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「わせだ日本語サポート」の挑戦

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Academic year: 2021

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1.はじめに

日本語教育研究センター(Center for Japanese Language,以下「CJL」)は,2011年に学術 院組織から離れて全学的な教育研究機関となり,現在,一元的に早稲田大学における日本 語教育を担っている。早稲田大学では「Vision150」に示されているとおり,2032年には 1万人の留学生の受け入れを目指しており,全学の外国人留学生数1)も年々急増している。

2020年度はCOVID-19の感染拡大により減少し,4,718名(2020年5月1日現在)となっ たが,2018年度は5,200名(2018年5月1日現在),2019年度は5,499名(2019年5月1 日現在)と堅調に増加しており,これらの留学生の日本語教育のために,CJLにおいては 200名のティーチングスタッフが週に約650コマの多彩な授業を運営している。

しかし,留学生の日本語学習の場はCJLの教室にとどまるものではない。キャンパス 内のあらゆる場が学びの場となっており,キャンパス外にも学びのリソースが溢れてい る。留学生の日本語学習を多面的に捉えるならば,学内と学外,また,学内においても教 室内と教室外というように3つの場が想定される。留学生は,授業を中心にサークルやア ルバイト,ボランティア等,様々な社会活動を通して日本語を学ぶ。それらの総体として の日本語の学びが,留学生の現実の場での日本語運用力の向上に寄与すると考えられる。

本稿で取り上げる「わせだ日本語サポート」も,全学的な教育研究機関であるCJLの 付設機関として,学内の全留学生に対して開かれた教室外の日本語の学びの場の一つであ る。そこでは10年間にわたり,留学生を対象に正課外の日本語自律学習支援が行われて きた。しかし,その認知度は学内他箇所に対しても,留学生に対しても未だ十分ではな い。本誌2018年第6号,および2019年第7号の「センター最前線」において,CJLの課 題として「開放性」が取り上げられたように,「わせだ日本語サポート」においても,更 なる「開放性」が求められている。本稿では,開室10年目を迎える2021年度,学内の 全留学生と各箇所に向けてより開かれた日本語自律学習支援機関となることを目指して,

「わせだ日本語サポート」の現在とこれからの挑戦について報告する。

2.「わせだ日本語サポート」の設立と目的

「わせだ日本語サポート」は,2011年にCJL内に開設された日本語自律学習支援機関で ある。この年,東日本大震災が起こり,来日する留学生が激減した。帰国する留学生も増 え,新学期の授業開始が延期されるなか,日本にとどまっている留学生のために日本語学 習支援を始めたのがきっかけである。当時は,22号館8階の一室で担当教員と早稲田大 早稲田日本語教育実践研究 第 9 号

「わせだ日本語サポート」の挑戦

―全留学生に開かれた日本語自律学習支援を目指して―

日本語教育研究センター

 寅丸 真澄・吉田 好美

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ていた 。その後活動の幅を広げ,3階に付設された学生ラウンジ Waseda International Learning Lounge (以下「WILL」)内の専用室に移動し,現在は2名の担当教員と8名の 院生スタッフが活動している。

「わせだ日本語サポート」の現在の目的は,CJLの中枢となる日本語授業とは異なる側 面から,教室外の日本語自律学習支援を通して,留学生の日本語能力の向上と,本学およ びCJLの目指す「自律的な人材」の育成に寄与することである。

その背景には,CJLが抱える次の3つの課題がある。1点目は,留学生の増加と多様化 が進む現状において,留学生が個々の日本語学習ニーズを満たすためには,自身による学 習内容や学習方法の選択,管理が必要になるということである。授業内の学習項目を理解 し運用するだけでなく,独自の学習をデザインし実践することが期待されていると言え る。また,2点目は,学校教育の最終段階である高等教育機関の最重要課題として,学習 者の自律性の育成が必須だということである。CJLでは,日本語教育プログラム(Japanese Language Program,以下「JLP」)の留学生をはじめ,学内の学部や大学院から多数の留学 生を受け入れている。出身国や出身地域,年齢も多岐にわたるが,その多くは大学院進学 や就職という進路を目指している。自律性の育成は,留学生の卒業後のキャリアを支援す る最も重要な課題の一つであると考えられる。さらに3点目は,全学的な教育機関である CJLの一組織として,本学およびCJLのディプロマ・ポリシーに示された人材育成に寄 与することが期待されているということである。早稲田大学の「Vision150」では「グロー バルリーダー」,CJLでは「地球市民」の育成が目指されており,いずれも主体性や自律 性の育成が課題の一つとなっている3)

これら3つの課題が想定する「自律的な人材」とは,自身の学習やキャリアを主体的 に選択し,デザインし,他者と協働しつつ全うしていける人材である。「わせだ日本語サ ポート」では,そのような想定を踏まえ,留学生の学習動機や学習目標,キャリアを見据 えた長期的な視点で日本語自律学習支援を行っている。本機関は,日本語自律学習支援と いう立場から,本学およびCJLの目指す人材育成に寄与していると言える。

3.支援活動

3-1.支援体制とスタッフ

22号館WILL内の「わせだ日本語サポート」専用室では,毎週3日,1日6時間(12 時〜18時,開室は17時30分まで),2〜3名(全8名)の学習アドバイザー兼スタッ フ(以下,「スタッフ」)による1対1のピア・サポートが行われている。留学生とスタッ フは,専用室に個別に配置されたテーブルを囲んで,最長45分のアドバイジング・セッ ションを行う。本学の留学生であれば,予約不要で誰でも利用できる。

スタッフは日本語教育研究科をはじめ,教育学研究科,政治学研究科等の大学院生であ る。ほとんどのスタッフは研究科を修了するまで在籍しており,博士課程に在籍してい たスタッフの中には,4年以上在籍していた者もいる。また,留学生スタッフを含め,ス タッフのほとんどが日本語に加え,英語,中国語等,複数言語での対応が可能である。ま

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寅丸真澄・吉田好美/「わせだ日本語サポート」の挑戦

た,留学生と同じ目線で,時には同じ母語で日本語学習に寄り添うという支援のあり方が 教師による授業とは大きく異なっている。このようなピア・サポートは,留学生の日本語 学習に対する心理的障壁を低下させ,親身に対応してくれるスタッフに対する信頼感を高 める。来訪者の中には,開室日に毎回授業課題を抱えて通ってくる留学生もいれば,相談 事がないのに顔を見せて雑談をしていく者もいる。

一方,スタッフも担当教員を含めた定期ミーティングでの情報交換や研修に加え,自主 的に勉強会を開くなど,日本語教育や自律学習に関する知識,アドバイジング・スキルの 向上に努めている。スタッフの多くが研究科修了後,日本語教師やコンサルティング等の 業務に就いており,「わせだ日本語サポート」でのサポート経験がスタッフのキャリアに も影響を与えていると考えられる4)。「わせだ日本語サポート」は,留学生とスタッフ双 方の学びの場であると考えられる。

3-2.多様な支援活動

「わせだ日本語サポート」では,主に以下の6つの支援活動を行っている。

(1)日本語学習アドバイジング

「わせだ日本語サポート」の中核をなす支援活動である。留学生が自律的に学習できる ように,スタッフが留学生と一緒に日本語学習の方法や計画を考える。留学生の中には,

長期間学習しているが効果が実感できない,どのような教科書を使ってどのように学習し たらよいかわからない,履修科目が多く授業課題がこなせないといった学習方法や学習計 画に関する悩みを訴える者がいる。そのような問題を解決するため,スタッフが学習全体 を俯瞰的に捉え,留学生それぞれにふさわしい学習方法を提案したり,学習計画を一緒に 検討したりしている。

(2)日本語相談

相談の中で最も多いのが日本語の文法や語彙,表現,レポートの書き方や発表の仕方 等,日本語に関する質問や相談である。宿題のレポートを自力で書いたものの読み手に伝 わる文章になっているか不安である,テキストに出ていた類義語の使い方が辞書の説明だ けではわからない,プレゼンテーションの練習をしているがイントネーションがわからな いといった日々の宿題や自習の過程で生じた質問に対応している。「わせだ日本語サポー ト」は予約制ではないため,授業直前に課題のチェックをしてもらおうと駆け込んでくる 留学生もいる。そのような緊急の質問や多様な質問に答えるべく,スタッフは自身の専門 分野に関わらず,常に日本語に関する知識を深め,的確なアドバイスを行えるようにして いる。

(3)日本語学習リソースの提供

これは日本語学習に役立つ様々なリソース情報を提供する支援である。アドバイジン グ・セッションの過程で使えるように,専用室には教科書や参考書が置かれており,常設 PCからオンライン上の学習リソースにアクセスできるようになっている。また,22号館 3階の学生読書室に日本語教育関連の教材が揃っているため,専用室に置いていない教材 については,留学生を学生読書室に案内して紹介することもある。さらに,スタッフが定

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共有し,いつでも来訪者に提供できるようにしている。

(4)日本語学習のセミナーやイベントの実施

「わせだ日本語サポート」では,JLPT(Japanese-Language Proficiency Test)受験を支援 する「JLPT支援セミナー」や,留学生の就職を支援する「キャリア・セミナー」,就職 について個別に相談する「キャリア個別相談会」,在学生や修了生から就職や進学の経験 談を聞く「SENPAI TALK」等,関係他機関と連携しつつ,留学生に寄り添ったセミナー やイベントを企画・運営している。2019年にはタンデム学習を企画して15組のペアの支 援を行った。本企画では,言語学習を介した学生同士の交流機会の創出に成功するとと もに,協働でタンデム学習を企画・運営したスタッフにも大きな学びをもたらした5)。ま た,2020年度は一層の開放と充実を図り,それまで行ってきたセミナーやイベントに加 え,「ランチタイム・セッション」と「夜祭」を実施した。「ランチタイム・セッション」

はスタッフが得意分野をテーマにして昼休みに行うグループ・セッションであり,「夜祭」

は専門家に依頼して授業後に開催する特定分野のセミナーである。このようなセミナーや イベントは留学生の日本語学習を動機付け,時には日本語によるキャリア・パスを示す役 割も果たしている。アドバイジング・セッション同様,セミナーやイベントにおいても,

留学生の日本語学習を長期的,かつ多視点から捉えていると言える。

(5)「日本語学習ポートフォリオ」の配付

「わせだ日本語サポート」では,自律的で持続可能な日本語学習を計画・促進すること を目的として,CJL所属のJLPの留学生に「日本語学習ポートフォリオ」を配付している。

これは留学生が自身の日本語学習の目的を可視化させ,学習計画や進捗状況を書き込む冊 子であり,留学生活に関わる学内機関の場所や連絡先等,実用的な情報も記載されている。

(6)関係他機関との連携

相談事項の中には機関内では対応しきれないものもある。たとえば,国際交流イベント について知りたい,就職活動について詳しく教えてほしい,研究論文の書き方が知りたい といったものである。また,悩み事があり眠れないといった健康上の訴えもある。このよ うな質問や相談には,異文化交流センター(Intercultural Communication Center, ICC),キャ リアセンター,ライティングセンター,保健センター等,学内機関やサービスを紹介して いる。留学生支援のフロントラインに位置する相談窓口の「ハブ」として,関係他機関と 連携を取り,どのような相談に対しても一次相談窓口として応じるようにしている。留学 生活全体にわたる,留学生と留学生支援機関をつなぐ役割を担っていると言える。

4.留学生の利用実態

2018年度秋学期に,広範な留学生により柔軟に寄り添う支援を目指して,アドバイジ ング・セッションの質と体制を転換した。開室以来,自律性を重視して「教えない」6)日 本語学習アドバイジングを実施していたが,留学生の多様化と増加に伴い,誰でも利用で きる開かれた教室外学習の場として期待が高まっていた。そこで,自律的な学習者に至る

「足場かけ」として来訪者の学習段階を見極めながら,教授も取り入れた日本語自体の支

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寅丸真澄・吉田好美/「わせだ日本語サポート」の挑戦

援も重視するようになったのである。その結果,来訪者数が飛躍的に増加した。

2018年度は,CJL所属学生のほか,7学部14研究科295名の留学生が利用した。所属 別利用者割合は,CJL所属の日本語教育プログラム(JLP)の留学生が52%と最も多く,

次いで大学院生27%,学部生21%の順になっている。来訪者の相談内容としては「書く」

(17.4%),「学習方法」(12.6%),「文法」(11.4%),「学習計画」「話す」(9.3%)等の四技 能や学習管理に関する相談件数が多かった。

翌2019年度には,来訪者数が倍増した。CJL所属学生以外では7学部12研究科から留 学生が訪れ,来訪者総数は614名となった。1日に10名前後訪れる日が続くこともあり,

2名,もしくは3名のスタッフでは対応しきれないため,ウェイティングボードを準備し たこともある。所属別利用者割合は,JLPの留学生が75%と最も多く,次いで大学院生 16%,学部生9%の順になっている。利用者の相談内容としては「文法」(22.3%),「書く」

(19.0%),「話す」(7.8%),「宿題」(7.8%)等が上位を占めている。CJL科目の履修者の 多くは漢字圏の留学生であり,読解や聴解には困らないものの,産出に困難を抱える留学 生が多いと考えられる。なお,このような授業に関わる相談のほか,携帯電話の契約書か ら研究計画書やエントリー・シートの日本語相談に至るまで,実際の相談事項は多岐にわ たっている。

5.2020 年度の支援活動と 2021 年度の挑戦

2020年度は,来訪者が急増した2019年度から一変し,「わせだ日本語サポート」にとっ ても激動の年であった。COVID-19の感染拡大により学内全体が授業形態を模索するなか,

支援活動を休止するか否か,また,活動を継続するのであればどのようにすべきか,深刻 な選択を迫られることになったからである。しかし,終わってみると,オンラインであり ながら,スタッフの努力で開催し続けたセミナーやイベントの参加者数は春学期241名,

秋学期173名で計414名,来訪者数は春学期74名,秋学期は104名で計178名となった。

これは先の見えない状況でも手探りで歩を進めた結果である。CJLの授業開始日が5月 の連休明けに決まると,それまで待機してもらっていたスタッフに緊急招集をかけ,話し 合いを重ねた。筆者らは「わせだ日本語サポート」の運営や作業について,常に関係者全 員で議論するようにしており,スタッフの自律的な判断を尊重している。この時も,どの ような形態にせよ,現場を担うスタッフの意向に従おうと考えていた。筆者らの懸念を後 目に,スタッフ全員が開室の意向を示したため,オンライン・セッションの導入について 詳細な検討を行い,授業開始1週間後に「オンライン・わせだ日本語サポート」をZoom で開室した。

国内外に散った留学生と,運用が始まったばかりのLMS(Waseda Moodle)やBlackboard Collaborate,ZoomといったWeb会議システムに慣れないティーチングスタッフがオンラ イン授業で四苦八苦するなか,CJLのホームページや学内情報システムで紹介されている 日本語自律学習支援機関の案内に気づく留学生は少なかった。また,セッションの様子を 現実に見てから来室することができない留学生にとって,Zoomでの来室はハードルが高 いようで,開室当初は来訪者ゼロという日が続いた。

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例年通り実施した「JLPT支援セミナー」等のイベントの効果があり,6月に入るとよう やく来訪者が訪れるようになった。数は少なかったが,1週間に何度も来訪する「リピー ター」の割合が高くなった。オンライン授業によってクラスメイトとの関係性が希薄に なった留学生の中には,スタッフと話すことで癒されているような者もいた。このような 利用の仕方は,機関の目的とはややずれるものの,混迷した環境下で不安に苛まれている 留学生にとっては必要な支援であり,かつ日本語学習の場にもなっていたため,スタッフ 一同,留学生が安心して相談したり話したりできる環境づくりを心掛けるようにした。

このようなスタッフの姿勢は,セミナーやイベントにも反映されている。それまでは JLPT対策をはじめ学習に特化した催しが多かったが,2020年度に関しては,日本社会,

文化,芸術,芸能等多岐にわたるテーマで「ランチタイム・セッション」や「夜祭」を行 い,留学生の趣味や興味を通した広い意味での日本語学習を支援するようになった。ま た,スタッフとともに留学生同志が日本語で自由に雑談や情報交換を行える場も設けた。

日本語支援の射程の拡大には3つの意味があると考える。1点目は,留学生の日本語学 習の幅を広げ,多視点から日本語学習の可能性を認識してもらうためである。ここには

「わせだ日本語サポート」が留学生に多様な学びを提供することを通して,より開かれた 場になりうるという意味もある。また,2点目は,オンライン学習環境下で留学生の日本 語学習のモチベーションを維持したり高めたりするためである。さらに3点目は,日本語 教育を専門としていないスタッフにも留学生支援に対する自信を持ってもらうためであ る。スタッフの専門分野の多様性は好ましいが,日本語教育を専攻していないスタッフ にはそれが負い目になりうる。多様なテーマで行った「ランチタイム・セッション」は,

様々な観点から留学生の日本語自律学習支援ができることを認識する良い機会になったと 言える。

秋学期は春学期に生じた問題点を改善したことでアドバイジング・セッションもより効 率的にできるようになり,オンラインによるセミナーやイベントも定着した。留学生の減 少に伴い来訪者数は伸び悩んだが,2020年度を通して「オンライン・わせだ日本語サポー ト」を細々ながら開設した意味は大きい。1点目は,オンラインでのセッションを実現で きたという点である。今後,学習環境が平常化すれば,対面のセッションに戻るだろう が,オンラインというチャンネルが増えたことによって,国内外の遠隔地にいる留学生に もアクセスすることができるようになった。早稲田大学に在籍するより広範な留学生のサ ポートが可能になったと言える。また,2点目は,不安定な学習環境下で日本語学習を続 ける留学生に少しでも寄り添えたということである。「わせだ日本語サポート」を頻繁に 利用していた留学生2名の声をここに挙げる。

「今学期,「わせだ日本語サポート」を通じて効果的な日本語の学習ができました。2020 年に日本語を学び始めましたが,ずっと外国に住んでいたので,日本語の勉強をうまく続 けられるかどうか少し心配でした。でも,秋学期に「わせだ日本語サポート」をもっと積 極的に活用して,多くの助けを受けることができました。この機会を通じて,大学の授業 で習ったことだけでなく,自分が読みたい文を中心に発音練習をしたり,漢字の読み方を

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寅丸真澄・吉田好美/「わせだ日本語サポート」の挑戦

教えてもらったり,様々なアプローチで日本語が練習できました。また,時間がある日に はスタッフのみなさんと自由に話せたので,日本語で生活できる環境を作ることもできま した。ですから,「わせだ日本語サポート」のおかげで,非対面の時代にも日本語を楽し く有益に勉強できたと思います。わせだ日本語サポートは,「日本語学習初心者にも有益 なプログラム」です。」(「わせだ日本語サポート」リーフレットより転載)

「初めて「わせだ日本語サポート」に来た時,私はまだ日本語をうまく喋れませんでし た。今学期はコロナの影響で日本に行けませんので,授業以外で日本語も練習できるよう に,毎週「わせサポ」に通い始めました。「わせだ日本語サポート」の皆さんはとても優 しくて,どのようなリクエストがあってもうまく対応してくれます。日本語学習について の質問はもちろん,発表や作文などの文法チェックも対応してくれます。日本語会話の練 習もできます。スタッフさんだけではなく,ほかの「わせだ日本語サポート」に通ってい る留学生たちもいますので,キャンパスに行かなくても新しい友だちができ,いろいろな 話ができます。日本にいない私にとって,「わせだ日本語サポート」は不可欠な橋のよう に,私と日本を繋げてくれます。」(「わせだ日本語サポート」リーフレットより転載)

2人は海外でCJLの授業を受けていた学生である。これらのメッセージは,2020年度 最後のスタッフ・ミーティングの場で紹介されたが,「わせだ日本語サポート」が「非対 面の時代にも日本語を楽しく有益に勉強できた」経験を留学生に提供できたこと,そし て留学生から「「わせだ日本語サポート」は不可欠な橋のように,私と日本を繋げてくれ ます」という力強いことばをもらえたことは,激動の年を潜り抜けてきたスタッフたちに とって,深い癒しと大きな励みになったようである。

そして,開室10年目を迎える2021年度,学内の全留学生と各箇所に向けてより開か れた日本語自律学習支援機関となることを目指して,「わせだ日本語サポート」は次のス テージを踏もうとしている。

これからの挑戦は3つある。1つ目は,最も重要なこととして,留学生に寄り添う日本 語自律学習支援を行うことである。日本語に関する知識や支援スキルの向上のみならず,

留学生が安心して相談できるスタッフと環境を提供できるようにすることが重要である。

2つ目は,留学生支援のフロントラインに位置する相談窓口の「ハブ」として,関係他機 関と連携を取り,留学生のどのような相談に対しても応じられる一次相談窓口になること である。そして3つ目は,先に挙げた2つを実行することによって,支援を求めるどのよ うな留学生も迎え入れられるように,全学の留学生と他箇所に対して開かれた機関になる ことである。「わせだ日本語サポート」は,日本語の自律学習支援のみならず,留学生の 学習やキャリアに必須の自律性を育成する場でもある。本学およびCJLの人材育成の一 端を担うべく,全学の留学生を支援していきたいと考える。

2020年度の不測の事態のように,これからも何が起こるかわからない。しかし,「わせ だ日本語サポート」の担当者として筆者らは,早稲田大学で日本語を学ぶ留学生たちに教 室外の学びの場から,学びの楽しさと温かい交流の思い出に彩られた有意義な一時を提供 したいと願っている。

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  1)「外国人留学生」とは「調査基準日において早稲田大学に在学している学生(「休学中」

「(海外に)留学中」の学生は含まない)で,在留資格「留学」を持ち,且つ調査基準日に おいてその在留資格が有効であることが留学センターによって確認されている学生」と定 義されている(早稲田大学留学センター「統計データ」)。より広い概念である「外国人学 生」とは異なる。以下,本稿では「留学生」と示す。

  2)「わせだ日本語サポート」の歴史と経緯は,黒田(2012)や古屋・黒田(2018)等に詳し い。2018年以降の支援活動や課題については,寅丸(2019),寅丸・吉田ほか(2019)等 がある。

  3)早稲田大学のディプロマ・ポリシーでは,「グローバルリーダー」を目指して学生が身に つける能力や素養として,構想・構築力,問題発見・解決力,コミュニケーション力,健 全な批判精神,自律と寛容の精神,国際性を挙げている。一方,CJLのディプロマ・ポリ シーにおいても,「地球市民」としての複言語・複文化性や主体性,協働性,問題発見解 決能力,創造的構想力,批判的精神等の育成が目指されている。

  4)寅丸・吉田(2019)において指摘したように,「わせだ日本語サポート」のスタッフは,

機関での経験から様々なことを学び,自身のキャリア選択や仕事に役立てている。

  5)「わせだ日本語サポート」が企画・運営したタンデム学習については,迎ほか(2020)に おいて報告されている。

  6)奥田(2012)は学習アドバイジングの「Do not三原則」として「教えない・決めない・評 価しない」ことの重要性を指摘している。

参考文献

池上摩希子(2019)「『全学的』な教育機関であるために―『開放性』から創出される接続を求め て」『早稲田日本語教育実践研究』第7号,3-6.

奥田純子(2012)「日本語学習アドバイジング―その深さと大切さ」早稲田大学日本語教育学会 2012春季大会 企画講演会資料.

  http://gsjal.jp/wnkg/dat/2012spring/120324_kouen_PPT.pdf(2021年1月30日)

黒田史彦(2012)「留学生支援システムの構図」『早稲田日本語教育実践研究』刊行記念号,7-23. 舘岡洋子(2018)「開放性をもった全学機関としてのCJLへ―2017年度を振り返って」『早稲田

日本語教育実践研究』第6号,5-10.

寅丸真澄(2019)「留学生に寄り添う日本語自律学習支援」『大学時報』第68巻388号,32-35.

寅丸真澄・吉田好美(2019)「日本語自律学習支援システムにおける学習アドバイザーの学びと 成長―ピア・サポートを行う大学院生の経験とキャリアの観点から」『2019年度日本語教育 学会秋季大会予稿集』,149-153.

寅丸真澄・吉田好美・大木結・守屋亮・國橋さゆる・七海美和子・迎明香・黄進文・込宮麻紀子

(2019)「『わせだ日本語サポート』実践報告―留学生のための自律学習支援の意義と課題を 考える」『言語文化教育研究学会第5回年次大会予稿集』,199-200.

古屋憲章・黒田史彦(2018)「自律的日本語学習を支える学習環境としての留学生支援システム」

『SiSAL Journal』9-2,135-146.

迎明香・守屋亮・國橋さゆる・七海美和子・溝井真人・劉安祺・焦健・曹晨晨・三谷彩華(2020)

「わせだ日本語サポートにおけるタンデム学習の実践報告―タンデム学習と言語学習アドバ イジングの連携可能性」『早稲田日本語教育学会2020年度秋季大会予稿集』,14-17.

早稲田大学日本語教育研究センター「日本語教育プログラムのポリシー」

  https://www.waseda.jp/inst/cjl/applicants/launch/policy/(2021年1月30日)

早稲田大学留学センター「統計データ」

  https://www.waseda.jp/inst/cie/center/data(2021年1月30日)

わせだ日本語サポート リーフレット(印刷中)

(とらまる ますみ,早稲田大学日本語教育研究センター)

(よしだ よしみ,早稲田大学日本語教育研究センター)

参照

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