平成 2 3 年度
脊椎手術における練突起間固定に 関する実験的研究
に〉千三、
j f
ンJ
J ん ι ̲?C♂ムー i
i‑Z412sl
三 重 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 機 械 工 学 専 攻 生体システム工学研究室
宮 地 佑 輔
三 重 大 学 大 学 院 [ 学 研 究 科
目次
1
章緒言....・H ・...2
章 脊 椎 の バ イ オ メ カ ニ ク ス , 疾 患 と 脊 椎 固 定 術2
.1 脊椎の構成要素…H ・H・H ・H・....・H・....・H・...・H・‑…H・H・......・H・‑…H・H・‑…H・H・‑…・・…‑…H・H・‑…. . 3 2 . 2
骨のバイオメカニクス・…....・H・‑…・・H・H・‑…....・H・...・H ・.....・H・......・H・...・H・.....・H・........・H・‑…52 . 2
.1 骨組織の構造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
2 . 3
機能的脊椎単位( F S U )
と安定要素…....・H・.....・H・....・H・‑…・…………...・H ・.....・H・‑…. . 6
2
.3.1 脊椎の安定要素……....・H ・‑……...・H・‑…・…・…....・H ・....・H ・‑….....・H・...・H・....・H・‑…・…. . 6
2
.3. 2 FSU
の前方部分...・H ・.....・H ・...・H・.....・H ・...・H・‑…・…H・H・.....・H ・...・H・‑…...・H・..........・H・. . . 6 2 . 3
.3FSU
の後方部分…・・・H・H・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・H・H・‑….....・H ・‑…・7 2 . 3
.4脊椎の靭帯…....・H・‑…............・H ・..……・…・…・…...・H・.....・H・...・H・....・H・.....・H・...・H・‑…・8 2
.4 脊椎のバイオメカニクス…...・H ・...・H・.....・H ・‑………...・H・‑……....・H ・....・H ・‑…....・H・‑…. 9 2
.4.1R i g h t ‑ h a n d e d o r t h o g o n a l c o o r d i n a t e s y s t e m
....・H ・....・H・...・H ・‑・……....・H・‑…H・H・...・H ・. 9 2
.4. 2 C o u p l e d m o t i o n ( C o u p l i n g )
・..H・.....・H・...・H ・H ・..…...・H ・.....・H・H・H・..…...・H ・..…...・H・. 9 2
.4. 3
Inst a n t a n e o u s a x i s o f r o t a t i o n ( I A R :
瞬間回転中心)…...・H・‑…...・H・‑….....・H ・. 1 0 2
.4.4 Vis c o e l a s t i c i t y
(粘弾性)…・…. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1 0 2
.4. 5 N e u t r a l z o n e ( N Z )
とE l a s t i c z o n e ( E Z )
….....・H・....・H ・...・H・‑…・...・H・.....・H・‑…・・1 1 2 . 5
脊椎の損傷……....・H ・‑…...・H ・‑…...・H・‑…‑……・…・...・H・‑…・・…...・H・‑…….....・H・...・H ・. . . . . . . 1 2 2 . 5
.1 脊椎疾患……...・H・‑…・…・..~.・...・ H ・-……...・ H ・…...・ H・………....・ H ・...・ H ・-……・…・・・ 12
2 . 5 . 2
脊椎手術・H ・H‑ ・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・H・H・. 1 4 2 . 6
脊椎固定器具( s p i n a li n s t r u m e n t a t i o n )
…....・H・‑…….....・H ・……‑…・....・H・‑…....・H・‑…1 5 2 . 7
新しい脊椎固定器具( T a d p o l es y s t e m )
…・…...・H ・.....・H ・...・H・....・H・‑…....・H・....・H・. . . 1 6 2 . 8 P S
を用いた後側方腰椎固定術...・H ・‑….....・H・....・H・....・H・…・…....・H・‑…・…H・H・‑…H・H・. . . 1 8
3
章 形状記憶合金製椋突起間固定インプラントの開発と評価3 . 1
形状記憶合金製赫突起間固定インプラントの開発H・H・....・H・....・H・......・H・....・H ・‑…. 2 0 3 .
1.1 T i ‑ N i
系形状記憶合金赫突起間固定インプラント....・H・‑……・………....・H・‑…2 0 3 .
1.2
インプラントの製作方法・・H・H・‑…...・H・.....・H・…......・H・....・H ・‑…...・H ・..…....・H・...・H・. 2 2
3 .
1.3
インプラントの形状記憶熱処理………...・H・..……....・H・‑…...・H ・.....・H・..…...・H・. 2 2
3 .
1.4
形状回復時間の測定…・…・…...・H ・...・H・...・H・....・H・...・H・...・H・...・H・..…....・H ・....・...…・・・2 5
3 . 2
実験概要・H・H・......・H・・・H ・H ・‑….....・H ・....・H・....・H ・‑…....・H・‑……・…・・…....・H ・‑….....・H・‑…・……2 7
3 . 2 . 1
試験体の概要・...・H・....・H ・....・H ・‑…....・H・....・H ・....・H・....・H・....・H・....・H・‑…・・・H・H・....・H・. . 2 7
3 . 2 . 2
座標軸の設定・・H ・H・....・H ・‑…...・H・‑…....・H・....・H ・‑…・・…H ・H ・..…H・H・..…H・H・.....・H・...…2 8
3 . 2 . 3
実験準備・H・H・・・‑H ・H ・...・H・‑…・…・・……・….....・H ・....・H・...・H ・.....・H ・....・H・‑…・・……....・H・. . 2 9
3 . 2
.4 試験体モデ、ル・……...・H ・.....・H ・....・H ・....・H・....・H・....・H ・....・H・‑…・…・・H・H・....・H・....・H・. . . 3 3
3 . 2 . 5 6
軸材料試験機……H・H・‑…H ・H ・..…...・H ・‑…H・H・...・H ・H ・H ・‑…H・H・....・H・.....・H・....・H・. . . 3 5
3 . 3 . 2
実験結果……H・H・.....・H・………...・H ・‑…....・H・....・H・H・H・‑……....・H ・...・H・‑……. 4 0 3 . 3 . 3
考察・・H ・H ・...・H ・.....・H ・...・H・‑…・…H・H ・‑…H・H・‑….....・H・...・H・H・H・...…H・H・...・H・.....・H・‑…. 4 0
4
章 強固な腕突起間固定の調査
4 . 1
腕突起への固定方法の調査…...・H・..…....・H・‑…・H・H・‑……..."..・H ・....・H・...・H・.....・H・‑……4 4 4 .
1.1
実験概要……....・H ・....・H・‑…...・H ・‑…...・H・...・H・H・H・.....・H・...・……H・H・‑…・・…...・H・...・H ・4 5 4 .
1.2
実験結果及び考察…・・…H ・H ・...・H ・....・H ・.....・H・.....・H・...…・…・H ・H ・...・H ・....・H・‑……・…・4 8 4 . 2
新しい椋突起間固定法の提案...・H・‑…....・H ・....…・…....・H・. . 0 0・H・..……....・H・..……....・H・5 0 4 . 2 . 1
両側PS
練突起固定法・・H・H ・‑…....・H・‑……....・H・.....・H・.....・...….....・H・…....・H・....・H・5 0 4 . 2 . 2
実験概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・……...・H・‑……..……・・・・・5 1 4 . 2 . 3
実験結果および考察・H ・H ・....・H・‑…・....・H・....・H・….....・H・‑…H・H・.....・H・........・H・...・H・. . 5 2
5
章 結 言 …H・H・‑…・・…H・H・‑…....・H ・...・H ・H ・H ・...……H・H・‑…H・H・‑・…・…....・H ・....・H・‑…H・H・...・H ・. . . 5 4
参考文献…H・H・....・H・..…...・H・.........・H・‑……・…H・H・‑…H・H・‑…H・H・..…...・H・...・H・......・H・..…H・H・‑…
5 5
謝辞………...・H・‑……・…H・H・.....・H ・‑…...・H ・‑…....・H ・‑…...........・H ・‑…H・H・....・H・...・H ・....…・…・…・・・…
5 8
二 重 大 学 大 学 院 L学研究や│
1
章 緒 言1 章 緒
医用生体工学は医学,工学,生物学の学際領域であり,生体や生物の持つ優れた構造 や機能を研究し,工学機器やシステムに導入する分野と生体の構造や機能を力学的観点、
から解析する分野の大きく
2
つに分けられる.生体は全体,もしくはそれを構成する要 素において内的にも,外的にも力学的環境下にあり,その機能の多くは力学的法則の支 配を受けている.すなわち,身体全体のみならず,様々な器官,組織,細胞の機能は力 学的バランスのもとで発揮,維持されており,またその崩壊によって各種疾患や支障が 生じることが多く,それらの治療や回復にも力学的配慮が不可欠である.さて,近年医療における外科系手術の分野全般にわたって最小侵襲手術
( m i n i m a l l y i n v a s i v e s u r g e r y ;
以下MIS)
が広く取り組まれている.MISは皮膚切開をできるだけ小さく し,さらに,生体内の筋肉や組織,臓器への侵襲を最小限にする手術法である.この手術 法を導入することで正常組織への侵襲を減らし,患者の肉体的負担が少なくなれば,合 併症や後遺症のリスクが軽減でき,入院期間も短縮できる.また,MIS
の主な方法として,出来るだけ正常な組織や臓器を温存し,手術による合併症や後遺症を軽減することによ り,退院後の生活も含めて低侵襲を目指した温存手術と,体内を観るための内視鏡を用 いて,できるだけ傷を小さくすることを目指した鏡視下手術の二つが挙げられる.実際 の臨床においては,これらの方法の中から症状に応じたものを選択し,使い分けて行わ れている.
脊柱管狭窄症や脊椎すべり症などの脊椎疾患に対して行われる脊椎固定術において も
MISが取り組まれており,種々の脊椎固定術の考案,応用が試みられている.例え
ば,従来のp e d i c l es c r e w a n d r o d s y s t e m
(以下P S )
を用いた術式において,不安定にな った脊椎の左右両側へPS
により固定するのが一般的であるが,手術侵襲の軽減を目的 に,PSを両側に用いずに片側のみに PS
固定を行う術式がある.この片側PS
固定術で は,片側の椎間関節および軟部組織を温存でき,両側PS
固定術と比べ,手術時間は短 く術中出血量が少なし、[ 1 ] [ 2 )
しかし,その固定性は曲げ方向によって大きく異なり,固 定のバランスが偏った術式であるという報告がなされている[ 3 ] [ 4 )
また,PS
の使用にお いても,その手術手技は決して簡便ではなく,s c r e w
の誤刺入による神経血管損傷など の重大な合併症の報告例が散見される[ 5 )[ 6 )
低侵襲で安定性を確保する術式として,赫突起間固定がある.この練突起間固定には 身体組織への低侵襲,合併症の減少,手術時間の短縮,骨組穀症に有効といった利点、
があるため,
MIS
の観点から有用なインストウルメンテーションである.この腕突起間固定の~ r r t
人t芋 大 学 院 l学研究干│ひとつである
T a d p o l es y s t e m
と呼ばれる術式は手術手技が容易で侵襲が少ない上,合併 症が起りにくく,臨床成績は良好であると報告されている[ 7 ] [ 8 )
しかしながら,従来の両側PS
固定術と比較して脊椎固定性が弱いことが過去の研究で明らかにされている[ 9 )
われ われはより強固な固定性を有する練突起間固定としてT a d p o l e
よりも簡便で安全性の高い 新しい練突起間固定インプラントを考案した.このインプラントは,百・Ni
系形状記憶 合金製の円筒状プレートであり,手術時に疎突起に設置すると,体温による温度上昇によって形状記憶効果が生じて椎間固定を行う.線上靭帯の上から赫突起を挟み込むとい う簡便な設置工程のため,手術時間の短縮と身体組織への低侵襲が期待できる.
本研究では練突起間固定による脊椎固定性を実験的に調査することで,より強固な固 定性を有する練突起間固定法を提案することを目的とした.当研究室で開発した形状記 憶合金製赫突起間固定インプラントを脊椎強度測定用
6
軸材料試験機により,脊椎固定 術をモデ、ル化したイノシシ屍体腰椎の機能的脊椎単位に用いて,脊椎の基本運動である曲げ試験を行った[叫.さらに,得られた結果からより強固な練突起間固定法として
PS
を練突起固定に用いた固定法を提案,評価を行った.2
‑̲ j哲太'芋大,、
i
三│涜l 字 削 究 科
2
章 脊椎の構造, バイオメカニクスと脊椎固定術2 章脊椎の構造,バイオメカニクスと脊椎固定術
2 . 1
脊椎の構成要素脊椎とは,
24
個の椎骨と仙骨,および尾骨から形成され,大きく分けて頚椎,胸椎,腰椎の
3
部分がある( S e eF i g . 2 ・ 1 )
.特に腰椎は,5
つの椎骨より構成され,頭側からL 1
,. . .
,L4
,L5とよばれている.
人体における脊椎の主な役割は,身体の支持と運動の伝達および軸,そして特徴的で あるのが中枢神経である脊髄の保護である.
F i g . 2 ‑ 2
の( a )
,( b )
はそれぞれ脊椎の断面 図と側面図を表し,その構成要素を示す.椎骨は椎体部分と椎弓部分に大きく分けられ,主に椎体が前者の役割を,椎弓が後者の役割を果たしている
.
椎弓から,椋突起,横突 起,上下関節突起などが突出しており,それらの問,あるいは周囲に椎間板や各種靭帯
が存在し,脊椎の安定要素を構成している.c e r v i c a l s p i n e
t h o r a c i c s p i n e
lumbar s p i n e
F i g
.2・l
脊椎3
Arch o f v e r t e b r a V e r t e b r a l body
S p i n o u s p r o c e s s
S p i n a l c a n a l I n f e r i o r a r t i c u l a r p r o c e s s
( a ) C r o s s s e c t i o n d i a g r a m
P o s t e r i o r l o n g i t u d i n a l Y e l l o w l i g a m e n t V e r t e b r a l body l i g a m e n t
A n t e r i o r l o n g i t u d i n a l
I n t e r v e r t e b r a l d i s k
( b ) Le
食l a t e r a lv i e w d i a g r a m
F i g . 2 ‑ 2
脊椎の構成要素I n t e r s p i n a l l i g a m e n t
S p i n o u s p r o c e s s
4
脊椎の構造,バイオメカニクスと脊椎固定術
2 . 2
骨のバイオメカニクス骨格は,生体の内部臓器を保護し,筋肉の働きを介して生体の運動に関与する.その ため,骨はきわめて独特の機械的特質を有している.
骨には自己修復能があり,機械的要求に応じてその性状と形状を変化させることがで きる.例えば一般に,骨の密度は,使用しなかった場合や,使いすぎた場合に変化する ことが確かめられている.また,骨折の治療後あるいは,ある種の骨折手術の後に,骨 の形状が変化することも確かめられている.すなわち骨は,機械的要求に適合する能力 を有するといえる.
2
章2 . 2 . 1
骨組織の構造骨は,皮質骨と海綿骨からなる.これらのこつのタイプは,その多孔度に関してかな りの差があるといわれている
[ 1 1 ]
多孔度とは,その骨組織における非鉱質組織を含む割 合のことである.皮質骨の場合は,その多孔度は5 " ‑ ' 3 0 %
の範囲であり,海綿骨では3 0
" ‑ ' 9 0 %
以上とされている.ただし,多孔度の低い皮質骨と,多孔度の高い海面骨の区別 はなかなか難しい.また,皮質骨は海綿骨と比較してより剛性が高い.すなわち,皮質 骨は応力に対しては強いが,ひずみに対しては弱いといえる.皮質骨は,i n v i t r o
の実験 では,2%
以上のひずみが加わると骨折を惹起するが,海綿骨の場合は,7 %
を超えるま で骨折を惹起しない.というのは,海綿骨はその多孔質な構造によって,より高いエネ ルギー蓄積能力を有するからである(12 ]
皮質骨も海綿骨も異方性,つまり外力を加える方向に依存して機械的性質が変化する 材料の性質を持つ.この異方性物質は,種々の方向に負荷された場合,種々の違った機 械的特性を表す.というのも骨組織は,縦軸方向と横軸方向で異なるからである.骨の 強度は,負荷の方向でかなり変化する
( F i g . 2 ・ 3 ) .
骨の強度と剛性は,通常負荷が最も かかる方向において最高値を示すと考えられている[ 1 3 ]
騒璽麹
②
①
間四回
@hX
山S t r a i n
皮質骨(ヒト大腿骨)における縦軸方向と横軸方向の応力.ひずみ線図
F i g . 2 ・ 3
5
2 . 3
機能的脊椎単位(FSU)
と安定要素脊椎の機能単位は運動分節であり,それは安定要素である
2
個の椎体とその聞に介在 する軟部組織からなる.これを機能的脊椎単位(FSU; F u n c t i o n a l S p i n a l U n i t )
とよび,二つの隣接する椎体,椎間板,縦走靭帯がその前方部分を,それに相応する椎弓,椎間 関節,横突起,腕突起,そして靭帯が後方部分を構成している.
2
ふ1
脊椎の安定要素FSU
は内的および外的な安定要素によってその安定が保たれている.外的安定要素に おいて最も重要とされているのは,神経一筋系統であり,代表的なものに腹筋群や傍脊 柱筋などがあげられる.これらは脊椎の前後屈運動において重要であり,これに損傷などの異常が生じると脊椎は非常に不安定になる.
また,内的安定要素は
F i g . 2
・2に示す脊椎の構成要素自体であり,前方と後方に分け
られる.これらの安定要素は,骨折などの外傷や腫療などの疾患,および手術手技によ り構成要素の破壊や変性が生じ,その程度によって脊椎は不安定になる.どの安定要素 がどれくらいの損傷を受けると脊椎の不安定性が生じるかについて明らかになってき ており,P a n j a b iらや P o s n e r
らはFSU
を用いた力学的な実験からそれらの関係を示して いる[ 1 4 ][ 1 5 ]
さらに,当研究室の茂木らは脊椎の各安定要素の損傷がFSU
に及ぼす影響 を報告した(16 ]
また,それまでの力学的研究や臨床的研究の結果を検討することによっ て,O e n i s
は損傷脊椎の安定性に関するt h r e ecolumn t h e o r y
を提唱し,脊椎不安定性の評 価において,m i d d l e column
の損傷の有無が重要であると述べている[ 1 η .
2 . 3 . 2 FSU
の前方部分前方部分は脊椎の静的支持機構の中心であり,圧縮負荷の大部分が椎体と椎間板によ って支持される.
椎体は主として圧縮負荷を支持するように形づくられ,上部に積み重ねられる重量が 増すにつれて大きくなる.腰椎における椎体は,頚椎や胸椎に比べ,その高さはより高 く,また,より大きな横断面を持つ.腰椎はこのようにサイズが大きいため,脊椎のこ の部分が受けなければならないより大きな負荷を支持することが可能となる.よって,
椎体の圧縮強度は,頚椎から腰椎へと下方へ進むにつれて増加し,腰椎におけるそれは,
最下段に位置する
L5
において5 . 7
kNといわれている[ 1 8 ]
椎間板は機械的にまた機能的に非常に重要である.それは二つの構造物からなってい る.内側部分は髄核であり,外側部分は線維輪である.髄核は水を結合したグリコサミ ノグリカンに富むコロイド性のゲルよりなる液状の物質で, 70""""'90%の水分を含んでい る.線維輪は交文性に配列したコラーゲ、ン線維束を持つ線維軟骨からなり,層状構造を
6
2
章脊椎の構造,バイオメカニクスと脊椎固定術なす.格層の繊維の方向は椎体終板に対して
3 0
0 の傾斜を持っており,このような繊 維束の配列は高い曲げ,および回旋負荷に抵抗することを可能にしている[ 1 9 ]
椎間板の 重要な部分である軟骨終板は,硝子軟骨でできており,椎体より髄核および線維輸を分 離させている.また,椎間板は日常生活動作時に,圧縮,曲げ,ねじりの組み合わせのような複雑な 負荷を受けている.もし椎間板に切開を施すと,髄核が突出してくるが,これは髄核が 圧縮を受けていることを示している.椎間板は椎体を離そうとし,そのため輪状線維と 縦走靭帯に引張を生じさせている.正常な髄核は,静水圧的に作用しており,負荷を受 けている問でも圧力は均等に分布している
[ 2 0 ]
それゆえ,椎間板は運動分節で静水圧的 機能を備えており,椎体問でクッションとして作用し,エネルギーを蓄え,負荷を分散させている.
屍体における正常およびやや変性した腰椎髄核での椎間板内圧の測定は,負荷を受け ない椎間板での固有の圧力が
10N/cm 2
であることを示している[ 2 0 ]
椎聞におけるこの圧 力は靭帯の力によるものである.また,圧力負荷を受けた椎間板内の圧力は,単位面積 当たりで外より加えられた負荷の約1.5
倍であることが示されている.このようにして,圧縮負荷は椎間板を外側に膨隆させ,そして円周張力が繊維輸に加えられる.これに対 する繊維輸の引っ張り強さは,椎間板の外側で最も強くなるが,垂直方向へは
0 . 7 ' "
l . 4 MPa
,水平方向へはその約5
倍,さらに繊維方向へは水平方向の約3
倍の強度を持つ とされている[ 2 1 ]
しかし,変性した椎間板では,圧縮負荷が加わると上下方向の力が繊 維輸を通じて椎体終板に伝わるのみであり,このとき,繊維輸には均等な力が加わらず 一部がストレス集中のため壊れやすくなる.2 . 3 . 3 FSU
の後方部分後方部分は運動分節の動きを導いており,椎間関節の働きによるところが大きい.椎 間関節は一対の上下関節突起で形成されており,この突起の関節面は硝子様軟骨で覆わ れ,関節包と靭帯で固まれた滑膜関節である.椎間関節は脊椎運動のコントロールに最 も大きく関与し,運動の方向はこの関節面の向きによって規定される.そして,この方 向は,全脊椎を通じて横断面と前額面に関連して変化する.最上部の二つの頚椎を除い て,それらの関節は水平方向に向いているが,頚椎の椎間関節の関節面は水平面に対し て
45
0 傾き,前額面に対しては平行である.これらの頚椎椎間関節の配列は屈曲,伸 展,側屈,回旋を許容している.胸椎の椎間関節面は水平面に対し6 0 0
,前額面に対 し20
。の傾きをもち,側屈,回旋,そしてある程度の屈曲,伸展を許している.腰椎 部での椎間関節は水平面に対して直角に,前額面に対して45
。の傾きをもっている[ 2 1 ]
この配列は屈曲,伸展,および側屈を許容するが,回旋はほとんどできない.腰仙部の