語文法知識
著者 阪上 脩
出版者 法政大学教養部
雑誌名 法政大学教養部紀要. 外国語学・外国文学編
巻 57
ページ 109‑123
発行年 1986‑01
URL http://doi.org/10.15002/00005333
109
大学における外国語教育の問題 一学生のフランス語文法知識一
〔フランス語共通テスト結果〕
阪上Il行
大学生が第1学年においてどの程度第2外国語を習得しているか,第2学年 においてどの程度第2外国語の文法知識をもっているか,を調べるのがこの共 通テストの目的であった。
第2外国語教育の力法については,すでに多くの報告があるが,そのような 方法をⅢいた際の結果については,それを測ることが困難であるため,どれぐ らいの学生が理解しており,どれぐらいの学生がlll1解していないか,といった 報告はあまり見られない。特に1学年全般に対する調査となると,大量のもの
となるため,これまで大規模な調査報告はなされていない。
従来このような共通テストは,教科書がまちまちであるため,また大量の答 案を処理しなければならないため実施が困難であった。それがつぎに述べる方 法によって可能となったのである。本学においては,第1学年と第2学年にお いて,第2外国訂iを履修することになっており,鍬2タト国語のひとつとしてフ ランス語が選択履修されている。第1教養部フランス語研究室では,使用教科 書を出来るだけ共通のものにするために,第1学年の始めに数種瓶の教科書を 選び,その中から採川教科書を決めるようにしている。したがって1年の文法 の授業には同じ教科書を使うクラスがいくつかあり,共通テストが可能である。
教科書として「初歩のフランス語文法」「12課の初級フランス語」を使用し ているクラスにおいて,1984年11月上旬,10課の終った段'1皆で代名動詞,関係訂;
代名詞その他に関して共通テストを実施した。受験者の所属学部は,法学部,
文学部,経営学部で,受験者総数は392名である。
試験には,外国語表記用に作った特殊なマークシートを川い,幾つかの答の '1:Iから正答を選ぶ方式ではなく,空白の'11にフランス語を入れる解答方法にし た。したがって,まぐれあたりの確率は少なく,またフランス語の綴りをl1Ijう
110
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114
ことの出来るものである。結果は表1表2.lx'1.図2の通りである。教科書が2
種瓶であるため,1111題iMグループ,Bグループの2櫛類となり,集i汁表M
称顛となっている。全般的に見て言えることは,代名助詞や''二'性代名詞の問題ができた学生が多
く,12番から17番にかけての'1'1題が11l来た学生が少ないことである。イWi動詞 のIIIj題は,i直税法現在形の代名動詞を複合過去形になおす問IUuで,かなりむず かしいだろうと子illllしていたが,怠外に成緬がよく,むしろenfantsとか pleurerといったiii語を書かせる'111腿の力が111来が悪かった。これは代名動詞 表3仏語共通テスト結果 IF解者のパーセン 2K組2H組la,blanche 27.91%32%
sont,bateaux 37.21%40%
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18.60%
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estaim6e 67,44%62%
jen'aipasde 37.21%64%
ya-t-il 83,72%88%
lnel. 72`09%86%
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quand,arriverez 76.74%84%
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pol・tant 60,47%58%
クラスヘイキンテン42.20点42.54点 受験者数43名5M
M動詞の複合過去の問題|:
㈹接話法にす釧題{!
…ⅢIPI
115
や中性代名詞が教科書の中心課題になっているのに対して,enfantやpleurer
はほんの少し出て来る程度だからではないかと考えられる。同じ代名動詞でも leverの出来が悪いのは,「初歩のフランス語文法」ではleverが中心課題と して出ていないからだ,ということで解釈で出来るのではないかと思われる。
そしてsixのように英語と同じなので,ほとんどの学生が出来ると予想してい たものが,意外に正解率が低いのも同じ理由による屯のではないだろうか。
そこで言えることは,学生は,ここが「やま」だと思って勉強しているとこ ろは,少しむずかしい文法事項でも理解出来ないことばないということである。
j 別スープJク生く組%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%点名37047137400152584316381 年ジHⅢ60240580412712993764894 一一一E904722796726214110605160くテ211121 5133526477423 111 %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%点名44331775601249 組nMMM肥肥⑫M肥肥90554326884784 L022288624406266083229081 22 22216348232 4
組吻吻吻%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%点名
116473374831956756637 552675116259849186094CMⅢM088402526015147560715
2211 112 3122315638252 %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%点名組船岡囲囲蛆 39 6 687245945 28 68 1 164380780043 Ma20080270300033966156102 22 111 1 5 12328218252 ソ%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%点名キ冊沁妃別別弱釦卵別切開河Ⅳ冊、妬w咀妬刈妬別乃而肪イ4ⅡOL5454爪0430945034222ⅢL2へ21111111125123437558343 均数平総総116
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型圏亜川刷鯛艸蝋 繊捧鰔』
117
代名動詞は英文法には出て来ないので,学生には理解しにくいだろうと思われ るけれども,Ilssesontserr61amain.と書かせるIHI題は60~70%の出来 を示している。
条件法のllI1題もむずかしいと予想していたけれども,48%の学生が正解であ った。しかもこれはseraientと三人称複数になっており,この綴りが一宇で も間違っていれば×だから,かなりの出来といわねばならない。
つぎに2年」この節2タト|玉|語授業は,識読が111心で,文法の授業は少なく,し たがって1年のときに習った文法をかなり忘れているか,あるいは文法知識が ないというのが2イド生担当者の印象である。これは雛2学年の外国語教育の 重大11{]題で,場合によっては文法知識がほとんどない学生に原書講読を課する
こととなり,2年生の講読授業を77検討する必要が感じられる。
2年生の共通テストは,1年生の場合と遮って,同じ教科書を使っているク ラスはなく,ただ単に文法の基礎知識をIMjう試験となった。初級文法の教科書 の内容はだいたい共通しており,関係代名詞や形容詞の鮫」二級などはどんな教 科書にM}ているので,ほとんどの教科書に|[}ていると思われるIMI題を1イド2 年共通問題として11Iした。結来は表3の通りである。
表にあらわれている通り,文法に関しては,2年4kよりも1年生の方がよく 出来る。これは前に述べたように,2年生の第2外国iiJi授業には文法の授業が 少<,一力1年生は文法を習ったばかりだったからである。
1年2年共通lIU題について,その結果を比i佼してZKよう。
一年二年 中性代名詞enのIIU題がlll来た学生57.4%14.93%
関係代名詞queの1111題が出来た学生61.5%17.54%
形容詞蛾上級lesplus〃 47.42%20.52%
6treの条件法〃51.17%14.55%
人称代名詞la,lui〃 34.64%15.3%
上の表でⅢ」らかなように,1年生の段階においては,上記の文法事項を約半 数の学生が理解しており,それが2年生では,約17%の学LILか理解していな いことになる。これはごく大ざっぱにいうと,2年生の一クラスを50名として,
そのうち約8名しか理解しておらず,あとの42名はこれらの文法事項がわから ないまま原書識読をしていることになる。これはあくまで上記5題の試験結果
118
図4Aグループ仏語共〕Ⅲ試験得点分布
MIlDE$'1 80点以上 33コ'156.9%12名27.9%
70点~79ノノバ1M19%5名12.5%
60点~6M9名15.5%2名4.7%
40点~5Mルイノ13.4%10名23.3%
39点以下 3:f’15.2%14打32.6%
クラス平均ノ、'、';77.58ノ,'、(54.14点
H組 42希75%
7名12.5%
5コf’18.9%
2名3.6%
0名0%
86`07((
1組 DID組 Hル'1
80A'.(ul:
39A'』以1「
39 601.11~
69.11A-
鯨
0 IIi~ DQb Fn、0F59点 I1f40 59.1.11
Aグループ
112名 49宿 24fl 2M 213箱 80`1A(以上
60#、(~79A'、(
40点~59ノノパ 39点以下 受験者総数
52.6%
23%
11.3%
13%
折導困iMiなグル %
全受験者の」1位3分の1,7Mは85点以-lx 全受験者の''1位3分の1,7Mは70点~84点
119
Q$Ⅱ 1W148.1%
2名7.4%
Jf'111.1%
62f′122.2%
3名11.1%
’’67.11点
F組 12名41.4%
4名13.8%
1名3.4%
4名13.8%
8名27.6%
61.38点
%%%%% 66431
123913 》一一『Ⅱ5111
令名名名名名29048 122.22 1
Aグループ合計 Q組 F組
80点以」:|: 80点以上
39点以 39点以下
WllliI 熟
70点~79点((IMI
'4qI」い~59点Iil lOIj Bb/難}
0J)小69点バー69点 0A
120
図5Bグループ
M1[
人数
2 13
8 8 4 2 2 52.19ノノ、(
組数339456P人
FG組 人数
0 7 2 6 11 8 27 26.04点 80ノノ、(以」1
60`1.1.(~79![
50`'`!、(~59'1`!【
40`'0'、(~49ノ,((
30,'01.(~39ノ、!`(
20`'`'、(~29ノ`'、(
19人'.(以下
クラス平均ノ.1A 48.33'1A(
Lill FGjMl
Pjllll
0#
121
KiMl 人数
0 7 2 1 13
7 19 29.75’1,1A
合計
5 30 21 19 33 23 48
総数179名
Bグループイヤ計 Kjlll
40.1ノ 1 49`’
80点以上
LO
rJ
122
から推測したことではあるけれども,大筋において,あまり大きな違いはない と思われる。したがって2年生の識読の授業においては,もう1度初級文法の 説叫」が必要であり,1イ11で習ったことだからわかっているだろうと思って授業 を進めると,大半の学生はIll1解していないというようなことが起りかねない。
最後にクラス別の得点分布を示すと,図4図5の通りである。
この得点分布を見て川らかなのは,まずクラスによって分布状態が全くまち まちなことである。80ノム(以」二が多いクラスもあれば,非常に少いクラスもある。
テスト前の予想でも,クラスによって11}来,不lIl来のあることはわかっていた が,これほど大きな違いがあるとは予想していなかった。教員のあいだでは,
クラスの3分の1は勉強意欲があり,3分の1は中間層で残り3分の1は勉強 意欲なし,という「Ⅱ象をもつ人が多く,この中Ⅱ'1層を’'1何に3|き上げるかが教 員の問題だとする考え方の人が多い。しかし実際に得ノA(分イ|j表をつくって承る と,クラスによって千差万別で,とて1M分の1づつに分瓶したり11l来ない。
強いてAグループ213名を3分の1づつに分けると,上位3分の1は85点以上,
1二11位3分の1は70ルズ以上,下位3分の1は69点以下ということになり,下位の
'1可によく|Ⅱ来る学生も入れてしまうことになる。したがってやはりF1]象よりも,クラスの実情を正1iiiに把掘することが爾要である。
大学における第2外国語授業は,文法を11|来るだけはやく終えて,どんどん
原書を読んでいくのがよいという考え方もある。しかしその方法で授業した 結果がどうなっているかの調査はあまり行なわれていない。半分以」この学生が 理解しないまま,どんどん識義を進めていくというのは,決していい方法とは 言えないだろう。これは鋪2外国語授業だけではなく,大学の識義全般につい ても言えることで,多くの学生が]111解して,はじめてつぎの段階へ識義を進め るというのが,適切な指導というものであろう。ただどれくらいの学生が理解 しているかをillllろ方法がないため,「かん」に頼ったり,経験から割り出した りしていたが,これらのことはやはり正確なデータに韮づいて割り出されるべ きであり,そのデータを出す力法もコンピューターなどによって可能となって 来ている。今後そのようなデータが多く出され,大学の識義が,学生を適切に 指導するものとなることを期待したい。終りにあたって,この共通テストに御 協力いただいた先生方に厚く御礼'1]し上げたい。123
註
「初歩のフランス語文法」鈴木道彦・恒川邦夫箸
「12課の初級フランス語」土居寛之・西尾和子署
jl)]日出版社 芸林書房
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