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アメリカ連邦政府における情報資源管理政策

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(1)

アメリカ連邦政府における情報資源管理政策 : 一 九八〇年文書業務削減法を中心として(上)

その他のタイトル Information Resorces Management Policy in the U.S. Goverment : In Relation to the Paperwork Reduction Act of 1980 (1)

著者 岡本 哲和

雑誌名 關西大學法學論集

巻 42

号 5

ページ 1135‑1185

発行年 1992‑12‑10

URL http://hdl.handle.net/10112/1559

(2)

第一節情報資源管理の概念 第二節情報資源管理が行政に与える影響

第三章アメリカ連邦政府の情報政策—その歴史的展開

第一節第二次世界大戦以前の情報政策

(t

he

Pa pe rw or k  R ed uc ti on   Ac t)   第一節連邦文書業務委員会 第二節文書業務削減法の制定 第三節文書業務削減法の内容

第五章文書業務削減法のインプリメンテーションーレーガン政権

第一節背景的要因ーレーガン政権の情報政策

ー 一

九 八

0

年文書業務削減法を中心として1

アメリカ連邦政府における情報資源管理政策

(3)

文書業務削減法のインプリメンテーション

インプリメンテーションの規定要因

l

︐  

現在︑社会のあらゆる領域で情報の重要性が高まる中︑様々な角度・方法によって情報の問題をとらえようとする 試みがなされてきている︒政治学の側からその問題をとらえようとする時︑中心となる一っのアプローチとして考え られるのは情報に関わる﹁政策﹂に焦点をあてることであろう︒とはいっても︑情報政策に対して分析のメスをいれ ることは決して容易な作業ではない︒情報政策は︑エネルギー政策︑産業政策︑福祉政策などとともに安易な分析や 解決を拒むような種類の政策に属する︒政策の目的が多様で︑それらはしばし衝突しあい︑目的そのものも曖昧であ る場合が多いのがその理由である︒まさにそれらは﹁人間の社会行動の複雑さおよび曖昧さ﹂を反映しているのであ

そのような事情の中︑情報政策に関する従来の政治学的研究においてよく見られる傾向は次の二つに大別されよう︒ る ︒

いわば﹁ミクロ的﹂視点からアプローチを試みようとするものである︒すなわち︑特定の組織における 情報管理手法の導入やコンピュータ化の進展などの個々の事例と関連づけて︑それにより組織内部の権力がどのよう に移行するかを明らかにしようとするものである︒︵行政学的なアプローチでは︑情報管理における基準の設定やそ の導入がもたらす職務遂行上の効果の測定などが課題となる︒︶そして第二は﹁マクロ﹂的なアプローチである︒こ れは︑政府による情報政策が政治体系そのものや社会全体に与える影響を取り扱うものである︒政府による情報統制︑

関法

第二節

(4)

テクノクラシー︑管理主義的国家などがそこでの中心的テーマとなる︒

こういった状況においてこれまであまり試みてこられなかったのは︑

すなわち情報政策を形成する制度的枠組みそのものに対する分析であったように思われる︒そこで本稿においては︑

アメリカにおける情報政策︑とりわけ連邦政府における情報政策を取り上げ︑﹁制度﹂との関連からそれを政治学的

に論じていくことにする︒そこで議論の中心となるのが﹁情報資源管理

(I nf or ma ti on Re so ur ce s  M an ag em en t)

﹂の概

後述するが︑情報政策は多様なサプカテゴリーを包摂している︒代表的なものだけを挙げてみても︑情報公開政策︑

情報機密政策︑情報技術政策など︑それが対象とする範囲は非常に広範にわたり︑紙幅の関係からもこれらすべてを

包括的に論じ尽くすことはきわめて困難であると言わざるをえない︒そこで︑本稿では情報政策の中でも﹁情報資源

管理﹂に関わる政策︑すなわち情報資源管理政策に焦点をあてることとする︒情報資源管理とは公的・民間双方の部

門のアドミニストレーションにおいて近年注目を浴びはじめている概念であり︑簡潔に言えば︑情報を組織における

いわゆる﹁メゾ・レベル﹂からのアプローチ︑

0年に制定された﹁文書業務削減法

( th e Pa pe rw or k  R ed uc ti on c  A t)

カネと同様の資源と見なしその管理を行っていくという考え方である︒

ここで情報資源管理政策を特に取り上げるのは︑アメリカの情報政策において情報資源管理の概念が生成し展開し

ていく様相を明らかにすることにより︑情報政策全体の様態と変転が浮き彫りにされるであろうこと︑情報資源管理

自体が重要な概念として注目を浴びてきており︑また今後のアメリカー同様に我が国ーの情報政策において一層枢要

な位置を占めることになるであろうと予想し得ること︑そして我が国の政治学・行政学の領域においてそれについて

の紹介及び研究がいまだ充分になされているとは言えないことなどの理由による︒ただし︑その他の関連する情報関

(5)

とを願ってやまない︒ が一助となり得ることを期待している︒ なかったことの三つによる︒ 第四二巻第五号 係の政策については︑必要に応じて適時触れられることになるだろう︒

また︑文書業務削減法を取り上げるに至った理由は︑それが連邦政府の情報政策を包括的に規定する重要な位置を 占めていること︑情報資源管理の概念を初めて明示的に打ち出した立法が同法であること︑また︑そういった重要性 にもかかわらず︑情報資源管理同様︑特にわが国ではそれに関する︵政治・行政学的な︶研究がほとんどなされてこ 本稿の目的は次の二つに集約される︒第一は︑情報資源管理と文書業務削減法を︱つの手がかりとし︑アメリカ連

邦政府の情報政策の推移︑実態︑問題点を実証的に明らかにすることである︒そして第二は︑それによって情報政策 における﹁技術﹂と権力配置との関係に分析を加えることである︒特に後者については︑最近の科学技術政策研究に おいて注目されている問題の︱つである︑﹁技術的要因が政策形成に及ぽす影響﹂に関する研究において︑その分析 第一章︑第二章では︑それぞれ情報︑情報政策︑そして情報資源管理を取り上げる︒これらの用語の意味及び用法

の多様性や現状での不確定性などの事情に鑑み︑これらの章では概念的でいくぶん詳細な議論を展開する︒第三章で は︑情報資源管理の登場以前のアメリカ連邦政府における情報政策の流れを歴史的に概観する︒第四章では︑文書業 務削減法の制定過程とその内容が考察される︒そして第五章では︑主として第一期目までのレーガン政権における文 書業務削減法の施行過程と︑それを規定する諸要因に分析が加えられる予定である︒

最後に︑政治学を含めた総合的な社会科学的アプローチによる情報研究に対し︑本稿が何らかの寄与をもたらすこ

(6)

(1

) 

Ov ar ma n, E .   S am

  •.

an d  A nt ho ny .  G   Ca h i ll .  " I n fo r m at i o n  P o li c y   " 

St ud y  o f  V al ue s  m  t he   P ol i c y  P ro c e ss "

,  P o l ic y t u   S d ie s   Re

  , 

v ie w ,  V o   l .

9,

N o  

.   4

. 

Su mm er , 

1990, p .  

813. 

(2

) 

Wi ld av sk y,   Aa r o n. ,   Sp ea ki ng r  T ut h  to   Power

,  L i tt l e  B ro wn   an d  C om pa ny , 

1979, p .  

215. 

(3

) 

C f .  

Schroeer•

D ie t r ic h . ,  S c ie n c e,   Technology

n  a d  t h e  N uc le ar   Ar ms   Ra c e ,  J oh n  W il ey n  a d  S o ns ,

1984.  

情報の定義はきわめて多様である︒それは︑用いられる文脈や理論的背景に依存して︑様々な角度からとらえられ

ている︒それゆえ︑ここで単一の定義を与えることは困難であるが︑本稿で取り扱うテーマの性質上︑たとえそれが

暫定的なものであるにせよ一応の定義付けを行う必要があるだろう︒そこで︑本稿では情報を︑﹁受け取るもの

信者︶に何らかの影響を与える意味の集合﹂とやや広く定義しておきたい︒この点で︑情報は﹁単なる事象の記述﹂

であるデータとは区別されねばならない︒つまり︑情報とは受信者の側の観念の変化や実際の行動の触発などの何ら

かの帰結をもたらすという点で︑﹁価値あり﹂とされた意味内容の集合なのである︒

ここで︑あまりに深く情報についての抽象的な議論に踏み込むことにさして意味があるとは思われない︒情報概念

の多義性そのものに引っ張られて議論の焦点が拡散してしまうおそれがあるし︑何よりも本稿で主として取り扱う

﹁政府情報﹂はきわめて限定的でより具体的な対象であるからである︒右に述べた情報についての定義を前提とした

上で︑次に︑﹁政府情報

(g ov er nm en it nf or ma ti on

)﹂および本稿においてそれが意味するところのものについて論じ 第一節情報の概念 第一章

( ︱ 一 ︳

︱ ‑ 九 ︶

︵ 受

(7)

第四二巻第五号

0)

情報の分類を行うならば︑政府情報という語は情報の所有を基準としたカテゴリーに含まれるとされるものであろ

う︒政府は情報を収集し︑あるいは自ら情報を創り出し︑それを保持する︒政府情報とは︑文字通り政府によって

﹁所有された﹂情報を指すものである︒さらに︑政府情報そのものを細かく分類するならば︑次のような基準による

ものが考えられよう︒まず第一に情報の内容自体を基準とする分類である︒たとえば︑経済情報︑国防情報︑科学技

術情報といった分類方法が考えられ得る︒ただ︑この基準に則ってきわめて詳細な分類を試みることは本稿の目的か

らしてさほど意味がないと思われる︒なぜなら︑本稿では特定の機関の特定の内容︑目的︑形態をもった情報よりも

むしろ︑﹁情報一般﹂およびそれに関わる連邦政府全体の政策を主たる分析対象として取り扱うからである︒第二に︑

クロフィッシュ︑ 情報の媒体による分類があげられる︒情報技術の発達により︑政府機関が取り扱う情報の媒体も従来の文書からマイ

フロッピー・ディスク︑CD│ROMと多様になってきている︒とりわけ︑情報の﹁電子化﹂とそ

れがもたらす政治・社会的影響はきわめて重要なテーマではあるが︑これについても︑本稿では特定の媒体による情

報とそれに関わる政策に特に焦点をあてるようなことは︑必要がある場合を除いては行わない︒理由は︑右に述べた

ように情報一般が主たる分析対象であることと︑もう一っはアメリカ連邦政府自体も︑必ずしも体系的で一貫性を持

っ﹁電子情報﹂に関する政策を実施しているとは言えないからである︒第三に︑情報の内容の﹁出所﹂を基準とする

分類が考えられ得る︒それに従って︑P.ハーノンは︑政府情報を次のように分類する︒

政府活動の直接的帰結であるもの︑すなわち︑政府によってつくりだされたもの︒法律︑規則の類がその代表

的なものである︒

政府活動の帰結によってではなく︑機能的な必要性に応じるためには欠かすことのできない︱つの構成要素と

(8)

)のような留保をつけた上で︑

ハーノンによるこの分類の問題点の︱つは︑

情報機関が収集する国防関係の情報が︑政策決定者に提出されることを前提に定期的に報告書の形でまとめあげられ

るといったケースでは︑報告書がその作製自体を目的とした政府活動の直接の帰結なのか︑あるいは国防政策実施の

ための単なる一構成要素なのかは明確に判断しにくい︒もっとも︑このことは︑あらゆる分類作業につきものの﹁灰

色領域﹂出現の困難性に帰着するものであるともいえよう︒また︑この分類には文字化・記号化されていない︑

ゆる﹁口頭﹂情報や︑手紙︑メモなどの﹁非公式情報﹂は含まれていない︒これらの情報も無視し得ない重要性を有

しており︑当然分析対象の︱つに含めるべきであるが︑現時点においてそれは困難であり︑本稿では取り扱わないこ

れている情報など︒ おける文献のインデックスなど︒

して政府によってつくりだされたもの︒米議会図書館により作製された目録類など︒

国民から得られたデータを基にして政府によりつくりだされたもの︒国勢調査局による統計データなど︒

特定の契約者が政府のためにつくりだしたもの︒政府がスポンサーとなる研究開発計画の報告書類がこれにあ

公的ソース及び民間ソースの両方からのデータを処理することによりつくりだされたもの︒特定の専門分野に

民間のソースから逐語的にとられたもの︒主に民間のデータベースから検索され︑政府データベースに保存さ

12との区分が必ずしも明確ではないことである︒たとえば︑政府

ハーノンによる分類は本稿で扱う政府情報の範囲をほぽ包摂していると判断して良

(9)

とにする︒

(1

)

情報についての概念は次の二つ︑すなわち日記号論的なもの︑口情報理論的なものに大きく分類される︒前者の特徴は︑

情報を﹁意味するもの﹂︵記号︶と意味されるもの︵意味︶との統一態として扱うところにある︒このようにとらえた場合︑

遺伝形質を決定する働きを持つDNA︑RNAや神経網の中で伝達されていく神経インパルス︑そして人間の用いる言語も

このカテゴリーに含まれる︒後者はサイバネティクスや通信工学の分野で用いられるシャノン流の概念である︒それは無秩

序の尺度として不確実性の度合いを示すエントロピーの反対概念であり︑不確実性の減少の度合いを表している︒しかもそ

れは定量的な性格を有している︒これらについては︑正村俊之﹁社会的情報システムの生成と変動ー社会的秩序に対する情

報学的アプローチ﹂︵﹃思想﹄一九八七年︑七月号︶︑七八ー七九ページを参照のこと︒後の記述からも明かであるが︑本稿

における情報はおおむね前者の概念に含まれる︒シャノン流の概念の問題点は︑情報の﹁受信者﹂の側に対して充分な考慮

が払われていないこと︑すなわち︑情報が受信者に与える影響が考えられていない点にある︒これに関しては︑逢沢明﹃転

換期の情報社会ー産業と文明の未来像﹄︵講談社︑一九九二年︶︑六五ー六六ページを参照のこと︒

(2

)

代表的な情報の定義として︑F・マッハルプによるものがあげられる︒マッハルプは︑情報とは﹁知識]であるとし︑知

識とは﹁知られていること﹂の内容︑あるいは﹁知っている﹂という状態であると述べている︒また︑マッハルプの考えを

発展させ︑﹁情報経済﹂という新たな学問分野を切り拓いたM・ポラトは︑情報を﹁維織化され伝達されるデータ﹂と定義

する︒マーク・ポラト著/小松崎清介監訳﹃情報経済入門﹄︵コンピュータ・エージ社︑一九八︱一年︶︑17ページ参照︒情報

の定義についてのさらに詳しい議論に関しては︑山川雄已﹃政策過程論﹄︵蒼林社︑一九八0

また金子郁容﹃ネットワーキングヘの招待﹄︵中央公論社︑一九八六年︶︑ニ︱︱︱‑│︱二五ページ︑井口君夫﹁情報の定義と

使用実態﹂︵﹃情報管理﹄二四巻︑三号︑一九八一年六月︶などを参照のこと︒

(3

)

一瀬益夫﹁意志決定支援のための情報資源管理﹂︑海老澤栄一︑一瀬益夫︑堀内正博︑佐藤修︑上田泰﹃情報資源管理ー 関法

第四二巻第五号

(10)

第二節

アメリカ連邦政府における情報資源管理政策 統合システム構築を目指して﹄︵日刊工業社︑一九八九年︶︑所収10

0

(4

)

(5

)

情報の﹁電子化﹂については以下の文献を参照のこと︒

B or t n ic k ,J a n e. ,  "

Su pp or t  f o r  I n fo r m at i o n  Technology

n     i S ci e n ce :   Th e  F ed er al   Ro l e "

,  G ov er nm en t  I nf or ma ti on   Qu a r te r l y,   V ol .   3 ,  N o.   3, 1  98 6,  p p 2.   33

2 50 .  an d  A s so c i at i o n  o f  R es ea rc h  L ib ra r  ,  i e s ,   "Technology

  & 

U.   S.   Go ve rn me nt   In fo rm at io n  P o li c i es :   Ca t a ly s t s  f o r  N ew   Pa r t ne r s hi p

" , o  G ve rn me nt   In f o rm a t io n   Qu a r te r l y,   V ol .  3 ,  No .  3,  1 98 6,  p p

267 , 2.  

78 . 

(6

) 

He rn on ,  P e te r . , 

"

Go ve rn me nt   In f o rm a t io n

:  

F ie l d  i n   N ee d  o f  R es ea rc h  a nd   An a l yt i c al   S tu d i es "

,  i n   C ha rl es   R.   Mc Cl ur e,   Pe t e r  He rn on ,  Ha ro ld C .     R e l ye a ( ed s . ),   Un it ed   St a t es   Go ve rn me nt   In fo rm at io n  P ol i c ie s :  V ie ws   an d  P e rs p e ct i v es , A  bl ex  Publishing  Co rp or at io ns ,  19 89 , p p , 9.   . 

(7

)

言つまでもなく︑ここでハーノンがいう﹁政府

(G ov er nm en t)

﹂とは︑行政府のみならず立法府までを含めた広い意味に

(8

)

政府機関に関するものではないが︑アメリカのエグゼクティヴを対象としたある調査において︑電話︑会食︑訪問︑メモ

などの非公式メディアの利用頻度が︑コンピュータレポートやコンピュータ以外のレポートなどの公式メディアのそれを上

回っているとの結果が出されている︒︵これについては海老澤・一瀬・堀内・佐藤・上田前掲書三四ー三六ページ参照︒︶政

府機関において同様の調査を行ったとしても︑きわめて近い結果もしくは口頭あるいは非公式メディアの一定の重要性を肯

定する結果が出されるものと予想される︒

情報政策の概念

七七

情報政策という語自体はきわめて広い意味を含んでいる︒政策

( po l i cy ) という単語が英語では経営上の﹁方針﹂

ゃ﹁目的﹂の意味を持つことから︑情報政策と言う場合には民間企業の情報に対する諸施策を含むこともある︒これ

と区別するために︑

アメリカでは

Go ve rn me nt In fo rm at io n  P ol ic yあるいは

Na ti on al In fo rm at io n  Policy

という語を用

︵ ︱‑ 四

一 ︱‑ ︶

(11)

一応定義付けておこう︒

第四二巻第五号

いて政府の情報に対する施策を表すのが一般的となっている︒ここでは︑政府が主体となる情報に関しての諸施策を

示すものとして情報政策という語を使用することにする︒

さらに踏み込んで情報政策について論じておこう︒まず︑情報政策の定義について考えてみたい︒後述するように︑

情報政策の対象範囲は非常に広汎にわたる︒それゆえ︑それらを包摂するするような単一の定義付けを試みようとす

一般的なものにならざるを得ない︒たとえば︑オーヴァーマンとケーヒルはそれを︑﹁情報の創出︑使用︑保

存及び伝達を促進し︑阻止し︑あるいは規制するすべての法律︑規則︑政策のセット﹂と定義している︒この定義は

有効であるが︑情報が扱われる諸局面を創出︑使用︑保存︑伝達と︑ややせまくとらえすぎているきらいがある︒そ

ハーノンは﹁情報移転過程を統治する関連諸法令とガイドラインのセット﹂と情報政策を定義している︒

ここでいう﹁情報移転過程﹂とは︑いわゆる情報のライフサイクルを指している︒情報のライフサイクルは︑情報の

創出︑処理︑伝達︑提供︑使用︑保存︑処分の各段階からなる︒ハーノンは︑これらすべての段階に関わるものを情

報政策とするのである︒ハーノンの定義はオーヴァーマンとケーヒルのそれ以上に広い範囲を含むものであるが︑

( go v

e rn )

﹂という語が対象を厳しく限定しすぎているように思われる︒

go

ve

rn

は︑対象を直接的に扱う

とのニュアンスが強い︒その観点からすれば︑情報技術の開発やその管理にあたる人材の育成といった﹁インフラ﹂

の整備にあたる政策が視野の外におかれてしまう可能性がある︒そこで本稿においては︑以上の定義の有効性を認め

つつ︑﹁政府によって行われる情報に関する目的の設定とその達成行動の方法的基準から成る体系﹂と︑情報政策を

次に情報政策の分類を試みてみたい︒繰り返すが︑その対象はきわめて広汎にわたるがゆえに︑代表的なもののみ 関法

(12)

123情報システム安全化政策︑4

プライヴァシー保護政策︑5無体財産権政策︑6通信利用制度政策︑7社会情報化政策︑89情報技

術政策の八つに分類されよう︒1は︑情報のライフサイクルに関わる政策のセットであり︑行政管理の伝統的なテー

マである﹁文書管理﹂はこれに含まれる︒2は文字通り政府情報の公開と利用に関する政策である︒アメリカにおけ

る情報自由法︑サンシャイン法や︑わが国の多くの自治体が制定している情報公開条例が代表である︒3は︑情報シ

ステムに対する脅威およびその脆弱性に対し︑安全性・信頼性を向上させるための諸施策を指す︒4は︑社会におけ

るコンピュータ利用の促進がもたらすネガティヴな結果としてのプライヴァシーの侵害から︑個人の権利を守るため

の政策である︒わが国で一九八九年から施行されている個人情報保護法などが含まれる︒5の代表的なものは特許政

策であろう︒これについては︑国有特許の利用政策のように政府が所有する情報の移転に関するものと︑

制度のように政府が間接的に民間における情報の創出︑移転を支援するものとがある︒6には︑電気通信網の整備や

それの民営化への促進のための施策などが含まれよう︒7は産業︑社会︑生活の各面において情報の利用を促すため

の整備—各都市へのニューメディアの導入、情報拠点施設の整備などーに関わる政策である。わが国の郵政省による

テレトピア構想︑通産省のニュー・メディア・コミュニティ構想などが代表例である︒8は︑機密扱いとする政府情

報を決定する政策および機密扱いにされた情報の管理に関わる政策である︒ちなみに︑アメリカの情報自由法は情報

開示の例外として国防・外交︑トレード・シークレット︑個人情報︑医療カルテなどの九つの項目を規定している︒

( 10 )  

ここから︑情報公開制度は情報規制制度の﹁裏返し﹂の一側面を持つともいえよう︒最後の9は︑政府による情報技

術の開発あるいはその促進に関する政策であり︑科学技術政策もしくは産業技術政策の下位政策ともとらえられよう︒ をとりあげておくことにする︒

(13)

これらから右にあげた情報政策の分類をとらえれば︑情報管理政策はもっぱら費用と便益を意識して実施されてお り︑情報規制政策は機密と安全に重きを置く︒無体財産権政策は所有権の明確化と所有者の利益の確保を目指すもの である︒言うまでもなく︑プライヴァシー保護政策は人権の保護としてのプライヴァシーの確保を志向する︒また︑

複数の価値を志向するものもある︒情報公開政策はアクセスと自由および公開性を志向し︑情報技術政策はこれらす

7所有権

(o wn er sh ip )

6機密と安全

(s ec re cy an d  s ec ur it y)  

5費用と便益

(c os ta nd e  b ne fi t)  

これについては︑政府が政府研究機関をもちいて直接研究・開発にあたる場合と︑研究共同組合︑補助金︑税制優遇 などの諸ツールをもちいて間接的に支援するケースとがある︒

いわば﹁経験的﹂な基準による分類を列挙したものといえよう︒ここで指摘しておかねばならないのは︑

これらの諸政策の中にも一定の諸﹁価値﹂が内包されていることである︒あらゆる政策の中には目標を設定し︑それ を達成するための方法の正しさを判定する基準として︑一定の﹁価値﹂ないしは規範が前提とされている︒オー ヴァーマンとケーヒルは︑情報政策を形成する価値のリストとして次の七つをあげている︒

アクセスと自由

(a cc es sa nd   fr ee do m)  

プライヴァシー

有用性

(u se fu ln es s)

3公開性

(o pe nn es s)

(p rivacy) 

関法八〇

(14)

アメリカ連邦政府における情報資源管理政策

論じてみたい︒

べてに関わってそれぞれの価値の促進に寄与するものととらえられる︒通信利用制度政策と社会情報化政策は︑

コストに関わる価値を志向すると考えられる︒︵表

1│1

ここで重要なのは︑近年においてこれらの諸価値のうち情報の有用性を特に重視するような︱つの傾向が現れてき たことである︒従来の行政の課題は︑情報取得のコストや文書量をいかに削減するか︑あるいは文書保存のためのス ペースをいかに確保するかといった︑費用と便益に関わる価値ををもっぱら志向するものであった︒また︑民主主毅 の要請や世論の動き︑ウォーターゲート事件に代表される政治問題の噴出などの外部環境の変化は公開性の価値の促 進を推し進めた︒これに対し︑情報を政策決定や施行の場面において積極的に有効利用していこうとする考え方が前

面に出されてきたのである︒これが﹁情報資源管理﹂の考え方である︒次章においては︑この情報資源管理について れもインフラの整備の面からアクセス︑有用性︑

1‑1 情報関連政策における価値

政策の種類 志向する価値

t/i報管理政策 ⑤ 

情報公開政策

梢報システム安全化政策 @ 

プライバシー保護政策 ② 

無体財産権政染 ⑦ 

通は利用制度政策 (00)1@ 

社会梢報化政禎 ① 

情報規制政策 ⑥ 

情報技術政策 ① 

※数字は以下を表わす

①  アクセスとl'.l

  プライバシー

③  公開性 (4)  {j用性

⑤  費用と便益

@  機密と安令

⑦  所ff

(15)

巨坦撼臣ii~撚洪康I(I I団<) い)ヨ三哉oJ「溢撰甲聡盛暇..lJ択坦」ITI怜濫担叡噂『ll!‑蓄益麟lIll・溢齢字炉J溢醗』(,露枷迎,I忍麟)'

回て一・;入゜

(N) Peyton, David., "Federal Information Policy Development: A Private Sector Perspectives", in McClure, Hernon, Relyea(eds.), 

op. cit., pp. 100‑107. 

(cv:,) Overman and Cahill, op. cit., p. 803. 

(寸)Hernon, op. cit., p. 12. 

(L0) 紺途巳ヒ糾疇喧珊『翠睾ぶi‑<1卜釈

M

甘芸縦:i:::'s"':,̲ll','s"'入』(+<嘔等岳面窒I~<~lll-)'~i鹿゜

(w) 寂活濫即『°r',Jl','s"'''(,‑;‑.—遁註繹癖~:/;::!釘(如恙撫迎,I<<lll-)'~\鹿゜

(<‑‑‑) Cf. Rushing, Francis W., and Carole Ganz Brown(eds.), Intellectual Property Rights in Science, Technology, and Economic  Performance‑International Comparisons, Westview Press, 1990. 

(co) 

心知忍ざ蔀溢細唄熙苔撰晦墜目導紅頸犀唄鯉声⑯翠淵ぐ巨たヤー

mS盛睾』(+<~~呂面愛l兵くギ母)心勾如

栂賠択:;'J..lJ

(m) {IJJ-t<lil:l{nnl胞茫癖封DII殿l{nn側睾『苺噂喪猫~~c洲沢択'泄!全択』(地>i,,;--:\<J̲:;,' I~ Ill!‑)'R器翌憫心'Cf.Ministry of  Post Telecommunication and the Science Technology Agency, "Growth and Management of New Information Infrastruc

tures in Japan", in Gassmann, Hans Peter. (ed.), Information, Computer and Communications Policies for the so・s, Elsevier, 

1981. 

(~) Cf. Hernon, Peter., "Protected Government Information: A Maze of Statutes, Directives, and Safety Nets", in McClure, Her‑

non, Relyea(eds.), op. cit., pp. 245‑268. 

(::::) 茫癖祁造溢撰'..,!::iB'. 

ャ竺,f\('.1-1€'.Q'.;、会・凶ざKCI剖塁麟邑叫伽吾淋J菜{..'S,Hills, Jill., Information Technology and  Industrial Policy, Croom Helm, 1984. Hills and Papathanassopoulos, Stylianos., The Democracy Gap: The Politics of Informa‑

tion and Communication Technologies in the United States and Europe, Greenwood Press, 1991. 

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(16)

第一節

A.   Gu nn ,  P o li c y  A na ly si s  f o r  t h e  R ea l  W or ld ,  O xf or d  University

r e   P s s,   19 84 , p . 

6.

 

( 1 3 )

  Ov er ma n  a nd   Ca h i ll ,

 

p .   c i t . ,   p .   80 5.  

情報資源管理

情報資源管理の概念

情報資源管理

(I nf or ma ti on Re so ur ce s  M an ag em en t)  

J¥ 

の定義については必ずしも一様でない︒ここで代表的な定義

をいくつかあげておきたい︒シラキューズ大学情報研究スクールのシャロン・コードルは︑情報資源管理を﹁次のよ

うな目的のために政策︑プログラム︑手続きのセットを開発し︑施行する管理上の機能である︒その目的とは︑実体

的な情報資源とそれを支援する情報処理技術のための設計︑管理︑コントロールを効率的かつ有効的に行うことであ

る﹂と定義付ける︒海老澤栄一はそれを﹁組織体の行動にかかわる有用な情報を選別︑処理︑創造するために︑関連

する情報を経営の資源として有機的かつ動態的に統合し、運用すること」と定義している。また、ボウルトン•B.

ミラーは﹁情報資源管理とはデータと情報の管理である︒それは︑コンピュータのハードウェア︑

ミュニケーション︑内部および外部データベースなどの情報資源の管理や計画と検査︑そして組織全体のための情報

管理を支援するためのこれらの資源の統合を包括した語なのである﹂と述べている︒

このように︑各論者によってその定義もまちまちであるが︑そこに表れている最大公約数的な考え方は次の二つで

ある︒第一は︑情報をカネ︑人などと同様に組織にとっての資源と見なすことである︒

としては︑複製可能性や連結による価値の付加などがある︒ここで︑﹁資源としての﹂情報との限定を課した場合︑ 第二章

一般的に言われる情報の特質

参照

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