遊びの展開過程についての一考察 : 5歳児の遊びにおける物の役割
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(2) . 平成6年3月. ) 第44巻 第2号 北海道教育大学紀要 (第1部C. M劉r ch ,1994. 2 i i t &iucat onIC) VOL44 ty of1 on(Sec lofHokkaido Universi ‐ Jowna ,No. 遊びの展開過程についての一考察 --5歳児の遊びにおける物の役割--. 会. 沢. 義. 雄. ・. 横. 山. 文. 樹. 旨. 要. 一般に子 どもにとっ て遊びが重要である といわれながら, 遊びとは何かという問題については実 践者の間でも, 研究者の間でも一致した見解が得られていないのが現状 といえる. 遊びとは何かと いう視点について, 園の状況や保育者の考えによっ て相違のあることはこれまでの幾つ かの調査で も明らかにな っている‐ 実践の場では, 「環境の構成」「保育環境」 などが問題 とされる. つまり, どのような物を準備し, 配列する かが保育展開上の一つの重要な問題とされる‐ 本研究では, 5歳児の遊びを対象として, 自発活動 時間全般にわたっ て出現する遊びの中で, 最も継続 時間の長い遊びを抽出し, 遊びの展開 にとっ て物 がどのような役割を果たしている かについての考察 を試みた‐ 結果として, 遊ぶための時間が十分にあることを前提として, 遊ぶ物が十分にあるこ とによっ て 「探す」 「つくる」 「組合わせる」 な どの行動が伴い遊びが発展することを確かめた‐ 従っ て, 実 践の場で 「環境の構成」 「保育環境」 などを問題にする場合, 具体 的な事項として自発活動時間の 長さ, 遊ぶための物についての検討が必要 といえる‐. 1. 問. 題. )によると 5歳児の 就園率は90%を越し, 公教育の場 としての幼稚園, 1 平成3年度総務庁統計( , 保育所が普及 していることを示 している‐ これらの幼児 教育の基本を示すものとして, 幼稚園教育 2 )と明記され 保育所保育指針に 要領においては 「自発活動としての遊びに指導の中心をおく」 ( , ( 3 ) として, 公教育の場における遊 びの重要さを おいても 「遊びを通 して総合的に保育を行なう」 示 し て い る.. 5 )を 姶 め 古 く か ら ) デ ュ ーイ { 4 子 ど も に と っ て 遊 び が 重 要 で あ る と い う こ と は, フ レ ー ベ ル( , ,. 6 )が 「あそ びは 誰からも指示さ れず自発的行為であり, 楽 述べ られている. また, ホイ ジンガ( , 7 )が 「自由な活動 すなわ ち 遊戯者が強制されないこ しさの追及である. 」 と述べ, カイヨワ( , . と」 と述 べているの を始め, 現代の 遊び研究でも遊びは自発性 を第一条件とするこ とがあげられて いる. しかし, 一般に子 どもにとっ て遊びが重要であるといわれながら, 遊びとは何かという問題 については実 践者の間でも, 研究者の間でも一致 した見解が得られていないのが現状といえる‐ ) の 「遊びを大切に しようという新 しい教育要領の方針 を受けて, その方向で一生懸 戸田 ( 1 991 命努力 し, 自分でもまずまず遊べていると考えているにもかかわらず, その自己評価その ものを否 229.
(3) . 会 沢 義 雄・横. 山 文 樹. 8 )という指摘 はこう した遊びとは何かという視点につ いて 園の状況や保 定されるのである‐ 」 ( , 育者の考えによっ て相違のあることを示 しているものといえる このような園の状況 の相違につ い . 9 )は8園を対象とした調査で 自発活動時間の長さや時間の配分には園によ て て, 岩崎 ( 1 987 )( っ , 差があることを確かめ,保育環境としての遊 具が遊びの展開に影響のあることを 明らかにしている . 0 )は園によっ て 遊ぶための物・ 場所・時間に対する考えかたの相違があ 1 さらに, 山田 ( 19 92 ){ , ることを確かめ, 遊びの発展の条件として, 人的条件 (友達), 物的条件 (物・場所・時間) をあ げ て い る.. 実践の場を対象とした観察・調査に対して, これまで, 発達心理学の分野を中心 に進められてい る遊び研究でも,いく つ かの方法によっ て遊びの構造を明らかにした‐例えば 高橋 ( 1 989 ) は 「子 , どもの遊びを捉え る時の視点として, 〈対物行動〉 〈対人行動〉 および 〈位置行動〉 の 3つの系に 着目してきた」 (=)と述べ, さらに 「ごっ こ遊びには, 子どもの精神発達の ほとんどが濃縮して , 12 )と述べている しかし 高橋らの実験的手法では 観察時間 (遊ぶ時間) 込められている‐ 」 ( . , , や使用する遊 具が限定されるなど, .条件が統制された場面での観察が主流となっ ている. このよう な実験的な方法によっ ても, 戸田のいう 「遊びの根本的な 問い直しが行なわれてない」 q3 )という 実践の場での 問題は解決されるとはいえな い. 中沢 ( 1993 ) は 「遊びの発達と発展を できる限り普 14 )と指摘する 遊びにつ いて同一の尺度を持つ こと 遍的に把握することが当面の課題 である. 」 ( . を目的とすれば, 太田 ( 1991 ) が 「子供のための能力が実験室的な場面」 よりも 「ファミリーな環 15 )と指摘するように日常的場面での遊び観察によ て遊びとは何かとい 境において発揮される」 ( っ う問題について検討 していく必要があると考え る. 実践の場では, 南線幼稚園 ( 1993 ) の 「試したりたり確かめたりできる環境を構 成することが大 )や富士幼稚園 ( 16 切である」 ( 1 993 ) の 「園内では遊びの進展にあわせて環境を設定して行く こと )という表現にみられるように 「環境の構成」 「保育環境 で, 遊びが継続的なものになっ た」 q7 」 などが問題とされる. ここで述べられている 「環境の構成」 「保育環境」 とは どのような物を準 , 備 し, 配列するかが保育展開上の問題していると考えられる. 中沢 ( 1990 ) は 「子どもは, 乳児の ころから物に触れ, 働きかけ, 物の性質や状態の理解を進めている 製作活動や 積み木 ごっ こ遊 . , びな ども, すべて物の性質や状態を知り, それを応用 して展開するといっ てよい」 ( 18 }と述べ てい る‐ このことは, 遊びの発展, 展開にとっ ては物が重要であることを示 したものといえる ‐ 遊びの展開過程 で物がどのような役割を果たしているかにつ いて検討すること は 遊びの構造お , )の調査によると 1園におけ よび発展の仕組 みを知る手掛かりにな ると考える 横山 (19 93 ) q9 . , る一 日の自発活動 時間 全体の遊び の継続時間の長さと発 展の関係では 「発展 した」 と 呼べる遊びに ・ は, 象徴的遊びが多く, 継続時間が長くな ることが確かめられた そこで 本研究では 5歳児の . , , 遊びを対象として, 自発活動時間全般 にわたっ て出現する遊びの中で 最も継続時間の長い遊びを , 選択し, 遊びの発展における物の役割 について検討を試みることにする .. n. 方. 法. ・自発活動としての遊びを対象として分析を行うこととし, 自発活動時間内に出現する遊びについ て, ビデオを用いて記録し, 事例を収集 した. ・映像の収録 については筆者が行なっ た. ・ ビデオ による, 映像記録より観 察記録を作成する なお 分析につ いては筆者が行なった ‐ , . 230.
(4) . . 遊びの展開過程についての一考察. 1 対象幼児 女20名) を対象とした. 本附属幼稚園は自発活動 を中心にした園であり, 行事その他の影響 を受けない場合は, 登園と同 本学・附属幼稚園の5歳児36名 (男16名. 時に幼児が好きな遊びに取り組む方法が取られている. ig- ”こ示 した通りである. 園舎配置図はf 隣接する小学校, 中学校まで, 遊びの範囲を広 げることについては規制さ れていない.. . . へ. ⑦. 琶 回謹選 1. . ブ 芝. 保育 室 水間. 車. 諮. . 4 歳児. 廊. 駐. フ. . . 5歳児. 要撃. 給 湯. w‐C. 室. . . 保育室 教 生 室 ホ 、一 ル. プ. 園. 教職員室. 塁 〔. 花. 壇. 玄 関 ). 遊 戯 室. ラ ス. ◎. ⑫ (グラ ン ド). f ig 1 園舎配置図 ‐ 231.
(5) . 会 沢 義 雄・横 山 文 樹. 2. 調査日. ・観察調査を実施した 日時は以下の通りである. 登園開始時刻 (9 :0 0 ) より保育者によっ て片付 け, 集合の合図があるまでとした. 調査日1). 平成5年5月24日. 調査日2). 平成5年6月1 4日. 9:00~10:40 9:00~10:50. ・調査日における保育時間の配分は以下のとおり であった. Tabl e-1. 登園開始. 自発活動. 弁当. 自発活動. . 」10:40^}10:50÷÷÷÷ ÷ 三一11:30÷ ÷ ÷÷÷≦.12:30. 9 :00. 3. 保育時間の配分 降園準備 降園 ・ ’13:30÷う-13:45. 分析の方法. ビデオを用いて記録し, 収集された事例のうち 自発活動時間内で最も継続時間が長い遊びを抽 , 出し, 分析の対象とした. 抽出された遊びについて, 事例として詳述し, 遊びの展開過程におい て使用された物および扱い の方法につ いて検討した‐. m. 結. 果. 自発活動時間の間に記録された遊びの出現の状況はTABLE-2 ー 1~2に示した通りである . 1) 5月24日 ・自発活動時間 (観察時間) は9:00~10:40の100分間である‐ ・全園児 ( 36名) が出席 し, 天候は晴れである. ・自発活動時間1 00分の間に出現した遊びは22件であ っ た. 22件のうち, 継続時間が20分以上の遊 びは10件, 20分以下の遊びが13件であっ た. 20分以上継続した遊びのうち ごっ こ遊びは5件 (全 遊び中23%) であっ た. ・全遊びのうち最も継続時間の長かっ たのはN 62分) であっ た‐ Q6「ケーキやさん ごっ こをする」 ( Tabl 1 に展開の過程を示した. e- 3 -・ 2) 6月1 4日 ・自発活動時間 (観察時間) は9:00~10:50の110分間である‐ ・全園児 ( 36名) が出席し, 天候は晴れである. ・自発活動時間1 10分の間に出現した遊びは24件であ っ た. 24件のうち, 継続時間が20分以上の遊 びは11件, 20分以下の遊びが1 3件であった. 20分以上継続した遊びのうち ごっ こ遊びは8件 (全 遊び中33%) であった. ・全遊びのうち 最も継続時間の長か っ たのはN 56分) であ っ た‐ Tabl Q5 「家をつくる」 ( e- 3 - 2に展開の過程を示した‐ 232.
(6) . . 遊びの展開過程についての一考察 TABLE‐2‐1時系列による遊びの出現の状況と継続の状況 (5月24日). I. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22. :. 9:00. 9:20. i* 土. ↓ ↓↓1 霊 ー ll l l-- 1 1 セー. ・. ) W. ≠. ムー ン. ー’ ′ 2 ー、. ケーキや さん ( 6. 10:30. ↓i-. 昌 ン. 10:10. 10:20. ー. ー. 」 リムロ (焔). 車で遊ぶ又縄. 7 ン ( 1. 10:00. てつぼっ a. 22. トラ ンポ. 9:40. 9:50. lI. トラ ンポ リ ン. 9:30. 5 tl ←▼ 折け紙 ( 1. l I. 9:10. ブ フ ン 8. 丈. 各墨 2 1. 1 ヲ. W. ト. l「. 3 2. ポ リ ン が ( 12. 寄. ). 20. l. ザ ン ロ. 」-. t. デ ザ ン ロ. 10:40 21. ↓ ↓ ま. ー と. 上 宴 地 22 32. 10:50. 才. ン ポ リ ン. ー. 14 ー. ね ん. 固. 8. 費. ん ど. 1 蔓. 8. 15. 233.
(7) . . 会 沢 義 雄・横 山 文 樹 TABLE‐ 2 -2時系列による遊びの出現の状況と継続の状況 (6月1 4日) 1 ▲. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9 ID 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24. 9:00. 9:10. 1 ‐. プ ラン. ギ ン. (. ↓. ▼. .. ↓. ン ロ I プ. 56. 一. ー. 20 帆. 垂. ◎. と タ I. 23. 長. ・ .. ー. 22 ン. 垂 ”. :. ‐ ‐. 拶. ▼”. ブ フ ン. 鹸. ー… : 野 基 - . 24 響. 蕃. つ. ≧. -- 一. 堂 - ン ロ I プ. 4 固定遊具 ( 1. 32 ノ. 1. ブ フ ン. 1 8. 3 5. 234. “. フ ン. ) ー. 10:50. ー---. 8. 砂 ト ンネ ルづくり. 10:40. 士. 十- - ▼ リレーで遊ぶ. 10:30. 18. 2) .←▼車で遊ぶ ( 2. 10:20. 7. 1 1 1 ←▼ 衰を つく る. 10:10. l l11l ↓ ↓l ll 1 l I ll l l↓l I l l ↓ l 11 1l -l l l I墓 すべり台. 10:00. ー. 固定遊具. 9:50. ヱつぽぅ 良. 9:40. 2 ト ニネ ル (2. 9:30. 5 おり紙 ( 1 トラアポリン 骨 ). 9:20. .. : :よ 17. ー. 8. 虫. 一 力く し. 7 U.
(8) . 遊びの展開過程についての-考察. 事例1. 「ケーキやさん ごっ こをする」. 5歳1 継続時間が56分, 延べ参加人数が5人の遊びであっ た. 但し, 5歳児の参加人数が5人でありそ した の他に3歳児の園児3名と保育者が買い手として参加 ‐ (イの地点) であった‐ 遊びが行なわれた場所は,砂場(アの地点 Tabl e- 1参照), テラス前 プフ 保育物が事前に準備 した物はテラス前のまま ごと台, 長椅子である‐ 「ケーキやさんごっこをする」 の展開の過程 展 開 R子は一人で砂場で, ふるい, 型押し, カップを使ってケーキをつくっている‐ つくられたケーキは砂 場の縁に並べられる‐ ケーキが数個できあがった時点で, つくったケーキは運ぶのが不可能で形が崩され) ふるい, 型押 いこ砂を詰めてままごと台 (テラス前) に移動する‐ 道具や砂を移動するために何度か往復する‐ テラス前で, 再び, ケーキつくりを始める‐ テラス近くの芝 生にあるタンポポや畑にある花びらを持ってきて, ケーキの上に飾りとして乗せる. テラス前で鉄棒 (移動式) をしていたMI子, M2子, A子および保育室内から様子を見ていたS子が 順に加わり, R子と同様のケーキをつくる. A子は木の小枝を捜し, ろうそくとしてケーキにさす‐ MI 子, M2子は水飲み場からカップに水を汲んできて砂と水を混ぜて固めようとする. R子の 「ここはケーキやさんだからね」 という声にMI子らが賛同し, まま ごと台のまわりの長椅子の 上にケーキが並べられる‐ R子に相談する形で, ケーキのつくり手 (主にR子, A子) , 売り手 (MI子, M2子), 買い手 (主にS子他の買い手が来たときは売り手になる) の役割分担ができる‐ MI子が3歳 児の保育室に声を掛けに行き, 3歳児の保育者, 園児が買い手として参加する‐ MI子, M2子が注文を聞き, 値段を示して, お金の受け渡しのまねやお釣りを渡すまねをする. 買い 手はその場で食べるまねをするが売られたケーキは形が崩され, 再度, R子の所に運ばれる‐ R子は形の 違うケーキや飾りを工夫したケーキをつくる. 買い手が来なくなり, MI子, M2子が遊びから抜け始めた時点で, R子はケーキつくりをやめる‐ 担任によって片付けを促され, 遊びが終了した. Tabl e- 3 冊1. 時間経過. ↓. 士 三 二 圭. 「家をつくる」 2分, 延べ参加人数が6人の遊びであった. 継続時間が6 遊びの行なわれた場所は玄関前(ウの地点)である.段 ボール箱は事前にエの地点に準備されていた. 事例2. 「家をつくる」 の展開の過程 展 開 Y子の要望により段ボール箱が2個, 玄関前に移動される‐ Y子とK子がポール箱の中に入ったり, 出 たりする. K子は 「トンネルみたいだ. 」 と言いながら, 出たり入ったりを繰り返す‐ Y子は箱の中で Tabl e- 3 ー 2. 時間経過. も. 、′. 6 2分. じ っ と して い る.. Y子の 「家みたいだ」 という発言 ぐ家をつくることが始まる‐ 再度, Y子の要望より大小の段ボール箱 が保育者によって運ばれる 固定遊具で遊んでいたMI子, S子が加わる‐ 地面にジュウタンが敷かれ, ジュウタンを囲む形で, 段 ボール箱と段ボール箱をガムテープ (保育者が持ってくる) でつないでコの字形に並べられていく. その 間も, MI子, S子は段ボールを運んでくる‐ 並べられた段ボール箱について, それぞれが 「ここは玄関 だよ」 「これは箱を入れる箱だよ」 「これは, テレビにする」 と決めていく. Y子はひとつの段ボール箱をカッターとはさみで (カッタ冊とはさみはY子の指示によりK子が保育室 から持ってくる) ほどいて一枚の段ボールの紙にする。 三角におって, 「家」 の一部の上にかぶせて, 「屋根ができた」 という‐ MI子がMI子が他の子に誘われて, 抜ける‐ K子, S子が大小の段ボール箱を運んできて並べている‐ Y子は屋根をつくり終えると 「冷蔵庫をつくる」 という‐ E子と一緒にカッターで段ボール箱の側面を 切って, 冷蔵庫の扉をつくる‐ さらに, その中に冷蔵庫の中の棚をつくろうとする. 屋根をつくった時と 同様に, 一枚の段ボールの紙をつくって, さらに三等分する‐ 一枚を冷蔵庫の中に入れて大きさを確かめ, 「少し小さかった‐ 」 と言いながら, E子, K子とに手伝いを頼んで, 三段の棚つくりを終える‐ 暫く, 「ごめんください」 「どうぞ」 という遊びが繰り返されていたが, Y子の 「ああ, 疲れた, 続き 明日しようっと」 という声に, 全員が固定遊具に移動し, 遊びが終了した‐ 235.
(9) . 会 沢 義 雄・横 山 文 樹. N. 考. 察. 事例1 「ケーキやさん ごっ こをする」 では, 開始から17分後に遊びの転換点が見られた. 転換点 として判断できることとして①砂の他に花, 水, 木の枝などが増え, 物と物とが組み合わされてい ること. また, まま ごと台や長椅子も利用されていることも含まれる. ②仲間を加えた遊びとなっ たこと. ③つくり手, 売り手, 買い手の役割分担ができ, ごっ こ遊びに発展していること. 以上の 3点をあげることができる‐ これらの3点を支えた条件として, 砂という素材が柔軟性及び可塑性 に富み, つくり変えたり, 形を変えることが容易であることがあげられる‐ さ らに, 花などと組み 合わせられることによって遊びが発展 したといえ る. 事例1に対 して, 事例2 「家をつくる」 では遊びの転換点は開始から6分後のY子の 「家みたい だ」 という発言による. ①の物と物との組み合わせ に関しては 素材は段ボール箱に限られ 「切 , , る」 「つ な ぐ」 などの 目的にそっ てどのような道具を選択するかが問題とされた. ②の仲間を加え たことが遊びの転換点となったことは事例1と共通している. ③の役割分担につ いては 「家をつく る」 という時点 で既に, Y子を中心にしながらも, 参加者それぞれが目的を持っ て行動 している. 中沢 ( 993 1 ) が 「段ボールをみつける‐ ためし行動として押 したり, 持ちあげたりしてみる. 中に 20 )と示しているよ 入っ て座っ てみて, 四角く囲まれた感じからお風 呂のイメージを引き出す. 」 ( うに, 事例2ではY子がトンネル遊びや 段ボール箱に触れながら, 段 ボールの性質を確かめたうえ で遊びを開始しているのが特徴といえる. 事例1のR子が砂という素材を熟知したうえで遊びを始 めているのとの相違を示 した. また, 事例1 「ケーキやさん ごっ こをする」 は当日だけの単発の遊 びで終了したのに対して, 事例2 「家をつくる」 ではY子を中心に翌日に 「色を塗る」 「表札をつ くる」 という遊びに発展 した. Y子が段ボールの性質を理解したうえで道具を選択しながら, 仲間 が変りながら, なお, 時間をかけて遊びを続けているのが観察された‐ 岩崎 ( 1987 ) は 「自発活動時間の長さ, 遊具の種類数, 材料・用具に使用規制の状況から幼稚園 21 )と述べ ている これは 事例1および事例2でみる 環境と幼児の遊びには相互の関連がある」 ( . , 場合, 砂および段ボールの他に花, 水などが自由に遊びに取り入れることが可能であるという条件 によっ て発展できたことを示 してる. さらに, 高橋 (都) ( 19 89 ) は 「物があってその見立てをす 22 )と述べ ている これに るのではなく, 見立てたいことがあっ て, それにあてはまる物を探す」 ( . 加え, 必要な物をつくり だすという, 製作が伴うことが遊びが発展する要素であることを示したも のといえる. 花びらや小枝を探 してくること, 水を運んでくることな どが 「あてはまる物を探す」 ことであり, 冷蔵庫をつくる, 玄関をつくるということが 「必要な物をつくり だす」 ことといえよ 23 )が幼児の遊びの構成要素として 「見立てる場」 「見 う. 以 上のこ とから, 岩崎 (姉) ( 1 991 ){ 立てた物」 「つ もりの言葉や言動」 をあげているように, 遊びが発展するためには, 遊ぶための物 2 4 ) が十分に準備され ていることが必要であることが明らかにな った. その場合, 岩崎が ( 1987 )( が一 日の保育時間における 「最長自発活動」 を問題とし, 本研究の事例1および事例2の遊びが1 時間前後の時間を要していることから, 細切れに区切られた時間ではなく, 発展するための十分な 長さの時間があることが前提とされる. 従っ て, 実践の場で, 「保育環境」 「環境構成」 を問題に する場合, 「環境」 の定義の明確なおさえと具体的な事項として自発活動時間の長さ, 遊ぶための 物につ いての検討が必要 といえ る‐ 本研究は継続時間の長い遊びを対象に, 遊び発展を物の役割から検討し, 遊びの構造を 明らかに することを試みた. 結果として, 物が十分にあることによっ て 「探す」 「つくる」 「組合わせる」 などの行動が伴い遊びが発展することを確かめた‐ 236.
(10) . 遊びの展開過程についての一考察. 2 4 ) 1 991 )が「物は,活動をうみ出すきっ かけとなり,人と人のつ ながりをつ ける媒介となる」( 青木( と述べているように, 遊びの発展は, 遊ぶ物の他に, 遊ぶ仲間 (構成人数), 保育者とのかかわり (援助) など多くの要素を含ん でいる. 従っ て, 「発展 した遊び」 について, 構成人数や保育者の 援助などから検討していくことが今後の課題といえよう. V. 文. 献. 1 ( )1 99 1 ‐ 総務庁統計局 「日本の統計」 ) 幼稚園教育要領 (文部省) ( 2 ( 3 } 保育所保育指針 (厚生省) 4 ( } フレーベル 1 96 4 「人間の教育」 (荒井 武・訳). 岩波書店. } デューイー j ( 5 l 97 2 「自然主義と教育思想」 (杉浦宏・訳) 明治図書 ジ ホイ ンガ‐ J I ( 6 ) 967 「ホモ・ルーデンス」 (里見元一郎・訳) 河出書房 I 0 「遊びと人間」 (多田道太郎・訳) 講談社文庫 { 7 ) カイヨワー R 97 ( 8 } 戸田雅美 9 ( } 岩崎基次 皿 山田りよ子. 1 991 「保育実践に遊び理論は必要か」 発達4 6号 p-p 50一59ミ ネ ル ヴ ァ 書 房 「幼児の遊びに及ぼす環境の影響一目発活動について-」 1 987 1 6年度 上越教育大学大学院修士論文 98 「幼児の遊びに及ぼす環境の影響-遊び展開の条件について-」 1 99 2 1 991年度 上越教育大学大学院修士論文. 側 高橋たまき. 1 98 9. 「子どもの遊びについての考察 -その1 -物へのかかわりを中心として-」. 日. 本女子大学文学部 29 PP.10 3-11 5 89 1 9. 「乳幼児の遊び-その発達プロセス」. 中沢和子. 1 9 93. 太田光洋. 1 9 91. 「幼児教育に於ける 『自発活動としての遊び』 に関する予備的考察」 「幼児における役割遊びの構造に関する発達的研究-日常的事実と遊びスクリプト構. 高橋たまき. 新曜社. 前掲書{ ) 8. 造の比較分析を通して」 1 9 90 年度 宮城教育大学大学院 修士論文 節 石狩町南線幼稚園 (第31回北海道国公立幼稚園教育研究大会宗谷大会提言資料) q の 登別市富士幼稚園 (第31回北海道国公立幼稚園教育研究大会宗谷大会提言資料) 園 中沢和子 α 排 横山文樹. 1 990 「子どもと環境」 萌文書林 pp .69 「 3 幼稚園の自発活動時間における遊びの継時的分析 1 99 」 1 99 2 年度 上越教育大学大学院 修士論文. 中沢和子. 1978. 「イ メ ー ジの 誕 生 - 0歳からの行動観察」. K ブッ ク ス pp ‐136一137 N H. 前掲書{ ) 9. 高橋都代子. 1 989 「ごっ ご遊びの世界-4~6歳児」 小嶋秀雄・編 『乳幼児の社会的世界』. 有斐閣選書. pp95-ppl15. 岡 岩崎嫡子. 1 991. 園 青木久子. 1 99 1. 「4歳児の遊び 5歳児の遊び」 ミネルヴァ書房 「乳幼児の活動と保育内容」. 発達4 6号 p p34-41 ‐. 森上史郎・吉村真理子 編 『保育内容総論』. ミネルヴァ書房. 会沢義雄 (本学教授・函館校, 本学附属函館幼稚園・園長) 横山文樹 (本学附属函館幼稚園・教諭). 237.
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