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児童生徒 の思考 を育 む沈黙

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(1)

児童生徒 の思考 を育 む沈黙

吉 越 秀 之

1.

はじめに

本稿 は、新学習指導要領 において明記 された 「 言語活動の充実」 を、 1時間の授業 で具現するときに、沈黙が、児童生徒の思考力 を育む重要な要因であることを述べ る ことを目的 とする

2.

授業において何 が問題 なのか

新 しい学習指導要領が、小学校では来年度か ら実施 される。この学習指導要領では、

総則 「 第

3

章第 1節教育課程編成の一般方針」 に次のように 「 言語活動の充実」の重 要性が記 されている。

学校の教育活動 を進めるに当たっては、各学校 において、児童 に生 きる力 をは ぐ くむことを目指 し、創意工夫 を生か した特色 ある教育活動 を展 開す る中で、基礎 的 ・基本的な知識及び技能 を確実 に習得 させ、 これ らを活用 して課題 を解決するた めに必要な思考力、判断力、表現力その他の能力 をは ぐくむとともに、主体的に学 習に取 り組む態度 を養い、個性 を生かす教育の充実に努めなければならない。その 際、児童の発達の段階を考慮 して、児童の言語活動 を充実するとともに、家庭 との 連携 を図 りなが ら、児童の学習習慣が確立するよう配慮 しなければならない。

ここに示 されているように言語活動は、思考力、判断力、表現力 を育むための活動 である。私たち教師は、授業 を構想する際 に、 ともする とこの 「ために」 とい う視座 を忘れ、活動のみを充実 させ ることに遇進 して しまいがちである

これまで、筆者 は授業 を構想するときに、学習活動 に工夫 を凝 らす ことが多かった。

授業で、子 どもたちが活発 に活動す るにはどうすればよいか、その工夫 に血道 を上げ ていた。国語の授業 において、学習活動のほとん どは言語活動である。筆者が思い描 いていた国語の授業は、子 どもたちの発言や記述で埋め尽 くされた 1時間の授業であ った。隙間な く、それ らの活動が並 び、子 どもたちが、それ らの活動 に没頭 しきった 授業 を 「よい授業」 だととらえていた。それは、/ 例 えば、次の ような授業の場面であ

ー82‑

(2)

(A)T:

では 「 五 月」 と 「 十二月」 を比べ て分 か った ことを話 し合い ま しょう0 はい、

S

さん。

S: はい。かわせみは魚 を食べ て、か にはや まな しを食べ て生 きてい く。坐 き物 は食べ た り食べ られた りしなが ら食物連鎖 の中で生 きてい くもの だ。そ して宮津賢治は、命 は どこまで も続いてい くとい うことや命 の大 切 さを伝 えたかったんだ と思 う。

T :

うん。素晴 らしいこと考 えて くれたね。命 ね。 よ く考 えたね。 はい、

Y

さん。

Y :

はい。かにたちに とって 「 や まな し」 は、 とて も好 きで、 とて もうれ し い ものだか ら、谷川の光の まぶ しさや、 きれいな夢 の ような様子 とつな げて伝 えたか った。「 や まな し」 には温か さや明 るさがある し、か にた ちに命の大切 さを教 えて くれるような ものだか ら題名 になっている。や まな しがあることで谷川のふんい きが ガラツと変わる し、か にたちの大 好 きな ものだか ら題名 になっている。

T :

なるほ ど。や まな しは登場人物 の好 きな ものだか ら題名 になっている0 他 の人は ?はい

M

くん。‑

M :5

月は ぎらぎらしてい る ような感 じで

、12

月は きらきらしてい るよう な感 じ。その きらきらした感 じを出すのはかにの心の明るさだ。かにが 明る くなったのは、や まな しが落ちて きてか らなので、や まな しはなけ ればいけない存在 だった。だか ら、や まな しが題名 になっている と思 う。

や まな しが落 ちて きたことによって、かににいいにおいを与 えて くれた か ら、かにの心 は明る くなった。 h

T :

うん、だか ら 「 や まな し」 なんだね。他 の人はどう ?

(N

S

小学校

Ⅹ年)

( 注 1)

くA

)場面 は 「 宮津賢治はこの作 品に、なぜ 『 や まな し』 とい う題名 をつけたのか」

とい う学習問題 について話 し合 っている場面である。 この場面 は

T

( 筆者)が思い描 いた ように、隙間な く子 どもたちの発言で埋 まっている。 しか も、

S

、Y、

M

の発言 は、 ここまでのそれぞれの読解 の学習 を反映 した内容 の濃い発言 となっているので、

中身のある学習活動の場面 ととらえて しまいがちである。

では、 この場面 は、言語活動 の充実 した学習場面だ と言 えるだろうか。

ここでの学習活動 ( 言語活動) は 「 話合い」 である。 この話合いは、学習問題解決 のために行 われているはずである。では、 この話合いは問題解決のために機能 してい るだろ うか。授業者が本来 目指すべ きなのは、子 どもたちが互いの考 えの中か ら、 自 分の考 えを深めた り広 げた りす るために必要な情報 を聞 き取 り、聞 き取 った情報 を自 分の考 え と比較検討 して新 たな自分 の考 えを作 り出す ことである。 しか し、

Y

M

の 発言 には、そ ういった思考 を行 った形跡 は認め られない。言語活動が思考力 を育むた めの ものであるな らば、 この

(A

)場面での 「 話合い」 は、言語活動 とはなっていな

8 1 ‑

(3)

い とい うことになる。

(A

)場面は、淀みない子 どもたちの発言で敷 き詰め られているが、

S

Y

M

は、

話 し合 っているのではない

。3

人 とも、ノー トに書 きまとめた自分の考 えを発表 して いるのである。それぞれの発言は、誰かに自分の考えを話 して聞かせ ようとするもの ではない。書 き言葉 を読み上げているものである。そのため、

Y

S

の、

M

S

Y

の発言の内容 に影響 を受けた跡 も見つけることはで きない。話 し言葉 による、談話 と は本来そのようなものではない。

次 に挙げるのは日常生活 における談話の例である。

1E

附属 にね一

、〟

ぶたさんがね‑ ?

2F

ん一。

3E 2

週 目、 ぐらい、かな ?

4F

一 。

5E 5

年生が飼 ってた らしいんだけ ど一、来てて一。一回見 に行 ったのね、

あた し学年 ちがったんだけど。そ した らちょうどなんか さん、散歩 じゃ ないや、小屋の掃除かな一、

6F

ん一。

7E

なんかでぶたを出 してて一。

(1.8)

そ した らさ一、ぶたが走 って

さ ヽ

8F

/ / 1 笑いt

9E

女の子 にバーンてぶつかって‑、 (

1.0

)女の子すんごい〟びっ くりしち やって、

10F 〟 1

笑いi

llE

かわいそ うだったよ ?

( 野村 ( 2009) )

先 ほどの

S

Y

M

の発言 と比較すると、一つの発言 ( 発話)の情報量の違いは明 らかである。この ように書 きお こして文字 にすると、断片的 とも思 える情報であるが、

私 たちは、この断片 を関係付 けて、一つの談話 を作 り上げてい くのである。

この関係付 けについて、野村 ( 2004)は次の ように述べている。

あ らゆるテクス トは原因一結果、対照、一般化 一例示、時間的継起の ような関係 に よって構成 されてお り、テクス トにおけるすべての文は、当該のテクス トの少 な くと も 1個の文 ( 文の集合) と、少 な くとも 1個の関係 にある

(p.103)

この 「関係」 は、

(A

)場面 において先 ほ ど述べ た 「 必要 な情報 を聞 き取 り」 とい うことと照応する。授業の場合 は、話す ことも聞 くことも、 ゴール ( 学習問題解決) に向けて意図的に行われるので、 日常の談話 と異 な り拡散 は少ない ( はず)。だか ら、

‑80‑

(4)

「関係」 も前後の発話間で、 より分か りやすい形で現れて くるはずである。だが、先 ほどの授業場面では、それは認め られない。繰 り返 しになるが、この場面は 「 話合い」

として成立 していない ということである。

くA

)場面 において思考があるとすれば、その主は

T (

私)である。

T

S

Y

M

のそれぞれの発言の内容 を聞き取 って解釈 し、評価 している。ここに 「 関係」が生

じているので、子 どもたちは授業者 と話 し合 っているとも言える

。T

は、

(A

)場面 で、子 どもたちに思考 を求めていない。

3.

なぜ思考のない授業が生 まれるのか

では、

T

はこの授業で何 を一番のね らい としていたのだろうか。次 に挙げるのは、

先ほどの

(A

)の続 きの場面である。

くB)T

l:うん、だか ら 「 やまな し」なんだね。他の人はどう?

( 3. 0)

T2

:ええと、 さっき、

S

くんが命のことを言 って くれたね。 この話 には

「 死」 ってい うの も出て きたけど、十二月の死 ってどうい うのがある かな ?

(2.0)

T3

:十二月は生なのか死なのかって考 えるとどう?

(2.0)

T4:

その方が対比で きそ うな気がするけどな。 (

1.0

) この十二月に死 っ てある ?生ってある ?

(2.0)

T5

:みんな教科書の叙述読んでみて くれる。

C:

( ( 教科書 を読 み始める) )

T6:

どう?はい、

R

くん。

R:

はい。五月では、クランボンや魚が食べ られているか ら死だと思いま す。

Tl

で、

T

( 筆者)が求めているのは、子 どもたちの発言である。 しか し、子 ども たちの発言が続かない。そこで、

T

T2‑T5

までの 「 補助発 間 」 を連発する。そ れぞれの発間の内容 を解釈 してみる。

T2:

「 命」 と対照的な 「 死」の描写 を 「 十二月」の場面 において探せ。

T3:

「 十二月」は全般 として、「 生」の場面なのか、「 死」の場面なのかを判断せ よ。

T4:

「 十二月」に 「 死」の描写、「 生」の描写はあるのか、ないのかを探せ。

T5:T4

の内容 を確かめるために、この場面 をもう一度読め。

‑79‑

(5)

この ように、補助発 間それぞれの内容 はすべ て異 なるものである

。T

は、なぜ この ように内容の異 なる発 間 を連発 したのか。 rその原 因は、その直前の子 どもたちの沈黙 にある

。 3.0

秒、

2.0

秒 の子 どもたちの沈黙 の意味 を、

T

は 「 子 どもたちが発 間の意 味 を理解 していない」 ととらえたのである。そ して、

T6

の 「どう」 で、

R

の挙手が あったため、連発が ここで止 まったのである。

先 ほ ど 「 補助発 間それぞれの内容 はすべ て異 なる」 と述べ たが、 この異 な り方 は文 言の違 うだけではな く、求める思考の違いで もあることは言 うまで もない。子 どもた ちにとっては、わずか 3分 は どの時間の中で、 4つの異 なる思考 を求め られた ことに なる。 しか も、それぞれの思考の制限時間は

3.0

秒 ない し

2.0

秒 である。話 し合 いに よ り思考 を求めるはずの場面だが、「 熟考」 とは程遠い ことが分かる。

果 た して

、(A)(B

)それぞれの場面 において、

T

は子 どもたちの思考 を求めてい たか

。T

が求めていたのは、子 どもたちの思考ではな く、発言 なのではないだろうか。

私 は、最初 に述べ たように、子 どもたちの発言で隙間をな くそ うとしていたのである。

「 隙間」 とは沈黙 である。つ ま り、私 は沈黙 を恐 れたのである。

(A

)場面 において、

ノー トに書 いた もの を読 ませ る こ とを もって話 し合 いの材料 に しようと した こ と、

くB

)場面 において、補助発 間 を連発 した こと、 これ らは沈黙 を生 ませ ないための私

の手 だてであった。 ・

この ことが意味す ることは大 きい。 「 授業 とは何 か」 とい う、教 師 と子 どもに とっ て根源的な問題 に関わるか らである。授業 は、活動で埋め尽 くされたシ ョーではない。

子 どもの思考力、判断力、表現力 を付 ける場である。教 師は沈黙 を恐れるあま り、 こ の基本 を忘れが ちである。 なぜ沈黙 を恐れるのか。それは、沈黙が、「 停滞 した授業」

だ と授業参観者 に受 け取 られることが こわいか らである。

しか し、 この沈黙 にこそ、「 金」があるのではないだろ うか。

次 に示すのは、

N

G

小学校

Y

年の総合的な学習の時間の記録である。

572 R

そんなに

大 きいのなめちや い. けませ ん○

573 Y

ばれちやった ?ひっひ○

574 M Y

、 ク ッキー作 り 〟 ( )o

575‑R 5

ね一一ふ ざけるなら私がやる

よ、それo

579

Y すいまへ ‑ん○

( 吉越

(2006))

自分 たちが、様 々な形で半年間関わって きた栗 を使 って、ク ッキーを焼 く授業での、

あるグループの発話記録 の一部である。

S

578

「わー、ふ っ くり 。 」 まで発話が な い

。R、Y、M

の三者 は、それぞれの発話内容 に関係付 けて談話 を作 り上げているが、 ,

‑78‑

(6)

578Sは、572‑576の何 れ とも関係 のない発話であるも では、 Sは何 の脈絡 もな く、

い きな り 578の発話 を したのだろうか。

ここで、

S

は トース ターの中のクッキー生地 をず っと観察 していた。写真の央印は

S

の観察 の視線 を表す。「 ず っ と観察 していた」理 由は、推測 になるが、そ こまでの Sと栗 との関わ りがそ うさせ たのであろ う。その観察 の結果 の表現が578Sであ る。

つ ま り 、578Sが関係 を もっているのは577である。 もっ と正確 に言 えば、それ以前 か ら 577までの沈黙 の部分 と 578Sは関係 をもっている。 トース ターの中で、 自分 の ク ッキー生地 に何が起 きるのか を観察 し続 け、そ こで起 きた変化 を 「わー、ふっ くり」

とい う

S

な らではの表現でアウ トプ ッ トしたのである。

この間、 もちろん

S

の発話 は表面 には浮上 しない。 しか し、 この沈黙 は、

S

の思考 が止 まっていた とい うことではない。寧 ろ、ここで

S

の思考 は活発 に働 き、対象 との間 で対話が行 われていた と考 えるべ きなのではないだろ うか。であるか らこその578S なのである。 この対象 との対話 は 「自己内対話」 とで も言 うべ きものであろう。 この ように、沈黙 は子 どもたちの思考が働 く場である。

4.

思考のある授業 を目指 して I

しか し、すべ ての沈黙が思考の働 く場であるとは限 らない。 日常会話 における沈黙 の種類 について、筆者 は次 の ように分類 を試みた。

【 表 1】沈黙の種類

言葉 に関与す る 意識 される沈黙 コミュニケーシ ョンの参加者の誰かに帰

沈黙 属 し、非優先応答 と判断 される沈黙

意識 されない沈黙 属せず、 コミュニケーシ ョンの参加者 に 意識 されない沈黙 コミュニケーシ ョンの参加者の誰 にも帰 言葉 に関与 しない 行為が求める沈黙 コミュニケーシ ョンの参加者の行為が発 沈黙 ( 参加者) ■ 話 に代 わる役割 を果たす沈黙

( 吉越 ( 2006)) 自己内対話 は上の表の<言葉 に関与 しない沈黙 一行為が求める沈黙 ( 対象) >に該 当す る。先 ほ どの

(A

)場面 と

(B

)場面 に話 を戻す。 この場合、授業 における会話 なので、 この分類 に当てはめに くい ところ もある。 しか し、くB)場面の3. 0秒や2. 0 秒 の沈黙が、 自己内対話 を行 っている沈黙 なのか、課題把握がで きていない現れ とし ての沈黙 なのかの分類、そ して判断は必要 になって くる。

くB

)場面で、補助発 間が連発 されたのは、

T

が、現 れた沈黙 を、課題把撞がで き

‑771

(7)

ていない、 と解釈 したために起 きた ものである。それが真実だ とするのならば、発間 自体が、子 どもの自己内対話 を呼ばない、不適切 なものだった と言えよう

次 に示すのは、学習問題 について、指導事項 ・児童の実態 ・本時 までの児童の思考 の流れの

3

点 を中心 に研究 し設定 した授業の、ペ アによる話合いの一部分である。

( C)学習問題 :大道 じい さんに 「 残雪め」‑ 「 英ゆう」 と呼ばせた ものは、何 だ ろう

A l:

一緒だよね、仲間思い と勇気。

Fl

:うん。で も、三つ当てはまるか も。だって、だか ら、普通 なら逃げる のに向かって きたってことは、それ も態度は態度だ もん。全部当ては まるような木が して きた。

A2:

えー と、だか ら、堂々たる態度は、普通の鳥だったら。

( 3. 5) (a)

F2:

えー と、だか ら、全部当てはまったか ら英雄 になったん じゃないかな。

どれか一つで大造 じいさんは思 ったわけ じゃな くて、全部当てはまっ たか ら 「 英雄」 って思 ったん じゃないかな。

A3

:うん、 うん。「 堂々たる態度」 は、 じたばた騒がなかったってい うの が、普通の鳥 なら最後 まで、 じたばた捕 まえられない ように〟なるか

F3:

〟全部、それが混 じって 「 英雄」 になった

A4:

強 く心 を打たれて。

( 3. 0) (b)

F4:

それいい線いっているか も ( 2. 0) (C)

A 5

:忘れちゃう

。((

「 残雪 は、 もうじたばたさわ ざませんで した」 にサイ ドラインを引 く))

3

つの沈黙

a

b、 C

に注 目する。 ここは、ペア

(2

人)での話合いで、何れの沈 黙 において も、その後の発話は

F

A

の児童である

。 a

の間

、F

は明 らかに思考 して いる

。A2

までの

A

の意見 と自分 自身の考 えを振 り返 って

、F2

で 「どうして 『 英雄 』

になったか」 を結論づけようとしている。

F4

、A4

「 強 く心 を打たれて」 とい うペアの相手の考 えと、これまでの二人で 作 り上げて きた会話 を振 り返 り、評価 している発話である

。 b

の沈黙 には、その評価 を導 き出すための思考があったと考えられる。

A 5

は、

F4

の評価 を受けて、

A

もその評価 に同調 し、「 忘れちゃう ( 忘れない よ うに しない といけない)」 を発 した ものであろう

。 C

の間、 自分の とるべ き行動 ( 級 述 にサイ ドラインを引 く) を判断 していたと考 えられる。

この場面 には く

A)(B

)場面の 「 沈黙 を恐れる教師」がいないのだか ら、

F

A

‑76‑

(8)

が沈黙の後 に発話 しているのは、当た り前 といえば当た り前である。だが、 もしここ に 「 沈黙 を恐れる教師」がいた ら

、a

b、 C

それぞれの沈黙時に、二人の会話 に介 入 して くるのではないだろうか。その結果、沈黙の後 に発話 されている考 えは生 まれ てこないか もしれない。子 どもの思考が寸断 されるか らである。 この寸断は、子 ども たちの思考力 を育てるはずの教師が とるべ き手だてではない。

この

(C

)場面 に見 られる、学習問題解決のための話合いで生 まれた沈黙の時間に、

A

F

は確実 に思考 している。教師に求め られるのは、子 どもたちの思考の様子 を見 極め、必要 により、思考すべ きことを明確化 した り、焦点化 した りしてやることであ

る。

話 を 1時間の授業作 りに移す。学習活動 ( 言語活動)は、子 どもの思考 を喚起す る ものでなければなち ない。そのため、学習問題 は十分 に吟味 して設定 されるべ きであ る。その学習問題 をどの ように解決するか、具体的な追究の見通 しを子 どもと共 に作 るべ きである。その 1時間の授業の骨格が しっか りしていれば、思考のない授業はあ

り得 ない。

活動だけを並べ るのならば、授業の構造 など考 える必要はない。 しか し、学習問題 解決 という目的的な思考 を求める授業では、授業の構造 を意識 して 1時間の授業作 り をしてい く必要がある。 これは 「 学習指導案」 に示 されることになるのだが、 この書 き方 については、全国に統一 された ものはない。例 えば長野県では、 【 図 1】の よう に 1時間の授業の構造 を示 している。いわゆる 「 導入 ・展 開 ・終末」の区切 りを付 け たものである。

【 図

1

】 「 授業が もっとよくなる

3

観点」 より

(

H22

4

長野県教育委員会事務局 教学指導課)

75 ‑

(9)

<ね らいを明確 に>

・「 学習問題」 :問題が集約 され、焦点化 されて共通の問題 となった もの

‑つける力 ( 学習指導要領の指導事項) と関わる。

・「 学習課題」 :学習問題解決のための具体的な追究の見通 し

‑ 「なか」での学習活動 と関わる。

<め りは りをつけて>

・学習活動 としての言語活動 を行 う場面。

・目的をもった言語活動の中で、観点 を明確 にして複数の考 えを比較検討、交流す るような学習 を行 う場面。

<ね らいの達成 を見 とどけて>

・教師 :学習問題 に含 まれている 「 つける力」が身についたか どうかを評価する場 面。次時の構想の出発点 になる。

・児童 :自分 についた力 を自覚する場面。「 活用」 につながる。

「は じめ」 「なか」 「 おわ り」 の

3

つの段階は、時間で区切 られるものではない。機 能で区切 ったものである。

つ ま り、「は じめ」では、 この時間に何 を考 えるのか、 どの ように考 えるのかが明 確 になってその役割 を果たす。 この とき、「なにを考 えるのか」 については、学習指 導要領の指導事項 と照応 しなければならない。 さらに、考 える内容 は、子 どもたちの 必要感や意欲 を喚起す るものでなければならない。 また 「どの ように」 については、

言語活動の具体的な方法が示 されなければな らない。 さらに、「その言語活動 に取 り 組めば、確かに問題が解決で きそうだ」 と子 どもたちが見通 しを持 てるものでなけれ ばならない。 この段階でね らい と方法が明確 になるわけである。

「なか」では、「は じめ」の段階で明確 になったね らいに従 って、方法 に具体的に取 り組む追究の段階である。授業者 も子 どもたち も、ね らいに向けて、例 えば 「 話合い」

とい う学習活動 ( 言語活動)に取 り組む。その際に、授業者は、子 どもたちの思考が より深 まるように、 自分 と他の意見の比較検討、他 と他の意見の比較検討等、め りは りのある追究 を行 うよう心がけねばな らない。その追究 によ り、「なか」の終わ りの 時点では、「は じめ」で設定 したね らいについて解決 を見 なければならない。

「 おわ り」では、 この時間の評価 を行 う。 この評価 には授業者 にとっての評価 と、

子 ども自身にとっての評価の二つの面がある。それは次のようなものである。

授業者 は、 この授業で子 どもたちに付 けるべ き力が付いたのか どうか を判断する必 要がある ( そのために 「 評価規準」 とい うものが必要 になって くる)。 この判断は、

子 どもたちの学力 を判定する材料 にもなるが、それは本時が計画通 りに子 どもたちの 学力 を付 ける授業であった場合 に可能な判断である。「 計画通 りに子 どもたちに学力 が付かなかった」 と判断 した場合 は、次の授業の計画 を変更 しなければならない。

子 どもたち自身にとっての評価 は、 自分 に付いた力 を自覚する意味 を持つ。学習問 題 を解決で きたとい う見返 しは、達成感 をもた らし、国語への関) L 、・意欲 ・態度の向 I

74 ‑

(10)

上 につながる。また、学習課題 について 「こんな方法で解決で きた」とい う見返 しは、

学び方の良さの 自覚 につなが り、以降の授業で活用 されることになるだろう。

この ように、「は じめ 」 「なか 」 「おわ り」 の

3

つの段 階の機能が有効 に働 くとき、

子 どもたちの学習活動 ( 言語活動)は目的的なもの とな り、その結果、学習内容の定 着度 も高い ものになる。

また、学習問題が、学習指導要領 に示 されている指導事項 と関わって、本当に子 ど もの思考 を促す もの となるためには、言 うまで もないことだが、深い教材研究が必要 になって くる。そ して、本当に子 どもが解決 したい という必要感のある、 しか も既習 の学習内容 を活用 して取 り組める学習問題が設定で きたならば、「 補助発間」 などと い うものは不要になるだろう。

5.

まとめ

人は真剣 に思考するときに沈黙す るものである。「 沈思黙考」である。教師は、学習 問題の設定 に責任 をもち、学習問題 を提示 した後、当然訪れるだろう沈黙 に際 し、ま ず、その沈黙の種類 を見極めたい。その沈黙が、子 どもたちが思考 を始めたための沈黙 であるのならば、絶対 にその沈黙 を遮 ってはならない。それは学習活動が、本当の意 味の言語活動 として働 き始めた とい うことである。 しか し、 もし、その沈黙が学習問 題の内容が把握で きずに困って しまっている状態の沈黙 ならば、周到 に用意 された補 助発間 を投入 しなければな らない。その見極めに焦 る必要はない。少 な くとも

2.(

の うちに、それを判断 しなければならない、とい うことはないだろう。本時の主眼 を、

本時において子 どもたちにつける力 をしっか りと据 え、子 どもたちの沈黙の意味 を吟 味 したい。

沈思熟考 し、 自分の考 えが確立 したならば、人はその考 えを他人の考 えと比較検討 した くなるものである。それが 「 話合い」 になる。話 し合わせるための手だてなど研 究 しな くて も、そこに必要感のある話合いの場は生 まれる

学習指導要領が新 しぐなる。基本的な理念は変わ らない ものの、変更はある。 どう い うところが変更 されているのかに目を向けることは大切 なことだが、なぜそのよう に表現 されるようになったのかを探 ることが、 さらに大切 なことである。 まず、授業 者が、言語活動の充実が叫ばれるようになった理由を自分の ものに してお きたい。

【 注】

(1

) 談話の例 において

〟は次行の発話が重複 して開始 される位置、 ?は上昇のイ ン トネーシ ョンを示 し、 ( )内の数字は沈黙の秒数、 (( ))内の記述は非言 語情報 をあ らわす。談話の参加者はアルファベ ッ トで識別 した。重複 して登場 する場合 は数字 を併せて示 した。参加者の うち 「 T 」 は教師である0

‑73‑

(11)

文部科学省

2008

文部科学省

2008

野村 真木夫

2009

野村 鼻木夫

2004

野村真木夫

2009

吉越 秀之

2006

文献】

『 小学校学習指導要領解説総則編』 東洋館 出版社

『中学校学習指導要領解説総則編』 ぎょうせ い

「 文章 ・談話 と表現 」 『日本語表現学 を学ぶ人のために』世界思 想社

「 談話 における話題 の導入 と形成 の方法 」 上越教育大学国語研

』 18

『日本語 のテクス トー関係 ・効果 ・様相』 ひつ じ書房

『 児童 の体験 に基づ く表現活動 の研究 一沈黙 と自己内対話‑』

上越教育大学修士論文

ポ リー ・ザ トラウスキー

1993『日本語 の談話 の構造分析 一勧誘 のス トラテ ジーの

考察 ‑』 くろ しお出版

水谷 信子

1993

「 「 共話」 か ら 「 対話 」へ 」 『日本語学』明治書 院

12‑4:4‑Io Halliday,M.

A

.

K

.andHas

a n,

R.1985Language,ContextandText.DeakinUmiversityPress

(1991

覚書雄訳 『 機能文法 のすすめ』大修館書店 による)

Levinson,S.C.1983.Pragmatics.Cam bridgeUniversityPress.

(1990

安井稔 ・奥 田夏子訳 『 英語語用論』研究 出版社 による)

( 長野県総合教育 セ ンター)

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参照

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