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障害者更生相談所心理担当職員による知的障害者入所施設への支援について [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)障害者更生相談所心理担当職員による知的障害者入所施設への支援について キーワード:施設支援, 更生相談所, 知的障害者入所施設, 施設職員が感じる困難さ, バーンアウト傾向. 人間共生システム専攻 三塩 【Ⅰ.問題と目的】. 新人. 障害者の更生の援助と必要な保護に関する相談を受けるこ. ノーマライゼーション理念の浸透に伴い、障害者福祉は. とを目的に、各都道府県・政令指定都市に設置されている。. 施設化から脱施設化の方向へと流れていると言える。2003. 近年療育手帳に関する判定希望者が増加しており、その業. 年4月から始まった「新障害者基本計画」には「施設等か. 務のみに特化されつつあるが、更生相談所の本来の設置目. ら地域生活への移行の推進」を図るように明記されており、. 的を考えると、療育手帳に関わらず、様々な相談を受けら. また同年開始された支援費制度では、施設入所は措置制度. れる体制を確立していく必要性があることを筆者を含めた. から利用者と施設との契約へと移り、利用者が選択・決定. 職員一同が感じている。特に新法が施行され、障害者福祉. の主体となる福祉制度を展開している。また 2006 年施行さ. が大きく変動する今、更生相談所のあり方を改めて検討す. れた「障害者自立支援法(以下、新法) 」ではその方向性が. る時期にきていると筆者は考える。. 明確に示されており、知的障害者入所施設への利用対象者. 社会の障害福祉情勢が脱施設化、地域での生活・自立へ. も、障害者の心身の状態で分ける「障害程度区分」で4以. と向かっているため、地域支援に関する調査や研究は多い. 上(50 歳以上は3以上)と限定された(新制度では、入所. が(例えば峰島, 2004、中村, 2002 など) 、地域支援の一翼を. 施設利用者の約 65%が施設入所対象外となる可能性がある. 担うべきはずの知的障害者入所施設への支援についての研. (日本知的障害者福祉協会, 2006) ) 。. 究はそれほど蓄積されておらず、また関係機関による施設. このように脱施設化に向けて法的には整備してきている. 支援となるとほとんど見当たらない。施設が本来の機能を. が、現状としては地域生活に必要な支援体制は充分とは言. 発揮し、利用者が将来的に地域で生活できるようにより良. えず(武市, 2005) 、判断や決定に援助が必要な知的障害者. く支援が出来るためにも、元来施設との関係が深い更生相. にとって入所施設は未だ障害者福祉には欠かせない役割を. 談所が必要に応じて施設を支援していけるように、そのあ. 担っている。また知的障害がある方の中にも、激しい行動. り方について検討していくことは意義があることと考える。. 障害を伴う方や幼少期に虐待環境で育ったために情緒面の. そこで今回、施設の現状と更生相談所に対する支援のニ. 不安定さが顕著な方など様々な利用者がおり、その援助の. ーズを把握していくことを第 1 の目的とし、次に施設利用. あり方も複雑化している。このように、新法によって運営. 者や施設職員に対して直接支援を行った事例をもとに、こ. 面では今まで以上に経営的な努力が求められる一方で、よ. れからの更生相談所による施設支援について、研究 1 の結. り高度で専門的なサービスが求められるため、施設職員に. 果を踏まえながら考察していくことを第 2 の目的とする。. は加重の負荷が掛かってしまい、燃え尽きてしまう場合も. 【Ⅱ.研究1】. 多い。長谷部・中村(2005)によると、知的障害施設職員. (事前に、施設職員が感じる困難さと更生相談所に求める. のバーンアウト傾向は看護師など他のヒューマンサービス. 支援の有無について半構造化面接で予備調査をおこない、. 従事者同様高い。またストレスフルな職場環境では施設職. これらを詳細に調査していく必要性について確認した). 員の精神的な健康を害するだけでなく、施設内で利用者に. 1.目的. 対する不適切な関わりが増加する可能性があり(長谷部・. 入所施設の現状と更生相談所に対する支援のニーズとの. 中村, 2006、李, 2002) 、職員に負担が掛かりすぎている施設. 関連性について把握していく。. は大きな危険をはらんでいると言える。特に利用者の高齢. 2.方法. 化、重度化などで援助の困難さが増している入所更生施設. 〈調査対象〉無作為に選ばれた 10 カ所の知的障害者入所施. の職員においては、通所施設に比べて利用者に不適切な関. 設で、利用者に対して直接援助を行っている施設職員 189. わりをしている可能性が高く(長谷部・中村, 2006) 、職場. 名(男性 92 名、女性 97 名) 。. 環境の改善に向けて何らかの支援の必要性を感じる。. 〈調査内容〉. ところで、知的障害者援護施設の関係機関で、筆者が心. 1)知的障害者施設職員が感じる困難さ尺度(以下、困. 理判定員として勤める(知的)障害者更生相談所は、知的. 難さ尺度) :予備調査で得られた結果と森本( 2007) の「支援.

(2) 員のための職場ストレッサー尺度」から 40項目の質問項目. 数 6∼9 年の者は、主任クラスで上司の意見にも耳を貸しな. を作成し、臨床心理学を学ぶ大学院生 2 名とその妥当性に. がら若い世代を指導していく立場にあることが多く、その. ついて検討した。 体験頻度については5件法回答を求めた。. ために障害者福祉に対する一定の知識や自身の考えも求め. 2)バーンアウト尺度:久保・田尾( 1994) が看護師向け. られる。また一通りの仕事を覚え、今まで以上に責任ある. に作成した 17 項目からなる尺度を用いた。なお、項目にあ. 仕事を任されてくる時期でもあり、職務内容に困難さを感. る「患者」という言葉は、 「利用者」と改変して使用した。. じやすいのも頷ける。福祉施設において職員の離職や定着. 3)更生相談所がおこなう支援:予備調査で得られた結. 率の低さなどの問題が指摘されているが(藤野, 2001) 、経. 果と、筆者が普段更生相談所で業務をおこなっている中で. 験年数6∼9年の職員を中心に支援計画を立てていくことが. 実施が可能と考えられる施設支援について、14 項目の質問. これらの問題の減少へとつながっていくかもしれない。. 項目を作成。以下困難さ尺度と同様の手続きを行った。 その他フェイスシートにて、 「性別」 「年齢」 「経験年数」 などの個人の属性についても回答を求めた。 〈調査時期〉2007 年 11 月下旬から 12 月中旬 〈調査手続き〉施設長等管理職員に対して直接調査の主旨 について説明し、協力を得られた施設にて調査用紙を配布。 また職員のプライバシーに配慮して、回収の際は1枚ずつ 添付した封筒に調査用紙を入れ、厳封するように促した。 3.結果と考察 1)施設職員が感じる困難さと職員の属性との関連 分析に先立ち、困難さ尺度 40 項目について、重み付けの ない最小2乗法、プロマックス回転による因子分析を行い、 因子負荷量. 35 以下の項目を削除した結果、3 因子 27 項目 を抽出した( Tabl e1) Table1 知的障害者施設職員が感じる困難さ尺度の一部抜粋 因子1 因子2 因子3 共通性. Table2 調査対象者の属性と知的障害者施設職員が感じる困難さ尺度の分散分析結果 知的障害者施設職員が感じる困難さ尺度 職員関係による困難さ 情報不足による困難さ 人数 職務内容による困難さ 平均 SD F 平均 SD F 平均 SD F 性別 男性 92 女性 97 年齢 20歳代 77 30歳代 42 40歳代 35 50歳以上 35 婚姻 未婚 104 既婚 85 学歴 高校 40 専門学校 35 短期大学 47 大学以上 67 福祉年数 2年未満 18 2∼5年 50 6∼9年 33 10∼19年 50 20年以上 38. 第1因子:職務内容による困難さ. 2.95 2.99. .53 .27 .56. 3.06 2.72. .51 16.5* * .64. 2.95 3.16. .45 7.48* * .57. 3.05 2.91 2.98 2.86. .60 1.17 .64 .43 .38. 2.67 2.98 3.20 2.92. .66 7.44* * .51 .51 .52. 3.22 3.03 2.89 2.89. .53 5.40* * .62 .35 .44. 3.01 2.92. .60 1.36 .47. 2.75 3.05. .65 12.00* * .51. 3.13 2.97. .57 4.55* .45. 2.65 3.03 3.03 3.08. .38 6.16* * .54 .64 .51. 2.67 2.98 3.05 2.85. .71 3.25* .51 .58 .57. 3.01 3.05 3.27 2.94. .55 3.82* .42 .53 .53. 2.94 2.97 3.24 2.88 2.86. .53 2.87* .66 .57 .50 .33. 2.00 2.86 3.08 3.06 2.94. .67 15.05* * .52 .49 .54 .49. 3.08 3.20 3.27 2.97 2.79. .31 5.62* * .58 .57 .49 .41. 多重比較はTukey法を用いた。多重比較の結果、有意差(p<.05)があった部分は括弧をつけた。. (4)職員の数が少なく、一人への負担が大きい. 0.70. (42)肉体的に厳しい作業が多く、体力がもたない. 0.68. (13)利用者から暴行を受けそうになる. 0.64. 第2因子:職員関係による困難さ (8)他の職員が能率的に仕事をしない. -0.05. (44)利用者に対する理解が出来ていない職員がいる. 0.26. 0.09. 0.04. 0.24. -0.05. -0.06. 0.42. 0.81. -0.12. 0.34. をはかるため、ピアソンの積率相関係数にて検討した結果、. -0.07. 0.75. 0.04. 0.50. 相関係数は. 65( p<01) と、比較的強い相関がみられた. -0.12. 0.20. 0.70. 0.33. -0.17. -0.07. 0.65. 0.53. 0.36. 0.39 0.16. 第3因子:情報不足による困難さ (29)地域移行を考えていかなければならないが、何からしていけ ばいいのか分からないことがある (47)施設外にどのようなサービスや資源があるのか分からない 因子相関行列. * p<.05,* * p<.01.. -0.21. 0.01. 2)施設職員が感じる困難さとバーンアウト傾向の関連 施設職員が感じる困難さとバーンアウト傾向との関連性. ( Tabl e3) 。 Table3 施設職員が感じる困難さとバーンアウト傾向との単回帰分析の結果 人数. R 189. R2乗 0.65. 調整済みR2乗. 0.42. 推定値の標準誤差. 0.42. 続けて職員の各属性と施設職員が感じている困難さとの. 続いて従属変数をバーンアウト傾向とし、説明変数を施. 関係について比較検討をおこなうため、困難さ尺度を使用. 設職員が感じる困難さとして、単回帰分析をおこなったと. して一元配置の分散分析をおこなった ( Tabl e2) 。. ころ、施設職員が感じる困難さがバーンアウト傾向に大き. 得られた結果のうち、山岸( 2001) がバーンアウトに陥り. 0.88. く影響を及ぼしていることがわかった。. やすいと指摘している経験年数 6∼9年の職員が、まだ経験. 知的障害者施設は、自己選択・自己決定が行えるように. の浅い職員よりも職員関係に困難さを感じているという結. 個々に合わせたより緻密な援助が必要となるため、他の福. 果に注目したい。この年数の職員たちは、職務内容、情報. 祉施設とは違った難しさも持ち合わせている。また知的障. 量にも困難さを感じており、他の人よりも総じて困難さを. 害者福祉は短期間で大きく展開しており、業務に従事する. 感じやすい立場におかれていることが推測できる。経験年. にあたって困難さを感じやすい状況にあると言える。今回.

(3) の結果を受けて、バーンアウト傾向を低減させていくため. その他人手が足りない中で、更生相談所への定期的な通. に、職員が感じる困難さに合わせた対応、支援を行ってい. 所をおこなっていくことは、施設側、更生相談所側両方の. くことが大切だろう。. 意欲がなければ継続は難しい。また更生相談所から訪問を. 3)更生相談所による施設への支援について. 数度繰り返すが、管理者が変わるとそれすら施設側の受け. 知的障害者施設職員が感じる困難さやバーンアウト傾向. 入れ態勢が整わないという現実に直面した。研究 1 にある. が更生相談所に求める支援のあり方にどのような影響を及. ように、更生相談所の支援も必要と感じている施設職員が. ぼすか検討したが、今回有意な差は認められなかった。た. 多いにもかかわらず、相談がほとんどないのは施設と更生. だ職員が感じる困難さやバーンアウト傾向の高低にかかわ. 相談所といった組織としての関わりが希薄であることも影. らず、更生相談所の支援に期待する施設職員は多く、今後. 響しているのかもしれない。全体的に関わっていくことが. より丁寧に検討していく必要性があると感じた。. 利用者の利益につながると考えるため、藤本(2005)も述べ. 今回の調査で、更生相談所が専門的な支援を行っていけ. ているように、担当職員同士のやりとりに終始せず、日頃. ることを示せば、それを利用していきたいと考えている施. より施設運営をおこなっていく管理職員にも理解を求めて. 設職員がいることが分かった。今後はより円滑に施設支援. いくことが必要であると感じた。. がおこなえるように体制を整えていくことが重要である。. 事例2:知的障害者施設入所調整. 【Ⅲ.研究2】. 1)相談に至った経緯 省略. 目的. 2)経過 省略. 研究1の結果を参考にしながら、筆者が更生相談所にて. 3)考察 家族もおらず、軽犯罪を繰り返す方は施設か. 実際に取り組んだ施設への支援について検討していき、こ. ら敬遠されがちであるため、その方が施設利用に結び付く. れからの支援のあり方を考察していくことを目的とする。. ように更生相談所が中心となって施設、市町村と調整して. 事例1:利用者への直接的支援と施設職員へのコンサルテ. いくことが大切であった。心理判定員は判定で得た本人の. ーション. 状態を施設に説明することで施設職員の不安を逓減させ、. 1)相談に至る経緯 省略. 援助の見通しを持たせることが出来た。また入所後、心理. 2)経過 省略. 判定員が施設へ訪問し、現場の職員から様子をうかがうこ. 3)考察 担当制になると負担がその職員のみに掛かっ. とで、利用者の普段の様子や施設職員の関わりなどを知る. てしまう恐れがあることがうかがえた。他の職員は行動化. ことが出来、施設職員も支援してくれる人がいるという安. の激しい利用者のことを気に掛けているもののそれぞれ担. 心感のもとで、利用者へ援助することが出来たように感じ. 当している利用者がいるため、すすんで対応していくとい. た。長谷部・中村の研究( 2005) では、スーパービジョンの. うことにはなりにくい。また施設内の定例会議はおこなわ. 機能がバーンアウトの軽減に役立つ可能性が示唆されてお. れているが、特別な支援を要する利用者への対応について. り、知的障害者援護施設におけるスーパーバイザーの養成. のみ検討されているわけではないため、日頃関わりの少な. や提供体制の確立が求められると述べているが、今回施設. い職員の理解がなかなか深まらず、逆にその利用者に対し. 職員と利用者の関わり方について話し合う機会をもったこ. て関わりにくくしている様子がある。 第3者が中心となり、. とは、関わり慣れない利用者へ直接援助する施設職員にと. 施設全体でその利用者に対する関わり方を共有していくこ. ってスーパービジョンとしても機能していた可能性がある。. とも施設支援のあり方として可能性があることがわかった。. 事例3:施設での療育手帳出張判定. また施設側は利用者側の利益を考えて対応しているが、. 1)相談に至る経緯 新法が施行されるまでは医療費等. 問題行動が表立つとまずはそれを抑えることが中心となり、. 別制度で対応していたため、施設利用者は療育手帳を使っ. その行動の意味や背景は見逃されやすくなってしまう。ま. て援護制度を利用する機会があまりなく、そのため療育手. た薬物等でそれまで顕著だった問題行動が消失すると、そ. 帳の再判定時期を過ぎている者も多くいたが、新法施行に. こで対応が終わってしまう恐れがある。知的障害者福祉に. 伴い、療育手帳を更新していなければ福祉制度を適切に利. おいて、心理的な治療をおこなうという発想はまだ少ない. 用できないという場面も増えたため、ほとんどの施設が療. が、利用者がその能力を社会に受け入れられる形で表現で. 育手帳の判定を一斉に依頼するという状況に至った。. きるようになるためにも心理士が関わる意味はあると考え. 2)経過 本来療育手帳の判定は、手帳の書き替えなど. る。またそのためにも心理的アプローチとはどのようなも. 公文書発行と同様の業務があるため、原則更生相談所にて. のか充分にイメージが出来ていない職員に対してしっかり. 判定を実施することとなっているが、利用者の高齢化、重. と説明して理解を促しておく必要があった。. 度化に伴い、保護者では本人を更生相談所に連れてくるこ.

(4) とが難しい場合も多く、また施設側も何十人もいる療育手. したように、組織同士のつながりを無視して考えることは. 帳再判定依頼者を数回に分けて更生相談所に連れてくるこ. できない印象を受けた。事例 1 では、担当施設職員の訴え. とはかなりの負担となることが予測できたため、施設側の. に危機感を覚え、何らかの対策を講じようと管理職員が相. 負担軽減を目的に、希望があれば施設にて療育手帳の判定. 談してくれたからこそ更生相談所とつながり、また対担当. を行うこととしている。年間 100 ケース以上施設にて判定. 職員との関わりだけになってしまったために、継続的な支. を行っており、判定後時間の許す限り、利用者が生活する. 援に結び付かなかった。藤本(2005)も施設現場がその有用. 部屋や作業場を見させていただいて、普段施設職員がおこ. 性に気付くことと同時に、施設長などの役職者の理解を得. なっている工夫や困っていることなどを自然な会話の中で. ない限り、支援を継続していくことはままならないと述べ. 尋ねるようにしている。. ているように、担当職員とのやりとりがスムーズに行くた. 3)考察 施設にて判定をおこなうことで、各施設の雰. めにも、組織同士密に連携をはかっていくということもき. 囲気を知り、また職員それぞれとのやりとりの中で関わり. ちんと意識しておかなければならない。. がとりやすくなって、更生相談所で判定をおこなうよりも. 3.具体的な施設支援の提案. もっと具体的な話をすることが出来る感じがある。福祉制. まず情報提供を目的とした研修が挙げられる。これは更. 度をまだよく把握していない職員もおり、判定後制度の説. 生相談所が企画・運営をすることにより、その存在を知っ. 明をする場としても活用できている。 「職務内容による困難. てもらうことにも直結し、関係作りの一助となるだろう。. さ」や「情報不足による困難さ」を少しでも解消する手段. また関係作りを視野に入れるなら、研修も講義形式だけな. として利用できる可能性はあるだろう。. く、事例検討や質疑応答などの対話的な形式も必要であろ. 【Ⅳ.総合考察】 1.知的障害者入所施設への支援の必要性について. う。藤本( 2005) も、施設職員の現任研修では講義的な要素 は控え、対話的な研修形式をとりつつ、その中に必要な解. 今回の研究で、知的障害者入所施設で働く職員が感じて. 説を加える方法が効果的であると述べており、このような. いる困難さについて「職務内容」 「職員関係」 「情報不足」. 工夫も必要となってくる。またこのような研修を施設内研. の 3 つを抽出することが出来た。また職員それぞれの属性. 修として位置付けていくことも意味はあるだろうが、各地. に応じて、感じやすい困難さに違いが生じることが分かっ. 域で研修を希望する施設職員が集まって、それぞれ抱えて. た。これらの困難さを強く感じるほどバーンアウトの傾向. いる事例を検討していく勉強会形式の研修も考えられる。. は高まるため、それを未然に防ぐように、施設職員が感じ る困難さを解消していく支援が必要となってくる。. 次に対話的な研修形式とも関連するところだが、施設支 援の一つとして、更生相談所がスーパービジョンの役割を. 今回支援に期待する施設職員も多くいるということも分. とることも提案したい。先行研究で、スーパービジョンが. かったため、更生相談所も今後施設支援に対して積極的に. 機能していないことにより、業務に様々な影響があること. 取り組んでいく必要があるだろう。. が分かっており ( 例えば、長谷部・中村, 2006、中村, 2001) 、. 2.更生相談所の施設支援に対するあり方について. その重要さがうかがえる。更生相談所の心理担当職員は、. これまで療育手帳希望者が少しでも早く適切な福祉サー. 現場の施設職員のように日常的、継続的に個々の利用者と. ビスを利用できるように、更生相談所の心理担当職員は判. 関わってはいないが、年間 1000 人を超える知的障害者と触. 定依頼者の待機件数を少しでも減らすことに追われ、その. れ合う経験を持っており、そこで得られた知見や、発達や. 他求められる業務を凍結してきた背景がある。たとえ施設. 知能、またそれらに関する障害についての専門的な知識か. 側が相談したい事項を抱えていたとしても、相談に乗ろう. ら、施設職員に対して支援出来ることはあるだろう。. という姿勢を見せないところに、相談しないのは当然のこ. 【Ⅴ.今後の課題】. とである。今後そのことを意識した体制作りを行っていく. 今回研究結果をもとに具体的な施設支援について提案し. 必要がある。また同時に更生相談所の役割について対外的. たが、これらを実際におこない、その有用性を検討してい. に発信していく重要である。日頃更生相談所の業務、役割. くことが必要である。. について質問されることもしばしばある。やはり更生相談. 【Ⅵ.主要引用文献】. 所の役割を知らない中で、支援を求めるということは難し. 藤本次郎 (2005).知的障害者施設支援職員の心理学的手法. いことだろう。そういう意味では事例 3 のように施設にて. 取得のための現任研修 流通科学大学論集(人間・社会・自. 療育手帳の判定をおこなうことは、施設側が感じている敷. 然編),18(2),41-53.. 居を低くし、お互いをよく知る良い機会となるだろう。 また施設支援をおこなっていくためには、事例 1 で記載. 長谷部慶章・中村真里 (2005).知的障害施設職員のバーンア ウト傾向とその関連要因 特殊教育学研究,43(4),267-277..

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