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大学生の友人間における助けあいのバランスに関する研究−個人の望むバランス関係と自己評価に着目して− [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)大学生の友人間における助け合いのバランスに関する研究 ―個人の望むバランス関係と自己評価に着目して― Key Words:大学生,友人関係,助け合い,自己評価 所属. 人間共生システム専攻. 氏名 森 久美子 Ⅰ.はじめに 周囲の人との助け合いは,問題を解決するような関わり. 助け合いのバランスと自己評価 先行研究において,サポ. から日々の何気ないやり取りまで個人に重要な意味をもた. ート授受が不均衡である場合にネガティブな感情状態が生. らすものと思われる.峰松・山田・冷川(1984)は「生活の場. じることが示されており(福岡,1997;周・深田,1996),互. はすぐれた治療資源である」とし, 生活の中で健やかに暮ら. 恵的な関係が心身の健康に繋がることが示唆されているが,. していけることこそが治療の最終目標と述べている.その. 互恵性と心身の健康との関連を直接検討した研究はほとん. ため心理臨床において,クライエントの日常の対人関係に. ど見受けられない.そこで森(2003)において,助け合いの. より幅広く注目し,それをいかに活用していくかというこ. やり取りの全体的なバランスと自己評価との関連を検討し. とを検討することは意義があると思われる.そこで本論文. た.自己評価は,心身の健康や適応と関連していることが. では日常での対人関係における,何か特別な悩みや問題に. すでに多くの研究で示されている(溝上,1999).遠藤(1999). 対する援助から日々の何気ない関わりまでを含み,かつ個. は,自己評価とは周囲からの反応や関係の適切性の感覚に. 人がサポートの受け手とも送り手ともなって相互に他者と. 基づいているため,他者との相互作用が極めて大きな役割. 行うものとして「助け合いのやり取り」に注目する.. を果たすことを指摘している. また他者に助けられる経験,. Ⅱ.問題と目的. 助ける経験と自己評価との関連が示されており( 清. 助け合いのバランス 他者との相互的な助け合いのやり取. 水,1994;Fisher,Nadler & Whitcher-Alagna,1982),助け. りという点から検討したものとしてサポート授受のバラン. 合いの関係性と自己評価との関連が推測される. その結果,. スに焦点をあてた互恵性の研究がある.福岡(2003)による. 大学生は助けられることより助けることが多い場合に自己. と互恵性とは『励ましや助言,具体的な助力など相手を支. 評価が高いこと,及び友人を助ける機会が少なく,かつ助. えるような行動(サポート)を,身近な他者から「してもらう. けを求めても受け取れない場合に自己評価が低いことが示. こと」と身近な他者に「してあげること」のバランス』 と説明. 唆された.. される.また高木(1998)は,「援助行動の生起過程に関する. 助け合いのバランスとその満足度 森(2003)では,助け合. モデルは,少なくとも援助要請と援助授与の二つの過程を. いのバランスが均衡をなしているタイプが最も自己評価が. 含むもの」であると提言しているが, 従来の研究ではサポー. 高いという結果は得られず,均衡なやり取りがその個人に. ト授受のみが検討されている.そこで筆者はサポート要請. とって必ずしもバランスが良いとされるとは限らないこと. の過程であるサポートを求めること,求められることとい. が示唆された.また,従来の研究では個人に互恵的か否か. う側面にも注目し一個人が行う助け合いのやり取りを「求. を直接評価してもらい,「受け取り」が多いと認知している. め(受け手・サポート要請)」 , 「受け取り(受け手・サポート. と罪悪感が生じ,「提供」が多いと認知していると負担感が. 行動)」 , 「求められ(送り手・サポート要請)」 ,「提供(送り. 生じるとされている(周・深田,1996).だが,実際には「受け. 手・サポート行動)」の 4 側面に分けて捉え,全体のバラン. 取り」が多くてもそれに満足していれば多いと認知せず, 罪. スを検討する(Table 1).. 悪感を抱かない可能性が推測される.「提供」の場合でも同. Table1. 様であるだろう.つまり,個人がどのような助け合いの関. 対人関係における助け合いのやり取り. 助けられる場合 (援助受け手) 助ける場合 (援助送り手). 係性を築き,それをどう捉え,感じているのかということ. 「求め」(助けを求める). を考慮することが必要と思われる.. 「受け取り」(助けを受け取る). そこで本研究では,個人がどのような助け合いのやり取 りを築き,そのバランスに満足しているかという点につい. 「求められ」(助けを求められる) 「提供」(助けを提供する). ても考慮して自己評価との関連を検討する. また,助け合 1.

(2) いのやりとりの関係性の特徴を詳細に明らかにするため,. 化を行った.調査人数の 3%以上を代表タイプの抽出基準. 助け合いの関係性によって友人間での助け合いを必要とす. としてカッティングした.本研究で代表とされるものは,. る程度,友人関係の重要度,助けを求めたい気持ちと実際. タイプ1(求め L 群+受け取り L 群+求められ L 群+提供. に求めることとのずれ,自身の助け合いのやり取りへの捉. L 群,以下この順に H/L を表記),タイプ 4(LLHH),. え方に違いがあるのかを検討する.. タイプ 8(LHHH),タイプ 9(HLLL),タイプ 13(HH. 大学生の友人関係 青年期にあたる大学生は親から分離・. LL),タイプ 15(HHHL) ,タイプ 16(HHHH)の7タ. 自立し,社会の中での相互関係を通して自らの価値観の模. イプあり,全体で占める割合は 84.9%であった(Table2).. 索,自我の再構成をはかることが課題とされている.その. タイプ 1(LLLL)を「助け合い低群」 ,タイプ 4(LLH. 中で特に親密で相互的な友人関係は精神面の安定や自己理. H)を「援助優位群」 ,タイプ 8(LHHH)を「求め低群」 ,タ. 解を深めるものとして重要性が多くの研究で指摘されてい. イプ9(HLLL)を「求め高群」 ,タイプ 13(HHLL)を「被. る(落合・竹中,2004).また,発達に伴い友人関係の様相も. 援助優位群」 ,タイプ 15(HHHL)を「提供低群」 ,タイプ. 変化してくることが示唆されているため(楠見・狩野,1986),. 16(HHHH)を「助け合い高群」と命名した.. 本研究では大学生の友人関係での助け合いに焦点をあてる.. Table 2 助けあいのタイプごとの分類   受 求   求 け め 提 め 取 ら 供 り れ  男性 タイプ L L L L 123 1 L L L H 15 2 3 L L H L 10 L L H H 29 4 L H L L 8 5 L H L H 7 6 L H H L 0 7 L H H H 12 8 H L L L 10 9 10 H L L H 1 H L H L 5 11 H L H H 5 12 H H L L 11 13 H H L H 4 14 H H H L 10 15 H H H H 86 16 合計 336. 本研究の目的 「求め」,「受け取り」,「求められ」,「提供」 の 4 側面から大学生の友人間の代表的な助け合いのやり取 りのタイプを抽出し,各タイプの特徴を見出す.また,助 け合いのやり取りのタイプ,及びその満足度と自己評価と の関連を検討する.仮説として同じ助け合いのやり取りの タイプでも満足度によって自己評価は異なると推測される. Ⅲ.方法 対象 大学生745 名 (男子336 名,女子388 名,不明21 名) . 調査内容 ①助け合いのやり取りのバランス測定尺度:福 岡(2000)のソーシャル・サポート尺度を基に森(2003)で作 成したものを精錬した 9 項目を用いた. 「求め」 , 「受け取 り」 , 「求められ」 , 「提供」 , 「求めたい気持ち」それぞれに ついてここ半年間でどの程度あったか 5 件法で尋ねた.各 指標の合計得点を「求めたい気持ち」得点, 「求め」得点,. 女性 111 4 10 26 8 8 0 13 14 1 11 5 27 7 19 124 388. 不明 7 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 2 0 0 1 10 21. 合計 (%) 241 (32.3) 19 (2.6) 20 (2.7) 55 (7.4) 16 (2.1) 16 (2.1) 0 (0) 25 (3.4) 24 (3.2) 2 (0.3) 16 (2.1) 12 (1.6) 38 (5.1) 11 (1.5) 30 (4.0) 220 (29.5) 745 (100.0). 本研究において全てのやり取りを同程度にしているタイ. 「受け取り」得点, 「求められ」得点, 「提供」得点とした.. プ(「助け合い低群(LLLL)」,「助け合い高群(HHHH)」)が全体. ②友人関係の中での助け合いの重要度・日常生活の中での. の約 2/3 を占めていることや,他の代表タイプもサポート. 友人関係の重要度:6 件法.. の受け手と送り手間で不均衡なもの(「援助優位群(LLHH)」. 「求め」 , 「受け取り」 , 「求 ③助け合いのやり取りの捉え方:. など)や,4 側面のどれか 1 側面が他の側面と不均衡(「提供低. められ」 , 「提供」 の 4 側面それぞれに対し現状と比較して,. 群(HHHL)」など)といった比較的バランスの偏りが分かり. 1(今より減らしたい) ,2(今のままでいい) ,3(今より増. やすいものと思われる.これは大学生の助け合いのやり取. やしたい)の 3 件法で回答を求めた.. りは総じて互恵的であるという従来の結果(周・深田,1996). ④助け合いのやり取りへの満足度:満足の程度を 6 件法で. を支持していると言えよう.. 尋ね,その理由を自由記述で回答を求めた.. また,「助け合い低群(LLLL)」と「助け合い高群(HHH. ⑤自己評価測定尺度:森(2003)で作成した尺度. 18 項目,. H)」がほぼ同じ割合であった.近年友人関係の希薄化が指. 6 件法.得点が高いほど自己評価が高くなるよう得点化し,. 摘されており(落合・竹中,2004),「助け合い低群(LLLL)」. その合計得点を自己評価得点とした.. にはこのような友人との表面的交友をする大学生が含まれ. Ⅳ.結果と考察. ていると思われるが,一方で友人と積極的に助け合う関係. 調査対象者の助け合いのやり取りの類型化 「求め」, 「受け. 性を築いている大学生の存在も示され,希薄化は現代青年. 取り」,「求められ」,「提供」それぞれの得点の平均値をカッ. の友人関係の特徴の一側面であることが示唆された.. トオフ得点として高得点群(H 群)と低得点群(L 群)に分け,. 助け合いのやり取りの各タイプの特徴. 各H 群/L群の組み合わせより助け合いのやり取りの類型. 1.友人関係の中での助け合いの重要度 助け合いのやり 2.

(3) 取りの 7 タイプを独立変数,助け合いの重要度を従属変数. いる人が有意に多いことが示された.「求め高群(HLL. とする一元配置の分散分析を行った結果,助け合いのやり. L)」では「求め」を今より減らしたいと思っている人が有意. 取りのタイプによる有意な主効果が見られた. に多いことが示された.. (F(6,624)=12.80,p<.001).下位検定の結果, 「助け合い高群. 7.0. (HHHH)」 ,「提供低群(HHHL)」が「助け合い低群(LL. 6.0. LL)」よりも助け合いの重要度得点が高く(順に p<.001 ,p<.01),「助け合い高群(HHHH)」が「援助優位群(LLH H)」よりも 5%水準で助け合いの重要度得点が高かった.. 5.0. 友人関係 重要度. 4.0. A-B得 点. 2.日常生活の中での友人関係の重要度 助け合いのやり. 3.0. 取りの 7 タイプを独立変数,日常生活での友人関係の重要. 2.0. 度を従属変数とする一元配置の分散分析を行った結果,助. 1.0. け合いのやり取りのタイプによる有意な主効果が見られた. 0.0. (F(6,624)=6.78,p<.001).下位検定の結果,「助け合い高群. 助け合い 重要度. 助 け 合 い 低 群. (HHHH)」が,「助け合い低群(LLLL)」,及び「援助優位 群(LLHH)」よりも日常生活の中での友人関係の重要度 得点が高かった(順に p<.001,p <.01).. 援 助 優 位 群. 求 め 低 群. 求 め 高 群. 被 援 助 優 位 群. 提 供 低 群. 助 け 合 い 高 群. Figure1 助 け 合 い の タ イ プ に お け る 3 得 点. 3.求めたい気持ちと求めることのズレに関する検討 「求. 以上の結果から各助け合いのタイプの特徴を考察する.. めたい気持ち」得点(A)と「求め」得点(B)の差を,求めたい気. 「助け合い低群(LLLL)」は友人関係を重要としていない. 持ちと実際に求めることのずれとして得点化した(以下A. が,友人と助け合いに否定的というよりも消極的な傾向に. -B 得点).なお,A-B得点が高いほど求めたいと思ってい. あるといえる.渡部(1999)は,人と関係を築いていく能力. ても実際には言動で求めることができていないことを示す.. や人に好意をもたれることに自信がない時に他者の直接的. 助け合いのやり取りの 7 タイプを独立変数,A-B 得点を従. な拒絶や批判を回避し防衛している可能性を示唆しており,. 属変数として一元配置の分散分析を行った結果,助け合い. このタイプではこのような心理が働いている可能性が推測. のやり取りのタイプによる有意な主効果が見られた. される.「援助優位群(LLHH)」は求めたい気持ちを出す. (F(6,626)=5.13,p<.001).下位検定の結果,「援助優位群(L. ことは抑えている一方で助けを求められ応じる機会が多く,. LHH)」,「求め低群(LHHH)」 ,及び「助け合い低群(LL. 従来の過小利得群特有の負担感を抱き友人関係へネガティ. LL)」は,「被援助優位群(HHLL)」よりもA-B得点が高. ブなイメージを抱いている傾向にあると思われる.更に自. く,求めたいと思う気持ちほど求めていないことが示され. 分が今以上に助けられることは望んでおらず,友人からの. た(順に p<.01,p<.01,p<.05).また,「求め低群(LHHH)」. サポート要請の多さに不満を抱いていることが推測される.. は「求め高群(HLLL)」,「提供低群(HHHL)」よりも 5%. 「求め低群(LHHH)」も助けを求めたい気持ちを抑えてい. 水準でA-B得点が高いことが示された.「求め」が少ないタ. るが友人からの助けは多くあるタイプである.しかし望ま. イプでは「求めたい気持ち」自体が少ないわけではなく,友. ないサポートの場合もあるが,サポート授受の均衡を保つ. 人への遠慮や自分の気持ちを素直に出すことへの抵抗など. ために多くのサポート要請に応じて助けていることを負担. により実際に求めることを抑えている可能性が示唆された.. に思っている可能性が示唆された.「求め高群(HLLL)」. 4.助け合いのやり取りへの捉え方 助け合いの各側面に. は自分自身で友人に求めることが多いことを意識している. ついて直接確率計算法を行った(両側検定).結果「求め」 ,. と考えられる.「提供低群(HHHL)」は助け合うことを重. 「求められ」 , 「提供」で人数の偏りは有意であった(順にΧ. 要に思っており,自分が友人に求められているほどの助け. 「受 (12)=33.07,p<.001;Χ (12)=38.48,p<.001;Χ (12)=26.40,p<.01).. 2. 2. ができているか不安に感じている傾向にあると捉えられる.. 2. け取り」 では有意な差は見られなかった. 残差分析の結果,. 「助け合い高群(HHHH)」は助け合うことや友人関係を重. 「助け合い低群(LLLL)」では「求め」,「受け取り」,「提. 要に思っており,積極的に助け合いをしているものと思わ. 供」を今より増やしたいと思っている人が有意に少ないこ. れる.「被援助優位群(HHLL)」に関しては上記の結果か. とが示された.「援助優位群(LLHH)」では「求められ」を. ら明確な特徴を挙げるのは困難であると思われた.. 今より減らしたいと思っている人が有意に多かった. 「求め. 助け合いのやり取りのタイプと満足度における自己評価得. 低群(LHHH)」では「提供」を今より減らしたいと感じて. 点の差の検討 助け合いのやり取りへの満足度の平均値を 3.

(4) カットオフ得点として低満足群(50.5%),高満足群(49.5%). の単純主効果も見られた.高満足度群においては,「助け合. に分けた.助けいのやり取りのタイプ(7水準)と満足度(2. い高群(HHHH)」,及び「求め低群(LHHH)」が「助け合い. 水準)を独立変数,自己評価得点を従属変数とする2要因の. 低群(LLLL)」よりも自己評価得点が有意に高く(順に. 分散分析を行った(Figure2).. p<.001,p<.01),低満足度群においては,「助け合い高群(H. 76.0. 自 己 評 価 得 点. HHH)」が,「助け合い低群(LLLL)」,「求め高群(HLL. 満足度. 74.0. L)」,及び「被援助優位群(HHLL)」よりも自己評価得点が. L群 H群. 72.0. 1%水準で有意に高いことが示された.「求め低群(LHH. 70.0. H)」は自分から助けを求める機会が少ないタイプである.. 68.0. 自分の力だけで解決できないと助けを求めることはないた. 66.0. め無能感は感じないが,自由記述より自発的に助けてくれ. 64.0. る友人に恵まれている,大切に思われていると感じている. 62.0. ことが推測され自己評価が高いものと思われる.低満足群 の結果には「過剰求め・援助低群(HLLL)」,「被援助優位. 60.0. 群(HHLL)」両タイプにおける満足度が低い場合の顕著. 58.0 助 け 合 い 低 群. 援 助 優 位 群. 求 め 低 群. 求 め 高 群. 被 援 助 優 位 群. 提 供 低 群. Figure 2 助 け 合 い の タ イ プ に お け る 自己評価得点. 助 け 合 い 高 群. な自己評価の低さが関連していると思われる.また高満足 群,低満足群共に「助け合い高群(HHHH)」が「助け合い低 群(LLLL)」より自己評価が高いという結果は,従来のサ ポート授受が同程度に高い場合と低い場合を共に互恵的な 関係として心身の健康に繋がるとしていた知見(周・深. その結果,助け合いのやり取りのタイプと満足度の交互. 田,1996)に助け合いを同程度に行っていても必ずしも自己. 作用が見られた(F(6,619)=2.92,p<.01).下位検定を行った. 評価は高いわけではないという新たな示唆を与えるもので. ところ, 「求め高群(HLLL)」と「被援助優位群(HHL. ある.他者と同程度の活発なやり取りがあり,互いに助け. L)」において満足度の単純主効果がみられ,それぞれ高満. 合いができていると意識し満足している場合には自己評価. 足度群の方が低群よりも 1%水準で有意に自己評価得点が. は高く,他者との関わりが少ない場合には良好な対人関係. 高いことが示された.森(2003)では助ける機会が少なく, か. を築くことの難しさを感じ,そのことへ多かれ少なかれ不. つ求めても助けてもらえないことが多い場合に自己評価が. 満を抱き,むしろ低い自己評価を示すことが示唆された.. 低いことが示された.しかし,本研究の結果は受け手の立. Ⅴ.まとめと今後の展望. 場の比重が大きくてもその関係性に満足していれば自己評. 本研究によって,同じような助け合いの関係性でも,個. 価は必ずしも低いわけではなく,自身の助け合いのやり取. 人が自分の助け合いのバランスをどう捉え,満足している. りへの満足度が低い場合においてのみ自己評価が低いこと. かどうかにより自己評価が異なることが示され,助け合い. が示された.同じような助け合いのやり取りの関係性を築. のバランスと個人の自己評価や心理との関連がより詳細に. いていても満足度によって自己評価は異なるという仮説は. 明らかになった.この結果は相互的なやり取りを踏まえた. 一部支持されたといえよう.「求め高群(HLLL)」,「被援. 研究の発展に寄与するものと思われる.. 助優位群(HHLL)」では自分が助けを求めることにより. 専門的な援助を求める人にとってもその人が普段生活し. 無能感や劣等感を感じること(Fisher et al.,1982)と,サ. ている環境が円滑であることが重要である. そのため,日常. ポートを提供することによる有能感や自己評価の高まりを. 生活で周囲の人とどのような助け合いの関係性を築いてい. 得る機会(高木,1998)が少ないことが指摘されているが,満. るのかに注目し,どう介入し補うかが臨床家として求めら. 足度が高い時には当てはまらないことが示唆された.更に. れている.また, 個人は友人だけでなく様々な関わりを持っ. 自身の関係性に満足していない場合において,自由記述よ. ているため,全体的な関係性の中で事例的に検討していく. り「求め高群(HLLL)」では友人から大切にされていない. ことも必要であるだろう.更に自助グループやピアカウン. 感じ,「被援助優位群(HHLL)」では多く助けられている. セリングといった地域に即した非専門家による支援が注目. ことよりも友人に頼りにされていない感じを受けているこ. されている.臨床家としてそこに介入する際に,メンバー. とが自己評価の低さと関連することが示唆された.. それぞれの助け合いのやり取りのバランスを検討すること は意義があると思われ,今後更なる検討が望まれるだろう.. また自己評価得点に関して助け合いのやり取りのタイプ 4.

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