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ふ り遊 び の恩 恵 につ いて

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(1)

ふ り遊 び の恩 恵 につ いて Ont heBe ne f i t so fPr e t e ndPl a y

菅 野 幸 宏

Yuki hi r oKANNO

論 文 要 旨

幼児期 の代表的な遊 び といえるふ り遊 びの認知的,社会的,人格的発達への恩恵 について論 じた。一般 に幼児期 の遊 びは発達 に対 して好 ましい影響 をもつ と信 じられているが, その根拠 は必ず しも確実で はない と思われた。 そ こで,ふ り遊 びの発達への影響 を論 じた理論的,実証 的文献 の論評 を行 なった。ふ り遊 びが好 ましい影響 をもつ と見 られ る発達領域 は認知的,社会 的,人格的領域 のすべてに見 られたが,実証的証拠 は認知的,社会的領域 に多 く,人格的領域 で は少なかった。ふ り遊 びの影響 の仕方の点で は,獲得 した順応的能力 に磨 きをかける整理統 合的効果,発達 に望 ましい影響 をもつ活動 を生 じやす くす る仲介的効果,順応的領域 に先ん じ て能力 を伸 ばす先導的効果が区別 された。 しか し,最後 の効果 を認 めるか どうか は予断 を許 さ ないようである 。

は じめに

幼稚 園教育 において遊 びは幼児の発達 にインパ ク トを もつ活動 として肯定的 に とらえられて いる。例 えば, 『 平成元年告示幼稚園教育要領』 1 5) において 「 幼児 の 自発的活動 としての遊 び は,心身の調和 の とれた発達 の基礎 を培 う重要な学習であることを考慮 して,遊 びを通 しての 指導 を中心 として第 2 章 に示すね らいが総合的 に達成 され るようにす ること」( 第 1 章総則 1 幼 稚園教育 の基本 ( 2 ) ) とある通 りである。 しか しなが ら,幼児 の遊 びがその心身の発達 に顕著 な肯定的影響 を与 えるということは心理学的に どれほ どの根拠 をもっているのであろうか ?幼 児の遊 びの どのような要素が発達 の どのような側面 に どの ような形 の肯定的影響 を与 えるのか,

とい うことを明確 にしなければな らないであろう。本論で はこの間題 について これ までの心理 学的研究 の成果か らどこまで答 えることがで きるか を探 ってい こうと思 う。 これ は発達心理学 的問題 として も幼稚園教育 の問題 として も重要 な問いである。

遊びの規定

前述 の幼稚園教育要領 において は自発的活動 としての遊 びが強調 されていたが,遊 びは単 に 自発的な活動であると規定す るだけで十分であ ろうか ?また,遊 びにさまざまな種類があるな ら, どの種類 の遊 びを考察 に含 めるか を明 らかにしなければ らない。 これ も遊 びをどう規定す るか とい う問題 に帰着す る。

遊 びに関 して は古今 さまざまな立場 か ら多数 の規定が見 られ るが,統一的な規定 は難 し く,

*弘前大学教育学部幼児教育講座

De par t me nto fPr e s c hoolEduc a t i o n,Fac ul t yofEduc a t i o n,Hi r o s akiUni ve r s i t y

(2)

末 だ一致 を見 るに至 っていない とい うのが現状である。 とはいえ,規定 の仕方 には一定 の傾 向 がある 。 ルー ビンら ( Ru bi n,Fe i n , & Va nd e n b e r g,1 9 8 3 ) 1 8 ) によると,遊 びの規定 には 3 つの アプローチがある。すなわち,それ は遊 びを, a) い くつかの特徴的な性質 ない し傾 向をもつ行 動, b) さまざまな種類 の観察可能 な行動, C) 特定文化 の大人が遊 びが生 じる と信 じる一定文 脈 の もとでの行動 として規定 しようとす るものである 。a) について は遊 びを特徴づ けるのに特 に有効 な性質 として 6 点が挙 げ られてお り, それぞれの性質 は遊 び とそ うでない行動 を区別す るのに役立つ 。b) は,例 えば,言葉での遊 び とか動 きでの遊 び とい うように規定す るものであ る 。a) と b) の組 み合せ は有用であるが ,C) は遊 びを遊戯室での行動 とするような規定の仕方 であるか ら,定義的価値 はあ まりない。

遊びの特徴的性質

ここで は上 の a) で述べた 6 つの特徴的性質 について簡単 に説明す る 。 1) 内発的 に動機づ け られている :これ は遊 びが面 白い と感 じる ( 興味 ・関心 をもつ)か ら行 なわれ る行動であるこ とを示す。従 って,義務的 にあるいは報酬 目当てに行 なわれ る行動 は除外 され る 。 この規定 に よると,通常労働 や学習 は除外 され るが,面 白いか ら行 なわれ る楽 しめる仕事や勉強であれば 除外 されない。

2 ) 目標 でな く手段 に注意が向いている :これ は遊 びが特定 目標 に規制 され る行動で はない ことを示すが,無 目標 とい うので はな く, 目標 が 自分 の望 みの ままに任 され る とい うことであ る。 この意味で遊 びには自由がある 。 例 えば,部屋 の掃除 を言いつけられ,掃除機 を操作 して いるうちにその操作 自体が面 白 くなる とい う場合 の行動が これにあたる。掃除 とい う目標 か ら その手段 である掃除機 の操作 に目標が移行 したのであ り, この状態 を遊 んでいる とい うい うわ けである 。 この性質 によれば,労働や学習 は楽 しめるものであって も特定 目標 をもつので除外 され る。 また何 ら目標 のない, いわば, とりとめのない行動 も除外 され る。 なお,特定 目標 に 規制 されない状態で は行動が非効率的になるが, そ こでの行動 はよ り自由にな り,特定 目標以 外 の目標 に役立つ行動 を発見す る可能性が高 まる。

3 )有機体優位である :これ は遊 びが環境への対応 に迫 られ る行動で はな く,環境 を自己の ために利用す る自己主体的行動であることを示す。遊 びはすでに環境刺激 に熟知 し, それで何 がで きるか とい うことに焦点 をおいて行 なわれ る。一方,環境刺激 に熟知せず, それが何か と い うことに焦点がおかれ る場合 は探索行動が生 じる。実際の行動 としては先ず探索があ り,環 境 に熟知す るに従 って遊 びが出現 して くる とい うように連続 している 0

4 )道具的行動 と一定 の関係 をもつ :これ は遊 びが道具的行動 の ように事実通 りに解釈 され る行動で はな く, シ ミュレーテイブな行動であ り,「あたか も〜かのように」とい う意識 ( 表象) を もつ ことを示す。 この場合,掃除機 は掃除の手段 としてでな く,例 えば,新型 ロケ ッ トであ るかのように扱われ る。 この性質 は遊 びをふ り遊 び ととらえる ものであ り,単 に滑 り台でいろ んな滑 り方 をす るとといった行動 は除外 され る 。

5 )外的 に与 えられたルールか ら自由である :この性質 は遊 び とゲームを区別す る 。 ふ り遊 びに もテーマや役割か らもた らされ るルール ( 医者役 な らそれ らし く振舞 うこと) はあるが, 暗黙的である。ふ り遊 びでの行動 には柔軟性があ り,ルールのあるゲームの ような明示 された ルール によって行動が強 く規制 され るもので はない。 この区別 は遊 び とゲームの発達的 リンク

( それがある とすれ ば) を分 りに くくす るか も知れない。

(3)

6 )能動的参加 を要する :これ は遊 びが物,人,行為 に能動的 に関与す る活動的な行動であ り, 白昼夢や ごろごろした りぶ らぶ らす るような静的,受動的な行動で はない ことを示す。 し か し, 白昼夢 は観念 による個人的な遊 び として幼児期 の遊 びの後継者 とも見 られ る ( Si nge r &

si nge r ,1 9 9 0) 2 0) か ら, この区別 はふ り遊 びの発達的な行 く末 を分 りに くくす るか も知れない0 ここで,再 び前述 の幼稚 園教育要領 に示 された遊 びの規定 についてふれ る と, それ は上述 の 性質 の うち 1 )と2 )を中心 にして遊 びを規定す るもの といえる。 それ は子 どもの生活 における 生命維持的活動 と労働や意図的学習 を除 くあ らゆる自発的活動 を網羅す ることになる。従 って, 遊 び行動 の範囲 は極 めて広 くとられている。 しか し,本論で このような広い範囲の遊 びを一挙

に考察す ることは論 の焦点 をぼかす ことになるので不都合である

ふ り遊びへの注 目

遊 びの範囲 は上記性質の どれ に中心 をお くか によって異なって くるが,本論で は上記 4 )の 性質 を最 も重視 し,ふ りの要素 を本質 とす る遊 びに焦点 をお きたい。ふ り遊 び は幼児期 に黄金 期 をむかえる とい う意味で最 も典型的な幼児 の遊 びであ り, ここ数十年遊 びの文献 を支配 して きた研究領域で もある。 なお,幼児 の年齢範囲 としてはふ り遊 びの発達時期か らして 1‑ 6 歳 を考 えるのが適 当であろう。

幼児期 に見 られ るふ り遊 び以外 の遊 び としては,感覚運動的遊 び,構成的遊 び,ルールのあ るゲームがある。感覚運動的遊 びは機能的遊 びや実践的遊 び とも言われ,走 り回 るとか繰返 し ただ粘土 を練 る といった,すで に獲得ずみの行為 をただ自分 に示す楽 しみのために反復す る活 動である。 この種 の活動 は乳児期 に最 も盛 んに見 られ るが,ふ り遊 びが活発化す る とともにそ の純粋 な形態 は減少す る。

構成的遊 び はブロックで基地 をつ くる といった遊 びであ り,幼稚 園で は最 も共通 に見 られ る 活動 といえる。 この活動 は製作物 を結果 として残すので,特定 目標 に規制 され る といった特徴 が多少 とも見 られ るが,一般 にはこの種 の活動 も遊 び と見 られ ることが多いので はないか と思 われ る。 ここで は, ブロックな どを使 っていて もふ り活動 の中で使 われていて,製作 とい う意 識が希薄 な場合 はふ り遊 び,製作 とい う意識が強い場合 は非ふ り遊 び とい うように概念的な区

別 をしてお きたい。

ルールのあるゲーム は, ピアジェ ( 1 9 4 6 )

16)

によると, 1) 少 な くとも二人が競争 し, 2) 参 加者が伝承 あるいは合意 されたコー ドによって規制 され る活動であ り,ルールの認識,受容, 遵守が関わ るため, 6 , 7 歳 で は稀 で, 7‑1 1 歳で よ く見 られ るとされ る。一般 にはこの種 の ゲーム も遊 び と見 なされているであ ろう。特 に 「 花 いち もんめ」,「 椅子 とりゲーム」,「 鬼 ごっ こ」 といった ものはルールが簡単で, あ まり競争的要素がな く,幼児期 に もよ く行 なわれてい る。 しか し, この ような遊 びについては心理学的文献が圧倒的に少 な く成果 をまとめるほ ど研 究 の蓄積がないようである。

恩恵が期待 され る発達的側面

ふ り遊 びの恩恵が期待 され る発達 の側面 はさまざまあるが,人格形成 とい う視点を とりたい

と思 う。 デーモ ン ( Damo n, 1 9 8 3 )

4)

によると,人格形成 には社会性 の発達,個性 と自己意識 の

発達及 び認知的発達が関連す る。人格形成 とい うときの人格 には他者 と異 なる個人 とい う意味

と分割で きない まとまった全体 としての個人 とい う意味が含 まれ る。 そ こで,人格形成 とは他

(4)

者 のネ ッ トワー クに個人が組 み込 まれてい き,社会 の成員 としての地位 を占めてい く過程 ( 社 会化) として も, また自己 を十分理解 し, 自己の資質や関心 に見合 った社会生活 を求 める過程 ( 個性化) として もとらえられ る 。 二つの過程 は相補的関係 を保 ちつつ同時 に進行 してい く 。

さらに,例 えば高い水準 の道徳判断が可能 になるには認知的な発達が必要 になる とい うように, 人格形成 に とって認知的発達 の地位 は決 して軽 い もので はない。遊 びが認知的発達の側面 に影 響 を与 えるな ら, それ は人格形成 に も影響す るはずである 。 こうして,本論 はふ り遊 びの認知 的,社会的,人格的発達への恩恵 を調べ る 。

ふ り遊びの恩恵 :概観

ここで はアメ リカ心理学界 の研究成果 に焦点 をお き ,1 980 年代初頭 までの成果 をまとめたル ー ビンら ( 1 983) 1 8) の論文 に従 って概観 した い 。 なお,ふ り遊 びのほか ごっ こ遊 び,象徴 的遊 び,劇的遊 び,空想遊 び, ファンタジー遊 びな どの用語が使 われ るが, いずれ もほぼ同 じ遊 び を指示 している 。

理論的推測 :ルー ビンら( 1 983) 1 8) は20 世紀 のさまざまな理論家のふ り遊 びに関す る見解 を紹介 しているが, これ らはふ り遊 びの恩恵 について手がか りを与 えるものである 。 以下の表 にまと めてお く。ふ り遊 びの恩恵がある と推測 され る発達領域 は思考,言語,社会性, 自己概念,情 緒 な ど精神発達 のほ とん どの領域 に渡 っていることが分 る 。

表 1 ふ り遊びの恩恵 に関す る理論的推測 ( ルー ビンら,1 983 よ り) 1 8)

Fr e ud,S.

Pi a ge t ,∫.

Vy got s ky , L S.

Me ad,G.H.

ふ り遊 びは現実の制約 と規制か ら逃れて受容 Lがたい衝動 を吐 き出す安全 な 文脈 を提供 し( 願望実現), トラウマ事象 を衝動的 に反復 して,かつて受動的 犠 牲 者 で あ っ た場 面 の 能 動 的 支 配 者 に な る こ と を可 能 に す る ( 統 御 ma s t e r y)

願望実現,統御 いずれの機能 も情緒 の安定 と成熟 に役立つ 。

象徴的遊 びは重要 な生活経験 の表象 に意味 を与 え, その理解 を確立 し,経験 を組織化す るものである ( 順応的行動 の整理統合 ( c ons ol i dat i on) 機能)0 ふ りは対象や行為 か ら意味 を分離す る。象徴的表象の発達 に役立 つ。

ごっ こ遊 びは表象的 に自己 を出て,他者 の観点か ら自己 を見 る機会 ( 役割取 得) を与 え, これ によ り他者 と異 なるが関連 している自己 とい う内省 を得 る。

自己概念 の発達 に対 して恩恵がある。

Si nge r ,∫ .L. ごっ こ遊 びは象徴的表象 と固 く結びついてお り,膨大 な時間 を費やす活動で あるか ら,抽象的思考,想像,新 しい語句 の学習,集中力,注意 のスパ ン, 反省的モー ドの思考, さらに自己信頼 と自己統制 を高め得 る 。

Smi l ans ky,S. 社会的ふ り遊 びにおいて は役割演技 と役割取得経験 によ り自己中心性 の低減, 共感 と協同の発達が期待 され る。

Br une r ,∫ .S. ふ りが最適覚醒状態であるな ら,快適,寛 ぎ,安全 を感 じさせ,発散的探索 を促進す るであろう 。

Gar ve y ,C. 社会的ふ り遊 びにおいて は相互作用規則 の練習 と洗練が行なわれ よう。

実証的研究 :ルー ビンら ( 1 983) 1 8) は経験的証拠 による裏づ けがあ る研究 一相 関研究 と訓練研

究 ‑を も概観 している 。 これ も表 2 の ようににまとめてお く。 これ によると,ふ り遊 びは特 に

(5)

知的,社会的発達領域 と有意 な相関 をもつ ことが明 らかである。訓練研究で も同様 であ り,ふ り遊 びは知的,社会的発達 に対 して肯定的な影響 を もつ ことを示 している。 しか し, その効果 は研究 によって異 な り,必ず しも安定 していない ことも指摘 されている。 これ には訓練手続 き や期間の違 い,出力測度 の違 いな どが関係 し, また,出力測度 の信頼性や妥当性が疑わ しい も の もあるとい う。

ルー ビンら ( 1 9 8 3) 1 8 ) はふ り活動 とそれが貢献す ると見 られ る発達領域 をつな ぐリンクとして

「 脱中心化」の概念 を考 えた。例 えば,劇的遊 びで はふ りの役割や活動 と現実の役割や活動 を 区別 し,多様 な役割 を同時 に考慮す る必要があるように,ふ りは多 くの面 を同時 に考慮す る能 力 を使 うが, これ は一つの側面 しか考慮で きない中心化傾 向を破 るものである。 そ して,例 え ば,相手 の立場 を考 えない一方的な発話ではコ ミュニケー ションにな らないか ら,密接 なコ ミ ュニケー シ ョンには観点取得が必要であ り, それには二つの観点 を同時 に考慮す ることが必要 である とい うように,や は り脱 中心化が基本的 に必要 とされ るのである。

以下で は,恩恵の期待 され る発達領域 ごとにルー ビンら ( 1 9 8 3 ) 1 8 ) の論評 を参考 にしなが らそ の他 の研究 にもふれ,ふ り遊 びの発達への恩恵 を考察す る。

表 2 ふ り遊びの恩恵に関する実証的研究 ( ルー ビンら ,1 9 8 3 よ り) 1 8 )

発達領域 相関研究 : 分類,空間観点取得

社会的 コンピタンス,人気,役割取得 発散的思考

連続量の保存 思考の流暢 さ 発散的思考

訓練研究 : 言語発達/受容的語嚢 創造性

系列 的記憶 量的不変性 集団の協同 親族関係 の概念 空間的観点取得

報告者例 Rubi n & Mai oni( 1 9 7 5 )

Connol l y ( 1 9 8 0 ) Jo hns o n ( 1 9 7 6 ) Emme r i c he ta l .( 1 9 7 9) Dans ky ( 1 9 8 0 a) Hut t& Bhavnani( 1 97 6 ) Sal t ze ta l . ( 1 9 7 7 ) Dans ky ( 1 9 8 0 b)

Gol omb & Cor ne l i us( 1 9 7 7 ) Ros e n ( 1 9 7 4 ) Fi nk ( 1 9 7 6 ) Bur ns & Br ai ne r d ( 1 9 7 9 ):Ros e n ( 1 9 7 4 ) 感情 的

Bur ns & Br ai ne r d ( 1 9 7 9);Sal t z & J ohns on ( 1 9 7 4 ) 認知的 / / Bur ns & Br ai ne r d ( 1 97 9);Ros e n ( 1 9 7 4 )

●認知的発達への恩恵 問題解決

問題解決 には二つのタイプがある。単一解 を求 める収束的問題解決 と多元解 を求める発散的 問題解決である。前者 は棒 をつなぎ合わせて手 の届かない ものを とる といった場合であ り,後 者 は新聞紙 の読物 としての使い方以外 の使 い方 を可能 な限 りリス トア ップす るといった場合で ある。

ふ り遊 びは発散的問題解決 に影響 しそうである。 ダンスキー ( 1 9 8 0a) 5) によると,発散的問

題解決 の前 に自由遊 びが行なわれた群 はそうでない群 よ りも問題解決の成績が良好であったが,

(6)

それ はふ り遊 びのレベルが高い ときに限 られた。すなわち,創造的問題解決 の成功 に影響 した の は自由遊 び経験 とい うので はな くごっ こ遊 び経験 で あ った。 この効 果 につ いて ヒュー ズ ( Hughe s ,1 9 9 1

)ll)

は空想遊 び と発散的問題解決が共通 の知的前提 を もつために生 じたのだ と 解釈 してい る。すなわち,ふ り遊 びや空想遊 びで は対象や場面 の変換 ( 例 えば,積木 をパ ンに) があるが, これ はそのオ リジナルな同一性 ( 積木) と変換後 の同一性 ( パ ン) を同時 に表象 し ていることが必要であ り,積木 を積木以外 の もの ともみなす ような知的柔軟性 をもた らす こと になる 。 そ して これが創造的過程 の鍵 となる要素で もある, とい うわけである 。

量の保存

ふ り遊 びが量 の保存 に関 して肯定的影響 を与 える とい う研究 もある。 ゴロム とコ‑ネ リウス ( Gol omb & Cor ne l i us ,1 97 7 )

8)

によると,象徴遊 び経験 は量 の保存 を向上 させ るようである。

それ は中流の平均 4歳 3ヶ月児 に 3日間象徴遊 び経験 を与 えた結果 を見 た ものである。非保存 者 1 5 人の うち 4 人が保存者 にな り ,1 3 人 に何 らかの変化が生 じたが,パズルな どをした別 の 1 5 人で は 1人 に変化が出ただけであった。 しか し, さらに条件統制 を厳 し くしたガス リー とハ ド

ソン ( Gut hr i e & Huds on,1 9 7 9 ) 9) の追試で は否定的結果が出ている 。 従 って, この効果 につ いて はなお未解決である 。

言語理解

ザルツ ら ( Sal t z,Di xon , & J ohns on,1 9 7 7 ) 1 9) によれば,物語 を聞いた後 にそのシー ンで遊 び, 役割 を演 じた群 はただ物語 の議論 をす るか無関係 な活動 をした群 よ りも物語 の詳細 をよ く記憶

していた。 そ こで,演 じる遊 びの言語理解 と記憶への効果が期待 され る 。 しか し,演 じること と物語 の理解 との結びつ きは単純 で はない ( Hughe s ,1 9 91 ) l l ) 0

●社会的認知的発達への恩恵 役割取得

役割取得 あるい は観点取得 は他人 の役割 あるいは観点 を引 き受 けることであ り, 自分 の見方 考 え方 を離れて他人 の見方考 え方 を推測 し採用 してみることと言 える 。 遊 び はこのような役割 取得技能の獲得 に有益 な効果 をもた らす ようである 。 まず, イアノッチ ( I anot t i ,1 9 7 8 ) 1 2) は幼 稚園児 と小学 3 年生 に物語 を読 み聞かせ,物語 のさまざまなキャラクターのパー トを演 じるよ う求 め, またキャラクターの感情や動機 について質問 をして他者役割 についた自分 を想像 す る よう励 ました。 この訓練 を受 けた群 は受 けない群 に比べて他者観点への感受性 に進歩が見 られ た。 この ように他者 の役割 につ く訓練 は有効 であったか ら,役割遊 びにおいて も同様 の効果が あると期待 され る。 ただ し, この訓練 は役割遊 びその もので はな く,明 らかに大人 の統制が入 った活動 てある。従 って, それ は遊 びで はな くふ り技能 の学習で はないか とい う批判 もあ り得 よう 。

一方,バー ンズ とプレイナー ド ( Bur ns& Br ai ne r d,1 9 7 9)

2)

は就学前児 について 「 大人 の

指示」 をなるべ く減 らして仲間 と遊 ぶ経験 に焦点 をおいた。集団的構成遊 び ( 与 えられた材料

か ら何か を作 るために共同 して働 くよう集団 としての仕事 のプランを議論 し実行 した)群 と社

会劇的遊 び ( 与 えられた遊 びのテーマにつ き, どう演 じるか,誰が どの役割 を演 じるかを議論

し実行 した)群 は感情的な観点取得 ( 他者 の感情 の推測) において改善があったが,統制群 で

(7)

はそうで はなかった。 この結果 は,大人の 「 柔 らかな」指示 による社会的遊 びの経験 は感情的 役割取得 を促進 しうることを示す。す ると,観点取得 を豊かにす る仕方で遊ぶ には子 どもを刺 激す る大人が必要だ とい うことか も知れない。 ここで はふ り経験 とい うよりも集団活動経験 の 役割取得技能への改善効果が 目立 つが,ふ り活動 自体 の効果 も期待 され るところである 。

●社会的発達への恩恵 向社会的行動

役割取得 は比較的年長で は愛他的あるい は援助行動 と関連す る ( Fr o mi ng, Al l e n , & J e ns e n , 1 9 8 5 ) 7) 。従 って親密な仲間関係の確立 Lやす さとも関係す る ( Mc Gui r e & We i s z,1 9 8 2 ) 1 4) 0 役割取得 は共感性 の認知的パー トであ り,共感性 は向社会的行動の動機的側面である。 この よ うに役割取得 は知的,社会的発達 において重要な役割 を占める社会的認知的能力であるといえ る 。

社会的相互作用

遊 びは単独で も集団で も行 なわれ る 。 一般的 に社会的ふ り遊 び は子 どもが遊 びエ ピソー ドを 基礎づけるルールに焦点 を合わせ ることを促進 し,一定 のルールがあ らゆる社会的相互作用 を 基礎づ けることに気づかせ るとい う点で社会的発達への恩恵が期待 され る 。 例 えば,病院 ごっ こをす るときは医者 と患者 の相互作用が演 じられ るが, この とき遊 びの参加者 は医者 らしくあ るい は患者 らし く相互作用 しなければな らない。つ まり, そこには医者の役割 とそこか ら導か れ る行為の仕方 について一定 の暗黙 のルールがあ り,医者 の役 を採 る者 はこのルール に従 って 演 じなければな らない。 そうでない と病院 ごっ こにな らないのである 。 従 って,社会的相互作 用 にはルールがあるとい うことに気づ くのでなければ有能 な遊 び手 とは言 えない。 この社会的 相互作用ルールには役割 に伴 うルールの ようにテーマに応 じて変化す るもの もあるが,社会的 相互作用 に普遍的 に見 られ る基礎的ルール もある。番交替ルール はそのような ものである。

この点での証拠 はヴィゴツキー ( 1 9 6 6) 2 1 ) が紹介 した 5歳 と7歳 の姉妹 による 「 姉妹 ごっこ」

の観察か らもた らされ よう 。 その姉妹 は 「自分 たちごっこ」 をす ることになったのであるが, 観察 されたのはいつ もの自分 たちの行動で はな く,姉妹 はか くあるべ きであることを示す行動 であった。 これ は虚構場面 にはルールが潜 んでお り,役割 を演 じることは社会的相互作用ルー ルに従 って行動す ることであることを示 している。

集団 における協 同

ヒューズ ( 1 9 9 1 )l l ) は子 どもを集団にまとめるといった社会的統合 の効果 は大人が適 当な活動 を示唆す ることで可能であるが,遊 びその ものに もその働 きがあると言 う 。 遊 び とい う魅力的 な活動 は子 どもを引 きつけ,従 って子 ども同士の社会的相互作用 の機会 をもた らし,集団 にま とめる とい う意味である 。 その種の遊 び として はブロック,粘土,音楽,創造的動 きな どを伴 う遊 びや社会劇的遊 びが挙 げ られているが, ここで は社会劇的遊 びのみに注 目す る。

ローゼ ン ( Ros e n,1 9 7 4 ) 1 7 ) の研究 は社会劇的遊 びが社会的統合 の効果 を もつ ことを示唆 して

いる。劇 的遊 びの技能 に欠 ける と見 なされた幼稚園児 に役割演技 をシ ミュレー トす るよう設計

された玩具 を与 え,彼女 自身子 どもと一緒 に遊 んだが,その際適 当な ときはいつで も誘導質問

や示唆 を与 えた ( ポッンと トラックをい じっている子がいた ら, トラ ックの運転手 になって遊

(8)

びに参加 す るよう勧 めた)。その結果,この訓練 をうけた子 どもらはプランニ ング,協 同,不一 致や攻撃的行動 を避 ける能力 を要す る 「 集団生産性」課題 で改善が見 られ, しか も他者の観点 を想定 した り,他者 の望みや好 みを予測す る能力で も改善がみ られた。協 同的 に社会劇劇遊 び を行な う経験 は協 同的態度 として遊 び以外 の活動 に も一般化 され るようである。

仲間集団の受容

へイゼ ンとブラック ( Haz e n & Bl a c k,1 9 8 9 ) 1 0 ) によると, 3 歳 までにはすでに仲間か ら好 かれ る子 どもとそ うで はない子 どもがお り,好かれ る就学前児 は沢 山の協同的遊 びにつ き,社 会的会話 において成功的であ り,他児 には関連 ある適切 なコメン トを言い,建設的な示唆 を提 供す る。一方,好かれない子 どもはしば しば会話 において不通切 な表明 ( 他児の直前の表明 と 無関係 な表明な ど) をし,他児が していることについて否定的なコメン トを出 し,建設的な代 替案 を提供 しない。従 って,子 どもの遊 びでの相互作用の質 は仲間集団による全体的な受容性 と関連 している。 そ こで,遊 びは仲間集団の受容性 を高 めるために積極的な役割 を果 している 可能性がある。

すでに述べた ように,社会劇的遊 びは協 同性 を高めた り,社会的相互作用ルールに気づかせ る効果があ り,役割取得や向社会的行動 に対 して も肯定的な効果があると見 られている。以上 を考 える と社会劇的遊 びが少 な くとも間接的 には仲間集団の受容 につなが るような社会的技能 を育 てている と見 られ る。

愛着の促進

遊 びは生後 1年 目の子 どもとその両親が安定 した愛着 を形成す るための文脈 として子 どもの 社会的,情緒的,人格的発達 に好 ましい影響 をもつ と考 えられ る。安定 した愛着の形成 に とっ ては養育者 と乳児の社会的相互作用が不可欠であるが, それ はしば しば親子の遊 び として展開 され,安定 した愛着 を もつ子の両親 はその特徴 として遊戯性 と敏感 さを備 える とされ る ( Bl e ‑ ha r , Li e be r ma n ,& Ai n s wo r t h,1 9 7 7 )

1)

。 これ は親が遊 び好 きであ り,かつ遊 び活動 を適宜 に 調整す るに足 るだけ子 どもの要求 に敏感であると親子の間 に安定 した秤が形成 され ることを意 味 している。 そ して安定 した秤 の形成 は,子 どもに親か ら離れていて もあ まり不安 を感 じない ですむように し,子 どもが親か ら離れて自律的 に探索的行動 を行 な う機会 を増やす。 この点で 自己意識や認知面への間接的インパ ク トが認 め られ る。遊 び好 きな親 は子 どもと一緒 にいるこ とを楽 しめる。 この ことか ら養育 において好 ましい雰囲気が もた らされ ることも小 さい効果で はないであろう。

●人格的発達への恩恵 自己統制

シンガー ら ( Si n ge r & Si nge r ,1 9 9 0 ) 2 0) による と,想像的ゲーム は例 えば精微 なファンタジ

ーを展開す るとい うように新奇 な刺激 の場 を生み出 しうるか ら,待 ち時間 を充実 した時間に し,

待 つ ことを容易 にす る効果 をもつであろうとい う。 6‑ 9歳児 に宇宙飛行士 になったつ もりで

想像上 のカプセルの中で出来 るだけ長 く座 って待 つ とい う実験 で は,活動の進行 中にごっこ遊

びが多 く見 られ, しか も想像上の友達がいると報告 した想像傾 向の高い子 どもはカプセル状況

において長 い待 ちに耐 え,粘 る傾 向が あった。想像遊 び行動 はやや大 きい集中力 と機嫌 の良 さ

(9)

に結 びつ く。同様 に,遊戯 的な想像 を行 な うとき,満足 を遅延す る時間が長 くな ることも報告 されてい る。 シンガー ら( 1 9 90) 2 0 ) はまた, よ り想像的な遊 び手 は肯定的事象 は自己の行為 に帰 属 させ,否定的事象 は外的原因 による とみなす傾 向が大 きいが, この 「 統制 の錯覚」 はファン タジー遊 びで提供 され る ミニチ ュア化 された世界への操作 と力 の練習機会 によるので はないか

と考 えてい る 。

●脱 中心化概念及 び人格的発達 について

これ までの考察か ら,ふ り遊 びの発達への効果 を考 える上で 「 脱 中心化」の概念が重視 され ていること, また人格的発達 の側面 に関す る研究が不足 してい ることが認 め られ る。 そ こで, 以下 で は脱 中心化概念 と人格的発達 に とっての意義 に重点 をおいて考察 を進 め ることにす る 。

役割遊び と人格 的発達

ヴィゴツキーか ら始 まる活動理論 はピアジェ理論 な どとはかな り異 なった理論 的立場 を とっ ているが,心理発達 の領域 で は無視 で きない成果 を上 げているか ら, これ まで考察 して きた成 果 の補足 として非常 に有用である。 そ こで,幼児の遊 びについて最 も精力的 に研究 して きたエ リコニ ン ( ( El , koni n,1 97 8)

6)

に沿 って, この立場 か らの遊 びの恩恵 をまとめてみたい。 この立 場 で は遊 び は虚構場面 のある遊 び ( ふ り遊 び)であるが,役割 と主題 が特 に重視 され るため, 役割遊 び と呼ぶ。

役割遊 びについて簡単 に説明 してお く. ヴィゴツキー ( 1 9 66) 2 1 ) による と,役割遊 びは,大人 の ように生活 したい とい うす ぐには実現 で きない子 どもの願望 とこれ を即座 に実現 しようとす る子 どもの要求が併存 し, そ こで生 じた矛盾 を解消す るメカニズム として生 じる とい う。 エ リ コニ ンはフラ トキナ とスラヴイナの研究 を挙 げ,根本的 には子 どもによる大人 の世界 の発見 こ そが その原因である とす る。つ ま り,大人 の手 を借 りて行 なっていた行為 を習得 した結果, こ れ を自主的 に行 な うとき,子 どもは自分が大人 の ように行為 してい ることに気がづ き,子 ども の情動 の焦点が事物 か ら人 に移 る とい うことで ある。子 どもは大人 を見本 として見 るようにな り,大人 の ように行為 したい と願 う。 この とき,大人 の導 きによ り 「あたか も大人 であるかの ような」行為 を行 ない,情動的 に大人 になる といった役割遊 びが出現す る とい うわ けである。

この ように遊 び は何 よ りも役割遊 びであ り,子 どもの人格 的発達 を反映 し, さ らにそれ を促進 す る鍵 となる活動 として登場 す る。

役割遊 び はその発達が他 の多 くの心理発達 に最 も大 きな影響 を与 える主導的活動 とされ る。

ェ リコニ ン( 1 97 8)

6)

はその影響 を 6 点 に まとめてい るが, その うち認識 の自己中心性 の克服 に ついて はこれ まで と重複 す るか ら, また集団形成 ほか について は説明が省略 されてい るので除 外 してお く 。

1)役割理解 を通 じて 自己理解 を促 し,動機 を自覚 させ,意図的行動 を出現 させ る :役割遊 びの中で大人 の位置 に自分 をお くとき子 どもはある人 の活動 は他 の人 に とって意味が あ り, そ の意味 を考 えて活動 を起 こすのが大人 である とい うことを全 ぐ情緒的 にで あるが理解す ること になる 。 役割遊 びの発達 において見 られ る遊 び行為 の一般化 と短縮 ( ふ りの行為 はそれ と分 る 程度 に簡単 に行 なわれ るようになる) は子 どもが人間関係 を抽 出 し, そ こか ら得 られ た意味 を 情緒的 に体験 している ことを示す もので ある 。

子 どもが大人 の役割 を とる とい うことは, 自分が とった役割 か ら自分 を見 て, 自分が まだ大

(10)

人でない ことを子 どもに発見 させ る働 きをももつ と見 られ る。 そ こか ら,大人 になって実際 に 大人 の機能 を遂行 しようとい う新 しい動機が発生す る。動機 の新 しい心理学的形態が発生す る ことは役割遊 びの本質的に重要な点である。子 どもの無 自覚で情動的 に色づ けられた直接的願 望が役割遊 びを導 き, その中か ら自覚的で一般的な意図が発生す るのである。

2 )知的行為 を 「 心的行為」へ と移行 させ る,即 ち想像 の形成 のための前提 を形成 させ る : 活動理論 において は,知的行為 は,物質的対象あるいは代理物への行為, それ と同 じ行為 の外 言の平面での形成,心的行為 とい う段階 をた どる。役割遊 びにおいて行為 は実践的な意味 を失 い,事物 にで はな く事物 の意味への行為 と化 しているが, その際 にその物質的代理物 に頼 って いる。つ まり,遊 びの行為 は意味への行為 として知的行為の性格 をもちつつ も, まだ外言の平 面で行 なわれ,かつ外的行為への依存 も残 している ( 行為がただある意味 を表すだけの一般化 され短縮 された ものにな り, また実際の言葉で置 き換 えられ る)か ら, これ は心的な知的行為 の形成 を促す。遊 び行為 の機能的発達 は知的行為の最近接発達領域 をつ くりだす。

3 )随意行動 の発達 :役割遊 びは,初 め暗黙的なルールを もつ展開 された遊 び場面 をもつ遊 びか ら明示 されたルール と暗黙的な役割 をもつ遊 びへ と発達す る。 いずれにせ よ,役割遊 びは 隠 されたルールを含 んでいる。遊 びの中で子 どもの行動 は随意的になるが,随意的行動 は見本 があ り,それ に合わせて実現 され,見本 と比べ ることで 自らを制御す る行動である 。 遊 びの状 況で遂行す る運動 の性格 は直接の課題状況 の もの とは本質的に異 なる。 それ は新 しい運動 を意 識的に再現 し,完全化 を目指す最初 に到達 した活動形態であ り,学童 の意識的な身体訓練 の真 のプロローグである。不動の姿勢 を保 つ長 さは,特 に 4‑ 6 歳で,直接課題状況 におけるより も優れ る 。 こうして自己統制力が増大す る 。 ただ し,幼児の制御機能 は弱 く,遊 び場面や参加 者 による支 えを必要 とす る 。

4 )遊 びの内容 は大人 の間 に存在す る行為 の規範であ り,演 じることは規範 に従 うことゆえ, 道徳発達の源泉 となる。

ふ り遊びの脱中心化効果

近年ふ り遊 びは 「 心 の理論」 の研究領域か ら注 目を浴 びるようになった。 それ はどち らの領 域 で も同 じような技能 を扱 っているように見 えなが ら,ふ り遊 びで はそれが早咲 きに出現す る ように見 えるか らである。つ まり,ふ り遊 び はそ うした技能 の獲得 に とって特別好都合 な領域 か もしれず, そ うであれば,ふ り遊 びは単 に発達 を反映 した り,順応的行動 の整理統合 といっ た役割 だけでな く,新 し く順応的行動 を獲得 させ る役割 ももつ ことになる。 これ は従 ってふ り 遊 びの領域か らも大 いに関心が持 たれ る問題 である 。

リラー ド ( Li l l ar d,1 9 9 3) 1 3) はふ り遊 びに生存 のためでな く楽 しむ とい う精神 によって実際の

場面 に仮定的場面 を投影す ることとい う作業的定義 を与 え,ふ りには,ふ りをす る人,現実,

現実 と異 なる心的表象,ふ りが投影 され る対象,ふ りをしている意識, それ に ( 身体 的)活動

という 6 つの要素がある とす る 。 そ して,ふ りには少な くとも ,a) 1 つの物体 を 2 つの もの と

して同時 に考 える能力 ,b) ある物体 を別の ものを表す もの と考 える能力 ,C) 心的表象 を表象

す る能力,が必要であ り, これ らは子 どもの心の理論 の領域 で も必要 とされ, しか もその獲得

の時期 はふ り遊 びにおいて よ り早 いように見 える, とい う 。 ここで問題 はこれ はふ り遊 びが子

どもの心の理解 を促進す る活動,つ まり子 どもの心 の理解 に とって 「 最近接 の発達領域」であ

ることを意味す るのか とい うことである 。 そ うでないな ら, それ は実際以上 に進 んでいるよう

(11)

に見 えるだけの 「 愚か者 の黄金」 とい うことにな る。

リラー ドはまずふ り遊 びが認知的技能 ( 仮説的推理 な ど)や社会的認知的技能 ( 役割取得な ど) に関す る促進的環境 であることを指摘 す る研究 を展望 し,結果 は幾分有望 としつつ も,方 法論的 に問題が い くつかあるので知見 の有意性 は不確かであ るとす る。 つ ぎに, リラー ドは上 述 の 3 つの技能 について以下 の ように考察す る :

a) について ;物 の置 き換 え ( 積木 をパ ンにす る) は 2歳 で出現 し, 3歳 まで には全 く異 な る対 象 と置 き換 えることもで きるのに対 して,一つの物 (りん ごに見 えるろうそ く)がみか け (りん ご) と現実 (ろうそ く) とい う二 つの同一 性を もつ と見 なす ことは大半 の 3 歳児 にはで きない。 このギ ャップの説明 は 3 通 り考 えられ る とい う。第‑ に,「 ふ り」においては現実世界 との関係 を特 に考慮 しな くともよいが,「みか け と現実」 課題 で はそ うはいかず, ろうそ くとし ての本質的特徴 を備 える物が ろうそ くとなる 。 第二,「 ふ り」で は一見二 つの同一性 を同時 に考 慮 してい るように見 えるが,実 はふ りの同一性 を表象 している とき現実の同一性 は自動化 して 背景化 してお り,必要 な ときだけ意識 に上 るにす ぎない。 したが って,実際 は一つの同一性 を 表象 してい るだけなのである 。 第三,ふ りで は実際 に物 の同一性 が表象 されているのでなな く, 使用法 で とらえられている。 すなわち,バ ナナを電話 の ように扱 うとき,電話 を表象 して行為

してい るので はな く,電話 を使 うときの行為 をしてい るに過 ぎない。 どの説明が事実であるか によ りふ りが 「 最近接 の領域」であるのか 「 愚か者 の黄金」であるのかが決 まるが, そ うす る にはさらに研究が必要であるとい う。

b) について ;ふ りの領域 の中であれ外 であれ,年少児が外的表象 を理解す る とい う確 たる 証拠 はない。模型 の自動車 は実際 の自動車 の外的表象 ととらえられてい るか もしれないが, そ うで はな く,模型 の自動車 は 「 小 さい自動車」 として, あたか も実際の車 の ように使 われてい るだけなのか もしれない。

C) について ;社会劇的遊 びは 3 歳頃 に生 じるが, それ は番交替パ ター ンで進行す るス ク リ プ ト化 され た儀式的行動 の ように見 える。 メタ表象,すなわち,相手 の考 えを考 えた上で行動 ししているのであれば注意深 い相互協応が期待 され るが, これ は 5 歳頃 にな らない と現れない。

人形遊 びで は,初 出で 3歳 4ヶ月に人形 に認知的経験 を付与 す るが, これ は虚偽信念や観点取 得 テス トの通過時期 よ り6‑ 8ケ月早 い。遊 び は進 んだ領域であろうか ?

子 どもは心的表象 を含 むふ りその ものを理解 す るであろうか ?この問いに対 して行 なわれた 実験 で は,「 兎 の跳 び方 を知 らない トロルが兎 の ように跳 んでい る。トロル は兎 の ように跳んで い るか ?トロル は兎 のふ りをしているか ?」 といった質問 をした。全員が 「 兎 の ように跳 んで いる」 ことを肯定 したが 「 兎 のふ りをしている」 ことを少 な くとも試行 の 3/ 4 で肯定 したの は 4 歳児 ( 6 0%以上)であった。年少児 はふ り場面 です ら,他者 の心的表象 を心的 に表象 した りしないのか も知 れず,彼 らはふ りを単 にある仕方で行為す る ことと考 えてい るのか も知れな い。ふ りの領域外 で は 4歳頃 までの子 どもはいか に して人々が場面 を誤 って表象 しうるか を理 解 しない ( A とい う人が右 の箱 にあめを置 いておいた所,誰 かが そのあめを こっそ り左 の箱 に 移動 させて しまう 。 す る と A はあめの置 いてある場所 に関 して誤 った信念 を もつ ことになるが,

この置 き換 えを目撃 した年少児 は, A はあめが左 の箱 にある と思 ってい る, といった回答 をす る) 0「あたか も〜 の ように行為す る」 ことがふ り遊 びを実際以上 に洗練 して見せてい るので は ないか。

以上 の ように リラー ドはふ り遊 びが子 どもの心 の理解 の 「 最近接 の発達領域」である とす る

(12)

の はまだ早過 ぎる とし,今後 の検討仮説 を提示 した。 その後 なお研究が続出 してお り, この間 題 の解決 については予断 を許 さない。例 えば, カスター ( Cus t er ,W . L . ,1 996) 3) においては年 少児がふ りを心的表象 を含む もの と概念化 していることを示唆す る結果が出ている。

結 論

ふ り遊 びは認知的,社会的,人格的発達領域 に対 して多 くの肯定的な影響が仮定 されている が,実証的なデータはある程度有望 な結果 を出 しているといえよう。バ ランス としては人格 的 発達領域 の証拠が不足であるといえる。

ふ り遊 び と心理発達 との関係 としてはつ ぎの 4 種類が考 えられ る。 1 ) は本論 のテーマで は ないが, これ は明 らかに存在す る と見て よいであろう。例 えば,ふ り遊 びは象徴機能の発達 を 反映す る遊 びである。 2)及 び 3) について もこれ までの考察か ら概 ね確認 され る ところであ るが,や は り研究方法 な どの問題があって正確 にはやや疑問 を残す とい うべ きである。問題 は 4 )である。近年大 いに関心が持 たれているが, その結果 の行方 はなお しば ら く予断 を許 さな い状況である。

1)心理発達 を反映す るもの としてのふ り遊 び

2 )他 の望 ましい活動 をもた らす機会 を提供す る仲介者 としてのふ り遊 び 3)順応的能力 に磨 きをか ける整理統合者 としてのふ り遊 び

4 )心理発達 を促進す る 「 最近接 の発達領域」すなわち先導者 としてのふ り遊 び

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( 1 9 9 7.7. 31 受理)

参照

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