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明 治 前 期 に お け る 土 地 貨 幣 論
拝 司 静 夫
本 稿 は 明 治 前 期 に お け る い わ ゆ る 「 地 券 銀 行 」 の 諸 案 を 、 土 地 貨 幣 論 の 側 面 か ら 整 理 し て み よ う と す る も の で あ (1 ) る 。
こ う し た 地 券 銀 行 の 研 究 に お け る 先 駆 的 ・ 古 典 的 な 業 績 は ' 八 木 沢 善 次 氏 の 諸 論 文 に 帰 せ ら る べ き で あ ろ う 。 同 氏
は す で に 昭 和 一 〇 年 「明 治 初 期 の 不 動 産 金 融 問 題 と ペ ・ マ イ エ ッ ー の 土 地 抵 当 貸 借 所 案 」 ( 「農 業 経 済 研 究 」 第 二 拳
第 三 号 、 昭 和 l 〇 年 ‑ 以 下 「 八 木 沢 第 1 論 文 」 と 略 称 ) に お い て 自 由 銀 行 そ の 他 の 企 画 を 紹 介 さ れ 、 ま た 「 明 治 前 期 の 不
動 産 金 融 運 動 と し て の 大 日 本 勧 農 義 杜 」 ( 「経 済 史 研 究 」 第 l 四 巻 第 l 号 ' 第 五 号 、 昭 和 l 〇 年 ‑ 以 下 「 八 木 沢 第 二 論 文 」 3
「 八 木 沢 第 二 論 文 」 ㈹ と 略 称 ) に お い て 大 日 本 土 地 抵 当 銀 行 倉 庫 会 社 の 設 立 案 に 検 討 を 加 え ら れ た 。 も っ と も こ れ ら の
論 文 は 、 そ の 表 題 の 示 す よ う に 、 不 動 産 抵 当 金 融 機 関 設 立 運 動 の 解 明 に 主 題 が お か れ 、 地 券 銀 行 そ れ 自 体 の 研 究 を 目
的 と す る も の で は な か っ た 。
そ の 後 不 動 産 抵 当 金 融 機 関 は 現 実 に 発 足 展 開 を 遂 げ 、 そ れ に 関 す る 資 料 や 研 究 も 豊 富 に な っ た 。 し か し 発 券 機 関 と
し て の 「 地 券 銀 行 」 の 研 究 は 中 断 さ れ た ま ま の よ う に 思 わ れ る 。 そ れ は 一 つ に は 資 料 の 不 足 に も よ ろ う し 、 ま た こ の
種 の 企 画 が 試 み ら れ た の が わ ず か 一 〇 年 足 ら ず の 期 間 で 、 し か も す べ て 実 を 結 ば ず に 止 ん だ と い う 事 情 に も よ ろ う 。
だ が 戦 後 「 明 治 初 年 不 動 産 銀 行 農 業 銀 行 関 係 資 料 」 ( 「 日 本 勧 業 銀 行 史 資 料 」 第 二 集 ' 日 本 勧 業 銀 行 調 査 部 ' 勧 銀 史 研 究 会 節
昭 和 二 七 年 ‑ 以 下 「勧 銀 史 資 料 」 ⇔ と 略 称 ) や 「 日 本 金 融 史 資 料 」 (明 治 大 正 編 ' 第 四 巻 ' 日 本 銀 行 調 査 局 ' 昭 和 三 三 年 ‑ 以
下 「金 融 史 資 料 」 的 と 略 称 ) に 未 公 開 な い し 閲 覧 困 難 な 資 料 (八 木 沢 氏 所 蔵 資 料 を 含 め て ) が 収 録 さ れ た 。 こ れ ら の ほ か に
な お 未 発 見 の も の も あ ろ う 。 し か し こ こ で は 右 述 の 公 刊 資 料 と 八 木 沢 論 文 に よ り つ つ ' 土 地 貨 幣 論 と し て の 地 券 銀 行
を 検 討 し て み る こ と と す る 。 そ の は あ い 以 下 で 明 ら か な よ う に 、 八 木 沢 氏 の 述 べ ら れ た 自 由 銀 行 お よ び 大 日 本 土 地 抵
当 銀 行 倉 庫 会 社 は や は り も っ と も 主 要 な 企 画 と し て の 地 位 を 占 め る 。
(1 ) 一 般 に 土 地 銀 行 と い う 語 は 二 様 の 意 味 に 用 い ら れ て い る 。 l は 土 地 を 基 礎 と し て 紙 券 を 発 行 す る 銀 行 で あ り ' 二 は 土 地 を 、
抵 当 と し て 貸 付 を 行 う 銀 行 で あ る 。 地 券 銀 行 の 合 意 す る と こ ろ も 同 様 で あ る が 、本 稿 は そ の う ち 第 1 の 類 型 を 対 象 と す る 。
ニ
ま ず こ れ ら の 企 画 を 年 代 順 に 列 挙 す る と つ ぎ の よ う に な る 。
L 明 治 九 年 九 月 、 大 阪 府 平 民 、 岡 伝 平 、 坂 田 八 郎 の 自 由 銀 行 設 立 計 画 ( の ち 自 由 為 換 座 ' 地 券 為 替 座 と 改 称 ) ( 「金 融
史 資 料 」 的 ' 「勧 銀 史 資 料 」 ⇔ ' 「 八 木 沢 第 l 論 文 」 )
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4. 3. 2.
1 0 年 、 福 岡 県 士 族 、 吉 村 嘉 策 ほ か 五 名 の 地 券 銀 行 出 膜 ( 「勧 銀 史 資 料 」 ⇔ ' 「 八 木 沢 第 一 論 文 」 )
l 〇 年 1 1 月 、 京 都 府 士 族 、 川 口 常 吉 ' 川 口 港 の 地 券 銀 行 設 立 建 議 ( 「金 融 史 資 料 」 的 )
一 五 年 、 上 州 前 橋 に お け る 計 画 ( 「 八 木 沢 第 一 論 文 」 )
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5 一 五 年 、 九 州 に お け る 企 画 ( 「 八 木 沢 第 一 論 文 」 )
6 一 五 年 、 横 浜 、 藤 井 清 の 地 券 銀 行 案 ( 「 日 本 勧 業 銀 行 史 」 日 本 勧 業 銀 行 、 昭 和 二 八 年 、 八 四 貢 )
7 一 六 年 二 月 、 栃 木 県 平 民 、 藤 田 一 郎 の 大 日 本 土 地 抵 当 銀 行 倉 庫 会 社 双 立 計 画 ( 「勧 銀 史 資 料 」 ⇔ 、 「 八 木 沢 第 二 ■
論 文 」 旧 )
8 一 六 年 、 新 潟 県 に お け る 北 陸 興 農 地 券 銀 行 案 ( 「 日 本 勧 業 銀 行 史 」 八 四 貢 )
9 一 七 年 四 月 、 滋 賀 県 大 津 、 秋 田 弥 左 衛 門 ほ か に よ る 地 券 銀 行 案 ( 「勧 銀 史 資 料 」 ⇔ )
以 上 に よ れ ば 地 券 銀 行 の 計 画 が あ ら わ れ た の は 明 治 九 ‑ 一 〇 年 と 一 五 ‑ 一 七 年 の 二 時 期 で あ る と い え る 。 か り に
前 者 を 第 一 期 、 後 者 を 第 二 期 と よ ぶ と す れ ば 、 両 者 に は 時 代 的 条 件 に 大 き な 差 異 の あ る こ と が み と め ら れ る 。 第 一 期
は 、 殖 産 興 業 の 旗 印 の も と に 資 本 の 原 始 的 蓄 積 が 進 行 し っ つ 、 国 内 が 貨 幣 経 済 的 体 制 へ の 転 換 過 程 に あ り 、 一 般 に 資
金 の 不 足 、 し た が っ て そ の よ り 豊 富 な 供 給 が 急 務 と さ れ て い た 時 期 で あ っ た 。 第 二 期 は 、 デ フ レ ー シ ョ ン 政 策 に よ る
金 詰 り が 一 般 化 し 、 と く に 農 村 に お い て は 農 産 物 価 格 の 低 落 、 地 価 の 下 落 、 地 租 負 担 の 増 加 、 負 債 の 増 大 に な や ま さ ・
れ た 時 期 で あ っ た 。 し か し 条 件 の 内 容 は 異 な る と し て も 、 貨 幣 の 不 足 な る 認 識 が 生 じ う る の は 同 一 で あ る 。 そ こ に 鞄
券 銀 行 ‑ 土 地 の 貨 幣 化 な る プ ラ ン の 生 ず る 共 通 の 基 盤 が あ っ た と い え よ う 。 し か し こ う し た 一 般 的 基 盤 が 地 券 銀 行
の 具 体 的 な 企 画 'と く に 第 一 期 の 最 初 の も の に 結 び つ く に は ' な お そ の 間 に 媒 介 項 が 必 要 で あ っ た と 思 わ れ る 。 そ れ に
は 政 府 の 貨 幣 政 策 、 す な わ ち 不 換 紙 幣 の 追 加 供 給 に よ っ て 殖 産 興 業 の 目 的 を 追 求 し よ う と し た 政 策 が あ げ ら れ な け れ
ば な ら な い 。 す な わ ち 、 九 年 五 月 に は 内 務 卿 大 久 保 利 通 と 大 蔵 卿 大 隈 重 信 連 署 に よ る 官 立 貸 付 局 の 建 議 が あ っ た 。 そ
れ は 人 民 所 有 の 財 産 を 抵 当 に と っ て 資 本 手 形 ( ‑ 紙 幣 ) 三 、 〇 〇 〇 万 円 を 新 た に 発 行 し よ う と す る も の で 、 そ の 準 備
に は 家 禄 の 変 制 に よ る 毎 年 の 歳 計 剰 余 金 の う ち か ら 一 〇 〇 万 円 を あ て 、 こ れ を 三 〇 カ 年 継 続 積 立 て て 償 還 し よ う と い
、心1,・言
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う も の で あ っ た 。 貸 付 局 建 議 は 「 抑 モ 此 挙 タ ル ヤ 原 卜 独 逸 聯 邦 及 ビ 嘆 大 利 二 模 擬 シ 稗 々 其 方 法 ヲ 折 衷 ス ル 者 ナ ‑ 。 蓋
シ 此 二 国 ハ 大 抵 公 債 証 書 ヲ 用 ヒ 本 邦 ハ 則 チ 政 府 ヨ ‑ 直 二 通 用 手 形 ヲ 発 行 セ ン ト ス 。 其 事 情 相 異 ナ ル 7 ‑ ‑ 鮭 ド モ 其 収 (1 ) 入 ヲ 抵 当 ト シ テ 債 券 ヲ 発 行 ス ル ニ 至 ツ テ ハ 則 チ 一 ナ ‑ 。 困 ツ テ 今 政 府 自 力 ラ 三 千 万 円 ノ 手 形 ヲ 発 行 シ 云
々」と述 べ て
い る 。 政 府 当 路 者 の こ の よ う に 未 熟 な 貨 幣 観 が 当 時 の 民 間 に 影 響 を 与 え な い は ず は な い で あ ろ う 。 こ の 案 は 太 政 官 の
い れ る と こ ろ と な ら な か っ た が 、 実 施 に 移 さ れ た 重 大 な 政 策 と L iJ は 九 年 八 月 に お け る 国 立 銀 行 条 例 の 改 正 が あ る 。
そ れ は 周 知 の よ う に ' 従 来 の 正 貨 免 換 を 廃 し て ' 資 本 金 の 二 割 を 政 府 紙 幣 、 八 割 を 公 債 で 充 当 し 、 し か も 公 債 証 書 と
同 額 の 銀 行 券 を 発 行 す る こ と を み と め る と い う も の で あ っ た 。 す な わ ち 公 債 を 準 備 と す る 紙 券 の 発 行 で あ る 。 そ う な
れ ば 同 じ く 政 府 発 行 証 券 た る 地 券 も ま た 貨 幣 化 し う る は ず だ と い う 観 念 が 生 ず る の は み や す い 道 理 で あ る 。 地 券 銀 行
設 立 に 賛 成 す る 「 大 坂 日 報 」 の 社 説 は か か る 考 え 方 を よ く 示 し て い る 。 そ れ に よ れ ば 「 ‑ ‑ 此 地 券 モ 亦 夕 彼 ノ 公 債 証
書 ノ 如 ク 均 シ ク 吾 人 ガ 信 認 セ ル 政 府 ノ 確 印 ヲ 得 タ ル 証 券 ナ レ バ 之 ヲ 流 通 資 本 ー ナ シ 固 着 財 本 ノ 姿 ヲ 変 成 ス ル 亦 夕 著 シ
キ 利 益 ヲ 生 ズ べ シ ー 信 ズ ル ナ ‑ 。 戎 ハ 云 ハ ン 、 夫 ノ 土 地 ハ 己 二 其 収 穫 上 二 於 テ 当 然 ノ 利 益 ヲ 得 ル モ ノ ナ ル ニ 尚 ホ 其 証
券 ヲ 以 テ 利 ヲ 穫 ソ ー ス ル 二 重 ノ 売 買 ニ シ テ 却 テ 異 日 二 後 志 (愚 の 誤 り か ‑ 筆 者 ) ア ラ ン ト 。 然 レ ド モ 那 ノ 公 債 証 書 ノ 如
キ モ 己 二 一 利 ヲ 得 テ 重 ネ テ 又 夕 利 ヲ 得 ル モ ノ ナ レ バ 地 券 ヲ 以 テ 土 地 ノ 抵 当 ト シ 為 メ ニ 之 ヲ 活 動 ス ル ニ 於 テ 妨 ナ キ モ ノ (2 ) ノ 如 シ 。 」 ( 「大 坂 日 報 」 l 二 ・ 八 ・ 五 、 第 一 〇 四
1号)と し 、 さ ら に ま た 「 地 券 ハ 不 動 産 タ ル 土 地 ノ 証 券 ナ ‑ 。 公 債
証 書 ハ 坂 三 旦 サ ズ 負 債 ノ 証 文 ナ レ ..'l 其 実 力 真 価 ヲ 問 フ ニ 至 ‑ テ ハ 地 券 ハ 寧 口 公 債 証 ノ 如 ク 相 場 ノ 屡 々 浮 沈 ア ル モ ノ
ノ 比 ニ ア ラ ズ ー ス 。 故 二 之 ヲ 以 テ 発 札 資 本 ト ナ ス モ 為 替 財 本 ト ナ ス モ 貸 借 資 産 ト ナ ス モ 助 成 銀 行 ノ 株 券 ト ナ ス モ 其 流 ( 3 ) 適 法 二 於 テ ハ 何 ニ シ テ モ 曾 テ 差 支 ナ キ ヲ 信 ズ ル 」 と い っ て い る ( 「大 坂 日 報 」 1 二 ・ 八 ・ 一 六 、 第 一 〇 五 一 号 ) 0
そ し て こ の よ う な 考 え 方 が ひ と た び 「 地 券 銀 行 」 の 構 想 と し て 具 体 化 す る な ら ば 、 公 債 の 紙 幣 化 と い う よ う な 類 似
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の 直 接 的 契 横 が 失 わ れ た の ち で も 、 資 本 不 足 、 し た が っ て 貨 幣 不 足 と 認 識 さ れ る 条 件 が 発 生 し た と き 、 再 び 同 様 な 計
画 が あ ら わ れ る で あ ろ う こ と は 容 易 に 想 像 で き よ う 。
た だ こ こ に 注 意 す べ き は ' 第 一 期 と 第 二 期 と で は こ の 企 画 を 生 ま し め た 条 件 が 異 な る た め か 、そ の 目 的 に 相 違 が み と
め ら れ る こ と で あ る 。 す な わ ち 、 舞 1 期 に お い て は 、 地 券 を 基 礎 と し て 追 出 し た 紙 券 を 広 く 殖 産 興 業 の 資 本 と し て 使
用 し よ う と し て い る 。 代貝 付 は 原 則 と し て 地 券 抵 当 に よ り 、 し た が っ て 土 地 所 有 者 へ の 貸 付 と な る が ' そ れ に よ っ て 資
金 が 農 業 に の み 投 ぜ ら れ る こ と を 期 待 し て い る の で は な い 。 公 債 所 有 者 (そ れ は 華 士 族 の み に 限 定 さ れ る わ け で は な い )
が 公 債 を 資 本 化 し て 殖 産 興 業 に 参 加 し う る な ら ば 、 地 券 所 有 者 も 同 様 に 行 動 し 利 益 を 追 求 し う る は ず だ と い う 積 極 的
な 意 識 が 諸 企 画 を 支 え て い た よ う に 思 わ れ る 。 一 方 第 二 期 に な る と 、 地 券 銀 行 計 画 は も は や そ の よ う な 一 般 的 積 極 的
目 的 を か か げ る こ と な く 、 デ フ レ ー シ ョ ン 下 の 農 村 の 窮 乏 を 救 済 な い し 緩 和 す る と い う 部 分 的 消 極 的 な 色 彩 を 濃 く す
る の で あ る 。 別 言 す れ ば 、 第 一 期 の 運 動 は 、 土 地 所 有 者 の 利 益 を 代 弁 す る と は い い え て も 、 農 民 層 に 局 限 さ れ る こ と
な く 、 よ り 広 い 社 会 的 地 盤 に 立 っ て い た の に 対 し 、 第 二 期 の そ れ は 、 狭 い 意 味 で の 土 地 所 有 者 、 農 民 の 利 益 に 密 着 し
て い た と い え よ う 。
以 下 両 期 に お け る そ れ ぞ れ の 計 画 を 、 主 と し て 土 地 貨 幣 造 出 論 と い う 角 度 か ら な が め て み る こ と と す る 。
(1)
「明 治 貨 政 考 要 」 事 歴 篇 、 中 篇 、 一 六 二 ‑ 四 貢 ( 「 八 木 沢 第 「 論 文 」 に よ る )
(2)
「勧 銀 史 資 料 」 ⇔ 二 五 六 頁 。
(3)
同 右 、 二 五 八 頁 。
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三
( 1 ) 地 券 銀 行 計 画 の 最 初 と 考 え ら れ る の は 、 九 年 に お け る 自 由 銀 行 案 で あ る 。 こ れ は 東 京 府 寄 留 の 大 阪 府 平 民 岡 伝 平 、
坂 田 八 郎 両 名 に よ っ て 計 画 さ れ た も の で 、 そ の う ち 岡 が 主 導 的 役 割 を 演 じ た も の の よ う で あ る が 、 第 一 期 に お け る も
っ と も 主 要 な 企 画 で あ る ば か り で な く 、 そ の 後 の 地 券 銀 行 案 に 大 き な 影 響 を お よ は し た と い う 意 味 で も 、 重 要 な 意 義
を も つ と 思 わ れ る 。
こ れ に つ い て は 「 八 木 沢 第 一 論 文 」 が 要 点 を 紹 介 し て い る が 、 内 容 に は い る 前 に 、 そ の 設 立 請 願 の 経 過 に つ い て
「 金 融 史 資 料 」 廟 に は 別 の 資 料 が 載 録 さ れ て い る こ と を 指 摘 し て お き た い 。 「 八 木 沢 第 一 論 文 」 に よ れ ば 、 岡 ら は 九
年 九 月 二 九 日 、 金 融 興 産 の 目 的 を も っ て 地 券 抵 当 貸 付 所 を 設 立 せ ん と し て 「 自 由 銀 行 規 則 井 に 茸 程 案 」 を 添 え て 華 族
局 に 建 議 し た 。 し か し こ の 案 は 同 局 の い れ る と こ ろ と な ら ず 、 同 年 一 〇 月 六 日 「折 角 之 申 出 同 意 難 出 来 」 む ね 指 令 が (2 ) あ っ た と い う . こ れ に 対 し て 「 大 隈 文 書 」 ( 「金 融 史 資 料 」 的 六 七 三 ‑ 六 七 七 百 ) に は つ ぎ の よ う な 資 料 が あ る 。 す な わ
ち 九 年 九 月 二 一 日 付 で 、 岡 は 坂 田 八 郎 と 連 名 で 「建 言 書 」 に 「自 由 銀 行 創 立 規 粂 大 略 」 を 添 え て 、 東 京 府 知 事 あ て 設
立 を 請 願 し て い る の で あ る 。 東 京 府 で は 同 月 二 六 日 、 権 知 事 楠 本 正 隆 名 を も っ て 内 務 卿 大 久 保 利 通 あ て 上 申 し 、 内 務
省 で は 翌 二 七 日 こ れ を 大 蔵 省 に 回 付 し た 。 大 蔵 省 で は 紙 幣 寮 が こ れ を う け つ け 、 一 〇 月 一 三 日 、 得 能 紙 幣 頭 の 名 で 省
内 上 司 に 対 し 、 史 官 へ 回 付 す る か ど う か 伺 い を 出 し て い る 。 史 官 へ の 回 付 案 の 文 言 に は 「 一 応 取 調 俣 処 素 ヨ ‑ 不 都 合
之 者 二 有 之 到 底 採 用 可 相 成 義 ニ ハ 有 之 間 敷 」 と い う 意 見 が 付 さ れ て い る 。 そ し て こ の 伺 い に つ け ら れ た 符 筆 に は 「 本
紙 ノ 如 キ ハ 紙 幣 寮 へ 留 メ 置 キ 他 日 参 考 ノ 用 二 供 ス ル 迄 ニ テ 可 然 ‑ ‑ 但 下 方 エ ハ 何 分 ノ 指 令 二 不 及 供 也 」 と さ れ て い
る 。
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こ れ に よ れ ば 、 岡 ら は 華 族 局 へ の 建 議 に 先 立 っ て 東 京 府 経 由 大 蔵 省 へ 計 画 を 提 出 し て い る の で あ っ て 、 こ れ が 正 式
の 手 続 き で あ っ た ろ う 。 「 八 木 沢 第 一 論 文 」 の 葦 族 局 へ の 建 議 は ' そ の 側 面 的 な 援 護 を 期 待 し た か ら で は な か っ た ろ
う か と 思 わ れ る の で あ る 。
な お 政 府 は な ぜ こ れ を 「 不 都 合 之 者 」 と し た の か 。 そ れ に つ い て は 「建 言 書 」 に 貼 付 さ れ た 得 能 の 印 の あ る 符 筆 が
理 由 を 語 っ て い る 。 「 上 文 陳 述 ス ル 処 ノ 件 々 敢 テ 無 謂 義 ニ ハ 無 之 卜 鮭 ‑ モ 之 ヲ 要 ス ル ニ 其 方 法 タ ル 人 民 所 有 ノ 地 券 ヲ
以 テ 之 ヲ 政 府 二 収 メ 而 シ テ 之 ヲ 民 間 二 貸 附 シ 」 二 二 年 間 運 用 す れ ば 「 其 利 益 殆 ン ド 元 金 二 倍 ス 。 故 二 其 元 金 ノ 返 弁 ヲ
要 セ ズ シ テ 自 力 ラ 其 抵 当 ヲ 返 戻 ス ル ノ 目 的 ナ ‑ 。 然 リ ー 鮭 ‑ モ 世 間 究 民 ノ 多 キ 或 ハ 資 本 ヲ 借 リ テ 其 利 ヲ 払 ハ ザ ル モ ノ
ナ キ ヲ 保 セ ズ 。 果 シ テ 然 ラ バ 則 滞 貸 金 頻 々 相 生 ズ ル ノ ミ 。 其 地 券 ハ 終 二 流 物 ‑ ナ ‑ 他 日 之 ヲ 躍 売 セ ソ ー 欲 ス ル モ 其 割
引 ノ 如 キ モ ノ 額 多 ニ シ テ 終 二 其 損 益 相 償 ハ ザ ル ー壷 ラ ン 。 然 ル ト キ ハ 仮 令 七 数 千 万 円 ノ 地 券 ヲ 政 府 ノ 手 二 存 在 ス ル モ
其 発 行 シ タ ル 為 換 券 ハ 到 底 政 府 ノ 公 債 タ ル ヲ 免 カ レ ズ 。 然 ラ .'', 即 チ 政 府 ノ 損 耗 モ 亦 量 ル べ カ ラ ザ ル ナ ‑ 。 且 之 ヲ 海 外 (3 ) 諸 州 二 徴 ス ル ニ 蓋 シ 其 覆 轍 モ 亦 少 々 ナ ラ ズ 。 」
と に か く 自 由 銀 行 設 立 建 議 は 葦 族 局 か ら は 却 下 さ れ 、 大 蔵 省 か ら は 黙 殺 さ れ る 結 果 に 終 っ た の で あ っ た 。 そ こ で 岡
ら は 1 0 年 三 月 、 こ れ を 自 由 為 換 座 と 改 称 し て 大 蔵 省 に 出 願 し た が ' こ れ も ま た 許 さ れ な か っ た . 岡 ら は 屈 せ ず 、
さら に 地 券 為 換 座 の 名 に 改 め ' ま た 名 義 人 を 華 族 の 一 人 た る 松 平 容 保 (旧 会 津 藩 主 、 当 時 は 日 光 東 照 宮 宮 司 ‑ 筆 者 ) と し
て 、 同 年 七 月 一 九 日 、 政 府 に 設 立 の 請 願 を し た 。 し か し こ れ ま た 「異 名 同 法 」 の ゆ え を も っ て み と め ら れ な か っ た と ( 4 ) い う 。
こ の よ う に 自 由 銀 行 案 は 日 の 目 を み る こ と な く 終 っ た が 、 し か し そ れ は そ の 後 の 土 地 貨 幣 発 行 計 画 の 母 型 を な し た
と い ‑ こ と が で き る 。 そ こ で 内 容 に 立 入 っ て み る こ と に し よ ‑ 0
6 5
一 二 . 筆写 習撃
ま ず そ の 趣 旨 は ど こ に あ る か 。 「建 言 書 」 は つ ぎ の よ ‑ に 述 べ て い る . 「 ・・・ ‑ 近 世 下 民 壷 銀 運 動 ノ 道 ヲ 失 ヒ 逐 二 其
業 ヲ 拙 チ 其 身 代 棄 テ 国 害 ヲ 醸 ス 者 寡 ナ カ ラ ズ ‑ ‑ 民 ヲ 富 ス ノ 道 ハ 貨 幣 ノ 運 動 ヲ 開 ク ニ ア ‑ 。 之 ヲ 開 ク ニ ハ 其 根 ナ ク シ
テ 開 ク コ ‑ ヲ 得 ズ 。 其 源 ハ 乃 チ 今 人 民 ヲ シ テ 所 有 ナ サ シ ム ル ノ 地 価 証 券 ニ ア ル ナ ‑ ‑ ‑ ・現 今 ノ 急 務 ハ 地 券 ヲ 以 テ 金 ヲ
債 シ 債 ス 所 ノ 金 ヲ 以 テ 民 業 ヲ 開 ク ニ ア ‑ 。 然 レ ド モ 全 国 人 民 ノ 所 有 ス ル 地 価 証 券 二 通 ス ル 巨 万 ノ 金 額 ヲ 借 へ ズ 字
不 明 ︺ ・,,, 之 ヲ 施 行 ス ル コ ‑ 能 ハ ズ . 故 二 自 由 為 換 ノ 道 ヲ 開 ︹ 妄 不 明 ︺ 之 ヲ 皇 国 一 致 自 由 銀 行 卜 号 シ 願 脈 諸 那 矧 紙
人 民 自 守 ス ル 地 券 ヲ 政 府 二 出 シ 其 高 比 較 ノ 為 換 券 ヲ 発 シ 人 民 ヲ シ テ 断 然 貨 幣 ノ 融 通 ヲ ナ サ シ ム ル ニ ア ‑ ‑ ‑ 。 」 ま た
お そ ら く 華 族 局 へ の 建 議 に 用 い ら れ た で あ ろ ‑ 「 自 由 銀 行 創 立 ノ 趣 意 」 で は 「 士 農 工 商 各 々 其 所 有 ス ル ノ 身 代 ヲ 他 二
出 サ ズ コ レ ヲ 自 由 銀 行 二 預 り 其 抵 当 二 比 ス ル 自 由 ノ 為 換 券 ヲ 発 シ ‑ ‑ 人 民 勉 強 シ テ 得 ル ー コ ロ ノ 利 額 ノ 内 ヨ リ 出 ス 金
ヲ 以 テ 自 由 為 換 券 交 換 ノ 借 金 ヲ 穣 立 テ 其 余 鉄 道 電 機 瓦 斯 燈 学 校 諸 救 育 院 及 ビ 鉱 山 開 拓 海 軍 陸 軍 ノ 費 ヲ 補 フ ニ 官 費 ヲ 仰
ガ ズ 民 費 ヲ 煩 ハ サ ズ シ テ コ レ ヲ 出 ダ ス 」 こ と が 必 要 で あ る と な し ' し か し 全 国 一 般 に こ の 事 業 を 開 く こ と は 困 難 で あ
る か ら 「 現 今 ノ 急 務 ハ 先 ヅ 人 民 所 有 ノ 地 価 証 券 ヲ 以 テ 自 由 銀 行 創 立 」 を は か り ' 貨 幣 資 本 の 供 給 を 増 加 さ せ ね ば な ら (5 ) ぬ と 説 い て い る 。
さ て そ の 組 織 構 成 は 、 十 条 か ら な る 「 自 由 銀 行 創 立 規 粂 大 略 」 に よ れ ば 「 東 京 府 下 ニ ヲ ヒ テ 全 権 ノ 銀 行 本 店 ヲ 開 キ
各 府 県 下 ニ ヲ ヒ テ 同 盟 ノ 支 店 ヲ 設 ケ ‑ ‑ 之 ヲ 日 本 全 国 人 民 代 理 会 合 ノ 自 由 銀 行 卜 号 」 す る も の で ' 全 国 に わ た る 大 規
模 な 構 想 で あ っ た 。 そ し て 全 国 「 凡 三 府 五 十 県 下 見 積 り 」 各 府 県 下 に お い て 一 株 二 五 円 、 平 均 一 万 株 ' 計 二 五 万 円 を
資 本 金 と し て 募 集 す る 。 そ れ は 「貨 幣 及 ビ 公 債 証 書 其 両 種 二 眼 ル 可 シ 。 尤 モ 公 債 証 書 ハ 時 ノ 相 場 ヲ 以 テ 論 ズ 。」 そ し
て こ の 資 本 金 を 各 府 県 庁 を 経 由 し て 「 大 蔵 省 二 出 シ 自 由 為 換 券 発 行 ノ 資 本 金 ‑ ス 」 る の で 、 自 由 銀 行 の 資 本 金 は 全 国
で 一 ' 三 二 五 万 円 と な る 。 こ ‑ し て 銀 行 の 設 立 が 許 可 さ れ た 上 は ' 「 全 国 人 民 ノ 所 有 ス ル 地 価 証 券 ヲ 抵 当 ー ス レ バ 自
J
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由 為 換 券 ヲ 以 テ 之 二 債 シ 付 ク 可 キ ノ 布 告 ヲ 政 府 ヨ ‑ 発 シ 」 '各 府 県 毎 に 府 県 庁 の 「指 令 ヲ 以 テ 其 支 店 二 之 (地 券 ‑ 筆
者 ) ヲ 纏 メ 而 シ テ 其 府 県 庁 二 之 ヲ 備 へ 其 庁 ヨ ‑ 詳 細 調 査 ヲ 逐 ゲ テ 其 地 券 ノ 高 ヲ 大 蔵 省 二 出 シ 而 シ テ 自 由 銀 行 ヨ ‑ 諸 般
ノ 手 続 ヲ ナ シ 願 立 ツ ル 為 換 券 卜 適 当 ス ル ト キ ハ 紙 幣 寮 ヨ ‑ 銀 行 本 店 二 其 為 換 券 ヲ 受 坂 ‑ テ 全 国 ノ 支 店 二 之 ヲ 散 布 シ 各
々 地 券 ヲ 出 セ シ 者 二 債 付 ノ 方 法 ヲ 開 ク 可 シ 。」
一 方 各 府 県 に お け る 為 換 券 発 行 高 は そ れ ぞ れ 一 〇 〇 万 円 と す る ( し た が っ て 自 由 為 換 券 発 行 総 額 は 五 、 三 〇 〇 万 円
と な る 計 算 で あ る ) 。 為 換 券 に は 「 各 府 県 其 庁 ノ 検 印 ヲ 捺 」 シ 、 そ の 府 県 限 り 通 用 す る 。 も っ と も 各 支 店 は 互 い に 交
換 の 方 法 を 講 じ て 不 便 の な い よ ‑ に す る (こ れ に つ い て は 一 〇 年 一 月 、 こ の 規 定 を 改 め 「全 国 一 般 通 用 ノ 為 換 券 ナ レ .'', 各 府 県
庁 ノ 検 印 ヲ 捺 ス 等 ノ 手 数 ニ ヲ ヨ ''( ズ 」 と し た が ︹ 「勧 銀 資 料 」 ⇔ 二 二 ‑ 三 貢 所 載 に よ る ︺ 、 貸 付 そ の 他 の 事 務 、 し た が っ て 為 換 券
の 発 行 事 務 は 各 府 県 支 店 が 半 ば 独 立 し て 行 う 考 え に 変 り は な い ) 0
す な わ ち 各 支 店 ( 各 府 県 ) 単 位 に み れ ば 、 通 貨 お よ び 公 債 二 五 万 円 を 資 本 金 と し て 政 府 に 納 め 、 そ の 代 り に 自 由 為
換 券 な る 紙 券 一 〇 〇 万 円 の 交 付 を 受 け 、 こ れ を 地 券 担 保 ( 土 地 抵 当 ) で 貸 付 け る と い ‑ こ と に な る 。 た だ し 為 換 券 の
政 府 よ り の 交 付 は 地 券 と 引 換 え に 行 わ れ る の で あ る か ら 、 結 局 「 仝 ク 地 券 証 百 万 円 卜 貨 幣 二 十 五 万 円 卜 合 テ 百 二 十 五
万 円 ノ 資 本 金 ヲ 以 テ 自 由 為 換 券 百 万 円 ヲ 発 行 」 す る の で あ っ て 、 要 す る に 地 券 を 保 証 と し て 紙 券 を 発 行 し ょ ‑ と い ‑
も の に は か な ら な い 。
と こ ろ で こ の 紙 券 を 立 案 者 は と く に 自 由 為 換 券 と と な え て い る が 、 そ の 理 由 は 何 で あ ろ ‑ か 。 い ‑ と こ ろ は 必 ず し
も は っ き り し な い が 、 要 す る に 手 形 制 度 を 摸 し た も の の よ ‑ で あ る 。 す な わ ち 「規 条 大 略 」 の 前 に 付 せ ら れ た 「緒 言 」 (6 ) な る 部 分 に お い て 「自 由 為 換 券 ヲ 発 行 ナ ス ニ 各 々 身 代 私 有 ノ 権 ヲ 以 テ コ レ ヲ 発 行 シ 為 換 券 ノ 融 通 ヲ ナ シ 職 業 ヲ 営 ミ
商 益 ヲ 以 テ 交 換 ノ 道 ヲ 開 キ 人 民 相 互 二 便 利 ヲ 得 ル ニ 近 来 泰 西 各 国 ニ モ 既 ニ コ ノ 法 開 ケ 職 業 盛 大 二 及 ブ ト 聞 ク 」 と 述
6 7 ‑ ベ 、 わ が 国 に お い て も 幕 藩 時 代 両 替 商 の 発 行 し た 手 形 に よ っ て 経 済 上 大 い に 益 が あ っ た が 、 幕 末 に い た っ て 弊 害 続 出
し た た め 、 維 新 以 来 廃 止 さ れ た こ と を 述 べ て い る 。 つ ま り 地 券 ‑ 土 地 を 基 礎 と す る 手 形 ‑ 支 払 約 束 を 発 行 す る こ と は
「 身 代 私 有 ノ 権 」 で あ る が 、 こ れ を 各 人 勝 手 に 行 え ば 「 忽 然 交 換 ノ 道 ヲ 失 」 い 、 流 通 す る こ と が で き な い の で 、 自 由
銀 行 な る 制 度 を た て て こ れ を 代 理 し 統 制 す る と い ‑ も の の よ ‑ で あ る 。 た だ し 「規 条 大 略 」 の 最 初 に 自 由 為 換 券 を 説
明 し た 個 所 で は 、 細 詮 を し て 「 コ レ ハ 紙 幣 ニ チ モ 新 二 自 由 為 換 券 ヲ 製 造 ス ル ー モ 政 府 ノ 適 宜 二 応 ズ ''( シ 」 と 述 べ て い
る こ と か ら み て も 、 「自 由 為 換 券 」 に そ れ ほ ど 特 別 の 意 味 を 付 し て い た も の で は な い と 考 え ら れ る 。 要 す る に そ れ は
土 地 貨 幣 で あ っ た の で あ る 。
と こ ろ で 右 に み た よ ‑ に 、 自 由 為 換 券 発 行 の 基 礎 に 地 券 = 土 地 と な ら ん で 貨 幣 が お か れ て い る の は 興 味 が あ る 。
と い ‑ の は 、 そ の 後 の 地 券 銀 行 企 画 に お い て は 、 地 券 の み を 排 他 的 に 発 券 の 基 礎 と し 、 貨 幣 的 契 機 は 除 外 さ れ て い る
か ら で あ る 。 一 七 世 紀 末 葉 、 イ ギ リ ス に お け る 土 地 銀 行 の 諸 企 画 の 歴 史 は む し ろ 逆 の 順 序 を 示 し 、 最 初 に 土 地 の み を
基 礎 と す る 紙 券 発 行 案 か ら 土 地 と 貨 幣 の 両 契 機 を 含 む 発 券 案 へ と 変 っ て い く と い え 隼 2 , 0 と も イ ギ リ ス の ば あ い
は 、 議 会 の 支 持 を え て 紙 券 が 法 貨 と な る こ と を 期 待 し た と き に 土 地 の み を 基 礎 と し 、 民 間 の 自 主 企 画 と ⊥ て の ば あ い
に は 貨 幣 的 契 機 を 導 入 し た と い ‑ 事 情 が あ る 。 わ が 国 の ば あ い 、 こ の 後 の 企 画 は す べ て 政 府 に 紙 券 発 行 を 求 め る も の
で あ る か ら 、 そ う い う 意 味 で は は じ め か ら 法 貨 で あ り 、 し た が っ て 土 地 の み を 保 証 と す る 企 画 で も 、 そ れ な り に 筋 が
通 っ て い た と い え る か も し れ な い 。 こ れ に 対 し 自 由 銀 行 の ば あ い に は 、 各 人 の 「 身 代 ノ 権 」 た る 地 券 = 土 地 を 保 証 と
す る 為 換 券 = 貨 幣 支 払 の 約 束 、 し か も 当 初 案 で は 通 用 も 各 府 県 限 り の も の で あ っ た か ら 、 法 貨 と し て の 地 位 を 期 待 し
て い な か っ た と も い え よ う 。 し か し そ の 点 に つ い て の 当 事 者 の 考 え を 明 確 に と ら え る こ と は 困 難 で あ る 。 自 由 為 換 券
に し て も 政 府 が 製 造 す る も の で あ り 、 と く に 前 述 し た よ う に こ れ に 代 え て 政 府 紙 幣 ( 法 貨 ) で も 差 支 え な い と い っ て
68
い る と こ ろ を み る と 、 発 行 紙 券 の 流 通 性 を 強 化 す る た め に 貨 幣 的 基 礎 が 必 要 で あ る と い う 認 識 も な い よ う で あ る . つ
ま り そ の 正 否 は 別 と し て 、 な ん ら か の 貨 幣 観 に も と づ く 論 理 的 帰 結 と し て 貨 幣 的 基 礎 が 導 か れ た と い う よ り は 、 設 立
許 可 を う る た め に 目 前 の 事 例 に な ら っ た と い う 便 宜 的 な 動 機 が 主 で あ っ た と み て よ い の で は な か ろ う か 。 九 年 九 月 の
改 正 国 立 銀 行 条 例 に お い て は 、 資 本 金 の う ち 貨 幣 = 通 貨 の 占 め る 割 合 は 二 割 で あ っ た 。 そ れ に な ら っ て 二 一 五 万 円 の
資 本 金 の う ち 二 割 に あ た る 二 五 万 円 を 貨 幣 を も っ て あ て る と い う 形 式 的 な 模 倣 で あ る と 思 わ れ る 。 し か も そ の 二 五 万
円 の 貨 幣 拠 出 の う ち に 公 債 証 書 を 含 め て も よ い と し て 、 貨 幣 と 公 債 を 混 同 し て い る こ と か ら み て も 、 貨 幣 的 基 礎 に な
ん ら か の 理 論 的 、 積 極 的 な 意 味 を 立 案 者 が み と め て い た と は 思 わ れ な い の で あ る 。
そ れ で は 具 体 的 に ど の よ う な 方 法 に よ っ て 自 由 為 換 券 な る 紙 券 を 流 通 に は い ら せ る の か 。 各 府 県 下 に お い て 一 〇 〇
万 円 の 為 換 券 を 発 行 す る の で あ る が 、 そ れ は 資 本 金 の 八 割 を 構 成 す る 地 券 証 一 〇 〇 万 円 と 引 換 え に . つ ま り 地 券 担 保
に 行 わ れ る 。 た だ し 地 券 面 記 載 の 地 価 を そ の ま ま 貸 付 け る わ け で は な い 。 す な わ ち 「 為 換 券 ヲ 債 付 ク ル ニ 地 価 ヲ 以 テ
ス ト 雄 モ 其 土 地 ノ 産 不 産 ヲ 実 検 シ テ 金 高 増 減 ス ル コ ト モ ア ル 可 シ 。 其 貸 付 ノ 方 法 讐 バ 地 所 実 価 一 千 円 ナ レ 、、ハ 其 高 七 分
若 ク ハ 八 分 ノ 見 積 ヲ 以 テ コ レ ヲ 債 シ 債 ス 所 ノ 十 分 ノ ー ヲ 以 テ 地 所 水 損 ノ 予 備 金 ー シ テ 銀 行 工 引 坂 残 金 ヲ 以 テ 月 1 分 二
厘 ノ 利 金 而 己 ヲ 六 ケ 月 毎 ‑二 受 坂 十 三 ヶ 年 ノ 期 二 至 り 元 金 ノ 償 却 ヲ 論 ゼ ズ 虫 当 ノ 地 券 ヲ 返 シ 全 民 倶 二 冨 有 ニ ナ サ シ メ ン
コ ト ヲ 要 ス 。」 こ れ に よ れ ば 地 券 一 〇 〇 万 円 を 虫 当 と し て 、 お よ そ 七 〇 ‑ 八 〇 万 円 (実 際 貸 付 高 は そ の 九 割 ) を 二 二
年 期 限 で 貸 付 け 、 年 利 1 割 四 分 四 厘 に あ た る 利 子 の み を 半 年 毎 に 支 払 う こ と に よ っ て 返 済 せ し め る と い う の で あ る .
も っ と も 「 元 金 ノ 償 却 ヲ 論 ゼ ズ 」 と い っ て い る が 、 実 際 は 二 二 年 期 限 の 半 年 賦 元 利 償 還 に は か な ら な い 。 た だ 一 割 四
分 四 厘 と い う の は 当 時 に お い て け っ し て 高 い 利 子 率 で は な か っ た と い え る か ら 、 こ の よ う な 説 明 の 仕 方 も 成 立 し え
た の で あ ろ う 。 あ る い は 元 金 の 賦 払 返 済 を 前 提 す れ ば 、 紙 券 は そ の 都 度 同 額 だ け 償 却 さ れ 、 流 通 残 高 は 減 少 せ ざ る
こ ■ A l l ■ L
6 9
を え な い 。 そ れ は 自 由 銀 行 の 利 子 収 入 を 減 ず る の み で は な く ' 通 貨 不 足 の 解 消 と い う こ の 計 画 の 根 本 目 的 に も 反 す
る 。 い ず れ に せ よ 、 こ の よ う に 発 行 さ れ た 1 定 額 の 紙 券 が 1 定 期 間 流 通 手 段 と し て 機 能 す る こ と が 期 待 さ れ た の で あ
る 。
と こ ろ で 発 行 高 一 〇 〇 万 円 と 地 券 担 保 貸 付 高 七 〇 ‑ 八 〇 万 円 と の 差 額 は い か に し て 流 通 に 付 せ ら れ る か と い え ば 、
「 発 行 ス ル 自 由 為 換 券 百 万 円 ナ レ ド モ 債 ス 所 ノ 為 換 券 ハ 乃 チ 平 均 八 十 万 円 ナ レ バ 其 残 金 二 十 万 円 ヲ 銀 行 二 予 備 シ コ ノ
金 ヲ シ テ 資 本 預 り 券 ノ 抵 当 ヲ 以 テ 貸 付 ル ー キ ハ 更 二 差 支 ナ カ ル べ シ 。」 す な わ ち 、 貨 幣 出 資 株 式 ( 額 面 二 五 円 ) を 担
保 と し て 「 自 由 為 換 券 ノ 借 用 ヲ 望 ム 者 へ ハ 一 株 二 付 二 十 円 ノ 割 ヲ 以 テ 債 付 、 其 利 子 ハ 百 円 二 付 月 一 分 卜 定 ム 可 シ 。」
株 主 中 の 希 望 者 へ は 出 資 額 の 八 割 を 年 一 割 二 分 で 貸 付 け る の で あ っ て 、 か く て 全 発 行 高 が 流 通 す る に い た る と す る の
で あ る 。
ま た 地 券 を 資 本 と し て 提 供 す る も の が 、 す べ て こ れ を 担 保 と し て 自 由 為 換 券 を 借 り う け る も の と は 考 え ら れ て い な ・
い 。 「 借 用 ヲ 望 マ ザ ル 者 ニ ハ 強 テ 債 付 ノ 権 カ ナ カ ル 可 シ 」 と し て 、 単 に 資 本 と し て 地 券 を 提 供 す る こ と を み と め て い
る の で あ る 。 こ れ ら か ら 明 ら か な こ と は 、 自 由 為 換 券 の 発 行 が 必 ず し も 地 券 担 保 貸 付 と い う 経 路 を と る こ と を 要 件 と
し な い こ と 、 別 言 す れ ば 地 券 は よ り 多 く 流 通 紙 券 発 行 の 基 礎 と し て 意 識 さ れ て い た と い う こ と で あ る 。
と こ ろ で 自 由 為 換 券 は 本 来 的 な 意 味 で の 土 地 貨 幣 と い い う る か と い え ば 、 そ う と は い え な い と 考 え ら れ る 。 純 粋 な ・
土 地 貨 幣 で あ る な ら ば 、 そ れ は 基 礎 と な る 土 地 所 有 権 が 発 行 機 関 に 移 転 さ れ 、 し た が っ て 紙 券 は 本 来 償 却 の 必 要 が な
く 、 紙 券 は 要 求 に よ り 土 地 と 免 換 さ れ 、 通 用 期 限 も 限 定 さ る べ き で は な い 。 ジ ョ ン ・ ロ ー の 土 地 貨 幣 は ま さ に そ う い
う 紙 幣 で あ っ た 。 し か し 自 由 為 換 券 の ば あ い は 「 為 換 券 発 行 ノ 制 限 ハ 十 三 ヶ 年 ヲ 期 ト シ 其 期 二 至 テ 直 チ ニ 通 貨 卜 交 換
ヲ ナ ス べ シ 」 と さ れ て い る 。 そ れ は 二 二 カ 年 を 満 期 と し 、 地 券 = 土 地 を 担 保 と す る 手 形 ‑ 貨 幣 支 払 約 束 で あ っ た の で
7 0
あ る 。 上 述 の よ う に 、 立 案 者 の 認 識 に 混 乱 が あ る に せ よ 、 為 換 券 な る 名 称 が 用 い ら れ た の も そ の た め で あ ろ う 。 機 能
‑的 に は 期 限 つ き の 土 地 貨 幣 で あ っ た と い え る 。 し た が っ て そ の 償 却 の 方 法 が た て ら れ な け れ ば な ら な い わ け で あ る 。 (8 ) こ の よ う に 償 却 の 途 が 考 え ら れ て い る こ と は そ の 後 の 企 画 に お い て も 同 様 で あ る 。
と こ ろ で 償 却 資 金 と し て の 通 貨 を ど の よ う に し て 蓄 積 す る か 。 そ の た め に は 自 由 銀 行 の 下 部 機 関 と し て 助 成 銀 行
( 助 成 銀 行 為 換 座 と も い う ) な る も の を 設 け る 。 「 創 立 規 条 」 に よ れ ば ' 「自 由 為 換 券 ヲ 以 テ 諸 般 ノ 税 金 二 上 納 ス ル ト
キ ハ 其 為 換 券 ヲ 自 由 銀 行 二 受 頼 り 而 シ テ 銀 行 ヨ リ 貨 幣 ヲ 上 納 ス ル ニ 助 成 銀 行 取 扱 ノ 方 法 ヲ 設 ケ 物 産 運 転 ノ 為 換 ヲ ナ ス
ニ 自 由 為 換 券 ヲ 以 テ ス 。 然 ル ト キ ハ 物 産 ノ 代 価 必 ズ 貨 幣 二 化 ス 。 其 化 シ タ ル 貨 幣 ヲ 以 テ 銀 行 ヨ リ 大 蔵 省 へ 上 納 ス レ ''(
柳 差 間 ア ル コ ト ナ シ 」 と し 、 為 換 券 に よ る 納 税 を 通 貨 に 交 換 す る た め の 機 関 と し て こ れ を 説 明 し て い る 。 し か し 明 治 (9 )
一 〇 年 秋 、 自 由 銀 行 創 立 所 里 村 寂 な る 名 を も っ て 刊 行 さ れ た 「 棚 田 晋 法 自 由 銀 行 略 解 」 に よ れ ば 、 「府 県 下 物 産 編
挨 便 利 ノ 地 ヲ 相 撰 ビ 五 ヶ 所 或 ハ 七 八 ヶ 所 ノ 助 成 銀 行 為 換 座
問 屋 ノ 類 ナ リ 莱 ) ヲ 設 ケ 其 地 銀 行 二 納 ム ル 年 々 ノ 利 金 ヲ 又 ( 助 成 銀 行 ハ 旧
銀 行 ヨ リ 助 成 銀 行 二 貸 下 ゲ 各 地 為 換 ハ 勿 論 日 本 全 国 ノ 物 産 為 換 ヲ 為 サ シ メ 其 益 金 ヲ 以 テ 農 工 商 ノ 貧 民 二 貸 付 無 産 ノ モ
ノ ハ 授 産 二 基 ヅ カ セ 国 産 ヲ 起 サ セ シ メ 人 民 ヨ リ 自 然 官 費 ヲ 減 少 ナ サ シ ム ル ノ 事 業 ナ リ 」 と 説 明 し て い る 。 い ず れ に せ
よ 、 そ の 内 容 は あ ま り は っ き り し な い が 、 両 者 を あ わ せ て 考 え れ ば 、 自 由 銀 行 か ら 借 り 入 れ た 自 由 為 換 券 を 運 用 し て
為 換 業 、 問 屋 業 、 貸 金 業 を 営 み 、 そ れ に よ っ て え た 貨 幣 = 通 貨 を も っ て 自 由 銀 行 か ら の 借 入 金 返 済 に あ て 、 か く て 自
由 銀 行 に お け る 為 換 券 交 換 通 貨 を 蓄 積 す る と い う も の で あ っ た 。
一 方 こ の 銀 行 に 貨 幣 ま た は 公 債 を も っ て 出 資 す る も の は い か な る 利 益 を 期 待 し う る か 。 立 案 者 は 「 其 資 本 金 百 円 二
付 l ヶ 月 一 円 二 十 銭 ノ 利 子 ヲ 以 テ 毎 年 十 二 月 二 十 日 利 渡 ヲ ナ シ 十 三 ヶ 年 ノ 期 二 至 リ 1 株 二 十 五 円 二 十 分 ノ 五 ヲ 増 シ テ ( 1 0 ) 乃 チ 三 十 七 円 五 十 銭 ヲ 返 却 ス べ シ 」 と な し 、 企 業 と し て も 採 算 の と れ る こ と を 強 調 し て い る 。
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こ う し て 自 由 銀 行 は 政 府 の 官 許 、 そ の 政 府 に よ る 公 告 、 政 府 か ら の 自 由 為 換 券 ま た は 紙 幣 の 貸 下 げ な ど の 後 楯 を 期
待 し な が ら も 、 民 間 事 業 と し て 計 画 さ れ た 。 そ し て そ の 貸 付 も 地 券 担 保 を 主 と す る が 、 そ れ だ け に 限 定 さ れ る わ け で
は な く 、 地 券 を 担 保 と す る ば あ い で も 資 金 の 使 途 は 農 業 金 融 あ る い は 農 民 救 済 と い う 枠 を も っ て い た わ け で は な い 。
目 的 は 殖 産 興 業 一 般 で あ り 、 そ の 手 段 と し て 土 地 貨 幣 の 創 出 が 計 画 さ れ た と い い う る の で あ る 。
し か し こ の 企 画 は 既 述 の よ う に 許 可 を え ら れ な か っ た 。 そ し て こ れ も す で に ふ れ た よ う に 、 翌 一 〇 年 三 月 の 自 由 為 ( l l ) 換 座 創 立 頗 ‑ そ の 不 許 可 ‑ 一 〇 年 七 月 の 地 券 為 換 座 設 立 請 願 ‑ 不 許 可 と い う 経 過 を た ど っ て 消 滅 し た の で あ
る 。 こ の 二 つ の 願 書 に は そ れ ぞ れ 規 則 書 が そ え ら れ て い た よ う で あ る が 、 そ の 内 容 は 現 在 知 る を え な い 。 た だ 願 書 の
文 面 に よ れ ば 、 骨 子 は 自 由 銀 行 案 と 同 じ で あ る よ う に 思 わ れ る 。 し た が っ て 、 こ れ ら が 許 可 さ れ な か っ た こ と は 当 然
で あ っ た ろ う 。 た だ 「 自 由 各 換 座 創 立 願 」 に は 「 目 今 此 ノ 方 法 ヲ 創 起 ス ル ヲ 聞 キ 各 府 県 下 ノ 人 民 同 盟 ヲ 結 ビ 抵 当 ノ 地
券 及 ビ 資 本 ノ 貨 幣 既 二 備 具 ス ル モ ノ 7 ‑ 」 と い い 、 地 券 為 換 座 の 願 書 に も 同 様 の 記 述 が あ る と こ ろ を み る と 、 こ の 計
画 が あ る て い ど の 反 響 を よ び お こ し た こ と を 想 察 で き る 。 そ し て 事 実 そ の 後 の 地 券 銀 行 企 画 は 多 か れ 少 か れ 自 由 銀 行
案 の 影 響 を う け て い る の で あ る 。
さ て 右 の 自 由 銀 行 設 立 建 議 に 続 い て 第 二 の 企 画 が 出 隠 さ れ た 。 一 〇 年 一 〇 月 、 東 京 府 下 寄 留 福 岡 県 士 族 吉 村 嘉 策 ほ
か 五 名 の そ れ で あ る 。 「 八 木 沢 第 一 論 文 」 も こ れ に ふ れ て い る が 、 案 の 内 容 は 「 本 社 ヲ 東 京 府 下 二 創 立 シ 各 府 県 下 二
支 社 ヲ 設 ケ 現 今 百 万 円 ノ 地 券 ヲ 同 意 者 ヨ ‑ 集 メ 之 ヲ 政 府 へ 抵 当 二 差 入 レ 百 万 円 ノ 紙 幣 ヲ 発 行 シ 専 ラ 地 券 ヲ 抵 当 二 引 坂
貸 付 金 ヲ 為 サ ン ト ス 。 其 貸 付 ノ 方 法 タ ル ヤ 右 ノ 百 万 円 ヲ 貸 付 ノ 元 卜 定 メ 毎 年 十 三 万 円 ヅ ツ 返 納 ト シ 比 内 七 万 五 千 円 (七 万 七 千 円 の 誤 り か ‑ 筆 者 ) ハ 百 万 円 ヲ 十 三 ヶ 年 二 割 一 ヶ 年 元 返 ノ 高 ト ス 。 残 り 五 万 三 千 円 ハ 社 費 仕 払 準 備 金 ノ 利 子
二 充 テ 尚 残 余 ノ 金 額 ヲ 以 テ 年 々 金 穀 ヲ 蓄 積 シ 飢 薩 凶 荒 又 ハ 貧 民 救 助 二 充 テ 又 ハ 官 命 二 依 テ ハ 御 用 途 ニ モ 供 ス べ キ 見
7 2
(1 2 ) 込 」 で あ る と し て い る 。 資 料 は 願 書 の 概 要 を 記 し た も の に す ぎ な い の で 、 詳 細 は 不 明 で あ る が 、 要 す る に 地 券 を 準 備
と す る 紙 幣 発 行 案 で あ っ た 。 そ の 発 行 期 間 を 二 二 カ 年 と し た 点 、 ま た 文 意 は 必 ず し も 明 ら か で な い が 、 お そ ら く 各 府
県 下 で 百 万 円 の 地 券 を 基 礎 に 百 万 円 の 紙 幣 を 発 行 し よ う と い う 点 な ど か ら 自 由 銀 行 案 を 範 と し た こ と は 誤 り が な い で
あ ろ う が 、 案 と し て は 自 由 銀 行 の 精 到 さ に 比 す べ く も な い 。 た だ こ の 案 で は 貨 幣 の 出 資 が な く な っ た 点 、 ま た 貸 付 担
保 を 地 券 に 限 定 し た 点 が 注 目 さ れ る 。 そ れ が ど の よ う な 理 由 に よ る の か 、 こ の 企 画 の 趣 旨 目 的 が ど こ に お か れ て い る
の か な ど は 、 資 料 の 制 約 上 判 断 を 下 し え な い が 、 土 地 貨 幣 論 と し て は よ り 徹 底 し た も の に な っ た と い う こ と が で き よ
う 。 こ れ も 不 許 可 に な っ た と い わ れ る が 、 そ の 経 緯 は 定 か で な い 。
一 方 こ れ と ほ と ん ど 時 を 同 じ く し て ' 同 年 一 一 月 、 京 都 在 住 の 同 府 士 族 川 口 常 吉 と そ の 息 川 口 港 連 名 で 大 蔵 卿 大 隈 ( 1 3 ) 重 信 あ て に 「 地 券 銀 行 設 立 建 言 書 」 が 提 出 さ れ て い る 。 そ の 計 画 は 「 地 券 銀 行 ノ 名 義 ヲ 設 ケ 五 十 年 ヲ 期 シ 以 テ 上 ノ 許
可 ヲ 蒙 り 予 メ 弐 億 万 円 ノ 地 券 金 額 ヲ 大 蔵 省 二 備 へ 置 キ 其 金 額 ノ 紙 幣 ヲ 新 二 製 造 シ 御 下 渡 シ ニ 成 シ 玉 ハ 、 地 券 抵 当 ー シ
速 二 内 国 一 般 二 貸 附 ケ 」 る と い う も の で 、 そ の 機 構 は 「 東 京 ヲ 第 一 地 券 銀 行 ー シ 大 阪 ヲ 第 二 地 券 銀 行 ー シ 諸 県 下 最 寄
可 然 地 二 支 店 ヲ 設 ケ 内 国 一 般 へ 貸 附 ノ 事 」 と し て い る 。 つ ま り 二 億 円 の 地 券 を 準 備 と し て 五 〇 年 通 用 の 同 額 の 紙 幣 を
発 行 す る と い う 壮 大 な も の で あ る 。 こ の 案 で も す で に 貨 幣 的 契 機 は 除 外 さ れ て い る 。 た だ 五 〇 年 期 限 で 償 却 す る と い
っ て も そ の 計 画 は 明 ら か で な い 。 と い う の は こ の 計 画 の 特 色 は 、 貸 付 金 の 利 子 を も っ て 一 二 項 目 の 事 業 の 費 用 を す べ
て 負 担 す る こ と に あ る が 、 そ れ ら の 事 業 は 、 た と え ば 「 西 南 暴 動 御 征 討 費 用 」 「 自 今 海 陸 軍 諸 般 ノ 費 用 」 を は じ め 、
軍 隊 移 駐 費 、 電 信 線 架 設 、 京 都 函 館 間 の 鉄 道 敷 設 、 道 路 改 修 な ど の 土 木 費 の ご と き が 主 で 、 収 益 の 期 待 で き る よ う な
も の は あ ま り な い か ら で あ る 。 き わ め て 空 想 的 な 案 で 、 そ の 後 の 経 緯 は 不 明 で あ る が 、 お そ ら く 不 許 可 の 指 令 を 出 す
ま で も な く 黙 毅 さ れ た の で は な い か と 思 わ れ る 。 案 の 内 容 か ら み て 自 由 銀 行 案 と の 関 連 は み と め ら れ な い が 、 貸 付 の
‥. J へ T mr e L
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目 的 が 限 定 さ れ ず 、 積 極 的 な 事 業 資 金 の 造 出 と い う 第 一 期 的 な 意 図 は 共 通 し て い る と い え よ う 。
こ の 後 し ば ら く 地 券 銀 行 の 企 画 は と だ え る 。 こ の 中 断 が 資 料 の 未 発 見 に よ る も の か 、 事 実 そ の よ う な 企 画 が な か っ
た の か は 、 に わ か に 断 定 し え な い 。 し か し 今 日 ま で 資 料 が み あ た ら な い と す れ ば 、 後 者 が 真 実 で あ っ た の で は な い か
と 思 わ れ る 。 と す る な ら ば 、 そ れ は お そ ら く 西 南 戦 役 な ど を は じ め と す る 政 治 的 不 安 定 、 改 正 国 立 銀 行 条 例 に も と づ
く 国 立 銀 行 の 続 出 と そ れ に 対 す る 金 融 的 関 心 の 集 中 、 イ ン フ レ ー シ ョ ン の 進 行 に よ る 土 地 所 有 者 の 表 見 的 利 益 の 増 大
な ど が 、 地 券 銀 行 案 I 土 地 貨 幣 の 劇 出 を さ し て 必 要 と し な く な っ た た め で は あ る ま い か 。
い ず れ に せ よ 、 次 の 企 画 が あ ら わ れ た の は 、 紙 幣 整 理 ‑ デ フ レ ー シ ョ ン 政 策 が 緒 に つ い た 一 五 年 で あ っ た 。 こ の
年 に は 管 見 の か ぎ り で は 三 つ の 企 画 を あ げ る こ と が で き る 。 そ れ は 「 日 本 勧 業 銀 行 史 」 お よ び 「 八 木 沢 第 一 論 文 」 に
み ら れ る も の で あ る が 、 そ の 記 述 は 簡 単 で あ る 。 た だ 現 在 の 筆 者 は こ れ ら の 企 画 に 関 し て こ れ 以 外 に よ る べ き 資 料 を
も た な い の で 、 こ れ ら 記 事 に よ る は か な い 。 「 日 本 勧 業 銀 行 史 」 に よ れ ば 、 「 一 五 年 の 横 浜 、 藤 井 清 の 生 糸 為 換 資 金 (1 4 ) を 目 的 と す る 地 券 銀 行 は 二 百 万 円 の 地 券 を 政 府 に 預 け て 紙 幣 を 発 行 し よ う と す る も の で あ り 」 、 ま た 「八 木 沢 第 一 論
文 」 に し た が え ば 、 「 十 五 年 上 州 前 橋 ‑ 養 蚕 地 ・ 機 業 地 と し て 漸 く 活 麿 な 商 品 生 産 者 と し て 資 本 主 義 の 槍 舞 台 に 打
っ て 出 で や う と し て ゐ た 従 っ て 資 金 の 必 要 を 切 実 に 感 じ 出 し て ゐ た 両 宅 の 中 心 地 の 紳 商 連 ‑ 地 主 的 高 利 貸 的 商 人 階
級 が 地 券 銀 行 を 創 立 し て 地 券 を 抵 当 に 紙 幣 を 発 行 し 以 て 殖 産 興 業 の 資 に 充 て ん と 目 論 見 た る 如 き 、 ま た 九 州 地 方 に 於 ( 1 5 ) い て 地 券 を 以 て 一 大 銀 行 を 設 立 し て 当 該 地 方 の 鉄 道 資 金 に 供 せ ん と し た 者 が 出 で た 」 と い わ れ る 。 即 断 は さ け な け れ
ば な ら な い が 、 以 上 の 記 事 に よ る か ぎ り 、 こ れ ら 三 つ の 企 画 は 地 券 を 基 礎 と す る 紙 幣 の 創 出 に よ っ て 積 極 的 に 起 業 資
金 を 供 給 し よ う と す る も の 、 九 ‑ 一 〇 年 に お け る 先 行 諸 企 画 と 同 様 の 趣 旨 目 的 を も つ も の の よ う に 考 え ら れ る 。 そ う
だ と す る な ら ば そ の 理 由 は 何 で あ ろ う か 。 紙 幣 整 理 = デ フ レ ー シ ョ ン 政 策 の 開 始 に よ っ て 、 一 方 で は 金 詰 り 現 象 が あ
7 4
ら わ れ は じ め た こ と ' し か し な が ら 他 方 で は こ う し た 政 策 転 換 の 意 義 と 効 果 が ま だ 十 分 に 浸 透 し 一 般 に 認 識 さ れ る ま
で に は い た ら な か っ た こ と 、 こ の よ う な い わ ば 過 渡 的 な 事 情 が 、 な お 殖 産 興 業 的 な 意 図 を も つ 計 画 を 発 生 せ し め る 余 ( 1 6 ) 地 を 残 し て い た の で は な い か と 思 わ れ る 。 と も あ れ 、 こ こ で は こ れ ら 諸 企 画 を 第 1 期 の 最 後 に 位 置 す る も の と し て お
き
た い 。
(1 ) 岡 伝 兵 衛 と も い う 。 「 八 木 沢 第 一 論 文 」 に よ れ ば 、 彼 は 明 治 三 年 冬 伊 藤 博 文 の 渡 米 に 際 L t 大 阪 通 商 司 頭 坂 平 野 五 兵 衛 代
理 と し て 随 行 し た こ と も あ り 、 外 国 の 金 融 事 業 に つ い て 当 時 と し て は 通 じ て い た 新 人 で あ っ た と い う 。 (2 ) 「 八 木 沢 第 一 論 文 」 九 四 貢 。 な お 「 日 本 勧 業 銀 行 史 」 八 二 ‑ 三 頁 の 記 述 も こ れ に よ っ て い る 。 (3 ) 「金 融 史 資 料 」 的 六 七 六 ‑ 七 頁 。
( 4 ) 「 八 木 沢 第 一 論 文 」 九 四 頁 。 (5 ) 「勧 銀 史 資 料 」 ⁚口 一 四 頁 以 下 . (6 ) 同 右 、 一 六 ‑ 七 頁 。
(7)
杉 山 忠 平 「イ ギ ‑ ス 信 用 思 想 史 研 究 」 ( 一 九 六 三 年 、 未 来 社 ) 参 照 。 (8 ) イ ギ ‑ ス の 土 地 銀 行 企 画 に お い て も ー そ れ は 土 地 を 発 券 の 基 礎 と す る と と も に そ れ を 担 保 と し て 貸 付 け る も の で あ っ た ‑
同 じ く 償 却 が 必 要 と さ れ 、 そ の 期 間 方 法 が 定 め ら れ て い る (杉 山 、 前 掲 書 ) 0 (9 ) 「 松 方 家 文 書 」 第 五 〇 号 ( 「勧 銀 史 資 料 」 ⇔ 二 七 ‑ 九 頁 ' 「金 融 史 資 料 」 的 九 三 〇 I l 頁 所 載 ) 0 (10 ) 「 創 立 規 条 大 略 」 に は つ ぎ の よ う な 収 支 見 積 が 記 さ れ て い る 。
一 県 内 会 計 見 積 表 l 金 二 十 五 万 円
1 金 百 万 円
一 金 百 万 円
一 金 十 万 円
一 金 二 百 零 五 万 九 千 二 百 円 但 発 行 為 換 券 高 百 万 円 四 分 ノ 一 ノ 資 本 金 大 蔵 省 へ 備 高
但 地 券 証 ヲ 以 テ 県 庁 へ 備 高
但 自 由 為 換 券 発 行 高 但 債 附 高 十 分 ノ 一 銀 行 工 引 坂 コ ノ 金 ヲ 以 テ 田 畑 水 早 ノ タ メ 損 亡 ノ 預 備 金
但 為 換 券 発 行 高 百 万 円 ノ 利 子 十 三 ヶ 年 ノ 間 一 分 二 朱 ノ 割 尤 十 分 ノ 一 引 板 金 ノ 利 子 共
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(16 ) 〆 内
訳
金 二 十 五 万 円
金 E I十 六 万 八 千 円
金 十 二 万 五 千 円
金 一 百 万 円
金 十 万 円
金 一 百 万 円
金 一 百 万 円
金 三 十 万 円
金 十 万 円
金 六 万 六 千 二 百 円 但 資 本 金 返 済 高
但 資 本 金 ノ 利 子 一 分 二 朱 ノ 割 ヲ 以 テ 年 々 株 主 へ 相 渡 シ 尤 十 三 ヶ 年 ノ 見 積 高
但 資 本 金 出 金 主 へ 十 三 ヶ 年 二 至 り 元 金 二 増 ス 十 分 ノ 五 波 高
但 元 金 論 セ ス 抵 当 ノ 地 券 返 進 高
但 田 畑 水 草 損 亡 ノ 為 メ 出 金 高
但 為 換 券 引 換 ノ 元 金
但 為 換 券 引 換 ノ 分 コ レ ヲ 焼 葉 高
但 為 換 券 製 造 見 積 高 其 余 諸 般 入 費 ヲ 補 フ 見 積 高
但 銀 行 非 常 備 金
但 銀 行 社 中 分 配 ス
自 由 為 換 座 創 立 願 に つ い て は 松 方 家 文 書 第 四 三 号 ( 「勧 銀 史 資 料 」 巨 二 六 頁 ' 「金 融 史 資 料 」 的 九 四 〇 頁 所 載 ) 、 地 券
為 換 座 創 立 願 に つ い て は 「 明 治 賃 政 考 要 」 下 編 第 四 章 第 二 節 ( 「勧 銀 史 資 料 」 ⇔ 三 〇 貢 所 載 ) 参 照 。
「 明 治 賃 政 考 要 」 下 編 第 四 章 第 二 節 ( 「勧 銀 史 資 料 」 3I 三 l 頁 所 載 ) . 「大 隈 文 書 」 ( 「金 融 史 資 料 」 的 六 九 六 ‑ 七 貢 ) .
「 日 本 立 憲 政 党 新 聞 」 一 五 ・ 六 ・ 二 九 ( 「 日 本 勧 業 銀 行 史 」 八 四 頁 ) 。
「 八 木 沢 第 一 論 文 」 九 八 ‑ 九 貞 o
こ の よ う な 過 渡 期 の 性 格 を 示 す T 事 例 と し て ' お そ ら く 政 府 作 成 の も の と 考 え ら れ る l 四 年 の 「 土 地 抵 当 貸 銀 行 」 の 構 想
を あ げ る こ と が で き よ う 。 そ れ は 債 券 発 行 の 不 動 産 抵 当 銀 行 で あ り ' そ の 意 味 で は の ち の 興 業 銀 行 (勧 業 銀 行 ) に 継 承 さ
れ る も の で あ る が ' 他 面 そ の 債 券 た る 「 保 債 券 」 は 同 時 に 貸 付 け に も 用 い ら れ ' そ の 「流 通 便 利 ノ 為 メ 保 債 券 ヲ 以 テ 交 換
ス ル ノ 」 細 分 券 を 発 行 し う る こ と と さ れ て い た 。 こ の よ う に 「地 券 銀 行 」 的 構 想 が 政 府 当 局 者 に も ま だ 残 っ て い た と い え
る ( 「 日 本 勧 業 銀 行 法 草 案 関 係 資 料 」 ︹ 「 日 本 勧 業 銀 行 史 資 料 」 第 一 集 、 一 丁 二 五 頁 ' 日 本 勧 業 銀 行 調 査 部 ' 勧 銀 史 研 究
会 編 、 昭 和 二 六 年 ︺ ) 。
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