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日常生活動作を利用した

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【課程内】

博士(スポーツ科学)学位論文

日常生活動作を利用した

レジスタンストレーニングの有用性

Feasibility of resistance training employing daily physical actions

2009年1月

早稲田大学大学院  スポーツ科学研究科

高井  洋平

Takai, Yohei

研究指導教員:  矢内  利政  教授

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目次

第1章 緒言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1   Ⅰ.序

  Ⅱ.研究小史

1. 筋のサイズ,筋収縮力および日常生活動作遂行能力における加齢変化に関する研究 2. 高齢者におけるレジスタンストレーニングの効果に関する研究

3. 筋電図を用いた日常生活動作における筋活動水準に関する研究   Ⅲ.本研究の目的と構成

第2章 日常生活動作における筋活動水準の定量化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15   Ⅰ.目的

  Ⅱ.方法   Ⅲ.結果   Ⅳ.考察   Ⅴ.まとめ

第3章 日常生活動作を利用したトレーニングの効果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34 第1節 高齢女性における日常生活動作を利用したトレーニングの効果・・・・・・・・・・・・34   Ⅰ.目的

  Ⅱ.方法   Ⅲ.結果   Ⅳ.考察   Ⅴ.まとめ

第2節 若齢女性における日常生活動作を利用したトレーニングの効果・・・・・・・・・・・・50   Ⅰ.目的

  Ⅱ.方法   Ⅲ.結果   Ⅳ.考察   Ⅴ.まとめ

第4章 総括論議・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・59   Ⅰ.日常生活動作における筋活動水準の算出方法

  Ⅱ.日常生活動作を利用したトレーニング効果とトレーニング強度および頻度との関係   Ⅲ.日常生活動作を利用したトレーニングの有用性

第5章 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71 付録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・87 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・89

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第1章  緒言

Ⅰ.序

  加齢に伴い骨格筋のサイズおよび収縮力は低下する(Vandervoort and McComas, 1986; Hurley, 1995; Lexell, 1995; Lynch et al., 1999; Janssen et al., 2000).それらの変化は,高齢期における日常生 活動作の遂行能力の低下につながる(Landers et al., 2001).それゆえ,誰にでも実践可能な骨格筋のト レーニング方法を確立することは,高齢化が進む我が国において極めて重要な研究課題である.

  誰にでも実践可能なトレーニング方法の条件として,安全で,効果的で,楽しいことに加えて長期間 にわたってトレーニングを継続実践できることが重要である.従来,若齢者から高齢者に対して,筋の サイズおよび筋収縮力を増加させる代表的なトレーニング方法として,特殊な器具を用いて筋に負荷を 与えるレジスタンストレーニングの有効性が検証されてきた(Häkkinen et al., 1998; Kamen and Knight, 2004; Andersen et al., 2005).しかし,このような方法では,特別な負荷装置が必要であるだ けでなく,トレーニング動作の習得やトレーニング実施中の十分な安全管理が必要となる.つまり,器 具を用いる方法は,効果を得る上で必要な負荷強度の設定が容易であるが,日常的に誰もが容易に実践 することは困難である.それに対して,近年,歩行(Rook et al., 1997),台の昇り降り(de Vreede et al., 2005),椅子の座り立ち(Kubo et al., 2003a)のような日常生活動作を用いたレジスタンストレーニング の効果に関する研究も行われている.仮に,そのような日常生活動作を用いたトレーニング方法が,筋 のサイズや筋収縮力の維持や向上に有効であるならば,誰もが簡単に骨格筋のトレーニングを実践でき ることになり,その意義は極めて大きい.

  レジスタンストレーニングによって筋のサイズや筋収縮力を増加させるためには,日常生活水準を上 回る筋活動が必要である(Hettinger, 1968).しかしながら,日常生活動作をレジスタンスエクササイズ として採用した場合,採用される動作が筋に与える負荷の大きさは,実施者の筋収縮力発揮能力に対す る自体重,または身体質量による慣性の大きさによって制限される.しかし,これまでのところ,動作 様式ならびにトレーニング効果の有無との関連で,日常生活動作における筋にかかる負荷強度を明確に した研究はない.

  そこで,本学位論文では,日常生活動作遂行時に筋にかかる負荷を定量し,さらに日常生活動作を利 用したトレーニングの効果を検討することで,日常生活動作を利用したトレーニングの有効性を明らか にすることを主たる目的とした.

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Ⅱ.研究小史

1. 筋のサイズ,筋収縮力および日常生活遂行能力における加齢変化に関する研究 1-1 筋のサイズにおける加齢変化

  ヒトにおける加齢に伴う筋のサイズの低下について報告した先行知見は多くある.その多くは,幅広い年代層 を対象とした横断的な研究(Young et al., 1984, 1985; Overend et al., 1992; Kent-Braun and Ng., 1999;

Lynch et al., 1999; Janssen et al., 2000; Frontera et al., 2000a; Klein et al., 2001; Trappe et al., 2001;

Kubo et al., 2003b; Narici et al., 2003; Morse et al., 2004; Morse et al., 2005a, 2005b)および縦断的な 研究(Greig et al., 1993; Frontera et al., 2000b)に分けられる.筋のサイズには,Magnetic resonance imaging (MRI)法,computer tomography (CT)法,dual-energy X-ray absorptiometry (DEXA)法および 超音波法が用いられ,筋量,解剖学的筋断面積(anatomical cross-sectional area:ACSA)および筋厚が測 定され,それらの加齢変化に関する報告がなされてきた.以下にその主要な先行知見をまとめる.

  横断的な研究の代表的ものとして,Janssen et al. (2000)の報告が挙げられる.彼らは,18歳から88歳まで の男女を対象にしてMRI法を用いて全身筋量および四肢の筋量を測定した結果,男女ともに筋量は45歳以 降に低下することを報告している.また,Lynch et al. (1999)は,DEXA法を用いて19歳から93歳までの男女 の上肢および下肢筋量における加齢変化を調べた.この報告によると,男性では上肢および下肢筋量ともに60 歳代から低下が起こる.一方,女性において上肢の筋では60歳代から低下が起こるが,下肢の筋では40歳代 から低下が起こり始めるとしている.超音波法で測定された筋厚と年齢との関係を調べた先行知見においても同 様な結果が得られている.例えば,宮谷ら(2000)は,筋厚から筋重量を推定し,年齢との関係を調べた.その結 果,加齢による筋重量の低下は40歳代から60歳代の間に起こることを観察している.これらの先行知見をまと めると,筋のサイズは40歳代から60歳代の間に低下が始まるといえる.

  但し,加齢による筋のサイズの低下の度合いは部位によって異なる.Janssen et al. (2001)は,40歳以降に おける年齢と上肢および下肢筋量の関係を調べた結果,加齢による上肢筋量の低下よりも下肢筋量の低下の ほうが大きいことを示した.また,安部と福永(1995)は,20歳代から80歳代までの男女約4000人を対象として,

超音波法を用いて四肢の筋厚を測定し,筋厚と年齢との関係を検討した.その結果,大腿前部の筋厚は 20 歳 代以降から低下していくが,上腕部の筋厚では 60 歳代まで明らかな低下はないことを示している.同様に,20 歳から 78 歳までを対象に四肢の筋厚を測定した宮谷ら(2000)は,膝関節伸展筋群および足関節底屈筋群の 低下が上肢や他の下肢筋群に比べて著しいことを示した.また,Kubo et al. (2003b)は,30歳代,50歳代,70

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歳代の男女を対象に,超音波法を用いて膝関節伸展筋群,足関節底屈筋群,肘関節伸展筋群の筋厚を測定 した結果,膝関節伸展筋群および足関節底屈筋群では 70 歳代の筋厚は他の年代のそれと比較して低いが,

肘関節伸展筋群の筋厚では3つの年齢群間で差がないことを観察している.以上のような先行知見をまとめると,

加齢による筋のサイズの低下の度合いは上肢よりも下肢筋群のほうが大きいといえる.筋によって加齢変化が異 なる要因は今までのところ明らかになっていないが,筋ごとの筋線維タイプの違い(Lexell et al., 1988)や日常 生活による筋の使用頻度の違い(Klitgaard et al., 1990; 宮谷ら,2000)が影響している可能性が指摘されて いる.

  横断的な研究のなかには,若齢者と高齢者を対象に筋のサイズの比較をした報告が多くある(Young et al., 1984, 1985; Overend et al., 1992; Kent-Braun and Ng., 1999; Frontera et al., 2000a; Klein et al., 2001; Trappe et al., 2001; Kubo et al., 2003b; Narici et al., 2003; Morse et al., 2004; Morse et al., 2005a, 2005b).特に,加齢による影響を受けやすい抗重力筋である膝関節伸展筋群と足関節底屈筋群を対 象とした報告が多い.超音波法で膝関節伸展筋群の ACSAを測定した先行知見では,若齢者の ACSA に対 する高齢者のその割合は男性で75%( Young et al., 1985),女性で67%( Young et al., 1984)であった.膝関 節伸展筋群について,Trappe et al. (2003)はMRI法を用いて膝関節伸展筋群のACSAを測定した結果,高 齢者における膝関節伸展筋群のACSAは,若齢者のそれに対して男性では80%,女性では87%であることを 報告している.膝関節伸展筋量を測定した先行知見においても同様の結果が得られている.若齢者および高 齢者の男女を対象に膝関節伸展筋量における年齢差を検討したTrappe et al. (2001)は,若齢者と比較して 高齢者のほうが男性で35%,女性で24%それぞれ低いことを報告している.また,Miyatani et al. (2003)は超 音波法を用いて大腿前部の筋厚を測定し,若齢者と高齢者の比較を行っている.その報告によると,高齢者の 筋厚は,若齢者の筋厚に対して男性で74%,女性で72%であった.同様の方法で大腿前部の筋厚を測定した Candow et al. (2005)も,高齢男性の筋厚が若齢男性のそれと比較して低く,高齢者の筋厚は若齢者の筋厚

の 80%であったことを報告している.一方で,膝関節伸展筋量に対する内側広筋,外側広筋,大腿直筋,中間

広筋の各筋量の割合は若齢者と高齢者に違いがない(Trappe et al., 2001).このことは,協働筋のなかでは加 齢による低下の筋間差がないことを示唆するものである.

  足関節底屈筋群について,Vandervoort and McComas (1986)は超音波法を用いてACSAを測定した結 果,若齢者に対する高齢者の ACSA の割合は,男性で 77%,女性で 67%であったことを報告している.MRI 法を用いた足関節底屈筋量では,高齢者の筋量は若齢者と比較して低いことがいくつかの先行知見で報告さ

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れている(Morse et al., 2004; Morse et al., 2005b; Thom et al., 2005).これらの先行知見における高齢者の 足関節底屈筋量は若齢者のそれに対して65~81%である.超音波法を用いて下腿後部の筋厚を測定した先行 知見で,Miyatani et al. (2003)は若齢者と高齢者を比較して,高齢者の筋厚は,若齢者のそれに対して男性

では 87%,女性では 94%であることを報告している.高齢男性を対象に下腿後部の筋厚を測定した Candow

et al. (2005)は,若齢者と比較して高齢者の筋厚が 25%低いことを観察している.膝関節伸展筋と同様に,足

関節底屈筋量に対する腓腹筋内側頭,腓腹筋外側頭,ヒラメ筋の各筋量の割合に年齢差はない(Morse et al., 2005c).これは,足関節底屈筋群においても協働筋間による加齢による筋のサイズの低下の度合は同じである ことを示している.

  その他の下肢および上肢筋群の筋のサイズについても,若齢者および高齢者を比較した報告がなされている (Rice et al., 1990; Kent-Braun and Ng., 1999; Klein et al., 2001; Kubo et al., 2003b).足関節背屈筋群 を対象としたKent-Braun and Ng (1999)は,足関節背屈筋群のACSAに年齢差があり,若齢者に対して高 齢者のACSAが,男性で79%,女性で89%であることを報告している.MRI法を用いて肘関節屈曲および伸 展筋群のACSAを測定したKlein et al. (2001)の報告によると,若齢者に対して高齢者のACSAの割合は,

肘関節屈曲筋群で 84%,肘関節伸展筋群で 74%であった.一方で,超音波法で上腕前部および後部を測定 した先行知見では,上腕前部では年齢差(若齢者に対する高齢者の割合: 80%)が認められるが,上腕後部で は年齢差が認められないとする報告がある(Candow et al., 2005).また,Kubo et al. (2003b, 2003c)の結果 も上腕後部の筋厚に年齢差を示していない.以上のような先行知見をまとめると,高齢者の筋のサイズは若齢 者のそれと比較していずれの筋においても小さいと言えるだろう.

  一方,縦断的な研究を見ると,Greig et al. (1993)は,8 年間の追跡調査から膝関節伸展筋群のACSA が 6.4%減少することを報告している.近年では,Frontera et al. (2000b)が,高齢男性を対象に膝関節伸展筋群 および屈曲筋群におけるACSAの12年間の縦断的な加齢変化を調査している.その結果による,膝関節伸展 筋群および屈曲筋群のACSAは,12年間でそれぞれ16%および15%の低下を示した.

1-2 筋収縮力における加齢変化

  年齢に関わらず,筋収縮力と筋のサイズとの間には相関関係があり(Young et al., 1984; Philips et al., 1992; Overend et al., 1992; Akima et al., 2001; Fukunaga et al., 2001),筋のサイズは筋収縮力を決定す る主要因である(Fukunaga et al., 2001).このことは,筋収縮力の低下は主に筋のサイズの低下の影響を受け

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ることを示唆するものである.事実,20歳から93歳までの男女を対象に筋量および筋収縮力を測定したLindle

et al. (1997)の報告によれば,加齢による筋量および筋収縮力の低下はどちらも 50 歳代から起こり始める.

Lynch et al. (1999)は,19歳から93歳までの男女を対象に上肢および下肢筋群の筋量と短縮性および伸張 性筋力を測定した結果,男性では上肢および下肢ともに50代から,女性では上肢は60代,下肢は40代から 筋量は低下し,それに伴い短縮性及び伸張性筋力も低下したことを報告している.また,Bembem et al.

(1991)は20歳代から60 歳代を対象に等尺性筋力を測定し,年代別に比較を行った.その結果,等尺性足関

節底屈および背屈筋力は20歳代と比較して40歳代以降で低いことを示している.

  筋のサイズにおける加齢変化と同様に,筋収縮力の加齢変化においても若齢者と高齢者を比較した先行知 見が多くある(Young et al., 1984, 1985; Viitasalo et al., 1985; Overrand et al., 1992; Kent-braun and Ng, 1999; Frontera et al., 2000a; Klein et al., 2001; Lanza et al., 2003; Morse et al., 2004; Simoneau et al., 2007; Yu et al., 2007).若齢者および高齢者を対象に等尺性膝関節伸展筋力を測定したYoung et al.

(1984, 1985)の報告によれば,若齢者に対する高齢者の膝関節伸展筋力の割合は,男性で 61%,女性で

65%であった.先行知見における等尺性,短縮性および伸張性膝関節伸展筋収縮力における若齢者に対する 高齢者の割合は,48~80%である(Viitasalo et al., 1985; Overrand et al., 1992; Roo et al., 1999;

Frontera et al., 2000a; Stackhouse et al., 2001; Lanza et al., 2003; Candow et al., 2005; Kubo et al., 2007; Yu et al., 2007).Vandarvoort and McComas (1986)は,20歳~100歳までの男女を対象に等尺性足 関節底屈筋力を測定した結果,20歳代と比較して60歳代以降で有意に低いことを報告している.60歳代以降 の等尺性足関節底屈筋力は,20歳代と比較して60歳代男性で20%,女性で15%,70歳代男性で29%,女

性で43%,80歳代男性で45%,女性で52%それぞれ低かった.短縮性足関節底屈筋力では,若齢者と比較し

て高齢者のそれは60°/sで27%,180°/sで38%低い(Candow et al., 2005).先行知見における等尺性,

短縮性および伸張性足関節底屈筋力の若齢者に対する高齢者の割合は 45%~73%であった(Morse et al., 2004; Thom et al., 2005; Morese et al., 2005b; Kubo et al., 2007).また,等尺性肘関節屈曲および伸展筋 力は,どちらも若齢者よりも高齢者の方が低い(Klein et al., 2001; Jakobi et al., 2002).先行知見における若 齢者に対する高齢者の割合は,肘関節屈曲筋力で 57~82%,肘関節伸展筋力で 53~84%であった(Klein et al., 2001; Jakobi et al., 2002; Candow et al., 2005).一方,足関節背屈筋力では若齢者と高齢者の間に有 意な差は認められないとする報告がある(Kent-braun and Ng, 1999; Simoneau et al., 2007).

  筋収縮力の加齢による低下は,筋のサイズのそれよりも大きい(Jubrias et al., 1997).その要因として,加齢

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による主働筋活動の減少(Vandervoort and McComas, 1986; Brown et al., 1988; Yamada and Matsuda, 2002),拮抗筋活動の増加(Macaluso et al., 2002),大脳の興奮水準の低下(Kent-Braun and Ng., 1999;

Stackhouse., 2001; Morse et al., 2004; Morse et al., 2005a)といった神経系の要因,筋線維の発揮張力の 低下(Frontera et al., 2000a),筋内に占める速筋線維の割合の減少(Lexell et al., 1988),筋の構造的な変 化(Narici et al., 2003; Kubo et al., 2003c)が影響していると考えられている.筋収縮力の決定要因として,筋 のサイズが量的要因であるのに対して,これらは筋の質的要因とされている.仮に加齢によって筋のサイズが低 下しないとしても,これらの要因が加齢によって低下することで筋収縮力が低下する.筋収縮力の加齢変化を知 る上でどちらの要因も知ることが重要である.

  筋の質的要因を評価する重要な指標として固有筋力がある.固有筋力は,「筋線維の総和として発揮された 最大張力(筋張力)を筋線維の総横断面積で割った値」として定義されている(福永,2002).しかしながら,固有 筋力を算出するためにはモーメントアーム,生理学的筋横断面積を測定する必要があり,正確な固有筋力を測 定するのは困難であり,厳密に測定された固有筋力における加齢変化の報告はなされていない.先行知見で は,筋のサイズに対する筋収縮力の割合を算出した値を固有筋力指標として,筋の質的要因の加齢変化につ いて検討している(Young et al., 1984; Young et al., 1985; Vandervoort and McComas, 1986; Phillips et al., 1992; Overrend et al., 1992; Lynch et al., 1999; Kent-braun and Ng, 1999; Akima et al., 2001;

Candow et al., 2005; Kubo et al., 2007).先行知見では,筋の質的要因に年齢差を認めるもの(Klein et al., 2001; Candow et al., 2005; Morse et al., 2004; Morse et al., 2005a)と認めないもの(Young et al., 1984;

Young et al., 1985; Vandervoort and McComas, 1986; Overend et al., 1992; Kent-braun and Ng, 1999; Frontera et al., 2000a)に分かれている.筋のサイズの測定方法が異なるといった問題があるが,筋の 質的要因の年齢差は部位によって異なる.膝関節伸展筋群(Young et al., 1984; Young et al., 1985;

Overend et al., 1992; Kubo et al., 2007)および足関節背屈筋群(Kent-braun and Ng, 1999)では筋の質的 要因に年齢差が認められないという報告が多い.一方,足関節底屈筋群(Morse et al., 2004; Morse et al., 2005a)および肘関節伸展および屈曲筋群(Klein et al., 2001)では筋の質的要因に年齢差が認められるという 報告がある.

1-3 日常生活動作遂行能力における加齢変化

 Himann et al. (1988)は,19歳から102歳の男女を対象に年齢と通常および最大歩行速度の関係を調べた

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結果,加齢による歩行速度の低下は62歳までは1年間当たり0.1~0.2%であるが,62歳以降から1年間当た り1.2~1.6%の低下であることを報告している.同様な報告が,Kim et al. (2000)によってなされている.彼らは,

20歳から84歳までの男女を対象に歩行速度を測定し,20歳代との比較を行った.その結果,歩行速度は,男 性では50 歳代以降,女性では60 歳代以降で20 歳代のそれよりも有意に低いことを示した.また,65 歳から 89歳までの男女を対象に通常および最大歩行速度における4年間の縦断的な変化を調べたSugiura et al.

(1998)の報告によれば,4年間で通常歩行速度は男性で4.8%(1.2%/年),女性で5.2%(1.3%/年)低下し,最大 歩行速度は男性で8.4%(2.1%/年),女性で9.8%(2.3%/年)低下する.また,Csuka and McCarty (1985)は,

20歳から85歳までの男女を対象に年齢と椅子の座り立ちに要する時間との関係を調べた結果,椅子の座り立 ちに要する時間は加齢によって遅くなることを報告している.Lord et al. (2002)も同様な報告をしている.

  高齢者における日常生活動作遂行能力を知る上で筋電図学的手法(Landers et al., 2001; Hinman et al., 2005),日常生活動作におけるキネマティクスおよびキネティクス(Murray et al., 1969; Kaneko et al., 1990;

Huges et al., 1996; Gross et al., 1998; DeVita and Hortobágyi, 2000; Hortobágyi et al., 2003)の観点か らアプローチした先行知見がある.高齢者における椅子の座り立ち動作中に膝関節回りで発揮されるトルクは,

若齢者と同程度である(Gross et al., 1998)が,最大筋力に年齢差が認められるため動作における相対的な負 荷は高齢者のほうが大きい(Huges et al., 1996; Gross et al., 1998).Landers et al. (2001)は,若齢者と高 齢者を対象に椅子の座り立ち動作における大腿直筋の筋放電量を測定した結果,高齢者のほうが若齢者よりも 高い筋放電量を示したことを報告している.また,この報告では,膝関節伸展筋力が低い者ほど椅子の座り立ち 動作における大腿直筋の筋放電量が高いことも示した.このような報告は,高齢者のように筋収縮力が低い者は 日常生活動作中に筋にかかる負荷が大きく,日常生活動作の遂行が困難であることを意味している.歩行動作 では,股,膝および足関節回りに作用するトルクの総和に年齢差はないが,各関節回りに作用するトルクを比較 したところ若齢者と高齢者に違いがある(DeVita and Hortobágyi., 2000).また,加齢によって遊脚期のつま先 の高さは低下し,両脚支持期の時間が長くなる(Kaneko et al., 1990).さらに,Hortobágyi et al. (2003)は,

階段昇降動作における接地局面の関節角度の可動域は,若齢者と比較して高齢者のほうが狭いことを報告し ている.このように,日常生活動作遂行能力における若齢者と高齢者の違いが生じる要因として,加齢による筋 収縮力の低下(Huges et al., 1996; Gross et al., 1998),バランス能力の低下(Schenkman et al., 1996;

Lord et al., 2002),関節における柔軟性の低下(Tainaka and Aoki, 2002)などが挙げられている.それに対 し,Hortobágyi et al. (2003)は,転倒の危険を回避するために意図的に動作を行う方略を変えているため,高

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齢者と若齢者では動作のキネマティクスおよびキネティクスに違いが生じることを考察している.

2. 高齢者におけるレジスタンストレーニングの効果に関する研究

 Hettinger (1968)の説明によれば,ヒトを対象としたレジスタンストレーニングに関する報告は 1895 年にさか のぼる.その説明のなかに,Roux が,筋のサイズ,ひいては筋収縮力を増加させるためには,日常使っている 筋収縮力以上に力を出す必要があるという原則を示したことが記されている.この原則は,それ以降の多くの研 究によって支持されてきた.DeLome (1945)あるいはHettinger and Müller (1953)以後の研究の流れは,主 としてスポーツ選手の競技力の向上を目的として行われてきた.一方,1970年代から1980年代以降のトレーニ ングマシーンの開発と普及は,性,年齢を問わず一般人がレジスタンストレーニングを実施する機会を増やした.

筋のサイズおよび機能を良い状態に保つことが,健康で生産力豊かな人生を営むうえで不可欠であるという認 識が深まったからである.特に,中高齢者にとって,身体活動の基盤となる骨格筋の機能維持および向上は,

健康という視点からだけではなく,日常生活での自立自助能力の保持や介護予防にもつながると考えられてい る.そこで,1990 年代以降から,中高齢者を対象としたレジスタンストレーニングの研究が多く報告されてきた.

ここでは,中高齢者を対象とした下肢筋群における筋のサイズ,筋収縮力または動作パフォーマンスに対するト レーナビリティーについて先行知見をまとめる.

2-1 特殊な器具を用いたトレーニングによる筋のサイズおよび収縮力に対する効果

  筋のサイズおよび筋収縮力の増加に有効なレジスタンストレーニングの方法に,特殊な器具を用いたトレーニ ングがある.このトレーニングは,最大挙上重量(one repetition maximum:1RM)もしくは最大下挙上重量(例 えば,3RM,5RM)などに対する相対的な負荷をかけてトレーニングを行う方法である.特殊な器具を用いて行 うレジスタンストレーニングは,1RM に対する相対的強度を設定することによってトレーニング効果を得やすい 負荷設定をすることができる.事実,このようなトレーニング方法は,中高齢者にとって筋のサイズおよび収縮力 に対する効果に有効であるとする報告は多い(Frontera et al., 1988; Brown et al., 1990; Fiatarone et al., 1990; Judge et al., 1993; Hunter et al., 1995; Sipilä and Suominen, 1995; Häkkinen et al., 1998;

Häkkinen et al., 2001a, 2001b; Ferri et al., 2003; Reeves et al., 2004).例えば,Frontera et al. (1988) は,60 から 72 歳までの高齢男性を対象に膝関節伸展および屈曲筋群を対象にレジスタンストレーニング (80%1RMの強度)を12週間実施し,膝関節伸展筋群および大腿部全体のACSAに9%および11%の増加を

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観察した.また,Fiantarone et al. (1990)は,86~96歳を対象に高強度トレーニングを行い,膝関節伸展筋群

のACSAが15%増加したことを報告している.これらの報告は,高齢者であってもレジスタンストレーニングによ

って筋が肥大することを示している.これらの先行知見と同様に,レジスタンストレーニングによって中高齢者に おける筋のサイズに対する効果を認めるものは多く報告されており,先行知見における筋の肥大率は約5~29%

である(Brown et al., 1990; Sipilä and Suominen, 1995; Häkkinen et al., 1998; Lemmer et al., 2000;

Ivey et al., 2000a; Häkkinen et al., 2000; Ferri et al., 2003; Izquierdo et al., 2004; Suetta et al., 2004).

レジスタンストレーニングにおける筋収縮力に対する効果について,Häkkinen et al.(2001a)は,60歳代の 女性を対象にレッグプレスを用いて 21 週間のトレーニング(50~80%1RM 強度)を実施したところ,膝関節伸展 筋群のACSAは8%,等尺性脚伸展筋力は37%それぞれ増加したと報告している.また,65歳から81歳まで の高齢男性を対象に,脚伸展及び足関節底屈筋群に対するレジスタンストレーニング(50~80%1RM 強度)を 16週間実施したFerri et al. (2003)の報告によれば,膝関節伸展および下腿三頭筋群のACSAはそれぞれ

7%および5%増加し,等尺性膝関節伸展および足関節底屈筋力はそれぞれ19%および12%増加した.これら

の報告は,レジスタンストレーニングによる筋収縮力の増加は筋のサイズのそれよりも大きいことを示している.ト レ ー ニ ン グ 効 果 の 測 定 に 等 尺 性 お よ び 等 速 性 筋 力 を 用 い た 先 行 知 見 に お け る 筋 収 縮 力 の 変 化 率 は 9~66%(Moritani et al., 1980; Judge et al., 1993; Hunter et al., 1995; Häkkinen et al., 1998;

Häkkinen et al., 2001a, 2001b; Kamen et al., 2004; Reeve et al., 2004; Suetta et al., 2004)であり,上述 した筋のサイズのそれよりも高い.さらに,トレーニング動作と同一形式による最大筋収縮力,すなわち 1RM で 測定された場合に,その変化率はさらに高くなる(Judge et al., 1993; Hunter et al., 1995; Ferri et al., 2003).

  レジスタンストレーニングによる筋のサイズおよび収縮力に対する効果に年齢差があるかどうかについて検討 した報告もある.その先駆的な報告は,Moritani and deVries (1980)の報告である.彼らは,若齢者と高齢者 を対象に筋放電量および形態計測からの推定筋量に基づいて,筋収縮力の増加に対する筋肥大および神経 系の要因それぞれの貢献度を調べた.その結果によると,トレーニングによって等尺性肘関節屈曲筋力の増加 率に年齢差はないが,肘関節屈曲筋量では若齢者で有意な増加を示し,高齢者では変化が認められなかった といわれている.また,彼らは,若齢者では筋肥大が,高齢者では神経系の要因が筋収縮力の増加率に貢献し ていることを示した.レジスタンストレーニングよる筋収縮力に対する効果には,年齢差が認められないとする報

(12)

告は他にもある(Häkkinen et al., 1998; Kamen et al., 2004; Cannon et al., 2007).一方,Moritani and

deVries (1980)の報告に反して,ACSAおよび筋体積の分析結果では,トレーニングによる筋肥大の効果に年

齢差がないとする報告が多い(Welle et al., 1996; Häkkinen et al., 1998; Ivey et al., 2000a, 2000b;

Izquierdo et al., 2001; Roth et al., 2001; Cannon et al., 2007).

2-2 日常生活動作を利用した筋のサイズおよび筋収縮力に対するトレーニング効果

  特殊な器具を用いたトレーニングは,鍛えたい部位を特定しやすく,かつ確実に高いトレーニング効果を得る ことが可能という点では最も有効な手段である.しかし,このトレーニングでは,設備の整った施設,トレーニング 動作の取得またはトレーニング実施中の十分な安全管理が必要となる.このような方法では,日常的に誰もが容 易に実践することは困難である.それに対し,近年,歩行(Rook et al,1997),台の昇り降り(deVreede et al., 2005),椅子の座り立ち(Kubo et al., 2003a)のような日常生活動作をレジスタンスエクササイズとして用いたトレ ーニングの効果に関する研究も行われている.それら一連の先行知見によれば,筋収縮力に対する効果を認 めるもの(Aniansson and Gastafsson, 1981; Kubo et al., 2003a)と認めないもの(Rook et al., 1997;

deVreede et al., 2005)に分かれる.例えば,69歳から74歳までの高齢男性を対象に自体重負荷トレーニング を12週間実施したAniansson and Gustafasson (1981)は,等尺性および等速性膝関節伸展筋力に9~22%

の増加を観察している.また,中高齢女性を対象に椅子の座り立ち動作を6ヶ月間トレーニングしたKubo et al.

(2003a)の報告では,膝関節伸展筋力が 10%増加した.しかし,歩行を用いたトレーニングを 10 ヶ月間行った

Rook et al. (1997)は,脚伸展筋力に有意な増加を観察しなかった.また,Kubo et al. (2008)の報告では,高 齢者を対象に 6 ヶ月間の歩行動作を用いてトレーニングを行った結果,足関節底屈トルクは 23%増加したが,

膝関節伸展トルクには有意な変化は認められなかった.このように,これまでの先行知見から日常生活動作を利 用したトレーニングによる筋のサイズや筋収縮力に対する効果は一致した見解は得られていない.

2-3 レジスタンストレーニングによる動作パフォーマンスに対する効果

  中高齢者におけるトレーニングの意義は,運動機能を改善し,いかに生活の質を高めるかである.そのため,

歩行や椅子の座り立ち動作のような日常生活中で行われる動作の遂行能力がレジスタンストレーニングによっ て改善するか否かが問題である.中高齢者を対象にした研究に,歩行,椅子からの立ち上がりや階段上昇をは じめとする各種の動作パフォーマンスやバランス能力の成績に対するトレーニングの影響を検証したものも多い.

(13)

それは,特別な器具を用いて行ったトレーニングの報告(Judge et al., 1993; Hunter et al., 1995; Häkkinen et al., 1998; Taaffe et al., 1999; Galvão and Taaffe, 2005)だけでなく,日常生活動作を利用したトレーニン グの報告(Rook et al., 1997; Alexander et al., 2001; deVreede et al., 2005; Kreb et al., 2007)にもみられ る.どちらのトレーニングにおいても動作パフォーマンスに対する効果は,“効果あり”とする先行知見が多いが,

なかには“効果なし”とする報告もある.効果ありとする報告のなかには,改善の対象となる動作そのものをトレー ニングとして実施したほうが,高い効果を得られるという報告もある(Rooks et al., 1997; Bean et al., 2004;

deVreede., 2005; Krebs et al., 2007).筋のサイズあるいは筋収縮力の増加率と動作パフォーマンスの改善と の 関 係 に つ い て , 有 意 な 相 関 関 係 を 認 め る も の(Chandler et al., 1998; Taaffe et al., 1999;

Kalapotharakos et al., 2005a)もあるが,トレーニングによる筋のサイズ,筋収縮力の増加がパフォーマンスの 改善とどのように関連するのかについては十分に明らかにされていない.

2-4 トレーニング強度および頻度の違いがトレーニング効果に及ぼす影響

 Taaffe et al. (1996)は,40%1RM及び80%1RMで膝関節伸展及び屈曲動作のトレーニングを52週間実 施した結果,どちらの強度においても膝関節伸展動作における1RM は60~85%増加し,筋線維断面積(Type

Ⅰ; 10~28%,TypeⅡ; 18~22%)に増加が認められたことを報告している.筋のサイズおよび収縮力に対する効 果における負荷強度の影響について,40~50%1RM から 80~85%1RM の範囲における比較では,負荷強度 によって筋収縮力に対する効果に違いがないとする報告(Taaffe et al., 1996; Vincent et al., 2002a, 2002b;

Harris et al., 2004)と,低強度よりも高強度でのトレーニングの方が大きな効果が得られるとするもの (Kalpoharakos et al., 2004; Fatouros et al., 2005; Kalpoharakos et al., 2005b; Fatouros et al., 2006;

Sullivan et al., 2007; Host et al., 2007)に分かれる.このように,レジスタンストレーニングによる筋のサイズお よび収縮力の増加に対する負荷強度の影響について,先行知見に一致した見解が得られていない.しかし,先 行知見を総合すると40%1RM以上の負荷強度でトレーニング効果を得ることができると考えられる.

  次に,トレーニング頻度について,トレーニング強度を一定にし,1セットと3セットとの比較から実施セット数の 違いが筋収縮力に対する効果に及ぼす影響について検討したGalvão and Taaffe (2005)によれば,1RMの 増加率は3セット行った群のほうが1セット行った群よりも大きかったが,等尺性および等速性膝関節伸展筋力 には変化率に群間差はなかった.同様に,トレーニング強度を一定にし,トレーニングセット数を変えたときの筋 収縮力の増加の違いを検討した先行研究の報告(Smith and Melton, 1981; Westcott e al., 1989; Starkey

(14)

et al., 1996)でも,どのセット数においても同程度の筋力向上が認められている.Taaffe et al. (1999)は,一定 のトレーニング強度で週1日,週2日,週3日という条件による筋収縮力に対する効果を比較した.その結果,

筋収縮力の増加にトレーニング頻度の違いによる差はない.また,トレーニング後に,週1回のトレーニングで筋 のサイズおよび筋収縮力に対する効果は維持できるという報告(Trappe et al., 2002)もある.若齢者に対して高 齢者では,高強度でのレジスタンストレーニングが筋に与えるダメージが大きいといわれている(Manfredi et al., 1991; Roth et al., 2000; Ploutz-snyder et al., 2001; Ferri et al., 2006).中高齢者の場合,高強度でのトレ ーニングの実施には,若齢者と比較して少ないトレーニング頻度であっても筋のサイズおよび筋収縮力に対す る効果が期待できることが考えられる.

3. 筋電図を用いた日常生活動作における筋活動水準に関する研究

  レジスタンストレーニングによって筋のサイズおよび収縮力の増加を得るためには,日常生活水準以上の筋活 動が必要である(Hettinger, 1968).日常生活動作を利用したトレーニングの場合,特殊な器具を用いたレジス タンストレーニングとは異なり,トレーニングとして採用した動作が筋にどの程度の負荷をかけているのかは不明 である.そのため,その動作における筋にかかる負荷強度を明らかにする必要がある.その手段として,動作中 の筋活動を測定することができる表面筋電図法が有効であると考えられる.表面筋電図法によって得られた筋 電図の振幅は,筋収縮力と直線関係にある (Lippold, 1952; Bigland and Lippold, 1954; Close et al., 1960; Komi and Buskirk, 1972; Bigland-Ritchie and Woods, 1974; 川上と福永,1992; Alkner et al., 2000).つまり,筋収縮力の増大に伴って筋電図の振幅も大きくなる.この現象は,等尺性収縮時のみならず,

短縮性および伸張性収縮時の筋活動においても同様である(川上と福永,1992; Burden and Bartlett, 1999).

つまり,最大随意収縮時の筋放電量を 100%として,動作中の筋放電量を正規化することで,筋にかかる相対 的負荷を定量できると考えられる.

  日常生活動作における筋にかかる負荷強度の定量には,等尺性最大随意収縮時の筋放電量を基準にして,

動作中の筋放電量を正規化する手法が用いられている(Ericson et al., 1986; Landers et al., 2001;

Hortobágyi et al., 2003; Sawai et al., 2006).歩行動作中の筋活動水準を定量したEricson et al. (1986) の報告によれば,歩行動作中の下腿三頭筋の筋活動水準は,膝関節伸展筋群および屈曲筋群よりも高く,歩 行動作では下腿三頭筋の活動が重要であることを示唆している.また,Sawai et al. (2006)は,上記方法で定 量した筋にかかる相対的な負荷強度を筋活動水準と定義し,日常生活動作における筋活動水準には性差があ

(15)

ることを報告している.若齢女性および高齢女性を対象に,椅子の座り立ち動作における大腿直筋の筋活動水 準を定量したLanders et al. (2001)の報告によれば,筋活動水準に年齢差を認めている.同様に,若齢者お よび高齢者を対象に椅子の座り立ち動作,階段上昇および下降動作における外側広筋の筋活動水準を定量し た Hortobágyi et al. (2003)は,それらの動作中の筋活動水準に年齢差があることを観察しており,高齢者に おける動作中の筋活動水準は若齢者の約2倍であることを示した.また,Landers et al. (2001)は,筋活動水 準と膝関節伸展筋力との間には負の相関関係があることを報告している.このような報告は,日常生活動作にお ける筋活動水準が実施者の筋収縮力の影響を受けることを示唆するものである.しかしながら,日常生活動作 における筋活動水準と筋収縮力との関係についての先行知見はLanders et al. (2001)の報告以外に見当た らない.

Ⅲ.本研究の目的と構成

    身体動作の基盤となる骨格筋のサイズおよび収縮力は加齢に伴い低下する.その低下を防ぐためにはレジ スタンストレーニングが有効であるが,その方法は誰にでも容易に実施可能であることが好ましい.日常生活動 作は,日常的に馴染み深い動作であり,誰にでも容易に実施可能である.しかし,日常生活動作を利用したトレ ーニングによる筋のサイズおよび筋収縮力に対する効果の有無については統一した見解が得られていない.こ れまでの日常生活動作を利用したレジスタンストレーニングの効果を報告した先行研究のなかに,トレーニング として採用した動作中の筋にかかる負荷強度を明らかにし,そのトレーニング効果との関連について検討した報 告はない.

  そこで,本研究は,日常生活動作遂行時に筋にかかる負荷を,表面筋電図を用いて定量し,そして日常生活 動作を利用したトレーニングの効果を明らかにして,動作中の負荷強度とトレーニング効果との関連を検討する ことにより,日常生活動作を利用したレジスタンストレーニングの有用性を明らかにすることを目的とした.

  本研究の構成は以下に示す通りであった.

本研究の構成

  本研究の構成は,日常生活動作における筋活動水準の定量化(第2章),日常生活動作を利用したトレーニン グの効果(第3章),および総括論議(第4章)からなる.各章の概略は以下の通りである.

(16)

第1章  日常生活動作における筋活動水準の定量化

  若齢者および中高齢者を対象として,先行研究で加齢の影響を受けやすいといわれている下肢筋群における 日常生活動作中の筋活動水準を,表面筋電図法を用いて定量し,筋活動水準の性差および年齢差を明らかに するとともに,最大筋収縮力と日常生活動作の筋活動水準との関連について検討を行った.

第2章  日常生活動作を利用したトレーニングの効果

1) 高齢女性における日常生活動作を利用したトレーニング効果の検討

  先行知見において,日常生活動作を利用したトレーニングによる筋のサイズおよび筋収縮力に対する効果の 有無に一様の見解が得られていない.そこで,日常生活動作を利用したトレーニングを3ヶ月間実施し,筋のサ イズ,筋収縮力および動作パフォーマンスに対する効果を明らかにした.さらに,トレーニング前の筋収縮力お よび動作パフォーマンスとそれぞれのトレーニングによる変化率との関係について検討した.

2) 若齢女性における日常生活動作を利用したトレーニング効果の検討

  これまでの先行知見では,日常生活動作を利用したトレーニングの実施は中高齢者を対象に行われており,

若齢者を対象とした報告はない.そこで,高齢者同様に,日常生活動作を利用したトレーニングを3ヶ月間実施 し,筋のサイズ,筋収縮力および動作パフォーマンスに対する効果を明らかにした.さらに,トレーニング前の筋 収縮力とトレーニングによる変化率との関係について検討した.

第3章  総括論議

  以上の結果に基づき,日常生活動作を利用したトレーニングに有用性について,トレーニング効果における負 荷強度および頻度の影響を明らかにした.さらに,トレーニング効果をもたらす筋活動水準および最大筋力の閾 値について考察を行ったうえで,このトレーニングがどのような人たちに有効であるかについて検討した.

(17)

第2章  日常生活動作における筋活動水準の定量化

Ⅰ.目的

  レジスタンスエクササイズとしての日常生活動作の有用性を明らかにするためには,採用する動作の筋活動水 準を明らかにする必要がある.表面筋電図法を用いた先行研究の結果によると日常生活動作における筋活動 水準には,性差(Sawai et al.,2006)あるいは年齢差(Landers et al., 2001; Hortobágyi et al., 2003)が認め られ,その要因の一つとして最大筋力の違いによる影響が挙げられている(Landers et al., 2001; Sawai et al., 2006).しかしながら,日常生活動作別に筋活動水準と性,年齢および最大筋力との関連については明らかに されていない.

  そこで,本研究は,若齢者および中高齢者を対象に,加齢による影響を受けやすい下肢筋群における日常生 活動作中の筋活動水準を表面筋電図法により定量し,筋活動水準に対する年齢および性の影響,並びに最大 筋収縮力との関係を明らかにすることを目的とした.

(18)

Ⅱ.方法 1.被検者

  被検者は,19歳から36歳までの健常な若齢男性32名および女性31名(以下,若齢群)と58歳から72歳 までの中高齢男性14 名および女性20名(以下,中高齢群)であった.被検者の年齢,身長および体重の平均 値および標準偏差は表 2-1 に示した.被検者には,事前に本研究の目的および測定内容を説明し,書面で測 定参加の同意を得た.なお,本研究は,早稲田大学スポーツ科学学術院の倫理委員会の承認を得たうえで実 施した.

2.測定対象動作

  本研究では,大腿前部および下腿後部の筋群を主働筋とする日常生活動作の中から椅子の座り立ち,踵の 上げ下ろし,平地歩行,階段上昇および下降の5動作を計測の対象とした.具体的な動作内容は表2-2に示す 通りであった.椅子の座り立ちおよび踵の上げ下ろし動作は,4秒に1回のテンポで 10回行った.動作テンポ の規定には,電子メトロノーム(SQ100-77,SEIKO 社製,Japan)を用いた.これらの動作の場合には,被検者 がメトロノームの音に合わせて,一定のテンポで動作を行えるように練習した後に測定試行を行った.動作の開 始と終了を判断するために,デジタルビデオカメラ(NV-DJ100,Panasonic社製,Japan)を用いて上記の動作 を毎秒30 フレームで撮影した.撮影する際に,椅子の座り立ちおよび踵の上げ下ろし動作では,被検者から5 m離れた場所にカメラを設置して,被検者の動作を矢状面上から撮影した.平地歩行,階段上昇および階段下 降動作のテンポは被検者の任意なものとし,各動作における離地および接地を区別できるようにパンニング方 式によって下肢を撮影した.平地歩行動作の場合には,後述する解析区間の中央から進行方向に対し 90°の 方向で,被検者から5 m離れた場所にカメラを設置し,被検者の側方より下肢の動きを撮影した.階段上昇およ び下降動作では,被検者の側方より下肢の動きを撮影した.なお,解析区間の動作速度が一定となるように留 意した.すなわち,平地歩行動作では,後述する解析区間の手前(約5 m)から歩くように指示し,解析区間の終 了点である10 m地点を歩き抜けるように指示した.階段昇降動作では,1段目の階段の約3 m手前から動作 を開始し,階段を昇りおよび降り終わった後もすぐに止まらないで,歩き続けるように指示した.

(19)

若齢群 中高齢群

男性 (n=32) 女性 (n=31) 男性 (n=14) 女性 (n=20) 年齢 (歳) 25.0±3.6 24.4±4.2 67.6±4.4 67.5±5.2 身長 (cm) 172.0±5.3 161.7±5.6

a

166.0±5.2

b

153.5±3.6

a, b

体重 (kg) 67.0±7.5 55.6±6.2

a

64.8±5.7

b

50.7±6.4

a, b

表2-1 被検者の身体特性

a: 同年齢群における性差を示す.

b: 同性内における年齢差を示す.

(20)

表2-2 測定対象動作

動作様式 動作内容

椅子の座り立ち動作 (SS) 高さ40 cmの椅子を用いて,椅子から立ち上がり,そして 椅子に座る動作を10回繰り返す動作.

踵の上げ下ろし動作 (CR) 立位姿勢で足関節底屈および背屈を10回繰り返す動作.

平地歩行動作 (NW) 日常生活と同じような速度で,平坦な地面(長さ:10 m)上を 歩く動作.

階段上昇動作 (AS) 普段の速度と同じように14段の階段(1段の高さ:14.5 cm)を 昇る動作.

階段下降動作 (DS) 普段の速度と同じように14段の階段(1段の高さ:14.5 cm)を

降る動作.

(21)

3.等尺性最大随意収縮(maximal voluntary contraction: MVC)トルクの測定

  静的筋力測定装置(VTK-002R/L・VTF-002R/L,VINE 社製,Japan)を用いて,膝関節伸展および足関節 底屈のMVCトルクの測定を行った.膝関節伸展トルク(knee extension torque:KE)の測定姿勢は,股関節お よび膝関節角度90度(完全伸展位:0度)の座位姿勢とし,足首を固定具で筋力計のレバーアームに固定した.

また,股関節角度の変化を防ぐために,ストラップを用いて腰部を固定した.足関節底屈トルク(plantar flexion

torque:PF)の測定姿勢は,足関節角度 90 度(解剖学的正位)の長座位姿勢とし,ストラップを用いて足部をア

タッチメントにしっかりと固定した.また,膝関節の動きを防ぐために,ストラップを用いて大腿部を固定した.測定 中は両腕を胸の前に組むように指示した.測定は右脚について行った.なお,KEおよびPFを測定した関節角 度は,それぞれMVC時における神経系の興奮レベルが最も高くなる関節角度(Kubo et al., 2004; Morse et al., 2005b)であった.試行前に,被検者にはウォーミングアップとして,主観的に最大努力の 50%(2~3 回),

80%(2~3回),100%(1~2回)と漸増的に力発揮を行わせた.MVCトルクの測定は,各動作 2回ずつ行った.

被検者には全力で約 4 秒間力発揮するように指示した.疲労の影響をなくすために,ウォーミングアップ後およ び各 MVC試行間には 3 分以上の休息を設けた.得られた信号は,増幅器(DPM-611A,Kyowa,Japan)を 介して増幅し,AD変換器(Power Lab/16SP,ADInstruments社製)によってデジタル信号に変換した後に,

サンプリング周波数100 Hzでパーソナルコンピュータ(Think Pad,IBM社製,Japan)に記録した.

  得られたトルクデータに10 Hzのローパスフィルタをかけた後,トルク曲線における極大値をMVCトルクとして 求めた(図2-1).各試行2回のうち大きい方の値を代表値として採用した.また,体格の影響を除くために,それ ぞれのMVCトルクは体重で除した(以下,KE/BWおよびPF/BW).

4.表面筋電図(electromyogram: EMG)の測定

 MVC時および5種類の日常生活動作時のEMGを,携帯型筋電計(Muscle Tester ME6000T8,MEGA Electronics Ltd,Finland)を用いて,双極誘導法により計測した.被検筋は,右脚の内側広筋,大腿直筋,外 側広筋,腓腹筋外側頭,腓腹筋内側頭,ヒラメ筋の計 6 筋とした.測定には,直径 15 mm の Ag/AgCl 電極 (N-00-S,Blue sensor,Ambu社製)を使用し,電極間距離は20 mmとした.電極貼付前に,皮膚抵抗を低減 させるため,体毛および角質を除去し,アルコール綿で清浄した.電極は,B モード超音波装置(SSD-900,

ALOKA 社製,Japan)を用いて各被検筋を特定した後に,それぞれの筋腹中央に貼り付けた.導出した筋電

図信号はグランド電極兼増幅用の表面電極を介して412倍に増幅し,バンドパスフィルタ(8-500 Hz/3 dB)を介

(22)

0 2 4 sec

6

40Nm

500 μ v

500 μ v

500μv 最大トルク

分析区間 内側広筋

大腿直筋

外側広筋 膝関節伸展

トルク曲線

図 2-1 MVC 時における膝関節伸展トルク曲線と全波整流波形の典型例

(23)

した後,サンプリング周波数 1000 Hz でデジタル変換し,パーソナルコンピュータ(Think Pad,IBM 社製,

Japan)に記録した.なお,測定対象動作の計測においては,EMG データを筋電計に内蔵されたメモリーカー

ドに保存し,試行後にパーソナルコンピュータにダウンロードした.また,EMG 信号と撮影したビデオ画像の同 期は,ライトの光をデジタルビデオカメラに写し込み,その信号を同期ユニット(シンクロナイザ PH-100A,DKH Co Ltd,Japan)を用いてEMGのモニターに取り込むことにより行った.

  得られたEMGデータをすべて全波整流し,各平均筋電位を算出した.MVC試行から得られたデータについ ては,トルクが最大となる時点を含む1秒間の平均筋電位を算出した(図2-1).椅子の座り立ちおよび踵の上げ 下ろし動作については,ビデオ画像上で動作の開始および終了を確認し,10 回の平均筋電位を算出した.平 地歩行では10 m歩いた時の平均筋電位を,階段昇降動作では14段歩いた時の平均筋電位をそれぞれ算出 した. MVC 時の平均筋電位を100として,動作中の平均筋電位を正規化(%EMG)し,筋活動水準の評価指 標とした.なお,本研究では,内側広筋,大腿直筋および外側広筋の3筋それぞれの%EMGを算出した後,そ れら 3 筋の%EMG の平均値を大腿前部の筋活動水準(以下,QF%EMG)とした.同様に,腓腹筋内側頭,腓 腹筋外側頭およびヒラメ筋の3筋それぞれの%EMGを算出した後,それら3筋の%EMGの平均値を下腿後 部の筋活動水準(以下,TS%EMG)として求めた.

5.統計処理

  測定結果はいずれも平均値および標準偏差で表した.年齢,身長,体重,MVCトルクにおける群間の比較に 際しては,2 要因(年齢×性)の分散分析により主効果および交互作用を確認した.QF%EMG および

TS%EMG における群間の比較には,3 要因(動作×年齢×性)の分散分析を行った.交互作用が認められた

場合には,動作と群(若齢男性,若齢女性,中高齢男性,中高齢女性)の 2 要因の分散分析を行い,主効果お よび交互作用を確認することとした.いずれの分散分析の結果においても,F値が有意な場合はTukey法によ る多重比較を行うこととした.なお,動作間の比較については,QF%EMG では平地歩行,階段昇降および座り 立ちの4動作間,TS%EMGでは平地歩行,階段昇降および踵の上げ下ろしの4動作間における%EMGの 差の比較を行った.各動作中の%EMGとKE/BWおよびPF/BWとの関係については,非線型モデルを用い て相関係数を算出した.すなわち,各変数を対数値に変換した後,測定した変数間の相関係数を算出した.ま た,年齢を制御変数として,%EMGと体重当たりのMVCトルクとの偏相関関係を検討した.統計処理には統計 解析ソフト(SPSS12.0J,SPSS Japan,Japan)を用いた.いずれの場合も有意水準は危険率5%未満とした.

(24)

Ⅲ.結果 1.MVCトルク

  表2-3に若齢群および中高齢群のMVCトルクを示した.いずれの項目も,両性とも中高齢群より若齢群が有 意に高く,両年齢群とも男性が女性よりも有意に高い値であった.

2.%EMGと体重当たりのMVCトルクとの関係

  図 2-2 に,若齢群および中高齢群それぞれのグループにおける典型的な筋放電パターンが得られた被検者 各 1 名のすべての動作における典型的な筋電図の全波整流波形を示した.各動作中の大腿前部および下腿 後部の筋放電パターンは,若齢群および中高齢群ともに類似したものであった.しかしながら,若齢群に比較し て,中高齢群の%EMGは高い値を示す傾向にあった.

  図2-3および図2-4に,それぞれKE/BWとQF%EMGおよび,PF/BWとTS%EMGとの関係を示した.

すべての動作において,QF%EMGはKE/BWと,TS%EMGはPF/BWとそれぞれ有意な相関関係を示した.

一方,体重当たりの MVC トルクおよび%EMG は,年齢とも有意な相関関係にあった(KE/BW: r = -0.516, PF/BW: r = -0.503およびQF%EMG: r = 0.407~0.615,TS%EMG: r = 0.386~0.482).そこで,年齢を制御 変数とし,体重当たりの MVC トルクおよび%EMG との関係をみた結果,両変数間の関係は有意であった (QF%EMGとKE/BW: r = -0.264 (NW)~-0.503 (AS),TS%EMGとPF/BW: r = -0.602 (NW)~-0.689 (AS),いずれもp<0.05).また,付録1と2に,すべての動作におけるQF%EMGおよびTS%EMGの対数値 と体重当たりのMVCトルクの対数値との関係をそれぞれ示した.

3.%EMGにおける年齢差および性差

  表2-4は,各動作におけるQF%EMGおよびTS%EMGを示したものである.3元配置(動作×年齢×性)の 分散分析の結果,TS%EMGでは交互作用が認められなかったが,QF%EMG では性と年齢の間に交互作用 が認められた.そこで,QF%EMGについて2元配置(動作×群)の分散分析を行った結果,動作と群の交互作 用は認められなかった.

  男性および女性ともに,すべての動作において,%EMG は中高齢群のほうが若齢群よりも高い値(いずれも

p<0.05)を示した.QF%EMG における中高齢群に対する若齢群の割合は,男性では 51 (平地歩行動

作)~77% (椅子の座り立ち動作),女性では45 (平地歩行動作)~79% (椅子の座り立ち動作)であった.また,

(25)

表2-3 関節トルクおよび体重当たりの関節トルク

a: 同年齢群における性差を示す.

b: 同性内における年齢差を示す.

若齢群 中高齢群

男性 女性 男性 女性

関節トルク (Nm)

KE 190.5±36.2 114.3±25.3

a

145.7±25.2

b

76.0±13.9

a, b

PF 190.1±35.4 137.6±24.4

a

146.5±21.1

b

102.2±21.4

a, b

体重当たりの関節トルク (Nm/kg)

KE/BW 2.86±0.55 2.06±0.41

a

2.27±0.49

b

1.51±0.25

a, b

PF/BW 2.84±0.44 2.49±0.45

a

2.27±0.31

b

2.03±0.45

a, b

(26)

0 1 2 3 4 5 6 7

0 1 2 3 4 5 6 7

50 100 150

100 200 300

TS%EMG (%)QF%EMG (%)

Subj. H.

A

0 1 2 3 4 5 6 7

0 1 2 3 4 5 6 7

50 100 150

100 200 300

sec sec

sec sec

Subj. M.

0 2

100

4 200

6 8

sec 300

0 2 4 6 8

sec 50

100 150 200

TS%EMG (%)QF%EMG (%)

B

0 1 2 3 4 5 6 7

sec

0 1 2 3 4 5 6 7

sec 100

200 300 50 100 150 200

図2-2若齢男性(左)および高齢男性(右)における測定対象動作中の全波整流波形の典型例

Subj. M:21 yrs, KE/BW: 2.82 Nm/kg, PF/BW: 3.57 Nm/kg Subj. H:67 yrs, KE/BW: 1.96 Nm/kg, PF/BW: 2.58 Nm/kg

A:通常歩行動作 B:階段上昇動作

(27)

0 10 20 30 40 100

200

QF%EMG (%)

D

0 10 20 30 40

100 200

sec sec

0 2 4 6

sec

0 2 sec 4 6

0 2 4 6 8

sec

0 2 4 6 8

sec

TS%EMG (%)QF%EMG (%)

80 120 160

50 100 150 40

80 120 160

40

50 100 150 C

0 10 20 30 40

0 10 20 30 40

sec sec

TS%EMG (%)

100 200 300

100 200 300 E

Subj. H.

Subj. M.

図2-2 (続き)若齢男性(左)および高齢男性(右)における測定対象動作中の全波整流波形の典型例

Subj. M:21 yrs, KE/BW: 2.82 Nm/kg, PF/BW: 3.57 Nm/kg Subj. H:67 yrs, KE/BW: 1.96 Nm/kg, PF/BW: 2.58 Nm/kg C:階段下降動作 D:椅子の座り立ち動作 E:踵の上げ下ろし動作

(28)

1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0

KE/BW (Nm/kg) 10

20 30 40

QF%EMG during NW (%)

y = 17.3x-0.99 r = -0.495 p<0.001

1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0

KE/BW (Nm/kg) 20

40

QF%EMG during AS(%) 60

y = 38.6x-0.90 r = -0.648 p<0.001

1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0

KE/BW (Nm/kg) 20

40

QF%EMG during DS(%)

60

y = 33.1x-0.89 r = -0.579 p<0.001

1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0

KE/BW (Nm/kg) 20

40

QF%EMG during SS (%)

60 80

y = 34.1x-0.55 r = -0.458 p<0.001

図 2-3 大腿前部の筋活動水準と体重当たりの膝関節伸展トルクの関係 NW: 通常歩行動作

AS: 階段上昇動作

若齢男性 (n = 32) 若齢女性 (n = 31) 中高齢男性 (n = 14) 中高齢女性 (n = 20)

DS: 階段下降動作

SS: 椅子の座り立ち動作

(29)

1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0

PF/BW (Nm/kg) 120

TS%EMG during NW (%)

100 80 60 40 20

y = 83.4x-1.51 r = -0.691 p<0.001

1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0

PF/BW (Nm/kg) TS%EMG during AS(%) 180

150 120 90 60 30

y = 119.3x-1.46 r = -0.744 p<0.001

1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0

PF/BW (Nm/kg)

TS%EMG during DS(%)

120 100 80 60 40 20

y = 84.5x-1.59 r = -0.732 p<0.001

1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0

PF/BW (Nm/kg)

TS%EMG during CR (%)

150 120 90 60 30

y = 82.6x-1.10 r = -0.727 p<0.001

図 2-4 下腿後部の筋活動水準と体重当たりの足関節底屈トルクの関係 NW: 通常歩行動作

AS: 階段上昇動作

若齢男性 (n = 32) 若齢女性 (n = 31) 中高齢男性 (n = 14) 中高齢女性 (n = 20)

DS: 階段下降動作

CR: 椅子の座り立ち動作

(30)

表2-4 大腿前部および下腿後部における日常生活動作中の筋活動水準

a: 同年齢群における性差を示す.

b: 同性内における年齢差を示す.

NW:通常歩行動作 AS:階段上昇動作 AS:階段下降動作

SS:椅子の座り立ち動作 CR:踵の上げ下ろし動作

若齢群 中高齢群

動作様式 男性 女性 男性 女性

QF%EMG (%)

NW 5.6±1.9 8.2±5.5

a

11.0±4.1

b

18.2±7.5

a, b

AS 14.5±3.7 20.2±7.4

a

21.8±5.7

b

33.3±8.5

a, b

DS 12.9±4.5 17.5±9.2

a

20.4±6.1

b

28.8±9.2

a, b

SS 19.6±5.8 23.7±8.8

a

25.7±7.3

b

29.9±9.7

a, b

TS%EMG (%)

NW 15.8±5.0 25.4±16.7

a

25.7± 7.1

b

38.1±20.7

a, b

AS 25.3±7.8 37.3±15.0

a

35.4±10.3

b

53.3±31.8

a, b

DS 15.5±5.3 22.4±11.3

a

25.7± 8.7

b

36.2±21.8

a, b

CR 27.7±7.4 31.0± 9.5

a

35.2± 5.9

b

43.5±20.8

a, b

(31)

TS%EMGのそれは,男性では60 (階段下降動作)~79% (踵の上げ下ろし動作),女性では62 (階段下降動 作)~71% (踵の上げ下ろし動作)であった.

  いずれの動作においても,若齢群および中高齢群ともに女性のほうが男性よりも高い値(いずれも p<0.05)で あった.%EMGにおける女性に対する男性の割合は,QF%EMGでは若齢群で68 (平地歩行動作)~83% (椅 子の座り立ち動作),中高齢群で60 (平地歩行動作)~86% (椅子の座り立ち動作)であった.TS%EMGでは,

若齢群で62 (平地歩行動作)~89% (踵の上げ下ろし動作),中高齢群で67 (階段上昇動作)~81% (踵の上げ 下ろし動作)であった.

  動作間の%EMGを比較すると,QF%EMGでは性および年齢に関わらず平地歩行時が他の3動作のそれよ りも低い値(いずれも p<0.001)であった.また,階段下降動作時の QF%EMG は,椅子の座り立ち動作時のそ れよりも低い値(いずれも p<0.001)であった.TS%EMG は,平地歩行および階段下降動作が,階段上昇およ び踵の上げ下ろし動作よりも低い値(いずれもp<0.01)であった.

(32)

Ⅳ.考察

  本研究の結果,1)日常生活動作における筋活動水準には性差および年齢差が認められ,2)大腿前部および 下腿後部の筋活動水準は,それぞれ体重当たりの膝関節伸展トルクおよび足関節底屈トルクと有意な相関関 係にあった.また,2)に関しては,年齢の影響を除去した場合でも有意であり,日常生活動作中の筋活動水準 は,年齢に関係なく体重当たりのMVCトルクの影響を受けることが示された.

1. 日常生活動作における筋活動水準の性差

  若齢者を対象としたSawai et al. (2006)の報告と同様に,日常生活動作における大腿前部および下腿後部 の筋活動水準には若齢群および中高齢群ともに性差が認められた.Sawai et al. (2006)は,日常生活動作に おける性差が最大筋力における性差に起因していることを考察している.そこで,若齢群および中高齢群それ ぞれについて,各動作における女性の平均筋活動水準に体重当たりのMVCトルクを乗じて,男性の体重当た りの MVC トルクで除して推定した筋活動水準(推定値)を,本研究で得られた男性の平均筋活動水準(実測値) と比較した.その結果,若齢群では大腿前部における推定値が 5.9~17.1%(実測値:5.6~19.6%),下腿後部に おける推定値が 16.2~27.1%(実測値:15.5~27.7%),中高齢群では大腿前部の推定値が 12.1~22.2%(実測 値:11.0~25.7%),下腿後部の推定値が 24.1~35.5%(実測値:25.7~35.4%)であった.どちらの筋群において も,推定値は実測値に類似した.このことは,大腿前部および下腿後部における日常生活動作の筋活動水準の 性差は,若齢者および中高齢者ともに体重当たりの MVC トルクの差に影響を受けるということを示すものであ る.

2. 日常生活動作における筋活動水準の年齢差

  本研究では,男女ともに日常生活動作における筋活動水準に年齢差が認められた.日常生活動作における 筋活動水準の性差と同様に,その年齢差が最大筋力における年齢差によるものかどうかを検討した.中高齢群 における日常生活動作中の筋活動水準に体重当たりの MVC トルクを乗じて,若齢群の体重当たりの MVCト ルクで除して推定した筋活動水準(推定値)を,本研究で得られた若齢群の平均筋活動水準(実測値)と比較す ると,男性では大腿前部の推定値が8.7~20.4%(実測値:5.6~19.6%),下腿後部の推定値が20.5~28.3% (実 測値:15.5~27.7%),女性では大腿前部の推定値が 13.3~24.4%(実測値:8.2~23.7%),下腿後部の推定値が 26.5~39.1%(実測値:22.4~37.3%)であった.大腿前部および下腿後部ともに,推定した筋活動水準のほうが

図 3-2 トレーニング量記録帳
表 3-1 Pre および Post における筋厚および MVC トルク
表 3-2 Pre および Post における筋厚および MVC トルク

参照

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