度に効果的であるとしながらも酸素ガス 48 O(none)。。。。。
添 加 が や り に く い , よ り 多 く の 印 刷xが必要で、あるという点から振漫法を採用 48 O(saline) 1。。。。。
した.48 0.02
。
11 16。。。
23 十 しかし,本研究では,酸素ガスの添加は行わないことにしたこと,また, S9 48 0.03。
16 25。。。
35 + mixの量の問題は,処理時の液量を少なくすることによって解決できるのではな 48 0.04 Tox いかと考え,細胞をシャーレに増殖している状態のまま処理する方法を試みるTox:分裂細胞がほとんど観察されなかった. ことにした.
円 /心 ︼
n乙 町 ︑
υ
円/臼
静 置 法
Pぜペk
Eロ
第 以上の結果から, 89濃度は5先,処理時間は6時間を採用することにした.
0,025rng/m1 D門BA
1,0mg/ml
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ア 冷 占
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こい戸︻主的一一ωU
播種細胞数および処理までの培養日数は当研究室の直接法にならい, 2x104 cells/plateおよび3日とした.処理時の液量を3mlにし,その内訳は, 2.5 mlが培養液, 0.5mlが89mixとした.89 mixの組成は,振塗法と同じである.
ただし,処理時の最終89濃度は振漫法では21.4%であったが,静置法では,切に なる.被験物質は,生理食塩液に溶解するものは,
DMSOに溶解するものは0.015mlの溶液を添加する.
シャーレあたり0.3ml,
89濃度の影響および処理時間の検討
10 7,5 5
% S9 (v/v)
。
2 10。
1,5mg/ml Phenocetin
向。 30
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, 昼 』 『l ‑ 4
0,02mg/ml B(o)P
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が代謝反応を解毒の方ヘ押し進めているためではないかと考察し,添加ミクロ ソーム量の選択には注意を要すると結んでいる.
処坦時間は,振漫法と同じ 3時間と,この方法では細胞に対する物理的損傷が 少ないようなので6時間についても検討した.
ハU7.5 5
% S9 (v/v)
。
289濃度について,低濃度のせまい範囲に至適濃度のある例がAF‑2による
。
L5178Y細胞の突然変異24), B(a)P, aflatoxin B1による姉妹染色分体交 換6,〕 トリプトファン熱分解産物によるサルモネラ菌の突然変異45)などで報告されて いる.また,西ら28)は,細胞経由法とミクロソーム(815)経由法を比較して,
細胞経由法で良好な結果を示し,これは,ミクロソーム経由法では過剰の酵素
本研究ではl見, 2%, 5%, 7.5%, 10犯の89濃度について染色体異常誘発頻度の変 (図11)
化を調べた.
10
染色体異常誘発頻度に及ぼすS9濃度および処理時間の影響 図11
加につれて直線的に上昇していった.Phenacetin 1.6 mg/mlで、は, 89濃 度5おか
S9 mix存伝下,
静置法で3時間(点線)あるいは6時間(実線), ら10%の範囲で同程度の異常出現頻度が記録された.
各化学物質で細胞を処理した.各点は3枚のシャーレの、ド均値±
標 準 偏 差を示している.
7,5 5
% S9 (v/v)
。
2 10。
10 7,5 5
% S9 (v/v) 2
。 。
DMN 1.0 mg/mlで、細胞を処理すると,染色体異常頻度はS9濃度成から, 89濃度 の増加につれて直線的に上昇した.B(a)P 0.02 mg/mlで、は, S9濃度目で異常出 現頻度が最高となり,その後はS9濃度の増加につれて異常頻度はゆるやかに減 少していった.DMBA 0.025 mg/mlの処理で は,染色体異常頻度は, S9濃度の増
どの物質についても6時間処理の方が高い染色体異常出 処理時間については,
現頻度を示した.
F hυ
nL
‑24 ‑