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08 年恐慌後の世界構造 (1) 惟界主軸産業の中国アジア化と

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(1)

惟界主軸産業の中国アジア化と 0

8 年恐慌後の世界構造 (1)

自動車産業のグローバル再編成への新情報革命の意義 1 2 3

田中裕之

【要約】

本稿の主題は, 0 8 0 2 年恐慌以降の世界経済における中国世界の登場と世界的 主軸産業である自動車産業の再編成である. 8 0 年恐慌以降の米欧先進国経済の 停滞と中国アジア経済の急激な成長は,世界経済の牽引役がもはや米欧資本主 義中心ではなく,中国が世界拠点となるアジア経済を軸に,世界経済の動向を

とらえる必要性を示している.

このような現在の中国世界の登場が提起する問題は,大きく分けて二つにな ろう.まずは, 0 2 世紀世界構造の総括であり,二つの世界大戦をはさんだ,欧 米資本主義を中心とする甚軸通貨体制の総括と戦後体制崩壊の意味解析になる.

本論では, 9 2 9 1 年泄界恐慌との比較から, 8 0 年恐慌以後の基軸通貨問題,世界 主軸産業のグローバルな再編成の問題を提起する.

もう一つの問題点は,現在,中国が世界最大の自動車製造,販売拠点となり,

それによって提起される,自動車産業の分業システムや製品構造の変化である.

そこでは,自動車産業の憔界史的地位が問われる.

別の言い方をするならば,世界的主軸産業である自動車産業が, 0 2 世紀製造 業の生産システムをいかに代表するのか. どのような点で 9 1 世紀産業革命とは 異なり,今後どのような変化に直面するのか, という問題になろう.ここでは,

2

0 世紀,アメリカ型大鼠生産システムの総括が必要になる.

本論では,自動車部品とその分業・協業システムの独自性と今 B における変

(2)

1 2

4 立正大学経済学季報第6 0 巻 1 号

化を,製品構造と生産システムの転換の可能性として論及する. とりわけ,そ の変化の中心的担い手である,電子部品の増大,コンピューター制御による情 報制御システムの役割について問題を提起する.

本稿は, 2 1 世紀の新情報革命の役割について本格的な論及をせずに,基本問 題を指摘する形にとどめた.本論の続編として,パソコン,インターネット web システムの独自性の考察を,汎用大型コンピューターシステムとの異質 性を前提にしながら,次回以降,本格的に考察する予定である.

第一章は, 8 0 年恐慌後の甚軸通貨問題, ドル,ユーロ低下と人民元の評価に ついて問題提起し,世界的主軸産業の基本性格,中国経済の動力としての製造 業の基本問題について論及する.

第二章は,中国新興自動車メーカーの登場が提起する問題,自動車とデジタ ル機器,電子・電気機器産業との分業,自動車のコントロールシステムに論及 する.その際,大星生産における「互換性部品」製造の意義を考察し,電子制 御系部品の増大と情報ネットワークの意義を提起する.

キーワード 2

0 0

8 年恐慌,先進国産業の停滞と中国・アジア世界の蛋場,基軸通貨問題,世

界主軸産業,中国経済の動力,自動車部品の独立性,垂直統合システムから分

散ネットワークシステムヘ,電子制御システムと新情報革命

(3)

世界主軸産業の中国アジア化と 0 8 年恐慌後の泄界構造 (1) 2 5 1

目 次

第一章 2008 年恐慌後の先進国不況から中国アジアの登場へ 第一節 先進国産業の停滞から甚軸通貨問題へ

第二節 不況期の資本蓄積過程と主軸産業の世界拠点問題

第三節 中国アジア経済の動力としての自動車・デジタル機器産業の地位

第二章 自動車産業の再編成と電子情報系の役割

第一節 中国巨大自動車市場の登場と電子制御部品の増大の意味 第二節 20 世紀型製造業の独自性,「互換性」部品生産の意義

第三節 自動車産業のグローバルネットワーク化と情報制御系システムの意味

(4)

1 2

6 立正大学経済学季報第6 0 巻 1 号

第 一 章 8 0 0 2 年 恐 慌 後 の 先 進 国 不 況 か ら 中 国 ・ ア ジ ア の 登 場 へ

第一節 先進国産業の停滞から基軸通貨問題へ

第ー局面,先進国の産業停滞と第二局面,中国アジア産業の世界市場化 2

0 1

0 年の現在,世界経済の主要問題の第ー局面は, 2 0 0 8 年欧米金融市場の危 機に始まる金融恐慌から生じた具体的な産業恐慌,先進国産業の停滞である.

それは, 9 2 0 0 年前半期,アメリカ BIG3 のクライスラー, G M の破綻とアメリ 力自動車市場の収縮として現れた.現在,世界自動車製造の分業体制,販売流 通部門を含む膨大な関連産業全体のグローバルな再編成をもたらしつつある. 1

従って, 8 0 年金融恐慌から産業恐慌を経た世界経済は,先進国を中心として,

1 9 2

9 年世界恐慌と同様に,全般的な不況期に突入したと思われた.実際, 0 9 年 度の欧州の実質 GDP 成長率はマイナス 4 % 台,アメリカはマイナス 2, 4%,

日本はマイナス , 5 2% であった.

それに対して,新興国内の中国は . 7%, 8 インドは5,3% の成長率であった.

また,鉱工業生産の前年度比は,先進国がマイナスであるのに対して,それぞ れ11% と10.3% である.両国の製造業や索材・エネルギー産業の拡大は,先進 国の産業停滞から自立した動きをとっている. 2

とりわけ中国は, 9 0 年の自動車生産が,日本を越え,前年度比4 , 8 3% 増の , 1 3

7

9 万台で世界一となり,自動車販売においても,アメリカを超えて,前年比 4

6

, 2% 増の 0 6 3 , 1 万台の世界最大市場となった. 3 これは,現代型製造業の中 心産業である自動車産業において,中国が世界市場の生産・販売拠点となって おり, 0 8 年恐慌後のあらたな第二の局面を向えつつある.

1

本稿は, 9 0 0 2 年度経済理論学会第5 7 回大会 1 1 ( 月 3 2 日,開催地東京大学経済学部)にて 報告した,「0 8 年恐慌後の世界と資本蓄積論の意味」を追加修正した内容である.特に,

発表後の短期間において,中国アジア経済の発展と世界市場における牽引力が明確にな った事が,論点の大きな強調点であり,修正点となる.

2

外務省,主要経済指標より

3

中国汽車工業協会発表より.

(5)

泄界主軸産業の中国アジア化と 8 0 年恐慌後の世界構造 ) 1 ( 7 2 1 1

9 2

9 年世界恐慌に対する 8 0 0 2 年恐慌の部分性 0

8 年恐慌後の祉界景気循環における,このような先進国産業の停滞から中国 アジア産業の成長という展開は,どのような世界史的問題を提起するのか?欧 米先進国経済と中国アジア経済の今後の相互関係はどのような展開になるの か?まずは,次の二つの問題を提起してみる.

① 2 9 9 1 年世界恐慌は,第一次世界大戦後の 0 2 年代から, 0 3 年代大不況と 0 4 年代戦時経済への転換点であったが, 8 0 0 2 年恐慌は,世界経済に対するど のような転換点となるであろうか?両者の同質性と奥質性は何か?

② 現在のヨーロッパ金融市場の不安定性は, 8 0 年恐慌後の世界経済の転換 にどのような役割を果たすのであろうか?

①について, 9 2 9 1 年世界恐慌は,第一次世界大戦後のイギリス産業の後退を 決定付け,国際金融市場におけるポンド体制の崩壊,通貨プロック園の分断を もたらした.すなわち,それは大戦後の国際政治経済システムの崩壊,資本主 義の世界システム自体の「危機」への転換点であった.

それに対して,第二次大戦後のドル甚軸体制の「危機」は, 1 7 9 1 年金ドル交 換停止と,国際変動為替相場制への転換をもたらしたが, ドルの甚軸通貨の地 位を一応保ちつつ,国際政治経済システムの崩壊へ至らなかった.だが, 8 0 年 金融危機は,現在,南欧• 東欧財政の悪化, ヨーロッパ証券市場の悪化,ユー ロ下落というヨーロッパ金融市場の不安定性を一気に浮上させている.この不 安定性は, 9 9 2 1 年型の匪界システムの「危機」を示しているのであろうか?

②に関わるが,このヨーロッパ金融市場の不安定性に対して,製造業を主体

とする中国アジア経済は,相対的に自立しており,さらに先進国産業が中国ア

ジア経済に依拠せざるを得ないのではないか.それならば, 8 0 年恐慌の波及過

程が「部分的」であり,欧米先進国の局所的な事態に留まることを意味する.

(6)

1 2

8 立正大学経済学季報第 0巻 1号 6 ドル基軸通貨からの転換問題,人民元の地位

ここで,ヨーロッパ金融市場の不安定性を,国際通貨体制の問題として考え てみたい.欧米金融市場の現状は,ユーロ低落の背後に, ドルの基軸通貨とし ての根本的な地位低下とユーロによる代替機能の困難という問題が存在する.

言い換えると,ユーロ圏の不安定性は, ドルを基軸通貨として維持する国際 貿易関係,金融機構の不充分性として登場している.それは新たな問題を提起 している. 8 0 年恐慌以降の現在の第二局面によって, ドル基軸体制からの転換 と新たな基軸通貨への移行問題である.この問題の世界史的意味,原理的な意 味は何か?新たな甚軸通貨とは何か?以下にその要点をまとめてみる.

1 )

0 8 年恐慌の直接の原囚である金融資産バプルの「世界史」的背景は, 1 7 9 1 年の金ドル交換停止以降のドルの過剰供給と過剰流動性である.現在の 8 0 年恐 慌以降のアメリカ財政支出の拡大と国際収支の悪化とユーロ圏の不安定性によ

, ドルが,金による裏づけの無い国際的決済手段の地位低下を意味する.

は, •金融

済時に必要となる世界貨幣である.世界貨幣は, 9 1 世紀イギリスの金本位制下 では金であり,ポンドの価値を金で評価する国際的基準であった.当時は,好 況末期,ピーク時の金流出が深刻な問題であった.いわゆるピール条例 ( 4 4 1 8 年)をめぐる論争は,世界の中央銀行イングランド銀行の発券高と金準備,対 外決済準備の連動関係をめぐる議論であり,現代への「原理的」論点である.

3 ) 1 9 世紀ピール条例期の基軸通貨ポンドの評価は,実際,ロンドン金融市場

をセンターとして,機械制大工業下の紡績産業を軸とするイギリス綿工業製品

の輸出競争力によって支えられていた.それに対して, 8 0 年恐慌後の世界にお

いては,糀界市場の生産・販売拠点となりつうある中国における決済手段であ

る「人民元の地位」が問われているのではないか?

(7)

祉界主軸産業の中国アジア化と 0 8 年恐慌後の世界構造 (1) 9 1 2

基 軸 通 貨 = 国 際 決 済 手 段 を 何 に よ っ て 評 価 す る か ?

以上の桔軸通貨の世界史的地位より, 08 年恐慌後の世界は, ドルを評価する 甚 準 に つ い て , 「 甚 軸 通 貨 を 測 る 基 準 」 は 何 か ? と い う 原 理 的 問 題 に 直 面 せ ざ

るを得ない. 19 憔 紀 の ピ ー ル 条 例 の 現 代 的 意 味 は , 甚 軸 通 貨 を , 最 終 的 に 金 と いう商品貨幣によって測る必要性であった.

そ れ を 支 え た 現 実 の 貿 易 関 係 で は , 決 済 手 段 と し て の イ ギ リ ス ポ ン ド の 価 値 を,自国の輸出高,つまり最も輸出競争力の高い商品によって図ることであり,

当 時 の イ ギ リ ス 綿 工 業 製 品 と い う 世 界 市 場 商 品 に よ っ て 評 価 す る こ と に な っ た. 4 第 二 次 大 戦 後 の ド ル 体 制 に お い て , そ れ に 対 応 す る も の は , ア メ リ カ 輸 出 商 品 の 競 争 力 の 高 さ と , そ の 生 産 甚 盤 で あ っ た ア メ リ カ 型 大 鼠 生 産 シ ス テ ム であった. 5

中 国 ア ジ ア 産 業 の 世 界 市 場 拠 点 化 の 今 H は , 先 進 国 主 要 産 業 の グ ロ ー バ ル な 再 編 成 と , 新 た な 基 軸 通 貨 転 換 へ の 過 渡 期 を 意 味 す る と 言 え よ う . さ ら に 提 起 される問題は,中国輸出商品と最終的な金による人民元評価の可能性である. 6

とはいえ次節では,現在の世界貿易,甚軸通貨問題の意味は,景気循環過程,

不況期の資本蓄積の理論的問題に立ち返って検討してみよう.

4

今 B のような変動相場制から,甚軸通貨と金との交換という金本位制への転換の主張は,'

現実的でないように思われる.だが, 8 0 年恐慌を通じた,欧米金融市場の不安定化にお いて,金市場の急高騰をとらえる際,単にグローバルな短期資金のリスク・ヘッジ,選 択投資の結果ではなく, ドルの地位低下と「商品貨幣」としての金の根本的役割を再確 認できる.

5

アメリカ型大鼠生産システムの意義については,本稿 2 章 2 節において言及する.アメ リカの輸出産業,泄界市場産業の競争力の低下は,アメリカ製造業の国内の産業投沢の 低下へと直結し, ドルの過剰流動性を促進した.また IT 産業登場による証券市場パプ ルは,新興産業登場にともなう産業投資,設備投資拡大要因である.つまり,金融資産 パプルと言えど,実体経済から遊離した単なる投機的運動ではなく,産業投森,設備投 森需要要因に決定されるのである.単なる金融暴走によって恐慌を説明することはでき ない. 9 1 世紀以来の産業投資に向かう証券発行市場と既発行株の売買市場の異質性と連 関関係が問われる.田中 9 ] 0 0 2 [ 第三章,第四節を参照のこと.

6

実際に,人民元の金本位制,甚軸通貨化には,中国金融市場の自由化や銀行制度の改革

が必要となるため時間を要する.ただし現在,東南アジア域内の人民元決済拡大,アジ

ア域内決済手段としての役割拡大は,甚軸通貨の初期段階への端緒と言えよう.

(8)

1 3

0 立正大学経済学季報第 0巻 1 6 号

第二節不況期の資本蓄積過程と主軸産業の世界拠点問題 不況期の資本蓄積の問題点

0

8年恐慌以降の世界経済の第二局面分析の課題は,世界産業構造の再編成,

その主軸産業の再編成をとらえる理論問題であり,「不況期」の成長の動力は 何か?という現実的課題に関連している.その課題の前提となる,以下の原理 的論点を示してみよう.

・不況期の資本蓄積の動力は何か?

・景気循環とは,一国経済循環か,それとも世界市場循環か?

恐慌は,一般的に好況期から不況期への転換点,媒介点と言える.すると,

好況期に対する,不況期の資本蓄積の特徴,すなわち「不況期の資本蓄積の動 カ」を再確認する必要がある.

「資本蓄積の動力は何か?」という問題は,さらに資本蓄積の現実的,全体 的な運動機構たる景気循環過程が一国循環なのか,それとも泄界市場循環なの かが問われる.これは,景気循環過程論が前提とする現実的循環の意味が問わ れる.

資本蓄積過程の原理的パターンは,

働力の相対的過剰人口の形成,

相対的過剰人口の吸収として示すことができる. 7

この不況期と好況期の蓄積パターンの循環過程を周期的に示すのは, 9 1 性紀 半ば,産業革命確立期以降のイギリスを中心とした,景気循環であった.問題 は,この蓄積過程が,イギリス一国内の産業全般の成長過程であるのか,どう か?

7

この景気循環過程に則して,森本蓄積の現実的動力を提起したのは,古典派経済学を批 判的に継承したマルクスの『資本論

J

体系である.『衰本論』の資本蓄積論は,実際には,

ランカシャーの新興紡績産業における機械制大工業システム導入と設備投資拡大を前提

としている.そして綿工業全体の蓄積拡大が,社会的再生産を牽引する動力として考察

されていると言って良い.

(9)

世界主軸産業の中国アジア化と 0 8年恐慌後の世界構造 ( 1 ) 1 3 1

世界市場における主軸産業・基軸通貨の地位

不況期の蓄積過程は,恐慌期の金融市場の決済危機による製品販売市場の全 般的縮小を媒介に,人員整理,固定設備の廃棄,そして固定設備更新の過程で ある.当時イギリスに則して,その過程の特徴を以下に示す.

1 ) 実際には,機械制大工業が採用されたランカシャー地方の紡績産業にお ける機械設備の更新を伴い,イギリス綿工業が自己拡張的蓄積を行うことで,

次の好況期の社会的再生産を牽引するものであった.

2 ) さらに,綿製品の原材料,製品の輸出入を組織するものは,貿易金融ネ ットワークであり,ロンドン貨幣市場を中心とする国際決済市場と中央銀行 利子率を頂点とする,金利体系によって,資本蓄積過程を統括していた.

3 ) イギリス綿工業の競争関係は,インドを最大輸出国とする,国際的な世 界市場競争関係であった. 8 その世界市場内部の主軸産業,基軸通貨が,ラ

ンカシャー綿工業,ロンドン貨幣市場におけるポンド為替であった.

以上の1 9世紀の周期的景気循環過程の特徴は,イギリス一国循環や国民経済 相互の全般的競争関係ではなく,特定の産業が主導する世界市場競争による循 環と言える.つまり,ランカシャー新興紡績産業における固定設備の更新を伴

う産業再編成が,次の好況期の甚盤となる国際的景気循環であった.

8 は, • ,

た家内工業としての手織綿布であり,他方海外においては印度の手織綿布であった.

, は

とであって,それは第五表のごとき急転直下の下落を見せている.すなわち新しい生産

法とそれによる生産力の如実に示している.(ハーグリーヴズのジェニー機によって同一

時間における一人あたり紡糸能力は2 0 0 倍に上昇したという.)_また印度綿糸との競

争は第六表のごとく英国品のほうが割安となるに至って,十七一十八惟紀におけるとは

逆に,今度はイギリス綿製品の印度流入となった.」田中 ] 6 5 9 1 [ 1頁 2

(10)

1 3

2 立正大学経済学季報第 6 0巻 1 号

第三節 中国アジア経済の動力としての自動車・テジタル機器産業の地位 中国成長の動力は何か?国民経済の内需と景気対策主導論の問題点

1 9 世紀自由主義段階の国際的景気循環過程において,とりわけその不況期の 動力は,ランカシャー新興綿工業における紡績産業の機械設備の更新と,原材

, , •金融

それに対して,今日世界経済を牽引する中国アジア経済の成長の動力,資本 蓄積の動力は何か?ということがあらためて問われるであろう.一般的見解は,

以下のような,国民経済に対する外需停滞と公共投資による内需拡大の二要因 である.

・ 0 8 年恐慌による北米市場向けの華南沿岸部輸出産業の停滞

・ 0 8 年恐慌後の公共投資 ( 4 兆元)の内需拡大投資による成長拡大

中国の貿易収支は,確かに 0 9 年の前年との比較では,輸出,輸入共に減少し ており,名目 GDP は , 4 兆 5 1 9 5 億ドルから 4 兆 9 0 9 0 億ドルヘと , 8 9% の成長 率 ( 0 8 年 , 6 9 % ) で伸ぴている.その意味で,内需要因は当てはまるかもしれ ない.,

また, 4 兆元の政府投資は直接には,道路インフラストラクチャー,建設関 連業界への直接的効果に留まるが, 2 0 1 0 年現在も継続している政府補助金,っ まり,農村への家電購入への補助金である「家電下郷」,自動車の減税や買い 替え需要への補助金は,現実的にデジタル家電,耐久消費財市場,自動車市場 拡大の一要因にはなり得る.

だが,今 H 中国の自動車,デジタル機器の販売市場は,単なる耐久消費財の 初期的普及期というだけでな<'グローバルな拠点の地位を獲得している.そ の発展動力は,政府の需要政策によるものか?

,中国の 0 0 8 2 年の貿易収支は, 6 0 6 , 3 億 8 2 0 9 万ドル,輸出 1 兆 0 6 4 3 億 0 0 9 0 万ドル,輸入 1 兆 3

2 4

5 億 0 0 6 0 万ドル, 0 0 9 2 年の貿易収支は, 5 9 4 2 , 億 0 0 9 万ドル,輸出 1 兆 2 0 1 6 億 0 0 0 6 万ド

ル,輸入 1 兆 5 5 億 0 0 6 0 万ドルであった.中国税関総署貿易統計より

(11)

泄界主軸産業の中国アジア化と 8年恐慌後の世界構造 ( 0 1 ) 3 1 3

政策的要因か,それとも現代型製造業のグローパル拠点化か

現在の中国経済の成長動力を,消費需要への景気刺激策,財政出動,あるい は引締め政策の有効性に求めることは,中国の自動車やデジタル機器産業の展 開を,先進国マクロ政策との比較関係によってとらえることになる. 0 1 すなわ ち,先進国経済に対する発展段階過程ととらえる新興国経済への政策的な有効 性においてとらえることになる . n

しかし,一国国民経済への政策的有効性に依拠して,現在の中国経済の成長 の軸となる自動車,デジタル機器産業の形成や発展を説くことは困難である.

自動車やデジタル機器といった主軸産業の展開する中国経済は,先進国製造業 の生産拠点であり,グローバル競争市場の中心地域,グローバルな産業再編の 中心地域となりつつある点を無視できない.

また,自動車やデジタル機器といった耐久消費財は,単なる消費財とは異な

, • 製造・販売・アフターサービスを含む複雑な分業システムを必要と する.そのため,現在の中国経済の発展の動力として,具体的な製造過程や分 業システムの特徴をとらえ,その世界史的意味を問う必要がある.次章以降,

次の論点に則して考察していくことにしたい.

中国自動車産業の世界拠点化とグローバルな分業システムの再編成 自動車部品の独自性と電子制御系部品増大の意味

1

0

ケインズの有効需要説の中心問題は,投箕需要の減退という 0 年代大不況下の産業の 3 9 1 設備投賽需要減退であり,マクロ政策の一般的定式とは異なるのではないか.また, C . P

. キンドルバーガーは, M . フリードマンの大不況論が,「一国的であり,貨幣的であり,

政策決定にかかわる」(キンドルバーガー ] 2 8 9 1 [ 2頁)点を批判している.

1

1

新興国 B R I C S とは,国民経済成長レベルの独立した集合体にすぎない.中国,インド は,そもそも古代以来のインド・アーリア文化圏と中国東アジア文化園との明確な違い

, は欧 • 投衰対象の選択として,ョーロッパの

外部のアジアとして位置づけられていたが,中国本土を軸とする世界市場が進展するこ

とで,今後中国東アジアとインドとの分業関係や貿易関係という内在的な相互連関展開

が深まるであろう.

(12)

134 立正大学経済学季報第 60 巻 1 号

第二章 自 動 車 産 業 の 再 編 成 と 電 子 情 報 系 の 役 割

第一節 中国巨大自動車市場の登場と電子制御部品の増大の意味 世界最大の中国自動車市場の窒場と中・小型車販売拡大

2009 年 1364 万台という世界最大規模の中国自動車販売市場の基本構図は,従 来の外資合弁企業が自動車販売数全体の半分以上を占めるが,その車種の内容 が変わりつつある.その点を,顕著に示す例が,図 l の 2009 年中国釆用車販売 の上位 0 1 位の車種と企業とである.

11

外資合弁企業の販売業績は高いが,その 車種の特徴は,従来の高級セダンや大型車から中・小型車へと移りつつあ

る. 2 1

図 1 2009 年中国乗用車販売上位 1 0 位

順 位 車 種 企 業 販 売 台 数

1 F 3 BYD (比亜迪) 9 2 万 0 0 0 1 台

2 ビューイック・エクセル 上 海 G M 4 2 ガ 1 0 0 1 台 3 エラントラ悦動 北京現代 3 2 万 9 4 0 0 台 4 ジェッター 一汽 vw 2 2 万 4 9 0 0 台

5 サンタナ 上 海 vw 0 2 ガ 5 6 0 0 台

6 アコード 広汽ホンダ 7 1 ガ 5 4 0 0 台 7 エラントラ 北京現代 7 1 万 6 0 0 1 台 8 Q Q r r y C h e (奇瑞) 1 6 ガ 9 9 0 0 台

, カローラ 一汽トヨタ 5 1 万 7 5 0 0 台 1

0 カムリ 広汽トヨタ 5 1 万 6 2 0 0 台

11

中国汽車工業協会統計より

12

日経 BP 社 編 0 ] 1 2 0 [ 『日経ピジネス』では,中国地場メーカーの躍進を,政府の振興策

の結果ととらえている.だが,その観点からは, BYD な ど 充 電 式 電 池 や 携 帯 用 電 池 か

ら参入した新興企業の独自性.新興企業の背後に存在する,無数の部品サプライヤーの

地域的集積の特徴を見落としてしまう.

(13)

世界主軸産業の中国アジア化と 8 0 年恐慌後の世界構造 ( 1 ) 5 3 1

地場新興自動車メーカーの躍進と H E V , E V の環境技術開発の進展

いわば販売車種の多層化という変化を伴いつつ,外資合弁企業にとって中国 自動車市場の地位は重要である.破綻後の新生 GM は,中国を中心とした新 興国市場による生産・販売を拡大しており,従来の中小型車を主体とする日

• 韓国そして, ドイツ,ヨーロッパの自動車産業,先進国自動車産業にとっ て,中国アジア世界市場は,重要拠点化を意味していると言って良い. 3 1

さらに特徴的なことは, BYD (比亜辿汽車)や奇瑞といった中国地場新興 メーカーが躍進しており,販売車種の中小型化への担い手になりつつある.と

りわけ,地場民間メーカーの BYD は,広束省,深訓の世界的蓄電用電池メー カーのベンチャー企業である.この企業は, リチウムイオン電池生産を甚盤に,

2 0 0

8 年末には F 3 D M という,プラグ・イン・ハイプリッド車, P H E V u g P l ( i

n

H y b r i d c i r t c e l e ) e l c i h e v の世界初の最産型販売を行っている.また,将 米の電気自動車, EV ( c i r t c e l E ) e l c i h e v の世界的販売を予定しており,先進 国の海外乗用車メーカーの H E V , EV 開発・販売競争に先行する形で,グロ ーパル市場に登場している. 4 1

このような,「中国地場新興企業の躍進」,「中・小型車両における新型車 H E V , EV 環境技術開発の促進」という事実は,惟界最大の人日国が,本格 的なモータリゼイションを開始しただけでなく,中国自動車市場が,外資主導 から中国企業が躍進する,あらたな技術革新を含むグローバル競争化の拠点と なりつつあることを意味している.

”新生 G M 1 - 3 月期決麻において初めて 2 1 億ドルの黒字に転換した.その最大の理 由として,欧州以外の海外市場での総販売が, 4 5 % 増の 3 0 1 万台,うち上海通用五菱 3 3 万 台となっている.それに対して北米 6 5 ガ台,欧州 , 5 0 % 減の 0 4 万台となっている. r s 本 経済新間』 0 1 0 2 年 5 月 8 8 1 朝刊より

"BYD をはじめ,電子・電気機器の異業種からの新興ベンチャー企業が,中国自動車産

業に参入して成長しつつある点は,世界主軸産業の二つの特徴を提示する. 1 ) 広東省,

深耕 l という中国最大の電気・電子機器生産地の地域密集型の集積性とその世界拠点化

2 ) 自動車産業に対して, リチウムイオン電池をはじめとした充電部品や電子制御部品

の電子・電気機器産業との分業・協業関係の展開.

(14)

1 3

6 立正大学経済学季報第6 0 巻 1 号 自動車部品の「電子化」の意味は何か?

世界最大の中国自動車市場は,地場新興企業の躍進と新規環境技術開発が同 時に進むあらたなグローバル競争市場であるが,この REV (ハイプリッド 車)や EV 等の技術開発,最産化の前提となる,今日の自動車の製品構造や製 造過程の技術的変化という厭要問題を押さえておこう.

自動車製品は,数万点の自動車部品から成り立っている.現在,エンジン車 両の中心的金属部品が,電子部品やコンピューター甚盤によって置き換えられ,

金属部品点数の減少,部品の軽鼠化が進みつつある.このような自動車部品の

「電子化」の特徴とその意味を,以下にまとめてみる.

1) 9 7 0 1 年代以降,エンジンをはじめ, トランスミッション,サスペンシ ョン,プレーキの制御系システムに,コンピュータ基盤を中心とする電子制 御系部品が拡大し,部品の「電子化」,「モジュール化」が進みつつある.

2) エンジン制御系の電子制御化から,動力伝達系,駆動系への電子制御 の拡大は,従来の内燃機関を動力とする自動車の機械的制御を超える,あら たなコントロールシステムヘの重大問題と言えよう.

3) 自動車製品において,精密金属部品間の機械的・メカ的制御に対する 電子制御の地位が高まると同時に,個々のユニット部品の独立化,部品サプ ライヤーの再編成が生じる.

自動車は,エンジン点火装置やライトなどの甚本的な電装部品が存在し,電

気部品系統への電子制御の拡大が進展した.それに対して,動力装殴,動力伝

達系,駆動系等の機械装岡における,電子制御部品の拡大の意味は,大きく典

なるのではないか.

(15)

匪界主軸産業の中国アジア化と 0 8 年恐慌後の世界構造 (1) 137

電子制御系部品の増大と部品ユニットの独立性が提起する問題

そもそも,内燃機関を動力とする自動車の根本課題は,エンジンの点火装箇 と燃料供給系の正確さと安全性の確保である. 5 1 さ ら に , そ の 内 燃 機 関 の 機 械 的動力部分を中心に,動力伝達,駆動系という碁礎部品を軸としたメカ的階層 秩序と,機械的調節よる制御コントロールであった.

その甚礎部品に対して,コンピューター基盤による電子制御部品の比重が高 まることは,個々の部品ユニットの独立性を促す. 6 1 そ れ は , エ ン ジ ン 自 動 車 の内部構造,制御システムの質的転換の可能性を示す. 7 1 他方で,部品サプラ イヤーの再編成を促進し,自動車産業と,電子部品やデジタル機器の産業との 密接な分業関係が課題となる. 8 1

中国は,広東省,深訓をはじめ,デジタル機器,電気・電子部品の密集した 地域的集積産業が散在し,既に匪界拠点となっている.それを軸に,今後の自 動車産業のグローバルな再編成をとらえる必要がある.

その前に,自動車内の機械的部品の甚本的性格を明らかにしておきたい.そ の性格は,現代型製造業の根本的特徴であり,大屎生産システムの今日的意味 が問われている, と言ってよい.

”村沢 ] 9 0 0 2 [ 7 7 頁 ,

“現在, HEV・EV は,電子制御システムの課題が大きい.特に EV の内部構造は,エン

ジン車とは質的に巽なり,新たな制御システムの課題が重要問題であろう.

17

エンジンの燃料供給系における,インジェクション,キャプレターといった燃料噴射や 気化器へのコンピューター甚盤の搭載による制御系システムの進展から,他の甚本部品 への制御系システムの高度化は,機械的動カ・作動へのコントロールシステムから,電 子情報コントロールシステムヘの転換をもたらしているのかどうか,という問題を提起 する.それは,パソコン,インターネットシステムとの比較によって明らかになるであ ろう.既に,ユニット部品の独立化と部品のモジュール化が最も進んだ,パソコンの内 部構造との比較である.この点は,第三節にて考察する.

"GM から 9 0 9 1 年代に独立した,デルファイに代表されるように,電子制御系部品メーカ

ーは,他の自動車メーカーヘの供給や中国における部品供給を既に行っていた. 0 8 2 0 年

恐慌以降,アメリカ BIG3 の再建と共に,部品メーカーの中国を含むグローバルな供給

ネットワーク化,あるいは異業種への供給といった方向へ向かわざるを得ない.

(16)

1 3

8 立正大学経済学季報第 0 6 巻 1 号

第二節現代製造業の独自性, r 互換性」部品生産の意義 フォード大量生産システムの登場と互換性部品加工の特徴

自動車は,動力装置と駆動系を軸として多数の複雑なユニット部品で構成さ れており,電気機器と並び, 0 2 憔紀型製造業を代表する機械加工・部品組立製 品であるが, とりわけ高度なメカ的システムの耐久消費財である.

今日の一般大衆車である自動車の大鼠生産システムは, 1 9 0 8 年のアメリカ,

H . フォードによる, T 型フォードの製造過程として登場する.この大最生産 の内部構造,組織編制の特徴に則して,自動車部品の意味を考察してみよう.

まずは,その内部編成の基本は,「移動型組み立てライン」にあるのか,そ

• 製造過程自体にあるのか,両者の関係の問題を,以下の点か らみていくことにしよう.

1

) T 型フォード車の大抵生産の甚礎は,多種多様な「互換性」部品の生 産である.部品の互換性,均一性には,治具,取り付け具,ゲージ等の多種 多様な機械,設憤機器,測定器の使用と,工作機械による加工を必要とした.

2 ) フォード生産システムの特徴は,この互換性部品の製造過程と組立過程 の内製化であり,自社生産の「垂直統合型」システムである.その条件は,

単一車種 T 型フォードの大鼠生産と,専用工作機械の合理的設置を中心と する各部品製造過程の並列化と連続化であった.その結果として,組立ライ

ンが確立するのであって,その逆ではない.

3 ) 多種多様な互換性部品の組立による自動車製品は,その生産販売の規模

の拡大要因として,高価で高度なメカ的耐久消費財へのアフターサーピスの

拡充が必要になる.その際,修理・メンテナンスにおける互換性部品の優位

性を強調することができる.

(17)

世界主軸産業の中国アジア化と 8年恐慌後の世界構造 ( 0 1 ) 3 9 1 図 2 2 0世紀型機械加工・組立製造業の二つの類型

「フォードシステム」→互換性部品生産,機械の合理的設置と労働の標準化

D

「ヨーロッパ型システム」→熟練機械工による加工,仕上げの摺り合わせ

大屎生産の内部構造やその世界史的意味をとらえる際,多数のユニット部品 加工の正確化,最終仕上げの加速化と量産可能化の条件が問われる.それが,

• 製造の独自性と言えよう. 1 9

だが,当時ヨーロッパの内燃機関による自動車生産は, 1 8 9 0 年代のダイムラ ー以来,熟練機械工の経験による部品加工と製品の特殊な仕上げ加工に依拠し ており,部品の互換性生産ではなかった.図 2 による,ヨーロッパ型生産シス テムであり,当時のアメリカの製造業も同様であった. 0 2

互換性部品生産は,アンテベラム期のアメリカ陸軍軍需部門,小火器製造の

「エ廠方式」,つまり「専用工作機械」と「合理的な治具,取付具,ゲージ・シ ステムの使用」 1 2 に始まる.それは,設罹機器や工作機械による加工技術課題

と,研究開発との一体化等,コスト高要因のためであった. 2 2

フォードシステムの独自性は,専用工作機械,測定器具の合理的・連続的設 置と製造過程の同時並列性を前提とした,移動型組立ライン,労働の標準化の 確立,自社内製の「垂直統合」システムであった.後の組立工の H 給 5 ドル制

は,このシステムを補完したと言えよう.

1

9

ハウンシェル ] 8 9 9 1 [ 第六章を参照のこと.本稿のフォードシステムの互換性部品生産 規定は,甚本的にハウンシェルの研究に依拠している.

20

同上 9 頁

21

同上 9 頁

2

2

同上第一章を参照のこと.互換性部品生産に依拠した大祉生産システムは,単なる機械 化と労働の単純化を意味しない.労働の標準化と同時に,工作機械や工具の設臨と更新 の合理性が要求する研究開発と生産の一体化,金属部品加工における技術労働,金属ユ

• 自発性が残るとみて良い. A . P . スロー

ンも同様のことを述べている.(スローン ] 3 0 0 2 [ 4 4 3 頁 - 3 4 5 頁)

(18)

1 4

0 立正大学経済学季報第 0 6 巻 1 号

フォードシステムから G M スローンシステムヘ,新たな大量生産システム フォード型大鼠生産システムは,同一車種の大衆車の低価格化を促進し,更 に,部品の互換性による修理やメンテナンスの簡略化,一般ユーザーやディー ラーによる対応可能化をもたらした. 2 3 それは,アフターサービスを始めとす る,量産型メカ的耐久消費財の販売マーケッティング上の重要要因であった,

と言えよう.

しかし, 1920 年代半ば, T 型 フ ォ ー ド に 対 し て , 強 力 な 競 争 相 手 が 登 場 す る.それは, G M の巧みなマーケッティング戦略によるシポレーであった.

元々, G M は,キャデラック,オークランド,エルモア等の異なるメーカーの M & A によって拡大した企業であった. 20 年代初頭,新 CEO, A . P . スローン の下で,オート・ローン,ディーラーの組織化,互換性部品による異なる車種

とモデル・チェンジの分権的生産と部品メーカーの組織化を確立した. 4 2 それによって,フォードは, T 型フォード車の 1923 年 の 市 場 シ ェ ア 1/2 以 上から, 1926 年の市場シェア 1/3 以下に低下し, 1927 年 に , 新 車 種 A 型車の 発表, 30 年代に定期的モデル・チェンジヘの転換を余俵なくされる. 2 5

従って,アメリカ大量生産システムは,あらたな段階に突入した.フォード の単一車種による自社内製型の「垂直統合」的生産システムから, G M スロー ン型の異なる車種生産,部品メーカーとの分業・協業システムによる大益生産 段階への移行である.図 3 は,その対比関係を簡略に示した.

だが,フォードの垂直統合型システムからの転換,すなわちモデル・チェン ジと異なる車種生産への転換は極めて困難な問題を提起した.

23

バチェラー ] 4 9 9 1 [ 2 6 頁

24

「 GMAC は卸売り,小売り両方を融賽の対象としている.卸売りプランによってディー ラーには,担保荷物保管証その他の証明書と引き換えに製品を卸すようになった.ディ ーラーは卸し代金を支払った時点で製品の所有権を手に入れ,消費者に販売する.仮に 代金支払いが遅れたり,契約条件が守られなかったりした場合には, GMAC が製品を取 り戻す権利を持っている.」スローン ] 3 0 0 2 [ 4 4 3 頁 -345 頁 , GM の金融子会社であった GMAC は , 8 0 年恐慌による決済危機,オートローン,住宅ローン等の不良債権化によっ

て,公的資金導入による再建下に入った.

25

パチェラー ] 4 9 9 1 [ 1 9 頁 -92 頁

(19)

世界主軸産業の中国アジア化と 8 0 年恐慌後の世界構造 ( 1 ) 1 4 1 図 3 アメリカ型大量生産の二つのシステム

「フォードシステム

J.

互換性部品生産と組立の 内製型大鼠生産と単一車種 生産

◆内製一貰性生産

⇒ 部品,機械の内製

⇒ 「垂直統合」型の典型

◆単一車種, T 型モデル

⇒ 低価格販売

⇒ 高賃金インセンティブ

(生産システムの結果)

l

L~

「 GM スローンシステム」

互換性部品生産と組立の 分散型大量生産と定期的モ デルチェンジ

◆分権的生産システム

⇒多数の部品・自動車メーカーの M&A

◆多様な車種とローン販売

⇒モデルチェンジ

⇒オートローンの起動

⇒フォードを巻き込み,大衆消費 を形成する.

< '透苓 I

p~ i

L l IJ IJ~ ・組立

[本社(財務等)]

( 図 4 を参照のこと.)

(20)

1 4

2 立正大学経済学季報第 0 6 巻 1 号

垂直統合型システムの限界と互換性部品の分業・協業システムの意味

実際,単一車種 T 型フォードのミシガン州ハイランドパーク工場内は,各 金属部品加工のエ作機械が,特定部品目的の専用機器であり,その配岡の密着 性と各製造過程の連続性による全体的レイアウトが完結していた. 6 2

そのため,互換性部品生産の技術的基礎となる測定器や工作機械の更新, レ イアウトの抜本的変換による新車種生産,モデル・チェンジは,困難であった.

また,「新しい冶具や取付具,ゲージの生産に加えて,工作機械の再整備や調 達にかかった総費用は約 1800 万ドル」. 7 2 という資金調達問題も生じ,新車種 A 型フォード生産への変更は容易ではなかった.

それに対して G M では,「モーターとアクセルはミシガン州フリント, トラ ンスミッションはオハイオ州トレンド」で製造され,「他の何千もの部品が外 部契約者から購入され,車は全国に点在した四つの工場で組み立てられた.」 28

そのため,新車種,モデル・チェンジヘの対応が可能な分権,分散型生産シス テムを形成していた.とりわけ,フォードとは異なり,さまざまな加工対象や 内容を扱う,「汎用工作機械」に甚づく製造であった. 9 2

以上, 20 匪紀大量生産システムの独自性は,多種多様な部品の互換性とその 製造過程の分業・協業関係に始まり,移動型組立ラインはその結果に過ぎなか った. 3 0 次節では,フォードから G M へと展開した,互換性部品による分業・

協業関係の今 H 的変化の意味を,考察してみよう.

26

ハウンシェル ] 8 9 9 1 [ 9 3 5 頁 -374 頁

27

同上 5 3 6 頁,また A 型車等への転換のための最終的経費は,「フォード自動車会社の社 史編纂者によって,二億五千万ドルと記述された.」パチェラー ] 4 9 9 1 [ 0 0 1 頁

28

パチェラー ] 4 9 9 1 [ 5 9 頁

29

ハウンシェル ] 8 9 9 1 [ 3 3 3 頁 -334 頁,当事フォードが考慮していなかった,新たな重要 問題は.自動車ポディ形状のモデル・チェンジにおける「金型とプレス鋼板」の「精巧 さ」の課題であった.例えば,プレス時の鋼板の「戻り」の計測問題である.(同上 1 6 3 頁より)

30

ハウンシェル ] 8 9 9 1 [ 2 0 3 頁 -318 頁,移動型ライン,コンベアー自体は,金属加工や部

品互換性の技術を必要としない,精肉や製粉など食品加工業が早期に採用していた.テ

イラーの時間動作研究は,互換性部品生産の技術的問題を考察の対象外としている.

(21)

世界主軸産業の中国アジア化と 8 0 年恐慌後の憔界構造 (1) 3 4 1 第三節 自動車産業のグローパルネットワーク化と情報制御系システムの意味 アメリカ型大量生産システムのヨーロッパにおける地位とその限界

前節でみたように,互換性部品による大聾生産は,必ずしもフォード型の垂 直統合型システムを必要とせず, G M スローン型の部品メーカー・サプライヤ ーの並列的,連続的組織化による分業・協業関係として展開した.そのような アメリカ発の大鯖生産システムのその後の世界的展開,特にヨーロッパにおけ る甚本問題を,以下にまとめてみた.

1) 1 9 2 0 年代までのフォードシステムのヨーロッパヘの展開は,イギリスの モリスやオースティン,フランスのルノーやシトロエン,イタリアのフィア ットにおける部品互換性,移動型ラインの導入であった.ただし,そのシス テムの確立は, 1 9 3 0 年代以降のドイツ vw やフォードの工場を除けば,第 二次大戦後の 50 年代以降になる. 1 3

2) ヨーロッパにおける最大問題は,アメリカ市場に対するヨーロッパ市場 の狭小さ,単一車種生産の限界であり, G M スローン型への変更,従来のヨ ーロッパ型システムとの並存を余俄なくされた. 32

3) アメリカ国内での大鼠生産システムの主導性の確立は, 5 0 1 9 年代後半で ある. 1955 年は,アメリカ BIG3 の国内自動車販売のシェアは95% であり,

7 0

0 万台を超えるピークを迎えた.そこから同時に,ヨーロッパ, H 本釆用 車メーカーの世界的進展と共に, BIG3 の地位低下も始まった. 3 3

31

ウォマック.ルース,ジョーンズ ] 0 9 9 1 [ 1 6 頁

32

6 2 9 1 年におけるフォードの米国生産祉は, 0 0 2 万台以上に対して,英国の自動車生産益は,

約 8 1 万2 千台であった.(パチェラー ] 4 9 9 1 [ 6 1 1 頁 -133 頁より)

33

ウォマック.ルース,ジョーンズ ] 0 9 9 1 [ 59-61 頁

(22)

1 4

4 立正大学経済学季報第 6 0 巻 1 号

部品の分業・協業関係の垂直統合からグローパルな分散ネットワーク化へ 第二次大戦前のフォードシステムの影響は,大鼠生産の「エートス」や理念 に留まっていた亙実際,自動車生産の内実は, G M 型,あるいはヨーロッパ システムとの並存による,組立メーカーと多種多様な中小部品・機械メーカー 間の分業・協業関係であったと言えよう.また,戦後 H 本メーカー独自の「生 産管理」や「系列」システム内の分業関係の基礎も同様であった. 5 3

自動車メーカーが組織する,この大最生産システムの実質的展開は,第二次 大戦後,第一次オイル・ショック以降の原油価格の高騰と不況期の生産調整と 機械化・自動化の進展によるものであった. 3 6

2 0 0

8 年恐慌後の現在,中国世界の登場による世界自動車産業の再編成の中心 問題は,従来の大誠生産からの転換,自動車メーカーから相対的に自立する中 小部品メーカーの再編成と言えよう.それは,次の二点に集約できる.

1 中国における地場メーカーの登場と部品サプライヤーの展開 I

I 電子制御系部品の増大による,あらたな情報ネットワーク化へ

I は,中国における先進国メーカーの部品の現地調達化,あらたな部品サプ ライヤーネットワーク化の展開を示す. 3 7 それは,図 4 のような,垂直統合型 分業から,グローバルな分散ネットワーク型分業への端緒的移行を示すと言え よう.また I I は,部品の独立性を高める電子制御系部品の拡大と,自動車の内 部構造変革に伴う情報制御システムの問題である.

“ハウンシェル ] 8 9 9 1 [ 第 7 章,第 8 章を参照のこと.

35

M.I.T のウォマック等のリーン・システム研究は,系列分業と生産管理の連関関係を明 確にした点で重要であるが,日本的特殊性ではなく,大輩生産型分業の内部に,リーン な集団労働の主体性が生じる点が不明確である.その考察は,別の機会に譲ることにし たい.

36

ウォマック,ルース,ジョーンズ ] 0 9 9 1 [ 1 6 頁 -65 頁

37

ニッサン・ルノーは.部品会社に,原材料の中国現地調達を進めさせ.中国製部品の世

界輸出を現在の 20% から 40% 以上にする計画である.(日経 BP 社編 ] 0 1 0 2 [ 9 6 頁 )

(23)

世界主軸産業の中国アジア化と 8 0 年恐慌後の世界構造 (1) 5 4 1

図 4 現代型製造業のグローバルな再編成の図式

垂 直 統 合 型 階 層 構 造

( 図 3 を参照のこと.)

ニ ! ?

グローバルな分散ネットワーク型 階層構造

(24)

1 4

6 立正大学経済学季報第 0 6 巻 1 号

自動車におけるメカ的制御系から電子情報制御系への移行問題

第一節で示した,電子制御系部品の増大による自動車製品の内部構造変革の 主要問題は,自動車制御システムの質的転換の可能性であった.その質的転換 とは,言い換えれば, l o r t n o c s y s t e m そのものの転換であり,機械的階層秩 序とメカ的制御システムを越える,電子情報システムの展開である.

現在の電子情報システムの特性と自動車の内部構造における進展をふまえつ っ,そこで提起される問題を,三つの基本点から考察してみよう.

1

) 自動車の電子制御システムの軸は, ECU (電子制御ユニット)であり,

その成立の世界史的意味をとらえ,個々独立した ECU の地位とその相互 のネットワークの性格をとらえる必要がある.

2) 自動車の制御システム,つまりコントロールシステムの転換の可能性 は,コンピューターのコントロールシステムとの比較において明確になる.

その場合, ECU 間のネットワークと現在のパソコン,インターネット・

web システムとの比較が最も重要になる.

3

) パソコン,インターネット・ web システムの現代的意義は,汎用大型 コンピューターによる中央コントロールシステム,垂直統合的制御システ ムとは異なり,個々のパソコンの独立性と水平的,相互ネットワーク的情 報システムとして登場している点である.

ECU (電子制御ユニット)の動カ・伝達・駆動系へのコントロール機構は,

1 9 7

3 年のオイル・ショック以降の排ガス規制,低燃費の課題に対応する電子制

御系の技術として登場した.実際,前述したエンジンの燃料供給系における

ECU として,インジェクション等の開発と車両搭載に始まった.

(25)

世界主軸産業の中国アジア化と 0 8 年 恐 慌 後 の 世 界 構 造 ( 1 ) 1 4 7

パソコン・ w e b システムにおける情報ネットワーク革命の意義

そして今日まで, E C U は,各種信号情報から制御鼠を演算するマイクロコ ントローラーと付加価値の制御系のソフトウェアを中心に飛躍的に拡大してい る . 3 8 最近では,他の E C U との通信手段が設定され,「車両制御系,ポディ系,

情報系の 3系統のネットワークに接続し相互にデータをやりとりする」 3 9 とい う車両内ネットワークが進みつつある.

だが,パソコンベースのネットワークとの大きな違いは,「ネットワーク内 を流れるデータが,あらかじめ設定された特定データ」であり,サーパーやパ ソコン間の共通ソフトや情報と典なり,「エンジン制御やドア制御,現在位置 推定といった特定の機能」に対する個別的 E C U の地位に留まっている. 0 4

そのため自動車の制御システムのネットワークは,現時点では, E C U の数 が増大しつつも,個々の基幹部品の機械的コントロールシステムに依拠した,

E C U 間ネットワークにとどまるのではないか.従って,自動車の情報コント は, • 初期的段階にあると言えよう.

それに対して,パソコンやインターネット・ w e b システムは,個々のパソ コン上で処理する情報や作成するデータが,固定化しておらず,既にパソコン 相互のネットワーク,コミュニケーションを媒介した内容になっているため,

分散ネットワーク型のコントロールシステムを形成している. 1 4

つまり,パソコン,インターネット ・ w e b システムの分散型コントロール

38

「電装品は別として,本格的にカーエレクトロニクスが発展したのは 0 1 9 7 年代の電子式燃 料噴射以降である.まず最初にエンジン制御に代表されるパワートレーン制御分野で利 用され,その後図 2 のように.ポディ系.走行安全系,そして情報系へとカーエレクト ロニクス応用製品が拡大していった.パワートレーン系では排ガスの低減.省燃費を実 現するシステムから現在はハイプリッド車や電気自動車の駆動制御に発展している.」デ ンソーカーエレクトロニクス研究会 ] 0 0 1 2 [ 上巻 4 1 頁,同上 ] 0 1 0 2 [ 下巻第 1 章も参照 のこと.

39

同上 ] 0 1 0 2 [ 下巻 7 1 7 頁

40

同上 ] 0 1 0 2 [ 下巻 8 1 7 頁

“パソコンを,汎用コンピューターと比較して.産業システムの観点から体系的考察を行

ったのは.アナリー・サクセニアンである.サクセニアン ] 0 1 0 [ 2 r 現 代 の 二 都 物 語 一

なぜシリコンバレーは復活し.ポストン・ルート 1 2 8 は死んだのか

(26)

1 4

8 立正大学経済学季報第6 0 巻 f 号

システムの独自性は,各パソコン相互のコミュニケーションに依拠した水平的 情報ネットワークであり, I B M に代表されるメイン・フレーム,大型コンピ ューターを中心とした各端末への情報の一方向的,垂直的な中央コントロール システムとは異なる.それ故, 2 1世紀の「新情報ネットワーク革命」の核であ り,グローパルな産業構造変化の担い手であると言えよう.

次章では,汎用大型コンピューターとパソコンとの違いを,製品構造や個々 の産業構造,生産システムの違いから,より明らかにしていきたい.前者は,

自動車の B I G 3 や GE と同様, I B M に代表されるアメリカ東海岸の垂直統合 型メーカーとして登場した.

それに対して,パソコンやデジタル機器産業は,西海岸カリフォルニアのシ リコンバレーの新興企業の産業ネットワークから成立した. ECU の発展も支 えた, I C チップ, CPU の技術開発は,インテル等シリコンバレーのベンチャ

, • 中国華南地域の生産拠点との水乎分業関係として展開 している.この基本的産業システムの違いをふまえて,パソコン,インターネ ット ・ w e b システムの今 B的意義を考察していく.(以下続刊)

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外務省主要経済指標 / : p t t h / / m o f a j g o . j p . m o f a . / w w w a / r e a l t m . h e x d i n a / a t d c o e 中国汽車協会ホームページ c n / g . . o r a a m w . c w w : / / t t p h

中国税関総署 / O a ! r t o / p s h i b l p u / c n . o v . g s o m s t u . c w w w / / : t p h t

参照

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